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特許7087686光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20220614BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 9/06 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L83/07
C08L83/05
C08K9/06
C08K3/36
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018105866
(22)【出願日】2018-06-01
(65)【公開番号】P2019210338
(43)【公開日】2019-12-12
【審査請求日】2020-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003063
【氏名又は名称】特許業務法人牛木国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100080089
【弁理士】
【氏名又は名称】牛木 護
(72)【発明者】
【氏名】武藤 光夫
(72)【発明者】
【氏名】福田 健一
【審査官】尾立 信広
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-082700(JP,A)
【文献】特開2017-218513(JP,A)
【文献】特開2002-327110(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00-13/08
C09J 9/00-201/10
C09D 101/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物であって、下記式(1)で表され、アルケニル基量が0.00005~0.00050モル/gである直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
【化1】
[式(1)中、Xは-CH2-、-CH2O-、-CH2OCH2-又は-Y-NR1-CO-
(ここで、Yは-CH2-、-Si(CH32CH2CH2CH2-、-Si(CH3)(CH=CH2)CH2CH2CH2-、-Si(CH=CH22CH2CH2CH2-又は下記構造式(Z)
【化2】
(式(Z)中、R3、R4はそれぞれ独立に-CH3又は-CH=CH2である。)
で示されるo-、m-又はp-シリルフェニレン基であり、R1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)であり、
X’は-CH2-、-OCH2-、-CH2OCH2-又は-CO-NR2-Y’-
(ここで、Y’は-CH2-、-CH2CH2CH2Si(CH32-、-CH2CH2CH2Si(CH3)(CH=CH2)-、-CH2CH2CH2Si(CH=CH22-又は下記構造式(Z’)
【化3】
(式(Z’)中、R3'、R4'はそれぞれ独立に-CH3又は-CH=CH2である。)
で示されるo-、m-又はp-シリルフェニレン基であり、R2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)であり、gは独立に0又は1であり、
Rf1は下記式(i)又は(ii-1)で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。
【化4】
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1~150の整数であって、且つpとqの和の平均は2~200である。rは0~6の整数、tは2又は3である。)
【化5】
(式(ii-1)中、u1は1~200の整数、v1は1~50の整数である。)
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素シロキサンであって、1分子中に1個以上の
【化6】
(式中、gは1~20の整数である。)で示される1価のパーフルオロアルキル基、
【化7】
(式中、fは1~200の整数、hは1~3の整数である。)で示される1価のパーフルオロオキシアルキル基、
【化8】
(式中、gは1~20の整数である。)で示される2価のパーフルオロアルキレン基、
及び/又は
【化9】
(式中、i及びjはそれぞれ1以上の整数、i+jの平均は2~200である。)又は
【化10】
(式中、d及びeはそれぞれ1~50の整数である。)で示される2価のパーフルオロオキシアルキレン基
を有し、ケイ素原子数が2~60であり、Si-H基量が0.00050~0.01000モル/gであり、環状、鎖状、三次元網状及びそれらの組み合わせのいずれかである含フッ素オルガノ水素シロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSi-H基として0.5~3.0モルとなる量、
(C)光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒:(A)成分に対して金属原子の質量換算で0.1~500ppm、及び、
(D)BET比表面積が0.1m2/g以上で、かつ、アルキル基含有反応性ケイ素化合物及びアルケニル基含有反応性ケイ素化合物により表面が疎水化処理されたシリカ微粉末であって、アルケニル基含有反応性ケイ素化合物が0.1~40mol%、アルキル基含有反応性ケイ素化合物が60~99.9mol%のmol比の割合(但し、アルキル基含有反応性ケイ素化合物とアルケニル基含有反応性ケイ素化合物との合計で100モル%)で処理されたものであるシリカ微粉末:(A)成分100質量部に対して1~40質量部
を含有し、JIS K6262に準拠した150℃×70時間での圧縮永久歪みが11%以下であるゴム硬化物を与えるものである光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項2】
(D)成分のシリカ微粉末が、アルキル基を有するシラザン化合物及びアルケニル基を有するシラザン化合物で表面処理されたものである請求項1に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項3】
(D)成分のシリカ微粉末が乾式法シリカ微粉末である請求項1又は2に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項4】
(A)成分のRf1が、下記の(i-1)、(i-2)及び(ii-1)から選ばれるいずれかの基である請求項1~3のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【化11】
(式(i-1)中、p1及びq1はそれぞれ1~150の整数、p1+q1(平均)=2~200である。Lは2~6の整数である。)
【化12】
(式(i-2)中、p2及びq2はそれぞれ1~150の整数、p2+q2(平均)=2~200である。Lは2~6の整数である。)
【化13】
(式(ii-1)中、u1は1~200の整数、v1は1~50の整数である。)
【請求項5】
(B)成分中のパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロオキシアルキレン基と(B)成分中のケイ素原子とは2価の連結基により繋がれ、該2価の連結基は、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、若しくはこれらの基にエーテル結合、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合、又はジオルガノシリレン基を介在させたものである請求項1~4のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項6】
(C)成分の光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒が、(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体である請求項1~5のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項7】
(E)成分として、ヒドロシリル化反応の反応制御剤を含む請求項1~6のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光、特に紫外線の照射によって硬化する光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物に関するものであり、得られるフルオロポリエーテル系ゴム硬化物は特に耐圧縮永久歪み特性に優れる。
