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特許7088170コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板及び半導体パッケージ
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  • 特許-コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板及び半導体パッケージ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】コアレス基板用プリプレグ、コアレス基板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/24 20060101AFI20220614BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20220614BHJP
   C08G 73/12 20060101ALI20220614BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08J5/24 CFG
H05K3/46 B
C08G73/12
H05K1/03 610N
H05K3/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019509999
(86)(22)【出願日】2018-03-28
(86)【国際出願番号】 JP2018012844
(87)【国際公開番号】W WO2018181514
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-02-04
(31)【優先権主張番号】P 2017063974
(32)【優先日】2017-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】特許業務法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 弘
(72)【発明者】
【氏名】橋本 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】坂本 徳彦
(72)【発明者】
【氏名】土川 信次
(72)【発明者】
【氏名】縄手 克彦
(72)【発明者】
【氏名】高根沢 伸
【審査官】大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-045887(JP,A)
【文献】特開2015-224304(JP,A)
【文献】特開2015-224303(JP,A)
【文献】特開2014-024927(JP,A)
【文献】特開2014-024925(JP,A)
【文献】特開平05-230242(JP,A)
【文献】国際公開第2006/001445(WO,A1)
【文献】特開2017-075221(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04-5/10;5/24
B32B 1/00-43/00
C08G 73/00-73/26
C08K 3/00-13/08
C08L 1/00-101/14
H05K 1/03,3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジシアンジアミド(a)、第三級ホスフィンとキノン類との付加物(b)と共に、アミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなり、前記アミノ変性ポリイミド樹脂(X)が、分子構造中に少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)と分子構造中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)との反応物である、コアレス基板用プリプレグ。
【請求項2】
ジシアンジアミド(a)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して0.05~1.5質量部である、請求項1に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(e)を含有する、請求項1又は2に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項4】
前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに無機充填材(f)を含有する、請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグ。
【請求項5】
請求項1~のいずれか1項に記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有する、コアレス基板。
【請求項6】
請求項に記載のコアレス基板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コアレス基板用プリプレグ、並びにこれを用いたコアレス基板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び高性能化により、プリント配線板には従来にも増して配線密度の高度化及び高集積化と共に、基板の薄型化が求められている。
これらの要求を踏まえたパッケージ構造として、例えば、特許文献1及び特許文献2には、コア基板を有さず、高密度配線化が可能なビルドアップ層を主体としたコアレス基板が提案されている。このコアレス基板は、金属板等の支持体(コア基板)上にビルドアップ層を形成した後、該支持体(コア基板)を除去することにより得られるものであり、つまりこの場合はビルドアップ層のみとなる。コアレス基板の形成に使用されるビルドアップ層としては、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグ等が用いられる。
【0003】
コアレス基板は、支持体(コア基板)を除去することによる薄型化によって剛性が低下するため、半導体素子を搭載してパッケージ化した際に半導体パッケージが反るという問題がより顕著になる。反りは、半導体素子とプリント配線板との接続不良を引き起こす要因の1つとされており、コアレス基板においては、より一層効果的な反りの低減が切望されている。
【0004】
半導体パッケージが反る要因の1つとしては、半導体素子とプリント配線板の熱膨張率の差が挙げられる。一般的には、半導体素子の熱膨張率よりもプリント配線板の熱膨張率の方が大きいため、半導体素子実装時にかかる熱履歴等によって応力が発生して反りが生ずるものである。したがって、半導体パッケージの反りを抑制するためには、プリント配線板の熱膨張率を小さくして半導体素子の熱膨張率との差を小さくする必要があり、このことはコアレス基板であっても同様である。
特許文献3には、ガラスクロスを含まない絶縁樹脂を絶縁層としてプリプレグの両面に積層する方法が開示されているが、この方法では、熱膨張率が大きくなるため、反りが大きくなる傾向にある。
【0005】
ここで、ガラスクロスに樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグの熱膨張率は、下記式で示される、Scapery式に従うことが一般的に知られている。
A≒(ArErFr+AgEgFg)/(ErFr+EgFg)
(上記式中、Aはプリプレグの熱膨張率、Arは樹脂組成物の熱膨張率、Erは樹脂組成物の弾性率、Frは樹脂組成物の体積分率、Agはガラスクロスの熱膨張率、Egはガラスクロスの弾性率、Fgはガラスクロスの体積分率を表す。)
上記Scapery式から、任意の体積分率において同一の物性のガラスクロスを使用した場合、樹脂組成物の弾性率及び熱膨張率を低減することによってプリプレグの低熱膨張化が可能となることが分かる。
【0006】
例えば、特許文献4には、半導体パッケージの反りを低減することができるプリプレグとして、特定の低弾性成分を含有する樹脂組成物及び織布基材で形成されたプリプレグが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-72085号公報
【文献】特開2002-26171号公報
【文献】特開2009-231222号公報
【文献】特開2015-189834号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献4に示されるような、樹脂組成物の弾性率を低減したプリプレグは、剛性低下によってビルドアップ層にかかる負荷の影響が大きく、例えば、ビルドアップ層形成後のレーザー等によるビアホール形成工程において、金属回路が剥離することがある。そのため、金属回路との接着強度の向上が求められている。
【0009】
本発明の目的は、こうした現状に鑑み、コアレス基板に要求される水準の、耐熱性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度を満足し得る、コアレス基板用プリプレグ、並びにこれを用いたコアレス基板及び半導体パッケージを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ジシアンジアミド(a)、第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)、特定のアミン化合物(c)、及び特定のマレイミド化合物(d)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるプリプレグであれば上記課題を解決し得ること、そして該プリプレグがコアレス基板用として有用であることを見出し、本発明に到達した。
【0011】
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]を提供するものである。
[1]ジシアンジアミド(a)、第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなる、コアレス基板用プリプレグ。
[2]ジシアンジアミド(a)、第三級ホスフィンとキノン類との付加物(b)と共に、アミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなり、前記アミノ変性ポリイミド樹脂(X)が、分子構造中に少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)と分子構造中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)との反応物である、コアレス基板用プリプレグ。
[3]ジシアンジアミド(a)の含有量が、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して0.05~1.5質量部である、上記[1]又は[2]に記載のコアレス基板用プリプレグ。
[4]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂(e)を含有する、上記[1]~[3]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[5]前記熱硬化性樹脂組成物が、さらに無機充填材(f)を含有する、上記[1]~[4]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグ。
[6]上記[1]~[5]のいずれかに記載のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有する、コアレス基板。
[7]上記[6]に記載のコアレス基板に半導体素子を搭載してなる半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、コアレス基板に要求される水準の、耐熱性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度を満足し得る、コアレス基板用プリプレグ、並びにこれを用いたコアレス基板及び半導体パッケージを提供することができる。また、本発明のコアレス基板用プリプレグを用いることにより、支持体(コア基板)がなくて薄型化されているにも関わらず、曲げ弾性率が高くて剛性に優れる基板(コアレス基板)が得られる。さらには、デスミア重量減少量を小さく抑えることもでき、耐デスミア性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のコアレス基板の製造方法の一態様を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値及び上限値と任意に組み合わせられる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本発明に含まれる。
【0015】
[コアレス基板用プリプレグ]
本発明のコアレス基板用プリプレグ(以下、単に「プリプレグ」ともいう)は、ジシアンジアミド(a)、第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)を含有する熱硬化性樹脂組成物を含んでなるプリプレグである。以下、それぞれ、(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分と称することがある。
本発明のプリプレグは、耐熱性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度に優れるため、コアレス基板の絶縁層のように、耐熱性、金属回路との接着強度、さらには、薄型化に伴う反り等の改善が求められる用途において特に好適である。
以下、本発明のプリプレグの作製に用いられる熱硬化性樹脂組成物が含有する各成分について順に説明する。
【0016】
<ジシアンジアミド(a)>
本発明のプリプレグは、熱硬化性樹脂組成物が後述する(b)成分~(d)成分と共にジシアンジアミド(a)を含有することにより、コアレス基板に用いられる場合でも、耐熱性及び低熱膨張性を良好に維持しながら、金属回路との接着強度を向上させることができる。その理由は定かではないが、ジシアンジアミドが有する極性基と金属回路との相互作用が強く影響していると考えられる。
【0017】
ジシアンジアミド(a)は、HN-C(=NH)-NH-CNで表され、融点は通常、205~215℃、より純度の高いものでは207~212℃である。
ジシアンジアミド(a)は、結晶性物質であり、斜方状晶であってもよいし、板状晶であってもよい。ジシアンジアミド(a)は、純度98%以上のものが好ましく、純度99%以上のものがより好ましく、純度99.4%以上のものがさらに好ましい。
ジシアンジアミド(a)としては、市販品を使用することができる。市販品としては、例えば、和光純薬工業株式会社製、日本カーバイド工業株式会社製、東京化成工業株式会社製、キシダ化学株式会社製、ナカライテスク株式会社製等が挙げられる。
【0018】
ジシアンジアミド(a)の含有量は、硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、0.05~1.5質量部が好ましく、0.05~1.0質量部がより好ましく、0.05~0.7質量部がさらに好ましく、0.08~0.7質量部が特に好ましく、0.1~0.5質量部が最も好ましい。0.05質量部以上であることにより、金属回路との接着強度の向上効果が十分となる傾向にある。また、1.5質量部以下であることにより、(a)成分が熱硬化性樹脂組成物中に不均一に分散されるのを抑制できる傾向にあり、それによってプリプレグの電気的信頼性が高まる。
さらに、前記範囲において、ジシアンジアミド(a)の含有量の下限値は0.2であってもよく、0.25であってもよい。
ここで、本実施形態における固形分とは、水分、後述する有機溶媒等の揮発する物質以外の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近の室温で液状、水飴状及びワックス状のものも含み、必ずしも固体であることを意味するものではない。
【0019】
<第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)を含有することで、耐熱性及び低熱膨張性が向上する。第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(b)成分を構成する原料の第3級ホスフィンとしては、特に限定されるものではなく、トリアルキルホスフィン、トリシクロアルキルホスフィン、トリアリールホスフィン、モノアルキルジアリールホスフィン、ジアルキルモノアリールホスフィン等が挙げられる。
トリアルキルホスフィンとしては、例えば、トリメチルホスフィン、トリ(n-ブチル)ホスフィン、トリエチルホスフィン等が挙げられる。該トリアルキルホスフィンのアルキル部位の炭素数は、それぞれ、好ましくは1~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~5である。トリアルキルホスフィンとしては、トリ(n-ブチル)ホスフィンが好ましい。
トリシクロアルキルホスフィンとしては、例えば、トリシクロヘキシルホスフィン等が挙げられる。該トリシクロアルキルホスフィンのシクロアルキル部位の炭素数は、それぞれ、好ましくは4~10、より好ましくは5~8である。
トリアリールホスフィンとしては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィン、トリス(4-エチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-プロピルフェニル)ホスフィン、トリス(4-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(イソプロピルフェニル)ホスフィン、トリス(t-ブチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,4,6-トリメチルフェニル)ホスフィン、トリス(2,6-ジメチル-4-エトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-エトキシフェニル)ホスフィン等が挙げられる。該トリアリールホスフィンのアリール部位の炭素数は、それぞれ、好ましくは6~18、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。トリアリールホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリス(p-トリル)ホスフィンが好ましい。
【0020】
モノアルキルジアリールホスフィンとしては、例えば、n-ブチルジフェニルホスフィン、エチルジフェニルホスフィン等が挙げられる。該モノアルキルジアリールホスフィンのアルキル部位の炭素数は、好ましくは1~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~5である。該モノアルキルジアリールホスフィンのアリール部位の炭素数は、それぞれ、好ましくは6~18、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。
ジアルキルモノアリールホスフィンとしては、例えば、ジ(n-ブチル)フェニルホスフィン等が挙げられる。該ジアルキルモノアリールホスフィンのアルキル部位の炭素数は、それぞれ、好ましくは1~10、より好ましくは2~8、さらに好ましくは2~5である。該ジアルキルモノアリールホスフィンのアリール部位の炭素数は、好ましくは6~18、より好ましくは6~12、さらに好ましくは6~10である。
【0021】
(b)成分を構成する原料のキノン類としては、例えば、o-ベンゾキノン、p-ベンゾキノン等のベンゾキノン;ジフェノキノン;1,4-ナフトキノン等のナフトキノン;アントラキノンなどが挙げられる。これらの中でも、耐湿性及び保存安定性の観点から、ベンゾキノンが好ましく、p-ベンゾキノンがより好ましい。
【0022】
(b)成分の製造方法に特に制限はなく、第3級ホスフィンとキノン類とを接触させることによって得られる。例えば、第3級ホスフィンとキノン類が共に溶解する溶媒中で両者を攪拌混合して接触させる方法等によって製造できる。この方法において、接触させる際の温度は、室温~80℃が好ましい。また、溶媒としては、原料の溶解度が高く、且つ生成する付加物(つまり(b)成分)の溶解度が低い溶媒が好ましく、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン類がより好ましい。攪拌時間に特に制限はないが、通常、1~12時間攪拌することが好ましい。
【0023】
第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、下記一般式(b-1)で表される化合物を用いることが好ましい。
【化1】

