(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/16 20060101AFI20220614BHJP
【FI】
B41J2/16 503
B41J2/16 305
(21)【出願番号】P 2018038127
(22)【出願日】2018-03-04
【審査請求日】2020-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 康弘
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-083242(JP,A)
【文献】特開2014-043075(JP,A)
【文献】特開2002-307687(JP,A)
【文献】特開2014-162159(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0296770(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1部材と、
前記第1部材と接着剤で接合した第2部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材
の各接合面には、前記接着剤が入り込む溝部が設けられ、
前記第1部材の前記溝部と前記第2部材の前記溝部とは非対向位置に設けられ、
前記溝部に入り込んだ前記接着剤と前記溝部の壁面との間に隙間がある
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記溝部に入り込んだ前記接着剤は接合面に対してドーム状に盛り上がっている
ことを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記第1部材は、液体を吐出するノズルが通じる流路を形成する流路板であり、
前記第2部材は、前記流路の壁面を形成する壁面部材である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
前記溝部は、前記流路全体を囲んで設けられている
ことを特徴とする請求
項3に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項5】
前記溝部は前記接合面の面内方向で複数設けられている
ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の液体吐出ヘッド。
【請求項6】
請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを含むことを特徴とする液体吐出ユニット。
【請求項7】
前記液体吐出ヘッドに供給する液体を貯留するヘッドタンク、前記液体吐出ヘッドを搭載するキャリッジ、前記液体吐出ヘッドに液体を供給する供給機構、前記液体吐出ヘッドの維持回復を行う維持回復機構、前記液体吐出ヘッドを主走査方向に移動させる主走査移動機構の少なくともいずれか一つと前記液体吐出ヘッドとを一体化した
ことを特徴とする請求項
6に記載の液体吐出ユニット。
【請求項8】
請求項1ないし
5のいずれかに記載の液体吐出ヘッド、又は、請求項
6若しくは
7に記載の液体吐出ユニットを備えていることを特徴とする液体を吐出する装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、液体吐出ユニット、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する液体吐出ヘッドとして、個別液室などの流路を構成する複数の部材を接着剤で接合するものがある。
【0003】
例えば、従来、流路板と振動板部材との接着剤の接合面に余剰接着剤を逃がす溝部(凹部)を設けることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、2つの部材を接着剤で接合した場合、接合界面が液体に晒されることで、接合面と接着剤との間で界面剥離が生じるという課題がある。
【0006】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、接合面と接着剤との間の界面剥離の進行を抑えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
第1部材と、
前記第1部材と接着剤で接合した第2部材と、を備え、
前記第1部材及び前記第2部材の各接合面には、前記接着剤が入り込む溝部が設けられ、
前記第1部材の前記溝部と前記第2部材の前記溝部とは非対向位置に設けられ、
前記溝部に入り込んだ前記接着剤と前記溝部の壁面との間に隙間がある
構成とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、接合面と接着剤との間の界面剥離の進行を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】発明の第1実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図2】
図1のX-X線に沿う同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図である。
