(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】具材入り乳化液状調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20220614BHJP
【FI】
A23L27/00 D
(21)【出願番号】P 2017131267
(22)【出願日】2017-07-04
【審査請求日】2020-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】514057743
【氏名又は名称】株式会社Mizkan Holdings
(73)【特許権者】
【識別番号】317006214
【氏名又は名称】株式会社Mizkan
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水野 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉本 好
【審査官】吉岡 沙織
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-013105(JP,A)
【文献】特開2012-019780(JP,A)
【文献】特開平11-239462(JP,A)
【文献】特開平11-146757(JP,A)
【文献】特開2016-005442(JP,A)
【文献】特開2007-325560(JP,A)
【文献】特開平11-000130(JP,A)
【文献】特開平11-075760(JP,A)
【文献】トップバリュ 具材のうまみがきいた キムチ鍋 袋330g,もぐナビ [online],2014年12月08日,[2018.09.10 検索], インターネット<URL: https://mognavi.jp/food/941015>,全文
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
CAplus/FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
乾燥野菜具材、(B)香味油
又は香味油と香味油以外の食用油脂との混合油脂のいずれかの油脂、(C)乳酸、(D)香辛料又は香辛料抽出物、及び(E)発酵物を含有する、具材入り乳化液状調味料
であって、該具材入り乳化液状調味料中の乳酸の含有量が、0.2~2.0質量%であり、油脂の含有量が、0.2~10質量%である、具材入り乳化液状調味料。
【請求項2】
前記具材入り乳化液状調味料が、更に乳化剤を含有する請求項1に記載の具材入り乳化液状調味料。
【請求項3】
前記香辛料が、唐辛子、ショウガ、ニンニク、マスタード、パプリカから選ばれる少なくとも1種である、請求項1
又は2に記載の具材入り乳化液状調味料。
【請求項4】
前記発酵物が、植物発酵物又は乳発酵物である、請求項1~
3のいずれか1項に記載の具材入り乳化液状調味料。
【請求項5】
前記乳化剤が、卵黄、卵黄レシチン、大豆レシチン、及び澱粉分解物から選ばれる少なくとも1種である、請求項2~
4のいずれか1項に記載の具材入り乳化液状調味料。
【請求項6】
前記具材入り乳化液状調味料が、加熱調理用である、請求項1~
5のいずれか1項に記載の具材入り乳化液状調味料。
【請求項7】
下記の(a-1
)、及び(b)の工程を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の具材入り乳化液状調味料を製造する方法。
(a-1)香味油又は香味油と香味油以外の食用油脂との混合油脂のいずれかの油脂を水に添加し、混合撹拌して乳化させ、油脂乳化液を得る工
程
(b)(a-1
)の工程で得られた油脂乳化液、少なくとも乳酸と発酵物を含む調味液、及び
乾燥野菜具材を混合し、60~100℃で5~30分間加熱処理する工程
【請求項8】
前記混合撹拌を乳化剤の存在下で行う、請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の具材入り乳化液状調味料を使用した加熱調理食品の調理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、具材の発酵感と旨みが増強された、具材入り乳化液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、サラダや調理食品には、様々な味や形態の調味料が使用されている。なかでも、調味液中におろし野菜や細かくカットした野菜などの具材を含有する形態の液状調味料は、調味液に予め具材が加えられているため、具材を別途準備し、調味液と混ぜ合わせて加熱等の調理をするなどの手間が省け、また、具材のバリエーションにより、多様化する消費者の嗜好に応えるものである。
【0003】
