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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】立体造形装置および立体造形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/165 20170101AFI20220614BHJP
   B22F 10/14 20210101ALI20220614BHJP
   B22F 10/85 20210101ALI20220614BHJP
   B22F 12/53 20210101ALI20220614BHJP
   B22F 12/63 20210101ALI20220614BHJP
   B29C 64/209 20170101ALI20220614BHJP
   B29C 64/218 20170101ALI20220614BHJP
   B29C 64/393 20170101ALI20220614BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220614BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20220614BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20220614BHJP
【FI】
B29C64/165
B22F10/14
B22F10/85
B22F12/53
B22F12/63
B29C64/209
B29C64/218
B29C64/393
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018045186
(22)【出願日】2018-03-13
(65)【公開番号】P2019155714
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】朴 素暎
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 隆文
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-007572(JP,A)
【文献】特開2009-040032(JP,A)
【文献】特開2016-137697(JP,A)
【文献】特開2005-088432(JP,A)
【文献】特開2004-262243(JP,A)
【文献】国際公開第2017/011007(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/017136(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0305142(US,A1)
【文献】特開2018-001686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/00-64/40
B22F 1/00-12/90
B33Y 10/00,30/00,50/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体を供給する供給部と、
供給された粉体の表面を平坦化させ、粉体層を形成する平坦化部と、
前記粉体層の表面に、前記粉体を固化させる第1造形液と、前記粉体を固化させない第2造形液と、を吐出する吐出部と、
前記第1造形液を吐出する複数の領域のうち少なくとも一部と隣接する領域に前記第2造形液を吐出する吐出パターンに従い、前記第1造形液及び前記第2造形液を前記吐出部に吐出させる制御部と、を備え、
前記吐出パターンは、
前記第1造形液を第1主走査で吐出し、前記第2造形液を前記第1主走査の後の第2主走査で吐出し、前記第1造形液を前記第2造形液より少ない液滴量で吐出するパターン、及び、
前記第2造形液を第1主走査で吐出し、前記第1造形液を前記第1主走査の後の第2主走査で吐出し、前記第2造形液を前記第1造形液より少ない液滴量で吐出するパターン、の少なくとも一方を含む、
体造形装置。
【請求項2】
前記吐出パターンは、前記吐出部の1回の主走査で前記第1造形液と前記第2造形液とを吐出するパターンをさらに含む
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項3】
前記吐出パターンは、前記第1造形液を分散して吐出させるパターン、及び、前記吐出部の解像度より高い解像度となるように前記第1造形液を吐出させるパターン、の少なくとも一方をさらに含む
