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特許7088499ポリアミド樹脂フィルムおよびそれを用いた樹脂積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】ポリアミド樹脂フィルムおよびそれを用いた樹脂積層体
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/18 20060101AFI20220614BHJP
   C08G 69/32 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20220614BHJP
   C08K 5/3472 20060101ALI20220614BHJP
   C08L 77/10 20060101ALI20220614BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C08J5/18 CFG
C08G69/32
C08K5/3415
C08K5/3472
C08L77/10
B32B27/34
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020567115
(86)(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2019018450
(87)【国際公開番号】W WO2020159086
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2020-12-04
(31)【優先権主張番号】10-2019-0014020
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0014021
(32)【優先日】2019-02-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0066620
(32)【優先日】2019-06-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0173086
(32)【優先日】2019-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0174355
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、イル ファン
(72)【発明者】
【氏名】パク、スーンヨン
(72)【発明者】
【氏名】テ、ヨン ジ
(72)【発明者】
【氏名】パク、ヨンソク
(72)【発明者】
【氏名】リュ、ビ オ
【審査官】河内 浩志
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-146133(JP,A)
【文献】特開2011-124174(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0296037(US,A1)
【文献】特開平04-226533(JP,A)
【文献】国際公開第2004/039863(WO,A1)
【文献】特開2014-052604(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00- 5/02
5/12- 5/22
C08G69/00- 69/50
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B32B 1/00- 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下であるポリアミド樹脂フィルムであって、
前記ポリアミド樹脂フィルムは、芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した芳香族アミド繰り返し単位を含有したポリアミド樹脂;および紫外線安定剤;を含み、
前記ポリアミド樹脂は、下記化学式1で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第1ポリアミドセグメントと、下記化学式2で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第2ポリアミドセグメントと、を含む、ポリアミド樹脂フィルム:
[数式1]
Eab={(L-Ln-1+(a-an-1+(b-bn-11/2
n-1は紫外線照射n-1日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、
n-1およびbn-1は紫外線照射n-1日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、
は紫外線照射n日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、
およびbは紫外線照射n日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、Ar は置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、
[化学式2]
【化2】
前記化学式2において、Ar は置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基である。
【請求項2】
前記ポリアミド樹脂フィルムの紫外線照射1日目の明度指数Lは、93以上である、
請求項1に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項3】
前記ポリアミド樹脂フィルムの紫外線照射1日目の色座標aは、-1.5以上であり、
は4以下である、
請求項1または2に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項4】
前記数式1による紫外線照射5日目(n=5)の色差変化率(Eab)値が0.2以下である、
請求項1から3のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項5】
前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が前記数式1による紫外線照射10日目(n=10)の色差変化率(Eab10)値の20倍以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項6】
前記ポリアミド樹脂フィルムに1日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数が7以下である、
請求項1から5のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項7】
前記ポリアミド樹脂フィルムに10日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数と、前記ポリアミド樹脂フィルムに1日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数の差が2.5以下である、
請求項1から6のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項8】
前記ポリアミド樹脂フィルムは550nmの波長に対して厚さ方向のレターデーション(Rth)が-8000nm以上-3000nm以下であり、
下記数式2による水分吸収率が0.5%以上7.0%以下である、
請求項1から7のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム:
[数式2]
水分吸収率(%)=(W1-W2)*100/W2
前記数式2において、
W1は前記ポリアミド樹脂フィルムを超純水に24時間含浸して測定した重量であり、
W2は前記含浸後に前記ポリアミド樹脂フィルムを150℃で30分間乾燥して測定した重量である。
【請求項9】
前記ポリアミド樹脂フィルムは、550nmの波長に対して厚さ方向のレターデーション(Rth)が-6000nm以上-3000nm以下である、
請求項1から8のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項10】
45μm以上55μm以下の厚さを有する試験片に対して、ASTM D1003によって測定したヘイズが3.0%以下である、
請求項1から9のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項11】
前記第1ポリアミドセグメントは、100g/mol以上5000g/mol以下の数平均分子量を有する、
請求項1から10のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項12】
前記ポリアミド樹脂に含有されたすべての繰り返し単位を基準として、
前記化学式1で表される繰り返し単位の含有量が60モル%~95モル%であり、
前記化学式2で表される繰り返し単位の含有量が5モル%~40モル%である、
請求項1から11のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項13】
前記第1ポリアミドセグメントおよび第2ポリアミドセグメントは、下記化学式3で表される交差繰り返し単位を含む主鎖を形成する、
請求項1から12のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム:
[化学式3]
【化3】
前記化学式3において、
Aは前記第1ポリアミドセグメントであり、
Bは前記第2ポリアミドセグメントである。
【請求項14】
前記化学式3で表される交差繰り返し単位は、下記化学式4で表される繰り返し単位である、
請求項13に記載のポリアミド樹脂フィルム:
[化学式4]
【化4】
前記化学式4において、
ArおよびArはそれぞれ独立して置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、
a1およびa2はそれぞれ独立して1~10の整数であり、
b1およびb2はそれぞれ独立して1~5の整数である。
【請求項15】
前記紫外線安定剤は、トリアジン系UV吸収剤、トリアゾール系UV吸収剤、およびHALS系UV吸収剤からなる群より選ばれた1種以上の化合物を含む、
請求項1から14のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルム。
【請求項16】
前記トリアゾール系UV吸収剤は、下記化学式11で表される化合物を含む、
請求項15に記載のポリアミド樹脂フィルム:
[化学式11]
【化5】
前記化学式11において、
およびRはそれぞれ独立し、水素、または炭素数1~20のアルキル基である。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか1項に記載のポリアミド樹脂フィルムを含む基材;および
前記基材の少なくとも一面に形成されるハードコート層;
を含む、
樹脂積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は長期間の紫外線照射に対する耐学性が向上し、かつ適正水準以上の機械的物性と優れた透明性を確保することができるポリアミド樹脂フィルムおよびそれを用いた樹脂積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ポリイミド樹脂はほとんど非結晶性構造を有する高分子として、堅固な鎖状構造によって優れた耐熱性、耐化学性、電気的特性、および寸法安定性を現わす。このようなポリイミド樹脂は電気/電子材料として広く使用されている。
【0003】
しかし、ポリイミド樹脂はイミド鎖内に存在するPi-電子のCTC(charge transfer complex)形成により濃い茶色を帯びて透明性を確保しにくい限界があり、それを含むポリイミドフィルムの場合は表面が引っ掻かれやすく耐スクラッチ性が非常に弱い短所を有している。
【0004】
このようなポリイミド樹脂の限界点を改善するためアミドグループが導入されたポリアミド樹脂に対する研究が活発に進行している。アミド構造は分子間または分子内の水素結合を誘発して水素結合などの相互作用により耐スクラッチ性が改善された。
【0005】
しかし、ポリアミド樹脂合成に使用されるテレフタロイルクロリド、またはイソフタロイルクロリドの溶解度差および反応性(立体障害)、反応速度差によってポリアミド重合時テレフタロイルクロリドから由来したアミド繰り返し単位とイソフタロイルクロリドから由来したアミド繰り返し単位がブロックを形成せず、かつ理想的に(ideal)、交差的に(alternatively)重合され難い。
【0006】
そのために、paraアシルクロリド単量体から由来したアミド繰り返し単位によるブロックが形成され、ポリアミド樹脂の結晶性が増加することによってヘイズによって透明性が不良になる限界がある。
【0007】
のみならず、ポリアミド樹脂合成に使用される単量体が溶媒に溶解した状態で重合反応が進行されることによって、水分による変質または溶媒との混成により最終合成されるポリアミド樹脂の分子量が十分な水準に確保され難い。
【0008】
そのために、透明性と機械的物性を同時に実現することができるポリアミド樹脂の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は長期間の紫外線照射に対する耐学性が向上し、かつ適正水準以上の機械的物性と優れた透明性を確保することができるポリアミド樹脂フィルムに関する。
【0010】
また、本発明は前記のポリアミド樹脂フィルムを利用した樹脂積層体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本明細書では、下記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下である、ポリアミド樹脂フィルムを提供する。
【0012】
[数式1]
【0013】
Eab={(L-Ln-1+(a-an-1+(b-bn-11/2
【0014】
