(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】加熱装置、定着装置及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220614BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G03G15/20 505
H05B3/00 310C
(21)【出願番号】P 2018050477
(22)【出願日】2018-03-19
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100093997
【氏名又は名称】田中 秀佳
(72)【発明者】
【氏名】染矢 幸通
(72)【発明者】
【氏名】足立 知哉
(72)【発明者】
【氏名】古市 祐介
【審査官】小池 俊次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-218893(JP,A)
【文献】特開平11-133769(JP,A)
【文献】特開平06-250540(JP,A)
【文献】特開2001-188430(JP,A)
【文献】特開2006-039514(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0158720(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動手段で回転する加熱ベルトと、前記加熱ベルトの幅方向に配設され当該加熱ベルトを接触加熱する抵抗発熱体と、前記加熱ベルトの回転方向において前記抵抗発熱体の両側に形成されて前記加熱ベルトの内周面に摺接する複数のガイドリブとを有する加熱装置において、
前記複数のガイドリブを前記抵抗発熱体の両側で千鳥状に形成すると共に、前記加熱ベルトの幅方向における温度の落ち込み予測箇所となる前記複数のガイドリブのうち、前記加熱ベルトの回転方向上流側に配設されたガイドリブと対応する前記抵抗発熱体の上流側領域に当該上流側領域以外の前記抵抗発熱体の幅よりも狭い上流側幅狭部を形成することにより、当該上流側領域の発熱量を当該上流側領域以外の前記抵抗発熱体の発熱量より高く
し、かつ、
前記複数のガイドリブのうち、前記加熱ベルトの回転方向下流側に配設されたガイドリブと対応する前記抵抗発熱体の下流側領域に、当該下流側領域以外の前記抵抗発熱体の幅よりも狭く前記上流側幅狭部よりも広い下流側幅狭部を形成することにより、当該下流側領域の発熱量を当該下流側領域以外の前記抵抗発熱体の発熱量より高く、かつ、前記上流側領域の発熱量よりも低くした、
ことを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
前記温度の落ち込み予測箇所と対応する前記抵抗発熱体の領域に、当該領域の前記抵抗発熱体の厚さが、当該領域以外の前記抵抗発熱体の厚さよりも薄い薄層部を形成したことを特徴とする請求項1の加熱装置。
【請求項3】
前記加熱ベルトの幅方向における温度の落ち込み予測箇所が、前記加熱ベルトの外周面に摺接する温度センサであることを特徴とする請求項1
又は2の加熱装置。
【請求項4】
前記抵抗発熱体を、別々に発熱制御可能な第1の抵抗発熱体と第2の抵抗発熱体で構成し、当該第1の抵抗発熱体と第2の抵抗発熱体のいずれか一方に、前記幅狭部または薄層部を形成したことを特徴とする請求項
1又は
2の加熱装置。
【請求項5】
請求項1から
4の加熱装置を備えたことを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項
5の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱装置、定着装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置で使用される定着装置は種々の型式が知られている。その1つに、低熱容量の薄肉定着ベルトを、基材と面状抵抗発熱体で構成されたヒータで加熱する型式がある。面状抵抗発熱体は、例えば特許文献1(特開2008-140701号公報)に記載のように、定着ベルトの内側でベルト幅方向に配置された基材上に配設され、定着ニップを通過する定着ベルトの内面を加熱する。定着ベルトの内周面は回転安定性を高めるためにガイドリブに摺接する。また定着ベルトの表面には温度測定用の温度センサ等が摺接する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
定着ベルトはクイックスタート性と省エネ性のため薄肉化・低熱容量化されており、ガイドリブや温度センサに摺接する部分は奪熱によって他の部分に比べて温度低下が顕著である。この局所的な温度の落ち込みによってヒータ長手方向で温度ムラが生じ、この温度ムラによって定着不良や画像光沢ムラが発生しやすい。
【0004】
特許文献1(特開2008-140701号公報)の定着装置は、ヒータ長手方向における温度の落ち込みを抑制するために、定着ベルトの回転方向に2種類のガイドリブを設けている。そして各々のガイドリブが長手方向の位置で重ならないようにしたり、ガイドリブの接触面に窪みを形成してベルト接触面積を低減したりすることで、定着ベルトの温度ムラを改善するようにしている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の技術は温度の局所的落ち込みを積極的に戻すものではないので、定着ベルトの温度ムラを十分に解消できない。特に、室温からの目標温度への加熱直後はガイドリブの温度がまだ低いため温度差が発生しやすく、ベルト接触面積の低減だけでは定着不良や画像光沢ムラを防止することができない。
【0006】
また、接触面積低減のためにガイドリブに窪みを加工すると、ガイドリブの構造が複雑化してその金型コストが高騰する。また、定着ベルトの回転方向に2種類のガイドリブを設けると、同一部品の使用が困難になって部品点数の増大やコストアップになる。
【0007】