請求項2に記載の立体造形装置。
【請求項4】
前記吐出パターンは、前記吐出部の複数の主走査で、同じ領域に重ねて前記第1造形液及び前記第2造形液を吐出し、重ねて吐出する前記第1造形液及び前記第2造形液の液滴量を重ねて吐出しない場合より少なくするパターンをさらに含む
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項5】
前記第1造形液と前記第2造形液とは、非相溶性を有する、
請求項1に記載の立体造形装置。
【請求項6】
粉体を供給する供給部と、供給された粉体の表面を平坦化させ、粉体層を形成する平坦化部と、前記粉体層の表面に、前記粉体を固化させる第1造形液と、前記粉体を固化させない第2造形液と、を吐出する吐出部と、を備えた立体造形装置で実行する立体造形方法であって、
前記第1造形液を吐出する複数の領域のうち少なくとも一部と隣接する領域に前記第2造形液を吐出する吐出パターンに従い、前記第1造形液及び前記第2造形液を前記吐出部に吐出させる制御ステップ、を含み、
前記吐出パターンは、
前記第1造形液を第1主走査で吐出し、前記第2造形液を前記第1主走査の後の第2主走査で吐出し、前記第1造形液を前記第2造形液より少ない液滴量で吐出するパターン、及び、
前記第2造形液を第1主走査で吐出し、前記第1造形液を前記第1主走査の後の第2主走査で吐出し、前記第2造形液を前記第1造形液より少ない液滴量で吐出するパターン、の少なくとも一方を含む、
体造形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立体造形装置および立体造形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
粉体積層による三次元造形方式(以下、粉体積層造形方式という)は、レーザ焼結方式(LS)、電子ビーム焼結方式(EBM)、及び、バインダージェット方式に大別される。一般にバインダージェット方式は、粉体を用い、インクジェットヘッドからバインダーインクを吐出し、粉体を凝固させることで造形をする技術である。
【0003】
これらの粉体を薄膜に敷いた上に、粉体材料を結合(固化)させるためのバインダーインクと、接合させない(非固化)インクをインクジェットヘッドから吐出することで、結合させる領域と結合させない領域の境界において、結合させない領域の粉体を取り除きやすくし、造形物の精度を確保する技術が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、造形物の精度が低下する場合があった。例えば、精度向上のためにマスクパターンに従い吐出する場合、及び、搭載ヘッドの解像度より解像度を上げて吐出するため、複数のパス・インターレースで液を吐出する場合は、固化液と非固化液が離れた位置に吐出される。このため、各液がにじんで広がり、精度低下に繋がる場合があった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、粉体積層造形方式により造形する造形物の精度を向上させることができる立体造形装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、粉体を供給する供給部と、供給された粉体の表面を平坦化させ、粉体層を形成する平坦化部と、前記粉体層の表面に、前記粉体を固化させる第1造形液と、前記粉体を固化させない第2造形液と、を吐出する吐出部と、前記第1造形液を吐出する複数の領域のうち少なくとも一部と隣接する領域に前記第2造形液を吐出する吐出パターンに従い、前記第1造形液及び前記第2造形液を前記吐出部に吐出させる制御部と、を備え、前記吐出パターンは、前記第1造形液を第1主走査で吐出し、前記第2造形液を前記第1主走査の後の第2主走査で吐出し、前記第1造形液を前記第2造形液より少ない液滴量で吐出するパターン、及び、前記第2造形液を第1主走査で吐出し、前記第1造形液を前記第1主走査の後の第2主走査で吐出し、前記第2造形液を前記第1造形液より少ない液滴量で吐出するパターン、の少なくとも一方を含む
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、粉体積層造形方式により造形する造形物の精度を向上させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本実施形態における立体造形装置の概略平面図である。
図2図2は、本実施形態における造形部の概略側面図である。
図3図3は、本実施形態における造形部の、より詳細な概略側面図である。
図4図4は、本実施形態における制御部のブロック図である。