n-1は紫外線照射n-1日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、an-1およびbn-1は紫外線照射n-1日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、Lは紫外線照射n日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、aおよびbは紫外線照射n日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標である。
【0015】
本明細書ではまた、前記ポリアミド樹脂フィルムを含む基材;および前記基材の少なくとも一面に形成されるハードコート層;を含む、樹脂積層体が提供される。
【0016】
以下、発明の具体的な実施形態によるポリアミド樹脂フィルムおよびそれを用いた樹脂積層体についてより詳細に説明する。
【0017】
本明細書で特に制限がない限り、次の用語は下記のように定義され得る。
【0018】
本明細書で、ある部分がある構成要素を「含む」という時、これは特に反対の意味を示す記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0019】
本明細書で、置換基の例示は以下で説明するが、これに限定されるものではない。
【0020】
本明細書で、「置換」という用語は、化合物内の水素原子の代わりに他の官能基が結合することを意味し、置換される位置は水素原子が置換される位置すなわち、置換基が置換可能な位置であれば限定されず、2以上置換される場合、2以上の置換基は互いに同一または異なってもよい。
【0021】
本明細書で、「置換または非置換された」という用語は、重水素;ハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;ヒドロキシ基;カルボニル基;エステル基;イミド基;アミド基;1次アミノ基;カルボキシ基;スルホン酸基;スルホンアミド基;ホスフィンオキシド基;アルコキシ基;アリールオキシ基;アルキルチオキシ基;アリールチオキシ基;アルキルスルホキシ基;アリールスルホキシ基;シリル基;ホウ素基;アルキル基;ハロアルキル基;シクロアルキル基;アルケニル基;アリール基;アラルキル基;アラルケニル基;アルキルアリール基;アルコキシシリルアルキル基;アリールホスフィン基;またはN、OおよびS原子のうち1個以上を含むヘテロ環基からなる群より選ばれた1個以上の置換基で置換または非置換されたり、前記例示した置換基のうち2以上の置換基が連結された置換または非置換されたことを意味する。例えば、「2以上の置換基が連結された置換基」は、ビフェニル基であり得る。すなわち、ビフェニル基はアリール基であり得、2個のフェニル基が連結された置換基と解釈されることもできる。好ましくは前記置換基としてはハロアルキル基を使用することができ、前記ハロアルキル基の例としてはトリフルオロメチル基が挙げられる。
【0022】
本明細書で、
【化1】
は他の置換基に連結される結合を意味し、直接結合はLで表される部分に別途の原子が存在しない場合を意味する。
【0023】
本明細書において、アルキル基はアルカン(alkae)から由来した1価の官能基であり、直鎖または分枝鎖であり得、前記直鎖アルキル基の炭素数は特に限定されないが1~20であることが好ましい。また、前記分枝鎖アルキル基の炭素数は3~20である。アルキル基の具体的な例としてはメチル、エチル、プロピル、n-プロピル、イソプロピル、ブチル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチル、sec-ブチル、1-メチル-ブチル、1-エチル-ブチル、ペンチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert-ペンチル、ヘキシル、n-ヘキシル、1-メチルペンチル、2-メチルペンチル、4-メチル-2-ペンチル、3,3-ジメチルブチル、2-エチルブチル、ヘプチル、n-ヘプチル、1-メチルヘキシル、オクチル、n-オクチル、tert-オクチル、1-メチルヘプチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、n-ノニル、2,2-ジメチルヘプチル、1-エチル-プロピル、1,1-ジメチル-プロピル、イソヘキシル、2-メチルペンチル、4-メチルヘキシル、5-メチルヘキシル、2,6-ジメチルヘプタン-4-イルなどがあるが、これらに限定されない。前記アルキル基は置換または非置換され得る。
【0024】
本明細書において、アリール基はアレーン(arene)から由来した1価の官能基であり、特に限定されないが炭素数6~20であることが好ましく、単環式アリール基または多環式アリール基であり得る。前記アリール基が単環式アリール基としてはフェニル基、ビフェニル基、テルフェニル基などであり得るが、これに限定されるものではない。前記多環式アリール基としてはナフチル基、アントラセニル基、フェナントリル基、ピレニル基、ペリレニル基、クリセニル基、フルオレニル基などであり得るが、これに限定されるものではない。前記アリール基は置換または非置換され得る。
【0025】
本明細書において、アリーレン基はアレーン(arene)から由来した2価の官能基であり、これらは2価の官能基であることを除いては前述したアリール基の説明が適用され得る。例えば、フェニレン基、ビフェニレン基、テルフェニレン基、ナフタレン基、フルオレニル基、ピレニル基、フェナントレニル基、ペリレン基、テトラセニル基、アントラセニル基などであり得る。前記アリーレン基は置換または非置換され得る。
【0026】
本明細書において、ヘテロアリール基は、炭素でない原子、異種原子を1以上含むものとして、具体的には前記異種原子はO、N、SeおよびS等からなる群より選択される原子を1以上含み得る。炭素数は特に限定されないが、炭素数4~20であることが好ましく、前記ヘテロアリール基は単環式または多環式であり得る。ヘテロ環基の例としては、チオフェン基、フラニル基、ピロール基、イミダゾリル基、チアゾリル基、オキサゾリル基、オキサジアゾリル基、ピリジル基、ビピリジル基、ピリミジル基、トリアジニル基、トリアゾリル基、アクリジル基、ピリダジニル基、ピラジニル基、キノリニル基、キナゾリニル基、キノキサリニル基、フタラジニル基、ピリドピリミジル基、ピリドピラジニル基、ピラジノピラジニル基、イソキノリニル基、インドリル基、カルバゾリル基、ベンズオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンゾチアゾリル基、ベンゾカルバゾリル基、ベンゾチオフェン基、ジベンゾチオフェン基、ベンゾフラニル基、フェナントロリン基(phenanthroline)、チアゾリル基、イソオキサゾリル基、オキサジアゾリル基、チアジアゾリル基、ベンゾチアゾリル基、フェノチアジニル基、アジリジル基、アザインドリル基、イソインドリル基、インダゾリル基、プリン基(purine)、プテリジル基(pteridine)、ベータ-カボリル基、ナフチリジル基(naphthyridine)、テル-ピリジル基、フェナジニル基、イミダゾピリジル基、パイロピリジル基、アゼピン基、ピラゾリル基およびジベンゾフラニル基などがあるが、これに限定されるものではない。前記ヘテロアリール基は置換または非置換され得る。
【0027】
本明細書で、ヘテロアリーレン基は、炭素数は2~20、または2~10、または6~20である。異種原子としてO、NまたはSを含有したアリーレン基であり、2価の官能基であることを除いては前述したヘテロアリール基の説明が適用され得る。前記ヘテロアリーレン基は置換または非置換され得る。
【0028】
本明細書において、ハロゲンの例としてはフッ素、塩素、臭素またはヨウ素がある。
【0029】
I.ポリアミド樹脂フィルム
【0030】
発明の一実施形態によれば、前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下である、ポリアミド樹脂フィルムが提供されることができる。
【0031】
本発明者らは前述したように、前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下を満たすポリアミド樹脂フィルムは長期間の紫外線照射時にも、紫外線によってポリアミド樹脂フィルムに含有されたポリアミド樹脂の内部分子構造変形を抑制することによって、ポリアミド樹脂フィルムの変色や変質を最小化して優れた耐学性と安定した光学特性を実現することができることを実験により確認して発明を完成した。
【0032】
そのため、前記ポリアミド樹脂フィルムは強い紫外線が長期間照射される環境に露出しても無色透明で、かつ高強度のフィルム物性を維持することができ、少ないコストと簡単な工程によりポリアミド樹脂フィルムの適用分野を拡大することができ、経済性と効率性の面で優れる。
【0033】
具体的には、前記ポリアミド樹脂フィルムは、前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下、または0.01以上2.5以下、または0.01以上2以下、または0.01以上1.5以下、または0.01以上1以下、または0.05以上0.9以下、または0.52811以上0.83295以下を満たし得る。
【0034】
より具体的には、前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値は、次の数式1-1により求めることができる。
【0035】
[数式1-1]
【0036】
Eab={(L-L+(a-a+(b-b1/2
【0037】
数式1-1において、Lは紫外線照射0日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、aおよびbは紫外線照射0日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、Lは紫外線照射1日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、aおよびbは紫外線照射1日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標である。
【0038】
前記紫外線照射0日目のポリアミド樹脂フィルムは紫外線照射が行われていないポリアミド樹脂フィルムを意味し、前記紫外線照射1日目のポリアミド樹脂フィルムは紫外線照射を1日間行った後のポリアミド樹脂フィルムを意味する。
【0039】
前記ポリアミド樹脂フィルムが前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下に減少すると、前記ポリアミド樹脂フィルムが紫外線に露出してもフィルムの変色、変質程度が大きくないため製品適用が可能である。
【0040】
反面、前記ポリアミド樹脂フィルムが前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5超過に増加すると、前記ポリアミド樹脂フィルムが紫外線に露出時製品適用が難しくなるほど深刻な水準の変色、変質が発生し得る。
【0041】
具体的には、前記ポリアミド樹脂フィルムの紫外線照射1日目の明度指数Lは、93以上、または95以上、または95以上95.75以下、または95.5以上95.75以下、または95.7以上95.75以下であり得る。また、前記ポリアミド樹脂フィルムの紫外線照射1日目の色座標aは、-1.5以上、または-1.5以上-0.1以下、または-1.0以上-0.5以下、または-0.8以上-0.5以下、または-0.76以上-0.65以下であり得る。そして、bは4以下、または1以上4以下、または2以上3以下、または2.01以上2.15以下であり得る。
【0042】
具体的には、明度指数(L)、色座標(a,b)はそれぞれ固有の色相を表す座標軸の値を意味する。Lは0~100の値を有し、0に近いほど黒い色を示し、100に近いほど白色を示す。aは0を基準として正数(+)と負数(-)の値を有し、正数(+)の場合は赤色を帯びることを意味し、負数(-)場合は緑色を帯びることを意味する。bは0を基準として正数(+)と負数(-)の値を有し、正数(+)の場合は黄色を帯びることを意味し、負数(-)の場合は青色を帯びることを意味する。
【0043】
前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数(L)、色座標(a、b)を測定する方法の例は大きく限定されるものではないが、例えば、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムを5cm*5cm大きさの試験片を製造し、前記試験片に対して20℃~70℃温度でQ-Lab CorporatioのQUV Accelerated Weathering Testerを利用して0.1w/m~5.0w/m光量、315nm~380nm波長の紫外線を照射し、Shimadzu UV-2600 UV-vis spectrometerを利用して測定した。
【0044】
また、前記数式1による紫外線照射5日目(n=5)の色差変化率(Eab)値が0.2以下、または0.01以上0.2以下、または0.01以上0.15以下、または0.01以上0.1以下、または0.095以上0.12627以下を満たし得る。
【0045】
より具体的には、前記数式1による紫外線照射5日目(n=5)の色差変化率(Eab)値は、次の数式1-3により求めることができる。
【0046】
[数式1-3]
【0047】
Eab={(L-L+(a-a+(b-b1/2
【0048】
前記数式1-3において、Lは紫外線照射4日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、aおよびbは紫外線照射4日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、Lは紫外線照射5日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、aおよびbは紫外線照射5日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標である。
