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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】3次元造形物の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/40 20170101AFI20220614BHJP
   B29C 64/112 20170101ALI20220614BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20220614BHJP
   B33Y 70/10 20200101ALI20220614BHJP
   C08F 271/02 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
B29C64/40
B29C64/112
B33Y10/00
B33Y70/10
C08F271/02
【請求項の数】 19
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020033174
(22)【出願日】2020-02-28
(62)【分割の表示】P 2018510057の分割
【原出願日】2016-10-28
(65)【公開番号】P2020121557
(43)【公開日】2020-08-13
【審査請求日】2020-03-02
(31)【優先権主張番号】10-2015-0153963
(32)【優先日】2015-11-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミ-キョン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ジュン-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】パク、スン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】バク、スン-ア
【審査官】田代 吉成
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-155889(JP,A)
【文献】特開2015-123684(JP,A)
【文献】特開2014-83744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/40
B29C 64/112
B33Y 10/00
B33Y 70/10
C08F 271/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)複数のレイヤを積層して構造体及び支持体を含む3次元造形物を形成する段階と、
b)前記支持体を水、または水及び極性有機溶媒の混合溶液で溶解させて支持体を除去する段階と、
を含み、
前記支持体は、ジメチルアクリルアミドと、Irgacure 819と、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)と、ポリビニルピロリドン(PVP)と、界面活性剤、可塑剤、重合防止剤、消泡剤、希釈剤、熱安定剤、および粘度調節剤の少なくともいずれかから選択されるさらに含まれ得る添加剤と、からなる3Dプリンティング支持体用インク組成物の硬化段階を通じて製造され
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、組成物全体重量を基準に0.1~30重量%含まれ、
前記ポリビニルピロリドン(PVP)は、繰り返し数が50~25,000である、
3次元造形物の形成方法。
【請求項2】
c)支持体が除去された3次元造形物の乾燥段階をさらに含む
請求項1に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項3】
前記極性有機溶媒は、アルコール系、グリコール系、グリコールエーテル系、ケトン系、クロリン系、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びアセトニトリルからなる群から選択される1種以上である
請求項1または2に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項4】
前記支持体は、水、または水及びアルコール系溶媒の混合溶液で溶解させて除去される
請求項1または2に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項5】
前記極性有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、クロロホルム、クロロベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びアセトニトリルからなる群から選択される1種以上である
請求項1または2に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項6】
前記極性有機溶媒は、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される1種以上である
請求項1または2に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項7】
前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、ビニルエーテル化合物をさらに含む 請求項1から6のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項8】
前記ビニルエーテル化合物は、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテルからなる群から選択される何れか1つ以上である
請求項7に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項9】
添加剤をさらに含む
請求項1から8のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項10】
前記添加剤は、界面活性剤、可塑剤、重合防止剤、消泡剤、希釈剤、熱安定剤、及び粘度調節剤からなる群から選択される何れか1つ以上である
請求項9に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項11】
