IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-硬化性組成物 図1
  • 特許-硬化性組成物 図2
  • 特許-硬化性組成物 図3
  • 特許-硬化性組成物 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】硬化性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20220614BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20220614BHJP
   C08K 9/04 20060101ALI20220614BHJP
   H01F 1/37 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/01
C08K9/04
H01F1/37
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020541520
(86)(22)【出願日】2019-02-07
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2019001527
(87)【国際公開番号】W WO2019151844
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2020-07-29
(31)【優先権主張番号】10-2018-0013303
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アン、サン バム
(72)【発明者】
【氏名】リー、ジン キュ
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/135576(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/052337(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/052339(WO,A1)
【文献】特開2003-158842(JP,A)
【文献】特開2011-259593(JP,A)
【文献】特開2009-155690(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 101/00
C08K 3/01
C08K 9/04
H01F 1/37
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性樹脂及び磁性体を含み、前記磁性体は、磁性粒子及び前記磁性粒子の表面に存在する表面処理剤を含み、
前記磁性粒子は、常温での飽和磁化値が20~150emu/gの範囲内にあり、保磁力は、1~200kОeの範囲内にあり、
前記表面処理剤は、酸価が10~400mgKOH/gの範囲内であるか、またはアミン価が5~400mgKOH/gの範囲内であり、
前記表面処理剤は、ポリオール系化合物、ポリシロキサン系化合物、アルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)系表面処理剤、アルキルカルボン酸系表面処理剤、スルホン酸(alkyl sulfonic acid)系表面処理剤、長鎖アルキル基を含む酸化合物、芳香族酸系表面処理剤、または、酸性官能基またはアミノ基を含むブロック共重合体であり、
前記硬化性樹脂100重量部に対して0.01~60重量部の前記磁性体を含
常温粘度(Shear ratio=100s -1 )が10,000cP以下である、
硬化性組成物。
【請求項2】
常温粘度(Shear ratio=100s-1)が9,500cP以下である、請求項1に記載の硬化性組成物。
【請求項3】
絶縁破壊強度が10kV/mm以上であるか、絶縁破壊強度が10kV/mm以上である硬化物を形成する、請求項1または2に記載の硬化性組成物。
【請求項4】
硬化性樹脂は、アルケニル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、エポキシ基、オキセタン基、アルケニル基、ケイ素原子に結合された水素原子、イソシアネート基、ヒドロキシ基、フタロニトリル基又はカルボキシル基を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項5】
硬化性樹脂は、ポリシリコン樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエステルイミド、アクリル樹脂、ビニル系樹脂、オレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フタロニトリル樹脂、ポリアミド酸、ポリアミド又はエポキシ樹脂である、請求項1から3のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項6】
磁性粒子は、マルチドメイン型磁性粒子である、請求項1から5のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項7】
表面処理剤は、酸価が20~400mgKOH/gの範囲内であるか、又はアミン価が10~400mgKOH/gの範囲内である、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項8】
磁性体は、磁性粒子100重量部に対して0.01~30重量部の表面処理剤を含む、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項9】
磁性体は、表面処理剤と結合している2次表面処理剤をさらに含む、請求項1からのいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項10】
2次表面処理剤は、ポリウレタン系表面処理剤、ポリウレア系表面処理剤、ポリ(ウレタン-ウレア)系表面処理剤化合物又は枝型ポリエステル系表面処理剤である、請求項に記載の硬化性組成物。
【請求項11】
磁性体は、磁性粒子100重量部に対して0.01~30重量部の2次表面処理剤を含む、請求項または10に記載の硬化性組成物。
【請求項12】
硬化性樹脂100重量部に対して0.5~60重量部の磁性体を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の硬化性組成物。
【請求項13】
一つ以上のスロット(slot)が形成されているステータ;
前記ステータのスロット内に存在する巻線;及び
前記スロット内を充填している請求項1から12のいずれか一項に記載の硬化性組成物の硬化物を含む、電気モーター。
【請求項14】
スロットの開口部の面積が0.5~10cmの範囲内である、請求項13に記載の電気モーター。
【請求項15】
巻線が導入されているスロットが一つ以上形成されているステータの前記スロットに請求項1から12のいずれか一項に記載の硬化性組成物を導入するステップ;及び
前記硬化性組成物内の磁性体の誘導加熱が可能な交流磁場を印加するステップを含、電気モーターの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年2月2日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0013303号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、硬化性組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
硬化性組成物は、多様な用途に適用され得る。例えば、硬化性組成物は、多様な接着剤や粘着剤の形成、3Dプリンティング用インクやエンジニアリングプラスチックの形成などに適用され得る。また、硬化性組成物は、絶縁コーティング液、ベアリング、モーター用絶縁コーティングや絶縁シーリング剤など絶縁性材料の形成にも用いられ得る。
【0004】
硬化性組成物のうち熱によって硬化される、いわゆる熱硬化性組成物を硬化する方式としては、外部から熱を印加する方式、例えば、熱風やホットプレート(hot plate)を用いる方式が適用されている。
【0005】
しかし、上記方式の場合、外部からの熱を組成物の内部まで充分に伝達しなくて硬化不均一を誘発するなどの問題があり、完全な硬化のために過量の熱が必要な場合に樹脂の損傷などが発生するという問題点も有している。
【0006】
特に、硬化性組成物を非常に狭いか複雑な形状内に導入するためには、硬化性組成物を非常に低粘度にして高い流動性を確保する必要がある。このような場合に、既存に知られた硬化性組成物が適用される場合には、工程時間が長くなり、長くなった工程時間下でも硬化性組成物の硬化度又は充填率が落ちて目的とする性能を確保することには制約がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本出願は、硬化性組成物に関する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書で言及する物性のうち測定温度及び/又は圧力がその物性に影響を及ぼす場合、特に異に規定しない限り、該当物性は常温及び/又は常圧で測定した物性を意味する。
【0009】
本出願で用語「常温」は、加温及び減温しない自然そのままの温度であり、例えば、 約10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、25℃又は23℃程度の温度を意味し得る。特に異に規定しない限り、本明細書で温度の単位は、℃である。
