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特許7087461金型離型処理溶液及びフィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】金型離型処理溶液及びフィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 33/60 20060101AFI20220614BHJP
   B29C 39/14 20060101ALI20220614BHJP
   B29C 39/24 20060101ALI20220614BHJP
   B29C 59/04 20060101ALI20220614BHJP
   G02B 1/118 20150101ALI20220614BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
B29C33/60
B29C39/14
B29C39/24
B29C59/04 Z
G02B1/118
B29L7:00
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018039983
(22)【出願日】2018-03-06
(65)【公開番号】P2018149807
(43)【公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】P 2017046861
(32)【優先日】2017-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】内田 雅行
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/161315(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/065136(WO,A1)
【文献】特開2012-107089(JP,A)
【文献】特開2006-056132(JP,A)
【文献】特開2011-110713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 33/00 - 33/76
B29C 39/00 - 39/44
B29C 43/00 - 43/58
B29C 59/00 - 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)と溶媒(B)とを含む金型離型
処理溶液であって、
溶媒(B)が、有機溶剤と水とを含み、溶媒(B)中の水の含有率が、5質量%~95
質量%である
金型離型処理溶液。
【請求項2】
有機溶剤が、水溶性溶剤である、請求項1に記載の金型離型処理溶液。
【請求項3】
有機溶剤が、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール
、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル
、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びN-メチル-2-ピロリドンからなる
群より選ばれる少なくとも1種である、請求項に記載の金型離型処理溶液。
【請求項4】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)が、下記式(1)で表される化
合物である、請求項1~のいずれかに記載の金型離型処理溶液。
(HO)3-n(O=)P[-O-(RO) ・・・ (1)
(式中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキレン基であり、mは、1~20の
整数であり、nは、1~3の整数である。)
【請求項5】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)が、(ポリ)オキシエチレンア
ルキルエーテルリン酸である、請求項に記載の金型離型処理溶液。
【請求項6】
金型が、転写により凹凸構造を形成するための金型である、請求項1~のいずれかに
記載の金型離型処理溶液。
【請求項7】
凹凸構造が、モスアイ構造である、請求項に記載の金型離型処理溶液。
【請求項8】
以下の工程(1)~工程(3)を順次含む、フィルムの製造方法。
工程(1):金型表面に、請求項1~のいずれかに記載の金型離型処理溶液を塗布
する工程。
工程(2):前記金型表面に硬化性組成物を供給し、前記硬化性組成物を硬化させる
工程。
工程(3):硬化物を前記金型から剥離する工程。
【請求項9】
金型が、転写により凹凸構造を形成するための金型である、請求項に記載のフィルム
の製造方法。
【請求項10】
凹凸構造が、モスアイ構造である、請求項に記載のフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型離型処理溶液及びフィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
可視光の波長以下のピッチの微細凹凸構造を表面に有する物品は、反射防止機能等を発現することから、その有用性が注目されている。特に、モスアイ(Moth-Eye)構造と呼ばれる微細凹凸構造は、空気の屈折率から材料の屈折率に連続的に増大していくことで、有効な反射防止機能を発現することが知られている。
【0003】
微細凹凸構造を表面に有する物品の製造方法としては、例えば、透明基材等の表面を直接加工して微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する方法、微細凹凸構造に対応した反転構造を有する金型を用いて透明基材等の表面に反転構造を転写する方法等が挙げられるが、生産性や経済性の観点から、微細凹凸構造に対応した反転構造を有する金型を用いて透明基材等の表面に反転構造を転写する方法が用いられることが多い。
【0004】
金型により反転構造を形成する方法としては、例えば、電子線描画法、レーザー光干渉法等が挙げられるが、近年、より簡便に反転構造を形成できる方法として、アルミニウム基材の表面を陽極酸化する方法が注目されている。アルミニウム基材の表面を陽極酸化することによって形成される陽極酸化アルミナは、アルミニウムの酸化皮膜(アルマイト)であり、ピッチが可視光の波長以下である複数の細孔(微細凹凸構造)を有する。
【0005】
ところで、微細凹凸構造に対応した反転構造を有する金型を用いて透明基材等の表面に反転構造を転写する方法により微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する場合、金型と物品との接触界面が大幅に増えるため、離型しにくいという課題を有する。
【0006】
前記課題の解決方法として、例えば、特許文献1には、リン化合物を水に溶解させた金型離型処理溶液やリン化合物を有機溶剤に溶解させた金型離型処理溶液を金型表面に塗布して微細凹凸構造を表面に有する物品を製造する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開2012/161315号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示される製造方法は、リン化合物を水に溶解させた金型離型処理溶液を用いた場合、金型離型処理溶液を金型表面に塗布した際に、金型表面に付着した汚れの多くが落ちずにそのまま残存するため、得られる微細凹凸構造を表面に有する物品に欠陥が発生するという課題を有する。また、金型への濡れ性が悪く、万遍なく微細凹凸構造が離型処理されることが困難で、局所的な離型不良を起こし、得られる微細凹凸構造を表面に有する物品の光学歪みが発生するという課題を有する。その他、リン化合物を水に溶解させた金型離型処理溶液を保管しておくと、溶液中及び溶液が残存する容器、配管、フィルター等にカビが発生することがある。カビが発生した溶液で金型を離型処理した場合、金型にカビが付着して胞子状の微細凹凸構造抜けが発生し、欠陥となることがある。更に、水に溶解するリン化合物の種類が少なく、調製可能な金型離型処理溶液が限定されてしまうという課題を有する。
また、リン化合物を有機溶剤に溶解させた金型離型処理溶液を用いた場合、金型離型処理中に金型離型処理溶液が揮発し、揮発により金型離型処理溶液の濃度が経時的に変化し、金型離型処理溶液の金型表面への塗布ムラの原因となる。揮発性がより高い場合、空気中の水分が結露し、金型表面に微細な水滴が付着し、金型離型処理溶液の金型表面への塗布ムラの原因となる。このような塗布ムラは、微細凹凸構造を表面に有する物品の製造の際に局所的な離型不良を起こし、得られる微細凹凸構造を表面に有する物品の光学歪みが発生するという課題を有する。また、揮発性が高い有機溶剤を用いた金型離型処理溶液は、濃度が経時的に変化しやすく、金型離型処理溶液の濃度管理が困難であるという課題を有する。更に、有機溶剤は危険物に該当するものが多く、危険物に該当する有機溶剤を用いる場合、危険物を取り扱うというリスクが発生すると共に、危険物に対応した重厚な製造設備を設計しなければならないという課題を有する。
【0009】
そこで、本発明は、これらの課題を解決し、金型表面に付着した汚れを落とすことができ、金型表面への塗布ムラを抑制することができ、離型性に優れた金型離型処理溶液を提供することにある。
また、本発明は、品質安定性に優れたフィルムを得ることができ、離型性に優れたフィルムの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)と溶媒(B)とを含む金型離型処理溶液であって、溶媒(B)が、有機溶剤と水とを含む、金型離型処理溶液。
[2]溶媒(B)中の水の含有率が、5質量%~95質量%である、[1]に記載の金型離型処理溶液。
[3]有機溶剤が、水溶性溶剤である、[1]又は[2]に記載の金型離型処理溶液。
[4]有機溶剤が、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル及びN-メチル-2-ピロリドンからなる群より選ばれる少なくとも1種である、[3]に記載の金型離型処理溶液。
[5](ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)が、下記式(1)で表される化合物である、[1]~[4]のいずれかに記載の金型離型処理溶液。
(HO)3-n(O=)P[-O-(RO)-R ・・・ (1)