前記ジメチルアクリルアミドは、組成物全体重量を基準に10~99.9重量%含まれる
請求項1から10のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項12】
前記1-ビニル-2-ピロリドン(VP)は、組成物全体重量を基準に0.1~80重量%含まれる
請求項1から7のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項13】
前記ビニルエーテル化合物は、組成物全体重量を基準に0.1~50重量%含まれる
請求項7に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項14】
前記Irgacure 819は、組成物全体重量を基準に0.01~20重量%含まれる
請求項1から1のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項15】
前記b)段階遂行時に、前記水または水及び極性有機溶媒の混合溶液の温度は、20℃~90℃である
請求項1から1のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項16】
前記b)段階遂行時に、前記水または水及び極性有機溶媒の混合溶液の温度は、40℃~60℃である
請求項1から1のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項17】
前記b)段階遂行時に、前記水または水及び極性有機溶媒の混合溶液を撹拌または超音波処理する段階をさらに含む
請求項1から1のいずれか1項に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項18】
前記c)段階の乾燥段階は、自然乾燥または乾燥手段による乾燥である
請求項2に記載の3次元造形物の形成方法。
【請求項19】
前記c)段階の乾燥段階は、自然乾燥である
請求項2に記載の3次元造形物の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年11月3日付の韓国特許出願第10-2015-0153963号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたあらゆる内容は、本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、3次元造形物の形成方法に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、製品生産において、無限競争市場の多様な要求に迅速に応じるために、3Dプリンティング技術が急速に広がっている。これは、企業が3Dプリンティング技術を採択することによって、製品の開発工程のうち、可能な限り早期に技術的な問題を解決して、コスト削減と共に概念設計から完成品生産に至る過程を最小化することができるためである。インクジェット技術によって3次元造形物を形成する技術は、非常に薄いレイヤで製品の形状を精密に具現することができて、各産業分野で要求する技術と用途とによって非常に容易に適用することができるという長所がある。
【0004】
前記インクジェット技術によって3次元造形物を形成する場合、主材料である構造体インクの以外に支持体インクを共に使わなければならないが、支持体インクは、空中に浮かんでいる形態の構造物を作る時、下側部分に臨時に形成して、支持役割をしながら今後にはきれいに除去されなければならない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、3次元造形物を作った後、支持体部分を手で除去し、残った部分を手やウォータージェット(water jet)でいちいち除去しなければならないので、非常に煩わしく生産性が低下し、経済的ではないという問題点があった。これにより、支持体を手作業で除去せずに、容易に除去することができる方法が必要な実情である。
【0006】
本発明の目的は、前記のような従来技術の問題点を解決するためのものであって、インクジェット方式で3次元造形物製造時に、構造体の損傷なしに支持体を除去することができて、簡便かつ経済的に3次元造形物を製造することができる3次元造形物の形成方法を提供するところにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記のような課題を解決するために、本発明は、a)複数のレイヤを積層して構造体及び支持体を含む3次元造形物を形成する段階と、b)前記支持体を水、または水及び極性有機溶媒の混合溶液で溶解させて支持体を除去する段階と、を含む3次元造形物の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、インクジェット方式によって3次元造形物製造時に、構造体の損傷なしに支持体を除去することができて、簡便かつ経済的に3次元造形物を製造することができるという長所がある。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、3次元造形物の形成方法に関するものであって、以下、前記形成方法を各段階別に詳細に説明する。
【0010】
まず、a)複数のレイヤを積層して構造体及び支持体を含む3次元造形物を形成する段階を行う。
【0011】
前記a)段階は、3次元造形物を形成する構造体インクと支持体インクとをインクジェットプリンティング(inkjet printing)して、構造体及び支持体を含む3次元造形物を形成する段階であって、3次元造形物形成時に、光量を調節することができるが、例えば、下層を形成する時は、光量を減らして硬化反応速度を遅延させ、硬化収縮を減らし、上層に上がるほど光量を強くして硬化させることができる。
【0012】
前記a)段階は、光硬化性樹脂を非常に薄い層に噴射して薄い壁とオーバーハング、そして、動作パートを含んだ3次元造形物を精密にプリンティングする段階である。各層は、構造体インク組成物と支持体インク組成物とが共に噴射され、支持体インク組成物は、オーバーハング、キャビティ、ホールなどの形状を可能にする。プリンティングヘッドは、X軸とY軸とに移動し、造形板上にインク組成物を噴射する。一層のインク組成物が噴射されれば、ヘッド左右にある紫外線ランプによって、即時構造体インク組成物と支持体インク組成物は、硬化される。次の層の噴射のために、造形板が下に下がり、同じ作業が反復されて最終3次元造形物を形成する。
【0013】
