(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】液体供給方法及びインク供給方法及び画像記録方法及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/175 20060101AFI20220614BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20220614BHJP
B41J 2/14 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B41J2/175
B41J2/18
B41J2/14 605
B41J2/14 603
(21)【出願番号】P 2018045232
(22)【出願日】2018-03-13
【審査請求日】2020-12-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】山下 宏之
(72)【発明者】
【氏名】戸田 直博
(72)【発明者】
【氏名】中村 琢磨
(72)【発明者】
【氏名】井上 裕貴依
(72)【発明者】
【氏名】濱口 昌也
【審査官】中村 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-040725(JP,A)
【文献】特開2013-000910(JP,A)
【文献】特開2013-199040(JP,A)
【文献】特開2015-168139(JP,A)
【文献】特開2009-241445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を吐出する複数のノズルが直線状に配置された複数のノズル列と、前記ノズル列に前記液体を供給し前記ノズル列にそれぞれ対応して延在する複数の共通液室とを備え、前記複数のノズル列及び前記複数の共通液室がそれぞれ平行となるように配置された液体吐出ヘッドに前記液体を供給する液体供給方法であって、
前記複数の共通液室に対して同時に前記液体を供給し、前記複数の共通液室のうちの少なくとも一つは他の共通液室とは流れの方向が異なるように前記液体を供給
し、
前記複数の共通液室は、前記液体が供給される供給口と前記液体を排出する排出口とを有し、
前記供給口に供給される前記液体が収容される供給液体収容部と、前記排出口から排出された液体が収容される排出液体収容部とを備え、
前記供給液体収容部から前記排出液体収容部へと前記液体を流す流路と前記排出液体収容部から前記供給液体収容部へと前記液体を流す流路とを切り替える切替手段を有し、前記切替手段を任意に切り替える液体供給方法。
【請求項2】
液体を吐出する複数のノズルが直線状に配置されたノズル列と、前記ノズル列に前記液体を供給し前記ノズル列に対応して延在する共通液室とを備えた液体吐出ヘッドを複数用い、前記複数のノズル列及び前記複数の共通液室がそれぞれ平行となるように配置された前記複数の液体吐出ヘッドの前記複数の共通液室に前記液体を供給する液体供給方法であって、
前記複数の共通液室に対して同時に前記液体を供給し、前記複数の共通液室のうちの少なくとも一つは他の共通液室とは流れの方向が異なるように前記液体を供給
し、
前記複数の共通液室は、前記液体が供給される供給口と前記液体を排出する排出口とを有し、
前記供給口に供給される前記液体が収容される供給液体収容部と、前記排出口から排出された液体が収容される排出液体収容部とを備え、
前記供給液体収容部から前記排出液体収容部へと前記液体を流す流路と前記排出液体収容部から前記供給液体収容部へと前記液体を流す流路とを切り替える切替手段を有し、前記切替手段を任意に切り替える液体供給方法。
【請求項3】
請求項1または2記載の液体供給方法において、
前記
切替手段の切替は送液時間、液体使用量に応じて切り替えられることを特徴とする液体供給方法。
【請求項4】
請求項1ないし3の何れか一つに記載の液体供給方法を用い、前記液体としてインクを使用することを特徴とするインク供給方法。
【請求項5】
請求項4記載のインク供給方法を用い、前記液体吐出ヘッドとして前記インクを吐出する記録ヘッドを用いることを特徴とする画像記録方法。
【請求項6】
請求項5記載の画像記録方法を用い、被記録媒体に記録を行うことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体供給方法及びインク供給方法及び画像記録方法及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像形成装置、特に産業向けの画像形成装置においては、高速乾燥、高濃度、高品質、紙以外の様々なメディアへの画像形成等の多種多様な要望があり、これ等に対応するためインクに含有される顔料やその他の成分も多岐にわたるのが現状である。このような様々なインクの中には、溶媒に対して分散しにくいあるいは比重が大きく異なる等、必ずしも良好な分散性を保てないものも含まれ、このようなインクを従来のインクと同様に記録ヘッドに供給して画像形成を行うと、ノズル列内でインクの濃度勾配が発生してインク供給路が接続されている側の濃度が濃くなることが判っている。これは、記録ヘッドの共通液室内で顔料の沈降が進み、流路の先へ進むほど顔料が少なくなり、結果としてノズル列内で濃度勾配が発生すると考えられる。
