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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ハードコーティングフィルム
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220614BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20220614BHJP
   C09D 167/04 20060101ALI20220614BHJP
   C09D 169/00 20060101ALI20220614BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20220614BHJP
【FI】
B32B27/00 101
C09D183/06
C09D167/04
C09D169/00
G02B1/14
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020545107
(86)(22)【出願日】2019-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-07-01
(86)【国際出願番号】 KR2019005153
(87)【国際公開番号】W WO2019212215
(87)【国際公開日】2019-11-07
【審査請求日】2020-09-02
(31)【優先権主張番号】10-2018-0051357
(32)【優先日】2018-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0049058
(32)【優先日】2019-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】バク、スンギル
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウン ソン
(72)【発明者】
【氏名】キム、ハ ヌル
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウー ハン
【審査官】南 宏樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-001421(JP,A)
【文献】特開2012-066477(JP,A)
【文献】国際公開第2017/141906(WO,A1)
【文献】特開2016-094500(JP,A)
【文献】特開2015-193747(JP,A)
【文献】国際公開第2017/034357(WO,A1)
【文献】特表2015-524855(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09D 1/00-201/10
C08J 7/04-7/06
G02B 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基材層;
前記支持基材層の上に位置する上部コーティング層;および
前記支持基材層の下に位置する下部コーティング層
を含み、
前記上部コーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサン含む第1樹脂組成物の硬化物を含み、
前記下部コーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサンと弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む第2樹脂組成物の硬化物を含
前記弾性重合体は、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカーボネートジオールである、
ハードコーティングフィルム:
[化学式1]
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR)
上記化学式1中、
は、下記化学式2で表される官能基であり、
[化学式2]
【化1】
上記化学式2中、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R-CH=CH-COO-R-、-R-OCO-CH=CH-R-、-ROR-、-RCOOR-、および-ROCOR-からなる群より選択され、
~Rはそれぞれ独立して、単一結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアルキルアリール基、エポキシ基、オキセタニル基、アクリレート基、メタクリレート基、および水素原子からなる群より選択され、
Rは、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
0<a≦1、0≦b<1、および0≦c<1であり、a+b+c=1である。
【請求項2】
0.7≦a/(a+b)≦1である、
請求項1に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項3】
0≦b<0.5および0<c<0.5である、
請求項2に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項4】
前記Rは、グリシジル基、またはグリシドキシプロピル基である、
請求項1から3のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項5】
前記Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタニル基、およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換された、
請求項1から4のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項6】
前記Rは、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されるかまたは非置換された、炭素数1~6のアルキル基またはフェニル基であるか;エポキシ基;オキセタニル基;アクリレート基;またはメタクリレート基であり、
Rは、水素原子または炭素数1~4のアルキル基である、
請求項1から5のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項7】
前記エポキシポリシロキサンは、
エポキシ基当量が3.0~6.3mmol/gであり、
1,000~50,000Daの重量平均分子量、
1,000~10,000Daの数平均分子量、および
1.0~3.0の分子量分布
を有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項8】
前記第1樹脂組成物は、弾性重合体をさらに含
前記第1樹脂組成物に含まれる前記弾性重合体は、ポリカプロラクトンジオールまたはポリカーボネートジオールである、
請求項1からのいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項9】
前記第1樹脂組成物および第2樹脂組成物のうちの少なくとも一つは、前記エポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基を1以上含む反応性モノマーをさらに含む、
請求項1からのいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項10】
前記官能基は、脂環族エポキシ基、グリシジル基、およびオキセタニル基からなる群より選択される、
請求項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項11】
