(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間の測定方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/06 20060101AFI20220614BHJP
C08K 5/544 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K5/544
(21)【出願番号】P 2019073922
(22)【出願日】2019-04-09
【審査請求日】2021-04-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】特許業務法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 実行
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-083399(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00-83/16
C08K 5/544
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化して
、25℃においてJIS K6249に規定するゴム硬度(TypeA)が5~80であるシリコーンゴム硬化物を与える、室温で液状又はペースト状の
縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法であって、5~90℃の範囲内の所定温度及び5~95%RHの範囲内の所定湿度の環境下で上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料について該試料を硬化させながら動的粘弾性測定を行い、測定開始時点から貯蔵せん断弾性率と損失せん断弾性率が等しくなるまでの時間を硬化時間とする
縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
【請求項2】
5~90℃の温度範囲及び5~95%RHの湿度範囲での温湿度調節機能を備え、直径が40mm以下の平行平板型冶具又は直径が40mm以下、コーン角が5°以下のコーンプレート型冶具を備えた動的粘弾性測定機を用い、所定の温湿度に調節された該測定機の冶具内に上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料を0.1~5mmの範囲で一定の厚みとなるように注入し、60秒以下の一定時間毎に該試料に一定の加振周波数及び歪みを付与して上記貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率を測定するものである請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
【請求項3】
直径が5~25mmの平行平板型冶具を備えた動的粘弾性測定機を用いて上記貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率を測定する請求項2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
【請求項4】
縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が下記(A)~(D)成分を含有するものである請求項
1~3のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
(A)下記平均組成式(1)
R
a(XO
1/2)
bSiO
(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立に非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは水素原子又は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは1.7~2.2の正数であり、bは0.0001~0.2の正数であり、a+bは1.9~2.4を満たす正数である。但し、分子鎖末端のケイ素原子と該ケイ素原子に隣接するケイ素原子を連結する酸素原子(O)は炭素数1~5のアルキレン基で置換されていてもよい。)
で示される、分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合した加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基を有し、分子鎖末端が-SiR
2(OH)基及び/又は-R’-SiR
1
3(式中、Rは前記と同じであり、R’は酸素原子又は炭素数1~5のアルキレン基であり、R
1はR又はOR
2(R
2は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基である。)であり、但し3個のR
1のうち少なくとも1個はOR
2である。)で封鎖されたオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記一般式(2)
R
3
(4-d)Si(OR
4)
d (2)
(式中、R
3は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R
4は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、dは3又は4である。)
で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物: 0.2~30質量部、