【0003】
上述の現象が発生すると、シリアル方式や記録ヘッドを並べたライン方式において、記録ヘッド間の継ぎ目で濃度の差が顕著に出てしまい、画像として不適合なものとなってしまう。また、液晶テレビのカラーフィルタでは言うに及ばず、レジストパターンや電子回路においても濃度が不均一となると所望の機能を達成することができず、大きな問題となる。
このような問題点を解決すべく、クロストークによるノズル列内におけるインク吐出特性のばらつきを抑制するため、主走査方向に複数のノズル列を配置し、吐出ムラが出ないようにそれぞれ異なる吐出特性のノズルを組み合わせる技術が提案されている(例えば「特許文献1」参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上述の技術では、予め液室内やノズル内の状態を把握しておく必要があるため、分散安定性の低いインク(主対象は顔料が沈降し易い白インクや銀インク等)には不向きであるという問題点がある。
本発明は上述の問題点を解決し、分散安定性が低いインクを用いても画像濃度ムラの発生を低減及び抑制することが可能な液体供給方法及びインク供給方法及び画像記録方法及び画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の発明は、液体を吐出する複数のノズルが直線状に配置された複数のノズル列と、前記ノズル列に前記液体を供給し前記ノズル列にそれぞれ対応して延在する複数の共通液室とを備え、前記複数のノズル列及び前記複数の共通液室がそれぞれ平行となるように配置された液体吐出ヘッドに前記液体を供給する液体供給方法であって、前記複数の共通液室に対して同時に前記液体を供給し、前記複数の共通液室のうちの少なくとも一つは他の共通液室とは流れの方向が異なるように前記液体を供給し、前記複数の共通液室は、前記液体が供給される供給口と前記液体を排出する排出口と有し、前記供給口に供給される前記液体が収容される供給液体収容部と、前記排出口から排出された液体が収容される排出液体収容部とを備え、前記供給液体収容部から前記排出液体収容部へと前記液体を流す流路と前記排出液体収容部から前記供給液体収容部へと前記液体を流す流路とを切り替える切替手段を有し、前記切替手段を任意に切り替えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、一方の共通液室に接続されたノズルと他方の共通液室に接続されたノズルとでは液体吐出ヘッドの長手方向であるノズル列方向において濃度が低下する勾配が互いに逆転するため、結果として濃度のばらつきを抑制することができ、均一な濃度による画像形成を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態に用いられる液体吐出ヘッドの基本構成を説明する概略構成図である。
【
図2】共通液室に接続する個別液室及びノズルを説明する概略図である。
【
図3】本発明の第1の実施形態に用いられる液体吐出ユニットの概略図である。
【
図4】本発明の第2の実施形態に用いられる液体吐出ユニットの概略図である。
【
図5】本発明の第3の実施形態に用いられる液体吐出ユニットの概略図である。
【
図6】本発明の第4の実施形態に用いられる液体吐出ユニットの概略図である。
【
図7】本発明の第5の実施形態に用いられる液体吐出ユニットの概略図である。
【
図8】本発明の第6の実施形態に用いられる個別液室及びノズルを説明する概略図である。
【
図9】本発明の第7の実施形態に用いられる液体吐出ユニットの概略図である。
【
図10】本発明の液体吐出ユニットを搭載可能な画像形成装置の概略斜視図である。
【
図11】本発明の液体吐出ユニットを搭載可能な画像形成装置の概略正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の一実施形態に用いられる記録ヘッドの基本構成を示している。同図において液体吐出ヘッドである記録ヘッド1は、4個の液体供給口であるインク供給口2a,2b,2c,2dを有している。インク供給口2aは、記録ヘッド1の内部に形成されたインク通路である共通液室3の一端に接続されており、共通液室3の他端はインク供給口2bに接続されている。また、インク供給口2cも共通液室3と平行となるように配設された共通液室4の一端に接続されており、共通液室4の他端はインク供給口2dに接続されている。また、各共通液室3,4の下部には、複数の個別液室と連通する複数の連通路5がそれぞれ形成されている(共通液室3側のみ示す)。