前記反応性モノマーは、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、シクロヘキセンビニルモノオキシド、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-1,3-ジオキソラン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、リモネンジオキシド、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、3-メチルオキセタン、2-メチルオキセタン、3-オキセタノール、2-メチレンオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3,3-オキセタンジメタンチオール、2-エチルヘキシルオキセタン、4-(3-メチルオキセタン-3-イル)ベンゾニトリル、N-(2,2-ジメチルプロピル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、N-(1,2-ジメチルブチル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、キシレンビスオキセタン、3-エチル-3[{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル]オキセタン、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、4-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ブタン-1-オール、およびこれらの混合物からなる群より選択されるものである、
請求項または10に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項12】
前記反応性モノマーは、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して5~30重量部で含まれる、
請求項から11のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項13】
前記第1樹脂組成物および第2樹脂組成物のうちの少なくとも一つは、アクリレート系化合物、開始剤、フッ素系化合物、酸化防止剤、界面活性剤、黄変防止剤、無機充填剤、滑剤、コーティング助剤および防汚剤からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含む、
請求項1から12のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項14】
前記上部コーティング層と下部コーティング層は、0.5:1~1:1.5の厚さ比を有する、
請求項1から13のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項15】
前記支持基材層は、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびスルホン系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂を含む、
請求項1から14のいずれか一項に記載のハードコーティングフィルム。
【請求項16】
請求項1から15のいずれか一項によるハードコーティングフィルムを含む、
ディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は2018年5月3日付韓国特許出願第10-2018-0051357号および2019年4月26日付韓国特許出願第10-2019-0049058号に基づいた優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、優れた硬度特性と共に、改善された柔軟性および曲げ特性を示すハードコーティングフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0003】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展と共にディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板には機械的特性に優れた素材としてガラスまたは強化ガラスが一般に使用されている。しかし、ガラスおよび強化ガラスは自重が重くてモバイル機器の高重量化を招き、また外部衝撃によって破損しやすい問題があり、柔軟性が低くてフレキシブルまたはフォルダブルディスプレイ機器に適用するには限界がある。
【0004】
このようなガラスを代替するための素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂は軽量でありながらも壊れる恐れが少なく、柔軟性を有してモバイル機器の軽量化および柔軟化にさらに適する。代表的にポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアクリレート(PAR)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)などが使用されているが、これらプラスチック樹脂を用いた基板の場合、硬度および耐スクラッチング性がガラス素材に比べて不足する問題がある。これにより、プラスチック樹脂基板に樹脂組成物をコーティングしてハードコーティング層を形成することによって高硬度および耐摩耗性を補完しようとする方法が試みられている。
【0005】
一例として、フォルダブル用ディスプレイ基材に対するハードコーティング用として主にUV硬化の可能なアクリレート系樹脂が使用されている。しかし、前記アクリレート系樹脂は硬化時、収縮率が高く、その結果、曲げ(curl)がひどく発生するため、両面コーティングや薄いコーティングで行われなければならない。
【0006】
また、フォルダブル用ディスプレイ基材に対するハードコーティングとして、片面コーティングを行う場合、支持基材との熱変形率差によって、耐熱耐湿条件で曲げ現象が発生した。これにより、基材の両面にハードコーティング層を形成する方法が提案されたが、フレキシブルディスプレイに適用するには柔軟性が十分でないという問題点があった。
【0007】
これにより、優れた強度特性を維持しながらも、改善された柔軟性と曲げ特性を示すことができるハードコーティング層形成用組成物およびハードコーティングフィルムの開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、優れた硬度特性と共に、改善された柔軟性および曲げ特性を示すハードコーティングフィルムを提供するためのものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
これにより、発明の一実施形態によれば、
支持基材層;
前記支持基材層の上に位置する上部コーティング層;および
前記支持基材層の下に位置する下部コーティング層を含み、
前記上部コーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサン含む第1樹脂組成物の硬化物を含み、
前記下部コーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサンと弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む第2樹脂組成物の硬化物を含む、ハードコーティングフィルムを提供する:
[化学式1]
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR)
上記化学式1中、
は、下記化学式2で表される官能基であり、
[化学式2]
【化1】
上記化学式2中、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R-CH=CH-COO-R-、-R-OCO-CH=CH-R-、-ROR-、-RCOOR-、および-ROCOR-からなる群より選択され、
~Rはそれぞれ独立して、単一結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアルキルアリール基、エポキシ基、オキセタニル基、アクリレート基、メタクリレート基、および水素原子からなる群より選択され、
Rは、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
0<a≦1、0≦b<1、および0≦c<1であり、a+b+c=1である。
【0010】
また、発明の他の一実施形態によれば、前記ハードコーティングフィルムを含むディスプレイ装置を提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態によるハードコーティングフィルムおよびその製造方法、そしてその適用についてより詳しく説明する。
【0012】
但し、これは発明の一つの例示として提示されるものであって、これによって発明の権利範囲が限定されるのではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であるのは当業者に自明である。
【0013】
本明細書で明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
