(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 5/00 20060101AFI20220614BHJP
C07C 15/02 20060101ALI20220614BHJP
C07C 15/14 20060101ALI20220614BHJP
C07C 15/24 20060101ALI20220614BHJP
C07C 17/35 20060101ALI20220614BHJP
C07C 25/18 20060101ALI20220614BHJP
C07C 41/18 20060101ALI20220614BHJP
C07C 43/205 20060101ALI20220614BHJP
C07C 67/317 20060101ALI20220614BHJP
C07C 69/78 20060101ALI20220614BHJP
C07D 317/12 20060101ALI20220614BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20220614BHJP
【FI】
C07C5/00
C07C15/02
C07C15/14
C07C15/24
C07C17/35
C07C25/18
C07C41/18
C07C43/205 A
C07C67/317
C07C69/78
C07D317/12
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2018034287
(22)【出願日】2018-02-28
【審査請求日】2021-01-12
(31)【優先権主張番号】P 2017037443
(32)【優先日】2017-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【氏名又は名称】久松 洋輔
(74)【代理人】
【識別番号】100192603
【氏名又は名称】網盛 俊
(72)【発明者】
【氏名】江口 久雄
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 高則
(72)【発明者】
【氏名】萩原 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】中尾 佳亮
(72)【発明者】
【氏名】柏原 美勇斗
【審査官】奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-225385(JP,A)
【文献】特開平05-017417(JP,A)
【文献】特表2004-534637(JP,A)
【文献】特開平06-190277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C07B
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パラジウム化合物である金属触媒
、および下記一般式(4)
【化1】
(式中、R
1
は、各々独立して、シクロヘキシル基又はtert-ブチル基を表す。R
2
は、各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、イソプロピル基、イソプロポキシ基、ジメチルアミノ基、又はスルホン酸基を表す。)
で表されるホスフィン化合物の存在下、芳香族ニトロ化合物とプロトン供給化合物とを反応させ、前記芳香族ニトロ化合物のニトロ基を水素原子に直接還元することを含むことを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
【請求項2】
前記プロトン供給化合物が1級又は2級アルコール化合物であることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族化合物の製造法に関し、より具体的には、芳香族ニトロ化合物を原料として、ニトロ基を直接還元する反応を行って、芳香族化合物を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
芳香族ニトロ化合物は、医農薬品、染料やポリマー等に用いられる重要な基礎原料である。ニトロ基は強い電子吸引性基であり、芳香族化合物においては、メタ位への置換基導入の足掛かりとなる有用な置換基として、また芳香族求核置換反応を誘発する置換基として、古くから活用されている。さらに、ニトロ基は、アミノ基へと還元した後、ジアゾニウム塩を経由することで、水素原子に変換することも可能である。このように、ニトロ基の特徴を活かした分子骨格の構築手順は、有機合成化学の基本の一つであり、工業的にも価値があるものである(例えば、特許文献1及び非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【文献】J.Org.Chem. 1986, 51, 5127-5133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ニトロ基を水素原子で置換する場合、背景技術に記載の通り、通常は、アミノ基への還元、ジアゾニウム塩の変換、という異なる2種の反応を行う必要がある。これらの手順は、反応後処理及び精製作業の都合から、工程数が長く、製造に時間がかかるといった課題があった。さらに、ジアゾニウム塩は化合物種によっては不安定であり、時に爆発の危険性がある中間体であるため、慎重な取り扱いが必要となる問題があった。
本発明は、より生産効率の高く、安全面においても優位性のある、芳香族ニトロ化合物を原料としての芳香族化合物の製造に係る新規な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