このような具材入り液体調味料では、具材とともに醤油や味噌などの発酵調味料が用いられており、具材と発酵調味料を混合加熱した際の具材の風味劣化を抑制し、液体調味料全体の風味及び旨みの増強を目的とする工夫がなされている。例えば、特許文献1では、野菜粒子及び/又は果汁含有調味料の製造工程において、生醤油に含まれるホスファターゼによって旨み成分である5’-ヌクレオチドの分解消失を抑えるために、生醤油を5’-ヌクレオチドを除く原料の一部(乾燥野菜や糖類)と混和したものを加熱した後、5’-ヌクレオチドと原料の残部を混和し、再び加熱することによって、野菜粒子及び/又は果汁の風味を改善する方法が記載されている。しかしながら、この方法では、調味液中の具材に発酵感と旨みを持たせることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、具材入り液状調味料において、調味料中の具材に発酵感と旨みを増強させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、具材入り液状調味料において、調味液中の香味油又は香味成分が移行した食用油脂が乳化状態であり、かつ、調味液中に乳酸が存在することにより、具材中にこれらの油脂分が浸透し易くなり、発酵感と旨みの高まった具材となることを見出し、本発明を完成させるに至った。ここで、「発酵感」とは、例えば、キムチのような特有の熟成感に加え、すっきりした酸味感がバランスよく感じられる食感を意味する。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の発明を包含する。
[1](A)具材、(B)香味油、及び香味油以外の食用油脂から選択される少なくとも1種の油脂、(C)乳酸、(D)香辛料又は香辛料抽出物、及び(E)発酵物を含有する、具材入り乳化液状調味料。
[2]前記具材入り乳化液状調味料が、更に乳化剤を含有する[1]に記載の具材入り乳化液状調味料。
[3]前記具材入り乳化液状調味料中の乳酸の含有量が、0.2~2.0質量%である、[1]または[2]に記載の具材入り乳化液状調味料。
[4]前記具材入り乳化液状調味料中の油脂の含有量が、0.2~10質量%である、[1]~[3]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料。
[5]前記具材が、乾燥具材である、[1]~[4]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料。
[6]前記香辛料が、唐辛子、ショウガ、ニンニク、マスタード、パプリカから選ばれる少なくとも1種である、[1]~[5]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料。
[7]前記発酵物が、植物発酵物又は乳発酵物である、[1]~[6]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料。
[8]前記乳化剤が、卵黄、卵黄レシチン、大豆レシチン、及び澱粉分解物から選ばれる少なくとも1種である、[2]~[7]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料。
[9]前記具材入り乳化液状調味料が、加熱調理用である、[1]~[8]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料。
[10]下記の(a-1)又は(a-2)、及び(b)の工程を含む、[1]~[9]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料を製造する方法。
(a-1)香味油又は香味油と香味油以外の食用油脂との混合油脂のいずれかの油脂を水に添加し、混合撹拌して乳化させ、油脂乳化液を得る工程
(a-2)香味油以外の食用油脂と、香辛料又は香辛料抽出物を水に添加し、混合撹拌して乳化させ、油脂乳化液を得る工程
(b)(a-1)又は(a-2)のいずれかの工程で得られた油脂乳化液、少なくとも乳酸と発酵物を含む調味液、及び具材を混合し、60~100℃で5~30分間加熱処理する工程
[11] 前記混合撹拌を乳化剤の存在下で行う、[10]に記載の方法。
[12][1]~[9]のいずれかに記載の具材入り乳化液状調味料を使用した加熱調理食品の調理方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、発酵感と旨みが増強された具材を含有する、具材入り乳化液状調味料が提供される。本発明の具材入り乳化液状調味料は、具材の発酵感と旨みとともに、調味料全体にコクと香辛料の風味が感じられる。また、本発明の具材入り乳化液状調味料は、加熱によっても上記のような呈味と風味が保持され、加熱調理に使用するのにも適している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1.具材入り乳化液状調味料
本発明の具材入り乳化液状調味料(以下、「本発明の乳化液状調味料」という)は、(A)具材、(B)香味油及び香味油以外の食用油脂から選択される少なくとも1種の油脂、(C)乳酸、(D)香辛料又は香辛料抽出物、及び(E)発酵物を含有することを特徴とする。
【0010】
(具材)
本発明の乳化液状調味料において、具材は、生具材、塩蔵した具材、乾燥具材等が使用できるが、香辛料や香味野菜などに由来する香味成分を移行させた油脂が乳化状態で分散している調味液が、具材に浸透しやすい点において、乾燥具材が好ましい。尚、乾燥具材とその他の具材を併用してもよい。
【0011】