本明細書で使用される単数形態は、文句がこれと明確に反対の意味を示さない限り複数形態も含む。
【0014】
本明細書で使用される"含む"の意味は、特定特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるのではない。
【0015】
本明細書の化学式および官能基の記載において、"-"は結合または"結合基"を意味する。
【0016】
また、本明細書で、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)法によって測定したポリスチレン換算の分子量(単位:Da(Dalton))を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを使用することができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体的な例として、30℃の温度、クロロホルム溶媒(Chloroform)および1mL/minのflow rateが挙げられる。
【0017】
発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムは、
支持基材層;
前記支持基材層の上に位置する上部コーティング層;および
前記支持基材層の下に位置する下部コーティング層を含み、
前記上部コーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサン含む第1樹脂組成物の硬化物を含み、
前記下部コーティング層は、下記化学式1のエポキシポリシロキサンと弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む第2樹脂組成物の硬化物を含む:
[化学式1]
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR)
上記化学式1中、
は、下記化学式2で表される官能基であり、
[化学式2]
【化2】
上記化学式2中、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R-CH=CH-COO-R-、-R-OCO-CH=CH-R-、-ROR-、-RCOOR-、および-ROCOR-からなる群より選択され、
~Rはそれぞれ独立して、単一結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基であり、
は、置換もしくは非置換の炭素数1~20のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~20のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニル基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニル基、置換もしくは非置換の炭素数6~20のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~20のアルキルアリール基、エポキシ基、オキセタニル基、アクリレート基、メタクリレート基、および水素原子からなる群より選択され、
Rは、水素原子、または炭素数1~20のアルキル基であり、
0<a≦1、0≦b<1、および0≦c<1であり、a+b+c=1である。
【0018】
具体的に、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムは、優れた硬度特性を示すエポキシポリシロキサンを含むハードコーティング層を支持基材層の上および下にそれぞれ上部コーティング層および下部コーティング層として含み、ハードコーティングフィルム適用基材と接するようになる下部コーティング層が前記エポキシポリシロキサンの硬化時収縮を最少化することができる弾性重合体を最適含量比でさらに含むことによって、優れた表面硬度特性を示しながらも、曲げ特性および屈曲性が大きく改善できる。
【0019】
より具体的に、前記ハードコーティングフィルムにおいて、上部コーティング層は前記化学式1のエポキシポリシロキサン含む第1樹脂組成物の硬化物を含み、下部コーティング層は前記化学式1のエポキシポリシロキサンと共に弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む第2樹脂組成物の硬化物を含む。この時、前記硬化物は光硬化物または熱硬化物であってもよい。
【0020】
前記上部コーティング層および下部コーティング層での前記化学式1で表されるエポキシポリシロキサンは、T3単位体として(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位を含む。
【0021】
前記(RSiO3/2)のシルセスキオキサン構成単位において、Rは前記化学式2で表される官能基であり、前記化学式2中、Rは具体的に置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R-CH=CH-COO-R-、-R-OCO-CH=CH-R-、-ROR-、-RCOOR-、および-ROCOR-からなる群より選択されるものであってもよく、より具体的にはメチレン、エチレン、プロピレン、アリレン、-R-CH=CH-COO-R-、-R-OCO-CH=CH-R-、-ROR-、-RCOOR-、または-ROCOR-であってもよい。この時、前記R~Rはそれぞれ独立して、単一結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基であってもよく、より具体的には単一結合であるか、またはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのような炭素数1~6の直鎖状アルキレン基であってもよい。よりさらに具体的に、前記Rはメチレン、エチレン、または-ROR-であってもよく、この時、RおよびRは直接結合であるか、またはメチレン、プロピレンなどのような炭素数1~6の直鎖状アルキレン基であってもよい。
【0022】
硬化物の表面硬度および硬化性改善効果を考慮する時、前記Rはグリシジル基であるか、またはグリシドキシプロピル基であってもよい。
【0023】
また、前記Rが置換される場合、具体的には、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基(またはアクリロイル基)、メタクリル基(またはメタクリロイル基)、アクリレート基(またはアクリロイルオキシ基)、メタクリレート基(またはメタクリロイルオキシ基)、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタニル基、およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、より具体的には、メチル、エチルなどの炭素数1~6のアルキル基;アクリル基;メタクリル基;アクリレート基;メタクリレート基;ビニル基;アリル基;エポキシ基;およびオキセタニル基;からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよい。
【0024】
また、前記エポキシポリシロキサンは、前述の(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位と共にT3単位体として(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位をさらに含むことができる。前記(RSiO3/2)のシルセスキオキサン単位は、エポキシポリシロキサンの硬化密度を高めてコーティング層の表面硬度特性を向上させることができる。
【0025】
前記(RSiO3/2)のシルセスキオキサン構成単位において、Rは具体的に、置換もしくは非置換の炭素数1~12のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~12のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~12のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~12のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~12のアルキルアリール基、エポキシ基、オキセタニル基、アクリレート基、メタクリレート基および水素原子からなる群より選択されるものであってもよい。
【0026】