図5図5は、本実施形態の造形の流れを説明する説明図である。
図6図6は、固化液と非固化液とを吐出する造形の流れを示した図である。
図7図7は、一般的に用いられている吐出パターンの例を示した図である。
図8図8は、一般的な吐出パターンの吐出位置の遷移例を示した図である。
図9図9は、本実施形態で用いる吐出パターンの例を示した図である。
図10図10は、本実施形態の吐出パターンの吐出位置の遷移例を示した図である。
図11図11は、変形例1の吐出パターンを示す図である。
図12図12は、変形例2の吐出パターンを示す図である。
図13図13は、変形例3の吐出パターンを示す図である。
図14図14は、変形例4の吐出パターンを示す図である。
図15図15は、変形例5の吐出パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる立体造形装置および立体造形方法の一実施形態を詳細に説明する。
【0010】
本実施形態の立体造形装置は、同一のキャリッジスキャン内で、固化液と非固化液とが少なくとも一部の領域で隣接して吐出可能な吐出パターンを用いる。このため、固化液と非固化液とがそれぞれにじんで広がることを抑制し、造形物の固化部と非固化部との境界を明瞭にすることができる。即ち、造形部(固化部)と非造形部(非固化部)との境界の精度を向上させることができる。
【0011】
本実施形態の立体造形装置は、粉体造形装置(粉末造形装置ともいう。)である。図1に示すように、立体造形装置は造形部1と、造形ユニット5を備える。造形部1は、粉体(粉末)が結合された層状造形物が形成される。造形ユニット5は、造形部1の層状に敷き詰められた粉体層に造形液10を吐出して立体造形物を造形する。
【0012】
まず、造形部1の詳細について図1図2図3を用いて説明する。ここで、X方向とは図1における左右方向であり、Y方向は図1における上下方向である。Z方向とは、図2における上下方向(図1における表裏方向)である。図2は造形部1をX方向から見た断面図、図3は造形部1の要部をX方向から見た断面図である。
【0013】
図1図2に示すように、造形部1は、粉体槽11を有する。粉体槽11は、供給槽21と、造形槽22と、余剰粉体受け槽29と、ローラ部材12と、粉体除去板13を備える。
【0014】
供給槽21は、供給部の一例であり、造形槽22に供給する粉体20を保持する。供給槽21の底部は供給ステージ23として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。
【0015】
造形槽22は、層状造形物30が積層されて立体造形物が造形される。造形槽22の底部は造形ステージ24として鉛直方向(高さ方向)に昇降自在となっている。造形ステージ24上に層状造形物30が積層された立体造形物が造形される。
【0016】
余剰粉体受け槽29は、粉体層31を形成するときに、後述するローラ部材12によって移送供給される粉体20のうち、粉体層31を形成しないで落下する余剰の粉体20を溜める。余剰粉体受け槽29の底面は、粉体20を吸引する機構が備えられた構成や、余剰粉体受け槽29が簡単に取り外せるような構成となっている。
【0017】
供給ステージ23は、モータ27(図4参照)によって矢印Z方向(高さ方向)に昇降され、造形ステージ24は、モータ28(図4参照)によって矢印Z方向に昇降される。
【0018】
ローラ部材12は、平坦化部の一例であり、粉体層を形成する。より具体的には、ローラ部材12は、供給槽21の供給ステージ23上に供給された粉体20を造形槽22に移送し、粉体20を敷いて平坦化して粉体層31を形成する。
【0019】
ローラ部材12は、造形ステージ24のステージ面(粉体20が積載される面)に沿って矢印Y方向に、ステージ面に対して相対的に往復移動可能に配置され、往復移動機構によって移動される。また、ローラ部材12は、モータ26(図4参照)によって図3の矢印A方向に回転駆動される(即ち、ローラ部材12は回転部材の一例である)。
【0020】
次に、造形ユニット5の構成について説明する。図2に示すように、造形ユニット5は、液体吐出ユニット50を備えている。吐出部の一例である液体吐出ユニット50は、造形ステージ24上の粉体層31に造形液10を吐出する。
【0021】
液体吐出ユニット50は、キャリッジ51と、キャリッジ51に搭載された2つ(1又は3つ以上でもよい。)の液体吐出ヘッド(以下、単に「ヘッド」という。)52a、52bを備えている。
【0022】
キャリッジ51は、ガイド部材54及び55に移動可能に保持されている。ガイド部材54及び55は、両側の側板70に昇降可能に保持されている。
【0023】