(式中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキレン基であり、mは、1~20の整数であり、nは、1~3の整数である。)
[6](ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)が、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸である、[5]に記載の金型離型処理溶液。
[7]金型が、転写により凹凸構造を形成するための金型である、[1]~[6]のいずれかに記載の金型離型処理溶液。
[8]凹凸構造が、モスアイ構造である、[7]に記載の金型離型処理溶液。
[9]以下の工程(1)~工程(3)を順次含む、フィルムの製造方法。
工程(1):金型表面に、[1]~[8]のいずれかに記載の金型離型処理溶液を塗布する工程。
工程(2):前記金型表面に硬化性組成物を供給し、前記硬化性組成物を硬化させる工程。
工程(3):硬化物を前記金型から剥離する工程。
[10]金型が、転写により凹凸構造を形成するための金型である、[9]に記載のフィルムの製造方法。
[11]凹凸構造が、モスアイ構造である、[10]に記載のフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の金型離型処理溶液は、金型表面に付着した汚れを落とすことができ、金型表面への塗布ムラを抑制することができ、離型性に優れる。
また、本発明のフィルムの製造方法は、品質安定性に優れたフィルムを得ることができ、離型性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成する製造工程を示す模式的断面図である。
図2】凹凸構造を表面に有するフィルムの製造装置を示す模式的断面図である。
図3】凹凸構造を表面に有するフィルムの一例を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(金型処理溶液)
本発明の金型処理溶液は、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)と溶媒(B)とを含む。
本発明の金型処理溶液は、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの欠陥を抑制することができることから、均一な溶液であることが好ましく、浮遊物や濁りが無いことが好ましい。
本発明の金型処理溶液は、取り扱い性を改善する目的で、消泡剤等を含んでいてもよい。
【0014】
((ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A))
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物は、オキシアルキレン基を1つ有するオキシアルキレンアルキルリン酸化合物又はオキシアルキレン基を2つ以上有するポリオキシアルキレンアルキルリン酸化合物を意味する。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)は、離型性に優れることから、下記式(1)で表される化合物が好ましく、(ポリ)オキシエチレンアルキルエーテルリン酸がより好ましい。
(HO)3-n(O=)P[-O-(RO)-R ・・・ (1)
(式中、Rは、アルキル基であり、Rは、アルキレン基であり、mは、1~20の整数であり、nは、1~3の整数である。)
【0015】
は、アルキル基であるが、溶媒(B)への溶解性に優れることから、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数3~18のアルキル基がより好ましく、炭素数4~16が更に好ましく、炭素数6~15が特に好ましい。
【0016】
は、アルキレン基であるが、溶媒(B)への溶解性に優れることから、炭素数1~4のアルキレン基が好ましく、炭素数2~3のアルキレン基がより好ましく、エチレン基、プロピレン基が更に好ましく、エチレン基が特に好ましい。
【0017】
mは、1~20の整数であるが、溶媒(B)への溶解性に優れることから、1~10の整数が好ましい。
【0018】
nは、1~3の整数である。
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)は、モノエステル体(n=1)、ジエステル体(n=2)、トリエステル体(n=3)のいずれであってもよい。また、エステル体又はトリエステル体の場合、1分子中の複数の(ポリ)オキシアルキレンアルキル基は、それぞれ同一であってもよく異なっていてもよい。
【0019】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)は、市販品を用いてもよい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の市販品としては、例えば、JP-506H(商品名、城北化学工業(株)製、R:ブチル基、R:エチレン基、m≒1、n≒1~2)、モールドウイズINT-1856(商品名、アクセル社製)、TDP-10(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒10、n≒3)、TDP-8(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒8、n≒3)、TDP-6(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒6、n≒3)、TDP-2(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒2、n≒3)、DDP-10(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒10、n≒2)、DDP-8(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒8、n≒2)、DDP-6(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒6、n≒2)、DDP-4(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒4、n≒2)、DDP-2(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒2、n≒2)、TLP-4(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:ラウリル基、R:エチレン基、m≒4、n≒3)、TCP-5(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:セチル基、R:エチレン基、m≒5、n≒3)、DLP-10(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:ラウリル基、R:エチレン基、m≒10、n≒3)等が挙げられる。これらの(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の市販品の中でも、離型性に優れ、溶媒(B)への溶解性に優れることから、TDP-10、TDP-8、TDP-6、TDP-2が好ましく、TDP-8、TDP-2がより好ましい。
【0020】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
(溶媒(B))
溶媒(B)は、有機溶剤と水とを含む。
【0022】
有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、t-ブタノール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;1,4-ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類;乳酸メチル、乳酸エチル等の乳酸類;ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類;ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチル-2-ピロリドン、アセトニトリル等の窒素含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄含有溶剤;ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤の中でも、水との相溶性に優れることから、水溶性溶剤が好ましく、エタノール、1-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、アセトン、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンがより好ましく、1-プロパノール、イソプロパノール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、N-メチル-2-ピロリドンが更に好ましい。
本明細書において、水溶性溶剤は、1気圧、20℃の条件で、同じ体積の水と混合した際に、分離することなく、外観上均一な状態を維持することができる溶剤をいう。また、本明細書において、非水溶性溶剤は、水溶性溶剤以外の溶剤をいう。
【0023】
溶媒(B)中の水の含有率は、溶媒(B)100質量%中、5質量%~95質量%が好ましく、20質量%~90質量%がより好ましく、40質量%~85質量%が更に好ましい。溶媒(B)中の水の含有率が5質量%以上であると、金型離型処理溶液の濃度の経時的な変化を抑制することができ、金型離型処理溶液の金型表面への塗布ムラを抑制することができ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの品質安定性に優れる。また、溶媒(B)中の水の含有率が95質量%以下であると、金型表面に付着した汚れを落とすことができ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの欠陥を抑制することができる。
【0024】