本発明の一実施例において、前記構造体は、アクリル系光硬化性樹脂、硬化剤、重合防止剤及び感光剤を含む構造体インク組成物の硬化段階を通じて製造可能であり、望ましくは、前記アクリル系光硬化性樹脂は、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA、dipentaerythritol hexaacrylate)、トリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA、Tripropylene Glycol Diacrylate)、トリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA、Trimethylolpropane triacrylate)、イソボルニルアクリレート(Isobornyl Acrylate)、ベンジルアクリレート(Benzyl Acrylate)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(1,6-Hexanediol Diacrylate)、トリエチレングリコールジアクリレート(Triethylene glycol Diacrylate)、ビスフェノールA(EO)4ジアクリレート(Bisphenol A(EO)4 Diacrylate)、グリセリン(PO3)トリアクリレート(Glycerine(PO)3 Triacrylate)、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート(Pentaerythritol Tetraacrylate)からなる群から選択される1種以上であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0014】
本発明の一実施例において、前記硬化剤は、硬化方式によって多様なものを使用し、当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はない。前記硬化剤の具体例として、光開始剤を使用することができる。前記光開始剤としては、使用する光源に合わせて当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はないが、望ましくは、Irgacure 819(Bisacryl phosphine系)、Darocur TPO(Monoacryl phosphine系)、Irgacure 369(α-aminoketone系)、Irgacure 184(α-hydroxyketone系)、Irgacure 907(α-aminoketone系)、Irgacure 2022(Bisacryl phosphine)/α-hydroxyketone系)、Irgacure 2100(Phosphine oxide系)、またはこれと類似した構造の光開始剤のような常用品を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0015】
本発明の一実施例において、前記重合防止剤は、ニトロソアミン(Nitrosoamine)系及びヒドロキノン(Hydroquinone)系の重合防止剤からなる群から選択される1種以上であり、望ましくは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ、Monomethyl Ether Hydroquinone)、N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミン(N-nitrosophenylhydroxyamine)、2,5-ビス(1,1,3,3-テトラメチルブチル)ヒドロキノン(2,5-Bis(1,1,3,3-tetramethylbutyl)hydroquinone)、2,5-ビス(1,1-ジメチルブチル)ヒドロキノン(2,5-Bis(1,1-dimethylbutyl)hydroquinone)、ニトロベンゼン(Nitrobenzene)、ブチル化ヒドロキシトルエン(butylated hydroxyl toluene)、及びジフェニルピクリルヒドラジル(diphenyl picryl hydrazyl、DPPH)からなる群から選択される1種以上であり、さらに望ましくは、ヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)であり得るが、これらに限定されるものではない。
【0016】
本発明の他の一実施例において、前記感光剤は、ベンゾフェノン(benzophenone)及びイソプロピルチオキサントン(Darocur ITX、Isopropylthioxanthone)からなる群から選択される1種以上であり、イソプロピルチオキサントン(Darocur ITX)であることが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0017】
本発明の一実施例において、さらに望ましくは、前記構造体は、ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)、トリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA)、ビスアクリルホスフィン系硬化剤(Irgacure 819)、イソプロピルチオキサントン(ITX)及びヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)を含む構造体インク組成物の硬化段階を通じて製造可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
本発明の他の一実施例において、前記支持体は、アミン含有単量体及び硬化剤を含む3Dプリンティング支持体用インク組成物の硬化段階を通じて製造可能である。
【0019】
前記アミン含有単量体は、当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はないが、望ましくは、下記化学式1から化学式6のうち何れか1つ以上であるものを使用することができる。
【0020】
まず、本発明のアミン含有単量体として、下記化学式1の化合物を使用することができる。
[化学式1]
【化1】
【0021】
前記化学式1において、Rは、水素またはメチル基であり、R及びRは、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、ビニル基、アルコキシ基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アルキルアミン基、アルキルエステル基またはアルキルエーテル基であり得る。