【0009】
図2に示すように連通路5には、液体を吐出するノズル6を備えた個別液室7が接続されている。個別液室7の上部には、個別液室7内に搬送されて充填された液体に対して圧力を加え、ノズル6から所定の吐出圧力で液体を吐出させる圧電素子8が配設されている。本実施形態では、圧電素子8としてチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)の複合酸化物結晶膜からなる強誘電体膜の撓み力を利用した圧電体膜を用いている。各連通路5に接続された各ノズル6は、各共通液室3,4の長手方向に沿って、すなわち各共通液室3,4の長手方向と平行となるようにそれぞれ配設されている。
【0010】
図3は、本発明の第1の実施形態に用いられる液体吐出ユニット9を示している。液体吐出ユニット9は、液体吐出ヘッドである記録ヘッド10と、インク貯容部11と、ポンプ12とを有している。
記録ヘッド10は、記録ヘッド1と比較すると、インク供給口2b,2cを有していない点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。共通液室3の一端はインク供給口2aに接続されており、他端は記録ヘッド
10の内部で行き止まりとなっている。共通液室4の一端はインク供給口2dに接続されており、他端は記録ヘッド
10の内部で行き止まりとなっている。
【0011】
インクを貯容したインク貯容部11にはインク供給管13の一端が接続されており、インク供給管13の他端にはポンプ12の吸入口が接続されている。ポンプ12には2個の排出口があり、一つには一端をインク供給口2aに接続されたインク供給管14の他端が、他の一つには一端をインク供給口2dに接続されたインク供給管15の他端がそれぞれ接続されている。
【0012】
このような構成の液体吐出ユニット9において、ポンプ12を作動させることによりインク貯容部11内に貯容されたインクが記録ヘッド10に供給される。インク供給口2a,2dから記録ヘッド1内に供給されたインクは、各共通液室3,4を流れるに連れてインクの安定性が低下し、各共通液室3,4に接続された各ノズル6からインクを吐出した場合に、インク供給流路の上流側から下流側に向かうに連れて、すなわちインク供給口2a,2dから離れるに連れて濃度が低下する現象が見られる。
【0013】
しかし本実施形態では、各ノズル6に対してインクを供給する各共通液室3,4に対して、記録ヘッド10の長手方向において互いに異なる方向からインクが流入するようにインク供給を行うので、共通液室3に接続されたノズル6と共通液室4に接続されたノズル6とでは記録ヘッド10の長手方向であるノズル列方向において濃度が低下する勾配が互いに逆転するため、結果として濃度のばらつきを抑制することができ、均一な濃度による画像形成を行うことができる。
【0014】
図4は、本発明の第2の実施形態に用いられる液体吐出ユニット16を示している。液体吐出ユニット16は液体吐出ユニット9と比較すると、記録ヘッド10に代えて記録ヘッド1を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
液体吐出ユニット16において、記録ヘッド1の各インク供給口2b,2cには栓17がそれぞれ取り付けられている
。初期充填時において、各インク供給口2a,2dからインクを導入して各共通液室3,4を介して各インク供給口2b,2cまでインクを充填させ、この状態で各栓17によって各インク供給口2b,2cを塞いでいる。
この第2の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0015】
図5は、本発明の第3の実施形態に用いられる液体吐出ユニット18を示している。液体吐出ユニット18は液体吐出ユニット9と比較すると、記録ヘッド10に代えて単一の共通液室3(図示せず)とインク供給口2aのみを有する液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド19及び単一の共通液室4(図示せず)とインク供給口2dのみを有する液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド20という2個の記録ヘッドを用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
各記録ヘッド19,20は、それぞれのノズルが縦方向及び横方向においてそれぞれ平行となるように配置される。
この第3の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0016】