具材の大きさは、調味液中で膨潤後の具材の最長辺の長さが、好ましくは1~60mmであり、より好ましくは2~50mmであり、さらに好ましくは3~40mmであり、最も好ましくは5~40mmである。膨潤後の具材の大きさが1mm未満の場合には、具材本来の食感が不十分なだけでなく、具材の発酵感と旨みが十分に感じられず、調味料全体の風味が良好なものとならない。また60mmを超えると、調味液が具材に浸透しづらく、具材の発酵感と旨みが満足できるものではなく、調理時の作業性も悪くなる。
【0012】
本発明の乳化液状調味料における具材の含有量は、湿重量で調味料全体の10~80質量%、好ましくは20~80質量%、より好ましくは40~70質量%、さらに好ましくは40~60質量%である。具材の含有量が、湿重量で20質量%未満であると、具材の発酵感と旨みが十分に得られない。よって、乳化液状調味料全体の風味が弱く満足できるものでない。また具材の含有量が、湿重量で80質量%を超えると、具材の発酵感と旨み及び乳化液状調味料の風味は良好になるものの、調味液が少なすぎると調理に使用する際の作業性が悪くなる。
【0013】
本発明の乳化液状調味料に含有させる具材が乾燥具材である場合、当該乾燥具材の水分量は、余分な水分を調味液に移行させない点から、8質量%以下が好ましく、6質量%以下がより好ましく、5質量%以下がさらに好ましい。
【0014】
前記乾燥具材は、乾燥前に糖類と混合、あるいは糖類含有溶液に浸漬して加熱混合することにより調製したものでも良い。具体的には、糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、澱粉分解物等が挙げられ、二種以上を用いてもよい。糖類の添加量、混合時間、及び糖類含有溶液に浸漬する場合の濃度、加熱混合温度及び時間、ならびに続く乾燥の温度及び時間は、具材の種類、サイズ等により任意に選択すればよいが、糖類と混合する場合の糖類の添加量は乾燥具材に対して5~30質量%が好ましく、糖類含有溶液に浸漬する場合の糖類の濃度は5~30質量%が好ましく、溶液中での加熱混合条件は50~80℃で10分~12時間が好ましい。
【0015】
また、前記乾燥具材は、カットした具材をカルシウム塩溶液中で加熱混合した後、乾燥したものでも良い。カルシウム塩溶液の濃度、加熱混合温度及び時間、ならびに続く乾燥の温度及び時間は、具材の種類、サイズ等により任意に選択すればよい。具体的には、カットした具材を、塩化カルシウム、乳酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム塩を水に0.5~5質量%となるように溶解した水溶液中で50~80℃で1~120分攪拌した後に、処理液と分離し、液切りを行った後、65~80℃で3~12時間乾燥すれば良い。上記カルシウム水溶液に、ブドウ糖、果糖、ショ糖、乳糖、澱粉分解物等の糖類を5~30質量%含有させることもできる。
【0016】
前記乾燥具材は、所定の大きさにカットした後に乾燥又は乾燥後にカットすることにより製造できる。乾燥方法としては、熱風乾燥、凍結乾燥、減圧加熱乾燥、マイクロウェーブ乾燥、天日乾燥、自然乾燥等が挙げられる。
【0017】
具材が野菜の場合、野菜の種類は特に限定されないが、加熱調理して食されるものが好ましく、例えばタマネギ、キャベツ、白菜、ニンジン、ピーマン、大根、大根葉、ビート、レンコン、ゴボウ、ネギ、シソ、セロリ、パセリ、パプリカ、トマト、きゅうり、とうもろこし(スイートコーン)、カリフラワー、なす、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、ヤマイモ、カボチャ等が挙げられる。このうち、タマネギ、キャベツ、白菜、ニンジン、ネギ、セロリ、パプリカが好ましく、タマネギ、キャベツ、白菜、ニンジンがより好ましい。これらの野菜は、一種又は二種以上を用いることができる。
【0018】
野菜以外の具材としては、例えば、果実類(レモン、ゆず、すだち、ライム、みかん、グレープフルーツ、りんご、パイナップル、桃、ぶどう、いちご、梨、バナナ、メロン、キウイ、カシス、アセロラ、ブルーベリー、アプリコット、グアバ、プラム、マンゴー、パパイヤ、ライチ等)、種実類(アーモンド、ピーナッツ、松の実、トウモロコシ、ココナッツ等)、きのこ類(しめじ、しいたけ、マッシュルーム、エリンギ、マイタケ等)、豆類(大豆、えんどう豆、レンズ豆、ひよこ豆、エジプト豆等)、魚介類(鰹、鮪、鰯、イカ、エビ、アサリ、ホタテ、ムール貝等)、畜肉類又は畜肉加工品(牛肉、鶏肉、豚肉、ハム、ベーコン、ソーセージ等)、海藻類(ひじき、わかめ、昆布等)、卵類の乾燥物等が挙げられる。これらの具材は、一種又は二種以上を用いることができる。
【0019】
(香味油及び香味油以外の食用油脂)
本発明の乳化液状調味料に使用する「香味油」とは、香辛料、香味野菜、又は畜肉・魚介エキスなどの香味成分を食用油脂、好ましくは食用植物油脂に移行及び付加させた油脂をいう。香味油の製造は、通常の方法により行うことができ、典型的には、香辛料、香味野菜、又は畜肉・魚介エキスなどの香味原料と、食用油脂とを100℃程度で加熱した後に得られる油分を採取する方法が挙げられる。
【0020】