【背景技術】
【0002】
従来から、加熱硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等の性質がバランスよく、優れた特性を有するため、自動車産業を中心に幅広い分野で応用されている(特許文献1、2及び3)。しかし、上記加熱硬化タイプの組成物は、硬化物を得るには加熱が必要であるため、加熱炉を設置するための比較的大きなスペースが必要であること、加熱炉に入らない様な大型部品や加熱不可部品への応用が難しいこと、成型工程がバッチ式となるために生産性が低下してしまうこと等の課題を有している。
【0003】
これに対して、室温硬化タイプのフルオロポリエーテル系ゴム組成物が見出され、このような組成物としては、これまでに縮合硬化タイプ、アミド架橋タイプが発明されている。これら組成物は、硬化物を得るための加熱処理が不要であり、しかも得られる硬化物が耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れることから、様々な分野で応用が期待されている(特許文献4、5、6、7及び8)。しかし、室温硬化タイプのゴム組成物は、保存中経時的に増粘したり、硬化完了までに24時間以上かかるなど、保存安定性と速硬化性の両立という面で課題を有していた。
【0004】
また上記室温硬化タイプのフルオロポリエーテル系ゴム組成物をО-リング等に成型し、ガスケット材として使用しようとすると、耐圧縮永久歪み特性において十分な性能が得られないという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2001-192546号公報
【文献】特許第3646775号公報
【文献】特許第4016239号公報
【文献】特許第3232221号公報
【文献】特許第3183624号公報
【文献】特許第3350347号公報
【文献】特許第3617568号公報
【文献】特許第5146690号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れたゴム状の硬化物を与え、且つ組成物の保存安定性や室温での良好な硬化特性を有し、かつ耐圧縮永久歪み特性に優れた硬化物を与える光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究した結果、(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物、(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素シロキサン、(C)光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒、及び(D)BET比表面積が50m2/g以上で、かつアルキル基含有ケイ素化合物及びビニル基含有ケイ素化合物により表面が疎水化処理されたシリカ微粉末を含む光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物が、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成した。即ち、本発明は、下記の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及びその硬化物を提供するものである。
【0008】
[1]
(A)1分子中に2個以上のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物:100質量部、
(B)1分子中にケイ素原子に直結した水素原子を2個以上有する含フッ素オルガノ水素シロキサン:(A)成分のアルケニル基1モルに対してSi-H基として0.5~3.0モルとなる量、
(C)光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒:(A)成分に対して金属原子の質量換算で0.1~500ppm、及び、
(D)BET比表面積が0.1m2/g以上で、かつ、アルキル基含有反応性ケイ素化合物及びアルケニル基含有反応性ケイ素化合物より表面が疎水化処理されたシリカ微粉末:(A)成分100質量部に対して1~40質量部
を含有する光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[2]
(D)成分のシリカ微粉末が、アルキル基を有するシラザン化合物及びアルケニル基を有するシラザン化合物で表面処理されたものである[1]に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[3]
(D)成分のシリカ微粉末が乾式法シリカ微粉末である[1]又は[2]に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[4]
(D)成分のシリカ微粉末において、シリカ微粉末の表面処理剤は、アルケニル基含有反応性ケイ素化合物が0.1~40mol%、アルキル基含有反応性ケイ素化合物が60~99.9mol%のmol比の割合(但し、アルキル基含有反応性ケイ素化合物とアルケニル基含有反応性ケイ素化合物との合計で100モル%)で処理されたものである[1]~[3]のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[5]
(A)成分が、下記式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物である[1]~[4]のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
【化1】
[式(1)中、Xは-CH2-、-CH2O-、-CH2OCH2-又は-Y-NR1-CO-
(ここで、Yは-CH2-、-Si(CH32CH2CH2CH2-、-Si(CH3)(CH=CH2)CH2CH2CH2-、-Si(CH=CH22CH2CH2CH2-又は下記構造式(Z)
【化2】
(式(Z)中、R3、R4はそれぞれ独立に-CH3又は-CH=CH2である。)
で示されるo-、m-又はp-シリルフェニレン基であり、R1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)であり、
X’は-CH2-、-OCH2-、-CH2OCH2-又は-CO-NR2-Y’-
(ここで、Y’は-CH2-、-CH2CH2CH2Si(CH32-、-CH2CH2CH2Si(CH3)(CH=CH2)-、-CH2CH2CH2Si(CH=CH22-又は下記構造式(Z’)
【化3】
(式(Z’)中、R3'、R4'はそれぞれ独立に-CH3又は-CH=CH2である。)
で示されるo-、m-又はp-シリルフェニレン基であり、R2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)であり、gは独立に0又は1であり、
Rf1は下記式(i)又は(ii)である。
【化4】
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1~150の整数であって、且つpとqの和の平均は2~200である。rは0~6の整数、tは2又は3である。)
【化5】
(式(ii)中、uは1~200の整数、vは1~50の整数、tは2又は3である。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
[6]
(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンが、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、及び/又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基を有するものである[1]~[5]のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[7]
(C)成分の光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒が、(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金(IV)錯体である[1]~[6]のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[8]