(式(b-1)中、Rb1~Rb3は、各々独立に、有機基を表す。Rb4~Rb6は、各々独立に、水素原子、炭素数1~12のアルキル基又は炭素数1~12のアルコキシル基を表す。Rb5とRb6は、互いに結合して環を形成していてもよい。)
【0024】
一般式(b-1)中のPは、リン原子である。
一般式(b-1)中のRb1~Rb3が表す有機基としては、例えば、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアラルキル基等が挙げられる。該有機基は、ハロゲン原子を含有しない有機基であることが好ましい。
上記アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。アルキル基としては、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数3~6のアルキル基がより好ましく、n-ブチル基がさらに好ましい。
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、ナフチル基等が挙げられる。アリール基としては、炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましく、フェニル基、トリル基がさらに好ましい。該トリル基としては、o-トリル基、m-トリル基、p-トリル基が挙げられ、これらの中でもp-トリル基が好ましい。
上記アラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。アラルキル基としては、炭素数7~10のアラルキル基が好ましく、ベンジル基がより好ましい。
以上の中でも、Rb1~Rb3が表す有機基としては、炭素数1~12のアルキル基、炭素数6~20のアリール基が好ましく、ハロゲン原子を含有しない炭素数1~12のアルキル基、ハロゲン原子を含有しない炭素数6~20のアリール基がより好ましい。
b1~Rb3は、全て同一であってもよいし、異なっているものがあってもよいし、全て異なっていてもよいが、全て同一であることが好ましい。
【0025】
一般式(b-1)中のRb4~Rb6が表す炭素数1~12のアルキル基としては、前記Rb1~Rb3が表すアルキル基と同じものが挙げられる。それらの中でも、炭素数1~6のアルキル基が好ましく、炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。
一般式(b-1)中のRb4~Rb6が表す炭素数1~12のアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、t-ブトキシ基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~6のアルコキシル基が好ましく、炭素数1~3のアルコキシル基がより好ましい。
b5とRb6は、互いに結合して環を形成していてもよく、該環としてはベンゼン環等が挙げられる。
一般式(b-1)中のRb4~Rb6としては、全て同一であってもよいし、異なっているものがあってもよいし、全て異なっていてもよいが、全て同一であることが好ましく、全て水素原子であることがより好ましい。
【0026】
以上より、前記一般式(b-1)で表される化合物としては、下記一般式(b-2)で表される化合物であることが好ましい。
【化2】