本発明の目的は、ガイドリブや温度センサのように加熱ベルトに接触することで局所的な温度の落ち込みが予測される箇所を積極的に加熱することで加熱ベルトの温度ムラを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するため、本発明の加熱装置は、駆動手段で回転する加熱ベルトと、当該加熱ベルトを接触加熱する抵抗発熱体とを有する加熱装置において、前記抵抗発熱体を前記加熱ベルトの幅方向に配設すると共に、当該加熱ベルトの幅方向における温度の落ち込み予測箇所と対応する前記抵抗発熱体の領域の発熱量を、当該領域以外の前記抵抗発熱体の発熱量より高くしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、局所的に温度の落ち込みが予測される箇所と対応する抵抗発熱体の領域の発熱量を当該領域以外の抵抗発熱体の発熱量に比べて高くすることで、加熱ベルトの温度ムラを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【
図1B】本発明の実施形態に係る画像形成装置の原理図である。
【
図2A】本発明の実施形態に係る第1の定着装置の断面図である。
【
図2B】本発明の実施形態に係る第2の定着装置の断面図である。
【
図2C】本発明の実施形態に係る第3の定着装置の断面図である。
【
図2D】本発明の実施形態に係る第4の定着装置の断面図である。
【
図3】(a)は本発明の実施形態で使用するヒータの平面図、(a)’は従来のヒータの平面図、(b)はヒータの断面図である。
【
図4】ヒータ、電力供給回路及び電力制御部を示す図である。
【
図5B】ヒータ支持部材とヒータの分解斜視図である。
【
図5C】ヒータ支持部材とヒータの分解斜視図である。
【
図5D】定着ベルトにヒータ支持部材を挿入した状態の斜視図である。
【
図5E】従来のヒータ支持部材とヒータの正面図である。
【
図5F】別の従来のヒータ支持部材とヒータの正面図である。
【
図6】従来のヒータのベルト表面温度の低下を説明する図であって、(a)は
図5Eと同様の図、(b)はベルト表面温度を示すグラフである。
【
図7】本発明の第1実施形態を示すもので、(a)はヒータ支持部材とヒータの正面図、(b)はヒータの発熱部材の拡大斜視図、(c)はヒータ表面温度のグラフ、(d)はベルト表面温度のグラフである。
【
図8A】本発明の第2実施形態を示すヒータ支持部材とヒータの正面図である。
【
図8B】本発明の第3実施形態を示すヒータ支持部材とヒータの正面図である。
【
図9】本発明の第4実施形態を示すもので、(a)はヒータ支持部材とヒータの正面図、(b)はヒータの発熱部材の拡大斜視図である。
【
図10】本発明の第5実施形態を示すもので、(a)はヒータ支持部材とヒータの正面図、(b)はヒータの発熱部材の拡大斜視図である。
【
図11】温度センサの取り付け状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態に係る加熱装置と、当該加熱装置を使用した定着装置及び画像形成装置(レーザプリンタ)について図面を参照して説明する。レーザプリンタは画像形成装置の一例であり、当該画像形成装置はレーザプリンタに限定されないことは勿論である。すなわち、画像形成装置は複写機、ファクシミリ、プリンタ、印刷機、及びインクジェット記録装置のいずれか一つ、またはこれらの少なくとも2つ以上を組み合わせた複合機として構成することも可能である。
【0012】
なお、各図中の同一または相当する部分には同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。また各構成部品の説明にある寸法、材質、形状、その相対配置などは例示であって、特に特定的な記載がない限りこの発明の範囲をそれらに限定する趣旨ではない。
【0013】
以下の実施形態では「記録媒体」を「用紙」として説明するが、「記録媒体」は紙(用紙)に限定されない。「記録媒体」は紙(用紙)だけでなくOHPシートや布帛、金属シート、プラスチックフィルム、或いは炭素繊維にあらかじめ樹脂を含浸させたプリプレグシートなども含む。
【0014】
現像剤やインクを付着させることができる媒体、記録紙、記録シートと称されるものも、すべて「記録媒体」に含まれる。また「用紙」には、普通紙以外に、厚紙、はがき、封筒、薄紙、塗工紙(コート紙やアート紙等)、トレーシングペーパ等も含まれる。
【0015】
また、以下の説明で使用する「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与することも意味する。
【0016】
(レーザプリンタの構成)
図1Aは、本発明の定着装置300を備えた画像形成装置100の一実施形態としてのカラーレーザプリンタの構成を概略的に示す構成図である。また
図1Bは当該カラーレーザプリンタの原理を単純化して図示する。
【0017】
画像形成装置100は、画像形成手段としての4つのプロセスユニット1K、1Y、1M、1Cを備える。これらプロセスユニットは、カラー画像の色分解成分に対応するブラック(K)、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)の各色の現像剤によって画像を形成する。
【0018】
各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cは、互いに異なる色の未使用トナーを収容したトナーボトル6K、6Y、6M、6Cを有する以外は、同様の構成となっている。このため、1つのプロセスユニット1Kの構成を以下に説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cの説明を省略する。
【0019】
プロセスユニット1Kは、像担持体2K(例えば感光体ドラム)と、ドラムクリーニング装置3Kと、除電装置を有している。プロセスユニット1Kはさらに、像担持体の表面を一様帯電する帯電手段としての帯電装置4Kと、像担持体上に形成された静電潜像の可視像処理を行う現像手段としての現像装置5K等を有している。そして、プロセスユニット1Kは、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着され、消耗部品を同時に交換可能となっている。