また、前記Rは、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタニル基、およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、より具体的には、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、およびオキセタニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよい。
【0027】
この中でもエポキシポリシロキサンの硬化密度をさらに高めてコーティング層の表面硬度特性をさらに向上させることができるという点で、前記Rはより具体的に、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、およびオキセタニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されるか非置換された、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6のフェニル基であるか;またはエポキシ基;またはオキセタニル基;であってもよい。よりさらに具体的には、前記Rは非置換されたフェニル基またはエポキシ基であってもよい。
【0028】
一方、本発明において'エポキシ基'はオキシラン環を含む官能基であって、別途の言及がない限り、オキシラン環のみを含む非置換エポキシ基、炭素数6~20、あるいは炭素数6~12の脂環族エポキシ基(例えば、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロペンチルなど);および炭素数3~20、あるいは炭素数3~12の脂肪族エポキシ基(グリシジル基など)を含む。但し、前記Rがエポキシ基である場合、前記化学式2で表される官能基と同一なものは除外する。
【0029】
また、本発明において'オキセタニル基'は、オキセタン環を含む官能基であって、別途の言及がない限り、オキセタン環のみを含む非置換オキセタニル基、炭素数6~20、あるいは炭素数6~12の脂環族オキセタニル基、および炭素数3~20、あるいは炭素数3~12の脂肪族オキセタニル基を含む。
【0030】
また、前記エポキシポリシロキサンは、(OR)の構成単位を含むことができる。前記構成単位を含むことによって、優れた硬度特性を維持しながらも柔軟性を向上させることができる。前記Rは具体的に、水素原子であるか、または炭素数1~12のアルキル基であってもよく、より具体的には水素原子であるか、またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~4の直鎖または分枝型アルキル基であってもよい。
【0031】
前記構成単位を含むエポキシポリシロキサンは、各構成単位のシロキサン単量体、具体的には、エポキシアルキル基を有するアルコキシシラン単独、またはエポキシアルキル基を有するアルコキシシランと異種のアルコキシシラン間の加水分解および縮合反応によって製造でき、この時、前記アルコキシシランの含量比制御によって各構成単位のモル比を制御することができる。具体的に、前記化学式1中、a、b、およびcはそれぞれ、前記エポキシポリシロキサンを構成する(RSiO3/2)単位、(RSiO3/2)単位、および(OR)単位のモル比を示すものであって、0<a≦1、0≦b<1および0≦c<1であり、a+b+c=1である。
【0032】
また、前記エポキシポリシロキサンは、前記構成単位それぞれの含量範囲を充足する条件下で、(RSiO3/2)の構成単位を、エポキシポリシロキサンを構成するT単位体総量、即ち、100モル%に対して70モル%以上、より具体的には、70モル%以上100モル%以下で含むことによって、コーティング層形成時硬化密度が増加し、その結果、ハードコーティングフィルムが顕著に改善された表面硬度を示すことができる(モル比で表現時、0.7≦a/(a+b)≦1)。前記エポキシポリシロキサン内(RSiO3/2)構成単位のモル含量が70モル%未満であれば、硬化密度の低下で上部および下部コーティング層が十分な表面硬度を示しにくい。よりさらに具体的には、(RSiO3/2)の構成単位をT単位体総量、即ち、100モル%に対して70モル%以上85モル%未満、あるいは85モル%以上100モル%以下で含むことができる。
【0033】
また、前記エポキシポリシロキサンが前記(RSiO3/2)の構成単位をさらに含む場合、bに該当するモル比(0≦b<1)で含むことができ、より具体的には、0≦b<0.5、よりさらに具体的に、0.01≦b<0.5あるいは0.1≦b≦0.3を充足するようにするモル比で(RSiO3/2)の構成単位をさらに含むことができる。前記含量範囲で(RSiO3/2)の構成単位を含む場合、硬化物の膜密度を高めてコーティング層の表面硬度特性を向上させるか膜特性を変化させることができる。
【0034】
また、前記エポキシポリシロキサンは前記(OR)単位を前述のcの範囲(0≦c<1)で含むことができ、より具体的には0<c<0.5、よりさらに具体的には0.01≦c≦0.3あるいは0.01≦c≦0.05を充足するようにするモル比で(OR)単位をさらに含むことができる。前記含量範囲で(OR)単位を含む場合、優れた硬度特性を維持しながらも柔軟性を向上させることができる。
【0035】
また、前記含量範囲を充足する条件下で、前記エポキシポリシロキサン内含まれる各構成単位のモル比の総合(a+b+c)は1である。
【0036】
一方、本発明において、前記エポキシポリシロキサンを構成する各構成単位の含量は、H-NMRまたは29Si-NMRスペクトル測定によって求めることができる。
【0037】
また、前記エポキシポリシロキサンは、エポキシ基当量が3.0~6.3mmol/gであってもよい。エポキシ基当量が前記範囲内である場合、重合時緻密な架橋をなして、より優れた硬度特性を示すことができる。より具体的には、前記エポキシポリシロキサンはエポキシ基当量が4~6mmol/gであってもよい。本発明において、エポキシ当量はH-NMRまたは化学的滴定法で分析することができる。
【0038】
また、前記エポキシポリシロキサンは、製造時、反応温度、触媒の量、溶媒の種類などを用いた反応速度調節によって重量平均分子量、分子量分布などが調節でき、本発明で使用可能なエポキシポリシロキサンは1,000~50,000Da(Dalton)の重量平均分子量(Mw)を有するものであってもよい。前記範囲の重量平均分子量を有することによって、より優れた硬度特性を示すことができる。重量平均分子量が1,000Da未満であれば、硬度が実現されずむしろ軟性が発現される恐れがあり、また50,000Daを超過すれば、フィルム加工性が低下する恐れがある。より具体的には、1,200~15,000Daであってもよい。
【0039】
また、前記エポキシポリシロキサンは、前記Mwと共に数平均分子量(Mn)が1,000~10,000Da、より具体的には1,000~8,000Daであるものであってもよい。前記数平均分子量条件を充足する場合、コーティング層形成用樹脂組成物内他の成分との相溶性が増加し、硬化物の表面硬度が向上して、硬化物の耐熱性および耐摩耗性がさらに向上できる。
【0040】
また、前記エポキシポリシロキサンは分子量分布(Mw/Mn)が1.0~3.0、より具体的には1.1~2.5であるものであってもよい。前記範囲内の分子量分布を有する場合、表面硬度改善効果がより優れ、またエポキシポリシロキサンが液状で存在して取り扱いが容易である。
【0041】
本発明において、エポキシポリシロキサンの重量平均分子量および数平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算値である。
【0042】
一方、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムにおいて、下部コーティング層は、前述のエポキシポリシロキサンと共に弾性重合体を95:5~60:40の重量比でさらに含む。
【0043】
前記弾性重合体は、ハードコーティングフィルムが適用される基材と対面する下部コーティング層に含まれることによって、下部コーティング層に高いtoughnessによるストレス抵抗特性を付与して硬化時収縮を最少化することができ、その結果、曲げ特性を改善し、同時に屈曲性などの柔軟性を改善させることができる。特に、上部コーティング層に含まれる場合に比べて優れた硬度特性を維持しながらも柔軟性向上の効果を得ることができる。しかし、弾性重合体が過量で投入される場合、具体的にエポキシポリシロキサンと弾性重合体の総合計量に対して40重量%を超過する場合、曲げ特性が大きく低下する恐れがある。また、弾性重合体が過度に少量で投入される場合、具体的にエポキシポリシロキサンと弾性重合体の総合計量に対して5重量%未満である場合、弾性重合体を含むことによる改善効果を十分に得ることができず、曲げ特性および屈曲性が低下する恐れがある。より具体的には、前記弾性重合体の含量比制御による曲げ特性および屈曲性改善効果の顕著さを考慮する時、前記弾性重合体は、前記化学式1のエポキシポリシロキサンと弾性重合体が92:8~65:35の重量比、よりさらに具体的には90:10~65:35の重量比を充足するようにする量で含まれてもよい。