上記香味油としては、例えば、唐辛子オイル、ショウガオイル(ジンジャーオイル)、ニンニクオイル(ガーリックオイル)、マスタードオイル、オニオンオイル、ねぎオイル、ニラオイル、セリオイル、しそオイル、わさびオイル、レモンオイル、魚介オイル、畜肉オイル等が挙げられる。これらの香味油は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。上記のうち、高い発酵感を具材に与えることができる点において、唐辛子オイル、ショウガオイル(ジンジャーオイル)、ニンニクオイル(ガーリックオイル)、マスタードオイル、オニオンオイル、ねぎオイル、ニラオイル、魚介オイル、畜肉オイルが好ましい。
【0021】
本発明の乳化液状調味料に使用する「香味油以外の食用油脂」としては、例えばごま油、なたね油、ひまわり油、大豆油、コーン油、オリーブ油、パーム油、サフラワー油、綿実油等の植物油脂、あるいは、鶏脂、豚脂、牛脂、乳脂、ギー、魚油、鯨油等の動物油脂が挙げられる。これらのうち、ごま油、なたね油、鶏脂、乳脂を含む油脂が香味の点で好ましい。
【0022】
本発明の乳化液状調味料中の油脂の含有量とは、上記香味油と香味油以外の食用油脂の含有量の合計をいう。本発明の乳化液状調味料中の油脂の含有量は、発酵感を高める点から、0.2~10質量%が好ましく、0.5~5質量%がより好ましく、0.5~3質量%がさらに好ましく、0.5~2質量%が最も好ましい。油脂の含有量が0.2質量%未満であると、具材に香味成分が十分浸透せず、10質量%より多いと油っぽくなり好ましくない。
【0023】
(乳酸)
本発明の乳化液状調味料に使用する「乳酸」は、乳酸、発酵乳酸、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム等が挙げられるが、発酵により得られる発酵乳酸が好ましい。発酵乳酸は、ブドウ糖、乳糖、ショ糖などの炭水化物を原料として乳酸菌の発酵により製造することができ、また、市販品を用いてもよい。また、上記の乳酸以外にも乳酸含有食品又は食品由来乳酸素材を下記所定の乳酸含有量になるように使用することもできる。乳酸含有食品としては、例えば、キムチ、漬物、漬物汁、味噌、醤油、チーズ、ヨーグルト、酒類等が挙げられ、食品由来乳酸素材としては、上記乳酸含有食品から得られる素材を用いることができる。
【0024】
本発明の乳化液状調味料中の乳酸の含有量としては、発酵感を高める点において0.2~2.0質量%が好ましく、0.3~1.5質量%がより好ましく、0.35~1.5質量%がさらに好ましい。乳化液状調味料の乳酸の含有量が、0.2質量%未満であると、発酵感が十分得られず、2.0質量%より多いと酸味が強くコクや好ましい発酵感が得られない。
【0025】
(香辛料及び香辛料抽出物)
本発明の乳化液状調味料に使用する「香辛料」とは、特有の香り、刺激的な呈味、色調を有し、香り付け、消臭、調味、着色等の目的で飲食品に配合する植物体の一部(植物の果実、果皮、花、蕾、樹皮、茎、葉、種子、根、地下茎など)をいい、香辛料にはスパイス又はハーブが含まれる。スパイスとは香辛料のうち、利用部位として茎と葉と花を除くものをいい、例えば、胡椒(黒胡椒、白胡椒、赤胡椒)、ニンニク、ショウガ、ごま(ごまの種子)、唐辛子、ホースラディシュ(西洋ワサビ)、マスタード、ケシノミ、ゆず、ナツメグ、シナモン、パプリカ、カルダモン、クミン、サフラン、オールスパイス、クローブ、山椒、オレンジピール、ウイキョウ、カンゾウ、フェネグリーク、ディルシード、カショウ、ロングペパー、オリーブの実などが挙げられる。また、ハーブとは香辛料のうち、茎と葉と花を利用するものをいい、例えば、クレソン、コリアンダー、シソ、セロリ、タラゴン、チャイブ、チャービル、セージ、タイム、ローレル、ニラ、パセリ、マスタードグリーン(からしな)、ミョウガ、ヨモギ、バジル、オレガノ、ローズマリー、ペパーミント、サボリー、レモングラス、ディル、ワサビ葉、山椒の葉などが挙げられる。これらの香辛料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0026】
本発明の乳化液状調味料に使用する「香辛料抽出物」は、一般的に「香辛料」又は「スパイス」と表示される食品の抽出物であれば何でもよく、例えば、唐辛子抽出物、ニンニク抽出物(ガーリック抽出物)、マスタード抽出物、ショウガ抽出物(ジンジャー抽出物)、ペパー抽出物、ワサビ抽出物、オニオン抽出物、サンショウ抽出物等が挙げられる。これらの香辛料抽出物は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0027】
(発酵物)
本発明の乳化液状調味料に使用する「発酵物」は、植物発酵物であっても乳発酵物であってもよい。下記に挙げる各発酵物は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0028】
植物発酵物は、穀類(米、大麦、小麦など)、豆類(大豆、小豆など)、野菜・果実類(白菜、大根など)の植物原料を微生物により発酵・熟成させたものであって、醸造酢、味噌、醤油、漬物等が挙げられる。
【0029】
上記醸造酢としては、例えば、穀物酢(米酢、玄米酢、黒酢、粕酢、麦芽酢、はと麦酢、大豆酢等)、果実酢(りんご酢、ぶどう酢、レモン酢、カボス酢、梅酢、ワイン酢、バルサミコ酢等)、エタノールを原料とした酢酸発酵によって製造される酒精酢、中国酢、シェリー酢等が挙げられる。上記醤油としては、例えば、濃口醤油、淡口醤油、白醤油、溜り醤油、再仕込み醤油等が挙げられる。上記味噌としては、例えば、麦味噌、米味噌、豆味噌、調合味噌などに加えて、その製法に起因する色の違いによって命名される赤味噌・白味噌・淡色味噌等が挙げられる。漬物としては、キムチ、ザワークラウト、ケッパー、ピクルス、メンマ等が挙げられる。