【0020】
露光器7は、この画像形成装置100に設置された各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの上方に配設されている。そして、この露光器7は、画像情報に応じた書き込み走査、すなわち、画像データに基づいてレーザダイオードからレーザ光Lをミラー7aで反射して像担持体2Kに照射するように構成されている。
【0021】
転写装置15は、この実施形態では各プロセスユニット1K、1Y、1M、1Cの下方に配設されている。この転写装置15は
図1Bの転写手段TMに対応する。一次転写ローラ19K、19Y、19M、19Cは、各像担持体2K、2Y、2M、2Cに対向して中間転写ベルト16に当接して配置されている。
【0022】
中間転写ベルト16は、各一次転写ローラ19K、19Y、19M、19C、駆動ローラ18、従動ローラ17に掛け渡された状態で循環走行するようになっている。二次転写ローラ20は、駆動ローラ18に対向し中間転写ベルト16に当接して配置されている。なお、像担持体2K、2Y、2M、2Cが各色の第1の像担持体とすれば、中間転写ベルト16はそれらの像を合成した第2の像担持体である。
【0023】
ベルトクリーニング装置21は、中間転写ベルト16の走行方向において、二次転写ローラ20より下流側に設置されている。また、クリーニングバックアップローラが中間転写ベルト16に対してベルトクリーニング装置21と反対側に設置されている。
【0024】
用紙Pを積載するトレイを有する用紙給送装置200は、画像形成装置100の下方に設置されている。この用紙給送装置200は記録媒体供給部を構成するもので、記録媒体としての多数枚の用紙Pを束状で収容可能であり、用紙Pの搬送手段としての給紙ローラ60やローラ対210と共にユニット化されている。
【0025】
用紙給送装置200は用紙の補給等のために、画像形成装置100の本体に対して挿脱可能とされている。給紙ローラ60とローラ対210は用紙給送装置200の上方に配置され、用紙給送装置200の最上位の用紙Pを給紙路32に向けて搬送するようになっている。
【0026】
分離搬送手段としてのレジストローラ対250は、二次転写ローラ20の搬送方向直近上流側に配置され、用紙給送装置200から給紙された用紙Pを一旦停止させることができる。この一旦停止により用紙Pの先端側に弛みが形成されて用紙Pの斜行(スキュー)が修正される。
【0027】
レジストローラ対250の搬送方向直近上流側にはレジストセンサ31が配設され、このレジストセンサ31によって用紙先端部分の通過が検知されるようになっている。レジストセンサ31が用紙先端部分の通過を検知した後、所定時間が経過すると、当該用紙はレジストローラ対250に突き当てられて一旦停止する。
【0028】
用紙給送装置200の下流端には、ローラ対210から右側に搬送された用紙を上方に向けて搬送するための搬送ローラ240が配設されている。
図1Aに示すように、搬送ローラ240は用紙を上方のレジストローラ対250へ向けて搬送する。
【0029】
ローラ対210は上下一対のローラで構成されている。当該ローラ対210はFRR分離方式またはFR分離方式とすることができる。FRR分離方式は、駆動軸によりトルクリミッタを介して反給紙方向に一定量のトルクを印加された分離ローラ(戻しローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。FR分離方式は、トルクリミッタを介して固定軸に支持された分離ローラ(摩擦ローラ)を給送ローラに圧接させてローラ間のニップで用紙を分離する。
【0030】
この実施形態ではローラ対210をFRR分離方式で構成している。すなわち、ローラ対210は、用紙をマシン内部に搬送する上側の給送ローラ220と、この給送ローラ220と逆方向にトルクリミッタを介して駆動軸により駆動力を与えられる下側の分離ローラ230で構成されている。
【0031】
分離ローラ230は給送ローラ220に向けてバネ等の付勢手段で付勢されている。なお、前記給紙ローラ60は、給送ローラ220の駆動力をクラッチ手段を介して伝達することで
図1Aで左回転するようになっている。
【0032】
レジストローラ対250に突き当てられて先端部に弛みが形成された用紙Pは、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせ、二次転写ローラ20と駆動ローラ18との二次転写ニップ(
図1Bでは転写ニップN)に送り出される。そして、送り出された用紙Pは、二次転写ニップにおいて印加されたバイアスによって、中間転写ベルト16上に形成されたトナー像が所望の転写位置に高精度に静電的に転写されるようになっている。
【0033】
転写後搬送路33は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップの上方に配設されている。定着装置300は、転写後搬送路33の上端近傍に設置されている。この定着装置300は、後述の
図2A(第1の定着装置)に示すように、加熱ベルトとしての定着ベルト310と、この定着ベルト310に対して所定の圧力で当接しながら回転する加圧部材としての加圧ローラ320を備える。加圧ローラ320は定着ベルト310を回転駆動する駆動手段を構成する。なお、定着装置300は後述する
図2B~
図2Dの構成(第2~第4の定着装置)も可能である。
【0034】
定着後搬送路35は、
図1Aのように定着装置300の上方に配設され、定着後搬送路35の上端で、排紙路36と反転搬送路41に分岐している。この分岐部に切り替え部材42が配置され、切り替え部材42はその揺動軸42aを軸として揺動するようになっている。また排紙路36の開口端近傍には排紙ローラ対37が配設されている。
【0035】
反転搬送路41は、分岐部と反対側の他端で給紙路32に合流している。そして、反転搬送路41の途中には、反転搬送ローラ対43が配設されている。排紙トレイ44は、画像形成装置100の上部に、画像形成装置100の内側方向に凹形状を形成して、設置されている。