(C)アミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解物: 0.1~10質量部、
(D)硬化触媒: 0.1~10質量部
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性を、好ましくは、分子鎖末端に加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)を有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)とする縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性を定義する(即ち、硬化時間を測定する)ものであり、優れた再現性を発現する方法である。
なお、本発明において、シリコーンゴム(又はシリコーンゴム硬化物)とは、通常、25℃においてJIS K6249に規定するゴム硬度(TypeA)が5以上、好ましくは5~80、より好ましくは10~70程度である、機械的強度とゴム弾性を有するエラストマー状の硬化物(即ち、オルガノポリシロキサンの弾性架橋物)を意味するものであって、上記のゴム硬度が0(即ち、有効なゴム硬度値を示さない程低硬度)であり、架橋密度が極端に低く、低応力性の硬化物であるいわゆるシリコーンゲル(又はシリコーンゲル硬化物)とは、本質的に別異のものである。
【背景技術】
【0002】
湿気により架橋する縮合硬化型の室温硬化性シリコーンゴム組成物(縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物)は、その取り扱いが容易な上、該組成物を硬化してなるシリコーンゴム硬化物は耐候性や電気特性に優れているため、建材用のシーリング材、電気・電子分野、車載用電子部品のシール材等の接着剤など様々な分野で使用されている(例えば、特開2017-88689号公報(特許文献1))。
【0003】
このような縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、室温(20±15℃)下で大気中の湿気により縮合硬化(架橋)して、通常、数分から数日間でシリコーンゴム硬化物を形成するものであるが、該室温硬化性組成物の硬化状態を判定する(即ち、硬化時間を測定する)場合、従来は測定者自身の官能試験による指触乾燥時間(あるいはタックフリータイム)として硬化状態(硬化時間)が定義されていた。
【0004】
しかしながら、タックフリータイムは官能試験であって測定者の感覚に依存するところが大きいことから測定者によるばらつきが大きいこと、及び測定者自身が測定環境に存在する必要があることから測定環境の管理・調整が容易でないことなどの理由から、事実上固定された条件(23±2℃かつ50±5%RH)に限定されていた。
【0005】
しかしながら、近年では、このような縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であっても、現場施工での幅広い温湿度条件での硬化や加温、加湿による硬化促進が求められており、そのような状態で硬化状態を測定することが要求されてきている、また、官能試験においては、測定者の熟練度に起因するばらつきもあり、このばらつき低減も要求されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、様々な温湿度条件下でも室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性を再現性よく定義する(再現性よく硬化時間を測定する)方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、下記に示す測定方法で、種々の条件で再現性のある室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化性(硬化時間)が測定できることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
即ち、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法を提供するものである。
1.
硬化して、25℃においてJIS K6249に規定するゴム硬度(TypeA)が5~80であるシリコーンゴム硬化物を与える、室温で液状又はペースト状の縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法であって、5~90℃の範囲内の所定温度及び5~95%RHの範囲内の所定湿度の環境下で上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料について該試料を硬化させながら動的粘弾性測定を行い、測定開始時点から貯蔵せん断弾性率と損失せん断弾性率が等しくなるまでの時間を硬化時間とする縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
2.
5~90℃の温度範囲及び5~95%RHの湿度範囲での温湿度調節機能を備え、直径が40mm以下の平行平板型冶具又は直径が40mm以下、コーン角が5°以下のコーンプレート型冶具を備えた動的粘弾性測定機を用い、所定の温湿度に調節された該測定機の冶具内に上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料を0.1~5mmの範囲で一定の厚みとなるように注入し、60秒以下の一定時間毎に該試料に一定の加振周波数及び歪みを付与して上記貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率を測定するものである1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