溶媒(B)中の有機溶剤の含有率は、溶媒(B)100質量%中、5質量%~95質量%が好ましく、10質量%~80質量%がより好ましく、15質量%~60質量%が更に好ましい。溶媒(B)中の有機溶剤の含有率が5質量%以上であると、金型表面に付着した汚れを落とすことができ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの欠陥を抑制することができる。更に溶媒(B)中の有機溶剤の含有率が5質量%以上であると、カビの発生を抑制できるため、カビ付着による欠陥を防ぐことができる。カビの発生抑制に関しては、有機溶剤の含有率が高いほど効果が高く、含有率が低いほど効果が低い。また、溶媒(B)中の有機溶剤の含有率が95質量%以下であると、金型離型処理溶液の濃度の経時的な変化を抑制することができ、金型離型処理溶液の金型表面への塗布ムラを抑制することができ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの品質安定性に優れる。
【0025】
有機溶剤中の水溶性溶剤の含有率は、有機溶剤100質量%中、50質量%~100質量%が好ましく、60質量%~95質量%がより好ましい。有機溶剤中の水溶性溶剤の含有率が50質量%以上であると、有機溶剤と水との相溶性に優れる。また、有機溶剤中の水溶性溶剤の含有率が95質量%以下であると、選択できる(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の種類が増える。
【0026】
有機溶剤中の非水溶性溶剤の含有率は、有機溶剤100質量%中、0質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましい。有機溶剤中の非水溶性溶剤の含有率が5質量%以上であると、選択できる(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の種類が増える。また、有機溶剤中の非水溶性溶剤の含有率が50質量%以下であると、有機溶剤と水との相溶性に優れる。
【0027】
(金型)
金型は、本発明の効果をより必要とすることから、転写により凹凸構造を形成するための金型が好ましい。
【0028】
凹凸構造としては、例えば、プリズム構造、マイクロレンズ構造、モスアイ構造等が挙げられる。これらの凹凸構造の中でも、本発明の効果をより必要とすることから、モスアイ構造が好ましい。
【0029】
金型の製造方法としては、例えば、リソグラフィ法によって表面に凹凸構造の反転構造を設ける方法、レーザー加工によって表面に凹凸構造の反転構造を設ける方法、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成する方法、凹凸構造を有する母型から電鋳法等で複製する方法等が挙げられる。これらの金型の製造方法の中でも、本発明の効果をより必要とし、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)がアルミナと相互作用して離型性をより発揮することから、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成する方法がより好ましい。
【0030】
複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成する方法は、凹凸構造の制御が容易で、金型の生産性に優れることから、以下の工程(a)~工程(f)を順次含むことが好ましい。
工程(a):アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程。
工程(b):酸化皮膜の一部又は全てを除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程。
工程(c):アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程。
工程(d):細孔の径を拡大させる工程。
工程(e):電解液中、再度陽極酸化する工程。
工程(f):工程(d)と工程(e)とを繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成した金型を得る工程。
【0031】
図1は、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成する製造工程を示す模式的断面図である。以下、図1を用いて工程(a)~工程(f)を説明するが、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成する方法は、図1に限定されるものではない。
【0032】
(工程(a))
工程(a)は、アルミニウム基材を電解液中、定電圧下で陽極酸化してアルミニウム基材の表面に酸化皮膜を形成する工程である。図1に示すように、アルミニウム基材10を陽極酸化すると、細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
【0033】
アルミニウム基材の形状としては、例えば、ロール状、円管状、平板状、シート状等が挙げられる。これらのアルミニウム基材の形状の中でも、凹凸構造を表面に有するフィルムの生産性に優れることから、ロール状、円管状が好ましく、ロール状がより好ましい。
【0034】
アルミニウム基材は、表面を平滑にするために、研磨されることが好ましい。
研磨方法としては、例えば、機械研磨、化学研磨、化学機械研磨、羽布研磨、電解研磨等が挙げられる。これらの研磨方法は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの研磨方法の中でも、アルミニウム基材の表面平滑性に優れることから、機械研磨、化学研磨、化学機械研磨、電解研磨が好ましく、化学機械研磨がより好ましい。
【0035】
化学機械研磨(Chemical Mechanical Planarization、CMP研磨)は、酸又はアルカリと水との混合液、並びに、研磨剤を含む研磨液を、布、紙、金属等の研磨体に埋め込む、及び/又は、被研磨体と研磨体との間に研磨液を供給して、研磨体でアルミニウム基材を擦ることにより、研磨液に含まれる研磨剤の鋭利な部分で基材を削りつつ、酸又はアルカリによりアルミニウム基材の表面を平滑化する研磨方法である。
【0036】
アルミニウム基材は、所定の形状に加工する際に用いた油が付着していることがあるため、陽極酸化の前に予め脱脂処理されることが好ましい。
【0037】
アルミニウム基材のアルミニウムの純度は、陽極酸化した際に不純物の偏析により可視光を散乱する大きさの凹凸構造が形成されることを抑制し、陽極酸化で得られる細孔の規則性が低下することを抑制することができることから、99%以上が好ましく、99.5%以上がより好ましく、99.8%以上が特に好ましい。
【0038】
電解液としては、例えば、硫酸、シュウ酸、リン酸等が挙げられる。これらの電解液は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの電解液の中でも、可視光の波長以下の大きさの細孔を高い規則性で形成することができることから、シュウ酸が好ましい。
【0039】
電解液として硫酸を用いる場合、硫酸の濃度は、電流値が高くなり過ぎず定電圧を維持することができることから、0.7M以下が好ましい。
電解液として硫酸を用いる場合、化成電圧を25V~30Vとすると、周期が63nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲であると、細孔の規則性に優れる。
電解液として硫酸を用いる場合、電解液の温度は、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることを抑制することができることから、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
【0040】
電解液としてシュウ酸を用いる場合、シュウ酸の濃度は、電流値が高くなり過ぎず酸化皮膜の表面が粗くなることを抑制することができることから、0.7M以下が好ましい。
電解液としてシュウ酸を用いる場合、化成電圧を30V~60Vとすると、周期が100nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲であると、細孔の規則性に優れる。
電解液としてシュウ酸を用いる場合、電解液の温度は、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることを抑制することができることから、60℃以下が好ましく、45℃以下がより好ましい。
【0041】
電解液としてリン酸を用いる場合、リン酸の濃度は、電流値が高くなり過ぎず酸化皮膜の表面が粗くなることを抑制することができることから、0.5M以下が好ましい。
電解液としてリン酸を用いる場合、化成電圧を180V~220Vとすると、周期が500nmの規則性の高い細孔を有する陽極酸化アルミナを得ることができる。化成電圧がこの範囲であると、細孔の規則性に優れる。
電解液としてリン酸を用いる場合、電解液の温度は、細孔が壊れたり、表面が溶けて細孔の規則性が乱れたりすることを抑制することができることから、30℃以下が好ましく、20℃以下がより好ましい。
【0042】
工程(b)は、酸化皮膜の一部又は全てを除去し、アルミニウム基材の表面に陽極酸化の細孔発生点を形成する工程である。図1に示すように、酸化皮膜14の一部又は全てを一旦除去し、これを陽極酸化の細孔発生点16にすることで、細孔の規則性を高めることができる。酸化皮膜14は、全てを除去せずに一部が残るような状態でも、酸化皮膜14のうち既に規則性が十分に高められた部分が残っているのであれば、酸化皮膜除去の目的を果たすことができる。
【0043】
酸化皮膜を除去する方法は、工程(a)で形成した細孔発生点となる形状を維持することができることから、アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液に溶解させて除去する方法が好ましい。アルミニウムを溶解せず、酸化皮膜を選択的に溶解する溶液は、溶解選択性に優れることから、クロム酸とリン酸との混合液が好ましい。
【0044】
(工程(c))
工程(c)は、アルミニウム基材を電解液中、再度陽極酸化し、細孔発生点に細孔を有する酸化皮膜を形成する工程である。図1に示すように、酸化皮膜14を除去したアルミニウム基材10を再度、陽極酸化すると、円柱状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成される。
【0045】