【0049】
また、前記数式1による紫外線照射10日目(n=10)の色差変化率(Eab10)値が0.1以下、または0.01以上0.1以下、または0.01以上0.09以下を満たし得る。
【0050】
より具体的には、前記数式1による紫外線照射10日目(n=10)の色差変化率(Eab10)値は、次の数式1-4により求めることができる。
【0051】
[数式1-4]
【0052】
Eab10={(L10-L+(a10-a+(b10-b1/2
【0053】
前記数式1-4において、Lは紫外線照射9日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、aおよびbは紫外線照射9日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、L10は紫外線照射10日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、a10およびb10は紫外線照射10日目の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標である。
【0054】
すなわち、前記数式1による紫外線照射n日目の色差変化率(Eab)値はnが増加するほど大体減少する傾向を示し、nが1~5で紫外線照射の序盤では相対的に前記ポリアミド樹脂フィルムの変色、変質が優勢に行われることを確認することができる。ただし、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムは紫外線照射の序盤であるnが1~5でも色差変化率値が急激に増加せず優れた耐学性を実現することができる。
【0055】
具体的には、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムは、前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が前記数式1による紫外線照射10日目(n=10)の色差変化率(Eab10)値の20倍以下、または10倍以下、または2倍~20倍、または2倍~15倍、または2倍~10倍であり得る。すなわち、Eab/Eab10を計算した値が20以下、または10以下、または2以上20以下、または2以上15以下、または2以上10以下、または5以上6以下であり得る。
【0056】
一方、前記ポリアミド樹脂フィルムに1日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数が7以下、または1以上7以下、または1以上6以下、または1以上5以下、または1以上4以下、または3以上4以下であり得る。そのため、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムは強い紫外線照射時にも、紫外線によってポリアミド樹脂フィルムに含有されたポリアミド樹脂の内部分子構造変形が抑制されることによって、ポリアミド樹脂フィルムの変色や変質を最小化して優れた耐学性と安定した光学特性を実現することができる。
【0057】
また、前記ポリアミド樹脂フィルムに10日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数が9以下、または1以上9以下、または1以上7以下、または1以上6以下であり得る。そのため、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムは長期間の紫外線照射時にも、紫外線によってポリアミド樹脂フィルムに含有されたポリアミド樹脂の内部分子構造変形が抑制されることによって、ポリアミド樹脂フィルムの変色や変質を最小化して優れた耐学性と安定した光学特性を実現することができる。
【0058】
具体的には、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムは、前記ポリアミド樹脂フィルムに10日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数と、前記ポリアミド樹脂フィルムに1日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数の差が2.5以下、または1以上2.5以下、または1.5以上2.5以下、または1.6以上2.4以下、または1.6以上2.3以下であり得る。
【0059】
具体的には、前記ポリアミド樹脂フィルムに10日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数と、前記ポリアミド樹脂フィルムに1日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数の差とは、前記ポリアミド樹脂フィルムに10日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数であるYI10で前記ポリアミド樹脂フィルムに1日間紫外線を照射した後、ASTM E313の測定法により測定した黄色指数であるYIを引いた値である(YI10-YI)を意味する。
【0060】
一方、前記ポリアミド樹脂フィルムは、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のレターデーション(Rth)が-8000nm以上-3000nm以下、または-6000nm以上-3000nm以下、または-6000nm以上-4000nm以下であり得るが、そのため黄色指数とヘイズ値が低くなり、フィルム内部の高分子の配向によって機械的強度が向上し得、水分吸水性が低くなる。
【0061】
また、前記ポリアミド樹脂フィルムは、前記数式2による水分吸収率が0.5%以上7.0%以下、または1.0%以上7.0%以下、または2.0%以上7.0%以下、または2.46%以上7.0%以下、または0.5%以上5.0%以下、または0.5%以上3.0%以下、または2.46%以上7.0%以下、または2.46%以上5.0%以下、または2.46%以上3.0%以下であり得るが、上述した厚さ方向のレターデーション(Rth)値と共に前記範囲の水分吸収率を満たすことによって、黄色指数とヘイズ値が低くなり、フィルム内部の高分子の配向によって機械的強度が向上することができ、また水分吸水性が低くなる。
【0062】
前記厚さ方向のレターデーション(Rth)は、通常知られている測定方法および測定装置により確認することができる。例えば、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定装置としては、AXOMETRICS社製の商品名アクソスキャン(AxoScan)、プリズムカプラ(Prism Coupler)などが挙げられる。そして、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定条件としては、前記ポリアミド樹脂フィルムに対して、屈折率(550nm)値を前記測定装置にインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長550nmの光を使用して、ポリアミド樹脂フィルムの厚さ方向のレターデーションを測定し、求めた厚さ方向のレターデーション測定値(測定装置の自動測定(自動計算)による測定値)に基づいて、フィルムの厚さ10μm当たりレターデーション値に換算することによって求めることができる。また、測定試料のポリアミドフィルムのサイズは、測定機のステージの測光部(直径:約1cm)より大きければ良いので、特に制限されないが、縦:76mm、横52mm、厚さ50μmのサイズにすることができる。
【0063】
また、厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定に利用する「前記ポリアミド樹脂フィルムの屈折率(550nm)」の値は、レターデーションの測定対象になるフィルムを形成するポリアミド樹脂フィルムと同じ種類のポリアミド樹脂フィルムを含む未延伸フィルムを形成した後、このような未延伸フィルムを測定試料として使用して(また、測定対象になるフィルムが未延伸フィルムである場合には、そのフィルムをそのまま測定試料として使用できる)、測定装置として屈折率測定装置(AXOMETRICS社製の商品名プリズムカプラ(Prism Coupler))を用いて、550nmの光源を使用し、23℃の温度条件で測定試料の面内方向(厚さ方向とは垂直である方向)の550nmの光に対する屈折率を測定して求めることができる。
【0064】
また、測定試料が未延伸である場合、フィルムの面内方向の屈折率は、面内のどの方向においても一定になり、このような屈折率の測定によって、そのポリアミド樹脂フィルムの固有な屈折率を測定することができる(また、測定試料が未延伸であるので、面内の遅延軸方向の屈折率をNxとし、遅延軸方向と垂直である面内方向の屈折率をNyとする場合、Nx=Nyとなる)。
【0065】
このように、未延伸フィルムを利用してポリアミド樹脂フィルムの固有な屈折率(550nm)を測定し、得られた測定値を上述した厚さ方向のレターデーション(Rth)の測定に利用する。ここにおいて、測定試料のポリアミド樹脂フィルムのサイズは、前記屈折率測定装置に利用できる大きさであれば良く、特に制限されず、一辺が1cmである正四角形(縦横1cm)で厚さ50μmの大きさにしてもよい。
【0066】
通常堅固な(rigid)内部構造を有するポリアミド樹脂フィルムは、相対的に高いヘイズまたは黄色度を有したり低い透光度を示し得る。これに対し、前記実施形態のポリアミド樹脂フィルムは、上述した厚さ方向のレターデーション(Rth)を示して結晶性のあるリジッド(rigid)な内部構造を有しながらも、これと共に3.6%以下の水分吸収率を有して水分浸透などが防止され、そのため低いヘイズ値と高い透光度を有することができる。
【0067】
このような理由から前記ポリアミド樹脂フィルムはより低い黄色指数とヘイズ値を有しながらもより高い機械的強度を有することができる。
【0068】
一方、前記ポリアミド樹脂フィルムの厚さが大きく限定されるものではないが、例えば、0.01μm~1000μm範囲内で自由に調節可能である。前記ポリアミド樹脂フィルムの厚さが特定数値だけ増加または減少する場合はポリアミド樹脂フィルムで測定される物性も一定数値だけ変化し得る。
【0069】
具体的には、前記50±2μmの厚さを有する試験片に対してASTM D1003によって測定したヘイズが3.0%以下、または1.5%以下、または1.00%以下、または0.85%以下、または0.10%~3.0%、または0.10%~1.5%、または0.10%~1.00%、または0.40%~1.00%、または0.40%~0.90%、または0.40%~0.80%であり得る。前記ポリアミド樹脂フィルムのASTM D1003によって測定したヘイズが3.0%超過に増加すると、不透明性が増大して十分な水準の透明性を確保し難い。
【0070】
そして、前記ポリアミド樹脂フィルムは、50±2μmの厚さを有する試験片に対してASTM E313に基づいて測定された黄色指数値(yellow index,YI)が、4.0以下、または3.1以下、または0.5~4.0、または0.5~3.1、または2.5~3.1であり得る。前記ポリアミド樹脂フィルムのASTM E313に基づいて測定された黄色指数値(yellow index,YI)が4.0超過に増加すると、不透明性が増大して十分な水準の透明性を確保し難い。
【0071】
そして、前記ポリアミド樹脂フィルムは、50±2μmの厚さを有する試験片に対して測定された耐折強さ(175rpmの速度で135°の角度、0.8mmの曲率半径および250gの荷重での破断往復曲げ回数)値が4000Cycle以上、または7000Cycle以上、または9000Cycle以上、または4000Cycle~20000Cycle、または7000Cycle~20000Cycle、または9000Cycle~20000Cycle、または10000Cycle以上15000Cycle以下、または10000Cycle以上14000Cycle以下であり得る。
【0072】
そして、前記ポリアミド樹脂フィルムは、50±2μmの厚さを有する試験片に対してASTM D3363に基づいて測定された鉛筆硬度(Pencil Hardness)値が1H以上、または3H以上、または1H~4H、または3H~4Hであり得る。
【0073】
前記数式1による紫外線照射1日目(n=1)の色差変化率(Eab)値が2.5以下であるポリアミド樹脂フィルムを構成する成分の一例を挙げると、芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した芳香族アミド繰り返し単位を含有したポリアミド樹脂;および紫外線安定剤;を含み得る。
【0074】
具体的には前記ポリアミド樹脂フィルムは前記ポリアミド樹脂と紫外線安定剤が含まれたポリアミド樹脂組成物またはその硬化物を含み得、前記硬化物とは、前記ポリアミド樹脂組成物の硬化工程を経て得られる物質を意味する。
【0075】
前記ポリアミド樹脂フィルムは、前記ポリアミド樹脂組成物を使用して乾式法、湿式法のような通常の方法によって製造されることができる。例えば、前記ポリアミド樹脂フィルムは、前記ポリアミド樹脂と紫外線安定剤を含む溶液を任意の支持体上にコートして膜を形成し、前記膜から溶媒を蒸発させて乾燥する方法により得られ、必要に応じて前記ポリアミド樹脂フィルムに対する延伸および熱処理がさらに行われてもよい。
【0076】
前記ポリアミド樹脂組成物を利用してポリアミド樹脂フィルムを製造する場合、優れた光学的物性および機械的物性を実現できると同時に、柔軟性まで備え、多様な成形品の材料に使用され得る。例えば、前記ポリアミド樹脂フィルムは、ディスプレイ用基板、ディスプレイ用保護フィルム、タッチパネル、フォールダブル機器のウィンドウカバーなどに適用されることができる。
【0077】
前記ポリアミド樹脂フィルムに使用されたポリアミド樹脂は芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した芳香族アミド繰り返し単位を含有することができる。
【0078】