図6は、本発明の第4の実施形態に用いられる液体吐出ユニット21を示している。液体吐出ユニット21は液体吐出ユニット18と比較すると、記録ヘッド19,20に代えて記録ヘッド41,42を用いる点においてのみ相違しており、他の構成は同一である。
液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド41は単一の共通液室3(図示せず)とインク供給口2a,2bを有しており、液体吐出ヘッドとしての記録ヘッド42は単一の共通液室4(図示せず)とインク供給口2c,2dを有している。各インク供給口2b,2cには、栓17がそれぞれ取り付けられている。インクは各記録ヘッド41,42への初期充填時において、各インク供給口2a,2dからインクを導入して各共通液室3,4を介して各インク供給口2b,2cまでインクを充填させ、この状態で各栓17によって各インク供給口2b,2cを塞いでいる。
この第4の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
【0017】
図7は、本発明の第5の実施形態に用いられる液体吐出ユニット22を示している。液体吐出ユニット22は液体吐出ユニット16と比較すると、供給液体収容部としての第1インク貯容部23、排出液体収容部としての第2インク貯容部24を用いる点において相違している。記録ヘッド1では、インクが供給される供給口としてインク供給口2a,2dが、インクが排出される排出口としてインク供給口2b,2cがそれぞれ機能している。
インクを貯容した第1インク貯容部23にはインク供給管13の一端が接続されており、インク供給管13の他端にはポンプ12の吸入口が接続されている。ポンプ12には2個の排出口があり、一つには一端をインク供給口2aに接続されたインク供給管14の他端が、他の一つには一端をインク供給口2dに接続されたインク供給管15の他端がそれぞれ接続されている。
【0018】
第1インク貯容部23に隣接させて、インクを貯容した第2インク貯容部24が配設されている。第2インク貯容部24にはインク排出管25の一端が接続されており、インク排出管25の他端にはポンプ26の排出口が接続されている。ポンプ26には2個の吸入口があり、一つには一端をインク供給口2bに接続されたインク排出管27の他端が、他の一つには一端をインク供給口2cに接続されたインク排出管28の他端がそれぞれ接続されている。
また、第1インク貯容部23と第2インク貯容部24とは、連通管29によって連通されている。
【0019】
上述の構成により、第5の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、供給されるインクが貯容された第1インク貯容部23と回収されたインクが貯容される第2インク貯容部24とが連通管29によって連通されているので、記録ヘッド1内に供給されるインクが常時循環していることによりインク自体の安定性が向上し、より一層濃度のばらつきを抑制することができ、より均一な濃度による画像形成を行うことができる。
【0020】
図8は、本発明の第6の実施形態に用いられる個別液室を示している。
図8に示す個別液室30は、その一端側に共通液室3に連通する連通路5を有し、他端側には共通液室4に連通する連通路31を有しており、各連通路5,31間には圧電素子8、ノズル6、ノズル6からインクを吐出させるための圧力室32、圧力室32を介してインクの循環路を形成する循環流路33等を備えている。この個別液室30は、共通液室を2個以上有する記録ヘッド1,10に、上述した個別液室7に代えて用いられる。なお、各連通路5,31の配置は、それぞれ各共通液室3,4におけるインク流通方向において同じ位置となるように配置されることが好ましい。
【0021】
上述の構成により、第6の実施形態においても第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができる。
また、共通液室3に供給されたインクは個別液室30を介して共通液室4を通り回収されるので、各共通液室3,4のみならず個別液室30内に存在するインクも循環させることができ、インク自体の安定性を高めてより一層濃度のばらつきを抑制することができ、より均一な濃度による画像形成を行うことができる。
【0022】
図9は、本発明の第7の実施形態に用いられる液体吐出ユニット34を示している。この液体吐出ユニット34は、液体吐出ユニット16と同様に記録ヘッド1を用い、各インク供給口2b,2cを栓17によって封止している。インクは初期充填時において、各インク供給口2a,2dからインクを導入して各共通液室3,4を介して各インク供給口2b,2cまでインクを充填させ、この状態で各栓17によって各インク供給口2b,2cを塞いでいる。
【0023】