(式(b-2)中、Rb1~Rb3は、一般式(b-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0027】
(b)成分の具体例としては、例えば、トリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物、トリ(p-トリル)ホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物、トリ(n-ブチル)ホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物等が挙げられる。特に、トリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物、トリ(p-トリル)ホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物は、保存安定性の観点から、トリ(n-ブチル)ホスフィンとp-ベンゾキノンとの付加物は、溶剤への溶解性の観点から好ましく用いられる。
【0028】
(b)成分の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、0.05~2質量部が好ましく、0.1~1質量部がより好ましく、0.1~0.7質量部がさらに好ましく、0.1~0.5質量部が特に好ましい。この範囲で用いることで、耐熱性及び低熱膨張性が向上する傾向にある。
【0029】
<少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)を含有することによって、低熱膨張性及び金属回路との接着強度が向上する。該(c)成分は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アミン化合物(c)は、少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物であれば特に限定されない。
アミン化合物(c)は、2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物が好ましく、下記一般式(c-1)で表されるジアミン化合物がより好ましい。
【0030】
【化3】

(一般式(c-1)中、Xc1は、下記一般式(c1-1)、(c1-2)又は(c1-3)で表される基である。)
【0031】
【化4】

(一般式(c1-1)中、Rc1は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。pは、0~4の整数である。)
【0032】
【化5】

(一般式(c1-2)中、Rc2及びRc3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xc2は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(c1-2-1)で表される基である。q及びrは、各々独立に、0~4の整数である。)
【化6】

(一般式(c1-2-1)中、Rc4及びRc5は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xc3は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。s及びtは、各々独立に、0~4の整数である。)
【0033】
【化7】