【0036】
粉体収容器10(例えばトナー収容器)は、転写装置15と用紙給送装置200の間に配置されている。そして、粉体収容器10は、画像形成装置100の本体に対して着脱自在に装着されている。
【0037】
本実施形態の画像形成装置100は、転写紙搬送の関係により、給紙ローラ60から二次転写ローラ20までの所定の距離が必要である。そして、この距離に生じたデッドスペースに粉体収容器10を設置し、レーザプリンタ全体の小型化を図っている。
【0038】
転写カバー8は、用紙給送装置200の上部で、用紙給送装置200の引出方向正面に設置されている。そして、この転写カバー8を開くことで、画像形成装置100の内部を点検可能にしている。転写カバー8には、手差し給紙用の手差し給紙ローラ45、及び手差し給紙用の手差しトレイ46が設置されている。
【0039】
(定着装置の他の構成)
定着装置300は
図2Aの第1の定着装置300に限定されない。以下、
図2B~
図2Dを参照して第2~第4の定着装置300について説明する。第2の定着装置300は、
図2Bに示すように、加圧ローラ320と反対側に押圧ローラ390を有し、当該押圧ローラ390とヒータ350との間で定着ベルト310を挟んで加熱する。
【0040】
定着ベルト310の内側に前述したヒータ350が配設されてる。ステー330の片側に補助ステー331が取り付けられ、反対側にニップ形成部材332が取り付けられている。ヒータ350はこの補助ステー331に保持されている。ニップ形成部材332は定着ベルト310を介して加圧ローラ320と当接して定着ニップSNを形成している。
【0041】
第3の定着装置300は、
図2Cに示すように、定着ベルト310の内側にヒータ350が配設されてる。このヒータ350は、前述した押圧ローラ390を省略する代わりに、定着ベルト310との周方向接触長さを長くするため、定着ベルト310の曲率に合わせて基材352と絶縁層370の横断面を円弧状に形成している。抵抗発熱体としての発熱部材360は、円弧状の基材352の中央に配置されている。その他は
図2Bの第2の定着装置300と同じである。
【0042】
第4の定着装置300は、
図2Dに示すように、加熱ニップHNと定着ニップSNに分けて構成している。すなわち、加圧ローラ320の定着ベルト310とは反対側に、ニップ形成部材332と、金属製のチャンネル材で構成されたステー333を配置し、これらニップ形成部材332とステー333を内包するように加圧ベルト334を周回可能に配設している。そして当該加圧ベルト334と加圧ローラ320との間の定着ニップSNに用紙Pを通紙して加熱・定着する。その他は
図2Aの第1の定着装置300と同じである。
【0043】
また、安全補償用の第2温度センサTH2は、
図2Aの破線にて示すように、温度制御用の第1温度センサTH1が検知する定着ベルト310の内周面に、付勢手段により圧着するように配置してもよい。第2温度センサTH2を前記のように配設することで、温度センサの配設スペース確保の困難性を緩和することができる。
【0044】
(レーザプリンタの作動)
次に、本実施形態に係るレーザプリンタの基本的動作について
図1Aを参照して以下に説明する。最初に、片面印刷を行う場合について説明する。
【0045】
給紙ローラ60は、
図1Aに示すように、画像形成装置100の制御部からの給紙信号によって回転する。そして、給紙ローラ60は、用紙給送装置200に積載された束状用紙Pの最上位の用紙のみを分離し、給紙路32へ送り出す。
【0046】
給紙ローラ60及びローラ対210によって送り出された用紙Pは、その先端がレジストローラ対250のニップに到達すると、弛みを形成し、その状態で待機する。そして、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像をこの用紙Pに転写する最適なタイミング(同期)を図ると共に、用紙Pの先端スキューを補正する。
【0047】
手差しによる給紙の場合は、手差しトレイ46に積載された束状用紙が、最上位の用紙から一枚ずつ手差し給紙ローラ45によって反転搬送路41の一部を通り、レジストローラ対250のニップまで搬送される。以後の動作は用紙給送装置200からの給紙と同一である。
【0048】
ここで、作像動作については、1つのプロセスユニット1Kを説明し、他のプロセスユニット1Y、1M、1Cについてのその説明を省略する。まず、帯電装置4Kは、像担持体2Kの表面を高電位に均一に帯電する。そして、露光器7は、画像データに基づいたレーザ光Lを像担持体2Kの表面に照射する。
【0049】
レーザ光Lが照射された像担持体2Kの表面は、照射された部分の電位が低下して、静電潜像を形成する。現像装置5Kは、トナーを含む現像剤を担持する現像剤担持体を有し、トナーボトル6Kから供給された未使用のブラックトナーを、現像剤担持体を介して、静電潜像が形成された像担持体2Kの表面部分に転移させる。
【0050】
トナーが転移した像担持体2Kは、その表面にブラックトナー画像を形成(現像)する。そして、像担持体2K上に形成されたトナー画像を中間転写ベルト16に転写する。
【0051】
ドラムクリーニング装置3Kは、中間転写行程を経た後の像担持体2Kの表面に付着している残留トナーを除去する。除去された残留トナーは、廃トナー搬送手段によって、プロセスユニット1K内にある廃トナー収容部へ送られ回収される。また、除電装置は、クリーニング装置3Kによって残留トナーが除去された像担持体2Kの残留電荷を除電する。
【0052】
各色のプロセスユニット1Y、1M、1Cにおいても、同様にして像担持体2Y、2M、2C上にトナー画像を形成し、各色トナー画像が重なり合うように中間転写ベルト16に転写する。
【0053】