【0030】
また、乳発酵物は、乳原料に乳酸菌等を接種して発酵させたものであって、例えば、チーズ、ヨーグルト、発酵バター等が挙げられる。
【0031】
(乳化剤)
本発明の乳化液状調味料に使用する「乳化剤」としては、卵黄、加工卵黄、卵黄レシチン、大豆レシチン、澱粉分解物、加工澱粉、乳由来タンパク質、カゼインナトリウム、ポリグリセリン脂肪酸エステル、有機酸エステル等が挙げられる。上記乳化剤から選択される一種又は二種以上を含有することが乳化の点において好ましい。卵黄、卵黄レシチン、大豆レシチン、澱粉分解物を含有することが更に好ましい。
【0032】
(食塩の含有量)
本発明の乳化液状調味料中の食塩の含有量とは、原料に用いる食塩、及び食塩を含有する食品中の食塩の含有量の合計をいう。食塩を含有する食品に、特に限定はないが、例えば、前記の醤油、味噌が挙げられる。本発明の乳化液状調味料中の食塩の含有量は、0.5~20.0質量%が好ましく、0.8~10.0質量%がより好ましく、1~5質量%がさらに好ましい。上記食塩の含有量は、しょうゆの日本農林規格に記載の電位差滴定法又はモール法により測定することができる。
【0033】
(その他の原料など)
本発明の乳化液状調味料には、本発明の効果を損なわない限りにおいて、上記原料に加えて、糖類(高甘味度甘味料を含む)、アミノ酸系調味料、核酸系調味料、有機酸系調味料、風味原料、旨味調味料、酒類、フレーバーなどの呈味・風味成分、粘度調整剤、安定剤、着色料、カルシウム塩等などの添加剤などを用いることができる。これらの成分の含有量は、特に限定はされず、用途に応じて適宜決定することができる。
【0034】
上記糖類としては、例えば、砂糖、麦芽糖、果糖、異性化液糖、ブドウ糖、水あめ、デキストリンやソルビトール、マルチトール、キシリトールなどの糖アルコール類等が挙げられる。これらの糖類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0035】
上記高甘味度甘味料としては、例えば、アスパルテーム、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、甘草抽出物、ステビアやその酵素処理物等が挙げられる。これらの高甘味度甘味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0036】
上記アミノ酸系調味料としては、例えば、L-グルタミン酸ナトリウム、DL-アラニン、グリシン、L-又はDL-トリプトファン、L-フェニルアラニン、L-又はDL-メチオニン、L-リシン、L-アスパラギン酸、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アルギニン等が挙げられる。これらのアミノ酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0037】
上記核酸系調味料としては、例えば、5’-イノシン酸二ナトリウム、5’-グアニル酸二ナトリウム、5’-ウリジル酸二ナトリウム、5’-シチジル酸二ナトリウム、5’-リボヌクレオチドカルシウム、5’-リボヌクレオチド二ナトリウム等が挙げられる。これらの核酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0038】
上記有機酸系調味料としては、例えば、クエン酸カルシウム、クエン酸三ナトリウム、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL-酒石酸水素カリウム、L-酒石酸水素カリウム、DL-酒石酸ナトリウム、L-酒石酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、フマル酸一ナトリウム、DL-リンゴ酸ナトリウム等が挙げられる。これらの有機酸系調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。二種以上の有機酸系調味料を併用することで、双方の呈味が相乗的に高まるため好ましい。
【0039】
上記風味原料としては、例えば、鰹だし、昆布だし、野菜エキス、鰹エキス、昆布エキス、魚介エキス、畜肉エキス、果汁等が挙げられる。これらの風味原料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0040】
上記旨味調味料としては、例えば、たん白加水分解物、酵母エキス等が挙げられる。これらの旨味調味料は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0041】
上記酒類としては、清酒、合成清酒、みりん、焼酎、ワイン、リキュール、紹興酒等が挙げられる。これらの酒類は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0042】
上記フレーバーとしては、例えば、ジンジャーフレーバー、ガーリックフレーバー、マスタードフレーバー、オニオンフレーバー、ゴマフレーバー、ねぎフレーバー、ニラフレーバー、しそフレーバー、わさびフレーバー、レモンフレーバー等が挙げられる。これらのフレーバーは、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0043】
