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  • 特許-精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋
(51)【国際特許分類】
   F23M 11/02 20060101AFI20220614BHJP
   F27D 3/16 20060101ALI20220614BHJP
   C22B 15/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
F23M11/02
F27D3/16 Z
C22B15/00 102
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018165667
(22)【出願日】2018-09-05
(65)【公開番号】P2020038036
(43)【公開日】2020-03-12
【審査請求日】2021-09-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067736
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100192212
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 貴明
(74)【代理人】
【識別番号】100204032
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 浩之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 修
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 友彦
【審査官】河野 俊二
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164466(JP,A)
【文献】特開2011-068931(JP,A)
【文献】特開2009-085522(JP,A)
【文献】国際公開第2015/155415(WO,A1)
【文献】特開平07-318030(JP,A)
【文献】特開平09-053078(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23M 11/02
F27D 3/16
C22B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
精鉱バーナーに形成された略筒状の点検孔に差し込まれて該点検孔を閉蓋する精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋であって、
上記点検孔の形状に合わせて形成され、該点検孔の内部側の内部側開口部を閉蓋する栓部と、
上記栓部に取り付けられた主軸と、
上記主軸に上記栓部と離間して取り付けられ、上記点検孔の外部側の外部側開口部を閉蓋する鍔部とを備え、
上記栓部と上記主軸はそれぞれが中空で内部が連通し、上記主軸には穴部が設けられていることを特徴とする精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋。
【請求項2】
上記穴部は、上記鍔部と上記栓部の間にある上記主軸上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋。
【請求項3】
上記穴部は、上記鍔部より上記栓部の側とは反対側にある上記主軸上に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋。
【請求項4】
上記穴部の直径は、上記主軸の内径に対して40%~60%の大きさであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋。
【請求項5】
上記穴部は、上記点検孔の閉蓋時に鉛直下向きとなるように形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自熔製錬炉等に設けられて製錬原料と反応用気体とを炉内に送り込むための精鉱バーナーにおいて、精鉱バーナーの内部を確認するための点検孔に差し込まれて、点検孔を閉蓋する精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
硫化精鉱を原料とする製錬炉の一つに、一般には自熔炉と呼ばれている自熔製錬炉がある。自熔製錬炉は、基本的には、リアクションシャフト、セトラー、アップテイクなどによって構成され、原料はリアクションシャフトに炉頂より装入される。
【0003】
炉頂には製錬原料と反応用気体とを炉内に送りこむ為の精鉱バーナーが取り付けられており、精鉱バーナーにおいては炉頂周辺と補助燃料バーナーを点検する為の点検孔が備えられている。