供給口として機能するインク供給口2aには、記録ヘッド1内に供給するインクを収容した供給液体収容部35がインク供給管36を介して接続されており、排出口として機能するインク供給口2dには、記録ヘッド1内を循環して排出されたインクが収容される排出液体収容部37がインク排出管38を介して接続されている。
供給液体収容部35とインク供給管36との接続部近傍かつ排出液体収容部37とインク排出管38との接続部近傍には、インクを供給する図示しない第1ポンプと、インクを排出する図示しない第2ポンプと、第1ポンプ及び第2ポンプの接続先を供給液体収容部35または排出液体収容部37の何れかに切り替えてインクの流通方向を切り替える手段とを備えた切替手段39が配設されている。
この第7の実施形態によれば、切替手段39によって定期的に記録ヘッド1内のインクの流入方向を変更することにより、第1の実施形態と同様の作用効果を得ることができると共に、インクの状態をより安定させることができる。
【0024】
上述した第7の実施形態において、インクの送液時間、インク使用量に応じて切替手段39の作動を制御することにより、所定の定められたインク量を送る毎にインクの供給方向を切り替えることができ、インクの滞留の影響を効率的にキャンセルすることができることから画像やパターンを形成する場合に濃度分布の偏りを抑制することができ、さらに安定して良好な画像を得ることができる。また、メンテナンス時期をカウントしておき、切替手段39をこれに応じて切り替えてもよい。
【0025】
次に、上述した液体吐出ユニット9,16,18,21,22,34を搭載した液体吐出装置及び画像形成装置としてのインクジェット記録装置を
図10及び
図11に基づいて説明する。この説明では、液体吐出ユニット9のみを代表して説明する。
液体吐出装置としてのインクジェット記録装置54は、その装置本体内部に主走査方向に対して移動可能であり各記録ヘッド10を搭載するキャリッジ55を有している。また装置本体内部には、各記録ヘッド10及び各記録ヘッド10にインクを供給するインクタンク40等で構成される液体吐出ユニット9等が収納されている。装置本体の下部には、前方側から多数枚の被記録媒体である転写シート58を積載可能な給紙カセット(給紙トレイでもよい)59が抜き差し自在に装着されている。さらに装置本体には、転写シート58を手差しで給紙する際に開放される手差しトレイ60が配設されている。インクジェット記録装置54は、給紙カセット59または手差しトレイ60から給紙される転写シート58を取り込み、液体吐出ユニット9によって所望の画像を記録した後、画像形成後の転写シート58を後面側に配設された排紙トレイ61に排出する。
【0026】
液体吐出ユニット9は、図示しない左右の側板に掛け渡されたガイド部材である主ガイドロッド62と従ガイドロッド63とキャリッジ55とを主走査方向に摺動自在に保持している。キャリッジ55には、イエロ(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(Bk)の各色インク液滴を吐出する各記録ヘッド10が設けられている。
またキャリッジ55には、各記録ヘッド10に各色インクを供給する各インクタンク40が交換可能に装着されている。各インクタンク40は、上方に大気と連通する大気口を、下方に各記録ヘッド10へインクを供給する供給口をそれぞれ有している。インクタンク40の内部にはインクが充填された多孔質体が設けられており、多孔質体の毛管力によって記録ヘッド10に供給されるインクを僅かな負圧に維持している。
【0027】
キャリッジ55は、後方側である用紙搬送方向下流側を主ガイドロッド62に摺動自在に嵌装され、前方側である用紙搬送方向上流側を従ガイドロッド63に摺動自在に載置されている。キャリッジ55を主走査方向に移動走査させるため、主走査モータ64で回転駆動される駆動プーリ65と従動プーリ66との間にタイミングベルト67を掛け渡し、タイミングベルト67をキャリッジ55に固定している。この構成より、主走査モータ64の正逆回転により、キャリッジ55が往復移動される。
【0028】
一方、給紙カセット59にセットした転写シート58を記録ヘッド10の下方側へと搬送するため、給紙カセット59から転写シート58を分離給送する給紙ローラ68及びフリクションパッド69が配設されている。また、転写シート58を案内するガイド部材70、給送された転写シート58を反転させて搬送する搬送ローラ71が配設されている。さらに、搬送ローラ71の周面に押し付けられる搬送コロ72、搬送ローラ71から転写シート58の送り出し角度を規定する先端コロ73が設けられている。搬送ローラ71は、図示しない副走査モータによってギヤ列を介して回転駆動される。
【0029】
キャリッジ55の主走査方向における移動範囲に対応し、搬送ローラ71から送り出された転写シート58を記録ヘッド10の下方位置で案内するため、シートガイド部材である印写受け部材74が配設されている。印写受け部材74の用紙搬送方向下流側には、転写シート58を排紙方向へ送り出すために回転駆動される搬送コロ75及び拍車76が設けられている。また、さらに転写シート58を排紙トレイ61に送り出す排紙ローラ77及び拍車78と、排紙経路を形成するガイド部材79,80が配設されている。