出願人らは、金属触媒存在下で、芳香族ニトロ化合物と、プロトン供給化合物を反応させることにより、芳香族ニトロ化合物のニトロ基が水素原子で置換した化合物がわずか1段階の反応で高選択的に得られることを見だした。
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1] 金属触媒存在下、芳香族ニトロ化合物とプロトン供給化合物とを反応させ、前記芳香族ニトロ化合物のニトロ基を水素原子に直接還元することを含むことを特徴とする芳香族化合物の製造方法。
[2] 前記プロトン供給化合物が1級又は2級アルコール化合物であることを特徴とする、[1]に記載の製造方法。
[3] 前記金属触媒が、遷移金属触媒であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の製造方法。
[4] 前記遷移金属触媒がパラジウム又はニッケル化合物であることを特徴とする、[3]に記載の製造方法。
[5] 前記金属触媒と下記一般式(4)
【化1】
(式中、R
1は、各々独立して、シクロヘキシル基又はtert-ブチル基を表す。R
2は、各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、イソプロピル基、イソプロポキシ基、ジメチルアミノ基、又はスルホン酸基を表す。)
で表されるホスフィン化合物を共存させて反応を進行させることを特徴とする[1]から[4]のいずれか一つに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、従来多段階の反応が必要とされていたニトロ基の水素原子への変換反応を、わずか1段階で実施することが可能となる。工程が短く、製造にかかる時間も短縮できるため、従来技術よりも生産効率の高い工業的に優れる製造方法が提供できる。さらに、本発明はジアゾニウム塩を経由しないプロセスであるから、安全面においても優位性がある。なお、得られた芳香族化合物は、カラムクロマトグラフィー、蒸留及び再結晶等の簡易な精製操作により、より高純度の芳香族化合物を得ることができる。又、必要に応じて、さらに数段階の工程を経て別の化合物へと変換することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について具体的に説明する。
【0009】
本発明は、金属触媒存在下、芳香族ニトロ化合物とプロトン供給化合物とを反応させ、芳香族ニトロ化合物のニトロ基を水素原子に直接還元することを特徴とする芳香族化合物の製造方法である。
【0010】
芳香族ニトロ化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、ニトロ化芳香族炭化水素化合物やニトロ化ヘテロ芳香族化合物を例示することができる。当該芳香族ニトロ化合物は、特に限定するものではないが、下記一般式(1)で表される化合物を挙げることができる。
【0011】
【0012】
式中、Ar1は、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよいヘテロ芳香族基を表し、nは1~3の整数を表す。
【0013】
上述の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいビフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラセニル基、置換基を有してもよいピレニル基、置換基を有してもよいターフェニル基、置換基を有してもよいフェナントラセニル基、置換基を有してもよいペリレニル基、又は置換基を有してもよいトリフェニレニル基等を例示することができる。
【0014】
上述の置換基を有してもよいヘテロ芳香族基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよいフラニル基、置換基を有してもよいベンゾフラニル基、置換基を有してもよいジベンゾフラニル基、置換基を有してもよいフェニルジベンゾフラニル基、置換基を有してもよいジベンゾフラニルフェニル基、置換基を有してもよいチエニレニル基、置換基を有してもよいベンゾチエニル基、置換基を有してもよいジベンゾチエニレニル基、置換基を有してもよいフェニルジベンゾチエニレニル基、置換基を有してもよいジベンゾチエニレニルフェニル基、置換基を有してもよいピリジレニル基、置換基を有してもよいピリミジル基、置換基を有してもよいピラジル基、置換基を有してもよいキノリル基、置換基を有してもよいイソキノリル基、置換基を有してもよいカルバゾリル基、置換基を有してもよい9-フェニルカルバゾリル基、置換基を有してもよいアクリジニル基、置換基を有してもよいベンゾチアゾリル基、置換基を有してもよいキナゾリル基、置換基を有してもよいキノキサリル基、置換基を有してもよい1,6-ナフチリジニル基、又は置換基を有してもよい1,8-ナフチリジニル基等を挙げることができる。
【0015】
また、上述の置換基を有してもよい芳香族炭化水素基上及び置換基を有してもよいヘテロ芳香族基上の置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、炭素数3~18のアルキル基(例えば、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1-18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3-18のアルコキシ基(例えば、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数1-18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0016】