工程(c)における陽極酸化は、工程(a)と同様の条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど、深い細孔を得ることができる。工程(b)の効果が失われない範囲であれば、工程(c)での陽極酸化の電圧、電解液の種類、温度等を、適宜設定することができる。
【0046】
(工程(d))
工程(d)は、細孔の径を拡大させる工程である。図1に示すように、細孔12の径を拡大させる処理(以下、「細孔径拡大処理」と表す場合がある。)を行う。
【0047】
細孔径拡大処理は、酸化皮膜を溶解する溶液に浸漬して陽極酸化で得られた細孔の径を拡大させる処理である。酸化皮膜を溶解する溶液は、酸化アルミニウムの溶解性に優れることから、リン酸水溶液が好ましい。リン酸水溶液の濃度は、溶解速度の制御が容易であることから、1質量%~10質量%が好ましい。細孔径拡大処理の時間を長くするほど、細孔径は大きくなる。
【0048】
(工程(e))
工程(e)は、電解液中、再度陽極酸化する工程である。図1に示すように、再度陽極酸化すると、円柱状の細孔12の底部から下に延びる、直径の小さい円柱状の細孔12が更に形成される。
【0049】
工程(e)における陽極酸化は、工程(a)と同様の条件で行えばよい。陽極酸化の時間を長くするほど、深い細孔を得ることができる。
【0050】
(工程(f))
工程(f)は、工程(d)と工程(e)とを繰り返し行い、複数の細孔を有する陽極酸化ポーラスアルミナを表面に形成した金型を得る工程である。図1に示すように、工程(d)の細孔径拡大処理と工程(e)の陽極酸化とを繰り返すと、直径が開口部から深さ方向に連続的に減少する形状の細孔12を有する酸化皮膜14が形成され、アルミニウム基材10の表面に陽極酸化ポーラスアルミナ(アルミニウムの多孔質の酸化皮膜(アルマイト))を有する金型18が得られる。
【0051】
繰り返し回数は、連続的に直径が減少する細孔が得られ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れることから、3回以上が好ましく、5回以上がより好ましい。
工程(f)の最後は、細孔の内壁の平滑性に優れることから、工程(d)の細孔径拡大処理で終わることが好ましい。
【0052】
細孔の形状としては、例えば、略円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの細孔の形状の中でも、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れることから、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状等のように、深さ方向と直交する方向の細孔断面積が最表面から深さ方向に連続的に減少する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。
【0053】
隣接する細孔間の平均間隔は、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れることから、可視光線の波長以下、即ち、400nm以下が好ましく、380nm以下がより好ましい。
【0054】
隣接する細孔間の平均間隔は、20nm~300nmが好ましく、80nm~200nmがより好ましい。隣接する細孔間の平均間隔が20nm以上であると、細孔を転写して凸部を形成する場合に凸部を形成しやすい。また、隣接する細孔間の平均間隔が300nm以下であると、細孔間隔を大きくするための電圧を抑制することができ、陽極酸化ポーラスアルミナを工業的に製造しやすい。
【0055】
本明細書において、隣接する細孔間の平均間隔は、電子顕微鏡観察を用いて、隣接する細孔間の間隔(細孔の中心から隣接する細孔の中心までの距離)を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0056】
細孔の平均深さは、60nm~400nmが好ましく、90nm~350nmがより好ましい。細孔の平均深さが60nm以上であると、最低反射率や特定波長の反射率の上昇を抑制することができ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れる。また、細孔の平均深さが400nm以下であると、細孔を形成しやすく、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの耐擦傷性に優れる。
【0057】
本明細書において、細孔の平均深さは、電子顕微鏡観察を用いて、細孔の最底部と細孔間に存在する凸部の最頂部との間の垂直距離を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0058】
細孔のアスペクト比(細孔の平均深さ/隣接する細孔間の平均間隔)は、0.8~5.0が好ましく、1.2~4.0がより好ましく、1.5~3.0が更に好ましい。細孔のアスペクト比が0.8以上であると、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れる。また、細孔のアスペクト比が5.0以下であると、細孔を形成しやすく、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの耐擦傷性に優れる。
【0059】
(フィルムの製造方法)
本発明のフィルムの製造方法は、生産性に優れることから、以下の工程(1)~工程(3)を順次含むことが好ましい。
工程(1):金型表面に、本発明の金型離型処理溶液を塗布する工程。
工程(2):前記金型表面に硬化性組成物を供給し、前記硬化性組成物を硬化させる工程。
工程(3):硬化物を前記金型から剥離する工程。
【0060】
(工程(1))
工程(1)は、金型表面に、本発明の金型離型処理溶液を塗布する工程である。金型表面に本発明の金型離型処理溶液を塗布し乾燥させることで、溶媒(B)が揮発し、金型表面に(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の層が形成される。
【0061】
塗布方法としては、例えば、ディップコート、スプレーコート、かけ流し、ワイパーによる拭き上げ等が挙げられる。これらの塗布方法の中でも、塗布の均一性に優れることから、スプレーコート、かけ流しが好ましい。
【0062】
乾燥方法としては、例えば、クリーン環境での静置、高温乾燥機での乾燥、減圧乾燥、ガス吹付による乾燥等が挙げられる。これらの乾燥方法の中でも、塗布の均一性に優れることから、ガス吹付による乾燥が好ましい。
【0063】
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の層の厚さは、1nm~100nmが好ましく、2nm~50nmがより好ましい。(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の層の厚さが1nm以上であると、離形性を十分に確保することができる。また、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の層の厚さが100nm以下であると、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの品質安定性に優れる。
【0064】
(工程(2))
工程(2)は、金型表面に硬化性組成物を供給し、硬化性組成物を硬化させる工程である。工程(2)は、凹凸構造を表面に有するフィルムの生産性に優れることから、活性エネルギー線により硬化する硬化性組成物を、金型と基材との間に挟み、これに活性エネルギー線を照射して硬化させることが好ましい。
【0065】
(基材)
基材の材料としては、例えば、ポリメチルメタクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリスチレン、メチルメタクリレート-スチレン共重合体等のスチレン樹脂;セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエーテルスルフォン樹脂;ポリスルフォン樹脂;ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、脂環式ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル樹脂;ポリビニルアセタール樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリウレタン樹脂;ガラス等が挙げられる。これらの基材の材料の中でも、光透過性、取り扱い性に優れることから、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂が好ましく、ポリエステル樹脂、セルロース樹脂がより好ましい。
【0066】
基材の形態としては、例えば、フィルム、シート等の公知の形態等が挙げられる。これらの基材の形態の中でも、凹凸構造を表面に有するフィルムの生産性、取り扱い性に優れることから、フィルム、シートが好ましい。
【0067】
基材の製造方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、キャスト成形法等の公知の製造方法等が挙げられる。これらの基材の製造方法の中でも、生産性に優れることから、押出成形法、キャスト成形法が好ましい。
【0068】
基材の表面には、密着性、帯電防止性、耐擦傷性、耐候性等の特性を改良する目的として、コーティング処理、コロナ処理等が施されていてもよい。
【0069】
硬化性組成物の硬化物と基材との屈折率差は、硬化性組成物の硬化物の層と基材との界面における光の反射を抑制することができ、反射防止性能等の光学性能に優れることから、0.3以下が好ましく、0.1以下がより好ましい。
【0070】
(硬化性組成物)
硬化性組成物は、凹凸構造を表面に有するフィルムの生産性に優れることから、活性エネルギー線により硬化する組成物が好ましい。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、電子線、プラズマ、熱線(赤外線等)等が挙げられる。これらの活性エネルギー線の中でも、硬化性組成物の硬化性に優れることから、紫外線、電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
【0071】
硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤、及び、必要に応じて、他の添加剤を含むことが好ましい。
【0072】
(重合性化合物)
重合性化合物としては、例えば、分子中にラジカル重合性結合及びカチオン重合性結合の少なくとも1種を含むモノマー、オリゴマー、反応性ポリマー等が挙げられる。これらの重合性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0073】
ラジカル重合性結合を有するモノマーとしては、例えば、単官能モノマー、多官能モノマー等が挙げられる。
【0074】
単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート誘導体;(メタ)アクリル酸;(メタ)アクリロニトリル;スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン誘導体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド誘導体等が挙げられる。これらの単官能モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの単官能モノマーの中でも、硬化性に優れることから、アルキル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましく、アルキルアクリレート、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチルアクリレートがより好ましい。
本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリル、メタクリル又はその両方をいう。
【0075】
多官能モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(メタ)アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)フェニル)プロパン、1,2-ビス(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)エタン、1,4-ビス(3-(メタ)アクリロキシ-2-ヒドロキシプロポキシ)ブタン、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、メチレンビスアクリルアミド等の二官能性モノマー;ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンプロピレンオキシド変性トリアクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキシド変性トリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレート等の三官能モノマー;コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸の縮合反応混合物、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリストールペンタ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート等の四官能以上のモノマー;二官能以上のウレタンアクリレート、二官能以上のポリエステルアクリレート等が挙げられる。これらの多官能モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの多官能モノマーの中でも、耐久性に優れることから、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレートがより好ましい。
【0076】
カチオン重合性結合を有するモノマーとしては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基、オキサゾリル基、ビニルオキシ基等を有するモノマー等が挙げられる。これらのカチオン重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合性結合を有するモノマーの中でも、耐久性に優れることから、エポキシ基を有するモノマーが好ましい。
【0077】
カチオン重合性結合を有するモノマーの具体例としては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールAポリプロピレンオキサイド2モル付加物ジグリシジルエーテル、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、2-エチルヘキシルオキセタン、キシリレンビスオキセタン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。これらのカチオン重合性結合を有するモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのカチオン重合性結合を有するモノマーの中でも、耐久性に優れることから、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテルが好ましい。
【0078】
オリゴマー又は反応性ポリマーとしては、例えば、不飽和ジカルボン酸と多価アルコールとの縮合物等の不飽和ポリエステル類;ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、ポリオール(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、カチオン重合型エポキシ化合物、側鎖にラジカル重合性基を有する上述のモノマーの単独又は共重合ポリマー等が挙げられる。これらのオリゴマー又は反応性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのオリゴマー又は反応性ポリマーの中でも、耐擦傷性に優れることから、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましく、ウレタン(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0079】
重合性化合物の組み合わせは、反応性、硬化性に優れることから、ラジカル重合性結合を有するモノマー同士の組み合わせ、ラジカル重合性結合を有するモノマーとカチオン重合性結合を有するモノマーとの組み合わせが好ましく、ラジカル重合性結合を有するモノマー同士の組み合わせがより好ましい。
【0080】
(重合開始剤)
硬化性組成物の硬化の際に光硬化反応を用いる場合、重合開始剤として光重合開始剤を用いるとよい。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンジル、ベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、メチルフェニルグリオキシレート、エチルフェニルグリオキシレート、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン等のカルボニル化合物;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド等の硫黄化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド類等が挙げられる。これらの光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの光重合開始剤の中でも、硬化性に優れることから、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドが好ましく、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイドがより好ましい。
【0081】
硬化性組成物の硬化の際に熱硬化反応を用いる場合、重合開始剤として熱重合開始剤を用いるとよい。
熱重合開始剤としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ラウロイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物;前記有機過酸化物にN,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン等のアミンを組み合わせたレドックス重合開始剤等が挙げられる。これらの熱重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの熱重合開始剤の中でも、反応性、硬化性に優れることから、有機過酸化物、アゾ系化合物が好ましく、アゾ系化合物がより好ましい。
【0082】
重合開始剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.1質量部~10質量部が好ましい。重合開始剤の含有量が0.1質量部以上であると、重合が進行しやすい。また、重合開始剤の含有量が10質量%以下であると、硬化物の機械強度に優れ、硬化物の着色を抑制することができる。
【0083】
(他の添加剤)
硬化性組成物は、重合性化合物、重合開始剤以外に、必要に応じて、他の添加剤を含んでもよい。
他の添加剤としては、例えば、離型剤、非反応性のポリマー、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物、帯電防止剤、防汚性向上のためのフッ素化合物等の添加剤、微粒子、少量の溶媒等が挙げられる。これらの他の添加剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0084】
(離型剤)
硬化性組成物は、連続転写性を向上することができることから、離型剤を含むことが好ましい。
離型剤は、硬化性組成物の硬化物と金型表面との離型性を向上するものであり、硬化性組成物との相溶性があれば、特に限定されない。
【0085】