【0010】
本出願で用語「常圧」は、加圧及び減圧しないときの圧力であって、普通大気圧のような1気圧程度であってもよい。
【0011】
本出願の硬化性組成物は、硬化性樹脂及び磁性体を含む。本出願の硬化性組成物で前記磁性体は、外部交流磁場を通じた磁気反転(magnetic reversal)振動現象によって熱を発生させるように選択される。本出願の硬化性組成物で前記磁性体は、硬化性組成物で適切な分散度を示すように選択される。このような選択によって前記硬化性組成物は、目的に応じて、低い粘度と流動性を有する状態でも硬化工程に適用され得る。また、硬化工程で前記硬化性組成物は、小さい硬化収縮を示すと共に優れた硬化率で硬化され得る。これによって、一つの例示で、前記硬化性組成物は、非常に狭い部位及び/又は複雑な形態の部位内でも前記部位を効果的に充填しながら目的とする物性を示す硬化物を形成することができる。
【0012】
一つの例示で、前記硬化性組成物は、せん断速度(shear ratio)100s-1の条件で測定した常温粘度が10,000cP以下であってもよい。他の例示で、前記硬化性組成物の粘度は、9500cP以下、9,000cP以下、8500cP以下、8,000cP以下、7500cP以下、7,000cP以下、6500cP以下、6,000cP以下、5500cP以下、5,000cP以下、4500cP以下、4,000cP以下、3,000cP以下、2,000cP以下、1,000cP以下、900cP以下又は800cP以下であるか、1cP以上、2cP以上、3cP以上、4cP以上、5cP以上、6cP以上、7cP以上、8cP以上、9cP以上、10cP以上、15cP以上、20cP以上、25cP以上、30cP以上、35cP以上、40cP以上、45cP以上、50cP以上、55cP以上、60cP以上、65cP以上、70cP以上、75cP以上、80cP以上、85cP以上、90cP以上、95cP以上又は100cP以上、1000cP以上、1500cP以上、2000cP以上、2500cP以上、3000cP以上、3500cP以上又は4000cP以上であってもよい。
【0013】
本出願の前記硬化性組成物は、絶縁性組成物であってもよい。すなわち、前記硬化性組成物は、絶縁性であるか、硬化後に絶縁性の硬化物を形成することができる。本出願で用語「絶縁性」は、ASTM D149規格によって確認した絶縁破壊強度が10kV/mm以上、11kV/mm以上、12kV/mm以上、13kV/mm以上、14kV/mm以上、15kV/mm以上、16kV/mm以上、17kV/mm以上、18kV/mm以上、19kV/mm以上又は20kV/mm以上である場合を意味する。したがって、本出願の硬化性組成物は、それ自体として前記絶縁破壊強度を示すか、あるいは硬化されて前記絶縁破壊強度を示す硬化物を形成することができる。前記絶縁破壊強度は、その数値が高いほど優れた絶縁性を意味することで、その上限は、特に制限されるものではないが、一つの例示では、約50kV/mm以下、45kV/mm以下、40kV/mm以下、35kV/mm以下、30kV/mm以下、25kV/mm以下又は20kV/mm以下であってもよい。前記絶縁破壊強度は、フィルム形態の前記硬化性組成物又はその硬化性組成物のフィルム形態の硬化物に対してASTM D149規格によって測定した数値であり、特に異に規定しない限り、単位は、kV/mmである。
【0014】
絶縁破壊強度は、硬化性組成物の成分である硬化性樹脂及び/又は磁性体の種類及び/又は割合の調節を通じて達成し得、例えば、後述する類型の成分を適用して達成することができる。
【0015】
本出願の硬化性組成物に含まれ得る硬化性樹脂の種類は特に制限されない。例えば、前記硬化性樹脂としては、熱の印加によって硬化反応に参加する、いわゆる熱硬化性樹脂を適用することができる。また、前記硬化性樹脂としては、いわゆる絶縁性樹脂として、硬化前及び/又は硬化後に上述した絶縁性(絶縁破壊強度)を示すことができる樹脂が適用され得る。
【0016】
このような硬化性樹脂は、硬化性官能基を有することができる。硬化性官能基としては、アルケニル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、アクリロイルオキシアルキル基、メタクリロイルオキシアルキル基、エポキシ基、オキセタン基、アルケニル基、ケイ素原子に結合された水素原子、イソシアネート基、ヒドロキシ基、フタロニトリル基又はカルボキシル基などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0017】
本明細書で用語「アルケニル基」は、特に異に規定しない限り、炭素数2~20、炭素数2~16、炭素数2~12、炭素数2~8又は炭素数2~4のアルケニル基を意味する。前記アルケニル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状であってもよく、任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0018】
本明細書で用語「アルキル基」は、特に異に規定しない限り、炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキル基を意味する。前記アルキル基は、直鎖状、分枝鎖状又は環状であってもよく、任意に一つ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0019】
本明細書で用語「エポキシ基」は、特に異に規定しない限り、3個の環構成原子を有する環状エーテル(cyclic ether)又は前記環状エーテルを含む化合物から誘導された1価残基を意味し得る。エポキシ基としては、グリシジル基、エポキシアルキル基、グリシドキシアルキル基又は脂環式エポキシ基などが例示され得る。上記で脂環式エポキシ基は、脂肪族炭化水素環構造を含み、また、前記脂肪族炭化水素環を形成している2個の炭素原子がエポキシ基を形成している構造を含む化合物に由来する1価残基を意味し得る。脂環式エポキシ基としては、6個~12個の炭素原子を有する脂環式エポキシ基が例示され得、例えば、3,4-エポキシシクロへキシルエチル基などが例示され得る。
【0020】
硬化性樹脂の具体的な種類は特に限定されない。例えば、本出願の一つの例示で、前記硬化性樹脂は、上述した官能基を含む直鎖状又は分枝鎖状構造の樹脂であってもよく、具体的には、ポリシリコン樹脂、ポリイミド、ポリエーテルイミド又はポリエステルイミドなどのイミド系樹脂、ポリウレタン樹脂、イソシアネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、フタロニトリル樹脂、ポリアミド酸、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、ビニル系重合体、オレフィン樹脂又はエポキシ樹脂などが例示され得るが、これに制限されない。
【0021】
硬化性組成物に含まれる磁性体は、硬化性組成物内で適切な分散度で分散され、目的とする物性(例えば、絶縁性)が確保できる硬化体を形成するように選択され得る。
【0022】
例えば、前記磁性体は、磁性粒子及び前記磁性粒子が表面に存在する表面処理剤を含む複合体であってもよい。適切な磁性粒子及び/又は表面処理剤の選択と組合せによって目的に適合する硬化性組成物を提供することができる。
【0023】
前記磁性粒子としては、二つ以上の磁区(Multi-Magnetic Domains)が形成されているマルチドメイン型磁性粒子を選択することが有利であり得る。このような磁性粒子は、外部磁場が存在しないときには前記磁区がランダムに配列されており、外部磁場が印加されると、印加された磁場の方向によって磁化され得る。上記で磁区が不規則に配列されるという意味は、磁区に存在する磁性方向がそれぞれ相異なっていて整列されない状態を意味し得るが、このような場合に、磁化のネット(net)値が実質的に0に近接して磁性のない状態で存在し得る。外部の電磁気場が印加されると、磁区の磁性方向が整列されることで磁化が起きることができる。このような磁性粒子は、超常磁性粒子(super-paramagnetic particle)であってもよいが、これに限定されるものではない。
【0024】
磁性粒子がマルチドメインを有するか否かは、通常その磁性粒子の粒径を通じて確認できる。
【0025】
例えば、磁性粒子が下記の数式1を満足する粒径D以上の粒径を有する場合に、その磁性粒子は、マルチドメインを有すると判断できる。
【0026】
【数1】
【0027】
数式1で、μは、真空下での磁気透過率定数(magnetic permittivity constant in vacuum、1.26X10-6H/m)であり、Msは、磁性粒子の飽和磁化度(saturation magnetization)(単位:A/m又はemu/g)であり、Aは、磁性粒子の交換硬度(exchange stiffness、単位:J/m)であり、aは、磁性粒子の格子定数(lattice constant)(単位m)である。
【0028】
数式1で、真空下での磁気透過率定数を除いた変数、すなわち、磁性粒子の飽和磁化度(saturation magnetization)、交換硬度及び格子定数は、具体的な磁性粒子の種類によって変更される。したがって、適用しようとする磁性粒子に対して前記各数値を確認した後、その数値を数式1に代入して求められたD以上に磁性粒子のサイズを制御することで、マルチドメインを有する磁性粒子を形成することができる。
【0029】