【0044】
前記弾性重合体としては炭素数1~20のアルカンジオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。これら弾性重合体は、ゴムなど通常の弾性重合体と比較して、紫外線照射によって架橋重合でき、また他の物性の低下なく高硬度と柔軟性を実現することができる。この中でも、前記弾性重合体はポリカプロラクトンジオール、またはポリカーボネートジオールであってもよく、特に前記ポリカプロラクトンジオールは繰り返し単位内にエステル基とエーテル基が同時に含まれて繰り返されることによって、前記化学式1のエポキシポリシロキサンとの組み合わせ使用時、柔軟性と硬度、耐衝撃性面でより優れた効果を示すことができてより好ましい。
【0045】
また、前記弾性重合体は、数平均分子量(Mn)が500~10,000Da、より具体的には1,000~5,000Daであるものであってもよい。前記数平均分子量条件を充足する場合、コーティング層形成用樹脂組成物内他の成分との相溶性が増加し、硬化物の表面硬度が向上して、硬化物の耐熱性および耐摩耗性がさらに向上できる。
【0046】
追加的に、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムにおいて、上部コーティング層もエポキシポリシロキサンと共に弾性重合体をさらに含むことができる。このように上部コーティング層にも弾性重合体がさらに含まれる場合、上部コーティング層の硬化時収縮を最少化して曲げ特性および屈曲性をさらに改善させることができる。
【0047】
この場合、上部コーティング層は弾性重合体を、前記化学式1のエポキシポリシロキサンと弾性重合体が95:5~60:40、より具体的には92:8~65:35の重量比を充足するようにする量で含むことができる。
【0048】
また、上部コーティング層が弾性重合体をさらに含む場合、上部コーティング層と下部コーティング層に含まれる弾性重合体の含量は同一であってもよく異なってもよい。ハードコーティングフィルム適用基材と接する下部コーティング層での収縮最少化によるハードコーティングフィルムの表面硬度特性、曲げ特性と屈曲性改善効果の優れているのを考慮する時、本発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムは上部コーティング部に比べて下部コーティング層でより高い含量で弾性重合体を含むことができる。
【0049】
また、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムにおいて、前記上部および下部コーティング層のうちの少なくとも一つは、反応性モノマーをさらに含むことができる。
【0050】
前記反応性モノマーは、前述のエポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基を1以上含むことによって、前記エポキシポリシロキサンの粘度を低めて加工性を容易にし、コーティング接着力を向上させる役割を果たす。
【0051】
具体的に、前記反応性モノマーとしては、エポキシポリシロキサンと架橋可能な官能基であって脂環族エポキシ基、グリシジル基またはオキセタニル基を含む化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0052】
前記脂環族エポキシ基を含む化合物としては、4-ビニルシクロヘキセンジオキシド、シクロヘキセンビニルモノオキシド、(3,4-エポキシシクロヘキシル)メチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-1,3-ジオキソラン、リモネンジオキシド、ビニルシクロヘキセンジオキシド、またはビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペートなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。また、前記グリシジル基を含む化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、p-ブチルフェノールグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、クレシルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、ジグリシジルエーテル、ブタンジオールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二以上の混合物が使用できる。また、前記オキセタニル基を含む化合物としては、3-メチルオキセタン、2-メチルオキセタン、3-オキセタノール、2-メチレンオキセタン、3-メチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、3,3-オキセタンジメタンチオール、2-エチルヘキシルオキセタン、4-(3-メチルオキセタン-3-イル)ベンゾニトリル、N-(2,2-ジメチルプロピル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、N-(1,2-ジメチルブチル)-3-メチル-3-オキセタンメタンアミン、キシレンビスオキセタン、3-エチル-3[{(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ}メチル]オキセタン、(3-エチルオキセタン-3-イル)メチルメタクリレート、または4-[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]ブタン-1-オールなどが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0053】
前記反応性モノマーがさらに含まれる場合、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して5~30重量部で含まれてもよい。反応性モノマーの含量が5重量部未満であれば反応性モノマーを含むことによる改善効果が微少であり、30重量部を超過する場合、過量の反応性モノマーによって前記エポキシポリシロキサンの粘度が過度に低まって加工性がむしろ低下することがある。より具体的には、前記反応性モノマーは、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して7~15重量部、よりさらに具体的には9~12重量部で含まれてもよい。
【0054】
また、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムにおいて、前記上部および下部コーティング層のうちの少なくとも一つは、表面硬度改善のためにアクリレート系化合物をさらに含むことができる。
【0055】
前記アクリレート系化合物としては、2-エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベへニルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ノニルフェノールエトキシレートモノアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、4-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、エトキシレーテッドモノアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリフェニルグリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1、6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシレーテッドネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート、エトキシレーテッドトリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ジペンタエリトリトールペンタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルコキシレーテッドテトラアクリレートなどが挙げられ、好ましくは、ペンタエリトリトールトリアクリレート、ペンタエリトリトールトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラメタクリレート、またはペンタエリトリトールテトラアクリレートなどのような多官能性アクリレート系化合物が挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0056】