【0004】
自熔製錬炉においては、粉状の固体硫化物などの製錬原料が、反応用酸素富化空気などの反応用気体と共に、リアクションシャフトの頂部に設けられた精鉱バーナーより、リアクションシャフト内に吹き込まれる。吹き込まれた製錬原料は、補助燃料の熱或いは反応用気体の顕熱や、炉壁内の輻射熱などによって昇温し、瞬時に反応用気体と反応してセトラーに溜められる。セトラー内では、熔体は比重差によってカラミとカワとに分けられ、カラミはカラミ抜き口から排出されて、電気錬かん炉に導入される。一方、カワはカワ抜き口から次の工程である転炉のバッチプロセスでの要求に応じて抜き出される。また、リアクションシャフト内で発生する高温排ガスは、セトラー及びアップテイクを通って排出され、ボイラーで冷却される。
【0005】
点検孔は精鉱バーナーにおいて原料と反応用気体が混ざるバーナーコーン部に備えられており、通常操業中は反応用気体の乱流と原料の衝突による摩耗を防止する為、差し込み蓋を設置することで、点検孔内部を塞いでいる。
【0006】
例えば、特許文献1に記載の精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋は、差し込み蓋先端の各面がバーナーコーンライナーに接する様になっており、設置位置を固定して栓部の先端面が精鉱バーナーのライナーの内周面と面一となる状態を持続できるよう箱形の形状をしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2016-164466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載の精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋において、精鉱バーナー内部は加熱した反応用空気と、炉内からの輻射熱により高温の状態となっており、箱形の形状をした差し込み蓋先端(栓部)は内部の圧が上がることによって破損する場合があった。
【0009】
そこで栓部分に直接穴を空けて圧力が抜ける状態で操業を行ったところ、バーナーコーン内の圧力が上昇したときに、点検孔と栓部の隙間から外部に漏れ出る原料が穴部に入り込み、固着することで差し込み蓋が重くなり抜き出しにくくなるという問題も生じた。
【0010】
本発明は、このような実情に鑑みて提案されたものであり、差し込み蓋先端への原料の侵入を抑制するとともに栓部分の内圧の上昇を防止する精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意検討した結果、圧力を抜くための穴の位置と大きさによっては差し込み蓋の先端内部に細かい原料が入り込まない様に圧力を抜くことができることを見出し、本発明の完成に至ったものである。
【0012】
すなわち、本発明の一態様は、精鉱バーナーに形成された略筒状の点検孔に差し込まれて該点検孔を閉蓋する精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋であって、点検孔の形状に合わせて形成され、該点検孔の内部側の内部側開口部を閉蓋する栓部と、栓部に取り付けられた主軸と、主軸に栓部と離間して取り付けられ、点検孔の外部側の外部側開口部を閉蓋する鍔部とを備え、栓部と主軸はそれぞれが中空で内部が連通し、主軸には穴部が設けられている。
【0013】
本発明の一態様によれば、栓部と主軸が中空で内部が連通していることで、栓部内の内圧が上昇した場合であっても、主軸の内部を通って主軸上の穴部から圧力を抜くことができ、また、主軸上に穴部を設けることで栓部に細かい原料が入り込まないようにすることができる。
【0014】
このとき、本発明の一態様では、穴部は、鍔部と栓部の間にある主軸上に設けられているようにすることができる。
【0015】
栓部ではなく主軸上に穴部を設けることで、栓部に細かい原料が入り込むのを防止することができる。
【0016】
また、本発明の一態様では、穴部は、鍔部より栓部の側とは反対側にある主軸上に設けられていてもよい。
【0017】
鍔部の外側に穴部を設けることで原料の入り込みを防ぐ効果はより高くなる。
【0018】
また、本発明の一態様では、穴部の直径は、主軸の内径に対して40%~60%の大きさとすることができる。
【0019】
穴部の大きさを上記範囲とすることで、原料の入り込みを防ぎつつ、効率的に内部の圧力を抜くことができる。
【0020】
また、本発明の一態様では、穴部は、点検孔の閉蓋時に鉛直下向きとなるように形成されるようにしても良い。
【0021】
穴部の向きを鉛直下向きとすることで、さらに原料の入り込みを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、差し込み蓋先端への原料の侵入を抑制するとともに栓部分の内圧の上昇を防止する精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の使用状態を示した概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の斜視図である。