3.
直径が5~25mmの平行平板型冶具を備えた動的粘弾性測定機を用いて上記貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率を測定する2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
4.
縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が下記(A)~(D)成分を含有するものである1~3のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法。
(A)下記平均組成式(1)
Ra(XO1/2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立に非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは水素原子又は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは1.7~2.2の正数であり、bは0.0001~0.2の正数であり、a+bは1.9~2.4を満たす正数である。但し、分子鎖末端のケイ素原子と該ケイ素原子に隣接するケイ素原子を連結する酸素原子(O)は炭素数1~5のアルキレン基で置換されていてもよい。)
で示される、分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合した加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基を有し、分子鎖末端が-SiR2(OH)基及び/又は-R’-SiR1
3(式中、Rは前記と同じであり、R’は酸素原子又は炭素数1~5のアルキレン基であり、R1はR又はOR2(R2は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基である。)であり、但し3個のR1のうち少なくとも1個はOR2である。)で封鎖されたオルガノポリシロキサン: 100質量部、
(B)下記一般式(2)
R3
(4-d)Si(OR4)d (2)
(式中、R3は炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、R4は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、dは3又は4である。)
で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物: 0.2~30質量部、
(C)アミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解物: 0.1~10質量部、
(D)硬化触媒: 0.1~10質量部
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化状態を測定する(硬化時間を測定する)方法によれば、通常の室温下の大気中で湿気硬化してシリコーンゴム硬化物を与える場合だけではなく、低温低湿状態あるいは高温高湿状態などの環境下において、測定者が指触による方法では測定、評価ができない又は困難な場合であっても、該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化状態を評価しその硬化時間を測定することが可能となり、更に作業者による硬化時間の測定のばらつきも低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法の実施の形態について説明する。
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法は、硬化してシリコーンゴム硬化物を与える、室温で液状又はペースト状の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を測定する方法であって、5~90℃の範囲内の所定温度及び5~95%RHの範囲内の所定湿度(相対湿度)の環境下で上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料について該試料を硬化させながら動的粘弾性測定を行い、測定開始時点から貯蔵せん断弾性率と損失せん断弾性率が等しくなるまでの時間を硬化時間とするものである。
【0012】
ここで、本発明で用いる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化してシリコーンゴム硬化物を与える、室温で液状又はペースト状のものであって、好ましくは縮合硬化型の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物であり、より好ましくは下記(A)~(D)成分を必須成分として含有してなるものであり、その他の任意成分を含有してもよい。以下、各成分について、詳細に説明する。なお、本明細書中において、粘度は25℃における回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)による測定値である。
【0013】
[(A)オルガノポリシロキサン]
本発明において好適に適用される室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の(A)成分は、該組成物の主剤(ベースポリマー)となる成分であり、下記平均組成式(1)
Ra(XO1/2)bSiO(4-a-b)/2 (1)