【
図5】同実施形態の作用説明に供する
図4と同様な要部拡大断面説明図である。
【
図6】本発明の第2実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う
図4と同様な要部拡大断面説明図である。
【
図7】本発明の第3実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う
図4と同様な要部拡大断面説明図である。
【
図8】本発明の第4実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【
図9】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の要部平面説明図である。
【
図11】本発明に係る液体吐出ユニットの他の例の要部平面説明図である。
【
図12】本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例の正面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について添付図面を参照して説明する。本発明の第1実施形態について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図、
図2は
図1のX-X線に沿う同ヘッドのノズル配列方向に沿う断面説明図、
図3は同ヘッドの要部平面説明図である。
【0011】
この液体吐出ヘッド100は、ノズル板1と、流路板2と、壁面部材としての振動板部材3とを積層接合している。そして、振動板部材3の振動領域(振動板)30を変位させる圧電アクチュエータ11と、ヘッドのフレーム部材を兼ねている共通液室部材20を備えている。
【0012】
ノズル板1は、液体を吐出する複数のノズル4を有している。
【0013】
流路板2は、ノズル4にノズル連通路5を介して通じる個別液室6、個別液室6に通じる供給流路を構成する流体抵抗部7、流体抵抗部7に通じる液導入部8を形成している。なお、導入部8は、2以上の流体抵抗部7に通じる構成としている。本実施形態では、流路板2は、ノズル板1側から3枚の板状部材2A~2Cで構成している。
【0014】
振動板部材3は、流路板2の個別液室6の壁面を形成する変形可能な振動領域30を有する。ここでは、振動板部材3は3層構造(限定されない)とし、流路板2側から薄肉部を形成する第1層と、厚肉部を形成する第2層及び第3層で形成され、第1層で個別液室6に対応する部分に変形可能な振動領域30を形成している。
【0015】
そして、振動板部材3の個別液室6とは反対側に、振動板部材3の振動領域30を変形させる駆動手段(アクチュエータ手段、圧力発生手段)としての電気機械変換素子を含む圧電アクチュエータ11を配置している。
【0016】
この圧電アクチュエータ11は、ベース部材13上に接合した圧電部材にハーフカットダイシングによって溝加工をして、ノズル配列方向において、所要数の柱状の圧電素子12A、12Bを所定の間隔で櫛歯状に形成している。
【0017】
そして、圧電素子12Aを振動板部材3の振動領域(振動板)30に形成した島状の厚肉部である凸部30aに接合し、圧電素子12Bを同じく凸部30bに接合している。なお、圧電素子12Bは支持部として使用している。
【0018】
この圧電素子12は、圧電層と内部電極とを交互に積層したものであり、内部電極がそれぞれ端面に引き出されて外部電極が設けられ、外部電極にフレキシブル配線部材15が接続されている。
【0019】
共通液室部材20は共通液室10を形成し、共通液室10には外部から液体を供給する供給路21が通じている。
【0020】
このように構成した液体吐出ヘッド100においては、例えば圧電素子12Aに与える電圧を基準電位(中間電位)から下げることによって圧電素子12Aが収縮し、振動板部材3の振動領域30が引かれて個別液室6の容積が膨張することで、個別液室6内に液体が流入する。
【0021】
その後、圧電素子12Aに印加する電圧を上げて圧電素子12Aを積層方向に伸長させ、振動板部材3の振動領域30をノズル4に向かう方向に変形させて個別液室6の容積を収縮させることにより、個別液室6内の液体が加圧され、ノズル4から液体が吐出される。
【0022】
なお、ヘッドの駆動方法については上記の例(引き-押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行なうこともできる。
【0023】
次に、本発明の第1実施形態における流路板と振動板部材との接合部分の詳細について
図4も参照して説明する。
図4は
図1のB部の要部拡大断面説明図である。
【0024】
本実施形態では、個別液室6などのノズル4に通じる流路を形成している流路板2を第1部材とし、同じく個別液室6などの流路の壁面を形成する壁面部材となる振動板部材3を第2部材として、流路板2と振動板部材3とを接着剤40で接合している。
【0025】
この
図4の例では、流路板2と振動板部材3との接合界面が、振動板部材3の開口部9から流路板2の液導入部8につながる流路に接している。
【0026】