【0022】
また、望ましくは、前記化学式1において、前記R及びRが、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、
【化2】
であり、
前記R'は、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH)CH、CHCHCHCH、CHC(CHまたはC(CHCHCHであり、R'及びR'は、それぞれ独立して水素、CH、CHCH、CHCHCH、CHCH(CH、CHC(CH、CH(CH、CHCHCHCH、C(CHCHCHまたは-CH=CHであり、
R''は、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH)CH、CHCHCHCH、CHC(CHまたはC(CHCHCHであり、R''は、水素、CH、CHCH、CHCHCH、CHCH(CH、CHC(CH、CH(CH、CHCHCHCH、C(CHCHCHまたは-CH=CHであり得る。
【0023】
また、望ましくは、前記化学式1は、下記化学式1aであり得る。
[化学式1a]
【化3】
【0024】
前記化学式1aにおいて、前記R'は、水素またはメチル基であり、R'及びR'は、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチルまたは-CH=CHであり得る。
【0025】
また、本発明のアミン含有単量体として、下記化学式2の化合物を使用することができる。
[化学式2]
【化4】
【0026】
前記化学式2において、R'及びR'は、それぞれ独立して水素、C~C10のアルキル基、ビニル基、アルコキシ基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、アルキルアミン基、アルキルエステル基またはアルキルエーテル基であり、R'は、水素またはメチル基であり得る。
【0027】
また、望ましくは、前記化学式2において、前記R'及びR'は、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、
【化5】
であり得る。
【0028】
また、本発明のアミン含有単量体として、下記化学式3の化合物を使用することができる。
[化学式3]
【化6】
【0029】
前記化学式3において、Rは、水素またはメチル基であり、Rは、CH、CHCH、CHCHCH、CH(CH)CH、CHCHCHCH、CHC(CHまたはC(CHCHCHであり、R及びRは、それぞれ独立して水素、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、-CH=CHまたは-CH-CH=CHであり得る。
【0030】
また、本発明のアミン含有単量体として、下記化学式4の化合物を使用することができる。
[化学式4]
【化7】
【0031】
前記化学式4において、nは、1~4の整数であり、Aは、C、O、NまたはSであり、R、R及びRは、それぞれ独立して水素またはC~C10のアルキル基であり、Rは、-CH=CH
【化8】
であり得る。
【0032】
また、望ましくは、前記化学式4は、
【化9】
であり得る。
【0033】
また、本発明のアミン含有単量体として、下記化学式5、化学式6または化学式7の化合物を使用することができる。
[化学式5]
【化10】
[化学式6]
【化11】
[化学式7]
【化12】
【0034】
前記アミン含有単量体は、本発明のインク組成物全体重量を基準に10~99.9重量%で含まれうる。前記アミン含有単量体の包含量が、10重量%未満であれば、支持体を除去する時、水に対する溶解特性が十分ではない問題があり、99.9重量%を超過すれば、硬化特性が悪くなるという問題がある。
【0035】
前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、硬化剤を含む。前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、硬化剤を含むことによって、多様な硬化方式を通じた硬化工程に用いられる。
【0036】
本発明の一実施例において、前記硬化剤は、硬化方式によって多様なものを使用し、当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はない。前記硬化剤の具体例として、光開始剤を使用することができる。前記光開始剤としては、使用する光源に合わせて当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はないが、望ましくは、Irgacure 819(Bisacryl phosphine系)、Darocur TPO(Monoacryl phosphine系)、Irgacure 369(α-aminoketone系)、Irgacure 184(α-hydroxyketone系)、Irgacure 907(α-aminoketone系)、Irgacure 2022(Bisacryl phosphine/α-hydroxyketone系)、Irgacure 2100(Phosphine oxide系)、Darocur ITX(isopropyl thioxanthone)またはこれと類似した構造の光開始剤のような常用品を使用することができる。
【0037】
本発明の一実施例において、前記硬化剤は、本発明のインク組成物全体重量を基準に0.01~20重量%で含まれ、望ましくは、1~10重量%で含まれうる。前記硬化剤の包含量が、0.01重量%未満であれば、硬化が起こらないという問題があり、20重量%を超過すれば、硬化感度が過度に上昇して、ヘッド(head)が詰まるという問題がある。
【0038】
本発明の他の一実施例において、前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、ビニル基及びアクリレート基のうち何れか1つ以上を含む単量体をさらに含みうる。前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、ビニル基及びアクリレート基のうち何れか1つ以上を含む単量体を含むことによって、硬化感度を調節し、硬化物の強度(ゆるいか、堅い程度)のような特性を調節することができるという特性を有しうる。
【0039】