離型剤としては、例えば、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物、リン酸エステル系化合物、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物、長鎖アルキル基を有する化合物、固形ワックス(ポリアルキレンワックス、アミドワックス、テフロン(商品名)パウダー等)等が挙げられる。これらの離型剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの離型剤の中でも、硬化性組成物の硬化物と金型表面との離型性に優れることから、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物が好ましく、金型離型処理溶液に用いる(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)と同じ化合物がより好ましい。
【0086】
硬化性組成物中の離型剤と金型離型処理溶液に用いる(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)とを同じ化合物とすることで、硬化物と金型との離型性により優れる。また、離型時の負荷が極めて低いため、凹凸構造の破損が少なく、金型の凹凸構造を効率よく、精度よく転写することができる。
【0087】
硬化性組成物中の離型剤と金型離型処理溶液に用いる(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)とのSP値の差は、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの白化を抑制することができることから、2.0以下が好ましく、1.0以下がより好ましい。
【0088】
本明細書において、SP値は、Fedors法によって計算される溶解度パラメータ((J/cm1/2)であり、下記式(2)で表される値である。
SP値(δ)=(ΔH/V)1/2 ・・・ (2)
式中、ΔHは、モル蒸発熱(J)を表し、Vは、モル体積(cm)を表す。ΔH、Vはそれぞれ、「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS(151ページ~153ページ)」に記載の、原子団のモル蒸発熱(△ei)の合計ΣΔei(=ΔH)、モル体積(△vi)の合計ΣΔvi(=V)を用いることができ、SP値は、(ΣΔei/ΣΔvi)1/2から算出される。
【0089】
硬化性組成物中の離型剤の含有量は、重合性化合物100質量部に対して、0.01質量部~1質量部が好ましく、0.05質量部~0.5質量部がより好ましく、0.05質量部~0.1質量部が更に好ましい。硬化性組成物中の離型剤の含有量が0.01質量部以上であると、硬化物と金型との離型性に優れる。また、1質量部以下であると、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの性能の低下を抑制することができる。
【0090】
(非反応性のポリマー)
硬化性組成物は、耐久性に優れることから、非反応性のポリマーを含むことが好ましい。
非反応性のポリマーとしては、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリウレタン、セルロース系樹脂、ポリビニルブチラール、ポリエステル、熱可塑性エラストマー等が挙げられる。これらの非反応性のポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの非反応性のポリマーの中でも、アクリル系樹脂が好ましい。
【0091】
(活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物)
硬化性組成物は、耐久性に優れることから、活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物を含むことが好ましい。
活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物としては、例えば、アルコキシシラン化合物、アルキルシリケート化合物等が挙げられる。これらの活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの活性エネルギー線ゾルゲル反応性組成物の中でも、アルコキシシラン化合物が好ましい。
【0092】
アルコキシシラン化合物としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラ-i-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-t-ブトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリメチルプロポキシシラン、トリメチルブトキシシラン等が挙げられる。これらのアルコキシシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルコキシシラン化合物の中でも、テトラメトキシシラン、トリメチルメトキシシランが好ましい。
【0093】
アルキルシリケート化合物としては、例えば、メチルシリケート、エチルシリケート、イソプロピルシリケート、n-プロピルシリケート、n-ブチルシリケート、n-ペンチルシリケート、アセチルシリケート等が挙げられる。これらのアルキルシリケート化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのアルキルシリケート化合物の中でも、メチルシリケート、エチルシリケートが好ましい。
【0094】
凹凸構造を表面に有するフィルムは、ロータス効果により、その表面が疎水性の材料から形成されていれば超撥水性が得られ、その表面が親水性の材料から形成されていれば超親水性が得られる。
【0095】
(疎水性材料)
凹凸構造を表面に有するフィルムの表面に撥水性を付与する(具体的には、凹凸構造と水との接触角を90°以上とする)場合、その表面が疎水性の材料で形成される。
疎水性の材料の原料は、指紋等の汚れ付着を抑制することができることから、フッ素含有化合物、シリコーン系化合物が好ましい。
【0096】
フッ素含有化合物としては、例えば、含フッ素モノマー、含フッ素シラン化合物、含フッ素界面活性剤、含フッ素ポリマー等が挙げられる。これらのフッ素含有化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0097】
含フッ素モノマーとしては、例えば、フルオロアルキル基置換ビニルモノマー、フルオロアルキル基置換開環重合性モノマー等が挙げられる。これらの含フッ素モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0098】
フルオロアルキル基置換ビニルモノマーとしては、例えば、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリレート、フルオロアルキル基置換(メタ)アクリルアミド、フルオロアルキル基置換ビニルエーテル、フルオロアルキル基置換スチレン等が挙げられる。これらのフルオロアルキル基置換ビニルモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0099】
フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーとしては、例えば、フルオロアルキル基置換エポキシ化合物、フルオロアルキル基置換オキセタン化合物、フルオロアルキル基置換オキサゾリン化合物等が挙げられる。フルオロアルキル基置換開環重合性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0100】
含フッ素シラン化合物としては、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリアセトキシシラン、ジメチル-3,3,3-トリフルオロプロピルメトキシシラン、トリデカフルオロ-1,1,2,2-テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。これらの含フッ素シラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0101】
含フッ素界面活性剤としては、例えば、フルオロアルキル基含有アニオン系界面活性剤、フルオロアルキル基含有カチオン系界面活性剤等が挙げられる。これらの含フッ素界面活性剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0102】
含フッ素ポリマーとしては、例えば、フルオロアルキル基含有モノマーの重合体、フルオロアルキル基含有モノマーとポリ(オキシアルキレン)基含有モノマーとの共重合体、フルオロアルキル基含有モノマーと架橋反応性基含有モノマーとの共重合体等が挙げられる。含フッ素ポリマーは、共重合可能な他のモノマーとの共重合体であってもよい。これらの含フッ素ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0103】
シリコーン系化合物としては、(メタ)アクリル酸変性シリコーン、シリコーン樹脂、シリコーン系シランカップリング剤等が挙げられる。これらのシリコーン系化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
(メタ)アクリル酸変性シリコーンとしては、例えば、シリコーン(ジ)(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの(メタ)アクリル酸変性シリコーンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(メタ)アクリル酸変性シリコーンは、市販品を用いてもよい。(メタ)アクリル酸変性シリコーンの市販品としては、例えば、X-22-164(商品名、信越化学工業(株)製)、X-22-1602(商品名、信越化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0105】
(親水性材料)
凹凸構造を表面に有するフィルムの表面に親水性を付与する(具体的には、凹凸構造と水との接触角を25°以下とする)場合、その表面が親水性の材料で形成される。
親水性の材料の原料は、指紋等の汚れを水拭きで容易に除去することができることから、少なくとも親水性モノマーを含むことが好ましく、耐擦傷性、耐水性付与に優れることから、更に架橋可能な多官能モノマーを含むことがより好ましい。親水性モノマーと架橋可能な多官能モノマーとは、同一であってもよく異なっていてもよい。