【0030】
上述のインクジェット記録装置54では、記録時においてキャリッジ55を移動させつつ画像信号に応じて記録ヘッド10を駆動する。これにより、停止している転写シート58にインクを吐出して1行分を記録し、その後に転写シート58を所定量搬送した後に次の行の記録を行う。記録終了信号または転写シート58の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、インクジェット記録装置54は記録動作を終了させて転写シート58を排紙する。
【0031】
キャリッジ55の移動方向右端側の記録領域を外れた位置には、記録ヘッド10の吐出不良を回復させるための回復装置81が配設されている。回復装置81は、吸引キャップとポンプとワイピング装置とを有している。キャリッジ55は印字待機中に回復装置81側に移動され、吸引キャップで記録ヘッド10をキャッピングしてノズル6を湿潤状態に保つことにより、インク乾燥による吐出不良の発生を防止している。また、記録途中等に記録とは関係のないインクを吐出することにより、全てのノズル6のインク粘度を一定にさせて安定した吐出状態を維持している。
【0032】
吐出不良が発生した場合等には、吸引キャップで記録ヘッド10のノズル6を密封し、ポンプによりノズル6からインクと共に気泡等を吸い出す。そして、ノズル面に付着したインクやごみ等をワイピングブラシによって除去し、これにより吐出不良が回復する。また、吸引したインクは本体下部に設けられた廃液タンクに排出され、廃液タンク内部に設けられたインク吸収体に吸収保持される。
上述したインクジェット記録装置54では、本発明の液体吐出ユニット9を搭載しているので、濃度のばらつきを抑制することができ、均一な濃度による画像形成を行うことができる。
また、上述の説明では液体吐出ユニット9としてインクを吐出するものを示したが、本発明が適用可能な液体はインクには限られず、例えばパターニング用の液体レジストを吐出する装置に液体吐出ユニット9を適用してもよい。さらには遺伝子分析試料を吐出する装置に液体吐出ユニット9を適用してもよい。
【0033】
上記各実施形態及び各変形例では、インク貯容部11、第1インク貯容部23、第2インク貯容部24からポンプ12,26を用いてインクを記録ヘッド1,10,19,20,41,42に送出する構成を示した。しかし、インク貯容部から記録ヘッドへのインクの送出構成はこれに限定されず、例えばインク貯容部と記録ヘッドとをチューブで直接つなぎ、吐出により不足したインクをチューブから補う構成等、ポンプを用いない構成を採用してもよい。また、ポンプを用いない構成もこれには限定されずにどのような構成を採用してもよく、ポンプに代えて他のインク送出機構を用いる構成を採用してもよい。
【0034】
上記各実施形態及び各変形例では、液体吐出装置としてカラープリンタを用いた例を示したが、液体吐出装置としてはこれに限られず、プリンタ、ファクシミリ、複合機等にも本発明は適用可能である。また本実施形態及び変形例では、画像が形成される被記録媒体として転写シート58を用いる構成を示したが、この転写シート58とは記録紙には限定されず、厚紙、ハガキ、封筒、普通紙、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ、OHPシート、OHPフィルム、樹脂フィルム等も含まれ、シート状を呈し画像形成可能な物質であればどのようなものを用いてもよい。さらに上記各実施形態では、記録ヘッドとして共通液室を2個有するものを示したが、本発明が適用可能な記録ヘッドは共通液室を3個以上有していてもよい。
【0035】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、上述の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。本発明の実施の形態に記載された効果は、本発明から生じる最も好適な効果を例示したに過ぎず、本発明による効果は、本発明の実施の形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0036】
1,10,19,20 液体吐出ヘッド(記録ヘッド)
3,4 共通液室
6 ノズル
23 供給液体収容部(第1インク貯容部)
24 排出液体収容部(第2インク貯容部)
32 圧力室
33 循環流路
35 供給液体収容部
37 排出液体収容部
39 切替手段
54 画像形成装置(インクジェット記録装置)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0037】