その他にも、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、ウレタンアクリレート、またはエポキシアクリレートなどのようなアクリレート系オリゴマーが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0057】
前記アクリレート系化合物の中でも前述のエポキシポリシロキサンとの組み合わせ使用時表面硬度改善効果の顕著さを考慮する時、ウレタンアクリレートオリゴマーがより好ましく使用できる。
【0058】
前記ウレタンアクリレートオリゴマーは、官能基数が6~9個であってもよい。官能基が6個未満であれば硬度改善効果が微少なことがあり、9個超過であれば硬度は優れているが、粘度が上昇することがある。また、前記ウレタン(メタ)アクリレートオリゴマーは当該分野で使用されるものを制限なく使用することができるが、好ましくは、分子内1つ以上のイソシアネート基を有する化合物と分子内ヒドロキシ基を1つ以上有する(メタ)アクリレート化合物を反応させて製造されたものが使用できる。
【0059】
前記アクリレート系化合物がさらに含まれる場合、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して0.1~20重量部で含まれてもよい。反応性モノマーの含量が0.1重量部未満であればアクリレート系化合物を含むことによる改善効果が微少であり、20重量部を超過する場合、過量のアクリレート系化合物によって表面硬度改善効果がむしろ阻害されることがある。より具体的には、前記アクリレート系化合物は、前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して1~15重量部、よりさらに具体的には5~15重量部で含まれてもよい。
【0060】
前記成分と共に、前記上部コーティング層と下部コーティング層はそれぞれ独立して、開始剤、フッ素系化合物、酸化防止剤、界面活性剤、黄変防止剤、無機充填剤、滑剤、コーティング助剤、防汚剤など本発明の属する技術分野において通常使用される添加剤を1種以上追加的に含むことができる。前記添加剤については、以下の製造方法でより詳しく説明する。
【0061】
一般にハードコーティング層の厚さが厚いほど強度が増加するが、厚さが過度に厚い場合、フォールディング時壊れやすい。また、厚さが過度に薄い場合、フォールディング性が確保されても強度が不良なことがある。これにより、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムにおいて、前記上部コーティング層と下部コーティング層はそれぞれ30~150μmの厚さを有するのが好ましく、前記の厚さ範囲内で上部コーティング層と下部コーティング層の厚さ比が0.5:1~1:1.5、より具体的には1:1~1:1.3であるのがより好ましい。それぞれのコーティング層の厚さが30μm未満であれば、強度特性が低下する恐れがあり、また150μmを超過すれば柔軟性が低下する恐れがある。また、上部コーティング層の厚さに比べて下部コーティング層の厚さが過度に厚い場合、curl balanceと厚さに比べて高い硬度の効果が低下する恐れがあり、また下部コーティング層に比べて上部コーティング層の厚さが過度に厚い場合、curl balanceおよび柔軟性が低下する恐れがある。
【0062】
一方、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムでの支持基材層は前記上部コーティング層と下部コーティング層の間に位置する。
【0063】
前記支持基材層は、透明性プラスチック樹脂を含むことができる。前記プラスチック樹脂の具体的な例としては、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂またはスルホン系樹脂などが挙げられ、これらのうちのいずれか一つまたは二つ以上の混合物が使用できる。
【0064】
より具体的には、前記支持基材層は、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)、サイクリックオレフィン共重合体(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、ポリ(アミド-イミド)(Poly(amide-imide))およびトリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)のうちの少なくとも一つを含むことができる。
【0065】
また、前記支持基材層は単層であってもよく、または互いに同一であるかまたは異なる物質からなる2層以上の多層構造であってもよい。一例として、前記支持基材層は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の多層構造体、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリカーボネート(PC)の共押出で形成した多層構造体、またはポリメチルメタクリレート(PMMA)とポリカーボネート(PC)の共重合体(copolymer)を含む単一層構造体であってもよい。
【0066】
また、前記支持基材層は必要によってプラズマ表面処理されたものであってもよく、その方法は特に提案されず、通常の方法によって行うことができる。
【0067】
また、前記支持基材層は、30~1,200μm、より具体的には50~800μm、よりさらに具体的には30~100μmの厚さを有することができる。
【0068】
前記構造および構成を有する発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムは、上部コーティング層形成用第1樹脂組成物を支持基材層の一面に塗布した後に硬化して上部コーティング層を形成し、前記上部コーティング層が形成されていない支持基材層の一面に下部コーティング層形成用第2樹脂組成物を塗布した後に硬化して下部コーティング層を形成することによって製造できる。この時、上部コーティング層と下部コーティング層の形成順序は変更できる。また他の方法で、支持基材層の両面に前記第1および第2樹脂組成物をそれぞれ塗布した後に硬化させることによって製造できる。この時、上部および下部コーティング層の形成順序は特に限定されず、工程容易性などを考慮して適切に変更できる。
【0069】
前記ハードコーティングフィルム製造方法において、前記上部コーティング層形成用第1樹脂組成物は、前記化学式1で表されるエポキシポリシロキサンを含み、選択的に弾性重合体をさらに含むことができる。また、前記下部コーティング層形成用第2樹脂組成物は、前記エポキシポリシロキサンと共に弾性重合体を95:5~60:40の重量比で含む。この時、前記エポキシポリシロキサンおよび弾性重合体は先に説明した通りである。
【0070】
また、前記第1および第2樹脂組成物は、前述の反応性モノマーおよびアクリレート系化合物のうちの少なくとも一つをさらに含むことができる。
【0071】
また、前記第1および第2樹脂組成物はそれぞれ独立して、前述のエポキシポリシロキサン100重量部に対して開始剤を0.1~10重量部で含むことができる。前記開始剤含量が0.1重量部未満であれば、表面硬化のみ起こるか、エポキシ硬化が十分に起こらず低い硬度が出ることがある。また、開始剤含量が10重量部を超過すれば、速い硬化速度によってハードコーティング層のクラックと剥離を誘発することがある。より具体的には、0.5~5重量部あるいは1~4重量部で含むことができる。
【0072】