(一般式(c1-3)中、Rc6、Rc7、Rc8及びRc9は、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基、フェニル基又は置換フェニル基を表す。Xc4及びXc5は各々独立に、2価の有機基を表す。uは、2~100の整数である。)
【0034】
前記一般式(c1-1)中、Rc1が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、Rc1としては炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
pは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは2である。pが2以上の整数である場合、複数のRc1同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0035】
前記一般式(c1-2)中、Rc2及びRc3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rc1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
c2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
c2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
c2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q及びrは、各々独立に0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は2である。q又はrが2以上の整数である場合、複数のRc2同士又はRc3同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
前記一般式(c1-2-1)中、Rc4及びRc5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rc2及びRc3の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
c3が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、前記Xc2が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
c3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2~5のアルキリデン基であり、より好ましくはイソプロピリデン基である。
s及びtは0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s又はtが2以上の整数である場合、複数のRc4同士又はRc5同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
前記一般式(c1-2-1)は、下記一般式(c1-2-1’)で表されることが好ましい。
【化8】

(一般式(c1-2-1’)中のXc3、Rc4、Rc5、s及びtは、一般式(c1-2-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0037】
前記一般式(c1-2)で表される基は、下記一般式(c1-2’)で表される基であることが好ましく、下記式(c1-i)~(c1-iii)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記式(c1-ii)又は(c1-iii)で表される基であることがさらに好ましい。
【化9】

(一般式(c1-2’)中のXc2、Rc2、Rc3、q及びrは、一般式(c1-2)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0038】
【化10】
【0039】
前記一般式(c1-3)中のRc6、Rc7、Rc8及びRc9が表す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該アルキル基としては、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
置換フェニル基におけるフェニル基が有する置換基としては、例えば、炭素数1~5のアルキル基、炭素数2~5のアルケニル基、炭素数2~5のアルキニル基等が挙げられる。該炭素数1~5のアルキル基としては、前記したものと同じものが挙げられる。該炭素数2~5のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基等が挙げられる。炭素数2~5のアルキニル基としては、エチニル基、プロパルギル基等が挙げられる。
c6、Rc7、Rc8及びRc9は、いずれも炭素数1~5のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
c4及びXc5が表す2価の有機基としては、例えば、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基、-O-又はこれらが組み合わされた2価の連結基等が挙げられる。該アルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基等の炭素数1~10のアルキレン基が挙げられる。該アルケニレン基としては、炭素数2~10のアルケニレン基が挙げられる。該アルキニレン基としては、炭素数2~10のアルキニレン基が挙げられる。該アリーレン基としては、フェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6~20のアリーレン基が挙げられる。
【0040】
前記一般式(c-1)中、Xc1としては、前記一般式(c1-1)、(c1-2)又は(c1-3)で表される基のいずれであってもよく、これらの中でも、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点から、一般式(c1-3)で表される基であることが好ましい。
【0041】
(c)成分の具体例としては、例えば、ジアミノベンジジン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルエーテル、ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシ-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル-6,6’-ジスルホン酸、2,2’,5,5’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-メチレン-ビス(2-クロロアニリン)、1,3’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2’-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、4,4’-ジアミノ-3,3’-ビフェニルジオール、9,9’-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、o-トリジンスルホン、分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点からは、分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物が好ましく、分子両末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物がより好ましい。
【0042】
分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物としては、前記一般式(c-1)中のXc1が、前記一般式(c1-3)で表される基である化合物等が挙げられる。
分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物は、市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、両末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物(以下、「両末端ジアミン変性シロキサン」とも称する)である、「PAM-E」(アミノ基の官能基当量:130g/mol)、「KF-8010」(アミノ基の官能基当量:430g/mol)、「X-22-161A」(アミノ基の官能基当量:800g/mol)、「X-22-161B」(アミノ基の官能基当量:1,500g/mol)、「KF-8012」(アミノ基の官能基当量:2,200g/mol)、「KF-8008」(アミノ基の官能基当量:5,700g/mol)〔以上、信越化学工業株式会社製〕、「BY16-871」(アミノ基の官能基当量:130g/mol)、「BY16-853U」(アミノ基の官能基当量:460g/mol)〔以上、東レ・ダウコーニング株式会社製〕等が挙げられる。これらの中でも、反応性が高く、より低熱膨張化できるという観点から、「X-22-161A」、「X-22-161B」が好ましい。
【0043】
分子末端に第1級アミノ基を有する変性シロキサン化合物のアミノ基の官能基当量に特に制限はないが、300~3,000g/molが好ましく、400~2,500g/molがより好ましく、600~2,000g/molがさらに好ましい。
【0044】
(c)成分の含有量は、低熱膨張性及び金属回路との接着強度の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、3~50質量部が好ましく、5~30質量部がより好ましく、10~25質量部がさらに好ましい。
【0045】
<少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物は、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)を含有することによって、低熱膨張性及び曲げ弾性率が向上する。
(d)成分は、少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物であれば特に限定されない。
(d)成分としては、2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物が好ましく、下記一般式(d-1)で表される化合物がより好ましい。
【0046】
【化11】

(一般式(d-1)中、Xd1は、下記一般式(d1-1)、(d1-2)、(d1-3)又は(d1-4)で表される基である。)
【0047】
【化12】

(一般式(d1-1)中、Rd1は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。p1は、0~4の整数である。)
【0048】
【化13】

(一般式(d1-2)中、Rd2及びRd3は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xd2は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基、単結合又は下記一般式(d1-2-1)で表される基である。q1及びr1は、各々独立に、0~4の整数である。)
【化14】