通常的に、前記数式によって求められるD以上から磁性粒子はマルチドメイン化され、したがって、本出願で適用される磁性粒子は、前記粒径D以上の粒径を有することができる。上記で磁性粒子の粒径の上限は特に制限されない。通常、磁性粒子の粒径がDを超過すると、該当磁性粒子の保磁力は劣る傾向を示すが、本出願で適用される磁性粒子は、後述する保磁力を有する範囲で粒径を有することができる。
【0030】
上記のような磁性粒子を適用すると、該当粒子が外部の磁場が存在しない場合には磁性のない状態と類似に行動するため、組成物内で凝集されず、均一に分散した状態で存在することができる。
【0031】
該当磁性粒子は、いわゆる渦電流(eddy current)やヒステリシス損失(hysteresis loss)によって熱を発生するものではなく、磁性粒子自体のヒステリシス損失は少なく、飽和磁化値(saturation magnetization value)のみが実質的に存在して、振動熱を発生するように選択され得る。例えば、外部の電磁気場の印加時に磁性粒子の保磁力(coercive force)によって磁性粒子が振動するようになり、これによって熱が発生するように選択され得る。
【0032】
前記磁性粒子は、2以上の磁区を含み得る。用語「磁区(Magnetic Domain)」とは、一般的に磁性粒子の内部に磁化の方向が相違に分けられた領域を意味する。本出願で2以上の磁区を有する磁性粒子は、外部の交流磁場によって磁区が強く磁化されて振動熱を発生させ、磁場を無くすと、元々の状態の磁区に戻り、これによってヒステリシス損失の残留磁化が低い磁性粒子を提供することができる。
【0033】
一つの例示で、前記磁性粒子は、保磁力が1kOe~200kOe、10kOe~150kOe、20kOe~120kOe、30kOe~100kOe、40kOe~95kOe又は50kOe~95kOeの範囲内にあってもよい。他の例示で、前記保磁力は、約10kOe以上、15kOe以上、20kOe以上、25kOe以上、30kOe以上、35kOe以上、40kOe以上、45kOe以上、50kOe以上、55kOe以上、60kOe以上、65kOe以上、70kOe以上、75kOe以上、80kOe以上、85kOe以上又は90kOe以上であるか、約190kOe以下、180kOe以下、170kOe以下、160kOe以下、150kOe以下、140kOe以下、130kOe以下、120kOe以下、110kOe以下又は100kOe以下程度であってもよい。用語「保磁力」とは、磁性粒子の磁化を0に減少させるために必要な臨界磁場の強度を意味し得る。外部磁場によって磁化された磁性粒子は、磁場を除去してもある程度の磁化された状態を維持し、このように磁化された磁性粒子に逆方向の磁場をかけて磁化度を0に作られる磁場の強度を保磁力と言う。磁性粒子の保磁力は、軟磁性粒子又は硬磁性粒子を区分する基準になり得、本出願の磁性粒子は、軟磁性であってもよい。本出願は、磁性粒子の保磁力を前記範囲に制御することで、磁性粒子の磁性転換をより容易に具現して本出願で目的とする程度の振動熱を発生させて樹脂の均一な硬化により目的とする程度の硬化物性を満足させ得る。
【0034】
一つの例示で、前記磁性粒子は、常温での飽和磁化値が20emu/g~150emu/g、30emu/g~130emu/g、40emu/g~100emu/g、50emu/g~90emu/g又は60emu/g~85emu/gの範囲内にあってもよい。他の例示で、前記飽和磁化値は、約20emu/g以上、30emu/g以上、40emu/g以上、50emu/g以上、60emu/g以上、70emu/g以上又は75emu/g以上であるか、約150emu/g以下、140emu/g以下、130emu/g以下、120emu/g以下、110emu/g以下、100emu/g以下又は90emu/g以下程度であってもよい。本出願は、磁性粒子の飽和磁化値を相対的に大きく制御することができ、これを通じて渦電流ではない磁性粒子間の振動による熱を発生させることで樹脂の均一な硬化により硬化物性を満足させ得る。本出願で磁性粒子の物性の測定は、VSM(Vibrating Sample Magnetometer)で算出することができる。VSMは、Hall probeによって加えた印加磁場を記録し、試料の磁化値はファラデー法則によって試料に振動を加えるときに得られる起電力を記録して試料の磁化値を測定する装置である。ファラデー(Faraday)法則は、棒磁石のN極をコイル側に向いて押すと、検流計が動いてコイルに電流が流れることが分かる。このような結果から現われる電流を誘導電流といい、誘導起電力により作られたと言う。VSMは、このような基本作動原理によって試料に振動を加えるときに発生する誘導起電力をsearch coilで検出して、この起電力によって試料の磁化値を測定する方法である。材料の磁気的特性を磁場、温度、時間の関数で簡単に測定することができ、最大2テスラの磁力と2K~1273Kの温度範囲の速い測定が可能である。
【0035】
一つの例示で、前記磁性粒子は、平均粒径が20nm~300nm、30nm~250nm、40nm~230nm又は45nm~220nmの範囲内にあってもよい。前記磁性粒子の平均粒径は、他の例示で、約30nm以上、40nm以上、50nm以上、60nm以上、70nm以上、80nm以上、90nm以上又は95nm以上であるか、290nm以下、280nm以下、270nm以下、260nm以下、250nm以下、240nm以下、230nm以下、220nm以下、210nm以下、200nm以下、190nm以下、180nm以下、170nm以下、160nm以下、150nm以下、140nm以下、130nm以下、120nm以下又は110nm以下程度であってもよい。前記磁性粒子の磁区の平均サイズは、10nm~50nm又は20nm~30nmの範囲内であってもよい。本出願は、前記粒径範囲内で、磁性粒子の磁区の数及び保磁力の大きさが適正範囲に制御されることで、前記組成物中で樹脂の均一な硬化を進行することができる熱を発生させ得る。本出願は、粒子のサイズを20nm以上に制御することで、低い保磁力と多数の磁区を通じて硬化時に十分な振動熱を発生させることができ、300nm以下に制御することで、磁性粒子自体のヒステリシス損失を小さくしながら飽和磁化値(saturation magnetization value)のみが存在するようにし、これによって均一で且つ安定的な硬化を具現することができる。
【0036】
本出願の磁性粒子は、電磁気誘導加熱を通じて熱を発生することができるものであれば、その素材は特に制限されない。一つの例示で、磁性粒子は、下記化学式1で示される粒子であってもよい。
【0037】
[化学式1]
MX
【0038】
化学式1で、Mは、金属又は金属酸化物であり、Xは、Fe、Mn、Co、Ni又はZnであり、|a X c| = |b X d|を満足し、前記cは、Xの陽イオン電荷であり、前記dは、酸素の陰イオン電荷である。一つの例示で、Mは、Fe、Mn、Mg、Ca、Zn、Cu、Co、Sr、Si、Ni、Ba、Cs、K、Ra、Rb、Be、Li、Y、B又はこれらの酸化物であってもよい。例えば、XがFeである場合、cは、+3であり、dは、-2であってもよい。また、例えば、XがFeである場合、これはFeOFeで表現され得るので、cは、それぞれ+2及び+3であり、dは、-2であってもよい。本出願の磁性粒子は、前記化学式1を満足する限り、特に制限されず、例えば、MFeであってもよい。
【0039】
一つの例示で、本出願の組成物は、磁性粒子として前記化学式1の化合物を単独で含むか、化学式1の化合物の混合物又は化学式1の化合物に無機物がドーピングされた化合物を含み得る。前記無機物は、1価~3価の陽イオン金属又はこれらの酸化物を含み得、2種以上の複数の陽イオン金属を用いることができる。
【0040】
一つの例示で、前記磁性粒子は、前記磁性体内で磁性粒子クラスタを形成した状態で存在することができる。このような場合に、磁性粒子間の凝集を防止して分散性が向上し、これによって振動熱によって効果的に樹脂を硬化させることができる。
【0041】
磁性体内で前記磁性粒子は、適切な表面処理剤によって表面処理されていてもよい。前記表面処理は、前記磁性粒子の表面に導入できる化合物(表面処理剤)を用いて行うことができる。本明細書で磁性体の表面処理に対して説明しながら用いる用語「導入、アンカリング(anchoring)、相互作用あるいは結合」は、磁性粒子と表面処理剤との間あるいは表面処理剤間に結合が形成されている場合を意味する。また、上記で結合としては、共有結合、イオン結合、水素結合、配位結合及び/又はバンデルバルス結合などのように2個の成分を互いに連結できると知られた全ての種類の結合を含む。
【0042】
一つの例示で、官能基としてリン酸基(phosphoric acid)、カルボキシル基(carboxyl group)、スルホン酸基(sulfonic acid)、アミノ基(amino group)及び/又はシアノ基(cyano group)を有する化合物は、通常的に公知にされた磁性粒子と相互作用して前記結合を形成することができると知られている。したがって、前記磁性粒子は、上記のような官能基を有する物質によって表面処理されていてもよい。
【0043】
本出願では、適用できる前記化合物(表面処理剤)としては、ポリオール系化合物、ポリシロキサン系化合物、アルキルリン酸(alkyl phosphoric acid)系表面処理剤(例えば、下記化学式Aの化合物)、アルキルカルボン酸(alkyl carboxylic acid)系表面処理剤(例えば、下記化学式Bの化合物)、スルホン酸(alkyl sulfonic acid)系表面処理剤、その他長鎖アルキル基を含む酸化合物、酸性官能基又はアミノ基を含むアクリル共重合体、芳香族酸系表面処理剤、酸性官能基又はアミノ基を含むブロック共重合体などを適用することができる。
【0044】