より具体的には、前記芳香族アミド繰り返し単位は1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第1芳香族アミド繰り返し単位;1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位;および1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第3芳香族アミド繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位を含み得る。
【0079】
すなわち、前記芳香族アミド繰り返し単位は1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第1芳香族アミド繰り返し単位1種、1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位1種、1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第3芳香族アミド繰り返し単位1種、またはこれらの2種以上の混合物を含み得る。
【0080】
より好ましくは前記芳香族アミド繰り返し単位は、前記1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位;および1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第3芳香族アミド繰り返し単位からなる群より選ばれた1種以上の繰り返し単位とともに1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第1芳香族アミド繰り返し単位を含み得る。
【0081】
すなわち、前記1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位と1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第1芳香族アミド繰り返し単位を含んだり、前記1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位と1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第1芳香族アミド繰り返し単位を含んだり、前記1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位、1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第2芳香族アミド繰り返し単位、そして1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した第1芳香族アミド繰り返し単位を含み得る。
【0082】
前記1,4-芳香族ジアシル化合物の具体的な例としてはテレフタロイルクロリド、またはテレフタル酸が挙げられる。また、前記芳香族ジアミン単量体の例としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、p-キシリレンジアミン(p-xylylenediamine)および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0083】
好ましくは前記1,4-芳香族ジアシル化合物は、テレフタロイルクロリド、またはテレフタル酸を含み、前記芳香族ジアミン化合物は2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミンを含み得る。
【0084】
前記1,2-芳香族ジアシル化合物の具体的な例としてはフタロイルクロリド、またはフタル酸が挙げられる。また、前記1,3-芳香族ジアシル化合物の具体的な例としてはイソフタロイルクロリドまたはイソフタル酸が挙げられる。前記芳香族ジアミン単量体の例としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、p-キシリレンジアミン(p-xylylenediamine)および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0085】
好ましくは前記1,2-芳香族ジアシル化合物はフタロイルクロリド、またはフタル酸を含み、前記1,3-芳香族ジアシル化合物はイソフタロイルクロリドまたはイソフタル酸を含み、前記芳香族ジアミン化合物は2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミンを含み得る。
【0086】
より具体的には、前記ポリアミド樹脂は、下記化学式1で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第1ポリアミドセグメントを含み得る。
【0087】
[化学式1]
【化2】
【0088】
前記化学式1において、Arは置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基である。
【0089】
前記化学式1において、Arはアルキル基、ハロアルキル基、およびアミノ基からなる群より選ばれた1種以上の置換基で置換された炭素数6~20のアリーレン基であり、より好ましくは2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニレン基であり得る。
【0090】
より具体的には、前記化学式1において、Arは芳香族ジアミン単量体から誘導された2価の有機官能基であり得、前記芳香族ジアミン単量体の具体的な例としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。より好ましくは、前記芳香族ジアミン単量体は、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)または2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)であり得る。
【0091】
前記第1ポリアミドセグメントは、前記化学式1で表される繰り返し単位、または前記化学式1で表される繰り返し単位からなるブロックを含み得る。
【0092】
前記化学式1で表される繰り返し単位の具体的な例としては、下記化学式1-1で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0093】
[化学式1-1]
【化3】
【0094】
前記化学式1で表される繰り返し単位は、1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位、具体的にはテレフタロイルクロリドまたはテレフタル酸と芳香族ジアミン単量体のアミド化反応で形成されたアミド繰り返し単位であり、線状分子構造によって、高分子内でチェーンパッキングと配列(Align)が一定に維持され得、ポリアミドフィルムの表面硬度および機械的物性を向上させることができる。
【0095】
前記1,4-芳香族ジアシル化合物の具体的な例としてはテレフタロイルクロリド、またはテレフタル酸が挙げられる。また、前記芳香族ジアミン単量体の例としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、p-キシリレンジアミン(p-xylylenediamine)および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0096】
好ましくは前記1,4-芳香族ジアシル化合物はテレフタロイルクロリド、またはテレフタル酸を含み、前記芳香族ジアミン化合物は2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミンを含み得る。
【0097】
前記第1ポリアミドセグメントの数平均分子量が100g/mol以上5000g/mol以下、または100g/mol以上3000g/mol以下、または100g/mol以上2500g/mol以下、または100g/mol以上2450g/mol以下であり得る。前記第1ポリアミドセグメントの数平均分子量が5000g/mol超過に増加すると、前記第1ポリアミドセグメントの鎖が過度に長くなることによって、ポリアミド樹脂の結晶性が増加し得、そのため高いヘイズ値を有して透明性を確保しにくいこともある。前記第1ポリアミドセグメントの数平均分子量は、測定する方法の例が限定されるものではないが、例えば、SAXS(Small-agle X-ray scattering)分析により確認することができる。
【0098】
前記第1ポリアミドセグメントは、下記化学式5で表される。
【0099】
[化学式5]
【化4】
【0100】
前記化学式5において、Arは置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、aは1~5の整数である。前記化学式5において、aが1である場合、前記化学式5は前記化学式1で表される繰り返し単位であり得る。前記化学式5において、aが2~5である場合、前記化学式5は前記化学式1で表される繰り返し単位からなるブロックであり得る。前記化学式5において、Arに対する説明は前記化学式1で上述した内容を含む。
【0101】
前記ポリアミド樹脂に含有されたすべての繰り返し単位を基準として、前記化学式1で表される繰り返し単位の比率が40モル%~95モル%、または50モル%~95モル%、または60モル%~95モル%、または70モル%~95モル%、または50モル%~90モル%、または50モル%~85モル%、または60モル%~85モル%、または70モル%~85モル%、または80モル%~85モル%、または82モル%~85モル%であり得る。
【0102】
このように、前記化学式1で表される繰り返し単位が上述した含有量で含有されたポリアミド樹脂は十分な水準の分子量を確保して優れた機械的物性を確保することができる。
【0103】
また、前記ポリアミド樹脂は、前記化学式1で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第1ポリアミドセグメント以外に、下記化学式2で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第2ポリアミドセグメントをさらに含み得る。
【0104】
前記化学式2で表される繰り返し単位は1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位、または1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来した繰り返し単位、またはこれらの混合物を含み得る。
【0105】
[化学式2]
【化5】
【0106】
前記化学式2において、Arは置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基である。
【0107】
前記化学式2において、Arはアルキル基、ハロアルキル基、およびアミノ基からなる群より選ばれた1種以上の置換基で置換された炭素数6~20のアリーレン基であり、より好ましくは2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニレン基であり得る。
【0108】
より具体的には、前記化学式2において、Arは芳香族ジアミン単量体から誘導された2価の有機官能基であり得、前記芳香族ジアミン単量体の具体的な例としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。より好ましくは、前記芳香族ジアミン単量体は2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)または2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)であり得る。
【0109】
前記第2ポリアミドセグメントは、前記化学式2で表される繰り返し単位、または前記化学式2で表される繰り返し単位からなるブロックを含み得る。
【0110】
より具体的には、前記化学式2で表される繰り返し単位は、下記化学式2-1で表される繰り返し単位;または下記化学式2-2で表される繰り返し単位;中1種の繰り返し単位を含み得る。
【0111】
[化学式2-1]
【化6】
【0112】
[化学式2-2]
【化7】
【0113】
前記化学式2-1または2-2において、Arは置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基である。Arに関する詳しい説明は前記化学式2で上述した内容を含む。
【0114】
前記化学式2-1で表される繰り返し単位は、1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位、具体的にはイソフタロイルクロリドと芳香族ジアミン単量体のアミド化反応で形成された繰り返し単位であり、前記化学式2-2で表される繰り返し単位は1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位、具体的にはフタロイルクロリドと芳香族ジアミン単量体のアミド化反応で形成された繰り返し単位である。
【0115】
前記1,2-芳香族ジアシル化合物の具体的な例としてはフタロイルクロリド、またはフタル酸が挙げられる。また、前記1,3-芳香族ジアシル化合物の具体的な例としてはイソフタロイルクロリドまたはイソフタル酸が挙げられる。前記芳香族ジアミン単量体の例としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、p-キシリレンジアミン(p-xylylenediamine)および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上が挙げられる。
【0116】
好ましくは前記1,2-芳香族ジアシル化合物はフタロイルクロリド、またはフタル酸を含み、前記1,3-芳香族ジアシル化合物はイソフタロイルクロリドまたはイソフタル酸を含み、前記芳香族ジアミン化合物は2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミンを含み得る。
【0117】