そして、第1部材である流路板2の接合面2aには接着剤40が入り込む溝部41が設けられ、第2部材である振動板部材3の接合面3aにも接着剤40が入り込む溝部41が設けられている。
【0027】
流路板2と振動板部材3とを接合する接着剤40は、一部が溝部41内に入り込んでいる。
【0028】
この溝部41内に入り込んだ接着剤40は、接合面2a、3aに対してドーム状に盛り上がった盛り上がり部40aとなっており、接合面2a、3aの面内方向において、溝部41の壁面41aと盛り上がり部40aと間には隙間43がある状態となっている。
【0029】
次に、本実施形態の作用について
図5も参照して説明する。
図5は同作用説明に供する
図4と同様な要部拡大断面説明図である。
【0030】
接着剤40は、ヘッドで使用される多種多様な液体(インク)のすべてに対する耐性を有することはできず、例えば、水系インクに対して強い接着剤は溶剤インクに弱く、溶剤インクに対して強い接着剤は水系インクに対して弱いという特性がある。
【0031】
そのため、液体との接触によって接着剤自体が膨潤又は溶出、接着対象物との界面剥離が発生することがある。特に、界面剥離が発生すると、毛管力によって液体が界面に送られ、加速度的に剥離が進行するために、流路からヘッドの外へのリークパスが比較的短時間で形成され、液体漏れにつながることになる。
【0032】
例えば、
図5に示すように、接着剤40と振動板部材3の接合面3aとの間に界面剥離45が発生した場合、毛管力で液体300は剥離部分へ染み込み、液体300の染み込みで更に界面剥離45が誘発されていくことなる。
【0033】
ここで、本実施形態では、溝部41の内部で接着剤40の盛り上がり部40aがドーム状に盛り上がり、溝部41の壁面41aとの間に隙間43が形成されている。
【0034】
そのため、溝部41の壁面41aと盛り上がり部40aの間では毛管力が生じなくなり、界面剥離45はその進行が停止することになる。
【0035】
したがって、界面剥離45の進行によって液体300がヘッド外側に漏出することが防止される。
【0036】
また、溝部41は、
図3に示すように、個別液室6などの流路全体をチャンネル(1つのノズルに対応する流路)毎に囲んで配置されているので、隣り合う流路へのリークも防止される。
【0037】
この場合、溝部41は流路に近ければ近い程、早い段階で界面剥離の進行を止めることができるので、好ましい。
【0038】
次に、本発明の第2実施形態について
図6を参照して説明する。
図6は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う
図4と同様な要部拡大断面説明図である。
【0039】
本実施形態では、振動板部材3の溝部41と流路板2の溝部41とは対向しない位置(非対向位置)関係で設けられている。
【0040】
つまり、前記第1実施形態のように、振動板部材3の溝部41と流路板2の溝部41とが対向する位置関係で設けられていると、溝部41に集まる接着剤40が二分されてそれぞれの溝部41内に入り込むことになる。そのため、盛り上がり部40aの盛り上がりが少なくなるおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態のように振動板部材3の溝部41と流路板2の溝部41とは対向しない位置関係で設けることにより、溝部41に集まる接着剤40が1つの溝部41に集中するため、溝部41内での盛り上がり部40aの盛り上がりを大きくすることができる。
【0042】
この盛り上がり部40aの盛り上がりを大きくすることで、界面剥離の毛管力で進行してきた液体がその盛り上がり部40aを超えづらくなる。逆に、盛り上がり部40aの盛り上がりが低い、又は、盛り上がりがない状態であると、液体が溝部41を超え、界面剥離を進行させるおそれがある。
【0043】
したがって、盛り上がり部40aの盛り上がりを大きくすることで、界面剥離の進行をより確実に阻止することができる。
【0044】
次に、本発明の第3実施形態について
図7を参照して説明する。
図7は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う
図4と同様な要部拡大断面説明図である。
【0045】
本実施形態では、振動板部材3の接合面3a、流路板2の接合面2aのそれぞれの面内方向に沿って複数の溝部41を設けている。
【0046】
これにより、より確実に界面剥離の進行を阻止することができる。
【0047】
次に、本発明の第4実施形態について
図8を参照して説明する。
図8は同実施形態に係る液体吐出ヘッドのノズル配列方向と直交する方向に沿う断面説明図である。
【0048】
本実施形態に係る液体吐出ヘッドは、薄膜圧電素子を含む圧電アクチュエータ11を圧力発生素子として使用するヘッドである。圧電アクチュエータ11を有する振動板部材3及び流路板2を含むアクチュエータ基板60と、アクチュエータ基板60を保持し、開口部9に通じる開口部51を形成した保持基板50とを接着剤40で接合している。
【0049】
そして、アクチュエータ基板60の振動板部材3(絶縁膜を含む)と保持基板50との接合箇所に溝部41を設け、前記各実施形態と同様に、盛り上がり部40aをドーム状に持ち上がらせている構成としている。
【0050】