上記粘度調整剤としては、例えば、アラビアガム、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カラギナン、カラヤガム、寒天、ローカストビーンガム、キサンタンガム、グァーガム、ジェランガム、セルロース、タマリンドシードガム、タラガム、トラガントガム、プルラン、ペクチン、キチン、キトサン、加工澱粉等が挙げられる。これらの粘度調整剤は、一種のみを単独で使用してもよく、二種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0044】
本発明の乳化液状調味料中の調味液のpHは、2~5であるのが好ましく、2.5~4.5がより好ましく、3~4がさらに好ましい。pHが上記の範囲であると、食感維持と発酵感を高める上で好ましい。
【0045】
本発明の乳化液状調味料は、鍋用調味料、麺用調味料、米飯用調味料、釜飯用調味料、あんかけ用調味料、焼肉用調味料、惣菜用調味料、豆腐用調味料、チャーハン用調味料、天丼用調味料、餃子用調味料、和え物用調味料、ハンバーグ用調味料、ステーキ用調味料、ソテー用調味料、電子レンジ用調味料、スンドゥブ用調味料、炒め用調味料、炊き込みご飯用調味料、五目ご飯用調味料、キムチ用調味料、揚げ物用調味料、ラーメン用調味料、煮込み用調味料、しゃぶしゃぶ用調味料、ディップ用調味料、パスタ用調味料、スープ用調味料、サラダ用調味料、サンドイッチ用調味料等に用いることができる。本発明の乳化液状調味料は、野菜類を煮込んだ場合でも加熱調理時でも好ましい発酵感、熟成感が強調され、不快と感じられる独特の発酵臭や後味を感じない。よって、本発明の乳化液状調味料は、加熱調理時に添加する、あるいは加熱調理後にかけて使用する加熱調理用調味料として有用であり、焼肉用調味料、惣菜用調味料、パスタ用調味料、チャーハン用調味料、スープ用調味料、餃子用調味料として使用するのが特に好ましい。
【0046】
2.具材入り乳化液状調味料の製造方法
本発明の具材入り乳化液状調味料の製造方法は、下記の(a-1)又は(a-2)、及び(b)の工程を含む。
(a-1)香味油又は香味油と香味油以外の食用油脂との混合油脂のいずれかの油脂を水に添加し、混合撹拌して乳化させ、油脂乳化液を得る工程
(a-2)香味油以外の食用油脂と、香辛料又は香辛料抽出物を水に添加し、混合撹拌して乳化させ、油脂乳化液を得る工程
(b)(a-1)又は(a-2)のいずれかの工程で得られた油脂乳化液、少なくとも乳酸と発酵物を含む調味液、及び具材を混合し、60~100℃で5~30分間加熱処理する工程
【0047】
工程(a-1)又は(a-2)の混合撹拌は乳化剤の存在下で行ってもよい。工程(a-1)又は(a-2)で使用する、香味油、香味油以外の食用油脂、香辛料又は香辛料抽出物、及び乳化剤の種類は前記のとおりである。工程(a-1)において、香味油は単独で使用してもよいが、香味油以外の食用油脂と併用すると油脂含有量の調整がしやすい点において好ましい。香味油と香味油以外の食用油脂を併用する場合、その比率は適宜調整できる。工程(a-2)は、油脂として、香味油以外の食用油脂を単独で使用するが、この場合は、香辛料又は香辛料抽出物とともに乳化することによって、香辛料又は香辛料抽出物の香味成分を食用油脂に移行させることができる。乳化は、通常の水中油型の乳化液状調味料の製造に用いられている方法に従い、ホモミキサーやコロイドミル等の乳化装置を単独で又は適宜組み合わせて用いて実施できる。乳化のための原料の混合撹拌の際には、必要により加熱することが好ましい。
【0048】
工程(b)の油脂乳化液、少なくとも乳酸と発酵物を含む調味液、及び具材の混合も通常の方法により行うことができ、特に限定はされないが、例えば、油脂乳化液と調味液をホモミキサーで均一に混合して混合液を調製し、これに具材を投入し、さらに混合する方法が一般的である。また、混合時の加熱は、60~100℃で5~30分間行うことが好ましい。
【0049】
上記の工程により得られた具材入り乳化液状調味料は、そのまま、あるいは、加熱殺菌や加圧殺菌などの殺菌処理に供した後、一般の液状調味料と同様に、容器に充填する。本発明の乳化液状調味料に使用する容器としては、材質や形状は特に限定はされないが、例えば、プラスチック製容器、パウチ(ポリエチレンパウチ、アルミパウチ)、ペットボトル、スチール缶、アルミ缶、瓶容器などが挙げられる。また、本発明の乳化液状調味料は容器に充填した後で、加熱殺菌、あるいはレトルト殺菌などの殺菌処理に供して液状調味料とすることができる。
【0050】