Ar1については、芳香族化合物の製造効率に優れる点で、置換基を有してもよい炭素数6~30の芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数3~30のヘテロ芳香族基であることが好ましく、置換基を有してもよい炭素数6~20の芳香族炭化水素基、又は置換基を有してもよい炭素数3~20のヘテロ芳香族基であることがより好ましい。さらに詳細には、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ターフェニル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニレニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、フェニルピリジル基、ピリジルフェニル基、ピリミジル基、ピラジル基、キノリル基、イソキノリル基、カルバゾリル基、又は9-フェニルカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、メトキシ基、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、ジベンゾフラニル基で置換されていてもよい)であることがさらにより好ましく、フェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、ジベンゾフラニル基、フェニルジベンゾフラニル基、ジベンゾフラニルフェニル基、ジベンゾチエニル基、フェニルジベンゾチエニレニル基、ジベンゾチエニレニルフェニル基、ピリジル基、キノリル基、又はカルバゾリル基(これらの置換基は、メチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、又はメトキシ基で置換されていてもよい)であることがさらにより一層好ましい。
【0017】
上述のプロトン供給化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、1級又は2級アルコール化合物を例示することができる。当該1級又は2級アルコール化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(2)で表される化合物を挙げることができる。
【0018】
【0019】
式中、2つのAr2はそれぞれ独立して、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族基を表す。
【0020】
上述の置換基を有していてもよいアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、炭素数1~18のアルキル基を挙げることができ、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、又はベンジル基等を例示することができる。
【0021】
上述の置換基を有していてもよい芳香族基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基又は置換基を有してもよいヘテロ芳香族基が挙げられる。置換基を有してもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有してもよいヘテロ芳香族基については、それぞれ、上述のAr1における置換基を有してもよい芳香族炭化水素基及び置換基を有してもよいヘテロ芳香族基と同様である。
【0022】
Ar2については、芳香族化合物の製造効率に優れる点で、炭素数1~18のアルキル基、又は置換基を有してもよい芳香族炭化水素基であることが好ましく、さらに詳細には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、シクロヘキシル基、ベンジル基、フェニル基、2-メチルフェニル基、3-メチルフェニル基、4-メチルフェニル基、2,4,6-トリメチルフェニル基であることがより好ましい。
【0023】
すなわち、上述のプロトン供給化合物としては、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、シクロヘキサノール、1,1-ジシクロヘキシルメタノール、ベンジルアルコール、1,1-ジフェニルメタノール、1,1-ビス(2-メチルフェニル)メタノール、1,1-ビス(3-メチルフェニル)メタノール、1,1-ビス(4-メチルフェニル)メタノール、又はジメシチルメタノールであることがさらにより好ましい。
【0024】
なお、本発明において、金属触媒存在下、上記一般式(1)で表される化合物とプロトン供給化合物とを反応させ、上記一般式(1)で表される化合物のニトロ基を水素原子に直接還元すると、下記一般式(3)で表される芳香族化合物が得られる。
【0025】
【0026】
式中、Ar1及びnは一般式(1)及び(2)で示したものと同じものを表す。
【0027】
本発明では、ニトロ基が水素原子に変換されるため、ニトロ基が結合してあった炭素上に水素原子との結合が新たに形成されることになる。
【0028】
本発明の製造方法において、上述の芳香族ニトロ化合物(モル)÷上述のプロトン供給化合物(モル)で示されるモル比は、特に限定するものではないが、0.1~10.0の範囲が好ましい。経済性の観点から、当該モル比については、0.2~5.0であることがより好ましく、0.33~3.0であることがさらにより好ましく、0.5~2.0の範囲であることがさらにより一層好ましい。
【0029】
nは1~3の整数を表す。目的の芳香族化合物をより高選択的に合成する観点から、好ましくは1~2の整数であり、さらに好ましくは1である。
【0030】