各色トナー画像が重なり合うように転写された中間転写ベルト16は、二次転写ローラ20と駆動ローラ18の二次転写ニップまで走行する。一方、レジストローラ対250は、それに突き当てられた用紙を所定のタイミングで挟み込んで回転し、中間転写ベルト16上に重畳転写して形成されたトナー像が好適に転写されるタイミングに合わせて、二次転写ローラ20の二次転写ニップまで搬送する。このようにして、中間転写ベルト16上のトナー画像をレジストローラ対250によって送り出された用紙Pに転写する。
【0054】
トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。そして、定着装置300に搬送された用紙Pは、定着ベルト310と加圧ローラ320によって挟まれ、加熱・加圧することで未定着トナー画像が用紙Pに定着される。トナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0055】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着後搬送路35を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み込み、回転駆動することで排紙トレイ44に排出することで片面印刷を終了する。
【0056】
次に、両面印刷を行う場合について説明する。片面印刷の場合と同様に、定着装置300は用紙Pを排紙路36へ送り出す。そして、両面印刷を行う場合、排紙ローラ対37は、回転駆動によって用紙Pの一部を画像形成装置100外に搬送する。
【0057】
そして、用紙Pの後端が、排紙路36を通過すると、切り替え部材42は、
図1Aの点線で示すように揺動軸42aを軸として揺動し、定着後搬送路35の上端を閉鎖する。この定着後搬送路35の上端の閉鎖とほぼ同時に、排紙ローラ対37は、用紙Pを画像形成装置100外へ搬送する方向と逆の方向に回転し、反転搬送路41へ用紙Pを送り出す。
【0058】
反転搬送路41へ送り出された用紙Pは、反転搬送ローラ対43を経て、レジストローラ対250に至る。そして、レジストローラ対250は、中間転写ベルト16上に形成されたトナー画像を用紙Pのトナー画像未転写面に転写する最適なタイミング(同期)を図り、用紙Pを二次転写ニップへ送り出す。
【0059】
そして、二次転写ローラ20と駆動ローラ18は、用紙Pが二次転写ニップを通過する際に用紙Pのトナー画像未転写面(裏面)にトナー画像を転写する。そして、トナー画像が転写された用紙Pは、転写後搬送路33を通って定着装置300へと搬送される。
【0060】
定着装置300は、定着ベルト310と加圧ローラ320によって、搬送された用紙Pを挟み、加熱・加圧することで未定着トナー画像を用紙Pの裏面に定着する。このようにして、表裏両面にトナー画像が定着された用紙Pは、定着装置300から定着後搬送路35へ送り出される。
【0061】
切り替え部材42は、定着装置300から用紙Pが送り出されたタイミングでは、
図1Aの実線で示すように定着後搬送路35の上端近傍を開放している位置にある。そして、定着装置300から送り出された用紙Pは、定着搬送路を経由して排紙路36へ送り出される。排紙ローラ対37は、排紙路36へ送り出された用紙Pを挟み、回転駆動し排紙トレイ44に排出することで両面印刷を終了する。
【0062】
中間転写ベルト16上のトナー画像を用紙Pに転写した後、中間転写ベルト16上には残留トナーが付着している。ベルトクリーニング装置21は、この残留トナーを中間転写ベルト16から除去する。また、中間転写ベルト16から除去されたトナーは、廃トナー搬送手段によって、粉体収容器10へと搬送され、粉体収容器10内に回収される。
【0063】
(定着装置の詳細)
次に、本発明の実施形態に係るヒータ350と定着装置300について、
図2Aの第1の定着装置300を参照して以下さらに説明する。第1の定着装置300は
図2Aに示すように、低熱容量の薄肉の定着ベルト310と加圧ローラ320で構成されている。定着ベルト310は、例えば外径が25mmで厚みが40~120μmのポリイミド(PI)製の筒状基体を有している。
【0064】
定着ベルト310の最表層には、耐久性を高めて離型性を確保するために、PFAやPTFE等のフッ素系樹脂による厚みが5~50μmの離型層が形成される。基体と離型層の間に厚さ50~500μmのゴム等からなる弾性層を設けてもよい。
【0065】
また、定着ベルト310の基体はポリイミドに限らず、PEEKなどの耐熱性樹脂やニッケル(Ni)、SUSなどの金属基体であってもよい。定着ベルト310の内周面に摺動層としてポリイミドやPTFEなどをコートしてもよい。
【0066】
加圧ローラ320は、例えば外径が25mmであり、中実の鉄製芯金321と、この芯金321の表面に形成された弾性層322と、弾性層322の外側に形成された離型層323とで構成されている。弾性層322はシリコーンゴムで形成されており、厚みは例えば3.5mmである。弾性層322の表面は離型性を高めるために、厚みが例えば40μm程度のフッ素樹脂層による離型層323を形成するのが望ましい。定着ベルト310に対して加圧ローラ320が付勢手段により圧接している。
【0067】
(ヒータフォルダ)
定着ベルト310の内側に、ステー330及びヒータフォルダ340が軸線方向に配設されている。ステー330は金属製のチャンネル材で構成され、その両端部分が定着装置の両側板に支持されている。ステー330は加圧ローラ320の押圧力を確実に受けとめて定着ニップSNを安定的に形成する。
【0068】
ヒータフォルダ340はヒータ350の基材352を保持するためのもので、ステー330によって支持されている。ヒータフォルダ340は好ましくはLCPなどの低熱伝導性の耐熱性樹脂で形成することができ、これによりヒータフォルダ340への熱伝達が減って効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0069】
ヒータフォルダ340の形状は、基材352の高温部との接触を回避するために、基材352の短手方向両端部付近の各2箇所のみを支持する形状にしている。これにより、ヒータフォルダ340へ流れる熱量をさらに低減して効率的に定着ベルト310を加熱することができる。
【0070】
ヒータフォルダ340は、
図5A~