[化学式A]
【化1】
【0045】
[化学式B]
【化2】
【0046】
[化学式C]
【化3】
【0047】
化学式A~Cで、R~Rは、それぞれ独立的にアルキル基、アリールアルキル基、アルコキシ基又はアリールアルコキシ基である。
【0048】
前記化学式A~Cに含まれ得るアルキル基又はアルコキシ基としては、炭素数が6~24の範囲内であるアルキル基又はアルコキシ基が例示され得る。また、前記アルキル基又はアルコキシ基の炭素数は、他の例示で、7個以上、8個以上、9個以上、10個以上、11個以上、12個以上、13個以上、14個以上、15個以上、16個以上、17個以上、18個以上、19個以上、20個以上、21個以上、22個以上又は23個以上であるか、23個以下、22個以下、21個以下、20個以下、19個以下、18個以下、17個以下、16個以下、15個以下、14個以下、13個以下、12個以下、11個以下、10個以下、9個以下、8個以下又は7個以下程度であってもよい。
【0049】
前記化学式A~Cに含まれ得るアルキル基又はアルコキシ基としては、炭素数6~13程度のアリール基が例示され得、例えば、ベンジル基又はフェニル基などが適用され得る。
【0050】
また、他の例示で、前記表面処理剤としては、(a)任意的に脂肪酸-改質された又はアルコキシ化(特にエトキシ化)されたポリアミンのリン酸エステル塩、エポキシド-ポリアミン付加物のリン酸エステル塩、アミノ基を含むアクリレート又はメタクリレート共重合体のリン酸エステル塩又はアクリレート-ポリアミン付加物のリン酸エステル塩などのようなアミノ基を含むオリゴマー又はポリマーのリン酸エステル塩;(b)アルキル、アリール、アラルキル又はアルキルアリールアルコキシレートを有するリン酸塩のモノエステル又はジエステル(例:ノニルフェノールエトキシレート、イソトリデシルアルコルエトキシレート、ブタノール-出発アルキレンオキシドポリエーテルのリン酸モノエステル又はジエステル)、ポリエステルを有するリン酸のモノエステル又はジエステル(例:カプロラクトンポリエステル又はカプロラクトン/バレロラクトンが混合されたポリエステルのようなラクトンポリエステル)などのようなリン酸のモノエステル又はジエステル;(c)アルキル、アリール、アラルキル又はアルキルアリールアルコキシレートを有する酸性ジカルボキシモノエステル(特に、コハク酸、マレイン酸又はフタル酸の物)(例:ノニルフェノールエトキシレート、イソトリデシルアルコルエトキシレート又はブタノール-出発アルキレンオキシドポリエーテル) などのような酸性ジカルボキシモノエステル;(d)ポリウレタン-ポリアミン付加物;(e)ポリアルコキシ化モノアミン又はジアミン(例:エトキシ化オレイルアミン又はアルコキシ化エチレンジアミン)又は(f)モノアミン、ジアミン、ポリアミン、アミノアルコールと不飽和脂肪酸の反応生成物及び不飽和1,2-ジカルボン酸及びこれらの無水物及びこれらの塩及びアルコール及び/又はアミンとの反応生成物なども適用され得る。
【0051】
上記のような表面処理剤は、市販の製品として公知にされており、例えば、BYK-220 S、BYK-P 9908、BYK-9076、BYK-9077、BYK-P 104、BYK-P 104 S、BYK-P 105、BYK-W 9010、BYK-W 920、BYK-W 935、BYK-W 940、BYK-W 960、BYK-W 965、BYK-W 966、BYK-W 975、BYK-W 980、BYK-W 990、BYK-W 995、BYK-W 996、BYKUMEN、BYKJET 9131、LACTIMON、ANTI-TERRA-202、ANTI-TERRA-203、ANTI-TERRA-204、ANTI-TERRA-205、ANTI-TERRA-206、ANTI-TERRA-207、ANTI-TERRA-U 100、ANTI-TERRA-U 80、ANTI-TERRA-U、LP-N-21201、LP-N-6918、DISPERBYK、DISPERBYK-101、DISPERBYK-102、DISPERBYK-103、DISPERBYK-106、DISPERBYK-107、DISPERBYK-108、DISPERBYK-109、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-112、DISPERBYK-115、DISPERBYK-116、DISPERBYK-118、DISPERBYK-130、DISPERBYK-140、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-160、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-165、DISPERBYK-166、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-169、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、DISPERBYK-176、DISPERBYK-180、DISPERBYK-181、DISPERBYK-182、DISPERBYK-183、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-187、DISPERBYK-190、DISPERBYK-191、DISPERBYK-192、DISPERBYK-193、DISPERBYK-194、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2008、DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2010、DISPERBYK-2020、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2070、DISPERBYK-2090、DISPERBYK-2091、DISPERBYK-2095、DISPERBYK-2096、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2151、DISPERBYK-2152、DISPERBYK-2155、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、DISPERBLAST-1010、DISPERBLAST-1011、DISPERBLAST-1012、DISPERBLAST-1018又はDISPERBLAST-I、DISPERBLAST-Pなどのような製品名(ベゼルのBYK-Chemie)で知られた表面処理剤が用いられ得る。
【0052】
適切な表面処理効果のために前記表面処理剤としては、酸価が10~400mgKOH/gの範囲内にあるか、アミン価が5~400mgKOH/gの範囲内にある表面処理剤を用いることができる。
【0053】
前記表面処理剤の酸価は、他の例示で、約20mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、50mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、70mgKOH/g以上、80mgKOH/g以上又は90mgKOH/g以上であるか、約390mgKOH/g以下、380mgKOH/g以下、370mgKOH/g以下、360mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、340mgKOH/g以下、330mgKOH/g以下、320mgKOH/g以下、310mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下、290mgKOH/g以下、280mgKOH/g以下、270mgKOH/g以下、260mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、220mgKOH/g以下、210mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下、190mgKOH/g以下、180mgKOH/g以下、170mgKOH/g以下、160mgKOH/g以下、150mgKOH/g以下、140mgKOH/g以下、130mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、110mgKOH/g以下又は100mgKOH/g以下程度であってもよい。
【0054】
前記表面処理剤のアミン価は、他の例示で、約10mgKOH/g以上、約15mgKOH/g以上、約20mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、50mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、70mgKOH/g以上、80mgKOH/g以上又は90mgKOH/g以上であるか、約390mgKOH/g以下、380mgKOH/g以下、370mgKOH/g以下、360mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、340mgKOH/g以下、330mgKOH/g以下、320mgKOH/g以下、310mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下、290mgKOH/g以下、280mgKOH/g以下、270mgKOH/g以下、260mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、220mgKOH/g以下、210mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下、190mgKOH/g以下、180mgKOH/g以下、170mgKOH/g以下、160mgKOH/g以下、150mgKOH/g以下、140mgKOH/g以下、130mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、110mgKOH/g以下又は100mgKOH/g以下程度であってもよい。