なお、上記各実施形態においては、流路板と振動板部材、振動板部材と保持基板との接合箇所に本発明を実施した例で説明しているが、ノズル板と流路板、振動板部材と共通液室部材、保持基板と共通液室部材の各接合箇所にも同様に適用することができる。
【0051】
また、上記各実施形態においては、第1部材及び第2部材の各接合面にいずれも溝部を設けた例で説明したが、いずれか一方の接合面に溝部を設けて、溝部に入り込んだ接着剤と溝部壁面との間に隙間がある状態とすることもできる。このような構成でも、当該接合面における接着剤との界面剥離の進行を抑えることができる。
【0052】
次に、本発明に係る液体を吐出する装置の一例について
図9及び
図10を参照して説明する。
図9は同装置の要部平面説明図、
図10は同装置の要部側面説明図である。
【0053】
この装置は、シリアル型装置であり、主走査移動機構493によって、キャリッジ403は主走査方向に往復移動する。主走査移動機構493は、ガイド部材401、主走査モータ405、タイミングベルト408等を含む。ガイド部材401は、左右の側板491A、491Bに架け渡されてキャリッジ403を移動可能に保持している。そして、主走査モータ405によって、駆動プーリ406と従動プーリ407間に架け渡したタイミングベルト408を介して、キャリッジ403は主走査方向に往復移動される。
【0054】
このキャリッジ403には、本発明に係る液体吐出ヘッド404及びヘッドタンク441を一体にした液体吐出ユニット440を搭載している。液体吐出ユニット440の液体吐出ヘッド404は、例えば、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色の液体を吐出する。また、液体吐出ヘッド404は、複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配置し、吐出方向を下方に向けて装着している。
【0055】
液体吐出ヘッド404の外部に貯留されている液体を液体吐出ヘッド404に供給するための供給機構494により、ヘッドタンク441には、液体カートリッジ450に貯留されている液体が供給される。
【0056】
供給機構494は、液体カートリッジ450を装着する充填部であるカートリッジホルダ451、チューブ456、送液ポンプを含む送液ユニット452等で構成される。液体カートリッジ450はカートリッジホルダ451に着脱可能に装着される。ヘッドタンク441には、チューブ456を介して送液ユニット452によって、液体カートリッジ450から液体が送液される。
【0057】
この装置は、用紙410を搬送するための搬送機構495を備えている。搬送機構495は、搬送手段である搬送ベルト412、搬送ベルト412を駆動するための副走査モータ416を含む。
【0058】
搬送ベルト412は用紙410を吸着して液体吐出ヘッド404に対向する位置で搬送する。この搬送ベルト412は、無端状ベルトであり、搬送ローラ413と、テンションローラ414との間に掛け渡されている。吸着は静電吸着、あるいは、エアー吸引などで行うことができる。
【0059】
そして、搬送ベルト412は、副走査モータ416によってタイミングベルト417及びタイミングプーリ418を介して搬送ローラ413が回転駆動されることによって、副走査方向に周回移動する。
【0060】
さらに、キャリッジ403の主走査方向の一方側には搬送ベルト412の側方に液体吐出ヘッド404の維持回復を行う維持回復機構420が配置されている。
【0061】
維持回復機構420は、例えば液体吐出ヘッド404のノズル面(ノズルが形成された面)をキャッピングするキャップ部材421、ノズル面を払拭するワイパ部材422などで構成されている。
【0062】
主走査移動機構493、供給機構494、維持回復機構420、搬送機構495は、側板491A,491B、背板491Cを含む筐体に取り付けられている。
【0063】
このように構成したこの装置においては、用紙410が搬送ベルト412上に給紙されて吸着され、搬送ベルト412の周回移動によって用紙410が副走査方向に搬送される。
【0064】
そこで、キャリッジ403を主走査方向に移動させながら画像信号に応じて液体吐出ヘッド404を駆動することにより、停止している用紙410に液体を吐出して画像を形成
する。
【0065】
このように、この装置では、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、高画質画像を安定して形成することができる。
【0066】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの他の例について
図11を参照して説明する。
図11は同ユニットの要部平面説明図である。
【0067】
この液体吐出ユニットは、前記液体を吐出する装置を構成している部材のうち、側板491A、491B及び背板491Cで構成される筐体部分と、主走査移動機構493と、キャリッジ403と、液体吐出ヘッド404で構成されている。
【0068】
なお、この液体吐出ユニットの例えば側板491Bに、前述した維持回復機構420、及び供給機構494の少なくともいずれかを更に取り付けた液体吐出ユニットを構成することもできる。