図5Fに示すように、定着ベルト310の幅方向に延びた断面矩形状の長尺材である。ヒータフォルダ340の前面にヒータ350が取り付けられている。また、ヒータフォルダ340の上下両面に、定着ベルト310と摺接して定着ベルト310の回転をガイドする複数のガイドリブ340a、340bが形成されている。
【0071】
これらガイドリブ340a、340bは、定着ベルト310の内周面の曲率半径に対応した円弧状の摺接縁を有し、ヒータフォルダ340の長手方向に等間隔で複数(図示例では17個)配設されている。これにより、定着ベルト310が略円筒形状を維持して安定回転する。後述するヒータ350の発熱部材360の切欠き部360a、360bは、このガイドリブ340a、340bの位置に対応している。すなわち、ガイドリブ340bの下流側(ガイドリブ340aの上流側)に発熱部材360の各切欠き部360aが形成されている。
【0072】
ガイドリブ340a、340bは、
図5Eのようにヒータ350の上流側と下流側(ヒータフォルダ340の上面と下面)にそれぞれ同じ長手方向位置で形成したものと、
図5Fのようにヒータ350の上流側と下流側(ヒータフォルダ340の上面と下面)で異なる位置に形成したものがある。後者(
図5F)は、ガイドリブ340a、340bを長手方向で千鳥配置にすることで、定着ベルト310の周回走行安定性を高める。
【0073】
(ヒータ)
定着ベルト310の内側には、加圧ローラ320と対向する位置で定着ベルト310を内側から加熱するヒータ350が配設されている。ヒータ350の基材352の短手方向中央に、抵抗発熱体としての発熱部材360が配置されている。この発熱部材360は、
図3に示すように、細長の金属製薄板部材を絶縁材料で被覆した基材352の上に形成されている。なお、
図3(a)は本実施形態のヒータ350、(a)’は従来のヒータ350、(b)は両ヒータ350の縦断面図である。
【0074】
基材352の材料としては低コストなアルミやステンレスなどが好ましい。基材352は金属製に限定されたものではなく、アルミナや窒化アルミなどのセラミックや、ガラス、マイカなどの耐熱性と絶縁性に優れた非金属材料で構成することも可能である。
【0075】
ヒータの均熱性を向上し画像品位を高めるため、基材352を銅、グラファイト、グラフェンなどの高熱伝導率の材料で構成してもよい。本実施形態では、短手幅8mm、長手幅270mm、厚さ1.0mmのアルミナ基材を使用している。
【0076】
図3の発熱部材360は、詳しくは基材352の長手方向に平行二列で直列線状に形成されている。二列の発熱部材360の一端部は、基材352の一端側で長手方向に形成された小抵抗値の給電線369a、369cを介して、給電用の電極360c、360dにそれぞれ接続されている。この電極360c、360dは、
図4のように交流電源410を含む電力供給手段に接続される。
【0077】
発熱部材360の他端部は、基材352の他端側で短手方向に形成された小抵抗値の給電線369bを介して、基材352の長手方向反対側に向けて折り返す形で接続されている。発熱部材360、電極360c、360d及び給電線369a~369cは、スクリーン印刷によって所定の線幅・厚みで形成されている。
【0078】
発熱部材360の材料は、銀(Ag)もしくは銀パラジウム(AgPd)やガラス粉末などを調合したペーストをスクリーン印刷等により塗工し、その後の焼成によって形成することができる。発熱部材360の抵抗値は例えば常温で10Ωとすることができる。発熱部材360の抵抗材料はこの他に、銀合金(AgPt)や酸化ルテニウム(RuO2)などを使用することもできる。
【0079】
発熱部材360と給電線369a~369cの表面は、薄いオーバーコート層ないし絶縁層370で覆われている。当該絶縁層370によって、定着ベルト310の摺動性が確保されると共に、定着ベルト310と発熱部材360、給電線369a~369cとの間の絶縁性が確保される。
【0080】
この絶縁層370の材料は、例えば厚さ75μmの耐熱性ガラスを用いることができる。発熱部材360は絶縁層370側に接触する定着ベルト310を伝熱により加熱してその温度を上昇させ、定着ニップSNに搬送される用紙Pの未定着画像を加熱して定着する。
【0081】
(電力供給回路)
図4は、ヒータに電力を供給する電力供給回路を示している。ヒータ350の下方に、発熱部材360に電力を供給する電力供給回路を示している。
【0082】
この電力供給回路は、電力制御手段としての電力制御部400、交流電源410、トライアック420、ヒータリレー440で構成されている。交流電源410と、トライアック420と、ヒータリレー440が、電極360c、360dの間に直列に配置されている。電力制御部400は、CPU、ROM、RAM、I/Oインターフェース等を包含するマイクロコンピュータで構成することができる。
【0083】
第1温度センサTH1と第2温度センサTH2で検知された温度T4、T8は、電力制御部400に入力される。電力制御部400は、第1温度センサTH1から得られた温度T4に基いて、発熱部材360が所定目標温度になるように、トライアック420により電極360c、360dに対する供給電流をデューティ制御する。
【0084】
具体的には、第1温度センサTH1の現在温度T4と目標温度の温度差に応じたデューティ比で、トライアック420が発熱部材360に流れる電流をデューティ制御する。デューティ比0%で電流がゼロになり、デューティ比100%で電流が最大になる。なお、通紙時などでは上記現在温度T4とは別に、通紙による抜熱分を考慮して、追加電力を適切に投入することで、定着ベルト310の温度を所望の温度に制御する。
【0085】
(本発明の実施形態)
前述したヒータ350を、
図5Aのようにガイドリブ340a、340bを有するヒータフォルダ340に取り付け、これを
図2Aの定着装置300に装着して定着ベルト310を回転させる。定着ベルト310はガイドリブ340a、340bでガイドされながら加圧ローラ320によって回転駆動され、回転をしながらヒータ350によって加熱される。