【0055】
本明細書で用語「アミン価」は、表面処理剤が含むアミノ基(-NH、-NHR又は-NR)をKOHで滴定してKOH消費量で示した数値(表面処理剤1g当たり滴定されたKOHの消費量をmgで示した数値)を意味する。
【0056】
また、酸価は、表面処理剤が有している酸基(-COOH)をKOHで滴定してKOH消費量で示した数値(表面処理剤1g当たり滴定されたKOHの消費量をmgで示した数値)を意味する。
【0057】
前記酸価は、試料を溶剤(ジエチルエーテルとエタノールの体積比(ジエチルエーテル:エタノール)2:1の混合溶剤)に溶解し、電位差自動滴定装置(メトラー、G10S)を用いて測定することができる。前記試料に対して濃度が約0.1mol/lになるように水酸化カリウムを溶解したエタノール溶液(水酸化カリウムエタノール溶液)で電位差の滴定を行い、試料を中和するために要求される前記水酸化カリウムエタノール溶液の量を測定した後、下記式Aを通じて酸価を計算することができる。
【0058】
[式A]
酸価 =(B×f×5.611)/S
【0059】
数式Aで、Bは、滴定に用いられた水酸化カリウムエタノール溶液の量(単位:mL)であり、fは、0.1mol/Lの水酸化カリウムエタノール溶液のファクターであり、Sは、試料の固形分の質量(g)である。
【0060】
前記アミン価(Amine value、mgKOH/g)は、フラスコ(Flask)に試料を約0.5gの量で入れ、中和アセトン(Acetone)で溶解させた後、溶液を冷凍させ、ブロモフェノールブルー(Bromophenol blue)指示薬を用いて青色から黄色に変わるまで0.1N HClで滴定した後、次の計算式Bを通じて求めることができる。
【0061】
[式B]
アミン価(Amine value、mgKOH/g)=mol 0.1N HCl×100×5.61/試料重さ×NV
【0062】
前記式Bで、NVは、Non volatile、すなわち、固形分であって、次の方式で求めることができる。
【0063】
7.5cm Diameter Tin lidの上に試料を約0.8~1.0gの量で坪量し、均一に広げた後、125℃で60分間Air Circulator drying ovenで乾燥させた後、下記式Cにより求めることができる。
【0064】
[式C]
NV(単位:%)= 最終重さ(乾燥後の重さ)/最初重さ(乾燥前の重さ)X 100
【0065】
一方、目的とする物性(粘度など)を確保するためには、前記磁性粒子と結合を形成している表面処理剤は、重量平均分子量(Mw)が約20,000以下の化合物であることが適切である。本出願で用語「重量平均分子量」は、GPC(Gel Permeation Chromatograph)で測定した標準ポリスチレン換算数値であり、特に異に規定しない限り、単純に分子量と称してもよい。また、前記分子量の単位は、g/molであってもよい。
【0066】
前記表面処理剤の分子量は、他の例示で、約19,000以下、18,000以下、17,000以下、16,000以下、15,000以下、14,000以下、13,000以下、12,000以下、11,000以下、10,000以下、9,000以下、8,000以下、7,000以下、6,000以下、5,000以下、4,000以下、3,000以下、2,000以下又は1,000以下であるか、あるいは100以上、200以上、300以上、400以上、500以上、600以上、700以上、800以上、900以上又は1,000以上であってもよい。
【0067】
本出願では、前記化合物に前記官能基、すなわち、リン酸基(phosphoricacid)、カルボキシル基(carboxyl group)、スルホン酸基(sulfonic acid)、アミノ基(amino group)及び/又はシアノ基(cyano group)などが存在する場合に、その官能基と磁性粒子を相互作用させる方式を適用するか、あるいは前記化合物が前記官能基を有しない場合に、公知にされた化学的方式によって前記官能基を前記化合物に導入した後に磁性粒子と相互作用させて前記磁性体を形成することができる。
【0068】
磁性体で前記表面処理剤は、前記磁性粒子100重量部に対して約0.1~30重量部の割合で含まれ得る。このような割合下で目的とする性能を有する磁性体を得ることができる。本明細書では、特に異に規定しない限り、単位「重量部」は、各成分間の重量割合を意味する。上記割合は、他の例示で、約0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上又は5重量部以上であるか、約25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下又は10重量部以下程度であってもよい。
【0069】
磁性粒子を前記表面処理剤で表面処理して前記磁性体を得る方式は特に制限されない。例えば、溶媒など適切な環境下で前記磁性粒子と前記表面処理剤を混合することで磁性粒子と表面処理剤の間の相互作用を誘導し、上述した結合を形成することができる。このような表面処理剤は、前記磁性粒子のまわりに存在することができる。
【0070】
磁性粒子は、追加的に表面処理されていてもよい。このような場合に、前記言及された表面処理剤は、1次表面処理剤と呼称され、追加的な表面処理のために用いられる表面処理剤は、2次表面処理剤と呼ばれ得る。したがって、一つの例示で、前記磁性体は、前記表面処理剤(1次表面処理剤)又は前記磁性粒子と結合を形成している2次表面処理剤を追加で含むことができる。
【0071】
前記2次表面処理剤としては、高分子化合物を用いることができ、例えば、分子量(Mw)が約1,000~500,000の範囲内である高分子化合物が適用され得る。前記分子量(Mw)は、他の例示で、約1500以上、2000以上、2500以上、3000以上、3500以上、4000以上、4500以上、5000以上、5500以上、6000以上、6500以上、7000以上、7500以上、8000以上、8500以上、9000以上、9500以上、10000以上、12000以上、14000以上、16000以上、18000以上、19000以上又は20000以上であるか、450000以下、400000以下、350000以下、300000以下、250000以下、200000以下、150000以下、100000以下、90000以下、80000以下、70000以下、60000以下、50000以下、40000以下、30000以下又は25000以下程度であってもよい。
【0072】
2次表面処理剤で用いられ得る前記高分子化合物としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリ(ウレタン-ウレア)及び/又はポリエステルなどが例示され得る。前記言及された高分子化合物に対して前記1次表面処理剤及び/又は磁性粒子と相互作用する官能基を含む化合物を選択して用いるか、あるいは前記官能基を含まない場合は、そのような官能基を導入して適用することで表面処理を行うことができる。
【0073】
前記2次表面処理剤で用いられる高分子化合物は、前記1次表面処理剤及び/又は磁性粒子と相互作用する官能基を有し得、このような官能基としては、上述したリン酸基(phosphoric acid)、カルボキシル基(carboxyl group)、スルホン酸基(sulfonic acid)、アミノ基(amino group)及び/又はシアノ基(cyano group)などや、2次又は3次アミン基又はアミノ基(-NH、-NHR又は-NRなど)や、ウレア結合などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0074】
一つの例示で、前記2次表面処理剤としては、ウレア単位及び/又はウレタン単位を含む高分子を適用することができる。
【0075】
上記でウレア単位は、下記化学式2で表示され、ウレタン単位は、下記化学式3で表示され得る。
【0076】
[化学式2]
【化4】
【0077】
化学式2で、R~Rは、それぞれ独立的に水素原子又はアルキル基であり、L及びLは、それぞれ独立的に脂肪族、脂環族又は芳香族2価残基である。
【0078】
[化学式3]
【化5】
【0079】
化学式3で、R及びRは、それぞれ独立的に水素原子又はアルキル基であり、L及びLは、それぞれ独立的に脂肪族、脂環族又は芳香族2価残基である。
【0080】
化学式2の単位は、いわゆるウレア単位であって、ポリアミン(polyamine)とジイソシアネート化合物を反応させて形成することができる。したがって、例えば、前記化学式2で、Lは、前記反応に参加するジイソシアネート化合物に由来した構造であり、Lは、前記反応に参加するポリアミンに由来した構造であってもよい。上記で「由来した構造」とは、Lの場合、前記ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた構造であり、Lの場合、前記ポリアミン化合物からアミン基(-NH)を除いた部分の構造である。
【0081】