(一般式(d1-2-1)中、Rd4及びRd5は、各々独立に、炭素数1~5の脂肪族炭化水素基又はハロゲン原子である。Xd3は、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基、エーテル基、スルフィド基、スルホニル基、カルボニルオキシ基、ケト基又は単結合である。s1及びt1は、各々独立に、0~4の整数である。)
【0049】
【化15】

(一般式(d1-3)中、n1は1~10の整数である。)
【0050】
【化16】

(一般式(d1-4)中、Rd6及びRd7は、各々独立に、水素原子又は炭素数1~5の脂肪族炭化水素基である。u1は1~8の整数である。)
【0051】
前記一般式(d1-1)中、Rd1が表す脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基等が挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基であり、より好ましくはメチル基である。また、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
以上の中でも、Rd1としては炭素数1~5の脂肪族炭化水素基が好ましい。
p1は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。p1が2以上の整数である場合、複数のRd1同士は同一であっても異なっていてもよい。
【0052】
前記一般式(d1-2)中、Rd2及びRd3が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rd1の場合と同じものが挙げられる。該脂肪族炭化水素基としては、好ましくは炭素数1~3の脂肪族炭化水素基、より好ましくはメチル基及びエチル基、さらに好ましくはエチル基である。
d2が表す炭素数1~5のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、1,2-ジメチレン基、1,3-トリメチレン基、1,4-テトラメチレン基、1,5-ペンタメチレン基等が挙げられる。該アルキレン基としては、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、好ましくは炭素数1~3のアルキレン基であり、より好ましくはメチレン基である。
d2が表す炭素数2~5のアルキリデン基としては、例えば、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、イソペンチリデン基等が挙げられる。これらの中でも、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、イソプロピリデン基が好ましい。
d2としては、上記選択肢の中でも、炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基が好ましい。より好ましいものは前述のとおりである。
q1及びr1は各々独立に0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は2である。q1又はr1が2以上の整数である場合、複数のRd2同士又はRd3同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
前記一般式(d1-2-1)中、Rd4及びRd5が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基、ハロゲン原子としては、前記Rd2及びRd3の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
d3が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基としては、前記Xd2が表す炭素数1~5のアルキレン基、炭素数2~5のアルキリデン基と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。
d3としては、上記選択肢の中でも、好ましくは炭素数2~5のアルキリデン基であり、より好ましいものは前述のとおりである。
s1及びt1は0~4の整数であり、入手容易性の観点から、いずれも、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。s1又はt1が2以上の整数である場合、複数のRd4同士又はRd5同士は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
また、前記一般式(d1-2-1)は、下記一般式(d1-2-1’)で表されることが好ましい。
【化17】

(一般式(d1-2-1’)中のXd3、Rd4、Rd5、s1及びt1は、一般式(d1-2-1)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0054】
前記一般式(d1-2)で表される基は、下記一般式(d1-2’)で表される基であることが好ましく、下記(d1-i)~(d1-iii)のいずれかで表される基であることがより好ましく、下記(d1-i)で表される基であることがさらに好ましい。
【化18】