上述の金属触媒としては、特に限定するものではないが、パラジウム触媒又はニッケル触媒が挙げられる。パラジウム触媒としては、特に限定するものではないが、例えば、塩化パラジウム(II)、臭化パラジウム(II)、酢酸パラジウム(II)、パラジウムアセチルアセトナート(II)、ジクロロビス(ベンゾニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(アセトニトリル)パラジウム(II)、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(II)、ジクロロテトラアンミンパラジウム(II)、ジクロロ(シクロオクタ-1、5-ジエン)パラジウム(II)、パラジウムトリフルオロアセテート(II)等の2価パラジウム化合物、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウム(0)、トリス(ジベンジリデンアセトン)二パラジウムクロロホルム錯体(0)、テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)等の0価パラジウム化合物が挙げられる。また、ポリマー固定型パラジウム触媒、パラジウム炭素等の固定化パラジウム触媒も例示できる。なお、これらのパラジウム触媒については、ホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させてもよい。当該配位性化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、トリフェニルホスフィン、トリ(o―トリル)ホスフィン、トリ(メシチル)ホスフィン等の単座アリールホスフィン、トリ(シクロヘキシル)ホスフィン、トリ(イソプロピル)ホスフィン、トリ(tert-ブチル)ホスフィン等の単座アルキルホスフィン、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジメトキシビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,6’-ジイソプロポキシビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-メチルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル、2-(ジシクロヘキシルホスフィノ)ビフェニル、2-(ジ-tert-ブチルホスフィノ)-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-2’-(N,N-ジメチルアミノ)ビフェニル等のBuchwaldホスフィン化合物、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン、1,2-ビス(ジシクロヘキシルホスフィノ)エタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン等のニ座ホスフィン、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリウムクロライド、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリウムクロライド、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾール-2-イリデン、1,3-ジ-tert-ブチルベンズイミダゾリニウムクロリド、1,3-ビス(1-アダマンチル)イミダゾリニウムテトラフルオロボラート、1,3-ジイソプロピルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1,3-ジ-tert-ブチルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリニウムクロリド、1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1,3-ジシクロヘキシルベンズイミダゾリニウムクロリド、1-メチル-3-プロピルイミダゾリニウムテトラフルオロボレート、1-(1-アダマンチル)-3-(2,4,6-トリメチルフェニル)イミダゾリニウムクロリド、2-ベンジルイミダゾ[1,5-a]キノリニウムクロリド、2-ベンジルイミダゾ[1,5-a]キノリニウムヘキサフルオロフォスフェート、1,3-ビス(1-アダマンチル)ベンズイミダゾリニウムクロリド、1,3-ビス(2-シクロヘキシルナフタレン-1-イル)イミダゾリニウムテトラフルオロボレート、3-メシチル-1-メチル-1H-ベンゾイミダリニウヨージド、2-シクロへキシル-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウムクロリド、2-(1-アダマンチル)-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウムクロリド、2-[2,6-ビス(ジフェニルメチル)-4-メチルフェニル]-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウムクロリド、2-{2,6-ビス[ビス(2-ナフチル)メチル]-4-メチルフェニル}-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウムクロリド、2-(2,6-ジイソプロピルフェニル)-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウムクロリド、2-(2,4、6-トリメチルフェニル)-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウムクロリド等のN-ヘテロカルベン化合物等が挙げられる。また、パラジウム触媒にホスフィン化合物等の配位性化合物を共存させる場合、上記パラジウム化合物とホスフィン化合物又はN-ヘテロカルベン化合物を事前に混合、調製したものを用いて反応させてもよい。