このキャリッジ51は、後述するX方向走査機構550を構成するX方向走査モータによってプーリ及びベルトを介して主走査方向である矢印X方向(以下、単に「X方向」という。他のY、Zについても同様とする。)に往復移動される。
【0024】
2つのヘッド52a、52b(以下、区別しないときは「ヘッド52」という。)は、造形液10を吐出する複数のノズルを配列したノズル列がそれぞれ2列配置されている。一方のヘッド52aの2つのノズル列は、シアン造形液及びマゼンタ造形液を吐出する。他方のヘッド52bの2つのノズル列は、イエロー造形液及びブラック造形液を吐出する。なお、ヘッド構成はこれに限るものではない。
【0025】
これらのシアン造形液、マゼンタ造形液、イエロー造形液、ブラック造形液の各々を収容した複数のタンク60がタンク装着部56に装着され、供給チューブなどを介してヘッド52a、52bに供給される。
【0026】
また、液体吐出ユニット50は、ガイド部材54、55とともに矢印Z方向に昇降可能に配置され、後述するZ方向昇降機構551によってZ方向に昇降される。
【0027】
また図1に示すように、造形ユニット5は、メンテナンス機構61を備える。メンテナンス機構61は、X方向の一方側に備えられ、液体吐出ユニット50のヘッド52の維持回復を行う。
【0028】
メンテナンス機構61は、主にキャップ62とワイパ63で構成される。キャップ62は、ヘッド52のノズル面(ノズルが形成された面)に密着し、ノズルから造形液10を吸引する。ノズルに詰まった粉体20の排出や高粘度化した造形液10を排出するためである。
【0029】
ワイパ63は、ノズルのメニスカス形成(ノズル内は負圧状態である)のため、ノズル面をワイピング(払拭)する。また、メンテナンス機構61は、造形液10の吐出が行われない場合に、ヘッド52のノズル面をキャップ62で覆い、粉体20がノズルに混入することや造形液10が乾燥することを防止する。
【0030】
さらに、造形ユニット5は、スライダ部72を有する。スライダ部72は、ベース部材7上に配置されたガイド部材71に移動可能に保持されており、造形ユニット5全体がX方向と直交するY方向(副走査方向)に往復移動可能である。
【0031】
この造形ユニット5は、後述するY方向走査機構552によって全体がY方向に往復移動される。
【0032】
ここで、造形部1の詳細について説明する。
【0033】
図2図3に示すように、粉体槽11は、箱型形状をなし、供給槽21、造形槽22、及び、余剰粉体受け槽29の、3つの上面が開放された槽を備えている。供給槽21内部には供給ステージ23が、造形槽22内部には造形ステージ24がそれぞれ昇降可能に配置される。
【0034】
供給ステージ23の側面は供給槽21の内側面に接するように配置されている。造形ステージ24の側面は造形槽22の内側面に接するように配置されている。これらの供給ステージ23及び造形ステージ24の上面は水平に保たれている。
【0035】
造形槽22の隣には余剰粉体受け槽29が設けられている。
【0036】
余剰粉体受け槽29には、粉体層31を形成するときにローラ部材12によって移送供給される粉体20のうちの余剰の粉体20が落下する。余剰粉体受け槽29に落下した余剰の粉体20は供給槽21に粉体20を供給する粉体供給装置554に戻される。
【0037】
供給槽21上には粉体供給装置554が配置される。粉体供給装置554は、造形の初期動作時や供給槽21の粉体量が減少した場合に、粉体供給装置554を構成するタンク内の粉体を供給槽21に供給する。粉体供給のための粉体搬送方法としては、スクリューを利用したスクリューコンベア方式や、エアーを利用した空気輸送方式などが挙げられる。
【0038】
粉体供給装置554がY方向に移動するローラ部材12と接触しないように、粉体供給装置554をY方向に移動可能な構成としても良いし、Z方向に退避する構成としても良く、供給槽21に粉体20を供給できる構成であればこれらの構成に限らない。
【0039】
また、ローラ部材12は、造形槽22及び供給槽21の内寸(即ち、粉体が供される部分又は仕込まれている部分の幅)よりも長い棒状部材であり、往復移動機構によってステージ面に沿ってY方向(副走査方向)に往復移動される。
【0040】
このローラ部材12は、モータ26によって図3の矢印A方向に回転しながら、供給槽21の外側から供給槽21及び造形槽22の上方を通過するようにして水平移動する。これにより、粉体20が造形槽22上へと移送供給され、ローラ部材12が造形槽22上を通過しながら粉体層31が形成される。
【0041】