(E)成分として、ヒドロシリル化反応の反応制御剤を含む[1]~[7]のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物。
[9]
[1]~[8]のいずれか1項に記載の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐熱性、低温性、耐薬品性、耐溶剤性、耐油性等に優れた光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を提供することができる。また、保存安定性と良好な硬化特性を示し、かつ得られるゴム硬化物が良好な耐圧縮永久歪み特性を示す光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物及び硬化物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0011】
〔(A)成分〕
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物における(A)成分は、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する直鎖状ポリフルオロ化合物である。ここでアルケニル基の数は、1分子中に2~30個が好ましく、2~10個がより好ましく、特に2~6個が好ましい。なお、本発明の組成物には、1分子中に1個のアルケニル基を有し、且つ主鎖中にパーフルオロポリエーテル構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物は含まない。
本発明の(A)成分において、「直鎖状」とは、主鎖のパーフルオロポリエーテル構造を構成するパーフルオロオキシアルキレンからなる繰り返し単位同士が直鎖状に結合していることを意味するものであって、個々の繰り返し単位自体は、分岐状のパーフルオロオキシアルキレン単位(例えば、[-CF2CF(CF3)O-]単位、[-CF(CF3)O-]単位など)を含有するものであってもよい。
【0012】
(A)成分としては、特に下記式(1)で表される主鎖中のパーフルオロオキシアルキレン繰り返し単位中に分岐構造を有する直鎖状ポリフルオロ化合物が好ましい。
【0013】
【化6】
【0014】
[式(1)中、Xは-CH2-、-CH2O-、-CH2OCH2-又は-Y-NR1-CO-
(ここで、Yは-CH2-、-Si(CH32CH2CH2CH2-、-Si(CH3)(CH=CH2)CH2CH2CH2-、-Si(CH=CH22CH2CH2CH2-又は下記構造式(Z)
【0015】
【化7】
【0016】
(式(Z)中、R3、R4はそれぞれ独立に-CH3又は-CH=CH2である。)
で示されるo-、m-又はp-シリルフェニレン基であり、R1は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)であり、
【0017】
X’は-CH2-、-OCH2-、-CH2OCH2-又は-CO-NR2-Y’-
(ここで、Y’は-CH2-、-CH2CH2CH2Si(CH32-、-CH2CH2CH2Si(CH3)(CH=CH2)-、-CH2CH2CH2Si(CH=CH22-又は下記構造式(Z’)
【0018】
【化8】
【0019】
(式(Z’)中、R3'、R4'はそれぞれ独立に-CH3又は-CH=CH2である。)
で示されるo-、m-又はp-シリルフェニレン基であり、R2は水素原子又は非置換若しくは置換の1価炭化水素基である)である。
【0020】
gは独立に0又は1である。
Rf1は下記式(i)又は(ii)
【0021】
【化9】
【0022】
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1~150の整数であって、且つpとqの和の平均は2~200である。rは0~6の整数、tは2又は3である。)
【0023】
【化10】
【0024】
(式(ii)中、uは1~200の整数、vは1~50の整数、tは2又は3である。)
で表される2価のパーフルオロポリエーテル基である。]
【0025】
ここで、R1、R2としては、水素原子、炭素数1~12、特に1~10の炭化水素基が好ましく、炭化水素基としては、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基などや、これらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素等のハロゲン原子で置換した置換1価炭化水素基などが挙げられる。
【0026】
ここで、式(1)中のRf1は2価のパーフルオロポリエーテル基であり、下記式(i)又は(ii)で表される基が好ましい。
【0027】
【化11】
【0028】
(式(i)中、p及びqはそれぞれ0又は1~150の整数、好ましくは10~150の整数であって、且つpとqの和の平均は、2~200、好ましくは20~160である。また、rは0~6の整数、好ましくは0~4の整数、tは2又は3である。)
【0029】
【化12】
【0030】
(式(ii)中、uは1~200の整数、好ましくは20~160の整数であり、vは1~50の整数、好ましくは5~40の整数であり、tは2又は3である。)
【0031】
Rf1基の好ましい例としては、例えば、下記の3つのもの((i-1)、(i-2)及び(ii-1))が挙げられる。この内、特に1番目の式の構造の2価の基が好ましい。
【0032】
【化13】
【0033】
(式(i-1)中、p1及びq1はそれぞれ1~150の整数、p1+q1(平均)=2~200である。Lは2~6の整数である。)
【0034】
【化14】
【0035】
(式(i-2)中、p2及びq2はそれぞれ1~150の整数、p2+q2(平均)=2~200である。Lは2~6の整数である。)
【0036】
【化15】
【0037】
(式(ii-1)中、u1は1~200の整数、v1は1~50の整数である。)
【0038】
(A)成分の好ましい例としては、下記式(2)で表される化合物が挙げられる。
【0039】
【化16】
【0040】
[式(2)中、X1は-CH2-、-CH2O-、-CH2OCH2-又は-Y-NR11-CO-(Yは前記と同じものを示し、R11は水素原子、メチル基、フェニル基又はアリル基である)で表される基を示し、X1’は-CH2-、-OCH2-、-CH2OCH2-又は-CO-NR12-Y’-(R12は上記R11と同じものを示し、Y’は前記と同じものを示す)で表される基であり、gは独立に0又は1、Lは2~6の整数、p3及びq3はそれぞれ1~150の整数、p3+q3(平均)=2~200である。]
【0041】
式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、下記式で表されるものが挙げられる。
【0042】
【化17】
【0043】
(式中、p’及びq’はそれぞれ1~150の整数、p’+q’(平均)=6~200である。)
【0044】
【化18】
【0045】
(式中、p’及びq’はそれぞれ1~150の整数、p’+q’(平均)=6~200である。)
【0046】
【化19】
【0047】
(式中、p”及びq”はそれぞれ1~150の整数、p”+q”=2~200を満足する数を示す。)
【0048】
式(1)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物に含まれるアルケニル基量は、好ましくは0.00005~0.00050モル/gであり、更に好ましくは0.00007~0.00040モル/gである。直鎖状ポリフルオロ化合物に含まれるアルケニル基量が少なすぎると、硬化物の物理的強度が低下したり、硬化物が得られなくなったりする場合がある。また、アルケニル基量が多すぎると、得られる硬化物が脆く割れやすい場合がある。
【0049】
なお、式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、好ましくは100~100,000mPa・s、より好ましくは500~50,000mPa・s、更に好ましくは1,000~20,000mPa・sの範囲内にある。この範囲内の粘度の直鎖状ポリフルオロ化合物を光硬化型組成物に用い、組成物をシール、ポッティング、コーティング、含浸等に使用すれば、硬化物が適当な物理的特性を有するので望ましい。式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物は用途に応じて最も適切な粘度のものを選択する。この際、低粘度のポリマーと高粘度のポリマーを混合し、所望の粘度に調整して用いることも可能である。なお、本発明において、粘度は回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)により測定することができるが、特に、上記一般式(1)又は(2)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の粘度(23℃)は、JIS K7117-1に規定された粘度測定により求めることができる。