(式中、Rは独立に非置換又は置換の一価炭化水素基であり、Xは水素原子又は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、aは1.7~2.2の正数であり、bは0.0001~0.2の正数であり、a+bは1.9~2.4を満たす数である。但し、分子鎖末端のケイ素原子と該ケイ素原子に隣接するケイ素原子を連結する酸素原子(O)は炭素数1~5のアルキレン基で置換されていてもよい。)
で示される、分子中に少なくとも1個のケイ素原子に結合した加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)を有し、分子鎖末端が-SiR2(OH)基及び/又は-R’-SiR1
3(式中、Rは前記と同じであり、R’は酸素原子又は炭素数1~5のアルキレン基であり、R1はR又はOR2(R2は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基である。)であり、但し3個のR1のうち少なくとも1個はOR2である。)で封鎖されたオルガノポリシロキサンである。
【0014】
上記平均組成式(1)中、Rは、通常、炭素数が1~10、好ましくは1~6の、置換又は非置換の一価炭化水素基を表す。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;これらの基の水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素等のハロゲン原子で置換された、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が挙げられるが、合成の容易さ等の観点から、メチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましい。
【0015】
Xは、水素原子又は独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基である。Xが非置換の一価炭化水素基である場合、その炭素数が1~10であり、好ましくは1~6である。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基である。
【0016】
上記OR2を構成するR2は、炭素数1~10、好ましくは1~6の非置換の一価炭化水素基を表す。その具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、シクロヘキシル基、オクチル基、デシル基等のアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソブテニル基等のアルケニル基等が挙げられるが、合成の容易さ等の観点から、メチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
【0017】
上記平均組成式(1)中、aは1.7~2.2の正数であり、好ましくは1.8~2.1の正数である。bは0.0001~0.2の正数であり、好ましくは0.0002~0.1の正数、より好ましくは0.001~0.01の正数である。また、a+bは1.9~2.4の正数、好ましくは1.95~2.2の正数である。
【0018】
なお、前記加水分解性シリル基は、好適には-SiR1
3(R1は前記と同じ。以下、同じ。)で示されるものであり、例えば、-Si(OR2)3(R2は前記と同じ。以下、同じ。)で示されるトリ(オルガノオキシ)シリル基、-SiR(OR2)2で示されるオルガノジ(オルガノオキシ)シリル基、-SiR2(OR2)で示されるジオルガノ(オルガノオキシ)シリル基等の、ケイ素原子上に1~3個の加水分解性基(OR2で示されるオルガノオキシ基)を有するものであり、特に好ましくは-Si(OR2)3で示されるトリ(オルガノオキシ)シリル基である。この加水分解性シリル基は、より具体的には、-R’-SiR1
3(R’は酸素原子又は炭素数1~5のアルキレン基である。)の形態で分子鎖末端及び/又は分子鎖非末端(特に好ましくは分子鎖両末端)に存在する。また、ケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)は、通常、-SiR2(OH)で示されるジオルガノヒドロキシシリル基の形態で分子鎖末端及び/又は分子鎖非末端(特に好ましくは分子鎖両末端)に存在するものである。
【0019】
ここで、前記1分子中に少なくとも1個含有される前記加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)は、その少なくとも1個が分子鎖末端のケイ素原子に結合しているが、その残りの加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)が分子鎖末端のケイ素原子に結合していても、分子鎖非末端(即ち、分子鎖途中)のケイ素原子に結合していても、あるいはそれらの組み合わせであってもよい。また、これらの加水分解性シリル基及び/又はケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)は、好ましくは1分子中に2~10個、より好ましくは2~6個、更に好ましくは2個(特には、分子鎖両末端のケイ素原子上にそれぞれ1個ずつ)含有されるものである。
【0020】
上記平均組成式(1)で示されるオルガノポリシロキサンの分子構造は、特に限定されず、直鎖状、分子鎖の一部に分岐構造(RSiO3/2単位、SiO2単位)含む分岐鎖状、又は三次元網状(樹脂状)構造等のいずれでもよいが、主鎖が基本的にジオルガノシロキサン単位(R2SiO2/2)の繰り返しからなり、分子鎖両末端が-SiR2(OH)等で示されるケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)及び/又は-R’-SiR1