図3】本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の側面断面図である。
図4】本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の平面図である。
図5】本発明に係る差し込み深さ調整機構の一例を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋(以下、単に、差し込み蓋とも言う。)について図面を参照して説明する。なお、本発明は以下の例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更可能である。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の使用状態を示した概略図である。本発明の一実施形態に係る差し込み蓋1は、例えば、非鉄金属製錬に使用される自熔製錬炉の頂部に設置されて、銅精鉱、フラックス、補助燃料などの製錬原料と反応用気体とを自熔製錬炉内に送り込むための精鉱バーナー10において、精鉱バーナー10の内部の状況やリアクションシャフト(反応塔)の内部の状況等を確認したり、精鉱バーナー10内や補助燃料用バーナー25の先端等の付着物を除去したりするための点検孔26に着脱可能に差し込まれて、この点検孔26を閉蓋する精鉱バーナー10の点検孔26用の差し込み式の蓋である。
【0026】
精鉱バーナー10は、例えば、精鉱シュート21と、反応用気体送り管22と、バーナーコーン23と、固定式又は可動式の風速調整器24とを備えている。精鉱シュート21は、製錬原料をリアクションシャフト(反応塔)内に送り込むための管状部材であり、リアクションシャフトに向かって鉛直方向に延びている。反応用気体送り管22は、精鉱シュート21を包囲(内包)する状態で設けられた管状構造体であり、管内の所定位置より下方に向かうにしたがって径が小さくなるように形成されており、反応用気体をリアクションシャフト内に導入する。バーナーコーン23は、管状に形成されていて、その上端23aが反応用気体送り管22の下端22aに接続されており、反応塔内に製錬原料と反応用気体とを送り込むようになっている。風速調整器24は、反応用気体送り管22と精鉱シュート21とにより形成された反応用気体の流路の幅を所定の大きさに狭めるような形状に形成されていて、精鉱シュート21の外周に設けられており、反応用気体流の速度を決めることができるようになっている。更に、精鉱シュート21の中心部には、送り込まれる製錬原料と反応用気体を昇温させるための補助燃料を送り込む補助燃料用バーナー25がリアクションシャフトに向けて延びている。更に、反応用気体送り管22及びバーナーコーン23は、これらの内壁となり耐摩耗材を溶射した耐摩耗ライナー30と、耐摩耗ライナー30の外側に配置されて、耐摩耗ライナー30を冷却する水冷ジャケット31とで構成されている。
【0027】
また、バーナーコーン23の側面には、精鉱バーナー10の内部の状態を確認したり、精鉱バーナー10内や補助燃料用バーナー25の先端等の付着物を除去したりするための点検孔26が設けられている。この点検孔26は、例えば四角柱状の略筒状で、バーナーコーン23の内外を貫通させる貫通孔であり、例えば断面視矩形状に形成され、耐摩耗ライナー30と水冷ジャケット31とを貫通する形で開口されている。点検孔外部から内部までは、例えば600mm程度の距離がある。点検孔26は、精鉱バーナー10の内部側(耐摩耗ライナー30側)から外部側(水冷ジャケット31)に向かうに連れて上方に傾斜するように形成されている。
【0028】
図2は、本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の斜視図であり、図3は、側面断面図であり、図4は平面図である。本発明の一実施形態に係る差し込み蓋1は、図2図3図4に示すように、精鉱バーナー10に設けられた略筒状の点検孔26の形状に合わせて形成され、点検孔26の内部側の内部側開口部26aを閉蓋する栓部2と、この栓部2に溶着された主軸3と、この主軸3の中途部に栓部2と離間して溶着されて、点検孔26の外部側の外部側開口部26bを閉蓋する鍔部4と、主軸3の栓部2とは反対側の端部に溶着された取っ手となる操作取手5とを備えている。なお、差し込み蓋1は、操作取手5を、主軸3の栓部2とは反対側の端部に設けることに限定されるものではなく、鍔部4に直接的に取り付けるようにしてもよい。主軸3には栓部2加熱時の圧力を抜くための穴部6が設けられている。穴部6については後述する。
【0029】
