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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】シリコン微粒子製造装置
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/03 20060101AFI20220614BHJP
   B01F 23/10 20220101ALI20220614BHJP
   B01F 25/40 20220101ALI20220614BHJP
   B01F 35/90 20220101ALI20220614BHJP
【FI】
C01B33/03
B01F23/10
B01F25/40
B01F35/90
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018143712
(22)【出願日】2018-07-31
(65)【公開番号】P2020019672
(43)【公開日】2020-02-06
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】特許業務法人SSINPAT
(72)【発明者】
【氏名】有行 正男
(72)【発明者】
【氏名】石田 晴之
(72)【発明者】
【氏名】望月 直人
【審査官】神野 将志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-101997(JP,A)
【文献】特表2008-501603(JP,A)
【文献】国際公開第2005/016820(WO,A1)
【文献】特開2010-30369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/03
B01F 23/10
B01F 25/40
B01F 35/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端にトリクロロシランをシリコン源(Si源)として含む原料ガスを供給する原料ガス導入口を有し、胴部に、その内壁を前記シリコン原料ガスの予熱温度に加熱するための予熱機構を備えた予熱ゾーンと、前記予熱ゾーンに続いて、その内壁をシリコン原料の分解温度以上の温度に加熱する加熱機構を備えた反応ゾーンを有し、他端に上記加熱機構により熱分解されて生成したシリコン微粒子を含むガスを排出する微粒子導出口を有する縦型筒状反応器において、
前記縦型筒状反応器の予熱ゾーンに位置する胴部空間内に、気流撹拌部材が存在することを特徴とするシリコン微粒子製造装置。
【請求項2】
前記気流撹拌部材が、棒状の部材である軸心部と、前記軸心部の外径方向に環状に突出し、前記気流撹拌部材の軸方向に沿って複数設けられた外径突出部とを備えた請求項1に記載のシリコン微粒子製造装置。
【請求項3】
前記気流撹拌部材は、内部にヒーターを備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載のシリコン微粒子製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン原料ガスを加熱して反応させシリコン微粒子を得るためのシリコン微粒子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、シリコンは、リチウムイオン二次電池の電極材(負極材)をはじめとして種々の用途に使用され或いはその使用が提案されている。
【0003】
従来、リチウムイオン二次電池の負極材にはグラファイト、黒鉛などのカーボン系材料が一般的に使用されているが、理論容量が372mAh/g(LiC6までリチウム化した場合)と低く、より高容量の負極材料が望まれている。シリコンは、カーボン材料に比べて単位質量あたりリチウムの吸蔵量が大きく、理論容量が3,579mAh/g(Li15Si4までリチウム化した場合)と非常に高容量であり、次世代の負極材として検討されている。
シリコンをリチウムイオン二次電池の負極材として使用する場合の課題として、シリコンとリチウムが合金を形成してリチウムを吸蔵する際の体積膨張が大きく、充放電による膨張収縮の繰り返しによって歪エネルギーが内部に蓄積して、シリコンが粉々に破断して空隙が発生し、電気伝導性やイオン伝導性を喪失することで負極の充電容量が低下することが挙げられる。