一方、前記化学式3の単位は、いわゆるウレタン単位であって、ポリオール(polyol)とジイソシアネート化合物を反応させて形成することができる。したがって、例えば、前記化学式3で、Lは、前記反応に参加するジイソシアネート化合物に由来した構造であり、Lは、前記反応に参加するポリオールに由来した構造であってもよい。上記で「由来した構造」とは、Lの場合、前記ジイソシアネート化合物からイソシアネート基を除いた構造であり、Lの場合、前記ポリオール化合物からヒドロキシ基(-NH)を除いた部分の構造である。
【0082】
前記化学式2及び3の構造を形成することができるジイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソボロンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート又はナフタリンジイソシアネートなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0083】
また、前記化学式2の構造を形成することができるポリアミンとしては、エチレンジアミン又はプロピレンジアミンなどのように炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキレン単位を有するアルキレンジアミンが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0084】
また、前記化学式3の構造を形成することができるポリオールとしては、エチレングリコール又はプロピレングリコールなどのように炭素数1~20、炭素数1~16、炭素数1~12、炭素数1~8又は炭素数1~4のアルキレン単位を有するアルキレングリコールが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0085】
したがって、上記のような公知のモノマーを適切に組合せて適用したポリウレタン及び/又はポリウレアあるいはポリ(ウレタン-ウレア)などを前記2次表面処理剤で用いることができ、必要に応じて、公知にされた化学的方法で前記ポリウレタン及び/又はポリウレアあるいはポリ(ウレタン-ウレア)などに必要な官能基を導入した後に適用することができる。
【0086】
2次表面処理剤としては、硬化性樹脂の種類によっては、酸価及び/又はアミン価を有する化合物を用いるか、あるいはそうではない化合物が適用され得る。したがって、一つの例示で、前記2次表面処理剤は、酸価が10~400mgKOH/gの範囲内にあるか、アミン価が5~400mgKOH/gの範囲内にあってもよい。
【0087】
前記表面処理剤の酸価は、他の例示で、約20mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、50mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、70mgKOH/g以上、80mgKOH/g以上又は90mgKOH/g以上であるか、約390mgKOH/g以下、380mgKOH/g以下、370mgKOH/g以下、360mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、340mgKOH/g以下、330mgKOH/g以下、320mgKOH/g以下、310mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下、290mgKOH/g以下、280mgKOH/g以下、270mgKOH/g以下、260mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、220mgKOH/g以下、210mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下、190mgKOH/g以下、180mgKOH/g以下、170mgKOH/g以下、160mgKOH/g以下、150mgKOH/g以下、140mgKOH/g以下、130mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、110mgKOH/g以下又は100mgKOH/g以下、90mgKOH/g以下、80mgKOH/g以下、70mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下又は30mgKOH/g以下程度であってもよい。
【0088】
前記表面処理剤のアミン価は、他の例示で、約10mgKOH/g以上、約15mgKOH/g以上、約20mgKOH/g以上、30mgKOH/g以上、40mgKOH/g以上、50mgKOH/g以上、60mgKOH/g以上、70mgKOH/g以上、80mgKOH/g以上又は90mgKOH/g以上であるか、約390mgKOH/g以下、380mgKOH/g以下、370mgKOH/g以下、360mgKOH/g以下、350mgKOH/g以下、340mgKOH/g以下、330mgKOH/g以下、320mgKOH/g以下、310mgKOH/g以下、300mgKOH/g以下、290mgKOH/g以下、280mgKOH/g以下、270mgKOH/g以下、260mgKOH/g以下、250mgKOH/g以下、240mgKOH/g以下、230mgKOH/g以下、220mgKOH/g以下、210mgKOH/g以下、200mgKOH/g以下、190mgKOH/g以下、180mgKOH/g以下、170mgKOH/g以下、160mgKOH/g以下、150mgKOH/g以下、140mgKOH/g以下、130mgKOH/g以下、120mgKOH/g以下、110mgKOH/g以下又は100mgKOH/g以下、90mgKOH/g以下、80mgKOH/g以下、70mgKOH/g以下、60mgKOH/g以下、50mgKOH/g以下、40mgKOH/g以下又は30mgKOH/g以下程度であってもよい。
【0089】
他の例示では、前記2次表面処理剤は、酸価及び/又はアミン価がない化合物であってもよい。本出願で「酸価又はアミン価がない」とは、前記酸価又はアミン価が約5mgKOH/g以下、4mgKOH/g以下、3mgKOH/g以下、2mgKOH/g以下、1mgKOH/g以下又は0.5mgKOH/g以下であるか、実質的に0mgKOH/gである場合を意味する。
【0090】
このように酸価及び/又はアミン価がない表面処理剤は、特に硬化性樹脂がエポキシ樹脂などである場合に効果的である。
【0091】
このような表面処理剤としては、いわゆる超分岐ポリエステル系(branched polyester)分散剤などと知られた枝型ポリエステル表面処理剤がある。
【0092】
前記2次表面処理剤としては、高分子化合物を適用することができ、例えば、前記1次表面処理剤に比べて分子量が大きい高分子化合物を用いることができる。このような場合に、前記2次表面処理剤の分子量(Mw)は、例えば、約10,000~500,000の範囲内であってもよい。上記のような2次表面処理剤は、特に硬化性樹脂としてエポキシ樹脂が適用される場合に効果的である。
【0093】
磁性体で前記2次表面処理剤は、前記磁性粒子100重量部に対して約0.01~30重量部の割合で含まれ得る。このような割合下で目的とする性能を有する磁性体を得ることができる。上記割合は、他の例示で、約0.5重量部以上、1重量部以上、1.5重量部以上、2重量部以上、2.5重量部以上、3重量部以上、3.5重量部以上、4重量部以上、4.5重量部以上又は5重量部以上であるか、約25重量部以下、20重量部以下、15重量部以下、約13重量部以下、約12重量部以下又は10重量部以下程度であってもよい。
【0094】
磁性粒子を前記2次表面処理剤で表面処理する方式は特に制限されない。例えば、溶媒などの適切な環境内で前記磁性粒子(あるいは1次表面処理剤で処理された磁性粒子)と前記2次表面処理剤を混合する方式で前記磁性体を製造することができる。
【0095】
本出願の硬化性組成物で前記磁性体の割合は特に制限されず、該当硬化性組成物の硬化のために必要な熱などを考慮して選択することができる。一つの例示で、硬化性組成物は、前記硬化性樹脂100重量部に対して0.01~60重量部の割合で前記磁性体を含むことができる。前記磁性粒子の割合は、他の例示で、約0.5重量部以上又は約1重量部以上、約3重量部以上又は約5重量部以上であるか、約55重量部以下、約50重量部以下、約45重量部以下、約40重量部以下、約35重量部以下、約30重量部以下、約25重量部以下、約20重量部以下、約15重量部以下又は約10重量部以下程度であってもよい。前記磁性体の割合計算において基準になる「硬化性樹脂」は、樹脂状態である成分はもちろん樹脂状態ではないが、硬化によって樹脂を形成することができる成分も含まれる。
【0096】
硬化性組成物は、上述した成分に追加で硬化性組成物において要求される任意の添加剤を追加で含むことができる。このような添加剤としては、例えば、硬化性樹脂の硬化を補助する硬化剤や触媒又はラジカル開始剤や陽イオン開始剤などの開始剤、揺変性付与剤、レベリング剤、消泡剤、酸化防止剤、ラジカル生成物質、有機無機顔料又は染料、分散剤、熱伝導性フィラーや絶縁性フィラーなどの各種フィラー、機能性高分子又は光安定剤などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0097】
上記のような硬化性組成物は、多様な用途に適用され得る。特に上述したように、本出願の硬化性組成物は、低粘度の状態でも効果的に硬化されて目的とする物性の硬化物を形成することができるので、非常に狭いか複雑な形状の部位を充填して目的物性の硬化物を形成する用途に効果的に適用され得る。
【0098】
上のような場合と関連された用途としては、モーターが例示できる。したがって、本出願は、一つの例示で、前記言及された硬化性組成物あるいはそれの硬化物が適用された電気モーターに関するものであってもよい。