【0031】
ニッケル触媒としては、例えば、ニッケル塩と上述のホスフィン化合物とからなる化合物が挙げられる。ニッケル塩とは、ニッケル元素を有効成分とする化合物を示し、例えば、0価から2価のニッケル塩を示す。具体的には、フッ化ニッケル(II)、塩化ニッケル(II)、臭化ニッケル(II)、ヨウ化ニッケル(II)等のハロゲン化ニッケル、ニッケル(0)粉末、硫酸ニッケル(II)、硝酸ニッケル(II)、過塩素酸ニッケル(II)等の無機塩、蟻酸ニッケル(II)、シュウ酸ニッケル(II)、酢酸ニッケル(II)、安息香酸ニッケル(II)、ニッケルアセチルアセトナート(II)等の有機酸ニッケル塩が挙げられる。
【0032】
これら金属触媒の内、目的の反応を進行させる観点から、パラジウム触媒を用いることが好ましい。
【0033】
また、より高選択的に目的の反応を進行させる観点から、金属触媒には、Buchwaldホスフィン化合物を共存させるのが望ましく、Buchwaldホスフィン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、下記一般式(4)で表されるホスフィン化合物がより好ましい。中でも、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニルが特に好ましい。
【0034】
【0035】
式中、R1は、各々独立して、シクロヘキシル基又はtert-ブチル基を表す。R2は、各々独立して、水素原子、メチル基、メトキシ基、イソプロピル基、イソプロポキシ基、ジメチルアミノ基、又はスルホン酸基を表す。
【0036】
なお、上記N-ヘテロカルベン化合物としては、特に限定するものではないが、例えば、下記式(5)又は(6)で表されるN-ヘテロカルベン化合物であることが好ましい。
【0037】
【0038】
【0039】
式中、R7、R8及びR9は、各々独立して、水素原子、メチル基、エチル基、炭素数3~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基、炭素数1~18のアルコキシ基、又は置換基を有してもよい炭素数6~24の単環、連結若しくは縮環の芳香族炭化水素基を表す。mは0~5の整数を表す。
【0040】
上述の炭素数3~18の直鎖状、分岐状若しくは環状のアルキル基としては、特に限定するものではないが、例えば、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等が挙げられる。
【0041】
上述の炭素数1~18のアルコキシ基としては、特に限定するものではないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等が挙げられる。
【0042】
上述の置換基を有してもよい炭素数6~24の単環、連結若しくは縮環の芳香族炭化水素基としては、特に限定するものではないが、例えば、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいビフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいアントラセニル基、置換基を有してもよいピレニル基、置換基を有してもよいターフェニル基、置換基を有してもよいフェナントラセニル基、置換基を有してもよいペリレニル基、置換基を有してもよいトリフェニレニル基等を例示することができる。
【0043】
上述の置換基を有してもよい炭素数6~24の単環、連結若しくは縮環の芳香族炭化水素基上の置換基としては、特に限定するものではないが、例えば、メチル基、エチル基、炭素数3~18のアルキル基(例えば、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロヘキサジエニル基、オクチル基、ベンジル基、又はフェネチル基等)、炭素数1~18のハロゲン化アルキル基(例えば、トリフルオロメチル基等)、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3~18のアルコキシ基(例えば、n-プロピルオキシ基、i-プロピルオキシ基、n-ブチルオキシ基、sec-ブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、n-ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘキサジエニルオキシ基、オクチルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基等)、炭素数1~18のハロゲン化アルコキシ基(例えば、トリフルオロメトキシ基等)、フェニル基、トリル基、ピリジル基、ピリミジル基、カルバゾリル基、ジベンゾチエニル基、又はジベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0044】
mは1~5の整数を表す。目的のN-ヘテロカルベン化合物を高選択的に合成する観点から、好ましくは1~3の整数であり、さらに好ましくは1~2の整数である。
【0045】
金属触媒の使用量は、特に限定するものではないが、芳香族ニトロ化合物1モルに対し通常0.01~20モル%の範囲であることが好ましい。金属触媒が上記範囲内であれば、より高い選択率で芳香族化合物を合成できるが、高価な金属触媒の使用量を低減させる意味から、より好ましい金属触媒使用量は、芳香族ニトロ化合物1モルに対し、金属換算で0.01~10モル%の範囲である。