(一般式(d1-2’)中のXd2、Rd2、Rd3、q1及びr1は、一般式(d1-2)中のものと同じであり、好ましいものも同じである。)
【0055】
【化19】
【0056】
前記一般式(d1-3)中、n1は、1~10の整数であり、入手容易性の観点から、好ましくは1~5、より好ましくは1~3である。
前記一般式(d1-4)中、Rd6及びRd7が表す炭素数1~5の脂肪族炭化水素基としては、前記一般式(d1-1)中のRd1の場合と同じものが挙げられ、好ましいものも同じである。u1は1~8の整数であり、好ましくは1~3の整数、より好ましくは1である。
【0057】
前記一般式(d-1)中、Xd1は、前記一般式(d1-1)、(d1-2)、(d1-3)又は(d1-4)で表される基のいずれであってもよく、これらの中でも、低熱膨張性及び曲げ弾性率の観点から、(d1-2)で表される基であることが好ましい。
【0058】
(d)成分の具体例としては、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン等が挙げられる。
これらの中でも、反応性が高く、より高耐熱性化できるという観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンが好ましく、有機溶媒への溶解性の観点から、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンがより好ましく、製造コストの観点から、ビス(4-マレイミドフェニル)メタンがさらに好ましい。
【0059】
(d)成分の含有量は、曲げ弾性率及び低熱膨張性の観点から、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、20~90質量部が好ましく、40~85質量部がより好ましく、55~85質量部がさらに好ましい。
【0060】
(c)成分と(d)成分は、それぞれをそのまま(a)成分及び(b)成分等と混合してもよいし、(a)成分及び(b)成分と混合する前に、必要に応じて、予め(c)成分と(d)成分とを加熱して反応させてアミノ変性ポリイミド樹脂[以下、アミノ変性ポリイミド樹脂(X)と称する。]を形成しておいてもよい。つまり、本発明は、ジシアンジアミド(a)、第三級ホスフィンとキノン類との付加物(b)と共に、分子構造中に少なくとも2個の第1級アミノ基を有するアミン化合物(c)と分子構造中に少なくとも2個のN-置換マレイミド基を有するマレイミド化合物(d)との反応物であるアミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する熱硬化性樹脂を含んでなる、コアレス基板用プリプレグも提供し、該コアレス基板用プリプレグであることが好ましい。予め(c)成分と(d)成分とを反応させてアミノ変性ポリイミド樹脂(X)としておくことにより、分子量を制御することができ、さらに低硬化収縮性及び低熱膨張性を向上させることができる。
該アミノ変性ポリイミド樹脂(X)について、以下に説明する。
【0061】
<アミノ変性ポリイミド樹脂(X)>
(c)成分と(d)成分との反応方法に特に制限はない。反応温度は、生産性及び十分に反応を進行させる観点から、70~200℃が好ましく、80~150℃がより好ましく、100~130℃がさらに好ましい。また、反応時間に特に制限はないが、0.5~10時間が好ましく、1~6時間がより好ましい。
【0062】
(c)成分と(d)成分との反応は、有機溶媒中で行うことが好ましい。有機溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチルエステル、γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、溶解性の観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、メチルセロソルブ、γ-ブチロラクトンが好ましく、低毒性であるという観点及び揮発性が高く残溶媒として残り難いという観点から、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジメチルアセトアミドが好ましく、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
有機溶媒の使用量に特に制限はないが、溶解性及び反応速度の観点から、(c)成分と(d)成分との合計100質量部に対し、25~1,000質量部が好ましく、50~500質量部がより好ましく、50~200質量部がさらに好ましい。
【0063】
上記反応終了後、特に反応物を精製することなく、得られた反応混合液をそのままその他の成分と混合して、アミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する熱硬化性樹脂組成物を調製することができる。
【0064】
前記反応において、前記(c)成分と前記(d)成分の使用割合は、ゲル化の防止及び耐熱性の観点から、(d)成分のマレイミド基の当量が、(c)成分の第1級アミノ基の当量を超えることが好ましく、つまり、(d)成分のマレイミド基の当量と、(c)成分の第1級アミノ基の当量との比[(d)/(c)]が、1を超えることが好ましく、2~35がより好ましく、10~35がさらに好ましい。
【0065】
熱硬化性樹脂組成物がアミノ変性ポリイミド樹脂(X)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、60~95質量部が好ましく、70~95質量部がより好ましく、80~95質量部がさらに好ましい。
【0066】
<熱硬化性樹脂(e)>
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、熱硬化性樹脂(e)を含有してもよく、また、含有していることが好ましい。但し、該熱硬化性樹脂(e)は、前記(c)成分及び前記(d)成分を含まない。熱硬化性樹脂(e)は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱硬化性樹脂(e)としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂(但し、前記(d)成分を含まない)、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂(但し、前記(c)成分を含まない)、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂(但し、前記(c)成分を含まない)等が挙げられる。これらの中でも、成形性及び電気絶縁性の観点、並びに金属回路との接着強度の観点から、エポキシ樹脂及びシアネート樹脂からなる群から選ばれる1種以上が好ましく、エポキシ樹脂がより好ましい。
【0067】
前記エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールFノボラック型エポキシ樹脂、スチルベン型エポキシ樹脂、トリアジン骨格含有エポキシ樹脂、フルオレン骨格含有エポキシ樹脂、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、キシリレン型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、多官能フェノール類及びアントラセン等の多環芳香族類のジグリシジルエーテル化合物、これらにリン化合物を導入したリン含有エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐熱性及び難燃性の観点から、ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂、α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂が好ましい。
【0068】
熱硬化性樹脂組成物が熱硬化性樹脂(e)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の固形分100質量部に対して、1~30質量部が好ましく、3~20質量部がより好ましく、5~15質量部がさらに好ましい。
【0069】
<無機充填材(f)>
熱硬化性樹脂組成物は、さらに、無機充填材(f)を含有してもよい。