3等で示される加水分解性シリル基で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンであることが好適である。
【0021】
本成分のオルガノポリシロキサンの粘度は、好ましくは100~1,000,000mPa・sであり、より好ましくは1,000~500,000mPa・sである。この粘度が100~1,000,000mPa・sである場合には、得られる硬化物は、強度、流動性、作業性により優れたものとなる。
【0022】
以上の要件を満たす本成分のオルガノポリシロキサンとしては、例えば、下記一般式(1a)~(1d)で表されるものが挙げられる。
(HO)R2SiO-[SiR2O]n-SiR2(OH) (1a)
(R2O)3Si-R’-[SiR2O]n-SiR2-R’-Si(OR2)3 (1b)
(R2O)2RSi-R’-[SiR2O]n-SiR2-R’-SiR(OR2)2 (1c)
(R2O)R2Si-R’-[SiR2O]n-SiR2-R’-SiR2(OR2) (1d)
(上記各式中、R、R1、R2及びR’はそれぞれ独立に、上記平均組成式(1)と同じであり、nは、50~2,000の整数、好ましくは80~1,200の整数、より好ましくは100~800の整数である。なお、好適には、Rはメチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基又は3,3,3-トリフルオロプロピル基であり、R2はメチル基、エチル基、イソプロピル基又はtert-ブチル基であり、R’はメチレン基、エチレン基又はプロピレン基(トリメチレン基)である。)
【0023】
なお、本発明において、主鎖を構成する二官能性シロキサン単位(SiR2O)の繰り返し数(又は重合度)又は分子量は、通常、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる。
【0024】
(A)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独の成分であっても、2種以上の混合物であってもよい。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分は、下記一般式(2)で示される加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物であり、本発明に係る組成物において架橋剤(硬化剤)として作用するものである。なお、本発明において「部分加水分解縮合物」とは、該シラン化合物を部分的に加水分解・縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基を2個以上、好ましくは3個以上含有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する。
R3
(4-d)Si(OR4)d (2)
【0026】
上記一般式(2)中、R3は、炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば、3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、メチル基、エチル基、プロピル基、ビニル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基が好ましく、より好ましくはメチル基、ビニル基、フェニル基である。
R4は、独立に炭素数1~10の非置換の一価炭化水素基であり、R3からハロゲン置換一価炭化水素基を除いたものが例示され、メチル基、エチル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。なお、R4は、それぞれが同一であっても異なっていてもよく、またR4とR3が同一の基であっても異なっていてもよい。
また、dは3又は4である。
【0027】
(B)成分の具体例としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン等のアルコキシシラン、並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物(メチルシリケート、エチルシリケート等)が挙げられる。これらの中では、テトラメトキシシラン、メチルトリメトキシシランが好ましい。
【0028】
(B)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.2~30質量部、より好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは1~15質量部の範囲が望ましい。(B)成分の配合量が少なすぎると、保存安定性が低下することがあり、(B)成分の配合量が多すぎると、得られる硬化物は機械的特性が低下し易く、硬化速度も遅くなるなどの欠点が発生する場合がある。
【0029】
なお、(B)成分の加水分解性(オルガノ)シラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物は、分子中にアミノ官能性基を有さないものである点において、後述する(C)成分のアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解物とは明確に区別されるものである。
【0030】
[(C)成分]
(C)成分のアミノ基含有加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解物は、本発明に係る組成物において接着性付与剤として重要な効果を発揮するものであり、この(C)成分としてはアミノ基含有シランカップリング剤(即ち、分子中にアミノ官能性基で置換された1価炭化水素基とアルコキシ基等の複数の加水分解性基とを有する加水分解性シラン化合物などの、いわゆるアミノ基含有カーボンファンクショナルシラン)が例示され、下記一般式(3)で示されるアミノ基含有加水分解性シラン化合物が好ましい。