この課題に対し、シリコンを微粒子化すると、膨張収縮の際に破断し難く、耐久性を高くできることが知られている。そのため、1μm未満の粒子径を有するシリコン微粒子の製造方法が種々検討されている。
【0004】
例えば、誘導結合プラズマ(ICP)コイルによりプラズマ領域が形成された縦型筒状反応器の上部よりアルゴンで希釈されたモノシラン(SiH4)ガスと水素ガスとを供給し、上記プラズマ領域に導くことにより、モノシランと水素ガスとを反応させてシリコン微粒子を得る方法が提案されている(特許文献1参照)。
しかしながら、プラズマ法を用いる方法は、高コストで大量生産には向いていないため、大量生産が可能であり、工業的に実施の可能性が高いシリコン微粒子の製造技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-184854号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコン原料ガスであるトリクロロシランの分解は、約600℃~約1000℃の温度範囲で加熱されることにより、主に4SiHCl3←→Si+3SiCl4+2H2によって進行する。
通常、シリコン原料ガスを熱分解する際には、図4に示すような縦型筒状反応器40が用いられる。この縦型筒状反応器40の周囲にはヒーター70が配置され、反応効率を高める目的で、高さごとに縦型筒状反応器40の温度が異なるように設定されている。たとえば、図4では、縦型筒状反応器40は、シリコン原料ガスのガス流を予熱する予熱ゾーンA、予熱されたシリコン原料ガスをさらに高温で熱分解させる反応させる反応ゾーンBの各ゾーンに区分される。
【0007】
しかしながら、上述の縦型筒状反応器40においては、予熱ゾーンでは、温度の低い原料ガスを加熱するため、図5に示すように、ガス流の中心部に熱が行き渡らず、中心部の原料ガスが十分に加熱されないという問題があった。
【0008】
このように予熱が不均一であると、シリコン原料ガスの熱分解反応によるシリコン微粒子の生成が不均一となるため、反応率が低下したり、得られたシリコン微粒子の粒子径に大きなばらつきを生じやすい。また、原料ガスを充分に予熱するためには予熱ゾーンAを高温で加熱することが必要となるが、結果、予熱ゾーンAや反応ゾーンBの上部で筒状反応器の管壁温度がシリコン原料ガスの熱分解温度より著しく高温になり、予熱ゾーンAや反応ゾーンBの上部で筒状反応器の管壁にシリコンが析出して反応器が閉塞するうえ、シリコン微粒子の収率が減少するなどの問題があった。
したがって、本発明の目的は、反応器の管壁へのシリコンの析出を防止しながらシリコン原料ガスの予熱を効率的に行い、継続的に安定してシリコン微粒子を生成することが可能なシリコン微粒子製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは上記課題を解決するために、鋭意検討した結果、この不均一な予熱を解消するために、縦型筒状反応器内の気流を撹拌することで、シリコン原料ガスの温度分布を均一にして、反応ゾーン以外でのシリコンの析出および縦型筒状反応器の閉塞を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は下記の事項を包含する。
[1]一端にトリクロロシランをシリコン源(Si源)として含む原料ガスを供給する原料ガス導入口を有し、胴部に、その内壁を前記シリコン原料ガスの予熱温度に加熱するための予熱機構を備えた予熱ゾーンと、前記予熱ゾーンに続いて、その内壁をシリコン原料の分解温度以上の温度に加熱する加熱機構を備えた反応ゾーンを有し、他端に上記加熱機構により熱分解されて生成したシリコン微粒子を含むガスを排出する微粒子導出口を有する縦型筒状反応器において、
前記縦型筒状反応器の予熱ゾーンに位置する胴部空間内に、気流撹拌部材が存在することを特徴とするシリコン微粒子製造装置。
[2]前記気流撹拌部材が、棒状の部材である軸心部と、前記軸心部の外径方向に環状に突出し、前記気流撹拌部材の軸方向に沿って複数設けられた外径突出部とを備えた[1]のシリコン微粒子製造装置。
[3]前記気流撹拌部材は、内部にヒーターを備えていることを特徴とする[1]又は[2]のシリコン微粒子製造装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシリコン微粒子製造装置によれば、均一にシリコン原料ガスを予熱できるので、安定的に同品質のシリコン微粒子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施の形態に係るシリコン微粒子製造装置の概要を示す断面図である。