無機充填材(f)としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、焼成クレー等のクレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素、石英粉末、ガラス短繊維、ガラス微粉末、中空ガラス等が挙げられる。ガラスとしては、Eガラス、Tガラス、Dガラス等が好ましく挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、誘電特性、耐熱性及び低熱膨張性の観点から、シリカが好ましい。シリカとしては、例えば、湿式法で製造され含水率の高い沈降シリカと、乾式法で製造され結合水等をほとんど含まない乾式法シリカが挙げられ、乾式法シリカとしてはさらに、製造法の違いにより、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融球状シリカ等に分類される。これらの中でも、低熱膨張性及び樹脂に充填した際の流動性の観点から、溶融球状シリカが好ましい。
【0070】
無機充填材(f)の平均粒子径は、0.1~10μmが好ましく、0.3~8μmがより好ましく、0.3~3μmがさらに好ましい。平均粒子径が0.1μm以上であると、樹脂に高充填した際の流動性を良好に保てる傾向にあり、10μm以下であると、粗大粒子の混入確率を低減し、粗大粒子起因の不良の発生を抑えることができる傾向にある。ここで、平均粒子径とは、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことであり、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
無機充填材(f)は、カップリング剤で表面処理されたものであってもよい。カップリング剤による表面処理の方式は、配合前の無機充填材(f)に対して乾式又は湿式で表面処理する方式であってもよく、表面未処理の無機充填材(f)を、他の成分に配合して組成物とした後、該組成物にシランカップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよい。
カップリング剤としては、例えば、シラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、シリコーンオリゴマー等が挙げられる。
【0071】
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(f)を含有する場合、その含有量は、熱硬化性樹脂組成物中、10~70体積%であることが好ましく、20~60体積%であることがより好ましく、30~60体積%であることがさらに好ましい。無機充填材(f)の配合量が前記範囲内であると、成形性及び低熱膨張性が良好となる傾向にある。
【0072】
熱硬化性樹脂組成物が無機充填材(f)を含有する場合、必要に応じて、三本ロール、ビーズミル、ナノマイザー等の分散機で処理を行って、無機充填材(f)の分散性を改善することが好ましい。
【0073】
<その他の成分>
本発明のプリプレグが含有する熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性の性質を損なわない程度に、その他の成分、例えば、難燃剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光重合開始剤、蛍光増白剤、接着性向上剤等を含有してもよい。
難燃剤としては、例えば、芳香族リン酸エステル化合物、ホスファゼン化合物、ホスフィン酸エステル、ホスフィン酸化合物の金属塩、赤リン、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド及びその誘導体等のリン系難燃剤;スルファミン酸グアニジン、硫酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミンシアヌレート等の窒素系難燃剤;臭素、塩素等を含有する含ハロゲン系難燃剤;三酸化アンチモン等の無機系難燃剤などが挙げられる。
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤が挙げられる。
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、ヒンダードアミン系酸化防止剤等が挙げられる。
光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤が挙げられる。
蛍光増白剤としては、例えば、スチルベン誘導体の蛍光増白剤等が挙げられる。
接着性向上剤としては、例えば、尿素シラン等の尿素化合物、前記カップリング剤などが挙げられる。
【0074】
熱硬化性樹脂組成物は、プリプレグ等の製造に用い易いように、各成分が有機溶媒中に溶解又は分散されたワニスの状態であってもよい。
該有機溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒などが挙げられる。これらの有機溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、各成分の溶解性の観点からは、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテルが好ましく、メチルエチルケトンがより好ましく、また、低毒性という観点からは、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルがより好ましい。
ワニスの固形分濃度は、40~90質量%が好ましく、50~80質量%がより好ましい。ワニスの固形分濃度が前記範囲内であると、塗工性を良好に保ち、熱硬化性樹脂組成物の付着量が適切なプリプレグを得ることができる。
【0075】
本発明のプリプレグは、例えば、前記熱硬化性樹脂組成物を、繊維基材に含浸し、加熱等により半硬化(Bステージ化)して製造することができる。
繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている周知のものが使用できる。その材質の例としては、Eガラス、Sガラス、低誘電ガラス、Qガラス等の無機物繊維;低誘電ガラスポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;並びにそれらの混合物などが挙げられる。特に、誘電特性が優れる基材を得る観点から、無機物繊維が好ましく、低誘電ガラス、Qガラスがより好ましい。
これらの繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。
繊維基材の材質及び形状は、目的とする成形物の用途及び性能等により適宜選択され、必要により、1種の材質及び1種の形状からなる繊維基材であってもよいし、2種以上の材質からなる繊維基材であってもよいし、2種以上の形状を有する繊維基材であってもよい。繊維基材は、例えば、約30~500μmの厚さのものを使用することができる。低反り性及び高密度配線を可能にする観点から、繊維基材の厚さは30~200μmが好ましく、50~150μmがより好ましい。これらの繊維基材は、耐熱性、耐湿性、加工性等の観点から、シランカップリング剤等で表面処理したもの、機械的に開繊処理を施したものであることが好ましい。
【0076】
本発明のプリプレグは、例えば、繊維基材に対する熱硬化性樹脂組成物の固形分付着量が、乾燥後のプリプレグに対する熱硬化性樹脂組成物の含有率で、20~90質量%であることが好ましい。
本発明のプリプレグは、例えば、プリプレグ中の熱硬化性樹脂組成物の固形分付着量が前記範囲内となるように熱硬化性樹脂組成物を繊維基材に含浸した後、100~200℃の温度で1~30分加熱乾燥し、半硬化(Bステージ化)させて、製造することができる。
【0077】
[コアレス基板]
本発明のコアレス基板は、本発明のコアレス基板用プリプレグを用いて形成された絶縁層を含有するものである。
本発明のコアレス基板は、例えば、支持体(コア基板)上に本発明のプリプレグを用いてビルドアップ層を形成した後、前記支持体を分離する方法により製造することができる。ビルドアップ層の形成方法に特に制限はなく、公知の方法を採用できる。例えば、ビルドアップ層は次の方法によって形成できる(図1参照)。
図1に示すように、まず、支持体(コア基板)1上に本発明のプリプレグ2を配置する。なお、前記支持体(コア基板)1上には接着層を配置した上で、プリプレグ2を配置してもよい。その後、プリプレグ2を加熱硬化して絶縁層とする。次いで、ドリル切削方法、又は、YAGレーザーもしくはCOレーザー等を用いるレーザー加工方法などによってビアホール3を形成した後、必要に応じて表面粗化処理及びデスミア処理を行なう。続いて、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)又はモディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等によって回路パターン4を形成する。以上の過程を繰り返すことによって、ビルドアップ層5が形成される。形成したビルドアップ層5を、支持体(コア基板)1から分離することによって、コアレス基板が得られる。なお、ビルドアップ層5は、支持体(コア基板)1の片面に形成してもよいし、両面に形成してもよい。