【0031】
【化1】
(式中、R
5は芳香環を含む炭素数7~10の二価炭化水素基であり、R
6は炭素数1~10の二価炭化水素基であり、R
7及びR
8はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、gは2又は3である。但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR
5の芳香環に直結していない。)
【0032】
このアミノ基含有シラン化合物は、1級アミンと2級アミンの間に芳香環を含み、更に少なくとも一方が芳香環に直結していない構造をしており、詳しくは特開平5-105689号公報に記載されている。
【0033】
式中、R5は芳香環を含む炭素数7~10の二価炭化水素基であり、フェニレン基とアルキレン基とが結合した基が好ましく、例えば、下記式(4)~(12)で示されるものが挙げられる。
-CH2-C6H4- (4)
-CH2-C6H4-CH2- (5)
-CH2-C6H4-CH2-CH2- (6)
-CH2-C6H4-CH2-CH2-CH2- (7)
-CH2-CH2-C6H4- (8)
-CH2-CH2-C6H4-CH2- (9)
-CH2-CH2-C6H4-CH2-CH2- (10)
-CH2-CH2-CH2-C6H4- (11)
-CH2-CH2-CH2-C6H4-CH2- (12)
これらの中で、特に好ましくは式(5)で示される基である。
なお、フェニレン基に結合するアルキレン基の配向は、オルト位、メタ位、パラ位のいずれであってもよい。特に好ましくはメタ位である。
【0034】
R6は炭素数1~10の二価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基とが結合した基などが挙げられるが、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0035】
また、R7、R8はそれぞれ独立に炭素数1~10の非置換又はハロゲン置換一価炭化水素基であり、前記式(2)におけるR3で例示したものと同様のものを例示することができる。R7としては、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基であり、R8としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0036】
(C)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部、特に好ましくは0.5~3質量部である。(C)成分の配合量が少なすぎると、接着性が低下する場合がある。多すぎると価格的に不利になる場合や、組成物の保存安定性が低下したりする場合がある。
【0037】
[(D)成分]
(D)成分の硬化触媒は、縮合触媒作用を有するものであれば特に制限されないが、環境的に有機錫化合物触媒を用いることが好ましくない用途では、有機錫化合物以外のものであることが好ましい。このような硬化触媒として、具体的には、テトライソプロポキシチタン、テトラ-n-ブトキシチタン、テトラキス(2-エチルヘキソキシ)チタン、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、チタニウムイソプロポキシオクチレングリコール等のチタン酸エステル又はチタンキレート化合物;アルミニウムイソプロピレート、アルミニウムsec-ブチレート、アルミニウムエチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等のアルミニウムアルコレート又はアルミニウムキレート化合物;テトラメチルグアニジルプロピルトリメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルメチルジメトキシシラン、テトラメチルグアニジルプロピルトリス(トリメチルシロキシ)シラン等のグアニジル基を含有するシラン又はシロキサン;オクチル酸鉛やその他の酸性触媒もしくは塩基性触媒等の従来公知の触媒が例示される。これらの中で、有機チタン化合物が好ましく、特にチタンキレート化合物が好ましく、イソプロポキシチタンビス(エチルアセトアセテート)、イソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタンが特に好ましい。
(D)成分の硬化触媒は、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。
【0038】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~8質量部、特に好ましくは0.5~5質量部である。(D)成分の配合量が少なすぎると、十分な架橋性が得られない場合があり、多すぎると、価格的に不利になる場合や硬化速度が低下するなどの欠点が発生する場合がある。
【0039】
[その他の成分]
また、本発明で用いる組成物には、その目的を損なわない範囲において上記成分以外に、無機充填剤、添加剤等を配合してもよい。
無機充填剤は、例えば、粉砕シリカ、煙霧質シリカ、湿式シリカ、結晶性シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、ガラスビーズ、ガラスバルーン、樹脂ビーズ、樹脂バルーンなどが挙げられ、これらは1種単独で使用してもよく、また2種類以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中で、煙霧質シリカ、炭酸カルシウムが好ましい。これらの無機充填剤は、表面処理されていなくても、クロロシラン、アルコキシシラン、シラザン、オルガノポリシロキサンや脂肪酸、脂肪酸誘導体等の公知の処理剤で表面処理されていてもよい。