前記開始剤はこの分野によく知られた光重合または熱重合開始剤であってもよく、その種類が大きく制限されない。例えば、光重合開始剤は、アリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、アリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩、ジフェニルヨードニウムヘキサアンチモニウム塩、ジトリルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート塩、および9-(4-ヒドロキシエトキシフェニル)チアントレニウムヘキサフルオロホスフェート塩からなる群より選択された1種以上であってもよいが、これに制限されない。前記熱重合開始剤は、3-メチル-2-ブテニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩、イッテルビウムトリフルオロメタンスルホネート塩、サマリウムトリフルオロメタンスルホネート塩、エルビウムトリフルオロメタンスルホネート塩、ジスプロシウムトリフルオロメタンスルホネート塩、ランタントリフルオロメタンスルホネート塩、テトラブチルホスホニウムメタンスルホネート塩、エチルトリフェニルホスホニウムブロミド塩、ベンジルジメチルアミン、ジメチルアミノメチルフェノール、トリエタノールアミン、N-n-ブチルイミダゾール、および2-エチル-4-メチルイミダゾールからなる群より選択された1種以上を含むことができるが、これに制限されない。
【0073】
前記第1および第2樹脂組成物は、工程上問題がない場合、無溶剤(solvent-free)で使用可能であるが、選択的にコーティング時、組成物の粘度および流動性を調節し支持基材に対する組成物の塗布性を高めるために選択的に有機溶媒をさらに含むことができる。
【0074】
前記第1および第2樹脂組成物中に有機溶媒がさらに含まれる場合、前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒;2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒;プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのアセテート系溶媒;またはベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0075】
また、前記第1および第2樹脂組成物は前述の成分以外に、先に説明したような表面硬度改善のためのアクリレート系化合物をさらに含むことができ、また酸化防止剤、界面活性剤、黄変防止剤、無機充填剤、滑剤、コーティング助剤、防汚剤など本発明の属する技術分野における通常使用される添加剤を1種以上さらに含むことができる。また、その含量は本発明のハードコーティングフィルムの物性を低下させない範囲内で多様に調節することができるので、特に制限しないが、例えば前記エポキシポリシロキサン100重量部に対して0.1~10重量部で含むことができる。
【0076】
一例として、前記酸化防止剤は重合開始剤に起因する酸化反応を抑制するためのものであって、フェノリック系、ホスフェート系、アミニック系、チオエステル系などからなる群より選択される1種以上の混合物を含むことができるが、これに制限されない。前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤であってもよい。この時、前記界面活性剤は、前記架橋共重合体内に分散または架橋されている形態で含まれてもよい。また、前記黄変防止剤としては、ベンゾフェノン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0077】
前記のような上部および下部コーティング層形成用樹脂組成物の支持基材層に対する塗布工程は、ダイコーター、エアーナイフ、リバースロール、スプレー、ブレード、キャスティング、グラビア、スピンコーティング、またはバーコーティングなどの公知された方法によって行うことができる。
【0078】
また、前記塗布工程は、硬化後、それぞれのコーティング層の厚さが前述の厚さ範囲および条件を充足するように前記第1および第2樹脂組成物の塗布が1回または1回以上行うことができる。
【0079】
また、それぞれの樹脂組成物塗布後には硬化のための工程が行われ、前記硬化は通常の方法による熱硬化または光硬化で行うことができる。
【0080】
前記熱硬化および光硬化のための熱処理または光照射条件は、開始剤の種類によって波長領域および光量、または熱処理温度などの調節によって適切に制御できる。
【0081】
前記のような方法によって製造された、発明の一実施形態によるハードコーティングフィルムは、ハードコーティング層として、支持基材層の上部には硬度特性に優れたエポキシポリシロキサンを含む上部コーティング層を形成し、支持基材層の下部には前記エポキシポリシロキサンと共に、硬化時収縮を最少化して曲げ特性を改善し同時に屈曲性および柔軟性を向上させることができる弾性重合体を含む下部コーティング層をそれぞれ形成することによって、優れた表面硬度および強度特性を維持しながらも柔軟性が顕著に改善されて曲げ変形が非常に少ない。これにより、前記ハードコーティングフィルムはフレキシブル透明フィルムあるいはフォルダブル透明フィルムとして使用でき、特に多様なフレキシブルまたはフォルダブルディスプレイ素子での前面部、表示部などの素材として有用に使用することができる。
【0082】
これにより、本発明のまた他の一実施形態によれば、前記ハードコーティングフィルムを含むディスプレイ装置が提供される。
【0083】
前記ディスプレイ装置は通常の液晶表示装置、電界発光表示装置、プラズマ表示装置、または電界放出表示装置など各種画像表示装置であってもよく、前記ハードコーティングフィルムは前記ディスプレイ装置でのウィンドウ基板などに使用できる。
【発明の効果】
【0084】
本発明によるハードコーティングフィルムは、優れた硬度特性と共に、改善された柔軟性および曲げ特性を示すことができる。これにより、フレキシブルまたはフォルダブルディスプレイ機器に特に有用に適用できる。
【発明を実施するための形態】
【0085】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。但し、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるのではない。
【実施例
【0086】
以下、製造例で使用したそれぞれの化合物は下記の通りである:
【0087】
(a)エポキシポリシロキサン1
下記方法によって製造したエポキシポリシロキサン1を使用した。
【0088】
1000mL 3-neckフラスコに、シランモノマーとして3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403TM、Shinetsu社)、水、およびトルエンを入れて攪拌した(KBM-403TM:水の比=1mol:0.2mol)。結果の混合溶液に塩基性触媒(trimethylammonium hydroxide;TMAH)を前記シランモノマー100重量部に対して1重量部で添加し100℃で反応させて、グリシドキシプロピル変性シリコン(glycidoxypropyl modified silicone、以下、GP)100モル%を含む下記組成のエポキシポリシロキサン1を製造した(Mw:2,700Da、Mn:2,100Da、分子量分布(Mw/Mn):1.29、エポキシ基当量:5.9mmol/g)。
【0089】
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR) (1)
(上記化学式1中、Rはグリシドキシプロピル基(化学式2中、Raが-ROR-であり、Rがプロピレン基であり、Rがメチレン基である)であり、Rは水素原子であり、a=0.96、b=0、c=0.04である)
【0090】
(b)エポキシポリシロキサン2
下記方法によって製造したエポキシポリシロキサン2を使用した。
【0091】
1000mL 3-neckフラスコにシランモノマーとして3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403TM、Shinetsu社)、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン(KBM-303TM、Shin-Etsu社)、水、およびトルエンを入れて攪拌した(KBM-403TM:KBM-303TM:水の比=7mol:3mol:2mol)。結果の混合溶液に塩基性触媒(TMAH)を前記シランモノマー100重量部に対して1重量部で添加し100℃で反応させて、エポキシポリシロキサン2を製造した(Mw:2,500Da、Mn:1,750Da、分子量分布(Mw/Mn):1.43、エポキシ基当量:5.9mmol/g)。
【0092】
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR) (1)