本発明の一実施例において、前記ビニル基及びアクリレート基のうち何れか1つ以上を含む単量体は、当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はないが、望ましくは、酢酸ビニル(Vinyl acetate)、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート(2-hydroxyethyl(meth)acrylate)、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート(2-hydroxymethyl(meth)acrylate)、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート(2-hydroxypropyl(meth)acrylate)、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート(4-hydroxybutyl(meth)acrylate)、エチル-2-ヒドロキシアクリレート(Ethyl-2-hydroxyacrylate)、2-(アクリロイルオキシ)エチルヒドロゲンスクシネート(2-(Acryloyloxy)ethyl hydrogen succinate)、及びメタクリル酸(Methacrylic acid)からなる群から選択される何れか1つ以上を使用することができる。
【0040】
本発明の他の一実施例において、前記ビニル基及びアクリレート基のうち何れか1つ以上を含む単量体は、本発明のインク組成物全体重量を基準に0.1~80重量%で含まれうる。前記ビニル基及びアクリレート基のうち何れか1つ以上を含む単量体の包含量が、0.1重量%未満であれば、単量体添加による十分な効果を得にくいという問題があり、80重量%を超過すれば、硬化物が水に溶けないという問題がある。
【0041】
本発明の一実施例において、前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、水溶性重合体をさらに含みうる。前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、前記水溶性重合体を含むことによって、インクの粘度を調節して、硬化物が水にさらに容易に溶けるようにする特性を有しうる。
【0042】
本発明の他の一実施例において、前記水溶性重合体は、当該技術分野で使用するものであれば、特に制限はないが、望ましくは、下記化学式8aから化学式8eからなる群から選択される何れか1つ以上を使用することができる。
[化学式8a]
【化13】
[化学式8b]
【化14】
[化学式8c]
【化15】
[化学式8d]
【化16】
[化学式8e]
【化17】
(前記化学式8aから化学式8eにおいて、nは、50~25,000であり得る)。
【0043】
本発明の一実施例において、前記水溶性重合体は、前記インク組成物全体重量を基準に0.1~30重量%で含まれうる。前記水溶性重合体の包含量が、0.1重量%未満であれば、添加による溶解度上昇の効果が微小であり、30重量%を超過すれば、インクの粘度が高くなって、ジェッティング(jetting)が不可能であるという問題がある。
【0044】
本発明の他の一実施例において、前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、ビニルエーテル化合物をさらに含みうる。前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、ビニルエーテル化合物を含むことによって、組成物の硬化時に収縮されることを防止することができる。
【0045】
本発明の一実施例において、前記ビニルエーテル化合物は、特に制限はないが、望ましくは、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル(HBVE)、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、2-エチルヘキシルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル(diethyleneglycol divinyl ether)、1,4-シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、1,4-ブタンジオールジビニルエーテルなどを使用することができる。
【0046】
本発明の他の一実施例において、前記ビニルエーテル化合物は、本発明のインク組成物全体重量を基準に0.1~50重量%で含まれうる。前記ビニルエーテル化合物の包含量が、0.1重量%未満であれば、硬化時に、収縮現象に対する改善が微弱な問題があり、50重量%を超過すれば、硬化時に、膜の硬度及び強度が弱くなり、硬化感度が減少するという問題がある。
【0047】
本発明のさらに他の一実施例において、前記3Dプリンティング支持体用インク組成物は、前記組成以外に添加剤をさらに含みうる。前記含まれる添加剤としては、界面活性剤、可塑剤、重合防止剤、消泡剤、希釈剤、熱安定剤、粘度調節剤などがある。
【0048】
前記添加剤は、経済的な側面で前記作用が起こりうる最小限の量を含み、望ましくは、インク組成物全体に対して0.1~5重量%で含まれうる。
【0049】
本発明の一実施例において、望ましくは、前記支持体は、(メタ)アクリルアミド系単量体、ビニル系単量体、水溶性重合体及び硬化剤を含む支持体インク組成物の硬化段階を通じて製造可能であり、さらに望ましくは、ジメチルアクリルアミド、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)、ポリビニルピロリドン(PVP)及びビスアクリルホスフィン(Bis acryl phosphine)系硬化剤(Irgacure 819)を含む支持体インク組成物の硬化段階を通じて製造可能であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
次いで、b)前記支持体を水、または水及び極性有機溶媒の混合溶液で溶解させて支持体を除去する段階を行う。
【0051】
前記b)段階は、前記a)段階で生成した構造体及び支持体を含む3次元造形物を水、または水及び極性有機溶媒の混合溶液で溶解させて支持体を除去する段階である。
【0052】
本発明の一実施例において、前記b)段階遂行時に、前記水または水及び極性有機溶媒の混合溶液の温度は、20℃~90℃であることが望ましく、40℃~60℃であることがさらに望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0053】