図2】実施の形態に係る縦型筒状反応器の予熱ゾーンに挿入された気流撹拌部材の拡大図である。
図3】実施の形態に係るシリコン微粒子製造装置において、予熱ゾーンの内周壁から内径突出部を突出させた場合の拡大図である。
図4】従来のシリコン微粒子製造装置の概要を示す断面図である。
図5】従来のシリコン微粒子製造装置に係る縦型筒状反応器の予熱ゾーンに流入した流体の熱分布を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態に係るシリコン微粒子製造装置について説明する。このシリコン微粒子製造装置は、シリコン原料ガスを加熱して熱分解しシリコン微粒子を生成する微粒子生成装置に用いられるものである。
【0014】
図1は、シリコン微粒子製造装置の概要を示す断面図である。図1に示すように、シリコン微粒子製造装置2は、一端にトリクロロシランをシリコン源(Si源)として含む原料ガスを供給する原料ガス導入口3を有し、胴部に、その内壁を前記シリコン原料ガスの予熱温度に加熱するための予熱機構7aを備えた予熱ゾーンAと、前記予熱ゾーンAに続いて、その内壁をシリコン原料の分解温度以上の温度に加熱する加熱機構7bを備えた反応ゾーンBを有し、他端に上記加熱機構により熱分解されて生成したシリコン微粒子を含むガスを排出する微粒子導出口5を有する縦型筒状反応器4を備える。
【0015】
縦型筒状反応器4の外周には、予熱機構7aと加熱機構7bに相当する複数のヒーターが配置されている。ヒーターの数は特に制限されない。縦型筒状反応器4は、所定のゾーンに分けて加熱され、シリコン微粒子の製造効率を高めるように反応器胴部の温度が調整されている。
【0016】
また、縦型筒状反応器4は、縦型に設置され、一端である上方の原料ガス導入口からシリコン原料ガスを下方に向かって流し、反応器内で原料ガスからシリコン微粒子として生成させたのち、下方の微粒子導出口5から、回収する。
【0017】
なお、必要に応じて熱分解によって得られたシリコン微粒子を冷却する冷却ゾーンを、反応ゾーンBの下に設けてもよい。
予熱ゾーンAは、予熱機構7aによって加熱される領域であり、シリコン原料ガスに応じて適宜、予熱温度は選択される。
【0018】
本発明では、原料ガスとして、トリクロロシランを主成分として含むガスが使用される。トリクロロシランが熱分解してシリコンを製造する場合、縦型筒状反応器4内で、式(1)で表される分解反応が行われ、シリコン(Si)が生成する。
4SiHCl3 → 3SiCl4 + Si + 2H2 (1)
【0019】
600~1000℃の熱分解では、下記のようにトリクロロシランが熱分解して、中間生成物であるSiClx(xは約0.3)をシリコン粒子前駆体として生成する。この熱分解での代表的な反応は、下記式(2)で表される。
SiHCl3 → (1-n)SiCl4 + nSiClx + (1/2)H2 (2)
なお、上記いずれの反応でも、副生物には、四塩化珪素の他に、ジクロロシラン、塩化水素、さらにはヘキサクロロジシラン、ペンタクロロジシラン、テトラクロロジシラン、トリクロロジシランなどの塩化ジシランに代表されるポリクロロシランも含まれる。
【0020】
したがって、本発明のシリコン微粒子製造装置2で製造されるシリコン微粒子には、加熱温度によってはシリコン微粒子前駆体も含まれる。
原料ガスには、トリクロロシラン以外に、ジクロロシラン、四塩化珪素などが含まれていてもよく、Si源とともに、窒素やアルゴン等の上記反応に対して本質的に不活性なガスを同伴ガスとして装入することもできる。主要なシリコン源であるトリクロロシランは沸点が約32℃と高く液化しやすいため、同伴ガスを混合することでガス状態を保ち容易に定量供給することができる。尚、上記同伴ガスは必ずしも必要ではなく、シリコン源の気化条件およびガス配管の加温を適切に制御することで、同伴ガスは使用しなくともよい場合がある。
【0021】
本発明では、原料ガスを均一に加熱するため、前記縦型筒状反応器4の予熱ゾーンAに位置する胴部空間内に、気流撹拌手段を備える。
気流撹拌手段は縦型筒状反応器4内の気流を撹拌できれば特に制限されないが、たとえば図2に示すような軸部と突起部とを有する気流撹拌部材6が予熱ゾーンAに装入される。
【0022】