【0086】
このときの定着ベルト310の表面温度を
図6(b)に示す。定着ベルト310の表面温度は、ヒータ350の両端部に対応する位置で温度低下している他、ヒータ350の長手方向中間部でも複数箇所で温度低下している。この温度低下部分は、定着ベルト310とガイドリブ340a、340bとの摺接による奪熱によるものであり、当該温度低下部分はガイドリブ340a、340bの位置と完全に又は略一致している。多少の位置ズレ量があっても、それは定着ベルト310の蛇行誤差等によるものでごく僅かである。
【0087】
そこで本発明の第1実施形態では、発熱部材360の線幅をガイドリブ340a、340bと対応する領域で
図7(a)のように局所的に幅狭にした。すなわち、ガイドリブ340a、340bと対応する位置に矩形状の切欠き部360aを形成している。
【0088】
この切欠き部360aにより、発熱部材360の線幅が他の部分の例えば約2/3に低減された幅狭部となっている。このため、当該幅狭部の導電抵抗は他の部分よりも約50%高くなり、その分だけ電流密度が大きくなって発熱量が約50%高くなる。
【0089】
切欠き部360aは、ガイドリブ340a、340bと同じ長手方向ピッチで形成され、
図7(a)のB-B断面におけるヒータ350の表面温度は、
図7(c)のように一定間隔で高温ピークが立つ波形になる。
図7(d)はベルト表面温度を示すもので、破線が
図6(b)の温度波形を表し、実線が発熱部材360の前記幅狭部による発熱量増大分が加わったベルト表面温度を示す。なお、ベルト表面温度は、ベルト回転方向のニップ入口近傍をサーモビュアーで測定したものである。
【0090】
図7(d)の温度波形から分かるように、ヒータ350の幅狭部による局所的な発熱量の増大により、ベルト表面温度の落ち込みが補償されて長手方向の温度ムラがほぽ解消され、定着ベルト310の表面温度が長手方向で均一化することが分かる。これにより定着不良や光沢ムラ等の不具合を防止することができる。
図7(d)の温度波形で試験的にリコー製MypaperA4縦を印刷した所、良好な画像が得られた。
【0091】
従来の発熱部材360の線幅は、
図3(a)’に示すように長手方向にわたって均一・一定であり、発熱量は長手方向のどの領域でも一定である。このため、定着ベルト310の奪熱が仮に長手方向で一定であれば、ヒータ350ないしニップ部を通過した定着ベルト310の温度は一定になり、定着不良や画像光沢ムラの問題は発生しない。しかし、前述したようにガイドリブ340a、340bと接触した定着ベルト310の内周面は、ガイドリブ340a、340bとの摺接によって奪熱されるため、当該摺接部分で局所的な温度の落ち込みが発生し定着不良等が発生する。
【0092】
なお、
図7の切欠き部360a、360bは発熱部材360の片側に形成しているが両側に形成してもよい。また切欠き部360a、360bは
図7のように上下で反対側に形成してもよいし、
図3(a)のように同じ側に形成してもよい。また切欠き部360a、360bの短手方向幅または長手方向幅はガイドリブ340a、340bによる温度の落ち込み幅に対応して適宜増減してよい。
【0093】
(第2実施形態)
図8Aは第2実施形態を示すもので、ガイドリブ340b、340cが、定着ニップの上流側と下流側で異なる位置に配設されている。すなわち、ガイドリブ340
b、340
cを長手方向で千鳥配置にすることで、定着ベルト310の回転安定性を高めている。この場合は、切欠き部360a、360bもガイドリブ340
b、340
cの位置に対応して千鳥状に形成する。
【0094】
なお、定着ベルト310は、
図7(a)及び
図8Aで矢印A方向で上から下に移動する。したがって、定着ベルト310は上側(定着ニップ入口側)のガイドリブ340bに強い力で摺接し、下側(定着ニップ出口側)のガイドリ
ブ340cにはそれよりも軽い力で摺接する。この結果、定着ベルト310は上側のガイドリブ340bでより多く奪熱されることになる。そこで、上側の切欠き部360aを下側の切欠き部360bに比べてより大きく形成し、切欠き部360aによる幅狭部の方でより高い発熱量が得られようにしてもよい。
【0095】
(第3実施形態)
図8Bは第3実施形態を示すものである。この第3実施形態も前記第2実施形態と同様にガイドリブ340
b、340
cが長手方向で千鳥状に形成されている。下側のガイドリブ340cは定着ニップの下流側にあるので、前述したように上側のガイドリブ340bに比べると下側のガイドリブ340cは奪熱量が少なく、定着不良や画像光沢ムラに対する影響は限定的である。
【0096】
そこで
図8Bのように、上流側のガイドリブ340bに対応した切欠き部360aだけを形成した。切欠き部360aだけでも実質的に十分な温度ムラ低減効果が得られる。下流側のガイドリブ340cに対応した切欠き部は省略することが可能である。
【0097】
なお、
図8Bの切欠き部360aは下流側(
図8B下段)の発熱部材360に形成することも可能であるが、上流側(
図8B上段)の発熱部材360に形成するのが望ましい。定着ニップ入口側で幅狭部による発熱量増大分を付与することで温度ムラを速やかに解消することができる。
【0098】
(第4実施形態)
図9は第4実施形態を示すもので、発熱部材360の厚みを、ガイドリブ340a、340bに対応する領域で薄くしたものである。すなわち、ガイドリブ340a、340bに対応する領域で、発熱部材360の厚さが他の領域に比べて薄い薄層部を形成している。
【0099】
この薄層部は、基材352上にダミーパターンとしてガラス等の絶縁体361を予め印刷形成し、その上に発熱部材360を形成(配線)することで形成する。絶縁体361の上に発熱部材360を一様厚さで印刷形成することで、絶縁体361上の発熱部材360の膜厚が局所的に薄くなる。このため、絶縁体361の部分で導電抵抗が上がることで電流密度が大きくなり、発熱量が増加する。
【0100】
(第5実施形態)