【0099】
モーターは、電気エネルギーから回転力を得ることができる装置であり、例えば、いわゆるステータ(stator)とロータ(rotor)を含むことができる。上記でロータは、ステータと電磁気的に相互作用するように構成され、磁場とコイルに流れる電流の間で作用する力によって回転することができる。
【0100】
ステータには、多数のスロット(slot)が形成されていてもよい。スロットにはワイヤが巻取され、各ワイヤはリードワイヤに結線されることで電源の印加を受ける。スロット(slot)に巻取されるワイヤとしては、一般巻線方式のワイヤとヘアピン巻線方式のワイヤが知られている。上記で一般巻線方式は、相対的に薄い多数のワイヤをスロット(slot)に巻取する方式であり、この方式は高速での表皮効果(skin effect)が少なく発生する。ヘアピン巻線方式は、相対的に太いワイヤをスロットに挿入する方式である。ヘアピン巻線方式によると、コイルの間の空間の浪費がないので点滴率を極大化することができ、抵抗減少による出力の向上を期待することができる。
【0101】
いずれの方式でもスロットに巻線が適用された後にスロット内の空間は絶縁体により充填される必要があるが、前記スロットは、開口部が狭く、内部も狭い空間であるので、この空間を適切に充填することは難しい問題である。特に、スロットの内部に巻線が存在する場合には、一層これを充填することは難しい。
【0102】
しかし、本出願の硬化性組成物は、適切な低粘度の流動性を有することで、複雑であるか狭い部位にも効果的に充填され、硬化収縮などがほとんどない状態で硬化されて前記部位を効果的に充填することができるので、上のような用途(内部に巻線が導入されたスロットを充填する用途)にも効果的に適用され得る。
【0103】
これによって、本出願の電気モーターは、一つ以上のスロット(slot)が形成されているステータ(stator);前記ステータ(stator)のスロット(slot)内に存在する巻線;及び前記スロット(slot)内を充填している前記硬化性組成物又は前記硬化性組成物の硬化物を含むことができる。
【0104】
前記本出願の電気モーターに適用されるステータの形態又は種類は特に制限されない。通常、ステータは、円筒状に積層された鉄(Fe)などの素材に形成された鋼板を含む構造を有し、このとき、スロットは、前記ステータの円周方向に沿って放射状に配列されているが、本出願で適用できるステータの種類がこれに制限されるものではない。
【0105】
また、ステータに形成されるスロットの形状やサイズ又は個数も用途によって変更され得る。
【0106】
また、本出願で適用される前記巻線の種類も特に制限されない。通常、巻線は、銅(Cu)のような素材に絶縁コーティングなどを行って製造されるが、本出願では、このような通常的な巻線はもちろんその他種類の巻線も適用され得る。また、巻線の方式も上述した一般巻線方式及びヘアピン巻線方式など全ての種類が適用され得る。
【0107】
図1及び図2は、前記ステータ100の例示的な形態である。図1及び図2に例示されたステータは、前記言及した円筒状(シリンダー型)のステータであって、図1は、前記ステータ100をスロット101が形成された面の方向から観察した場合であり、図2は、前記ステータ100を側面から観察した場合である。また、図3は、上記のようなステータ100のスロット内に前記巻線102が導入されている側面図である。
【0108】
上述したように、ステータに形成されるスロットの形態、サイズ及び/又は個数は、用途によって決定されることで、特に制限されるものではない。しかし、通常、前記スロットは、開口部が狭く、内部空間も狭小である。例えば、通常、前記スロットの開口部の面積は、0.5~10cmの範囲内である。また、通常、前記スロットの長さは、約5~30cmの範囲内である。しかし、前記開口部の面積及び長さなどはモーターの種類によって変更され得る。
【0109】
本出願の硬化性組成物を適用すると、上記のようなスロットの内部を優れた充填率で充填することができる。例えば、本出願の前記モーターで前記硬化性組成物又はその硬化物は、前記スロットの内部を80%以上の充填率で充填することができる。前記充填率は、他の例示で、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上又は90%以上であってもよい。前記充填率は、前記巻線などスロットの内部に存在する要素が占める体積を除いたスロットの内部体積に対するスロット内部に存在する硬化性組成物又はそれの硬化物の体積の百分率である。前記充填率は、その数値が高いほど有利であり、その上限は特に制限されない。例示的に、前記充填率は、100%以下、99%以下、98%以下、97%以下、96%以下、95%以下、94%以下又は93%以下程度であってもよい。
【0110】
本出願の電気モーターでは、前記言及された硬化性組成物又はそれの硬化物がスロットの内部を充填する形態を有する限り、その他要素又は部品としては、一般的に公知にされた電気モーターの部品が全て適用され得る。
【0111】
上記のような電気モーターは、内部に巻線が導入されたスロット(slot)が一つ以上形成されている前記ステータの前記スロットに前記硬化性組成物を導入するステップを通じて製造することができる。必要に応じて、前記硬化性組成物を導入した後に該当硬化性組成物を硬化させるステップが追加で進行され得る。
【0112】
上記でスロットの内部に硬化性組成物を導入する方式は特に制限されない。すなわち、本出願によると、硬化性組成物が非常に低粘度であるとともに流動性が良い状態で維持され得るので、適切な方式を通じて前記スロットの内部を硬化性組成物で充填することができる。
【0113】
図4は、スロットの内部を硬化性組成物で充填する一つの例示的な方式を示す図である。図の最左側のように、一つの例示で、前記硬化性組成物は、適切なノズル200などの導入手段を通じて巻線102が導入されたスロットに向いて滴下又は分散されて導入され得る。導入された硬化性組成物をスロットの内部に適切に充填させるために、図4の中間及び最右側に示したように、前記硬化性組成物の導入後にステータ100をチルティング(tilting)するか傾ける工程が追加で行われてもよい。
【0114】
上記のような工程を通じて硬化性組成物を注入した後、これを硬化させるステップが追加で進行され得る。このような場合に硬化を行う方式は特に制限されない。
【0115】
例えば、前記硬化は、誘導加熱方式で行うことができる。
【0116】
上述したように、前記硬化性組成物は、磁性体を含むため、誘導加熱方式が適用され得る。
【0117】
例えば、スロット内部の硬化性組成物に向いて交流磁場を印加すると、印加される交流磁場の強度によって磁性体の振動熱のジュール熱が発生でき、組成物の内部に均一に分散されている前記粒子の熱によって短時間内に均一な硬化物を形成することができる。
【0118】
したがって、前記硬化工程は、前記硬化性組成物に交流磁場を印加するステップを含むことができる。前記交流磁場の印加によって前記磁性体の振動熱が発生し、これによって、組成物は硬化され得る。このとき、交流磁場を印加する条件は、硬化性組成物内の磁性体の種類及び割合と硬化のために要求される熱の量などによって決定されることで、特に制限されない。例えば、前記誘導加熱は、コイルなどの形態に形成された誘導加熱器を用いて交流磁場を印加して進行することができる。
【0119】
上記で交流磁場は、例えば、0.001~0.5Tesla(Wb/m)の範囲内の強度で印加され得る。前記印加される交流磁場の大きさは、他の例示で、0.45Tesla以下、0.4Tesla以下、0.35Tesla以下、0.3Tesla以下、0.25Tesla以下又は0.2Tesla以下であってもよい。前記交流磁場の強度は、他の例示で、約0.002Tesla以上、約0.003Tesla以上又は約0.004Tesla以上であってもよい。
【0120】
一つの例示で、交流磁場は、段階的に印加するか、あるいは複数の他の条件の交流磁場を印加する方式を適用することができる。
【0121】
誘導加熱は、例えば、交流磁場を約50kHz~1,000kHzの周波数で印加して行うことができる。前記周波数は、他の例示で、900kHz以下、800kHz以下、700kHz以下、600kHz以下、500kHz以下又は450kHz以下であってもよい。前記周波数は、他の例示で、約70kHz以上、約100kHz以上、約150kHz以上、約200kHz以上又は約250kHz以上であってもよい。
【0122】
前記誘導加熱のための交流磁場の印加は、例えば、約5秒~10時間の範囲内で行うことができる。前記印加時間は、他の例示で、約9時間以下、約8時間以下、約7時間以下、約6時間以下、約5時間以下、約4時間以下、約3時間以下、約2時間以下、約1時間以下、約50分以下、約40分以下、約30分以下、約20分以下、約15分以下、約10分以下又は約5分以下であってもよい。
【0123】
前記言及した誘導加熱条件、例えば、印加される交流磁場、周波数及び印加時間などは、上述したように、硬化性組成物の硬化のために要求される熱の量、粒子の種類及び割合などを考慮して変更され得る。
【0124】
前記硬化性組成物の硬化は、前記言及した誘導加熱によってのみ行うか、必要な場合に前記誘導加熱、すなわち、交流磁場の印加と共に適切な熱を印加しながら行ってもよい。
【発明の効果】
【0125】
本出願では、低粘度であるとともに流動性を有する状態で適用された後に硬化収縮などを起こさず、効果的に硬化されて目的とする物性の硬化物を形成することができる硬化性組成物が提供され得る。
【図面の簡単な説明】
【0126】
図1】例示的なステータの模式図である。