栓部2は、点検孔26の形状及び大きさに合わせて、図2に示すように、例えば、点検孔26の内部側開口部26aと断面視略同形の中空の箱状に形成されており、内部を中空とすることで作業者が片手で点検孔26の開閉作業を行える程度まで軽量化が図られている。更に、栓部2は、図1に示すように、差し込み蓋1が点検孔26内に差し込まれて点検孔26の内部側開口部26aを閉蓋している際に、栓部2の先端面2aと耐摩耗ライナー30の内周面30aとが面一となるように、栓部2の先端面2aが耐摩耗ライナー30の内周面30aと同じ湾曲形状に形成されている。更に、この栓部2の先端面2aは、耐摩耗材が溶射されており、耐摩耗ライナー30と同様の耐久性を有している。更に、栓部2は、差し込み蓋1が点検孔26内に差し込まれて点検孔26の内部側開口部26aを閉蓋している際に、耐摩耗ライナー30と水冷ジャケット31との間に存在する隙間32を埋めるような厚みを有している。
【0030】
なお、差し込み蓋1は、栓部2が耐摩耗ライナー30と水冷ジャケット31との間の隙間32を埋める厚みを有していることが好ましいが、これに限定されるものではなく、点検孔26の内部側開口部26aを閉蓋することができるものであればよく、栓部2が、隙間32の一部を埋める程度の厚みを有するようにしてもよく、隙間32を埋めることなく、耐摩耗ライナー30と同じ厚さ又はやや薄く形成されるようにしてもよい。
【0031】
主軸3は、図2に示すように、円柱や角柱等の棒部材で構成され、内部が中空となっており、かつ中空部分は栓部2の中空部分と連通している。主軸3の先端部は、栓部2に溶着され、基端部に操作取手5が溶着されている。更に、主軸3は、図1に示すように、栓部2が点検孔26の内部側開口部26aを閉蓋している際に、基端部が点検孔26から外部に露出するような長さを有している。
【0032】
鍔部4は、図2に示すように、点検孔26の外部側開口部26bよりも大きな矩形板状に形成され、主軸3の中途部に溶着されている。具体的には、鍔部4は、図1に示すように、栓部2の先端面2aと耐摩耗ライナー30の内周面30aとが面一となった際にバーナーコーン23の側面に一体形成された筒状部材28の外端面に当接するように、栓部2から離間して主軸3の中途部に溶着されており、栓部2の差し込み深さの位置決めを行う。なお、鍔部4は、矩形板状に形成されることに限定されるものではなく、円形状、楕円形状、矩形状以外の多角形状等に形成されるようにしてもよい。
【0033】
また、鍔部4には、点検孔26に差し込み蓋1を差し込んだ際の鍔部4の位置を調整可能にする差し込み深さ調整機構40を有していても良い。図5は、本発明に係る差し込み深さ調整機構の一例を示した平面図である。例えば、差し込み深さ調整機構40は、図5に示すように主軸3の略中央部に設けられたねじ山部41と、鍔部4の前後に取り付けられる2つのナット42から構成され、2つのナット42により鍔部4を締め付ける位置を調整することで、栓部2の差し込み深さを可変することができる。このように、差し込み深さ調整機構40により、差し込み蓋1の差し込み深さを調整することにより、例えば耐摩耗ライナー30の内周面30aが使用期間に応じて摩耗してきた場合であっても、容易にライナー面と栓部2の先端面2aを一致させるように差し込み深さを調整することができる。
【0034】
差し込み蓋1を使用して精鉱バーナー10の点検孔26を閉蓋するに際しては、差し込み蓋1の操作取手5を持って、点検孔26の外部側開口部26bから差し込み蓋1の栓部2を点検孔26に挿入し、鍔部4がバーナーコーン23の筒状部材28の端面と当接するまで、差し込み蓋1を点検孔26に差し込む。すると、点検孔26の内部側開口部26aが栓部2によって閉蓋され、点検孔26の外部側開口部26bが鍔部4によって閉蓋され、耐摩耗ライナー30と水冷ジャケット31との間の隙間32と点検孔26とが栓部2によって遮断され、更に、栓部2の先端面2aと耐摩耗ライナー30の内周面30aとが面一となる。
【0035】
このように、差し込み蓋1は、栓部2の先端面2aが精鉱バーナー10の耐摩耗ライナー30の内周面30aと面一となるように形成されていることにより、点検孔26の内部側開口部26aから点検孔26の内部に製錬原料や反応用気体が流入することを防止することができるとともに、精鉱バーナー10内での製錬原料や反応用気体の流れを妨げることを防止できるので、点検孔26内及び精鉱バーナー10内の点検孔26周辺での乱流の発生を抑制することができ、耐摩耗ライナー30の寿命をより延長することができる。
【0036】
また、本発明の一実施形態に係る差し込み蓋1では、図3に示すように、主軸3を中空とし、かつ栓部2の中空部と連通させ、主軸3に穴部6を設けることで、栓部2内の内圧が上昇した場合であっても、主軸3上の穴部6からガスを排出して圧力を抜くことができ、また、主軸3上に穴部6を設けることで栓部2に細かい原料が入り込まないようにしている。
【0037】