【0040】
添加剤としては、例えば、ウェッターやチキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としての非反応性ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ単位〔(CH3)3SiO1/2単位〕とSiO2単位とからなる網状ポリシロキサン等が挙げられる。これらの中で非反応性ジメチルシリコーンオイル(両末端がトリメチルシリル基で封鎖されたジメチルポリシロキサン)は、硬さの調整や作業性の調整のために好適に用いることができ、配合する場合の配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して1~100質量部であることが好ましく、より好ましくは2~50質量部である。
【0041】
更に、必要に応じて、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ブリードオイルとしての非反応性フェニルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤を添加してもよい。
これらの成分は、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法のどの工程で配合してもよい。
【0042】
本発明で用いる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、上述した各成分において、(D)成分を混合する前に、(A)成分と(B)成分の一部又は全部と(C)成分とを事前に混合することが好ましい。より好ましくは、(A)成分と(B)成分を混合した後(C)成分を混合するか、(A)成分、(B)成分、(C)成分を同時に混合する。これら成分の混合は、実質的に無水の条件下にて、室温(通常0~40℃、好ましくは10~30℃)で行えばよく、時間は、通常10分~5時間、好ましくは20分~3時間程度である。また、混合は、常圧下又は加圧下で行うことが好ましい。
その後、(A)成分と(B)成分と(C)成分の混合物と、(D)成分((B)成分に残りがある場合には、この残りの(B)成分及び(D)成分)を混合する。この場合の混合は、常温で行えばよいが、必要に応じて加熱してもよい。混合時間は、上記成分が均一となるのに十分な時間であればよく、通常5分~2時間、好ましくは10分~1時間程度である。また、混合は、常圧下又は減圧下で行うことが好ましい。
【0043】
なお、(B)成分は、好ましくは一部を(A)、(C)成分と共に事前混合し、残部は事前混合後に混合するが、この場合、事前混合に用いられる(B)成分は、(A)成分の末端を封鎖するのに十分な量であればよい。
また、上記(A)~(D)成分以外の成分を配合する場合は、どの工程で配合してもよいが、(A)~(C)成分を事前混合した後に混合することが望ましい。
【0044】
得られた室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、湿分を避けた雰囲気で保存することができ、これを室温に放置することにより、空気中の水分存在下で通常5分~1週間程度で硬化する。
【0045】
本発明では上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を用いて、具体的には以下のようにその硬化時間を測定するとよい。
即ち、本発明に係る室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間の測定方法は、5~90℃の温度範囲及び5~95%RHの湿度範囲での温湿度調節機能を備え、直径が40mm以下の平行平板型冶具又は直径が40mm以下、コーン角が5°以下のコーンプレート型冶具を備えた動的粘弾性測定機を用い、所定の温湿度に調節された該測定機の冶具内に上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料を0.1~5mmの範囲で一定の厚みとなるように注入し、この試料を硬化させながら60秒以下の一定時間毎に該試料に一定の加振周波数及び歪みを付与して上記貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率を測定し、測定開始時点から貯蔵せん断弾性率と損失せん断弾性率が等しくなるまでの時間を硬化時間とするものであることが好ましい。
【0046】
このような動的粘弾性測定機は、測定環境の温湿度を5~90℃の温度範囲及び5~95%RHの湿度範囲で調整できる温湿度調節機能を備え、液状又はペースト状の試料の貯蔵せん断弾性率及び損失せん断弾性率が測定可能な装置であればよく、例えばAnton Paar社製の粘弾性測定機「MCR-302」及び対流式オーブン温湿度制御装置「CTD-180」を組み合わせたものが挙げられる。この場合、粘弾性測定機「MCR-302」が上記冶具を備え、試料の動的粘弾性測定を行う装置であり、対流式オーブン温湿度制御装置「CTD-180」が上記粘弾性測定機において冶具を内部に収納してその内部を所定の温湿度に調整可能な装置である。
【0047】
このときの動的粘弾性の測定条件は、以下のようにするとよい。
・平行平板型冶具の直径:好ましくは40mm以下、より好ましくは5~25mm
・コーンプレート型冶具の直径:好ましくは40mm以下、より好ましくは5~25mm
・コーンプレート型冶具のコーン角:好ましくは5°以下、より好ましくは1~3°
・試料の厚み(冶具内の注入空間間隔で設定):好ましくは0.1~5mm、特に2mm