具体的には、親水性の材料の原料は、指紋等の汚れを水拭きで容易に除去することができることから、4官能以上の多官能(メタ)アクリレート、2官能以上の親水性(メタ)アクリレート、必要に応じて、単官能モノマーを含むことが好ましい。
【0106】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールエトキシテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸/トリメチロールエタン/アクリル酸のモル比1:2:4の縮合反応混合物、ウレタンアクリレート類(具体的には、例えば、ダイセル・オルネクス(株)製のEBECRYL220、EBECRYL1290、EBECRYL1290K、EBECRYL5129、EBECRYL8210、EBECRYL8301、KRM8200(商品名)等)、ポリエーテルアクリレート類(具体的には、例えば、ダイセル・オルネクス(株)製のEBECRYL81(商品名)等)、変性エポキシアクリレート類(具体的には、例えば、ダイセル・オルネクス(株)製のEBECRYL3416(商品名)等)、ポリエステルアクリレート類(具体的には、例えば、ダイセル・オルネクス(株)製のEBECRYL450、EBECRYL657、EBECRYL800、EBECRYL810、EBECRYL811、EBECRYL812、EBECRYL1830、EBECRYL845、EBECRYL846、EBECRYL1870(商品名)等)等が挙げられる。これらの4官能以上の多官能(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの中でも、耐久性に優れることから、5官能以上の多官能(メタ)アクリレートが好ましい。
【0107】
4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率は、重合性化合物100質量%中、40質量%~90質量%が好ましく、50質量%~85質量%がより好ましく、60質量%~80質量%が更に好ましい。4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率が40質量%以上であると、弾性率が向上し、耐擦傷性に優れる。また、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートの含有率が90質量%以下であると、表面に亀裂が入りにくく、表面外観に優れる。
【0108】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートとしては、例えば、ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート等が挙げられる。これらの2官能以上の親水性(メタ)アクリレートは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0109】
ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレートは、市販品を用いてもよい。ポリエチレングリコールを有する多官能アクリレートの市販品としては、例えば、アロニックスM-240(商品名、東亞合成(株)製)、アロニックスM-260(商品名、東亞合成(株)製)、NKエステルAT-20E(商品名、新中村化学工業(株)製)、NKエステルATM-35E(商品名、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0110】
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計は、6~40が好ましく、9~30がより好ましく、12~20が更に好ましい。ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計が6以上であると、親水性に優れ、防汚性が向上する。また、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートの一分子内に存在するポリエチレングリコール鎖の平均繰り返し単位の合計が40以下であると、4官能以上の多官能(メタ)アクリレートとの相溶性に優れる。
【0111】
2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの含有率は、重合性化合物100質量%中、10質量%~60質量%が好ましく、15質量%~50質量%がより好ましく、20質量%~40質量%が更に好ましい。2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの含有率が20質量%以上であると、親水性に優れ、防汚性が向上する。また、2官能以上の親水性(メタ)アクリレートの含有率が80質量%以下であると、弾性率が向上し、耐擦傷性に優れる。
【0112】
単官能モノマーは、指紋等の汚れを水拭きで容易に除去することができることから、親水性単官能モノマーが好ましい。
【0113】
親水性単官能モノマーとしては、例えば、エステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等のエステル基に水酸基を有する単官能(メタ)アクリレート、単官能アクリルアミド類、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート、メタクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムメチルサルフェート等のカチオン性モノマー類等が挙げられる。これらの親水性単官能モノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0114】
エステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレートは、市販品を用いてもよい。エステル基にポリエチレングリコール鎖を有する単官能(メタ)アクリレートの市販品としては、例えば、M-20G(商品名、新中村化学工業(株)製)、M-90G(商品名、新中村化学工業(株)製)、M-230G(商品名、新中村化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0115】
単官能モノマーとして、アクリロイルモルホリン、ビニルピロリドン等の粘度調整剤、基材との密着性を向上させるアクリロイルイソシアネート類等の密着性向上剤等を用いてもよい。
【0116】
単官能モノマーの含有率は、親水性、耐擦傷性に優れることから、重合性化合物100質量%中、0質量%~20質量%が好ましく、0質量%~15質量%がより好ましく、0質量%~10質量%が更に好ましい。単官能モノマーの含有率が20質量%以下であると、親水性、耐擦傷性に優れる。
【0117】
硬化性組成物の粘度は、凹凸構造への硬化性組成物の追随性に優れることから、10000mPa・s以下が好ましく、5000mPa・s以下がより好ましく、2000mPa・s以下が更に好ましい。
本明細書において、硬化性組成物の粘度は、回転式E型粘度計を用い、25℃にて測定した値とする。
【0118】
(工程(3))
工程(3)は、硬化物を金型から剥離する工程である。
【0119】
(フィルムの製造装置)
工程(1)~工程(3)は、凹凸構造を表面に有するフィルムの生産性に優れることから、図2に示す製造装置を用いることが好ましい。
図2は、凹凸構造を表面に有するフィルムの製造装置を示す模式的断面図である。以下、図2を用いて凹凸構造を表面に有するフィルムの製造方法を説明するが、凹凸構造を表面に有するフィルムの製造方法は、図2に限定されるものではない。
【0120】
図2に示す製造装置用いた凹凸構造を表面に有するフィルムの製造方法は、以下の通りである。
表面に凹凸構造の反転構造を設けたロール状の金型20と、ロール状の金型20の回転に同期してロール状の金型20の表面に沿って移動する帯状の基材42との間に、タンク22から硬化性組成物38を供給する。ロール状の金型20と、空気圧シリンダ24によってニップ圧が調整されたニップロール26との間で、基材42と硬化性組成物38とをニップし、硬化性組成物38を、基材42とロール状の金型20との間に均一に行き渡らせると同時に、ロール状の金型20の凹部内に充填する。ロール状の金型20の外側に設置された活性エネルギー線照射装置28から、基材42を通して硬化性樹脂組成物38に活性エネルギー線を照射し、硬化性樹脂組成物38を硬化させることによって、ロール状の金型20の表面の凹凸構造が転写された硬化樹脂層44を形成する。
剥離ロール30により、表面に硬化樹脂層44が形成された基材42をロール状の金型20から剥離することによって、凹凸構造を表面に有するフィルム40が得られる。
【0121】
活性エネルギー線照射装置としては、例えば、ケミカルランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、無電極紫外線ランプ、可視光ハロゲンランプ、キセノンランプ、紫外線LED等が挙げられる。これらの活性エネルギー線照射装置の中でも、発熱を抑制することができることから、無電極紫外線ランプ、紫外線LEDが好ましい。
【0122】
光照射エネルギー量は、100mJ/cm~10000mJ/cmが好ましく、200mJ/cm~5000mJ/cmがより好ましい。光照射エネルギー量が100mJ/cm以上であると、硬化性組成物の硬化性に優れる。また、光照射エネルギー量が10000mJ/cm以下であると、硬化物の着色を抑制することができる。
【0123】
(フィルム)
本発明のフィルムの製造方法により、例えば、図3に示す凹凸構造を表面に有するフィルムが得られる。以下、図3を用いて本発明のフィルムの製造方法により得られる凹凸構造を表面に有するフィルムを説明するが、本発明のフィルムの製造方法により得られる凹凸構造を表面に有するフィルムは、図3に限定されるものではない。
【0124】
図3は、凹凸構造を表面に有するフィルムの一例を示す模式的断面図である。図3に示す凹凸構造を表面に有するフィルム40は、基材42上に硬化樹脂層44を有し、硬化樹脂層44は、複数の凸部46を有する。
【0125】
凹凸構造としては、例えば、プリズム構造、マイクロレンズ構造、モスアイ構造等が挙げられる。これらの凹凸構造の中でも、本発明の効果をより必要とすることから、モスアイ構造が好ましい。
【0126】