前記化学式2-1で表される繰り返し単位の具体的な例としては、下記化学式2-4で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0118】
[化学式2-4]
【化8】
【0119】
前記化学式2-2で表される繰り返し単位の具体的な例としては、下記化学式2-5で表される繰り返し単位が挙げられる。
【0120】
[化学式2-5]
【化9】
【0121】
一方、前記第2ポリアミドセグメントは、下記化学式6で表される。
【0122】
[化学式6]
【化10】
【0123】
前記化学式6において、Arは置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、bは1~3、または1~2の整数である。前記化学式6において、bが1である場合、前記化学式6は前記化学式2で表される繰り返し単位であり得る。前記化学式6において、bが2~3である場合、前記化学式6は前記化学式2で表される繰り返し単位からなるブロックであり得る。
【0124】
前記化学式2で表される繰り返し単位は、イソフタロイルクロリド、イソフタル酸またはフタロイルクロリド、フタル酸と芳香族ジアミン単量体のアミド化反応で形成された繰り返し単位であり、曲がった分子構造によって、高分子内でチェーンパッキングと配列(Align)を妨げる性格を有しており、ポリアミド樹脂に無定形領域を増加させ、ポリアミドフィルムの光学的物性および耐折強さを向上させることができる。また、前記化学式1で表される繰り返し単位とともにポリアミド樹脂に含まれることによって、ポリアミド樹脂の分子量を増加させることができる。
【0125】
前記ポリアミド樹脂に含有されたすべての繰り返し単位を基準として、前記化学式2で表される繰り返し単位の比率が5モル%~60モル%、または5モル%~50モル%、または5モル%~40モル%、または5モル%~30モル%、または10モル%~50モル%、または15モル%~50モル%、または15モル%~40モル%、または15モル%~30モル%、または15モル%~20モル%、または15モル%~18モル%であり得る。
【0126】
このように、前記化学式2で表される繰り返し単位が上述した含有量で含有されたポリアミド樹脂は前記化学式1で表される特定繰り返し単位のみからなる鎖の長さ成長を阻害し、樹脂の結晶性を低くすることができ、そのため低いヘイズ値を有して優れた透明性を確保することができる。
【0127】
より具体的には、前記ポリアミド樹脂に含有されたすべての繰り返し単位を基準として、前記化学式1で表される繰り返し単位の含有量が60モル%~95モル%、または70モル%~95モル%、または50モル%~90モル%、または50モル%~85モル%、または60モル%~85モル%、または70モル%~85モル%、または80モル%~85モル%、または82モル%~85モル%であり、前記化学式2で表される繰り返し単位の含有量が5モル%~40モル%、または5モル%~30モル%、または10モル%~50モル%、または15モル%~50モル%、または15モル%~40モル%、または15モル%~30モル%、または15モル%~20モル%、または15モル%~18モル%であり得る。
【0128】
すなわち、前記ポリアミド樹脂は前記化学式1で表される繰り返し単位のモル含有量を高めて、化学式1で表される繰り返し単位の線状分子構造による高分子内でチェーンパッキングと配列(Align)によるポリアミドフィルムの表面硬度および機械的物性の向上効果を最大化させながらも、化学式2で表される繰り返し単位が相対的に少ないモル含有量にもかかわらず前記化学式1で表される特定繰り返し単位のみからなる鎖の長さ成長を阻害し、樹脂の結晶性を低くすることができ、そのため低いヘイズ値を有して優れた透明性を確保することができる。
【0129】
一方、前記第1ポリアミドセグメントおよび第2ポリアミドセグメントは、下記化学式3で表される交差繰り返し単位を含む主鎖を形成することができる
【0130】
[化学式3]
【化11】
【0131】
前記化学式3において、Aは前記第1ポリアミドセグメントであり、Bは前記第2ポリアミドセグメントである。
【0132】
具体的には、前記ポリアミド樹脂の主鎖は前記化学式3のように、1,4-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位を含む第1ポリアミドセグメントと1,3-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位、または1,2-芳香族ジアシル化合物と芳香族ジアミン化合物の結合物から由来したアミド繰り返し単位を含む第2ポリアミドセグメントが交互に(alternatively)重合鎖をなすことができる。すなわち、前記第2ポリアミドセグメントが第1ポリアミドセグメントの間に位置し、第1ポリアミドセグメントの長さ成長を抑制する役割をすることができる。
【0133】
このように、前記第1ポリアミドセグメントの長さ成長が抑制されると、結晶特性が減少し、ポリアミド樹脂のヘイズ値を顕著に低くできるために、優れた透明性の実現が可能である。
【0134】
一方、前記ポリアミド樹脂の主鎖が前記化学式3のように、テレフタロイルクロリド、またはテレフタル酸から誘導された第1ポリアミドセグメントとイソフタロイルクロリド、イソフタル酸またはフタロイルクロリド、フタル酸から誘導された第2ポリアミドセグメントが交互に(alternatively)重合鎖をなすのは、後述する本発明のポリアミド樹脂製造方法上溶融混練複合体の形成によるものと見られる。
【0135】
より具体的な例を説明すれば、前記化学式3で表される交差繰り返し単位は、下記化学式4で表される繰り返し単位であり得る。
【0136】
[化学式4]
【化12】
【0137】
前記化学式4において、ArおよびArはそれぞれ独立して置換または非置換された炭素数6~20のアリーレン基、または置換または非置換された炭素数2~20のヘテロアリーレン基であり、a1およびa2は互いに同一または相異し、それぞれ独立して1~10、または1~5の整数であり、b1およびb2は互いに同一または相異し、それぞれ独立して1~5、または1~3の整数である。
【0138】
すなわち、前記ポリアミド樹脂は、前記化学式1で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第1ポリアミドセグメント;および前記化学式2で表される繰り返し単位、またはそれからなるブロックを含む第2ポリアミドセグメント;を含み、前記第1ポリアミドセグメントおよび第2ポリアミドセグメントは、前記化学式3で表される交差繰り返し単位を含む主鎖を形成することができる。
【0139】
具体的には、前記ポリアミド樹脂の主鎖はテレフタロイルクロリドまたはテレフタル酸から誘導された結晶性の高分子ブロック(以下、第1ポリアミドセグメント)とイソフタロイルクロリド、イソフタル酸またはフタロイルクロリド、フタル酸から誘導された非結晶性の高分子ブロック(第2ポリアミドセグメント)が交互に(alternatively)重合鎖をなすことができる。すなわち、前記第2ポリアミドセグメントが第1ポリアミドセグメントの間に位置し、第1ポリアミドセグメントの長さ成長を抑制する役割をすることができる。
【0140】
この時、前記第1ポリアミドセグメントは、ポリアミド樹脂の個別結晶に含まれて結晶特性を発現し、前記第2ポリアミドセグメントは前記個別結晶の間には無定形の高分子鎖に含まれて非晶質の特性を発現する。
【0141】
したがって、前記第1ポリアミドセグメントの長さ成長が抑制されると、前記ポリアミド樹脂は第1ポリアミドセグメントの結晶特性が減少し、ヘイズ値を顕著に低くできるために、優れた透明性の実現が可能である。
【0142】
逆に、前記第2ポリアミドセグメントによる第1ポリアミドセグメントの長さ成長の抑制剤効果が減少し、第1ポリアミドセグメントの長さ成長が過度に進行される場合、前記ポリアミド樹脂は第1ポリアミドセグメントの結晶特性が増加することにより、ヘイズ値を急激に増加して透明性が不良になる。
【0143】
その一方で前記ポリアミド樹脂は、十分な水準の重量平均分子量を有することができ、これにより十分な水準の機械的物性も達成することができる。
【0144】
前記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が330000g/mol以上、420000g/mol以上、または500000g/mol以上、330000g/mol~1000000g/mol、または420000g/mol~1000000g/mol、または500000g/mol~1000000g/mol、または420000g/mol~800000g/mol、または420000g/mol~600000g/mol、または450000g/mol~550000g/molであり得る。
【0145】
前記ポリアミド樹脂の重量平均分子量が高く測定されることは、後述する本発明の他の実施形態のポリアミド樹脂製造方法上溶融混練複合体の形成によるものと見られる。前記ポリアミド樹脂は重量平均分子量が330000g/mol未満に減少すると、屈曲性、鉛筆硬度などの機械的物性が減少する問題がある。
【0146】
前記ポリアミド樹脂の分子量分布が3.0以下、または2.9以下、または2.8以下、または1.5~3.0、または1.5~2.9、または1.6~2.8、または1.8~2.8であり得る。このような狭い範囲の分子量分布により前記ポリアミド樹脂は屈曲特性または硬度特性のような機械的物性が向上することができる。前記ポリアミド樹脂の分子量分布が3.0超過で過度に広くなると、上述した機械的物性を十分な水準まで向上させにくい限界がある。
【0147】
前記ポリアミド樹脂のASTM D1003によって測定したヘイズが3.0%以下、または1.5%以下、または1.00%以下、または0.85%以下、または0.10%~3.0%、または0.10%~1.5%、または0.10%~1.00%、または0.50%~1.00%、または0.80%~1.00%、または0.81%~0.97%であり得る。前記ポリアミド樹脂のASTM D1003によって測定したヘイズが3.0%超過に増加すると、不透明性が増大して十分な水準の透明性を確保し難い。
【0148】
好ましくは、前記ポリアミド樹脂は、重量平均分子量が330000g/mol以上、または420000g/mol以上、または500000g/mol以上、または330000g/mol~1000000g/mol、または420000g/mol~1000000g/mol、または500000g/mol~1000000g/mol、または420000g/mol~800000g/mol、または420000g/mol~600000g/mol、または450000g/mol~550000g/molを満たし、同時にASTM D1003によって測定したヘイズが.0%以下、または1.5%以下、1.00%以下、または0.85%以下、または0.10%~3.0%、または0.10%~1.5%、または0.10%~1.00%、または0.50%~1.00%、または0.80%~1.00%、または0.81%~0.97%であり得る。
【0149】
前記ポリアミド樹脂の相対粘度(ASTM D 2196基準に準拠して測定)が45000cps以上、または60000cps以上、または45000cps~500000cps、または60000cps~500000cps、または70000cps~400000cps、または80000cps~300000cps、または100000cps~200000cps、または110000cps~174000cpsであり得る。前記ポリアミド樹脂の相対粘度(ASTM D 2196基準に準拠して測定)が45000cps未満に減少すると、前記ポリアミド樹脂を利用したフィルム成形工程で、成形加工性が減少して成形工程の効率性が減少する限界がある。
【0150】
前記ポリアミド樹脂を製造する方法の例としては、下記化学式7で表される化合物および下記化学式8で表される化合物を溶融混練させ、前記溶融混練物を凝固させて複合体を形成する段階;および前記複合体を芳香族ジアミン単量体と反応させる段階;を含む、ポリアミド樹脂の製造方法を用いることができる。
【0151】
[化学式7]
【化13】
【0152】
[化学式8]
【化14】
【0153】
前記化学式7または8において、Xはハロゲン、または水酸化基である。
【0154】
本発明者らは前記ポリアミド樹脂の製造方法のように、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を融点以上の温度で混合すると、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の溶融により均一に混合された単量体の複合体を製造することができ、これを芳香族ジアミン単量体と反応させることによって、前記化学式7で表される化合物から由来したアミド繰り返し単位、またはそれからなるブロックと、前記化学式8で表される化合物から由来したアミド繰り返し単位、またはそれからなるブロックが交互に(alternatively)重合できることを実験により確認して発明を完成した。
【0155】
すなわち、前記ポリアミド樹脂製造方法によって、前記一実施形態のポリアミド樹脂が得られる。
【0156】
具体的には、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物それぞれは、化学構造的な差によって、溶解度および反応性において相異する様相を現わすので、これらを同時に投入しても前記化学式7で表される化合物から由来したアミド繰り返し単位が圧倒的に優勢に形成されることにより長さが長いブロックを形成してポリアミド樹脂の結晶性が増加し、透明性を確保することが難しくなる限界があった。
【0157】
そこで、前記ポリアミド樹脂製造方法では前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を単に物理的に混合せず、それぞれの融点より高い温度での溶融混練による複合体の形成により、それぞれの単量体が芳香族ジアミン単量体と相対的に均等に反応するように誘導した。
【0158】