・加振周波数:好ましくは0.01~10Hz、より好ましくは0.5~5Hz、特に1Hz
・歪み量:好ましくは0.1~10%、好ましくは0.5~5%、特に1%
・測定頻度:好ましくは60秒以下の一定時間毎、より好ましくは5~30秒の一定時間毎、特に好ましくは5~15秒の一定時間毎
【0048】
上記室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の粘弾性特性として、測定開始直後(即ち、硬化開始直後)では(損失せん断弾性率)>(貯蔵せん断弾性率)の状態にあり、その状態から室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の試料を硬化させながら上記動的粘弾性測定を行った場合、湿気の影響により試料の表面から硬化反応が進行するのに伴って損失せん断弾性率が減少し、貯蔵せん断弾性率が増加するように変化する。本発明では、測定開始直後から一定の条件での動的粘弾性測定を行って損失せん断弾性率及び貯蔵せん断弾性率の変化をモニターしておき、測定開始時点から貯蔵せん断弾性率と損失せん断弾性率が等しくなるまでの時間を硬化時間と定義するものである。これにより、通常の室温下の大気中で湿気硬化してシリコーンゴム硬化物を与える場合だけではなく、低温低湿状態あるいは高温高湿状態などの環境下において測定者が指触による方法では測定や評価ができない又は困難な場合であっても室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間を正確に、再現性よく測定することができるようにするものである。
【実施例】
【0049】
以下、本発明を具体的に説明する実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、粘度は25℃における回転粘度計による測定値であり、室温は25℃を意味し、「部」は質量部を意味する。
【0050】
<組成物1の調製>
25℃における粘度が5,000mPa・sの分子鎖両末端シラノール封鎖直鎖状ジメチルポリシロキサン 100部、比表面積200m
2/gの煙霧質シリカ 12部、平均粒径5μmの結晶性シリカ 25部を室温減圧下、60分間混合した。
次に、メチルトリメトキシシランの部分加水分解縮合物(メチルシリケート) 4部を添加し、室温減圧下、40分間混合した後、チタンジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート) 4部及び下記式(13)で表されるアミノ基含有シラン化合物1部を室温減圧下にて30分間混合し、組成物1を得た。なお、式(13)中、Meはメチル基である。
【化2】
【0051】
[実施例1]
Anton Paar社製粘弾性測定機MCR-302及び対流式オーブン温湿度制御装置CTD-180を用いて、予め冶具内環境が温度23℃、相対湿度50%RHとなるように設定し、直径25mmの平行平板型冶具内の注入空間(間隔2mm)に組成物1を注入し、10秒毎に加振周波数1Hz及び歪み量1%で貯蔵せん断弾性率、損失せん断弾性率を測定した。測定開始時点からそれらの値が等しくなるまでの時間(=硬化時間)は120秒であった。
【0052】
[実施例2]
実施例1において、冶具内環境を温度10℃、相対湿度30%RHに変更し、それ以外は実施例1と同様にした。その結果、硬化時間は420秒であった。
【0053】
[実施例3]
実施例1において、冶具内環境を温度35℃、相対湿度40%RHに変更し、それ以外は実施例1と同様にした。その結果、硬化時間は50秒であった。
【0054】
[実施例4]
実施例1において、冶具内環境を温度40℃、相対湿度40%RHに変更し、それ以外は実施例1と同様にした。その結果、硬化時間は20秒であった。
【0055】
[比較例1]
組成物1の試料を用いて、温度23℃、相対湿度50%RHの雰囲気下で、JIS K6249に従って指触乾燥時間(タックフリータイム)を測定したところ、2分(=120秒)であった。
【0056】
[比較例2]
組成物1の試料を用いて、温度10℃、相対湿度30%RHの雰囲気下で、JIS K6249に従って指触乾燥時間を測定したところ、7分(=420秒)であった。
【0057】
[比較例3]
組成物1の試料を用いて、温度35℃、相対湿度40%RHの雰囲気下で、JIS K6249に従って指触乾燥時間を測定したところ、1分(=60秒)であった。
【0058】
[比較例4]
組成物1の試料を用いて、温度40℃、相対湿度40%RHの雰囲気下で、JIS K6249に従って指触乾燥時間を測定したが、1分(=60秒)であった。
以上の結果をまとめると、下記の表1のようになる。
【0059】
【0060】
以上の結果、実施例では、実施例1~4のすべてにおいて環境条件(温湿度)と室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化時間はよい相関を示していた。例えば、実施例1よりも低温低湿度の環境条件の実施例2は実施例1よりも硬化時間が長くなっていた。また、実施例3よりも5℃だけ高温の実施例4は実施例3よりも硬化時間が短くなっていた。
一方、比較例において、比較例1、2では環境条件(温湿度)と指触乾燥時間とよい相関を示しているものの、比較例3、4では指触乾燥時間が同じ1分となっており、その環境条件の差が反映されない結果となっていた。
即ち、通常の室温環境条件では、実施例1、2の硬化時間と、比較例1、2の指触乾燥時間は一致し、同様の硬化性の評価が可能であるが、より高温多湿の条件では、比較例の指触乾燥時間の評価ではその硬化性の評価を正確にできないところ、実施例では正確な硬化性の評価が可能となっており、本発明の測定方法の有利性は明らかである。