(上記化学式1中、Rはグリシドキシプロピル基(化学式2中、Raが-ROR-であり、Rがプロピレン基であり、Rがメチレン基である)であり、Rは2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル基)であり、Rは水素原子であり、a=0.68、b=0.29、c=0.03である)
【0093】
(c)エポキシポリシロキサン3
下記方法によって製造したエポキシポリシロキサン3を使用した。
【0094】
1000mL 3-neckフラスコに、シランモノマーとして3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM-403TM、Shinetsu社)、フェニルトリメトキシシラン(PTMS、Shin-Etsu社)、水、およびトルエンを入れて攪拌した(KBM-403TM:PTMS:水の比=7mol:3mol:2mol)。結果の混合溶液に塩基性触媒(TMAH)を前記シランモノマー100重量部に対して1重量部で添加し100℃で反応させて、エポキシポリシロキサン3を製造した(Mw:2,800Da、Mn:2,100Da、分子量分布(Mw/Mn):1.33、エポキシ基当量:4.5mmol/g)。
【0095】
(RSiO3/2(RSiO3/2(OR) (1)
(上記化学式1中、Rはグリシドキシプロピル基(化学式2中、Raが-ROR-であり、Rがプロピレン基であり、Rがメチレン基である)であり、Rはフェニル基であり、Rは水素原子であり、a=0.69、b=0.29、c=0.02である)
【0096】
(d)反応性モノマー:ビスフェノールAジグリシジルエーテル(Alfa)
【0097】
(e)弾性重合体1:ポリカプロラクトンジオール(Mn=1300Da、Sigma Aldrich社製)。
【0098】
(f)弾性重合体2:ポリカーボネートジオール(Mn=2,000Da、Sigma Aldrich社製)。
【0099】
<製造例1~8>
下記表1に記載された配合でそれぞれの混合物を混合して樹脂組成物を製造した。この時使用したエポキシポリシロキサン100重量部に対して、開始剤としてヨードニウム系化合物(Omnicat250TM、BASF社製)3重量部、溶剤としてToluene10重量部、そして添加剤としてフッ素系化合物(RS-55TM、MEGAFACE社製)0.2重量部を使用した。
【0100】
【表1】
【0101】
上記表1で、含量単位"重量%"は、エポキシポリシロキサン、反応性モノマー、および弾性重合体を含む樹脂組成物総重量を基準にして当該成分の重量を百分率で表わした値である。
【0102】
<実施例1~8>
下記表2に記載された組成の樹脂組成物を使用して基材の上下面に上部および下部コーティング層がそれぞれ形成されたハードコーティングフィルムを製造した。
【0103】
詳しくは、15cm×20cm、厚さ50μmのPET基材の一面に、下記表2に記載された下部コーティング層形成用第2樹脂組成物を塗布した後、UVランプを用いて紫外線を照射(照射量:400mJ/cm)して光硬化することによって下部コーティング層を形成し、また前記下部コーティング層が形成されたPET基材の反対側面に下記表2に記載された上部コーティング層形成用第1樹脂組成物を塗布し、UVランプを用いて紫外線を照射(照射量:400mJ/cm)して光硬化することによって、ハードコーティングフィルムを製造した(上部コーティング層の厚さ:80μm、下部コーティング層の厚さ:100μm、全体厚さ:230μm)。
【0104】
<比較例1>
下記表2に記載された通り、製造例1で製造した樹脂組成物を、15cm×20cm、厚さ50μmのPET基材上面に塗布した後、UVランプを用いて紫外線を10秒間照射(照射量:200mJ/cm)して光硬化することによって、基材の上面に上部コーティング層が形成されたハードコーティングフィルムを製造した(上部コーティング層の厚さ:80μm)。
【0105】
<比較例2および3>
下記表2に記載された組成の樹脂組成物を使用することを除いては、前記実施例1と同様な方法で行ってハードコーティングフィルムを製造した。
【0106】
【表2】
【0107】
<実験例>
実施例1~7、および比較例1、2で製造したハードコーティングフィルムに対して、次の方法で物性を測定し、その結果を下記表3に示した。
【0108】
1)鉛筆硬度(上部コーティング層)
鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400によって、実施例1~7、および比較例1および2で製造したハードコーティングフィルムの上部コーティング層に対して1.0kgの荷重で5回往復した後、キズがない硬度を確認した。
【0109】
2)内屈曲性
折り畳まれた部分の内側曲率半径(R)を多様に変化させて、前記実施例および比較例で製造したハードコーティングフィルムをコーティング層形成面が内側へ向かうように、即ち、支持基材の一面にのみコーティング層が形成された場合にはコーティング層形成面が内側に折り畳まれるように、そして支持基材の両面にコーティング層がそれぞれ形成された場合には上部コーティング層が内側に折り畳まれるように折り畳んで広げることを20万回繰り返して行った。クラック発生有無に対する確認と共に、折り畳まれた部分の内側曲率半径(R)を測定し、クラックが発生されない最も小さい曲率半径(R)値を確認した。
【0110】
3)曲げ特性:ハードコーティングフィルムを床の上に置いた時、ハードコーティングフィルムの四つの頂点が床から離れている距離を測定し、その平均値を求めた後、下記基準によって曲げ特性を評価した。
5mm未満:○
5mm以上10mm未満:△
10mm以上:X
【0111】
【表3】
【0112】
実験の結果、支持基材層の上下両面にハードコーティング層を形成し、下部コーティング層内弾性重合体を最適含量で含む実施例1~7のハードコーティングフィルムは、前記比較例1および2と比較して、同等水準の優れた硬度特性を示しながらも、顕著に改善された内屈曲性および曲げ特性を示した。
【0113】
一方、支持基材層の上部にのみコーティング層を形成し、コーティング層内弾性重合体を含まない比較例1のハードコーティングフィルムは、上部コーティング層の表面硬度特性は優れているが、曲げ特性が大きく低下した。
【0114】
また、一般にコーティング層内弾性重合体を含み、またその含量が増加するほどコーティング層の表面硬度は低まり、柔軟性および曲げ特性は改善される。しかし、支持基材層の上部および下部にそれぞれコーティング層を含むが、下部コーティング層内に含まれている弾性重合体がエポキシポリシロキサンとの最適混合重量比条件を逸脱して過量で含まれている比較例2のハードコーティングフィルムの場合、むしろ内屈曲性と曲げ特性が大きく低下した。
【0115】
このような結果から、下部コーティング層内弾性重合体をエポキシポリシロキサンに対して最適含量比で含む時、硬度特性と柔軟性および曲げ特性改善の効果を得ることができるのが分かる。
【0116】
また、支持基材層の上部および下部に同一組成のコーティング層を形成した場合、コーティング層内弾性重合体を含むかどうかによる柔軟性および曲げ特性改善効果を評価するために、実施例8および比較例3で製造したコーティングフィルムに対して内屈曲性と外屈曲性、そして曲げ特性をそれぞれ評価した。
内屈曲性は前記と同様な方法で測定した。
【0117】
外屈曲性:折り畳まれた部分の内側曲率半径(R)を多様に変化させて前記実施例および比較例で製造したハードコーティングフィルムをコーティング層形成面が外側へ向かうように、即ち、支持基材の一面にのみコーティング層が形成された場合にはコーティング層が形成されていない面側が内側に折り畳まれるように、そして支持基材の両面にコーティング層がそれぞれ形成された場合には下部コーティング層が内側に折り畳まれるように、折りたたんで広げることを20万回繰り返して行った。クラック発生有無に対する確認と共に、折り畳まれた部分の内側曲率半径(R)を測定し、クラックが発生されない最も小さい曲率半径(R)値を確認した。
【0118】
追加的に、前記実施例8および比較例3で製造したハードコーティングフィルムでの上部コーティング層の表面硬度および曲げ特性も前記と同様な方法で測定し評価した。
その結果を下記表4に示した。
【0119】
【表4】
【0120】
実験の結果、支持基材層の上部および下部コーティング層に弾性重合体を含む実施例8は、比較例3に比べては相対的に低下した硬度特性を示したが、通常のハードコーティングフィルムとは同等水準の硬度特性を示し、また内屈曲性および外屈曲性面では比較例3に比べて顕著に改善された効果を示した。