【0069】
次に、本発明に係る液体吐出ユニットの更に他の例について
図12を参照して説明する。
図12は同ユニットの正面説明図である。
【0070】
この液体吐出ユニットは、流路部品444が取付けられた液体吐出ヘッド404と、流路部品444に接続されたチューブ456で構成されている。
【0071】
なお、流路部品444はカバー442の内部に配置されている。流路部品444に代えてヘッドタンク441を含むこともできる。また、流路部品444の上部には液体吐出ヘッド404と電気的接続を行うコネクタ443が設けられている。
【0072】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0073】
液体を吐出するエネルギー発生源として、圧電アクチュエータ(積層型圧電素子及び薄膜型圧電素子)、発熱抵抗体などの電気熱変換素子を用いるサーマルアクチュエータ、振動板と対向電極からなる静電アクチュエータなどを使用するものが含まれる。
【0074】
「液体吐出ユニット」は、液体吐出ヘッドに機能部品、機構が一体化したものであり、液体の吐出に関連する部品の集合体が含まれる。例えば、「液体吐出ユニット」は、ヘッドタンク、キャリッジ、供給機構、維持回復機構、主走査移動機構の構成の少なくとも一つを液体吐出ヘッドと組み合わせたものなどが含まれる。
【0075】
ここで、一体化とは、例えば、液体吐出ヘッドと機能部品、機構が、締結、接着、係合などで互いに固定されているもの、一方が他方に対して移動可能に保持されているものを含む。また、液体吐出ヘッドと、機能部品、機構が互いに着脱可能に構成されていても良い。
【0076】
例えば、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。また、チューブなどで互いに接続されて、液体吐出ヘッドとヘッドタンクが一体化されているものがある。ここで、これらの液体吐出ユニットのヘッドタンクと液体吐出ヘッドとの間にフィルタを含むユニットを追加することもできる。
【0077】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドとキャリッジが一体化されているものがある。
【0078】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドを走査移動機構の一部を構成するガイド部材に移動可能に保持させて、液体吐出ヘッドと走査移動機構が一体化されているものがある。また、液体吐出ヘッドとキャリッジと主走査移動機構が一体化されているものがある。
【0079】
また、液体吐出ユニットとして、液体吐出ヘッドが取り付けられたキャリッジに、維持回復機構の一部であるキャップ部材を固定させて、液体吐出ヘッドとキャリッジと維持回復機構が一体化されているものがある。
【0080】
また、液体吐出ユニットとして、ヘッドタンク若しくは流路部品が取付けられた液体吐出ヘッドにチューブが接続されて、液体吐出ヘッドと供給機構が一体化されているものがある。このチューブを介して、液体貯留源の液体が液体吐出ヘッドに供給される。
【0081】
主走査移動機構は、ガイド部材単体も含むものとする。また、供給機構は、チューブ単体、装填部単体も含むものする。
【0082】
「液体を吐出する装置」には、液体吐出ヘッド又は液体吐出ユニットを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて液体を吐出させる装置が含まれる。液体を吐出する装置には、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を 気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0083】
この「液体を吐出する装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0084】
例えば、「液体を吐出する装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0085】
また、「液体を吐出する装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0086】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0087】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0088】
また、「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0089】
また、「液体を吐出する装置」としては、他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0090】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【符号の説明】
【0091】
1 ノズル板
2 流路板
3 振動板部材
4 ノズル
6 個別液室
10 共通液室
40 接着剤
41 溝部
100 液体吐出ヘッド
403 キャリッジ
404 液体吐出ヘッド
440 液体吐出ユニット