また、図3に示すように、ローラ部材12の周面に接触して、ローラ部材12に付着した粉体20を除去するための粉体除去部材である粉体除去板13が配置されている。粉体除去板13は、ローラ部材12の周面に接触した状態で、ローラ部材12とともに移動する。また、粉体除去板13は、ローラ部材12が平坦化を行うときの回転方向に回転するときにカウンタ方向でも、順方向での配置可能である。
【0042】
本実施形態では、造形部1の粉体槽11が供給槽21と造形槽22と余剰粉体受け槽29との3つの槽を有する構成としているが、供給槽21及び造形槽22のみとしてもよいし、造形槽22のみとして、造形槽22に粉体供給装置554から粉体を供給して、ローラ部材12で平坦化する構成とすることもできる。
【0043】
次に、上記立体造形装置の制御部について図4を参照して説明する。図4は同制御部のブロック図である。
【0044】
図4に示すように、制御部500は、主制御部500Aを備える。主制御部500Aは、CPU501と、ROM502と、RAM503を備える。
【0045】
CPU501は、この立体造形装置全体の制御を司る。ROM502は、CPU501に本実施形態に係わる制御を含む立体造形動作の制御を実行させるためのプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納する。RAM503は、造形データ等を一時格納する。
【0046】
さらに、制御部500は、不揮発性メモリ(NVRAM)504と、ASIC505と、外部I/F506を備える。
【0047】
不揮発性メモリ(NVRAM)504は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持する。
【0048】
ASIC505は、画像データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理する。
【0049】
外部I/F506は、外部の造形データ作成装置600から造形データを受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行う。なお、造形データ作成装置600は、最終形態の造形物を各造形層にスライスした造形データを作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
【0050】
さらに、制御部500は、I/O507と、ヘッド駆動制御部508を備える。
【0051】
I/O507は、各種センサの検知信号を取り込む。ヘッド駆動制御部508は、液体吐出ユニット50の各ヘッド52を駆動制御する。
【0052】
さらに、制御部500は、モータ駆動部510と、モータ駆動部511と、モータ駆動部512を備える。
【0053】
モータ駆動部510は、液体吐出ユニット50のキャリッジ51をX方向(主走査方向)に移動させるX方向走査機構550を構成するモータを駆動する。
【0054】
モータ駆動部511は、液体吐出ユニット50のキャリッジ51をZ方向に移動(昇降)させるZ方向昇降機構551を構成するモータを駆動する。なお、矢印Z方向への昇降は造形ユニット5全体を昇降させる構成とすることもできる。
【0055】
モータ駆動部512は、造形ユニット5をY方向(副走査方向)に移動させるY方向走査機構552を構成するモータを駆動する。
【0056】
さらに、制御部500は、モータ駆動部513と、モータ駆動部514と、モータ駆動部515と、モータ駆動部516を備える。
【0057】
モータ駆動部513は、供給ステージ23を昇降させるモータ27を駆動する。モータ駆動部514は、造形ステージ24を昇降させるモータ28を駆動する。モータ駆動部515は、ローラ部材12を移動させる往復移動機構のモータ553を駆動する。モータ駆動部516は、ローラ部材12を回転駆動するモータ26を駆動する。
【0058】
さらに、制御部500は、供給系駆動部517と、メンテナンス駆動部518を備える。
【0059】
供給系駆動部517は、供給槽21に粉体20を供給する粉体供給装置554を駆動する。メンテナンス駆動部518は、液体吐出ユニット50のメンテナンス機構61を駆動する。
【0060】
さらに、制御部500は、後供給駆動部519を備える。後供給駆動部519は、粉体後供給部80から粉体20の供給を行わせる。
【0061】
さらに、制御部500のI/O507には、温湿度センサ560及び他のセンサからの検知信号が入力される。温湿度センサ560は、装置の環境条件としての温度及び湿度を検出する。
【0062】
さらに、制御部500には、操作パネル522が接続される。操作パネル522は、必要な情報の入力及び表示を行う。
【0063】
なお、造形データ作成装置600と立体造形装置(粉体積層造形装置)601によって造形装置が構成される。