図2は、縦型筒状反応器4の予熱ゾーンAに位置する胴部空間内に設けられた気流撹拌部材6の拡大図である。図2に示すように、気流撹拌部材6は、円柱状の棒状部材から成る軸心部6aと、軸心部6aの外周壁から外径方向に突出し、気流撹拌部材6の軸方向に沿って複数設けられた円環状の外径突出部6bを高さ方向(軸方向)に複数備えている構造が代表的である。
【0023】
外径突出部6bの断面形状は、矩形であっても台形であってもよいが、台形の場合、上底が長い場合も、短い場合のいずれであってもよい。また、外径突出部の上面、下面に渦巻き状の溝や凹凸を設けたり、側周部にらせん状の溝を設けることで、ガスの流れを乱したり、旋回流れを起こさせるとより好ましい。複数設ける外径突出部6bは、同じ形状であってもよいが、異なる形状のものを複数設けてもよい。該外径突出部6bは所定の間隔で配置されているため、外径突出部6b同士の間には、軸心部6aと外径突出部6bの下面および上面で囲む円環状の環状空間11が形成されている。また、外径突出部6bの側周部と縦型筒状反応器4内壁との間の間隙がクリアランス9となる。クリアランス9の代表直径は、縦型筒状反応器4の内径と外径突出部6bの外径の差分に相当する。
外径突出部6bが設けられる間隔(図2中のX)は、縦型筒状反応器4の内径と気流撹拌部材の軸心部6aの外径との差分(図2中のYの2倍、すなわち、2Y)に対して0.1~10.0倍、好ましくは0.3~3.0倍の範囲であることが好ましい。
なお、前記間隔Xは、外径突出部6bの厚みが1/2となる点を基準にして、その直上ないし直下の外径突出部6bの厚みが1/2の点までの距離に相当するが、外径突出部6bの上面から、その直上ないし直下の外径突出部6bの上面までの距離に近似することもできる。また、外径突出部6bの厚みによっては前記間隔Xは、外径突出部6bの上面から直上の外径突出部6bの下面まで、ないし外径突出部6bの下面から、その直下の外径突出部6bの上面までの距離に近似できる。
間隔Xはすべての外径突出部6bで一定であっても良いし、前記の範囲で異なる間隔を組み合わせてもよい。この場合、平均間隔が前記関係を満足すればよい。また、前記差分2Yは、必ずしも同一である必要はなく、外径突出部6bを設ける間隔Xごとによって変動してもよい。
所定の間隔Xで外径突出部6bを設けることで、クリアランス9を通過した原料ガスの一部が軸心部6aに向かう流れが生じる。これによって、環状空間11内で、原料ガスが撹拌され、均一に原料ガスを予熱することが可能となる。外径突出部6bの間隔Xが狭いと、クリアランス9だけを原料ガスが通過することになるので、そのまま、十分に予熱されずに原料ガスが通過したり、環状空間11での原料ガスの撹拌を行うことができないことがある。間隔Xが広すぎると、環状空間11に向かう流れが緩やかになり、原料ガスの撹拌効果が低くなるため、結果的に、クリアランス9を通る原料ガスと流れが大きく変化せず、撹拌効果が低くなる。このため、縦型筒状反応器4の内径や、外径突出部6bの大きさなどを鑑み、間隔Xを調整することが望ましい。
【0024】
まず、縦型筒状反応器4内に流入したシリコン原料ガスは、予熱ゾーンAで予熱される。縦型筒状反応器4内に流入したシリコン原料ガスのガス流は、気流撹拌部材6と縦型筒状反応器4の内壁面との間のクリアランス9に送り込まれる。クリアランス9の幅はシリコン原料ガスの流通を過度に妨げることなく、かつ原料ガスの流れが乱流になるように適宜設定される。なお、気流撹拌部材6の下端部は、予熱ゾーンAの下端よりも下方となる反応ゾーンBに位置していてもよい。予熱ゾーンAは、原料ガスの反応温度より5~50℃程度低い温度、より具体的には400℃~800℃程度に予熱されるが、原料ガスの組成や反応器内での反応温度により、その温度は適宜選択される。
【0025】
導入口3から送り込まれたシリコン原料ガスのガス流の一部は、そのまま縦型筒状反応器4の内壁面に沿ってクリアランス9を通過し、他の一部は、外径突出部6bに衝突して分流し上方に折り返したり、また、クリアランス9を通過する際に、軸心部に向かう流れとなる。これらの一部のシリコン原料ガスは、環状空間11で乱流を生じさせながらクリアランス9を通過したガスと合流する。この実施の形態に係るシリコン微粒子製造装置2によれば、シリコン原料ガスが低温化しやすい縦型筒状反応器4の予熱ゾーンBの中心部に、気流撹拌手段としての気流撹拌部材6を設けることで、原料ガスを均一かつ目的とする温度に予熱することが可能となり、所定の反応ゾーンBで原料ガス温度の不均一さを解消できるので、効率的にシリコン微粒子を生成することができる。
【0026】