一方、既存のポリアミド樹脂合成時には、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を溶媒に溶解させた後溶液状態で芳香族ジアミン単量体と反応させることによって、水分による変質や、溶媒との混成により最終合成されるポリアミド樹脂の分子量が減少する限界があり、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の溶解度差によって前記化学式7で表される化合物から由来したアミド繰り返し単位が圧倒的に優勢に形成されることにより長さが長いブロックを形成してポリアミド樹脂の結晶性が増加し、透明性を確保することが難しくなる限界があった。
【0159】
そこで、前記ポリアミド樹脂製造方法では前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の溶融混練で得られる複合体をそれぞれの融点より低い温度(零下10℃~30℃、または0℃~30℃、または10℃~30℃)での冷却による固形粉末形態で有機溶媒に溶解した芳香族ジアミン単量体と反応させることによって、最終合成されるポリアミド樹脂の分子量が向上することを確認し、これにより優れた機械的物性が確保されることを実験により確認した。
【0160】
具体的には、前記ポリアミド樹脂の製造方法は、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を溶融混練させ、前記溶融混練物を凝固させて複合体を形成する段階を含み得る。
【0161】
前記化学式7で表される化合物において、Xはハロゲン、または水酸化基である。好ましくは前記化学式7において、Xは塩素である。前記化学式7で表される化合物の具体的な例としてはテレフタロイルクロリド、またはテレフタル酸が挙げられる。
【0162】
前記化学式7で表される化合物は、芳香族ジアミン単量体のアミド化反応で前記化学式1で表される繰り返し単位を形成することができ、線状分子構造によって、高分子内でチェーンパッキングと配列(Align)が一定に維持され得、ポリアミドフィルムの表面硬度および機械的物性を向上させることができる。
【0163】
前記化学式8で表される化合物において、Xはハロゲン、または水酸化基である。好ましくは前記化学式8において、Xは塩素である。前記化学式8で表される化合物の具体的な例としてはフタロイルクロリド、フタル酸、イソフタロイルクロリド、またはイソフタル酸が挙げられる。
【0164】
前記化学式8で表される化合物は、芳香族ジアミン単量体のアミド化反応で前記化学式2で表される繰り返し単位を形成することができ、曲がった分子構造によって、高分子内でチェーンパッキングと配列(Align)を妨げる性格を有しており、ポリアミド樹脂に無定形領域を増加させ、ポリアミドフィルムの光学的物性および耐折強さを向上させることができる。また、前記化学式8で表される化合物から由来した前記化学式2で表される繰り返し単位が化学式1で表される繰り返し単位とともにポリアミド樹脂に含まれることによって、ポリアミド樹脂の分子量を増加させることができる。
【0165】
一方、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を溶融混練させ、前記溶融混練物を凝固させて複合体を形成する段階で、前記溶融混練は前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を融点以上の温度で混合することを意味する。
【0166】
このように、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を単に物理的に混合せず、それぞれの融点より高い温度での溶融混練による複合体の形成により、それぞれの単量体が芳香族ジアミン単量体と相対的に均等に反応するように誘導することができる。
【0167】
そのため、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の溶解度差によって前記化学式7で表される化合物から由来したアミド繰り返し単位が圧倒的に優勢に形成されることにより長さが長いブロックを形成してポリアミド樹脂の結晶性が増加し、透明性を確保することが難しくなる限界を克服し、前記一実施形態のように、第1ポリアミドセグメントおよび第2ポリアミドセグメントが交互に(alternatively)前記化学式3で表される交差繰り返し単位を含む主鎖を形成できるようになる。
【0168】
この時、前記化学式7で表される化合物100重量部に対し、前記化学式8で表される化合物が5重量部~60重量部、または5重量部~50重量部、または5重量部~25重量部、または10重量部~30重量部、または15重量部~25重量部で混合され得る。これにより、透過度およびclarityが増加する技術的効果が具現されることができる。前記化学式7で表される化合物100重量部に対し、前記化学式8で表される化合物が5重量部未満に過度に少なく混合される場合、不透明になり、Hazenessが増加する技術的問題が発生し、前記化学式7で表される化合物100重量部に対し、前記化学式8で表される化合物が60重量部超過で過度に過量混合される場合、物理的な特性(硬度、引張強度など)が減少する技術的問題が発生し得る。
【0169】
また、前記溶融混練物を凝固させて複合体を形成するに当たって、前記凝固とは溶融状態の溶融混練物を融点以下の温度に冷却させて固体化させる物理的変化を意味し、これにより形成される複合体は固相であり得る。より好ましくは前記複合体は追加的な粉砕工程等により得られる固体粉末であり得る。
【0170】
一方、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を溶融混練させ、前記溶融混練物を凝固させて複合体を形成する段階は、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を50℃以上の温度で混合させる段階;および前記混合段階の結果物を冷却させる段階;を含み得る。
【0171】
前記テレフタロイルクロリド(Terephthaloyl chloride)は81.3℃~83℃の融点を有し、前記イソフタロイルクロリド(Isophthaloyl chloride)は43℃~44℃の融点を有し、前記フタロイルクロリド(Phthaloyl chloride)は6℃~12℃の融点を有し得る。そのため、これらを50℃以上、または90℃以上、または50℃~120℃、または90℃~120℃、または95℃~110℃、または100℃~110℃の温度で混合する場合、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物すべての融点より高い温度条件であるため溶融混練が行われることができる。
【0172】
前記混合段階の結果物を冷却させる段階では、前記溶融混練段階の結果物を5℃以下、または零下10℃~5℃、または零下5℃~5℃に放置することによって、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物すべての融点より低い温度条件であるため冷却によってより均一な固形粉末を収得することができる。
【0173】
一方、前記混合段階の結果物を冷却させる段階以後に、前記冷却段階の結果物を粉砕させる段階をさらに含み得る。前記粉砕段階により、固形分の複合体を粉末形態に製造することができ、粉砕段階後に得られる粉末は平均粒径が1mm~10mmであり得る。
【0174】
このような粒径に粉砕するために用いられる粉砕機は具体的には、ピンミル(pin mill)、ハンマーミル(hammer mill)、スクリューミル(screw mill)、ロールミル(roll mill)、ディスクミル(disc mill)、ジョグミル(jog mill)またはシーブ(sieve)、jaw crusherなどを用いることができるが、上述した例に限定されるものではない。
【0175】
このように、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の融解合剤を融点より低い温度での冷却による固形分、具体的には固形粉末形態で芳香族ジアミン単量体と反応させることによって、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の水分による変質や、溶媒との混成を最小化して最終合成されるポリアミド樹脂の分子量を向上させることによって、ポリアミド樹脂の優れた機械的物性が確保されることができる。
【0176】
また、前記ポリアミド樹脂の製造方法は、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物を溶融混練させ、前記溶融混練物を凝固させて複合体を形成する段階の後、前記複合体を芳香族ジアミン単量体と反応させる段階を含み得る。
【0177】
前記複合体を芳香族ジアミン単量体と反応させる段階での反応は、零下25℃~25℃の温度条件、または零下25℃~0℃の温度条件で、不活性気体の雰囲気下に行われ得る。
【0178】
前記芳香族ジアミン単量体は、具体的には、例えば2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、4,4'-ジアミノジフェニルスルホン(4,4'-diaminodiphenyl sulfone)、4,4'-(9-フルオレニリデン)ジアニリン(4,4'-(9-fluorenylidene)dianiline)、ビス(4-(4-アミノフェノキシ)フェニル)スルホン(bis(4-(4-aminophenoxy)phenyl)sulfone)、2,2',5,5'-テトラクロロベンジジン(2,2',5,5'-tetrachlorobenzidine)、2,7-ジアミノフルオレン(2,7-diaminofluorene)、4,4-ジアミノオクタフルオロビフェニル(4,4-diaminooctafluorobiphenyl)、m-フェニレンジアミン(m-phenylenediamine)、p-フェニレンジアミン(p-phenylenediamine)、4,4'-オキシジアニリン(4,4'-oxydianiline)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノビフェニル(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobiphenyl)、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン(2,2-bis[4-(4-aminophenoxy)phenyl]propane)、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン(1,3-bis(4-aminophenoxy)benzene)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、p-キシリレンジアミン(p-xylylenediamine)および4,4'-ジアミノベンズアニリド(4,4'-diaminobenzanilide)からなる群より選ばれた1種以上を含み得る。
【0179】
より好ましくは、前記芳香族ジアミン単量体としては、2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)、2,2'-ジメチル-4,4'-ジアミノベンジジン(2,2'-dimethyl-4,4'-diaminobenzidine)、m-キシリレンジアミン(m-xylylenediamine)、またはp-キシリレンジアミン(p-xylylenediamine)を使用することができる。
【0180】
より具体的には、前記複合体を芳香族ジアミン単量体と反応させる段階は、前記芳香族ジアミン単量体を有機溶媒に溶解させてジアミン溶液を製造する段階;および前記ジアミン溶液に複合体粉末を添加する段階;を含み得る。
【0181】
前記芳香族ジアミン単量体を有機溶媒に溶解させてジアミン溶液を製造する段階で、前記ジアミン溶液に含まれた芳香族ジアミン単量体は有機溶媒に溶解した状態で存在することができる。前記溶媒の例は大きく限定されるものではないが、例えば、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、テトラヒドロフラン、クロロホルム、ガンマ-ブチロラクトン、乳酸エチル、メチル-3-メトキシプロピオネート、メチルイソブチルケトン、トルエン、キシレン、メタノール、エタノールなど一般的な汎用の有機溶媒が制限なしに使用され得る。
【0182】
前記ジアミン溶液に複合体粉末を添加する段階で、前記複合体粉末はジアミン溶液内に溶解した芳香族ジアミン単量体と反応する。そのため、前記化学式7で表される化合物および前記化学式8で表される化合物の水分による変質や、溶媒との混成を最小化して最終合成されるポリアミド樹脂の分子量を向上させることによって、ポリアミド樹脂の優れた機械的物性が確保されることができる。
【0183】
前記複合体粉末は、前記混合段階の結果物を冷却させる段階の後、前記冷却段階の結果物を粉砕させる段階により、固形分の複合体を粉末形態に製造することができ、粉砕段階後に得られる粉末は平均粒径が1mm~10mmであり得る。
【0184】
一方、前記紫外線安定剤は、UV安定性のために添加される物質として、市販されている多様な物質であるBASF社のTinuvin 144、Tinuvin 292、Tinuvin 327、Tinuvin 329、Tinuvin 5050、Tinuvin 5151と、MIWON商社のLOWILITE 22、LOWILITE 26、LOWILITE 55、LOWILITE 62、LOWILITE 94等を使用することができ、本発明はこれに限定されるものではない。
【0185】
ただし、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムでは紫外線安定剤としてトリアジン(triazine)系UV吸収剤、トリアゾール(triazole)系UV吸収剤、HALS(hindered amine light stabilizer)系UV吸収剤などを1種のみ使用しても良くて2種以上をともに使用しても良い。
【0186】