【0046】
本発明に係る反応は塩基の存在下での反応とすることが好ましい。使用される塩基としては、無機塩基及び/又は有機塩基から選択すればよく、特に限定するものではないが、より好ましくは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化セシウム等の無機塩基、ナトリウム-メトキシド、ナトリウム-エトキシド、カリウム-メトキシド、カリウム-エトキシド、リチウム-tert-ブトキシド、ナトリウム-tert-ブトキシド、カリウム-tert-ブトキシド等のようなアルカリ金属アルコキシド、トリエチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、ジアザビシクロウンデセン、ジアザビシクロノネン等の有機塩基であって、目的の芳香族化合物の選択率を向上させる観点から、さらにより好ましくは、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、燐酸カリウム、燐酸ナトリウム、フッ化セシウム等の無機塩基である。
【0047】
使用される塩基の量は、使用する芳香族ニトロ化合物に対し1.0倍モル以上使用するのが好ましい。塩基の量が1.0倍モル未満では、1.0倍モル以上である場合と比較して目的の芳香族カップリング反応物の収率が低くなる場合がある。塩基を大過剰に加えても目的の芳香族カップリング反応物の収率に変化はないが、反応終了後の後処理操作が煩雑になることから、より好ましい塩基の量は、1.0~5.0倍モルの範囲である。
【0048】
本反応は、通常、不活性溶媒存在下で行うことができる。使用される溶媒としては、本反応を著しく阻害しない溶媒であればよく、特に限定するものではないが、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒や、ジエチルエーテル、テトラハイドロフラン、ジメトキシエタン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテルなどのエーテル系有機溶媒、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホトリアミド等を挙げることができる。これらのうちより好ましくは、ジエチルエーテル、ジメトキシエタン、テトラハイドロフラン、1,4-ジオキサン、シクロペンチルメチルエーテル等のエーテル系有機溶媒である。
【0049】
本反応は、常圧下、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下で行うことも、また加圧下でも行うことができる。反応は、20~250℃の範囲で行われるが、目的の芳香族化合物の収率を上げるため好ましくは50~200℃の範囲で行われ、さらに好ましくは、100~160℃の範囲で行われ、さらにより好ましくは、120~150℃の範囲で行われる。
【0050】
本反応は、添加剤として相関移動触媒を使用してもよい。相間移動触媒としては特に限定されるものではないが、具体的には、24-クラウン-8、18-クラウン-6、15-クラウン-5、12-クラウン-4等のクラウンエーテル類、テトラ(n-ブチル)アンモニウムクロライド、テトラ(n-ブチル)アンモニウムブロマイド、ベンジルトリエチルアンモニウムクロライド、トリエチル-n-ドデシルアンモニウムクロライド、トリエチル-n-ドデシルアンモニウムブロマイド、トリメチル-n-ヘキサデシルアンモニウムクロライド、トリメチル-n-ヘキサデシルアンモニウムブロマイド等の4級アンモニウム塩を挙げることができる。
【0051】
本反応にかかる反応時間は、芳香族ニトロ化合物、プロトン供給化合物、金属触媒、塩基の量、種類及び反応温度等によって一定ではないが、数分~72時間の範囲から選択することが好ましい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例によって具体的に記述する。しかし、これらによって本発明は何ら限定して解釈されるものではない。
【0053】
測定機器:島津製作所社製ガスクロマトグラフィー GC2014(分析条件 使用カラム:SGE社製BP-1、検出器:FID@290 °C)、NMR 日本電子株式会社製ECS-400(1H NMR、400MHz; 13C NMR、101 MHz)。
【0054】
実施例1
窒素下において、15mLスクリューバイアル管に、撹拌子、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)、2-プロパノール 54mg(0.90mmol)、パラジウムアセチルアセトナート(II) 9.1mg(0.030mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル 32mg(0.060mmol)、リン酸三カリウム 318mg(1.5mmol)、1,4-ジオキサン 3mL、及び内標準物質としてn-トリデカン 120μLを加えた。バイアル管にしっかりと蓋をした後、130℃で4時間加熱撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却してこの反応液の一部を採取し、酢酸エチルで希釈してガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、アニソールが収率96%で検出された。
【0055】
実施例2
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、3-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用い、加熱撹拌を8時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてアニソールが収率71%で検出された。