また、主鎖のパーフルオロポリエーテル構造を構成するパーフルオロオキシアルキレン単位の繰り返し数などで反映される直鎖状ポリフルオロ化合物の重合度(又は分子量)は、例えば、フッ素系溶剤を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0050】
更に本発明では、式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物を目的に応じた所望の数平均分子量に調節するため、予め、直鎖状ポリフルオロ化合物を、分子内にヒドロシリル基(Si-H基)を2個含有する有機ケイ素化合物と通常の方法及び条件でヒドロシリル化反応させ、鎖長延長された生成物を(A)成分として使用することも可能である。
【0051】
これらの直鎖状ポリフルオロ化合物は、1種単独で使用されてもよく、若しくは2種以上を組み合わせて使用されてもよい。
本発明の組成物中、(A)成分は、50~98質量%含有することが好ましく、60~95質量%含有することがより好ましく、70~90質量%含有することがさらに好ましい。
【0052】
〔(B)成分〕
(B)成分は、1分子中に含フッ素有機基を1個以上、好ましくは1~10個有し、且つケイ素原子に直結した水素原子(即ち、Si-Hで示されるヒドロシリル基)を2個以上、好ましくは3~50個有する含フッ素オルガノ水素シロキサンである。(B)成分は、(A)成分の架橋剤及び/又は鎖長延長剤として機能するものである。また(B)成分は、(A)成分との相溶性、分散性、硬化後の均一性等の観点から、含フッ素有機基として、1分子中に1個以上の1価のパーフルオロアルキル基、1価のパーフルオロオキシアルキル基、2価のパーフルオロアルキレン基、及び/又は2価のパーフルオロオキシアルキレン基等のフッ素含有基を有するものが好ましい。
【0053】
この1価又は2価の含フッ素有機基としては、例えば下記式で表されるもの等を挙げることができる。
【0054】
【化20】
【0055】
(式中、gは1~20の整数、好ましくは2~10の整数である。)
【0056】
【化21】
【0057】
(式中、fは1~200の整数、好ましくは1~100の整数、hは1~3の整数である。)
【0058】
【化22】
【0059】
(式中、i及びjはそれぞれ1以上の整数、好ましくは1~100の整数、i+jの平均は2~200、好ましくは2~100である。)
【0060】
【化23】
【0061】
(式中、d及びeはそれぞれ1~50の整数、好ましくは1~40の整数である。)
【0062】
また、これらパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキシアルキル基、パーフルオロアルキレン基又はパーフルオロオキシアルキレン基と(B)成分中のケイ素原子とは2価の連結基により繋がれていることが好ましく、該2価の連結基としては、アルキレン基、アリーレン基及びそれらの組み合わせ、若しくはこれらの基にエーテル結合(酸素原子)、アミド結合、カルボニル結合、エステル結合、ジオルガノシリレン基等を介在させたものであってもよく、例えば、下記の炭素数2~12の2価の連結基等が挙げられる。
【0063】
【化24】
【0064】
(式中、Phはフェニル基、Ph’はフェニレン基である。)
【0065】
また、この(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンにおける上記1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子に結合した水素原子以外のケイ素原子に結合した1価の置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、ナフチル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基及びこれらの基の水素原子の一部又は全部が塩素原子、シアノ基等で置換された、例えば、クロロメチル基、クロロプロピル基、シアノエチル基等の炭素数1~20、好ましくは1~12の非置換又は置換の1価炭化水素基が挙げられる。
【0066】
(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンとしては、環状、鎖状、三次元網状及びそれらの組み合わせのいずれでもよい。この含フッ素オルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子数は、特に制限されるものではないが、通常2~60、好ましくは3~30程度である。
【0067】
このような1価又は2価の含フッ素有機基及びケイ素原子結合水素原子を有する(B)成分としては、例えば下記の化合物が挙げられる。これらの化合物は、1種単独でも2種以上を併用して用いられてもよい。なお、下記式において、Meはメチル基、Phはフェニル基を示す。
【0068】
【化25】
【0069】
【化26】
【0070】
【化27】
【0071】
【化28】
【0072】
【化29】
【0073】
【化30】
【0074】
【化31】
【0075】
【化32】
【0076】
【化33】
【0077】
【化34】
【0078】
上記(B)成分の含フッ素オルガノ水素シロキサンに含まれるSi-H基量は、好ましくは0.00050~0.01000モル/gであり、更に好ましくは0.00100~0.00800モル/gである。含フッ素オルガノ水素シロキサンに含まれるSi-H基量が少なすぎると架橋密度が不十分となり、得られる硬化物の物理的特性が低下する場合があり、Si-H基量が多すぎると硬化時に発泡したり、得られる硬化物の物理的特性が経時で大きく変化したりする場合がある。
【0079】
上記(B)成分の配合量は、(A)成分中に含まれるビニル基、アリル基、シクロアルケニル基等のアルケニル基1モルに対し、(B)成分中のヒドロシリル基、即ちSi-H基が0.5~3.0モル、好ましくは0.8~2.0モルとなる量である。ヒドロシリル基(≡Si-H)が少なすぎると、架橋密度が不十分となる結果、硬化物が得られない。また、ヒドロシリル基が多すぎると硬化時に発泡してしまう。
【0080】
〔(C)成分〕
(C)成分は、光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒である。光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒は、光、特に300~400nmの近紫外線の照射によって該触媒中の金属が活性化され、(A)成分中のアルケニル基と、(B)成分中のヒドロシリル基との付加反応を促進する触媒である。この光活性型ヒドロシリル化反応金属触媒は、主に白金族系金属触媒、若しくはニッケル系金属触媒がこれに該当し、白金族系金属触媒としては白金系、パラジウム系、ロジウム系の金属錯体化合物、ニッケル系金属触媒としてはニッケル系、鉄系、コバルト系の金属錯体化合物がある。中でも白金系金属錯体化合物は、比較的入手し易く、且つ良好な触媒活性を示すため、好ましい。
【0081】
光活性型の白金系金属錯体化合物としては、例えば、(η5-シクロペンタジエニル)トリ(σ-アルキル)白金錯体化合物やβ-ジケトナト白金錯体化合物などがあり、具体的には(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(1,2,3,4,5-ペンタメチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルエチル白金(IV)、(シクロペンタジエニル)ジメチルアセチル白金(IV)、(トリメチルシリルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(メトキシカルボニルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)、(ジメチルフェニルシリルシクロペンタジエニル)トリメチルシクロペンタジエニル白金(IV)、トリメチル(アセチルアセトナト)白金(IV)、トリメチル(3,5-ヘプタンジオネート)白金(IV)、トリメチル(メチルアセトアセテート)白金(IV)、ビス(2,4-ペンタンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へキサンジオナト)白金(II)、ビス(2,4-へプタンジオナト)白金(II)、ビス(3,5-ヘプタンジオナト)白金(II)、ビス(1-フェニル-1,3-ブタンジオナト)白金(II)、ビス(1,3-ジフェニル-1,3-プロパンジオナト)白金(II)、ビス(ヘキサフルオロアセチルアセトナト)白金(II)などが挙げられる。