前記トリアジン系UV吸収剤としては、商用化されたTinuvin 360、Tinuvin 1577(Ciba Chemicals)、Cyasorb UV-1164,Cyasorb UV-2908,Cyasorb UV-3346(Cytec)、Tinuvin T1600(BASF)、LA-F70(ADEKA)などが挙げられ、前記トリアゾール系UV吸収剤としてはTinuvin 329、Tinuvin 384、Tinuvin 1130,Cyasorb UV-2337,Cyasorb UV-5411,everlight chemical社のEversorb 109などが挙げられ、前記HALS系UV吸収剤としてはCyasorb UV-3853等を使用することができる。
【0187】
特に、トリアゾール系UV吸収剤を使用する場合、優れた耐学性だけでなく安定した光学特性を実現することができ、前記トリアゾール系UV吸収剤は、下記化学式11で表される化合物を含み得る。
【0188】
[化学式11]
【化15】
【0189】
前記化学式11において、RおよびRはそれぞれ独立し、水素、または炭素数1~20のアルキル基である。より好ましくは前記化学式1においてRが2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル(2,4,4-trimethylpentan-2-yl)であり、Rが水素であるBASF社のTinuvin 329が挙げられる。
【0190】
前記紫外線安定剤は前記ポリアミド樹脂100重量部に対して0.1重量部~20重量部程度、または1重量部~10重量部の含有量で投入され得る。前記紫外線安定剤の含有量が前記範囲を満たすとき、フィルムの光学物性と紫外線の遮蔽効果がすべて優れるからである。
【0191】
前記紫外線安定剤が前記ポリアミド樹脂に対して過度に少なく投入される場合、紫外線安定剤による紫外線耐学性が十分に実現されにくく、前記紫外線安定剤が前記ポリアミド樹脂に対して過度に過量に投入される場合、前記ポリアミド樹脂フィルムの初期黄色指数が基準値以上に高まってフィルムの透明度が減少することができる。
【0192】
II.樹脂積層体
【0193】
発明のまた他の実施形態によれば、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムを含む基材;および前記基材の少なくとも一面に形成されるハードコート層;を含む樹脂積層体が提供されることができる。
【0194】
前記基材は、前記一実施形態のポリアミド樹脂フィルムを含むこともでき、前記ポリアミド樹脂フィルムに関する内容は前記一実施形態で上述した内容をすべて含み得る。
【0195】
前記基材の少なくとも一面にはハードコート層が形成され得る。前記基材の一面、または両面すべてにハードコート層が形成され得る。前記基材の一面にのみハードコート層が形成される場合、前記基材の反対面にはポリイミド系、ポリカーボネート系、ポリエステル系、ポリアルキル(メタ)アクリレート系、ポリオレフィン系およびポリサイクリックオレフィン系高分子からなる群より選ばれた1種以上の高分子を含むポリアミド樹脂フィルムが形成されることができる。
【0196】
前記ハードコート層は、0.1μm~100μmの厚さを有し得る。
【0197】
前記ハードコート層は、ハードコート分野で知られている材質であれば大きな制限なく使用することができ、例えば、前記ハードコート層は光硬化性樹脂のバインダ樹脂;および前記バインダ樹脂に分散した無機粒子または有機粒子を含み得る。
【0198】
前記ハードコート層に含まれる光硬化型樹脂は、紫外線などの光が照射されると重合反応を起こすことができる光硬化型化合物の重合体として、当業界で通常のものであり得る。ただし、好ましくは、前記光硬化型化合物は、多官能性(メタ)アクリレート系単量体またはオリゴマーであり得、この時、(メタ)アクリレート系官能基の数は2~10、または2~8、または2~7であるものが、ハードコート層の物性確保の側面から有利である。または前記光硬化型化合物は、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、およびトリメチロールプロパンポリエトキシトリ(メタ)アクリレートからなる群より選ばれる1種以上であり得る。
【0199】
前記無機粒子は、例えばシリカ、アルミニウム、チタン、ジンクなどの金属原子、またはその酸化物、窒化物などであり得、それぞれ独立してシリカ微粒子、アルミニウムオキシド粒子、チタニウムオキシド粒子、またはジンクオキシド粒子などを使用することができる。
【0200】
前記無機粒子は、100nm以下、または5~100nmの平均半径を有し得る。前記有機粒子の種類もまた限定されるものではなく、例えば10nm~100μmの平均粒径を有する高分子粒子を使用することができる。
【0201】
前記樹脂積層体はディスプレイ装置の基板またはカバーウィンドウなどに使用可能であり、高い光透過性および低いヘイズ特性と共に高い柔軟性および曲げ耐久性を有してフレキシブルディスプレイ装置の基板またはカバーウィンドウに使用可能である。すなわち、前記樹脂積層体が含まれたディスプレイ装置、または前記樹脂積層体が含まれたフレキシブルディスプレイ装置が具現されることができる。
【発明の効果】
【0202】
本発明によれば、長期間の紫外線照射に対する耐学性が向上し、かつ適正水準以上の機械的物性と優れた透明性を確保することができるポリアミド樹脂フィルムおよびそれを用いた樹脂積層体が提供されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0203】
図1】実施例1の(1)で得たポリアミド樹脂の13C-NMRスペクトルを示す図である。
図2】実施例2の(1)で得たポリアミド樹脂の13C-NMRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0204】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するだけであり、本発明の内容は下記の実施例によって限定されない。
【0205】
<製造例:アシルクロリド複合体の製造>
【0206】
製造例1
【0207】
攪拌機、窒素注入器、滴下漏斗、および温度調整器が備えられた1000mLの四口丸底フラスコ(反応器)に、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC;融点:83℃)569.5g(2.803モル)とイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC;融点44℃)100.5g(0.495モル)を添加し、100℃で3時間の間溶融混練させた後、0℃で12時間の間冷却させてアシルクロリド(具体的には、テレフタロイルクロリドおよびイソフタロイルクロリド)の複合体を製造した。
【0208】
その後、前記アシルクロリド複合体をjaw crusherで粉砕して平均粒径が5mmである粉末で製造した。
【0209】
製造例2
【0210】
テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC;融点:83℃)549.4g(2.704モル)とイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC;融点44℃)120.6g(0.594モル)を添加したことを除いては、前記製造例1と同様の方法でアシルクロリド複合体粉末を製造した。
【0211】
<実施例:ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂フィルムの製造>
【0212】
実施例1
【0213】
(1)ポリアミド樹脂
【0214】
攪拌機、窒素注入器、滴下漏斗、および温度調整器が備えられた500mLの四口丸底フラスコ(反応器)に窒素をゆっくり吹き込みながらN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide,DMAc)262gを満たし、反応器の温度を0℃に合わせた後2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)14.153g(0.0442モル)を溶解させた。
【0215】
ここに、前記製造例1で得られたアシルクロリド複合体粉末8.972g(0.0442モル)を添加しながら攪拌し、0℃条件で12時間の間アミド形成反応を行った。
【0216】
反応を完了した後、N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide,DMAc)を投入して固形分含有量を5%以下になるように希釈し、これを1Lのメタノールで沈殿させて、沈殿した固形分を濾過した後、100℃の真空状態で6時間以上乾燥して固形分形態のポリアミド樹脂を製造した。
【0217】
下記図1に記載された13C-NMRにより、前記実施例1の(1)で得たポリアミド樹脂にはテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC)と2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)のアミド反応で得られる第1繰り返し単位85モル%、そしてイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC)と2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)のアミド反応で得られる第2繰り返し単位15モル%が含有されていることを確認した。
【0218】
(2)ポリアミド樹脂フィルム
【0219】
前記実施例1の(1)で得たポリアミド樹脂と、UV遮断剤としてTinuvin 329を5phr(ポリアミド樹脂100重量部に対して5重量部)でN,N-メチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide)に溶かして約10%(w/V)の高分子溶液を製造した。
【0220】
前記高分子溶液をポリイミド基材フィルム(UPILEX-75s、UBE社)上に塗布し、フィルムアプリケーターを利用して高分子溶液の厚さを均一に調節した。
【0221】
その後、80℃マチスオーブンで15分間乾燥した後、窒素を流しながら250℃で30分間硬化させた後、前記基材フィルムから剥離し、ポリアミド樹脂フィルム(厚さ:50μm)を得た。
【0222】
実施例2
【0223】
(1)ポリアミド樹脂
【0224】
前記製造例1で得られたアシルクロリド複合体粉末の代わりに前記製造例2で得られたアシルクロリド複合体粉末を使用したことを除いては、前記実施例1の(1)と同様の方法でポリアミド樹脂を製造した。
【0225】
下記図2に記載された13C-NMRにより、前記実施例2の(1)で得たポリアミド樹脂にはテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC)と2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)のアミド反応で得られる第1繰り返し単位82モル%、そしてイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC)と2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)のアミド反応で得られる第2繰り返し単位18モル%が含有されていることを確認した。
【0226】
(2)ポリアミド樹脂フィルム
【0227】
前記実施例1の(1)で得たポリアミド樹脂の代わりに、前記実施例2の(1)で得たポリアミド樹脂を使用したことを除いては、前記実施例1の(2)と同様の方法でポリアミド樹脂フィルム(厚さ:50μm)を製造した。
【0228】
<比較例:ポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂フィルムの製造>
【0229】
比較例1
【0230】
前記UV遮断剤としてTinuvin 329を投入しないことを除いては、前記実施例1と同様の方法でポリアミド樹脂およびポリアミド樹脂フィルム(厚さ:49μm)を製造した。
【0231】
<参考例:ポリアミド樹脂の製造>
【0232】
参考例1
【0233】
前記製造例1で得られたアシルクロリド複合体粉末の代わりに、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC)7.358g(0.0362モル)およびイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC)1.615g(0.0080モル)を同時に添加してアミド形成反応を行ったことを除いては、前記実施例1の(1)と同様の方法でポリアミド樹脂を製造した。
【0234】
参考例2
【0235】
前記製造例1で得られたアシルクロリド複合体粉末の代わりに、テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC)7.358g(0.0362モル)を先に添加した後、約5分間隔を置いて、順次にイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC)1.615g(0.0080モル)を添加してアミド形成反応を行ったことを除いては、前記実施例1の(1)と同様の方法でポリアミド樹脂を製造した。
【0236】
参考例3
【0237】
前記製造例1で得られたアシルクロリド複合体粉末の代わりに、イソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC)1.615g(0.0080モル)を先に添加した後、約5分間隔を置いて、順次にテレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC)7.358g(0.0362モル)を添加してアミド形成反応を行ったことを除いては、前記実施例1の(1)と同様の方法でポリアミド樹脂を製造した。
【0238】
参考例4
【0239】