【0056】
実施例3
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用い、加熱撹拌を12時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてアニソールが収率62%で検出された。
【0057】
実施例4
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4-t-ブチルニトロベンゼン 107mg(0.60mmol)を用い、加熱撹拌を12時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてt-ブチルベンゼンが収率87%で検出された。
【0058】
実施例5
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、3-ニトロ安息香酸メチル 109mg(0.60mmol)を用い、2-プロパノール 54mg(0.90mmol)を用いる代わりに、ジメシチルメタノール 242mg(0.90mmol)を用い、加熱撹拌を2時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析において安息香酸メチルが収率78%で検出された。
【0059】
実施例6
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、N,N-ジメチル-4-ニトロアニリン 100mg(0.60mmol)を用い、2-プロパノール 54mg(0.90mmol)を用いる代わりに、ジメシチルメタノール 242mg(0.90mmol)を用い、加熱撹拌を84時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてN,N-ジメチルアニリンが収率27%で検出された。
【0060】
実施例7
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、1-ニトロナフタレン 104mg(0.60mmol)を用い、内標準物質としてn-トリデカン 120μLの代わりにn-デカン 60μLを用い、加熱撹拌を4時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてナフタレンが収率87%で検出された。
【0061】
実施例8
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、2-ニトロナフタレン 104mg(0.60mmol)を用い、加熱撹拌を12時間行った以外は同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてナフタレンが収率59%で検出された。
【0062】
実施例9
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、2-(4-ニトロフェニル)-1,3-ジオキソラン 117mg(0.60mmol)を用い、内標準物質としてn-トリデカン 120μLの代わりにn-デカン 60μLを用い、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析において2-フェニル-1,3-ジオキソランが収率92%で検出された。
【0063】
実施例10
実施例1において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、2-メチル-2-(4-ニトロフェニル)-1,3-ジオキソラン 126mg(0.60mmol)を用い、内標準物質としてn-トリデカン 120μLの代わりにn-デカン 60μLを用い、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析において2-メチル-2-フェニル-1,3-ジオキソランが収率88%で検出された。
【0064】
実施例11
窒素下において、15mLスクリューバイアル管に、撹拌子、3-ニトロビフェニル 120mg(0.60mmol)、2-プロパノール 54mg(0.90mmol)、パラジウムアセチルアセトナート(II) 9.1mg(0.030mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル 32mg(0.060mmol)、リン酸三カリウム 318mg(1.5mmol)、及び1,4-ジオキサン 3mLを加えた。バイアル管にしっかりと蓋をした後、130℃で4時間加熱撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却し、この反応液をシリカゲル(粒径50μL)を通じて濾過した。濃縮して得られた残渣を中圧カラムクロマトグラフィー(バイオタージSNAP Ultraカラム(粒径25μm)使用、展開溶媒=ヘキサン/酢酸エチル)で精製し、目的のビフェニルを白色粉末として79mg得た(収率85%)。目的物の同定は1H及び13C-NMRで実施した。
【0065】
1H-NMR(CDCL3)=δ 7.62(d、J = 7.3 Hz、4H)、7.47(t、J = 7.3 Hz、4H)、7.37(t、J = 7.3 Hz、2H)
13C-NMR(CDCL3)=δ 141.2、128.7、127.2、127.1。
【0066】
実施例12
実施例11において、3-ニトロビフェニル 120mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4-ニトロビフェニル 120mg(0.60mmol)を用いた以外は、同様の実験操作を実施したところ、ビフェニルを白色粉末として68mg得た(収率73%)。目的物の同定は1H及び13C-NMRで実施した。