なお、上述の実施の形態において、図3に示すように、縦型筒状反応器4の予熱ゾーンAの内周壁から内径方向に突出する環状の内径突出部を軸方向に複数備えていてもよい。この場合、外径突出部6bの軸方向の位置と内径突出部4aの軸方向の位置は重複しないようにする。すなわち、軸方向において、外径突出部6bと内径突出部4aが交互に位置するようにする。この場合、さらに複雑な経路を通過することになるため、より均一にシリコン原料ガスを予熱することができる。
【0027】
また、上述の実施の形態において、気流撹拌部材6内にヒーターを備えるようにしてもよい。これにより、縦型筒状反応器4の中心部からもシリコン原料ガスを加熱できるため、さらに均一にシリコン原料ガスを予熱することができる。
クリアランス9を通過したガス流、すなわち予熱ゾーンAで予熱されたガス流は、反応ゾーンBで熱分解されてシリコン微粒子となり、縦型筒状反応器4の微粒子導出口5より導出される。
【0028】
反応ゾーンBでは、予熱ゾーンAより温度を高くするが、通常、シリコン微粒子が形成しやすい、600~1000℃の反応条件が採用され、シリコン微粒子またその前駆体が主に生成する。得られたシリコン微粒子は、必要により冷却されて、図示しないサイクロン、バグフィルタ、電気集塵等の既知の粉体捕集手段で捕集される。
【0029】
また、縦型筒状反応器4には、冷却ゾーンを設けてシリコン微粒子を捕集するために段階的に700~200℃程度まで冷却してもよい。冷却ゾーンは、反応ゾーンBより低い温度に調整されれば特に制限されないが、たとえば反応ゾーンよりも低いに段階的に調整されるヒーターなどが設置される。
捕集されたシリコン微粒子は、脱塩素反応容器に装入し、さらに、必要に応じて750~1200℃の温度に加熱して脱塩素処理を行ってもよい。脱塩素処理は、トリクロロシラン、四塩化珪素(ただし脱塩素反応より生成する四塩化珪素は含まず)、酸素、水を含まない不活性なガスの流通下、または減圧下、真空排気下で行う。これにより、シリコン微粒子前駆体中の塩素や、シリコン微粒子に付着していた原料ガスおよび副生ガスの残留物が除去されて、酸化されにくいシリコン微粒子を製造できる。
【実施例
【0030】
実施例1
図1に示す態様の反応装置を製造し、シリコン微粒子の製造を行った。
縦型筒状反応器4の内径は、30mm、長さは1000mmであり、上部から250mmにカーボンヒーターよりなる予熱機構7aを設けて予熱ゾーンAを形成し、予熱ゾーンに続いて750mmの長さで、カーボンヒーターよりなる加熱機構7bを設けて反応ゾーンBを形成した。
また、上記予熱ゾーンAには、外径28mm、厚み5mmの外径突出部6bを外径16mmの軸心部6aに12枚設けた気流撹拌部材6を収容した。これにより、外径突出部6bの間隔Xは、縦型筒状反応器4の内径と気流撹拌部材の軸心部6aの外径の差分2Yに対して1.5倍となる。また、クリアランス9の幅は1mmとした。
原料ガス導入口3より、トリクロロシラン80mol%、窒素20mol%の原料ガスを15Nl/minで供給し、予熱ゾーンAの内壁温度を700℃、反応ゾーンBの内壁温度を740℃に調整して反応を行った。
微粒子導出口5より排出される反応排ガスの組成から算出した原料反応率および、反応排ガスと共に排出されるシリコン微粒子を捕集して、そのSEM画像から最大一次粒子径と最小一次粒子径を測定した結果を表1に示す。
比較例1
実施例1において、気流撹拌部を設けなかった以外は、同様の構造を有する反応装置を使用し、実施例1と同一の原料ガス組成およびガス流通量にしてシリコン微粒子を製造した。
微粒子導出口5より排出される反応排ガスの組成から算出した原料反応率および、反応排ガスと共に排出されるシリコン微粒子を捕集して、そのSEM画像から最大一次粒子径と最小一次粒子径を測定した結果を表1に示す。
気流撹拌部を設けない場合、原料ガスの反応率が低く、得られたシリコン微粒子の量も非常に少なかった。また、SEM観察では、大小の粒子が混在している様子が見られたが、本実施例によれば、原料反応率が高く、粒子径のそろったシリコン微粒子が得られた。
【表1】
【符号の説明】
【0031】
2 シリコン微粒子製造装置
3 原料ガス導入口
4 縦型筒状反応器
4a 内径突出部
5 微粒子導出口
6 気流撹拌部材
6a 軸心部
6b 外径突出部
7a 予熱機構
7b 加熱機構
9 クリアランス
11 環状空間
A 予熱ゾーン
B 反応ゾーン
X 外径突出部6bが設けられる間隔
Y 縦型筒状反応器4の内径と気流撹拌部材の軸心部6aの外径との差分
図1
図2
図3
図4
図5