【0064】
次に、造形データ作成装置600が行う造形データ作成の一例について説明する。
【0065】
まず、所望する立体データ(例えばSTLなどのCADデータ)を積層方向(即ちZ方向)で分断して、複数のスライスデータとする。
【0066】
そして、各スライスデータの各X座標と各Y座標に対応した液滴吐出の有無や、液滴の大きさ、液滴の種類、などを決定し、これを造形データとする。
【0067】
なお、上記の造形データの作成方法は一例であり、これに限るものでなく、造形データ作成装置を別体のパーソナルコンピュータで行うこともできるし、所望する立体データのスライスデータへの変換を必須とするものではない。
【0068】
次に、造形の流れについて図5を参照して説明する。図5は造形の流れの説明に供する模式的説明図である。
【0069】
造形槽22の造形ステージ24上に、1層目の層状造形物30が形成されている状態から説明する。
【0070】
まず図5のS101に示すように、1層目の層状造形物30上に次の層状造形物30を形成するときには、供給槽21の供給ステージ23をZ1方向に上昇させ、造形槽22の造形ステージ24をZ2方向に下降させる(ステージ上昇/下降)。
【0071】
このとき、粉体層31表面とローラ部材12の下部との間隔がΔt1となるように造形ステージ24の下降距離を設定する。この間隔Δt1が次に形成する粉体層31の厚さ(即ち、積層ピッチ)に相当する。積層ピッチΔt1は、数10~100μm程度であることが好ましい。
【0072】
次いで、図5のS102に示すように、供給槽21の上面レベルよりも上方に位置する粉体20を、ローラ部材12を順方向(矢印方向)に回転しながらY2方向(造形槽22側)に移動することで、粉体20を造形槽22へと移送供給する(粉体供給)。
【0073】
さらに、図5のS103に示すように、ローラ部材12を造形槽22の造形ステージ24のステージ面と平行に移動させて、造形槽22に粉体20を供給して所定の厚さΔt1となる粉体層31を形成する(平坦化)。
【0074】
平坦化工程により、造形ステージ24の層状造形物30上で所定の積層ピッチΔt1になる粉体層31が形成される。このとき、図5のS103に示すように、粉体層31の形成に使用されなかった余剰の粉体20は余剰粉体受け槽29に落下する。
【0075】
粉体層31を形成後、ローラ部材12は、図5のS104に示すように、Y1方向に移動されて初期位置(原点位置)に戻される(復帰される)。ここで、ローラ部材12は、造形槽22及び供給槽21の上面レベルとの距離を一定に保って移動できるようになっている。一定に保って移動できることで、ローラ部材12で粉体20を造形槽22の上へと搬送させつつ、造形槽22上又は既に形成された層状造形物30の上に均一厚さΔt1の粉体層31を形成できる。
【0076】
その後、図5のS105に示すように、液体吐出ユニット50のヘッド52から造形液10の液滴を吐出して、粉体層31に層状造形物30を積層形成する(造形)。
【0077】
なお、層状造形物30は、例えば、ヘッド52から吐出された造形液10が粉体20と混合されることで、粉体20に含まれる接着剤が溶解し、溶解した接着剤同士が結合して粉体20が結合されることで形成される。
【0078】
このように、ローラ部材12により形成された粉体層31に造形液10を吐出して、粉体層31中の粉体20が所要形状に結合された層状造形物30を形成する工程を、層状造形物形成工程と呼ぶ。なお所要形状とは、最終的に立体造形物の一部を形成する形状のことである。
【0079】
次いで、上述したS101~S105の各工程を繰り返す。このとき、新たな層状造形物30とその下層の層状造形物30とは一体化して立体造形物の一部を構成する。上記工程を必要な回数繰り返すことによって、立体造形物(三次元形状造形物とも言う)を形成する。
【0080】
次に、固化液(第1造形液)と非固化液(第2造形液)とを吐出する場合の造形の流れを説明する。図6は、固化液と非固化液とを吐出する場合の造形の流れの一例を示した図である。
【0081】
図6の左上に示すように、例えばキャリッジ51内のヘッド52a及びヘッド52bは、それぞれ、粉体を固化させる固化液611、及び、非固化液612を吐出する。造形物として形成される(固化部)領域には固化液611が吐出され、固化部の輪郭部には非固化液612が吐出される。
【0082】
1スキャンの吐出が完了すると、図6の右上に示すように、造形ステージ24が下降する。その後、図6の中央左に示すように、次の粉体層が形成される。図6の中央右に示すように、形成された粉体層に、さらに固化液および非固化液が吐出される。
【0083】