【0082】
これらの触媒の使用にあたっては、それが固体触媒であるときには固体状で使用することも可能であるが、より均一な硬化物を得るためには触媒を適切な溶媒に溶解したものを(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物に相溶させて使用することが好ましい。
【0083】
使用する溶媒の種類については、触媒が可溶なものであれば特に限定はされないが、炭化水素基の水素の一部がフッ素で置換された溶媒、又は炭化水素基の水素の一部がフッ素で置換された溶媒と炭化水素基の水素の全てがフッ素で置換された溶媒との混合溶媒を使用することが、触媒を組成物中により均一に分散可能である点で、より好ましい。
【0084】
炭化水素基の水素の一部がフッ素で置換された溶媒としては、例えば1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,2-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、1-メチル-3-(ペンタフルオロエチル)ベンゼン、1,1,1-トリフルオロ-3-[3-(トリフルオロメチル)フェニル]プロパン-2-オン、4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)安息香酸メチル、ヘプタフルオロ酪酸n-ブチル、3,5-ビス(トリフルオロメチル)安息香酸エチル、2-メチル-5-(トリフルオロメチル)ベンズアルデヒド、2,3-ジメトキシベンゾトリフルオリドなどが挙げられる。
【0085】
また炭化水素基の水素の全てがフッ素で置換された溶媒としては、例えばオクタフルオロトルエン、(1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロポキシ)パーフルオロベンゼン、ペンタフルオロエチル2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、フロリナート(3M社製)、PF5060(3M社製)、パーフルオロポリエーテルオリゴマーなどが挙げられる。
【0086】
触媒を溶液として用いる場合、(A)成分の直鎖状ポリフルオロ化合物と触媒溶液との好ましい混合比は、100:0.01~1.00(質量比)の範囲である。触媒溶液の添加量がこの範囲より多い場合には、硬化物の物性に影響を与える可能性があり、一方この範囲よりも少ない場合には、組成物への分散性不良を招く可能性がある。よって、触媒溶液の濃度はこの混合比の範囲内になるよう、適宜調整を行えばよい。
【0087】
(C)成分の使用量は、(A)成分に対して該触媒中の金属原子の質量換算で0.1~500ppm、好ましくは1~100ppmである。使用量が少なすぎると、光硬化性組成物が十分な光硬化性を得られず、一方多すぎると発泡したり硬化物の耐熱性に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0088】
〔(D)成分〕
(D)成分は、BET比表面積が0.1m2/g以上であり、かつ、アルキル基含有反応性ケイ素化合物及びアルケニル基含有反応性ケイ素化合物の両方の表面処理剤で表面が疎水化処理されたシリカ微粉末である。これによって、本発明の組成物から得られる硬化物に適切な物理的強度と良好な耐圧縮永久歪み特性を付与することができる。
【0089】
シリカ微粉末(表面疎水化処理後)のBET比表面積は、好ましくは0.1~1,000m2/g、より好ましくは1~500m2/g、更に好ましくは10~400m2/g、特に好ましくは20~300m2/gである。BET比表面積が0.1m2/gより低い場合、組成物中への分散安定性が得られず経時で沈降が起きたり、また補強効果の低下により硬化物に所望の物理的強度や圧縮永久歪み特性が得られないことがある。またBET比表面積が1,000m2/gより高いと、組成物中で成分の吸着が起きたり、高い増粘効果のために添加量が少なくなり、硬化物に所望の物理的強度や圧縮永久歪み特性が得られないことがある。なお、本発明においてBET比表面積はJIS Z 8830に規定された一点法のN2ガス吸着によって測定することができる。
微粉末シリカとしては、乾式シリカ(煙霧質シリカ又はヒュームドシリカ)、沈降法シリカ、ゲル法シリカ、コロイダルシリカ等の湿式シリカ、粉砕シリカ、結晶性シリカ(石英微粉末)溶融球状シリカ等が例示されるが、これらの中でも組成物中での分散安定性や硬化物への補強効果等から乾式シリカが最も好ましい。
【0090】
上記疎水化処理シリカ微粉末は、シリカ表面のケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)をアルキル基含有反応性ケイ素化合物及びアルケニル基含有反応性ケイ素化合物の両方の表面処理剤で処理することにより得られる。
【0091】
アルキル基含有反応性ケイ素化合物としては、以下に限定されるものではないが、ヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザン、ヘキサプロピルジシラザン、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,3-ジメチル-1,1,3,3-テトラエチルジシラザン等のシラザン化合物、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、トリメチルクロロシラン、トリエチルクロロシラン、トリプロピルクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジエチルジクロロシラン、ジプロピルジクロロシラン等のクロロシラン化合物等が挙げられるが、作業性やシリカ表面のシラノール基との反応性等から、シラザン化合物を用いるのが好ましく、特にヘキサメチルジシラザン、ヘキサエチルジシラザンを用いる場合が好ましい。
【0092】
アルケニル基含有反応性ケイ素化合物としては、以下に限定されるものではないが、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジアリルテトラメチルジシラザン、1,3-ジブテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジペンテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジヘキセニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジヘプテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジオクテニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジノネニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジデケニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジビニルテトラエチルジシラザン、1,3-ジメチルテトラビニルジシラザン等のシラザン化合物、ビニルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、ブテニルトリメトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、ジメチルビニルクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン等のクロロシラン化合物等が挙げられるが、作業性やシリカ表面のシラノール基との反応性等から、シラザン化合物を用いるのが好ましく、特に1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、1,3-ジアリルテトラメチルジシラザンを用いる場合が好ましい。
【0093】
アルキル基含有反応性ケイ素化合物及びアルケニル基含有反応性ケイ素化合物は、それぞれ単独の化合物で処理してもよいし、複数の化合物を組み合わせて処理してもよい。
【0094】