工程(b)の別の態様としては、具材を密閉可能な上記容器に投入した後、調味液を添加し、容器を密閉してから、この密閉容器を加熱処理する方法によって行ってもよい。上記加熱処理は、具材と調味液を充填し密閉した容器を、熱風、熱水、熱水シャワー、又は蒸気等の存在下に置くことにより行う。加熱処理は、昇温加熱処理、又は定温加熱処理により行うことができる。昇温加熱処理とは、特定の温度に達するまで温度を上昇させ、達温した時点で、加熱を終了する方法を意味し、定温加熱処理とは、ある一定の温度まで加熱した後、一定の温度で保持する加熱処理方法を意味する。加熱温度は、加熱環境下の温度で、60~100℃が好ましく、65~95℃がより好ましく、70~95℃がさらに好ましい。加熱処理の時間は、昇温加熱処理の場合、60℃から一定温度まで達する時間を意味し、定温加熱処理の場合、60℃から一定温度まで達する時間及び一定温度で保つ時間の合計の時間を意味する。前記加熱時間は、温度により適宜調整すればよいが、20~120分が好ましく、20~100分がより好ましく、30~90分がさらに好ましい。上記加熱時間の内、定温加熱処理の場合、一定温度で保つ時間が5~110分であることが好ましく、5~90分であることがより好ましく、10~80分であることがさらにより好ましい。
【実施例】
【0051】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
(試験例1)乳酸含有量、pHの検討
(1)試験品の調製(実施例1~4、及び比較例1~3)
(1-1)香味油の調製
加工ニンニク45g、赤唐辛子30g、ごま油25gを攪拌混合しながら、105℃まで加熱後、室温まで冷却し、香味油を得た(調味液中の香味油含有量:4.2質量%、油脂(ごま油)含有量:1.0質量%、香辛料(加工ニンニクと赤唐辛子)含有量:3.2質量%)。
【0053】
(1-2)油脂乳化液の調製
表1に示す配合割合(質量%)で、(1-1)で得られた香味油と乳化剤(大豆レシチン;ペースト状リゾレシチン)を水(全配合の一部)に混合し、25℃で10分混合撹拌し、油脂乳化液を得た。
【0054】
(1-3)具材入り乳化液状調味料の調製
表1に示す配合割合(質量%)で、(1-2)で得られた油脂乳化液、食塩、液糖、うすくち醤油(食塩分18%)、米味噌(食塩分17%)、醸造酢(酸度15%)、及び発酵乳酸を水に溶解し、25℃にて加熱混合して調味液を調製した。乾燥タマネギを、液状調味料全量に対して調味液中で膨潤後の含有量が40質量%となるように、広口カップに充填した後、上記調味液を投入し、アルミ製のシートでシールした。高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、95℃で5分加熱処理した。その後、冷水中で室温まで冷却し、試験品の具材入り乳化液状調味料を得た。
【0055】
(2)乳酸の含有量の測定
試験品の調味液を水で10倍希釈し、0.45μmフィルターでろ過したものをサンプルとし、下記の条件にてHPLC分析をおこなった。
分析条件
分析用カラム:陽イオン系カラム Shodex RSpak KC-G
移動相:4mM p-トルエンスルホン酸
カラム温度:50℃
反応液:4mM p-トルエンスルホン酸+100μM EDTA
+ 20mM Bis-tris 水溶液
流速:0.9ml/min
検出器:電気伝導度検出器分析
分析時間:30分
注入量:50μL
【0056】
(3)官能評価試験
(1)で調製した試験品の乳化液状調味料について、及び該乳化液状調味料を下記方法により肉料理に用いた際の具材について、「発酵感の強さ」、「発酵感の好ましさ」、「コク」、「タマネギのおいしさ」、「香辛料の風味」の官能評価を行った。肉料理の方法として、フライパンを予備加熱し、サラダ油を薄くひいた後、薄切り豚肉約240gを中火で焼き色が付くまで加熱した。続いて、試験品の広口カップ中の調味料240gを加え、中火で5分加熱しながら肉に十分からめた。
【0057】
官能評価は、訓練された官能検査員5名にて、下記の評価基準により行った。評価項目毎の評価点の算出は、5名の評価を加重平均し、小数点2位以下を四捨五入した。総合評価は、各評価項目の評価点を加重平均し、5点評価の中間点である3点を合格点(効果あり)とし、3点よりも高い3.5点以上を良好な効果があるものとし、4点以上がより良好な効果があるものとした。
【0058】
<発酵感の強さ>
5:発酵感が十分感じられる
4:発酵感が良く感じられる
3:発酵感が感じられる
2:発酵感があまり感じられない
1:発酵感が感じられない
【0059】
<発酵感の好ましさ>
5:発酵感が非常に良好
4:発酵感が良好
3:発酵感が多少良い
2:発酵感があまり良くない(多少違和感がある)
1:発酵感が不良(違和感がある)
【0060】
<コク>
5:コクが十分感じられる
4:コクが良く感じられる
3:コクが感じられる
2:コクがあまり感じられない
1:コクが感じられない
【0061】
<タマネギのおいしさ>
5:タマネギの味が十分感じられる
4:タマネギの味が良く感じられる
3:タマネギの味が感じられる
2:タマネギの味があまり感じられない
1:タマネギの味が感じられない
【0062】
<香辛料の風味>
5:香辛料の風味が十分感じられる
4:香辛料の風味が良く感じられる
3:香辛料の風味が感じられる
2:香辛料の風味があまり感じられない
1:香辛料の風味が感じられない
【0063】
(4)試験結果
各試験品の乳酸含有量(質量%)及び官能評価結果を表1に示す。また、各試験品の油脂含有量(質量%)も併せて表1に示す。
【0064】
【0065】
表1に示されるように、具材、香味油、乳酸、香辛料、及び発酵物を含有する具材入り乳化液状調味料において、乳酸含有量が0.2~2.0質量%の範囲内である実施例1~4の液状調味料は、液状調味料自体及びこれを用いて調理した料理の具材のいずれにも、良好な発酵感が十分感じられ、コク、タマネギのおいしさ、香辛料の風味が十分感じられた。これに対し、乳酸含有量が0.2~2.0質量%の範囲内でない比較例1~3は、発酵感が不十分で、好ましいものではなく、コク、タマネギのおいしさと香辛料の風味も十分感じられなかった。