すべての層状造形物30が積層された場合、図6の左下に示すように、造形ステージ24が上昇する。非固化液が吐出された領域の粉体が取り除かれ、図6の右下に示すように、最終的な立体造形物が形成される。
【0084】
以下、固化液と非固化液の吐出に用いられる吐出パターンの具体例について説明する。
【0085】
制御部500は、以下に示すような吐出パターンに従って造形液を吐出するように、上記各部を制御する。本実施形態では、制御部500は、固化液を吐出する複数の領域のうち少なくとも一部と隣接する領域に非固化液を吐出する吐出パターンに従い、固化液及び非固化液を吐出するように液体吐出ユニット50を制御する。
【0086】
図7は、一般的に用いられている吐出パターンの例を示した図である。図8は、一般的な吐出パターンを用いた場合の吐出位置の遷移例を示した図である。図9は、本実施形態で用いる吐出パターンの例を示した図である。図10は、本実施形態の吐出パターンを用いた場合の吐出位置の遷移例を示した図である。
【0087】
なお吐出パターン内の数字は、吐出の順序を示す。1回のキャリッジ51の主走査方向(X方向)への移動(スキャン)で、同じ数字が示す領域に造形液が吐出される。以下では、主走査方向をキャリッジ移動方向という場合がある。また、キャリッジ51を副走査方向(Y方向)に移動させることをキャリッジの改行という場合がある。
【0088】
図7は、造形物の精度向上のために用いられるマスクパターンの例である。マスクパターンは、固化液を分散して吐出させるパターンを含む。一定の吐出領域に固化液を分散させて吐出することにより、X方向及びY方向への液のにじみ広がりが抑えられ、造形物の精度向上につながる。
【0089】
図7のマスクパターンは、所定の大きさの領域を4分割した領域を単位として造形液を吐出するパターンを示す。1つの単位領域の高さ701はノズルピッチに相当する。領域702は、固化液を吐出する領域(固化領域)であり、領域702の周囲の領域は、非固化液を吐出する領域(非固化領域)である。
【0090】
図7のマスクパターンを用いる場合、図8に示すように、分割した4つの領域のうち、左上の領域に1スキャン目で吐出し、右下の領域に2スキャン目で吐出し、右上の領域に3スキャン目で吐出し、左下の領域に4スキャン目で吐出するように、造形液の吐出が制御される。
【0091】
図7のようなマスクパターンを用いると、各スキャンで、固化液と非固化液を滴下する位置が離れているため(例えば図8の領域801と領域802)、固化液および非固化液がそれぞれにじんで広がり、造形物の精度低下に繋がる。
【0092】
図9は、このようなにじみ広がりを抑制するための吐出パターンの例である。図9に示すように、本実施形態の吐出パターンは、固化液と非固化液が隣接する部分(領域911~914)で、固化液と非固化液の両方が同一のスキャン内で吐出されるように吐出順序を定めたパターンを含む。図9のマスクパターンを用いる場合、図10に示すように、制御部500は、固化液と非固化液とが隣接する部分に対して、同一のスキャンで造形液を吐出するように制御できる。
【0093】
このように、本実施形態の吐出パターンは、同一スキャン内で固化液と非固化液が少なくとも一部隣接するような吐出パターンを含む。これにより、固化液および非固化液がそれぞれにじんで広がることを防止し、造形物の精度を向上させることができる。また、同一のスキャンで固化液および非固化液をともに吐出するので、生産性を向上させることができる。
【0094】
なお、固化液および非固化液は、非相溶性を有していてもよい。非相溶性を有することで、余剰粉体の除去が容易になる。従って、造形物の精度をさらに向上可能となる。
【0095】
吐出パターンは、図9に示すパターンに限られるものではない。以下、吐出パターンの変形例について図11図15を用いて説明する。なお各図では、矢印の右側に、各変形例の吐出パターンを示し、矢印の左側に、変形例を適用しない場合の吐出パターンの例を示す。
【0096】
(変形例1)
図11は、変形例1の吐出パターンを示す。変形例1の吐出パターンは、非固化液の吐出領域を、固化液と隣接する部分のみとするパターンの例である。このような吐出パターンを用いることにより、非固化液の消費量を低下可能となる。また、造形液が滴下されていない粉体の量が増加するため、粉体のリサイクル性を向上させることができる。
【0097】
(変形例2)
図12は、変形例2の吐出パターンを示す。変形例2の吐出パターンは、固化液と非固化液が隣接する部分(領域1201)で、非固化液を吐出する順番だけではなく、固化液を吐出する順番も変更することにより、固化液と非固化液とが同一スキャン内で吐出されるように配置したパターンの例である。