シリカ微粉末を疎水化処理する際、アルケニル基含有反応性ケイ素化合物が0.1~40mol%、アルキル基含有反応性ケイ素化合物が60~99.9mol%のmol比(但し、アルキル基含有反応性ケイ素化合物とアルケニル基含有反応性ケイ素化合物との合計で100モル%)で処理されることが好ましく、アルケニル基含有反応性ケイ素化合物が0.1mol%よりも少ないと、所望のゴム物性、特に圧縮永久歪み特性が得られなかったり、逆に40mol%よりも多いと、得られるゴム硬化物が硬く脆くなり、所望のゴム物性が得られない可能性がある。
【0095】
表面処理剤を使用して処理する方法としては、予め未処理のシリカ微粉末を粉体の状態で直接処理剤により気相処理するか又は、処理剤を適当な溶媒に希釈して処理するのが好ましい。かかる希釈溶媒としてはヘキサン、トルエン、アセトンなどが用いられる。
【0096】
表面処理方法としては、通常、公知の技術を採用することができ、例えば常圧で密閉された機械混練り装置に、或いは流動層に上記未処理のシリカ微粉末と表面処理剤を入れ、必要に応じて不活性ガス存在下において室温下或いは加熱下にて混合処理される。場合により加湿をしてもよく、混練り後乾燥することにより調製することができる。
【0097】
この(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して、1~40質量部であり、5~20質量部の範囲であることが好ましい。配合量が1質量部未満の場合には、得られる硬化物の物理的強度が得られず、一方、40質量部を超えると組成物の流動性が悪くなり、また光による硬化特性も著しく低下する可能性がある。
【0098】
本発明の組成物における(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の合計含有量は、70~100質量%であることが好ましく、80~100質量%であることがより好ましく、90~100質量%であることがさらに好ましい。
【0099】
〔(E)成分〕
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物には、更に、(E)成分として、本発明の効果を損なわない範囲で従来公知のヒドロシリル化反応の反応制御剤を配合することができる。これによって、組成物は更に良好な保存性を得ることができる。反応制御剤としては、例えば1-エチニル-1-ヒドロキシシクロヘキサン、3-メチル-1-ブチン-3-オール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール、3-メチル-1-ペンテン-3-オール、フェニルブチノールなどのアセチレンアルコールや、3-メチル-3-ペンテン-1-イン、3,5-ジメチル-3-ヘキセン-1-イン等のアセチレン化合物などが挙げられる。また、以下の構造式で示される含フッ素アセチレンアルコール化合物、若しくはポリメチルビニルシロキサン環式化合物、有機リン化合物なども反応制御剤として用いることができる。
【0100】
【化35】
【0101】
【化36】
【0102】
【化37】
【0103】
【化38】
【0104】
【化39】
【0105】
【化40】
【0106】
これら反応制御剤は、その化学構造によって制御能力が異なるため、添加量についてはそれぞれ最適な量に調整すべきである。一般的に、反応制御剤の添加量が少なすぎると室温での長期保存性が得られず、反応制御剤の添加量が多すぎると、硬化性が鈍くなり十分な硬化性が得られなくなる可能性がある。
【0107】
〔その他の成分〕
本発明の組成物においては、その実用性を高めるために上記の(A)~(E)成分以外にも、可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤、無機質充填剤、接着促進剤、接着助剤、シランカップリング剤等の各種配合剤を必要に応じて添加することができる。これら添加剤の配合量は、本発明の効果を損なわない範囲、及び光硬化性組成物の特性及び硬化物の物性を損なわない限りにおいて任意である。
【0108】
可塑剤、粘度調節剤、可撓性付与剤として、下記式(3)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物、及び/又は、下記式(4)及び/又は(5)で表される無官能性の直鎖状ポリフルオロ化合物を併用することができる。
【0109】
【化41】
【0110】
[式(3)中、X’は上記と同じ、Rf3は、下記式(iii)であり、aは、0又は1である。
【0111】
【化42】
【0112】
(式(iii)中、f1は1以上の整数、好ましくは2~100の整数であり、tは2又は3であり、且つf1は上記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さいことが好ましい。)]
【0113】
【化43】
【0114】
(式(4)中、Dは式:Cs2s+1-(sは1~3)で表される基であり、c1は1~200の整数、好ましくは2~100の整数であり、且つ、c1は前記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和よりも小さいことが好ましい。)
【0115】
【化44】
【0116】
(式(5)中、Dは式:Cs2s+1-(sは1~3)で表される基であり、d1及びe1はそれぞれ1~200の整数、好ましくは1~100の整数であり、且つ、d1とe1の和は、前記(A)成分のRf1基に関するp+q(平均)及びrの和、並びにu及びvの和のいずれの和以下である。)
【0117】
上記式(3)で表されるポリフルオロモノアルケニル化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる(なお、下記f1’は、上記f1の要件を満足するものである。)。
【0118】
【化45】
【0119】
式(4)及び(5)で表される直鎖状ポリフルオロ化合物の具体例としては、例えば、下記のものが挙げられる(なお、下記c1’、及びd1’とe1’の和は、上記C1、及びd1とe1の和の要件を満足するものである。)。
【0120】
【化46】
【0121】
(式中、c1’は1~200の整数である。)
【0122】
【化47】
【0123】
(式中、d1’は1~200の整数、e1’は1~200の整数で、d1’+e1’=2~200である。)
【0124】
式(3)~(5)の化合物の配合量は、本組成物中の(A)成分、特に式(1)の直鎖状ポリフルオロ化合物100質量部に対して1~300質量部、好ましくは50~250質量部である。また、回転粘度計による粘度(23℃)は、直鎖状ポリフルオロ化合物と同様の理由から、5~100,000mPa・sの範囲であることが望ましい。
【0125】
無機質充填剤として、例えば、石英粉末、溶融石英粉末、珪藻土、炭酸カルシウム等の補強性又は準補強性充填剤、酸化鉄、カーボンブラック、アルミン酸コバルト等の無機顔料、酸化チタン、酸化鉄、カーボンブラック、酸化セリウム、水酸化セリウム、炭酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸マンガン等の耐熱向上剤、アルミナ、窒化硼素、炭化ケイ素、金属粉末等の熱伝導性付与剤、カーボンブラック、銀粉末、導電性亜鉛華等の導電性付与剤等を挙げることができる。
【0126】
また、本発明では、必要により、カルボン酸無水物、チタン酸エステル等の接着促進剤、接着付与剤及び/又はシランカップリング剤を添加することができる。
【0127】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物]
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、上記した(A)~(D)成分、好ましくは(A)~(E)成分と、その他の任意成分とをプラネタリーミキサー、ロスミキサー、ホバートミキサー等の混合装置、必要に応じてニーダー、三本ロール等の混練装置を使用して均一に混合することによって製造することができる。
【0128】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の製造方法は特に制限されず、上記成分を練り合わせることにより製造することができる。また2種の組成物として調製し、使用時に混合するようにしてもよい。
【0129】
以下、(A)~(E)成分を配合した場合について光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の製造方法の一例を示す。
【0130】
[ベースコンパウンドの製造方法]
まず(A)成分100質量部に対して(D)成分を10~50質量部の範囲で加熱又は無加熱条件下で配合し、加熱・減圧条件下、若しくは加熱・加圧条件下で混練りを行って、(A)成分中に(D)成分が均一に分散してなるベースコンパウンドを調製する。