【0066】
(試験例2)油脂含有量の検討
(1)試験品の調製(実施例5~10、及び比較例4~5)
(1-1)香味油の調製
試験例1と同様にして香味油を調製した。
【0067】
(1-2)油脂乳化液の調製
表2に示す配合割合(質量%)で、(1-1)で得られた香味油、なたね油、乳化剤(大豆レシチン)を水(全配合の一部)に混合し、試験例1と同様して実施例5~10及び比較例5の油脂乳化液を得た。
【0068】
(1-3)具材入り乳化液状調味料の調製
表2に示す配合割合(質量%)で、(1-2)で得られた油脂乳化液(比較例4は、油脂は使用せず、香辛料のみ使用)、食塩、液糖、うすくち醤油(食塩分18%)、米味噌(食塩分17%)、醸造酢(酸度15%)、及び発酵乳酸を水に混合して調味液を調製した。乾燥タマネギを、液状調味料全量に対して調味液中で膨潤後の含有量が40質量%となるように、広口カップに充填した後、上記調味液を投入し、アルミ製のシートでシールした。高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、95℃で5分加熱処理した。その後、冷水中で室温まで冷却し、試験品の具材入り乳化液状調味料を得た。
【0069】
(2)分析試験
(1)で調製した試験品について、試験例1と同様の方法にて乳酸含有量を分析した。
【0070】
(3)官能評価試験
(1)で調製した試験品について、試験例1と同様の方法にて官能評価を行った。
【0071】
(4)試験結果
各試験品の乳酸含有量(質量%)及び官能評価結果を表2に示す。また、各試験品の油脂含有量(質量%)も併せて表2に示す。
【0072】
【0073】
表2に示されるように、具材、香味油又は香味油と香味油以外の食用油脂との混合油脂、乳酸、香辛料、及び発酵物を含有する具材入り乳化液状調味料において、油脂含有量が0.2~10質量%の範囲内である実施例5~10の乳化液状調味料は、液状調味料自体及びこれを用いて調理した料理の具材のいずれにも、良好な発酵感が十分感じられ、コク、タマネギのおいしさ、香辛料の風味が総合評価として十分感じられた。これに対し、油脂含有量が0.2~10質量%の範囲内でない比較例4~5は、発酵感が不十分で、好ましいものではなく、コク、タマネギのおいしさと香辛料の風味も十分感じられなかった。
【0074】
(試験例3)乳化剤の種類、乳化の有無の検討
(1)試験品の調製(実施例11~15)
(1-1)香味油の調製
試験例1と同様にして香味油を調製した。
【0075】
(1-2)油脂乳化液の調製
表3に示す配合割合(質量%)で、(1-1)で得られた香味油、乳化剤(大豆レシチン、卵黄レシチン)を水(全配合の一部)に混合し、試験例1と同様にして実施例11~14の油脂乳化液を得た。また、表3に示す配合割合(質量%)で、香味油を水(全配合の一部)に混合し、TKホモミキサー(東機産業社製(現PRIMIX))にて10,000rpm、25℃で1分混合撹拌し、実施例15の油脂乳化液を得た。
【0076】
(1-3)具材入り乳化液状調味料の調製
表3に示す配合割合(質量%)で、(1-2)で得られた油脂乳化液、食塩、液糖、うすくち醤油(食塩分18%)、米味噌(食塩分17%)、醸造酢(酸度15%)、及び発酵乳酸を水に混合して調味液を調製した。乾燥タマネギを、液状調味料全量に対して調味液中で膨潤後の含有量が40質量%となるように、広口カップに充填した後、上記調味液を投入し、アルミ製のシートでシールした。高温加熱処理機により蒸気で加熱を開始し、95℃で5分加熱処理した。その後、冷水中で室温まで冷却し、試験品の具材入り乳化液状調味料を得た。
【0077】
(2)分析試験
(1)で調製した試験品について、試験例1と同様の方法にて乳酸含有量を分析した。
【0078】
(3)官能評価試験
(1)で調製した試験品について、試験例1と同様の方法にて官能評価を行った。
【0079】
(4)試験結果
各試験品の乳酸含有量(質量%)、及び官能評価結果を表3に示す。また、各試験品の油脂含有量(質量%)も併せて表3に示す。
【0080】
【0081】
表3に示されるように、具材、香味油、乳酸、香辛料、及び発酵物を含有する具材入り乳化液状調味料において、油脂含有量と乳酸含有量が所定の範囲である実施例11~14の乳化液状調味料は、乳化剤の種類、有無に関係なく、液状調味料自体及びこれを用いて調理した料理の具材のいずれにも、良好な発酵感が十分感じられ、コク、タマネギのおいしさ、香辛料の風味が総合評価として十分感じられた。また、乳化剤を使用せずに香味油を機械的に乳化させた実施例15の液状調味料もまた、液状調味料自体及びこれを用いて調理した料理の具材のいずれにも、良好な発酵感が十分感じられ、コク、タマネギのおいしさ、香辛料の風味が総合評価として十分感じられた。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明は、発酵感と旨みが増強された具材を含有する、具材入り乳化液状調味料であり、加熱調理等に簡便に使用することできる乳化液状調味料の製造分野において利用できる。