【0098】
このようなパターンを用いれば、造形物の境界面(固化領域と非固化領域の境界面)が、X方向およびY方向に直線状でない場合であっても、固化液と非固化液を同一スキャン内で隣接して吐出することができる。従って、曲線部などを有する造形物の精度を向上させることができる。
【0099】
(変形例3)
図13は、変形例3の吐出パターンを示す。変形例3の吐出パターンは、固化液と非固化液が隣接する部分の一部(領域1301)で、固化液を吐出する1スキャン前に、非固化液を吐出するパターンを含む。なお、1スキャン前に吐出する非固化液は、固化液より少ない液滴量としてもよい。図13の例では、領域1311で、固化液より液適量が少ない非固化液が吐出される。液滴量を少なくすることで、先に吐出する非固化液がにじんで広がり、造形物の精度が低下することを防止可能となる。
【0100】
(変形例4)
図14は、変形例4の吐出パターンを示す。変形例4の吐出パターンは、キャリッジ51が改行する位置1401付近の領域1402では、固化液と非固化液とも液滴量は少なくし、複数回のスキャンにより重ねて吐出するパターンを含む。これにより、キャリッジが改行する直前に吐出した液滴がにじんで広がり、精度低下に繋がることを防止することができる。
【0101】
(変形例5)
図15は、変形例5の吐出パターンを示す。変形例5の吐出パターンは、ヘッド解像度の倍の解像度での吐出(2パス、1/2インターレース吐出)するパターンの例である。このように、吐出パターンは、ヘッド解像度より高い解像度となるように造形液を吐出させるパターンを含んでもよい。
【0102】
変形例5の吐出パターンは、固化液と非固化液の境界部の一部(領域1501、1502)で、固化液を非固化液より1スキャン前に吐出したり、非固化液を固化液より1スキャン前に吐出したりするパターンを含む。
【0103】
変形例5の吐出パターンでは、キャリッジ移動方向(X方向)に隣接する固化液と非固化液は、同一スキャン内で吐出される。キャリッジを改行する方向(Y方向)に隣接する固化液と非固化液は、互いに前後する2つのスキャン内で吐出される。
【0104】
例えば領域1501では、固化液は、非固化液より前のスキャン時に吐出される。この場合、同一スキャン内にて非固化液と隣接していないので、にじみ防止のため、固化液の液滴量を少なくしてもよい。例えば領域1511で、非固化液より液適量が少ない固化液が吐出される。
【0105】
また、例えば領域1502では、固化液は、非固化液の次のスキャン時に吐出される。この場合、同一スキャン内にて固化液と隣接していないので、液にじみ防止のため、非固化液の液滴量を少なくしてもよい。例えば領域1512で、固化液より液適量が少ない非固化液が吐出される。
【0106】
1スキャン前に吐出する液滴は少ない液滴量にすることで、先に吐出する造形液がにじんで広がり、造形物の精度が低下することを防止することができる。
【0107】
本実施形態にかかる立体造形装置で実行されるプログラムは、ROM502等に予め組み込まれて提供される。
【0108】
本実施形態にかかる立体造形装置で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disk Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータプログラムプロダクトとして提供されるように構成してもよい。
【0109】
さらに、本実施形態にかかる立体造形装置で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、本実施形態にかかる立体造形装置で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0110】
本実施形態にかかる立体造形装置で実行されるプログラムは、コンピュータを上述した立体造形装置の各部として機能させうる。このコンピュータは、CPU501がコンピュータ読取可能な記憶媒体からプログラムを主記憶装置上に読み出して実行することができる。
【符号の説明】
【0111】
1 造形部
5 造形ユニット
12 ローラ部材
13 粉体除去板
20 粉体
21 供給槽
22 造形槽
29 余剰粉体受け槽
30 層状造形物
31 粉体層
52 液体吐出ヘッド
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】
【文献】特開2009-006538号公報
【文献】特開2017-075361号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15