【0067】
1H-NMR(CDCL3)=δ 7.62(d、J = 7.3 Hz、4H)、7.46(t、J = 7.3 Hz、4H)、7.37(t、J = 7.3 Hz、2H)
13C-NMR(CDCL3)=δ 141.2、128.7、127.2、127.1。
【0068】
実施例13
実施例11において、3-ニトロビフェニル 120mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4-ニトロ-4’-フルオロビフェニル 130mg(0.60mmol)を用いた以外は、同様の実験操作を実施したところ、4-フルオロビフェニルを白色粉末として93mg得た(収率90%)。目的物の同定は1H及び13C及び19F-NMRで実施した。
【0069】
1H-NMR(CDCL3)=δ 7.58-7.51(m、4H)、7.44(t、J = 7.3 Hz、2H)、7.34(t、J = 7.5 Hz、1H)、7.13(t、J = 8.7、2H)
13C-NMR(CDCL3)=δ 162.4(d、J = 246.3 Hz)、140.2、137.3(d、J = 3.8 Hz)、128.8、128.7(d、J = 7.7 Hz)、127.2、127.0、115.6(d、J = 21.1 Hz)
19F-NMR(C6F6)=δ -116.3。
【0070】
実施例14
窒素下において、15mLスクリューバイアル管に、撹拌子、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)、ジメシチルメタノール 242mg(0.90mmol)、パラジウムアセチルアセトナート(II) 9.1mg(0.030mmol)、2-ジシクロヘキシルホスフィノ-3,6-ジメトキシ-2’,4’,6’-トリイソプロピルビフェニル 32mg(0.060mmol)、リン酸三カリウム 318mg(1.5mmol)、1,2-ジメトキシエタン 3mL、及び内標準物質としてn-トリデカン 120μLを加えた。バイアル管にしっかりと蓋をした後、130℃で9時間加熱撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却してこの反応液の一部を採取し、酢酸エチルで希釈してガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、アニソールが収率93%で検出された。
【0071】
実施例15
実施例14において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、3-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いた以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてアニソールが収率77%で検出された。
【0072】
実施例16
実施例14において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用い、加熱撹拌を12時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてアニソールが収率68%で検出された。
【0073】
実施例17
実施例14において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、4-t-ブチルニトロベンゼン 107mg(0.60mmol)を用い、加熱撹拌を8時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてt-ブチルベンゼンが収率83%で検出された。
【0074】
実施例18
実施例14において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、1-ニトロナフタレン 104mg(0.60mmol)を用い、内標準物質としてn-トリデカン 120μLの代わりにn-デカン 60μLを用い、加熱撹拌を8時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてナフタレンが収率92%で検出された。
【0075】
実施例19
実施例14において、2-ニトロアニソール 92mg(0.60mmol)を用いる代わりに、2-ニトロナフタレン 104mg(0.60mmol)を用い、内標準物質としてn-トリデカン 120μLの代わりにn-デカン 60μLを用い、加熱撹拌を8時間行った以外は、同様の実験操作を実施したところ、ガスクロマトグラフィー分析においてナフタレンが収率52%で検出された。
【0076】
実施例20
窒素下において、4mLスクリューバイアル管に、撹拌子、4-ニトロアニソール 31mg(0.20mmol)、2-プロパノール 17mg(0.30mmol)、パラジウムアセチルアセトナート(II) 0.61mg(2.0μmol)、2-シクロへキシル-5-(2,4,6-トリイソプロピルフェニル)イミダゾ[1,5-a]ピリジニウム クロリド 1.8mg(4.0μmol)、リン酸三カリウム 106mg(0.50mmol)、1,4-ジオキサン 1mL、及び内標準物質としてn-トリデカン 20μLを加えた。バイアル管にしっかりと蓋をした後、130℃で12時間加熱撹拌した。次いで、反応液を室温まで冷却してこの反応液の一部を採取し、酢酸エチルで希釈してガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、アニソールが収率21%で検出された。