【0131】
ここで、(A)成分と(D)成分との配合・混練りは、(D)成分である疎水化処理されたシリカ微粉末の表面を(A)成分である直鎖状ポリフルオロ化合物で十分に被覆するために行われる。これにより、(B)成分が(D)成分のシリカ表面に吸着されにくくなったり、(B)成分及び(D)成分同士が凝集されにくくなることによって、光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の粘度が低減し、光硬化性が向上するからである。(A)成分と(D)成分との配合・混練りは、プラネタリーミキサー、ゲートミキサー及びニーダー等の混練り装置などによって行うことができる。
【0132】
ベースコンパウンド中の(A)成分と(D)成分との配合比は、(D)成分である疎水化処理されたシリカ微粉末の種類によっても異なるが、(A)成分100質量部に対して(D)成分を10~50質量部とすることが好ましい。(A)成分100質量部に対して(D)成分が10質量部未満である場合には、最終配合組成物の粘度の低減が困難で、非常に粘度が高くなってしまうことがある。また、(A)成分100質量部に対して(D)成分が50質量部を超えると、混練り時の発熱が激しくなり、組成物の機械的特性が低下し、粉末の機械での配合が難しくなることがある。
【0133】
ベースコンパウンド製造時の配合・混練りの温度及び時間に関しては、適宜決定すればよいが、熱処理温度は120~180℃、成分が均一に分散するように混練りは1時間以上行うことが好ましい。
【0134】
配合・混練り時の圧力に関しては、用いる装置によって異なるので、その装置に応じて加圧若しくは減圧下で行うことが好ましい。例えば、プラネタリーミキサーやゲートミキサーで混練りする場合には、その圧力条件はゲージ圧で-0.05MPa以下の減圧下であることが好ましい。また、ニーダーで混練りする場合には、その圧力条件はゲージ圧で0.4~0.6MPaの加圧下であることが好ましい。この条件下で操作を行う理由は、(A)成分が(D)成分の表面に濡れやすく(被覆しやすく)するためである。
【0135】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の製造]
以上のようにして得られた(A)成分及び(D)成分からなるベースコンパウンドに、更に、上記(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(E)成分を所定量配合し、均一に混合することにより、光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を得ることができる。
【0136】
なお、本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を使用するに当たり、その用途、目的に応じて適当なフッ素系溶剤、例えば、1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、フロリナート(3M社製)、パーフルオロブチルメチルエーテル、パーフルオロブチルエチルエーテル、パーフルオロポリエーテルオリゴマー、又はそれらの混合物等に所望の濃度に該組成物を溶解して使用してもよい。特に、薄膜コーティング用途においては溶剤を使用することが好ましい。
【0137】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の光硬化方法]
製造された光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物は、光照射により硬化され得る。硬化の際、照射する光は発光スペクトルにおける最大ピーク波長が300~400nmの領域にあり、且つ300nmより短い波長領域にある各波長の放射照度は前記最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、つまり0に近ければ近いほど好ましい。300nmより短い波長領域にあり、放射照度が前記最大ピーク波長の放射照度の5%より大きい波長を有する光を照射すると、ポリマー末端基の分解が起こったり、触媒の一部が分解したりするなどして、十分な硬化物を得ることができない可能性がある。
【0138】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を硬化させるのに用いる活性光線種は特に限定はされないが、紫外線、特には、最大ピーク波長が300~400nmである近紫外線であることが好ましい。良好な硬化性を得るための紫外線照射量(照度)は、積算光量として100mJ/cm2~100,000mJ/cm2、好ましくは1,000mJ/cm2~10,000mJ/cm2、より好ましくは5,000~10,000mJ/cm2である。紫外線照射量(照度)が上記範囲未満の場合には、組成物中の光活性型ヒドロシリル化反応触媒を活性化するのに十分なエネルギーが得られず、十分な硬化物を得ることができない可能性がある。また、紫外線照射量(照度)が上記範囲を超える場合には、組成物に必要以上のエネルギーが照射され、ポリマー末端基の分解が起こったり、触媒の一部が失活したりするなどして、十分な硬化物を得ることができない可能性がある。
【0139】
紫外線照射は複数の発光スペクトルを有する光であっても、単一の発光スペクトルを有する光であってもよい。また、単一の発光スペクトルは300nmから400nmまでの領域にブロードなスペクトルを有するものであってもよい。単一の発光スペクトルを有する光は、300nmから400nmまで、好ましくは350nmから380nmまでの範囲にピーク(即ち、最大ピーク波長)を有する光である。このような光を照射する光源としては、例えば、紫外線発光ダイオード(紫外線LED)や、紫外線発光半導体レーザー等の紫外線発光半導体素子光源が挙げられる。
【0140】
複数の発光スペクトルを有する光を照射する光源としては、例えば、メタルハライドランプ、キセノンランプ、カーボンアーク灯、ケミカルランプ、ナトリウムランプ、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ等のランプ等、窒素等の気体レーザー、有機色素溶液の液体レーザー、無機単結晶に希土類イオンを含有させた固体レーザー等が挙げられる。
【0141】
前記光が発光スペクトルにおいて300nmよりも短い波長領域にピークを有する場合、若しくは、300nmよりも短い波長領域に前記発光スペクトルにおける最大ピーク波長の放射照度の5%よりも大きい放射照度を有する波長が存在する場合(例えば、発光スペクトルが広域波長領域に渡ってブロードである場合)には、光学フィルターにより300nmよりも短い波長領域にある波長の光を除去する。これにより、300nmよりも短い波長領域にある各波長の放射照度を最大ピーク波長の放射照度の5%以下、好ましくは1%以下、より好ましくは0.1%以下、さらに好ましくは0%にする。なお、発光スペクトルにおいて300nmから400nmまでの波長領域に複数のピークが存在する場合には、その中で最大の吸光度を示すピーク波長を最大ピーク波長とする。光学フィルターは300nmよりも短い波長をカットするものであれば特に制限されないが、公知の物を使用すればよい。例えば365nmバンドパスフィルター等を使用することができる。なお、紫外線の照度、スペクトル分布は分光放射照度計、例えばUSR-45D(ウシオ電機)にて測定することができる。
【0142】
光照射装置としては、特に限定はされないが、例えばスポット式照射装置、面式照射装置、ライン式照射装置、コンベア式照射装置等の照射装置が使用できる。
【0143】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物を硬化させる際、光照射時間は、例えば1~300秒、好ましくは10~200秒、より好ましくは30~150秒であり、光照射の1~60分後、特には5~30分後には光硬化性組成物は流動性を失いゴム弾性体(ゴム硬化物)を得ることができる。
【0144】
[光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム硬化物]
上記(A)~(D)成分、好ましくは(A)~(E)成分を主成分とする本発明の光硬化性組成物は、前記光硬化方法により耐薬品性及び耐溶剤性に優れ、且つ透湿性の低いゴム硬化物を形成することができる。また、圧縮永久歪み特性にも優れる。ゴム硬化物の形成は、本発明の光硬化性組成物を適当な容器内に注入するか、若しくは適当な基体上にコーティングした後に、光照射し硬化させる等の従来公知の方法により容易に行うことができる。
【0145】