図2】例示的なステータの模式図である。
図3】ステータ内に巻線が導入された状態を示す模式図である。
図4】巻線が導入されたステータのスロット内部に硬化性組成物を導入する過程を例示的に示す図である。
【符号の説明】
【0127】
100:ステータ
101:スロット
102:巻線
200:ノズル
【発明を実施するための形態】
【0128】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願を具体的に説明するが、本出願の範囲は下記実施例によって制限されるものではない。
【0129】
1.粘度の測定方法
硬化性組成物の粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)DV2LV粘度計を用いて測定した。前記粘度計を用いてspindle #16を用いてせん断速度100s-1の条件を満足するようにrpmを調節して常温で粘度を測定した。
【0130】
2.常温安定性の評価方法
硬化性組成物の常温安定性は、実施例又は比較例で製造された硬化性組成物を20mLのバイアルに約10mLの量で導入した後、常温で維持しながら、磁性体と硬化性樹脂の相分離が発生する時点を評価して確認した。肉眼で磁性体の相分離又は沈澱が確認される時点を評価し、前記時点の時間を確認して常温安定性を評価した。
【0131】
3.絶縁破壊強度
絶縁破壊強度は、硬化性組成物の硬化物に対してASTM D149規格によって評価した。前記硬化物を横及び縦の長さがそれぞれ100mm程度であり、厚さが1~3mmである試片にし、前記規格によって絶縁破壊強度を測定した後、これを単位厚さ当たり絶縁破壊強度で換算した。
【0132】
4.硬度の評価
硬度は、硬化性組成物の硬化物を横及び縦の長さがそれぞれ100mm程度であり、厚さが12mm程度である試片に成形し、ASTM D2240規格によってデュロメーターで測定した。
【0133】
5.充填率の評価
充填率は、実施例又は比較例で記載した方式によって巻線が導入されたステータのスロットの内部に硬化性組成物の硬化物を形成した後、前記ステータを切断してスロット内部に充填された硬化物の量を確認した後、全体スロットの内部体積に対した前記硬化物の体積の百分率を求めて決めた。
【0134】
製造例1.磁性粒子(A)
磁性粒子(A)としては、MnOFe粒子を適用した。前記磁性粒子(A)は、FESEM(Field Effect Scanning Electron Microscope)及びDLS(Dynamic Light Scattering)で測定したときに、平均粒径が約100nmであり、保磁力が約94kOeであり、飽和磁化値が約80emu/g程度であった。上記で保磁力と飽和磁化値は、振動試片磁力計(SQUID-Vibrating Sample Magnetometer、大韓民国基礎科学支援研究部)に外部磁場1Tesla条件下でH-Sカーブ(VSMカーブ)を用いて測定した。
【0135】
製造例2.磁性体(A)の製造
製造例1の磁性粒子を表面処理した磁性体(A)は、次の方式で製造した。表面処理剤としては、酸価が約94mgKOH/gであり、アミン価が約94mgKOH/gである表面処理剤(BYK-180)を適用した。製造例1の磁性粒子(A)と前記表面処理剤を100:10の重量割合(磁性粒子:表面処理剤)でプラネタリーミキサーを用いて均一に混合することで、表面処理された磁性体(A)を製造した。
【0136】
製造例3.磁性体(B)の製造
製造例2の磁性体(A)を追加で表面処理して磁性体(B)を製造した。このとき、追加的な表面処理剤としては、アミン価が約25mgKOH/gであり、分子量(Mw)が約20,000であるポリ(ウレタン-ウレア)及びHMDI(hexamethylene diisocyanate)及びPG(polypropylene glycol)をウレタン反応させて形成した分子量(Mw)が約20,000程度であるポリウレタンを混合したもの(混合割合:約1:3(ポリ(ウレタン-ウレア):ポリウレタン))を用いた。前記ポリ(ウレタン-ウレア)としては、ジイソシアネート化合物としてヘキサメチレンジイソシアネート、ポリアミンとしてプロピレンジアミン、ポリオールとしてエチレングリコールを1:5:4の重量割合(ジイソシアネート:ポリアミン:ポリオール)で含むものを用いた。製造例2で製造された磁性体(A)と前記表面処理剤を100:0.5の重量割合(磁性体(A):表面処理剤)でプラネタリーミキサーを用いて均一に混合して磁性体(B)を製造した。
【0137】
製造例4.磁性体(C)の製造
製造例1の磁性粒子及び酸価が100mgKOH/g程度である表面処理剤(BYK-220S)を100:5の重量割合(磁性粒子:表面処理剤)でプラネタリーミキサーで均一に混合して1次表面処理された磁性体を製造した。前記混合は、前記磁性体と表面処理剤を実施例3で適用されたエポキシ樹脂内で前記磁性粒子の濃度が約5重量%になるように配合して実施した。その後、枝型ポリエステル系表面処理剤(hyperbranched polyester)(BYK-2152)と前記1次表面処理された磁性体を約10:1の重量割合(磁性体:BYK-2152)でプラネタリーミキサーで均一に混合して磁性体(C)を製造した。
【0138】
実施例1
上記方式で測定した常温粘度(せん断速度(Shear ratio)100s-1条件)が約4,000~6,000cPレベルであり、temperature index 180℃の硬化性のポリエステルイミド、前記製造例2の磁性体(A)及びレベリング剤(BYK333)を混合して硬化性組成物を製造した。上記で磁性体の硬化性組成物内の割合は、約5重量%であり、レベリング剤の硬化性組成物内での割合は、約0.5重量%になるようにした。前記製造された硬化性組成物の粘度は、常温で約4,530cP程度(Shear ratio 100s-1)であった。該当硬化性組成物をフィルム形態でコーティングし(厚さ:約2mm)、交流磁場を印加して誘導加熱による硬化を進行した。印加される交流磁場の強度は、約25mT程度になるように2分間印加し、交流磁場の印加時の周波数は、約340kHz程度にした。前記交流磁場の印加は、AMBRELL社のコイル(AMBRELL社、EASY HEAT 820、φ30mm、3 turns solenoid type coil)を用いて実行した。
【0139】
一方、図1に示したように、シリンダー形状のステータを準備した。スロットは、図1に示したように、ステータに放射状に形成されており、その開口部は、横の長さが約5mm程度であり、縦の長さが約20mm程度である直四角形の形態であった。該当スロットに、図3に示したように、巻線102(銅線)を導入した。巻線としては、直径が4.5mm程度である円形断面を有するものを用い、該当巻線を一つのスロットに5個導入した。その後、図4の最左側に示した方式で前記スロット内部に硬化性組成物を注入し、図4の中間図面と最右側図面のように、ステータを傾けてスロットの内部に硬化性組成物を充填させた。その後、前記言及された方式と同じ方式で硬化性組成物を硬化して、充填率を評価した。充填率の評価時には、ステータを長手方向と垂直した方向に切断し、UVランプを用いて硬化性組成物の硬化物が存在する部分を確認し、これを通じて硬化物の充填割合を求めた。
【0140】
実施例2
磁性体として製造例3の磁性体(B)を適用したこと以外は、実施例1と同一に硬化性組成物を製造した。前記製造された硬化性組成物の粘度は、常温で約4,810cP程度(Shear ratio 100s-1)であった。このような硬化性組成物を用いて実施例1と同一に試片及びステータを製造して評価に適用した。ただし、実施例2の場合、交流磁場の印加時間は約90秒レベルに調整した。
【0141】
実施例3
硬化性エポキシ樹脂(国都化学社製、常温粘度:10,000cP、エポキシ当量200、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、前記製造例3の磁性体(C)及び陽イオン開始剤(三新化学社製、B2A)を混合して硬化性組成物を製造した。上記で磁性体の硬化性組成物内の割合は、約5重量%であり、陽イオン開始剤の硬化性組成物内での割合は、約0.2重量%になるようにした。前記製造された硬化性組成物の粘度は、常温で約6,100cP程度(Shear ratio 100s-1)であった。このような硬化性組成物を用いて実施例1と同一に試片及びステータを製造して評価に適用した。ただし、実施例3の場合、交流磁場の印加時間は約80秒レベルに調整した。
【0142】
比較例1
製造例1の磁性粒子(A)を適用したこと以外は、実施例1と同一に硬化性組成物を製造した。前記製造された硬化性組成物の粘度は、常温で約4,340cP程度(Shear ratio 100s-1)であった。このような硬化性組成物を用いて実施例1と同一に試片及びステータを製造して評価に適用した。ただし、比較例1では、交流磁場の印加時間は約3分程度に調整した。
【0143】
比較例2
製造例1の磁性粒子(A)を適用したこと以外は、実施例3と同一に硬化性組成物を製造した。前記製造された硬化性組成物の粘度は、常温で約6,800cP程度(Shear ratio 100s-1)であった。このような硬化性組成物を用いて実施例1と同一に試片及びステータを製造して評価に適用した。
【0144】
各実施例及び比較例に対する評価結果を下記表1に整理して記載した。
【0145】
【表1】
【0146】
表1の結果から、実施例の硬化性組成物は、比較例に比べて一層優れた常温安定性及び充填率を示した。また、比較例の場合、硬化物内でも部分的に相分離された部位が肉眼で観察されてその他物性も劣悪であることを確認することができた。
図1
図2
図3
図4