図10は第5実施形態を示すもので、発熱部材360の他に追加の発熱部材362を形成(配線)したものである。この追加の発熱部材362は、発熱部材360に隣接して発熱部材360と平行に形成される。発熱部材360が第1の抵抗発熱体であり、発熱部材362が第2の抵抗発熱体である。これら2つの発熱部材360、362は、独立に通電制御可能に構成される。
【0101】
当該発熱部材362を形成する際、前述と同様に、絶縁体363をダミーパターンとして基材352の表面に予め印刷により形成し、当該絶縁体363の上に一様厚みで発熱部材362を形成する。これにより、絶縁体363の箇所で発熱部材362の膜厚が薄い薄層部が形成され、この薄層部で発熱量が増大する。
【0102】
他の発熱部材360は、前述した切欠き部360a、360bを省略してもよいし、ガイドリブ340a、340bによる定着ベルト310の奪熱量に対応して、
図7のように切欠き部360a、360bを残したまま前記薄層部と共に発熱量を稼ぐようにしてもよい。
【0103】
図10のように2つの発熱部材360、362を形成することで、室温からの目標温度への加熱直後等の場合に、第1の発熱部材360と第2の発熱部材362を必要に応じて別々に発熱制御することで、定着ベルト310の温度ムラをより少なくすることができる。
【0104】
以上のように、本実施形態ではガイドリブ340a~340cに対応する位置で発熱部材360(362)の幅や厚みを局所的に低減することで、幅狭部又は薄層部による局所的な発熱量の増大領域を形成し、定着ベルト310の温度の落ち込みを補償する。
【0105】
(定着ベルトの他の温度落ち込み予測箇所)
定着ベルト310の幅方向における温度の落ち込み予測箇所は、前述したガイドリブ340a~340cに限られない。
図11は、定着ベルト310の外周面に摺接する温度センサTHの配設状態を示したものである。温度センサTHはヒータ350の下流側で定着ベルト310の外周面に摺接してその温度を検出する。検出した温度は
図4の電力制御部400に入力される。
【0106】
温度センサTHが摺接する定着ベルト310の外周面は当該摺接によって奪熱されるため、定着ベルト310の温度ムラの原因となる。そこで、当該温度センサTHに対応する発熱部材360(362)の領域に、前述した幅狭部や薄層部を形成する。これにより温度センサTHによる奪熱で低下した定着ベルト310の温度を、当該幅狭部や薄層部の発熱量増大によって補償することができ、温度ムラによる定着不良や光沢ムラを防止することができる。
【0107】
図11は温度センサTHが定着ベルト310の外周面に摺接しているが、
図2Aのように定着ベルト310の内周面に温度センサTH2が摺接する場合も、同様に幅狭部や薄層部を形成することにより当該幅狭部や薄層部の発熱量増大によって温度センサTH2による奪熱温度低下分を補償することができ、温度ムラによる定着不良や光沢ムラを防止することができる。
【0108】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の技術的思想の範囲内で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば前記実施形態では加熱装置を定着用に使用したが、本発明の加熱装置は乾燥用など定着以外の用途にも使用可能である。また発熱部材360に形成する切欠き部の形状は、矩形状のほかV字状や円弧状等の様々な形状が可能である。
【0109】
また、定着ベルト310の幅方向における温度の落ち込み予測箇所は、前述したガイドリブや温度センサに限られない。用紙が定着ニップを通過した後に定着ベルト310から安定して離間するための分離爪等も当該温度の落ち込み予測箇所になり得る。したがって、分離爪の位置に対応して発熱部材360(362)に前述した幅狭部や薄層部を形成してもよい。
【0110】
また、発熱部材360(362)の発熱量を局所的に増大させる方法は、前述した幅狭部や薄層部に限定されない。またヒータ350の配線パターンも前述したように直線状に限定されない。ヒータ350は長手方向に複数分割されたものでもよい。例えば、ヒータ350はPTC(正の温度抵抗係数)特性を有する複数の発熱部材を並列接続したものでもよい。その場合は温度の落ち込み予測箇所に対応する発熱部材を個別にデューティ制御することで発熱量を局所的に増大することも可能である
【符号の説明】
【0111】
SN:定着ニップ HN:加熱ニップ
L:レーザ光 P:用紙
TM:転写手段 TH1:第1温度センサ
TH2:第2温度センサ TH:温度センサ
1K,1Y,1M,1C:プロセスユニット 2K,2Y,2M,2C:像担持体
3K,3Y,3M,3C:ドラムクリーニング装置 4K,4Y,4M,4C:帯電装置
5K,5Y,5M,5C:現像装置(作像部) 6K,6Y,6M,6C:トナーボトル
7:露光器 7a:ミラー
8:転写カバー 10:粉体収容器
15:転写装置 16:中間転写ベルト
17:従動ローラ 18:駆動ローラ
19K,19Y,19M,19C:一次転写ローラ 20:二次転写ローラ
21:ベルトクリーニング装置 31:レジストセンサ
32:給紙路 33:転写後搬送路
35:定着後搬送路 36:排紙路
37:排紙ローラ対 41:反転搬送路
42:部材 42a:揺動軸
43:反転搬送ローラ対 44:排紙トレイ
45、60:給紙ローラ 46:トレイ
100:プリンタ 101:側面カバー
200:用紙給送装置(記録媒体供給部) 210:ローラ対
220:給送ローラ 230:分離ローラ
240:搬送ローラ 250:レジストローラ対
300:定着装置 310:定着ベルト
320:加圧ローラ 321:芯金
322:弾性層 323:離型層
330、333:ステー 331:補助ステー
332:ニップ形成部材 334:加圧ベルト
340:ヒータフォルダ 350:ヒータ(加熱装置)
352:基材 360、362:発熱部材
360a、360b:給電線 360c、360d:電極
361、363:絶縁体 370:絶縁層
390:押圧ローラ 400:電力制御部
410:交流電源 420:トライアック
430:電流検出手段 440:ヒータリレー
450:電圧検出手段 460:検知手段
【先行技術文献】
【特許文献】
【0112】