本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム硬化物は、例えば、自動車用、化学プラント用、半導体製造ライン用、分析・理化学機器用、医療機器用、燃料電池用、インクジェットプリンタ用、航空機用、有機ELパネル用等の様々な用途の部材として好適に使用することができる。
【0146】
更に詳述すると、本発明の硬化物及び硬化物を含むゴム製品は、例えば、自動車用ゴム部品、具体的には、ダイヤフラム類、バルブ類、若しくはシール材等;化学プラント用ゴム部品、具体的には、ポンプ用ダイヤフラム、バルブ類、ホース類、パッキン類、オイルシール、ガスケット、タンク配管補修用シール材等のシール材等;半導体製造ライン用ゴム部品、具体的には、薬品が接触する機器用のダイヤフラム、弁、パッキン、ガスケット等のシール材等、低摩擦耐磨耗性を要求されるバルブ等;分析・理化学機器用ゴム部品、具体的には、ポンプ用ダイヤフラム、弁、シール部品(パッキン等);医療機器用ゴム部品、具体的には、ポンプ、バルブ、ジョイント等;燃料電池用ゴム部品、具体的には、燃料電池用シール材;インクジェットプリンタ用ゴム部品;航空機用ゴム部品;有機ELパネル用ゴム部品;その他のゴム部品;具体的には、テント膜材料、シーラント、成型部品、押し出し部品、被覆材、複写機ロール材料、電気用防湿コーティング材、センサー用ポッティング材、工作機器用シール材、積層ゴム布等に有用である。
【実施例
【0147】
以下、実施例及び比較例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において部は質量部を示す。また、粘度は23℃における測定値を示す(JIS K7117-1に準拠)。分子量は、フッ素系溶剤を展開溶媒としたGPC分析におけるポリスチレン換算の数平均分子量を示す。比表面積はJIS Z 8830に規定された一点法によるN2ガス吸着により測定を行った。
【0148】
疎水化処理シリカ微粉末の調製
[合成例1]
BET比表面積 300m2/gの未処理乾式シリカ微粉末(品名 AEROSIL300:日本アエロジル(株)社製商品名)100gに1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン1.1g(0.006モル)、及びヘキサメチルジシラザン17.3g(0.107モル)の混合物を添加し、温度200℃で120分加熱撹拌後に冷却し、調製した。得られた処理シリカのBET表面積は182m2/gであった。
【0149】
[合成例2]
比表面積 50m2/gの未処理乾式シリカ微粉末(品名 AEROSIL50:日本アエロジル(株)社製商品名)100gに1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン0.19g(0.001モル)、及びヘキサメチルジシラザン2.91g(0.018モル)の混合物を添加し、温度200℃で120分加熱撹拌後に冷却し、調製した。得られた処理シリカのBET表面積は41m2/gであった。
【0150】
[合成例3]
比表面積 50m2/gの未処理乾式シリカ微粉末(品名 AEROSIL50:日本アエロジル(株)社製商品名)100gに1,3-ジオクテニルテトラメチルジシラザン0.35g(0.001モル)、及びヘキサメチルジシラザン2.91g(0.018モル)の混合物を添加し、温度200℃で120分加熱撹拌後に冷却し、調製した。得られた処理シリカのBET表面積は35m2/gであった。
【0151】
[合成例4]
比表面積 300m2/gの未処理乾式シリカ微粉末(品名 AEROSIL300:日本アエロジル(株)社製商品名)100gにヘキサメチルジシラザン18.3g(0.113モル)の混合物を添加し、温度200℃で120分加熱撹拌後に冷却し、調製した。得られた処理シリカのBET表面積は195m2/gであった。
【0152】
[合成例5]
比表面積 50m2/gの未処理乾式シリカ微粉末(品名 AEROSIL50:日本アエロジル(株)社製商品名)100gにヘキサメチルジシラザン3.07g(0.019モル)の混合物を添加し、温度200℃で120分加熱撹拌後に冷却し、調製した。得られた処理シリカのBET表面積は43m2/gであった。
【0153】
光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物用ベースコンパウンドの製造
[製造例]
下記式(6)で表されるポリマー(粘度9,000mPa・s、ビニル基量0.00013モル/g、数平均分子量15,700)100部に上記合成例1~5で調製した、疎水化処理されたシリカ微粉末20部をプラネタリーミキサーにて分割添加し、1時間混練りを行った(表1)。次いで、150℃で1時間混合減圧(-0.08~-0.10MPa)熱処理し、冷却後3本ロールにて分散処理してベースコンパウンド1~5の製造を行った。また、ベースコンパウンド1~5の粘度を測定した(表1)。
【0154】
【化48】
【0155】
【表1】
【0156】
光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物の調製
[実施例1]
製造例1で調製したベースコンパウンド120部に式(6)で示されるポリマー33.3部をプラネタリーミキサー内に仕込み、均一になるまで混合した。これに(メチルシクロペンタジエニル)トリメチル白金(IV)の1,3-ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン溶液(白金濃度3.0質量%)0.08部、1-エチニル-1-ヒドロキシシクロヘキサンのトルエン溶液(5.0質量%)0.06部、下記式(7)で示される含フッ素オルガノ水素シロキサン3.5部(Si-H基量0.00500モル/g)を順次添加し、均一になるよう混合した。その後、脱泡操作を行うことにより組成物を調製した。表2は、実施例及び比較例の組成(単位:質量部)を示す。
【0157】
【化49】
【0158】
[実施例2]
上記実施例1において、使用するベースコンパウンドを製造例2で調製したもの(120部)に変更した以外は同様にして組成物を調製した。
【0159】
[実施例3]
上記実施例1において、使用するベースコンパウンドを製造例3で調製したもの(120部)に変更した以外は同様にして組成物を調製した。
【0160】
[比較例1]
上記実施例1において、使用するベースコンパウンドを製造例4で調製したもの(120部)に変更した以外は同様にして組成物を調製した。
【0161】
[比較例2]
上記実施例1において、使用するベースコンパウンドを製造例5で調製したもの(120部)に変更した以外は同様にして組成物を調製した。
【0162】
[保存安定性評価]
上記実施例及び比較例で得られた光硬化性組成物を遮光中、23℃で2週間放置し初期粘度との比較を行った。その結果を表2に示す。なお、粘度の測定はJIS K7117-1に準拠し、東機産業株式会社製TV-10U型回転粘度計(ロッドNo.H7、23℃、50rpm)を使用して行った。その結果を表2に示す。
【0163】
[光硬化性評価]
上記実施例及び比較例より得られた組成物を、25℃、8mmφのアルミニウム基材上、試料厚み1.0mmで塗布し、UV照射を行い、25℃での弾性率の経時変化を測定した。測定にはTAインスツルメント社製アレスG2を使用し、UV照射にはLumen Dynamics社製OmniCure S2000に320-390nmのバンドパスフィルターを付け、365nmで100mW/cm2のUV照度で90秒間照射を行った。その結果を表3に示す。
【0164】
【表2】
【0165】
【表3】
【0166】
表2の結果より、本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物が遮光中23℃において良好な保存安定性を示すことが分かった。
また、表3の結果より、本発明の光硬化性フルオロポリエーテル系ゴム組成物がUV照射後、25℃で良好な硬化性を示すことが分かった。
【0167】
[光硬化物のゴム物性評価]
上記実施例及び比較例で得られた組成物をそれぞれ(H)×(D)×(t)=105mm×85mm×2mmの型に流し込み、面照射タイプのUV-LED照射器(シーシーエス(株)製)を用いて光照射を行った。その際、365nmの光の積算光量が9,000mJ/cm2となるよう100mW/cm290秒間照射を行った。光照射後は直ちに遮光し、23℃で24時間静置した。24時間後、JIS K6250、6251、625
3、6262に準じてそれぞれゴム物性評価を行った。結果を表4に示す。
【0168】
【表4】
【0169】
表4の結果より、本発明の組成物の光硬化物が圧縮永久歪み特性に優れることが分かった。