前記支持体(コア基板)としては、ガラスクロス及びエポキシ樹脂を含有してなる、いわゆるガラスエポキシ材料等の公知の支持体(コア基板)が挙げられる。
本発明のコアレス基板は、本発明のプリプレグを硬化してなる絶縁層を1層以上含むものであり、本発明のプリプレグ以外のプリプレグ、樹脂フィルム等を硬化してなる絶縁層を含んでいてもよい。
本発明のコアレス基板の厚さは、コア基板を有していないために通常は小さく、具体的には、15~700μmが好ましく、30~600μmがより好ましく、35~500μmがさらに好ましい。
【0078】
[半導体パッケージ]
本発明の半導体パッケージは、本発明のコアレス基板に半導体素子を搭載してなるものであり、前記コアレス基板の所定の位置に半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載して製造される。半導体素子は、封止材によって、コアレス基板上で封止されていてもよい。
【実施例
【0079】
次に、下記の実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、これらの実施例は本発明を制限するものではない。
なお、各例で得られたコアレス基板用プリプレグを用いて作製した銅張積層板(コアレス基板)について、以下の方法で性能を測定及び評価した。
【0080】
(1)ガラス転移温度(Tg)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除くことで、縦(X方向)5mm×横(Y方向)5mm×厚み(Z方向)0.15mmの評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、商品名:TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における熱膨張曲線の異なる接線の交点で示されるTgを求め、耐熱性の指標とした。Tgが高いほど、耐熱性に優れる。
【0081】
(2)熱膨張率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除くことで、縦(X方向)5mm×横(Y方向)5mm×厚み(Z方向)0.15mmの評価基板を作製し、TMA試験装置(デュポン社製、商品名:TMA2940)を用いて圧縮法で熱機械分析を行った。評価基板を前記装置にX方向に装着後、荷重5g、昇温速度10℃/分の測定条件にて連続して2回測定した。2回目の測定における30℃から100℃までの平均熱膨張率を算出し、これを熱膨張率の値とした。
【0082】
(3)銅箔接着強度(銅箔ピール強度)
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、銅箔ピール強度測定部として3mm幅の帯部分(回路層)を残して銅箔を取り除いた評価基板を作製した。該帯部分の一端を回路層と絶縁層との界面で剥がしてからつかみ具でつかみ、引張り試験機を用いて垂直方向に引張り速度約50mm/分、室温中で引き剥がしたときの銅箔の接着強度(ピール強度)を測定した。値が大きいほど、銅箔(金属回路)との接着強度が大きく、コアレス基板用としては、0.50kN/m以上が好ましく、0.55kN/m以上がより好ましい。
【0083】
(4)曲げ弾性率
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除くことで、50mm×25mmの評価基板を作製し、万能試験機「テンシロンUCT-5T」(株式会社オリエンテック製)を用い、クロスヘッド速度1mm/min、スパン間距離20mmの条件で曲げ弾性率を測定した。値が大きいほど、剛性が高い。
【0084】
(5)デスミア重量減少量
銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより銅箔を取り除くことで、40mm×40mmの評価基板を作製し、次いで、下記表1に示す工程によりデスミア処理した。表1中に記載の薬液は、いずれもアトテックジャパン株式会社製である。デスミア処理前の乾燥重量に対するデスミア処理後の重量減少量を算出し、これを耐デスミア性の指標とした。値が小さい程、耐デスミア性に優れる。
【0085】
【表1】
【0086】
製造例1:シロキサン変性ポリイミド(X-i)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X-22-161A、アミノ基の官能基当量:800g/mol、(c)成分)72gと、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名:BMI、(d)成分)252gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル270gと、を入れ、110℃で3時間反応させて、シロキサン変性ポリイミド(X-i)含有溶液を得た。
【0087】
製造例2:シロキサン変性ポリイミド(X-ii)の製造
温度計、攪拌装置、還流冷却管付き水分定量器の付いた加熱及び冷却可能な容積2リットルの反応容器に、両末端ジアミン変性シロキサン(信越化学工業株式会社製、商品名:X-22-161B、アミノ基の官能基当量:1,500g/mol、(c)成分)72gと、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン(ケイ・アイ化成株式会社製、商品名:BMI、(d)成分)252gと、プロピレングリコールモノメチルエーテル270gと、を入れ、110℃で3時間反応させて、シロキサン変性ポリイミド(X-ii)含有溶液を得た。
【0088】
実施例1~12及び比較例1~6
以下に示す各成分を表2に示す配合割合(溶液の場合は固形分換算量である。)で混合し、溶媒にメチルエチルケトンを用いて固形分濃度65質量%のワニスを作製した。次に、このワニスを厚さ0.1mmのEガラスクロスに含浸塗工し、160℃で10分間加熱乾燥して、硬化性樹脂組成物の含有量が48質量%のコアレス基板用プリプレグを得た。
このコアレス基板用プリプレグを4枚重ね、12μmの電解銅箔を上下に配置し、圧力2.5MPa、温度240℃で60分間プレスを行って、銅張積層板を得た。得られた銅張積層板について、前記測定方法に従って得られた評価結果を表2に示す。
【0089】
[熱硬化性樹脂組成物の成分]
〔ジシアンジアミド(a)〕
・ジシアンジアミド(和光純薬工業株式会社製)
【0090】
〔第3級ホスフィンとキノン類との付加物(b)〕
(b-i)トリフェニルホスフィンとp-ベンゾキノンの付加物
(b-ii)トリ(p-トリル)ホスフィンとp-ベンゾキノンの付加物
(b-iii)トリ(n-ブチル)ホスフィンとp-ベンゾキノンの付加物
【0091】
〔シロキサン変性ポリイミド(X)〕
(X-i)製造例1で調製したシロキサン変性ポリイミド(X-i)含有溶液
(X-ii)製造例2で調製したシロキサン変性ポリイミド(X-ii)含有溶液
【0092】
〔熱硬化性樹脂(e)〕
(e-i)NC-7000-L:α-ナフトール/クレゾールノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
(e-ii)NC-3000-H:ビフェニルアラルキルノボラック型エポキシ樹脂〔日本化薬株式会社製、商品名〕
【0093】
〔無機充填材(f)〕
・球状溶融シリカ(平均粒径:0.5μm)
【0094】
【表2】
【0095】
表2より、実施例1~12では、耐熱性、低熱膨張性及び銅箔接着強度に優れており、曲げ弾性率が高く、さらにデスミア重量減少量が小さい。特に、銅箔接着強度が一段と優れており、曲げ弾性率も向上している。
一方、ジシアンジアミド(a)を使用していない比較例1~6では、耐熱性、低熱膨張性及び銅箔接着強度の全ての特性を同時に満たすものはなく、特に銅箔接着強度に劣っている。さらに、曲げ弾性率もやや低い。
したがって、実施例で得た本発明のプリプレグであれば、コアレス基板に要求される水準の、耐熱性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度を満足するため、コアレス基板用として非常に有用であるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0096】
本発明のプリプレグは、コアレス基板に要求される水準の、耐熱性、低熱膨張性及び金属回路との接着強度を満足することから、高密度化、高多層化されたプリント配線板の製造に好適であり、大量のデータを高速で処理するコンピュータ、情報機器端末等の用いられる電子機器の配線板に好適に用いられる。
【符号の説明】
【0097】
1 支持体(コア基板)
2 プリプレグ(絶縁層)
3 ビアホール
4 回路パターン
5 ビルドアップ層
6 コアレス基板
図1