穴部6は、図4に示すように、鍔部4と栓部2の間にある主軸3上(図4の穴部6Aの位置)に設けても良いし、鍔部4より点検孔26の外部側にある主軸3上(図4の穴部6Bの位置)に設けてもよい。鍔部4と栓部2の間にある主軸3上(図4の穴部6Aの位置)に設ける場合には、圧抜きの空気が外部に噴き出すことはないため安全である。圧抜きの空気は、水冷ジャケット31により冷却されるため、点検孔26内部の圧力上昇にはならない。細かい原料の浸入を防止するため、穴部6は鍔部4に近い側の主軸3上に設けることが好ましい。また、鍔部4より栓部2の側の反対側にある主軸3上(図4の穴部6Bの位置)に設ける場合には、原料の入り込みを防ぐ効果はさらに高くなる。一方で、圧抜きの空気が外部に噴き出すことになるため、取り扱い時には注意が必要となる。
【0038】
穴部6の直径は、主軸3の内径に対して40%~60%の大きさとすることが好ましい。例えば、主軸3の内径がφ10mmの場合には、主軸3にφ4mm~6mm程度の穴を設けることが好ましい。穴部6の内径が小さすぎると内部の圧抜きを十分に行うことができず、また、穴部6の内径が大きすぎると精鉱バーナー内部で巻きあがった細かい精鉱が穴部6に入り込む恐れがある。穴部6は必ずしも円形である必要はなく、矩形状やスリット状となっていても良い。また、穴部6は1つあれば十分であるが、複数設けていても良い。あるいは、穴部6を通気性の良いカバーで覆うようにしても良い。
【0039】
また、穴部6は、点検孔26の閉蓋時に鉛直下向きとなるように主軸3に形成されることが好ましい。穴部6の向きを鉛直下向きとすることで、仮に細かい精鉱が巻きあがった場合であっても、穴部6から内部に入り込み難くなる。
【0040】
なお、本発明の一態様では、主軸3上に穴部6を設けているが、例えば、栓部2に主軸3とは別の軸(副軸)を設けても良い。この場合、副軸は、差し込み蓋1の移動用の主軸3とは別に、栓部2内部の圧抜き用の軸となる。
【実施例
【0041】
以下に示す実施例及び比較例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例及び比較例によって何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
実施例1では、内径φ10mmの主軸にφ5mmの穴部を設けた精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋を用いて自熔炉による銅製錬を行った。約1ヶ月間連続で使用しても栓部の破損や原料の入り込みは確認されなかった。
【0043】
(比較例1)
比較例1では、穴部を設けない差し込み蓋を用いて自熔炉による銅製錬を行った。しばらく使用していると、差し込み蓋の先端部が自熔炉の熱を受けて箱内の温度が上昇し圧力が高まったことにより変形がみられた。
【0044】
(比較例2)
比較例2では、栓部の外部側(鍔部側)の2箇所の面に空気抜き穴を形成した差し込み蓋を用いて自熔炉による銅製錬を行った。栓部の変形は確認されなかったが、約1ヶ月間連続で使用すると、巻きあがった細かい精鉱が徐々に入り込んで蓄積されることにより、差し込み蓋の重量が重くなってしまった。
【0045】
以上の結果から、本発明の一実施形態に係る精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋を適用することにより、差し込み蓋先端への原料の侵入を抑制するとともに栓部分の内圧の上昇を防止することができることが分かった。
【0046】
なお、上記のように本発明の一実施形態及び各実施例について詳細に説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは、当業者には、容易に理解できるであろう。したがって、このような変形例は、全て本発明の範囲に含まれるものとする。
【0047】
例えば、明細書又は図面において、少なくとも一度、より広義又は同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書又は図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。また、精鉱バーナー点検孔用差し込み蓋の構成も本発明の一実施形態及び各実施例で説明したものに限定されず、種々の変形実施が可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 差し込み蓋、2 栓部、2a 先端面、3 主軸、4 鍔部、5 操作取手、6(6A,6B) 穴部、10 精鉱バーナー、21 精鉱シュート、22 反応用気体送り管、22a 下端、23 バーナーコーン、23a 上端、24 風速調整器、25 補助燃料用バーナー、26 点検孔、26a 内部側開口部、26b 外部側開口部、27 蓋、28 筒状部材、30 耐摩耗ライナー、30a 内周面、31 水冷ジャケット、32 隙間、40 差し込み深さ調整機構、41 ねじ山部、42 ナット
図1
図2
図3
図4
図5