常温でも、前記b)段階を行うことができるが、より迅速な除去のために、溶液の温度を前記範囲内で高めることが望ましい。
【0054】
本発明の他の一実施例において、前記b)段階遂行時に、水または水及び極性有機溶媒の混合溶液を撹拌(stirring)または超音波処理(sonication)する段階をさらに行って、支持体の除去速度を早くできる。
【0055】
本発明の一実施例において、前記極性有機溶媒は、アルコール系、グリコール系、グリコールエーテル系、ケトン系、クロリン系、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びアセトニトリルからなる群から選択される1種以上であり、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、クロロホルム、クロロベンゼン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、及びアセトニトリルからなる群から選択される1種以上であることが望ましいが、これらに限定されず、さらに望ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、及びエチレングリコールモノブチルエーテルからなる群から選択される1種以上であることが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0056】
前記b)段階で、極性有機溶媒単独使用でも支持体を除去することができるが、極性有機溶媒単独使用時に、構造体部分を共に溶かすか、スウェリング(swelling)させる問題点があるために、前記のように水または水及び極性有機溶媒の混合溶液を使用することが望ましく、水及び極性有機溶媒の混合溶液の場合、水及びアルコール系の混合溶液であることが望ましい。
【0057】
その次に、c)支持体が除去された3次元造形物の乾燥段階をさらに含みうるが、これに限定されるものではない。
【0058】
本発明の一実施例において、前記c)段階の乾燥は、自然乾燥または乾燥手段による乾燥であり、自然乾燥であることが望ましく、前記乾燥手段は、熱風機、オーブン及びヒートガン(heat gun)からなる群から選択される1種以上であり得るが、可能な乾燥手段であれば、その種類に限定がない。
【0059】
以下、本発明を非限定的な実施例によってさらに詳細に説明する。下記に開示される本発明の実施形態は、あくまでも例示であって、本発明の範囲は、これらの実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲に表示され、さらに特許請求の範囲の記録と均等な意味及び範囲内でのあらゆる変更を含有している。また、以下の実施例、比較例で含有量を示す"%"及び"部"は、特に言及しない限りに質量基準である。
【0060】
実施例
【0061】
実施例1
【0062】
a)複数のレイヤを積層して構造体及び支持体を含む3次元造形物を形成する段階
ジペンタエリトリトールヘキサアクリレート(DPHA)8g、トリメチルプロパントリアクリレート(TMPTA)68.5g、Irgacure 819 3.5g、イソプロピルチオキサントン(ITX)1g、及びヒドロキノンモノメチルエーテル(MEHQ)0.5gを混合して、構造体インク組成物を製造した。
【0063】
また、ジメチルアクリルアミド49.2g、1-ビニル-2-ピロリドン(VP)32.8g、ポリビニルピロリドン(PVP)14g、及びIrgacure 819 4gを混合して、支持体インク組成物を製造した。
【0064】
前記構造体インク組成物及び支持体インク組成物をインクジェット方式で3Dプリンティング(Spectra社製造、Apollo II、ヘッド:Dimatix 30 pL 128ノズルヘッド)して、3次元造形物を形成し、硬化は、395nm LEDを使用した(2000mJ/cm)。
【0065】
b)前記支持体を除去する段階
前記a)段階で形成された3次元造形物を50℃の水に溶かして支持体を除去した。
【0066】
c)支持体が除去された3次元造形物の乾燥段階
前記支持体が除去された3次元造形物を常温で乾燥空気(dry air)を吹いて10分間乾燥した。
【0067】
実施例2
前記b)段階で水の代わりに、水とエタノールとを50:50で混合した溶液を使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0068】
比較例1
前記b)段階で水の代わりに、エタノールを使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0069】
比較例2
前記b)段階で水の代わりに、クロロベンゼンを使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0070】
比較例3
前記b)段階で水の代わりに、アセトニトリルを使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0071】
比較例4
前記b)段階で水の代わりに、アセトンを使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0072】
比較例5
前記b)段階で水の代わりに、エーテルを使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0073】
比較例6
前記b)段階で水の代わりに、トルエンを使用したものを除いては、実施例1と同じ方法で行った。
【0074】
前記実施例1及び実施例2から比較例1から比較例6において、支持体除去可能か否か及び構造体損傷有無を確認して、その結果を下記表1に示した。
【表1】
*支持体除去可能か否か:
支持体を含む3次元造形物を当該溶媒に浸漬させて、支持体部分が溶けば、O、溶けなければ、Xと表示する。
**構造体損傷有無:構造体の一部が溶ける場合、O、構造体部分が撓むか、色が変わるなどの損傷がある場合、△、損傷が全くない場合、Xと表示する。
【0075】
実施例1及び実施例2のように、除去溶媒として水を単独で使用する場合と、水及び有機溶媒の混合溶液を使用する場合には、構造体が損傷されないように支持体を除去することができた。しかし、比較例1から比較例4のように、極性有機溶媒単独で支持体を除去する場合には、構造体が一部溶けるか、損傷される結果を示した。比較例5及び比較例6のように、非極性有機溶媒を使用する場合は、支持体が溶けない結果を示した。