凸部の形状としては、例えば、略円錐形状、角錐形状、釣鐘形状、円柱形状等が挙げられる。これらの凸部の形状の中でも、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れることから、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状等のように、高さ方向と直交する方向の凸部断面積が最頂部から深さ方向に連続的に増加する形状が好ましく、円錐形状、角錐形状、釣鐘形状がより好ましい。
凸部は、微細な複数の凸部が合一して1つの凸部となったものであってもよい。
【0127】
隣接する凸部間の平均間隔は、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れることから、可視光線の波長以下、即ち、400nm以下が好ましく、380nm以下がより好ましい。
【0128】
隣接する凸部間の平均間隔は、20nm~300nmが好ましく、80nm~200nmがより好ましい。隣接する凸部間の平均間隔が20nm以上であると、細孔を転写して凸部を形成する場合に凸部を形成しやすい。また、隣接する凸部間の平均間隔が300nm以下であると、細孔間隔を大きくするための電圧を抑制することができ、陽極酸化ポーラスアルミナを工業的に製造しやすい。
【0129】
本明細書において、隣接する凸部間の平均間隔は、電子顕微鏡観察を用いて、隣接する凸部間の間隔(凸部の中心から隣接する凸部の中心までの距離)を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0130】
凸部の平均高さは、60nm~400nmが好ましく、90nm~350nmがより好ましい。凸部の平均高さが60nm以上であると、最低反射率や特定波長の反射率の上昇を抑制することができ、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れる。また、凸部の平均高さが400nm以下であると、細孔を形成しやすく、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの耐擦傷性に優れる。
【0131】
本明細書において、凸部の平均高さは、電子顕微鏡観察を用いて、凸部の最頂部と凸部間に存在する凹部の最底部との間の垂直距離を無作為に10点測定し、これらの値を平均した値とする。
【0132】
凸部のアスペクト比(凸部の平均高さ/隣接する凸部間の平均間隔)は、0.8~5.0が好ましく、1.2~4.0がより好ましく、1.5~3.0が更に好ましい。凸部のアスペクト比が0.8以上であると、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの反射防止性能に優れる。また、凸部のアスペクト比が5.0以下であると、細孔を形成しやすく、得られる凹凸構造を表面に有するフィルムの耐擦傷性に優れる。
【0133】
凹凸構造を表面に有するフィルムの表面に撥水性を付与する場合、凹凸構造と水との接触角は、水汚れが付着しにくく、着氷を抑制することができることから、90°以上が好ましく、110°以上がより好ましく、120°以上が更に好ましい。
【0134】
凹凸構造を表面に有するフィルムの表面に親水性を付与する場合、凹凸構造と水との接触角は、水洗いができ、油汚れが付着しにくいことから、25°以下が好ましく、23°以下がより好ましく、21°以上が更に好ましい。また、凹凸構造を表面に有するフィルムの表面に親水性を付与する場合、凹凸構造と水との接触角は、凹凸構造の変形や反射率の上昇を抑制することができることから、3°以上が好ましい。
【0135】
(用途)
凹凸構造を表面に有するフィルムの用途としては、例えば、反射防止物品、防曇性物品、防汚性物品、撥水性物品、より具体的には、ディスプレー用反射防止、時計文字板、タッチパネル部材、汚れ吸着部材、調湿部材、抗菌部材、サニタリー部材、自動車メーターカバー、自動車ミラー、自動車窓、有機または無機エレクトロルミネッセンスの光取り出し効率向上部材、太陽電池部材等が挙げられる。
【実施例
【0136】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0137】
(原料)
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A-1):TDP-2(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒2、n≒3)
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A-2):TDP-8(商品名、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒8、n≒3)
溶媒(B-1):1-プロパノール
溶媒(B-2):エチレングリコール
溶媒(B-3):イソプロパノール
溶媒(B-4):ジエチレングリコールモノメチルエーテル
溶媒(B-5):N-メチル-2-ピロリドン
溶媒(B-6):アセトン
溶媒(B-7):水
【0138】
(溶解性試験)
実施例・比較例で得られた金型離型処理溶液を目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。
A:無色透明であった。
B:僅かに白濁したが、沈殿物は確認されなかった。
C:白濁し、沈殿物が確認された。
【0139】
(指紋汚れ除去性試験)
製造例で得られた金型に指紋を付着させ、実施例・比較例で得られた金型離形処理溶液に指紋を付着させた金型を23℃で30分間浸漬し、その後、金型を取り出して23℃で24時間乾燥させた。浸漬前後の指紋汚れの状態を目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。
A:指紋汚れがほぼ完全に除去された。
B:指紋汚れの多くが除去された。
C:指紋汚れがほとんど除去されなかった。
【0140】
(金型との濡れ性試験)
製造例で得られた金型表面に、実施例・比較例で得られた金型離形処理溶液10μlシリンジで滴下し、下記評価基準にて評価した。
A:濡れ広がった。
B:僅かに濡れ広がった。
C:ほとんど濡れ広がらなかった。
【0141】
(塗布均一性試験)
製造例で得られた金型表面に、実施例・比較例で得られた金型離形処理溶液をスポイトでかけ流し、金型を45°に傾け、23℃で24時間乾燥させた。乾燥後の金型離型処理溶液の乾燥ムラを目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。
A:均一に塗布され、乾燥ムラはなかった。
B:僅かに乾燥ムラがあった。
C:多くの箇所で乾燥ムラがあった。
【0142】
(カビの発生有無)
実施例・比較例で得られた金型離型処理溶液を23℃で10日間保管した後、容器壁面を目視にて観察し、下記評価基準にて評価した。
○:カビの発生は認められない。
×:カビの発生が確認された。
【0143】
[製造例]金型の製造
純度99.99%の直径70mmの円盤状のアルミニウム板を羽布研磨処理した後、過塩素酸/エタノール混合溶液中(体積比=1/4)で電解研磨し、鏡面化した。
得られたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30分間陽極酸化を行った。その後、アルミニウム基材を、6質量%リン酸/1.8質量%クロム酸混合水溶液に6時間浸漬して、酸化皮膜を除去した。
得られたアルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った。
得られた酸化皮膜が形成されたアルミニウム基材を、32℃の5質量%リン酸水溶液に8分間浸漬して、細孔径拡大処理を行った(孔径拡大処理工程)。その後、アルミニウム基材について、0.3Mシュウ酸水溶液中で、直流40V、温度16℃の条件で30秒間陽極酸化を行った(酸化皮膜成長工程)。この孔径拡大処理工程と酸化皮膜成長工程とを合計4回繰り返し、最後に孔径拡大処理工程を行って、設計上では平均間隔100nm、深さ200nmの略円錐形状の細孔を有する陽極酸化アルミナが表面に形成された円盤状の金型を得た。
【0144】
[実施例1]
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A-1)(TDP-2(商品名)、日光ケミカルズ(株)製、R:炭素数12~15のアルキル基、R:エチレン基、m≒2、n≒3))0.5質量部を、溶媒(B-1)(1-プロパノール)75質量部と溶媒(B-7)(水)25質量部との混合溶媒に溶解させ、金型処理溶液を得た。
得られた金型処理溶液の評価結果を、表1に示す。
【0145】
[実施例2~6]
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)や溶媒(B)の種類や量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、金型処理溶液を得た。
得られた金型処理溶液の評価結果を、表1に示す。
【0146】
[比較例1~4]
(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)や溶媒(B)の種類や量を表1のように変更した以外は、実施例1と同様に操作を行い、金型処理溶液を得た。
得られた金型処理溶液の評価結果を、表1に示す。
尚、比較例1で得られた金型処理溶液は、(ポリ)オキシアルキレンアルキルリン酸化合物(A)の溶解が十分でなく、指紋汚れ除去性試験、金型との濡れ性試験、塗布均一性試験を断念した。
【0147】
【表1】
【0148】
表1から分かるように、実施例1~6で得られた金型処理溶液は、溶解性、指紋汚れ除去性、金型との濡れ性、塗布均一性、カビ発生の抑制効果に優れた。そのため、この金型処理溶液を用いることで、硬化物と金型との離型性に優れ、凹凸構造を表面に有するフィルムの品質安定性に優れることが期待される。
一方、比較例1~4で得られた金型処理溶液は、溶解性、指紋汚れ除去性、金型との濡れ性、塗布均一性の少なくとも1性能に劣った。
【符号の説明】
【0149】
10 アルミニウム基材
12 細孔
14 酸化皮膜
16 細孔発生点
18 陽極酸化ポーラスアルミナを有する金型
20 ロール状の金型
22 タンク
24 空気圧シリンダ
26 ニップロール
28 活性エネルギー線照射装置
30 剥離ロール
38 硬化性組成物
40 凹凸構造を表面に有するフィルム
42 基材
44 硬化樹脂層
46 凸部
図1
図2
図3