攪拌機、窒素注入器、滴下漏斗、および温度調整器が備えられた500mLの四口丸底フラスコ(反応器)に窒素をゆっくり吹き込みながらN,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide,DMAc)262gを満たし、反応器の温度を0℃に合わせた後テレフタロイルクロリド(terephthaloyl chloride,TPC)7.358g(0.0362モル)およびイソフタロイルクロリド(isophthaloyl chloride,IPC)1.615g(0.0080モル)を溶解させた。
【0240】
ここに、粉末形態の2,2'-ビス(トリフルオロメチル)-4,4'-ビフェニルジアミン(2,2'-bis(trifluoromethyl)-4,4'-biphenyldiamine,TFDB)14.153g(0.0442モル)を添加しながら攪拌し、0℃条件で12時間の間アミド形成反応を行った。
【0241】
反応を完了した後、N,N-ジメチルアセトアミド(N,N-dimethylacetamide,DMAc)を投入して固形分含有量を5%以下になるように希釈し、これを1Lのメタノールで沈殿させて、沈殿した固形分を濾過した後、100℃の真空状態で6時間以上乾燥して固形分形態のポリアミド樹脂を製造した。
【0242】
<実験例1>
【0243】
前記実施例、比較例で得られたポリアミド樹脂フィルムを利用して5cm*5cm大きさの試験片を製造し、前記試験片に対して50℃温度でQ-Lab CorporatioのQUV Accelerated Weathering Testerを利用して40wランプで1.1w/m光量、340nm波長の紫外線を合計10日間照射し、毎日紫外線照射n日目(nは1~10の整数)での明度指数(L)、色座標(a,b)、黄色指数(YI)をShimadzu UV-2600 UV-vis spectrometerを利用して測定した。
【0244】
具体的には、明度指数(L)、色座標(a,b)はそれぞれ固有の色相を表す座標軸の値を意味する。Lは0~100の値を有し、0に近いほど黒い色を示し、100に近いほど白色を示す。aは0を基準として正数(+)と負数(-)の値を有し、正数(+)の場合は赤色を帯びることを意味し、負数(-)の場合は緑色を帯びることを意味する。bは0を基準として正数(+)と負数(-)の値を有し、正数(+)の場合は黄色を帯びることを意味し、負数(-)の場合は青色を帯びることを意味する。
【0245】
前記黄色指数(YI)、明度指数(L)、色座標(a,b)は、Shimadzu UV-2600 UV-vis spectrometerを利用してASTM E313の測定法により測定した。
【0246】
そして、下記数式により紫外線照射n日目(nは1~10の整数)での色差変化率(Eab)を計算して下記表1から表6に示した。
【0247】
[数式]
【0248】
Eab={(L-Ln-1+(a-an-1+(b-bn-11/2
【0249】
n-1は紫外線照射n-1日目(nは1~10の整数)の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、
n-1およびbn-1は紫外線照射n-1日目(nは1~10の整数)の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標であり、
は紫外線照射n日目(nは1~10の整数)の前記ポリアミド樹脂フィルムの明度指数であり、
およびbは紫外線照射n日目(nは1~10の整数)の前記ポリアミド樹脂フィルムの色座標である。
【0250】
実施例1のポリアミド樹脂フィルム
【表1】
【0251】
実施例2のポリアミド樹脂フィルム
【表2】
【0252】
比較例1のポリアミド樹脂フィルム
【表3】
【0253】
前記表1に示すように、実施例1で得られたポリアミド樹脂フィルムの場合、1日目に測定された色差変化率(Eab)が0.52811で低いながらも、黄色指数(YI)が3.86で低く測定されて優れた耐学性を有することが確認された。
【0254】
また、前記表2に示すように、実施例2で得られたポリアミド樹脂フィルムの場合、1日目に測定された色差変化率(Eab)が0.83295で低いながらも、黄色指数(YI)が3.51で低く測定されて優れた耐学性を有することが確認された。
【0255】
反面、前記表3に示すように、比較例1で得られたポリアミド樹脂フィルムの場合、1日目に測定された色差変化率(Eab)が3.13616で実施例に比べて大きく増加し、黄色指数(YI)も7.04で高く測定されて実施例に対して不良な耐学性を有することが確認された。
【0256】
<実験例2>
【0257】
(1)550nmの波長に対して厚さ方向のレターデーション(Rth)
【0258】
厚さ方向のレターデーション(Rth)は、各実施例および各比較例で製造したポリアミド樹脂フィルムから縦76mm、幅52mm、厚さ13μmの試料を製造し、測定装置としてAXOMETRICS社製の商品名「アクソスキャン(AxoScan)」を用い、それぞれの試料の屈折率(上述した屈折率の測定によって求めたフィルムの550nmの光に対する屈折率)の値をインプットした後、温度:25℃、湿度:40%の条件下、波長550nmの光を使用して、厚さ方向のレターデーションを測定した後、求めた厚さ方向のレターデーション測定値(測定装置の自動測定による測定値)を使用して、フィルムの厚さ10μm当たりレターデーション値に換算することによって求め、これを下記表4に記載した。
【0259】
(2)水分吸収率
【0260】
下記数式2により水分吸収率を計算し、これを下記表4に記載した。
【0261】
[数式2]
【0262】
水分吸収率(%)=(W1-W2)*100/W2
【0263】
前記数式2において、W1は前記ポリアミド樹脂フィルムを超純水に24時間含浸して測定した重量であり、W2は前記含浸後に前記ポリアミド樹脂フィルムを150℃で30分間乾燥して測定した重量である。
【0264】
【表4】
【0265】
前記表4を調べれば、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のレターデーション(Rth)が-5853.056nm以上-5264.015以下であり、一般式1による水分吸収率が2.48%以上2.75%以下の物性を満たす実施例のポリアミド樹脂フィルムは水分浸透などが防止され、無色の透明な光学特性と共にフィルム内部の高分子の配向によって機械的強度が向上することができる。これに対して、比較例のポリアミド樹脂フィルムは、未延伸状態で550nmの波長に対して厚さ方向のレターデーション(Rth)が-6883.246nmで、一般式1による水分吸収率が2.45%超過で実施例に比べて不良であることが確認された。
【0266】
<実験例3>
【0267】
前記実施例、比較例で得られたポリアミド樹脂フィルムに対して下記の特性を測定または評価し、その結果を下の表5に示した。
【0268】
(1)厚さ:厚さ測定装備を利用してフィルム厚さを測定した。
【0269】
(2)Haze:COH-400 Spectrophotometer(NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES)を利用してASTM D1003の測定法によりポリアミド樹脂フィルムのヘイズ値を測定した。
【0270】
(3)屈曲性:MITタイプの耐折強さ試験機(folding endurance tester)を利用してポリアミド樹脂フィルムの耐折強さを評価した。具体的には、ポリアミド樹脂フィルムの試験片(1cm*7cm)を耐折強さ試験機にローディングし、試験片の左側と右側で175rpmの速度で135°の角度、0.8mmの曲率半径および250gの荷重で曲げて破断するまで往復曲げ回数(cycle)を測定した。
【0271】
(4)鉛筆硬度:Pencil Hardness Testerを利用してASTM D3363の測定法によりポリアミド樹脂フィルムの鉛筆硬度を測定した。具体的には、前記テスターに多様な硬度の鉛筆を固定して前記ポリアミド樹脂フィルムに引っかいた後、前記ポリアミド樹脂フィルムにきずが発生した程度を肉眼や顕微鏡で観察し、総引っ掻き回数の70%以上引っかかれなかった時、その鉛筆の硬度に該当する値を前記ポリアミド樹脂フィルムの鉛筆硬度と評価した。
【0272】
前記鉛筆硬度はB等級、F等級、H等級順で硬度が増加し、同じ等級内では数字が大きくなるほど硬度が増加する。等級内では数字が大きくなるほど硬度が増加する。
【0273】
【表5】
【0274】
前記表5を調べれば、前記実施例のポリアミド樹脂フィルムは、概ね50μmの厚さで0.45%~0.76%の低いヘイズ値により優れた透明性を確保できることを確認し、3H~4H等級の高い鉛筆硬度および10225~13521の往復曲げ回数(cycle)で破断される耐折強さにより優れた機械的物性(耐スクラッチ性および耐折強さ)が確保されることを確認した。
【0275】
<実験例4>
【0276】
前記実施例、参考例で得られたポリアミド樹脂またはそれから得られるフィルムに対して下記の特性を測定または評価し、その結果を下記の表6に示した。
【0277】
(1)厚さ:厚さ測定装備を利用してフィルム厚さを測定した。
【0278】
(2)Haze:COH-400 Spectrophotometer(NIPPON DENSHOKU INDUSTRIES)を利用してASTM D1003の測定法によりポリアミド樹脂から得られるフィルムのヘイズ値を測定した。
【0279】
(3)分子量および分子量分布(PDI,polydispersity index):ゲル透過クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography,Waters社製)を利用してポリアミド樹脂の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)を測定し、重量平均分子量を数平均分子量で除して分子量分布(PDI)を計算した。具体的には、Polymer Laboratories PLgel MIX-B 300mm長さのカラム2個が連結された600mm長さのカラムを利用してWaters 2605機器(検出器:RI)により、評価温度は50~75℃(約65℃)で、DMF 100wt%溶媒を使用して1mL/minの流速、サンプルは1mg/mLの濃度に調剤した後、100μLの量で25分間供給し、ポリスチレン標準を利用して形成された検定曲線を利用して分子量を求めることができる。ポリスチレン標準品の分子量は、3940/9600/31420/113300/327300/1270000/4230000の7種を使用した。
【0280】
(4)屈曲性:MITタイプの耐折強さ試験機(folding endurace tester)を利用してポリアミド樹脂から得られるフィルムの耐折強さを評価した。具体的には、ポリアミド樹脂から得られるフィルムの試験片(1cm*7cm)を耐折強さ試験機にローディングし、試験片の左側と右側で175rpmの速度で135°の角度、0.8mmの曲率半径および250gの荷重で曲げて破断するまで往復曲げ回数(cycle)を測定した。
【0281】
(5)相対粘度(Viscosity):25±0.2℃恒温還流システムを利用してポリアミド樹脂が含有された溶液(溶媒:ジメチルアセトアミド(DMAc)、固形分10wt%)をASTM D 2196の非ニュートン物質の回転粘度計試験方法でBrookfield viscometer DV-2Tを使用し、brookfield社のシリコンオイル(silicon oil)を標準物質として5000cps~200000cpsの粘度範囲を有する多数の標準溶液を利用し、spindle LV-4(64)、0.3~100RPMで測定し、単位はcps(mPa.s)単位を使用した。
【0282】
(6)鉛筆硬度:Pencil Hardness Testerを利用してASTM D3363の測定法によりポリアミド樹脂から得られるフィルムの鉛筆硬度を測定した。具体的には、前記テスターに多様な硬度の鉛筆を固定して前記ポリアミド樹脂から得られるフィルムに引っかいた後、前記ポリアミド樹脂フィルムにきずが発生した程度を肉眼や顕微鏡で観察し、総引っ掻き回数の70%以上引っかかれなかった時、その鉛筆の硬度に該当する値を前記ポリアミド樹脂フィルムの鉛筆硬度と評価した。
【0283】
前記鉛筆硬度はB等級、F等級、H等級順に硬度が増加し、同じ等級内では数字が大きくなるほど硬度が増加する。等級内では数字が大きくなるほど硬度が増加する。
【0284】
【表6】
【0285】
前記表6を調べれば、前記製造例1~2によるアシルクロリド複合体粉末を利用して製造された実施例のポリアミド樹脂は、463000g/mol~512000g/molの高い重量平均分子量を有し、相対粘度が110000cps~174000cpsで高く測定された。また、実施例のポリアミド樹脂から得られたポリアミド樹脂フィルムの場合、概ね50μmの厚さで2.68~2.89の低い黄色指数、0.81%~0.97%の低いヘイズ値により優れた透明性を確保できることを確認し、3H~4H等級の高い鉛筆硬度および9785~12022の往復曲げ回数(cycle)で破断される耐折強さにより優れた機械的物性(耐スクラッチ性および耐折強さ)が確保されることを確認した。
【0286】
反面、ポリアミド樹脂合成過程で前記製造例1~2によるアシルクロリド複合体粉末が全く使用されなかった参考例1~3のポリアミド樹脂は、350,000g/mol~412,000g/molで実施例に比べて分子量が減少し、粘度が240,000cps~54,000cpsで実施例に対して減少した。また、ヘイズ値が1.61%~24.21%で実施例より増加して透明性が不良であることを確認した。
【0287】
これは参考例1、2、3の場合、TPC粉末とIPC粉末間の溶解度および反応性差によって、TPCによるブロックが過度に形成されてポリアミド樹脂の結晶性が増加したことによるものと見られる。
【0288】
一方、acyl chlorideをamide系溶媒内で溶解してsolutionとして取り扱った参考例4のポリアミド樹脂は321,000g/molの非常に低い分子量を示し、粘度が18000cpsで実施例より減少することを確認した。これは参考例4でacyl chlorideの溶解時、水分による変質およびamide系溶媒との混成が発生したからであると見られる。
図1
図2