(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】蒸発源装置及び蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20220614BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220614BHJP
H05B 33/10 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
C23C14/24 A
H05B33/14 A
H05B33/10
(21)【出願番号】P 2019174881
(22)【出願日】2019-09-26
(62)【分割の表示】P 2017237438の分割
【原出願日】2017-12-12
【審査請求日】2020-12-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】風間 良秋
(72)【発明者】
【氏名】近藤 喜成
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-047365(JP,A)
【文献】特開2000-223269(JP,A)
【文献】特開昭62-294166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
H01L 51/50
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸着材料が収容され
る材料収容部を含み、開口を有する容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の底部の一部を支持する容器支持部と、前記材料収容部とは離間して設けられた側面部と、を含み、前記容器と
前記加熱手段とを収容する収容部材と、
を有する蒸発源装置であって、
前記容器は、前記容器の開口が位置する高さと同じ高さに設けられて前記材料収容部から前記収容部材へ向かって突出した第1位置決め部を含み、
前記収容部材は、
前記側面部から前記容器へ向かって突出し
その先端が前記第1位置決め部の先端と対向して設けられた第
2位置決め部
を含
む、
ことを特徴とする蒸発源装置。
【請求項2】
前記第1位置決め部及び第2位置決め部は、互いに点接触又は線接触している
ことを特徴とする請求項1に記載の蒸発源装置。
【請求項3】
前記容器は、前記開口を覆う、昇華又は気化された蒸着材料が通過する開口を有する蓋部を含み、
前記蓋部の外周端部は、前記収容部材に対して突出して設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の蒸発源装置。
【請求項4】
前記
第2位置決め部は、前記側面部から突出した突出部であ
る
ことを特徴とする請求項
1乃至3のいずれか一項に記載の蒸発源装置。
【請求項5】
前記
第1位置決め部は、前記材料収容部から突出した突出部であ
る
ことを特徴とする請求項
1乃至4のいずれか一項に記載の蒸発源装置。
【請求項6】
前記
突出部は、
棒状又は板状に突出する
ことを特徴とする請求項4
又は5に記載の蒸発源装置。
【請求項7】
蒸着材料が収容される材料収容部を含み、開口を有する容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の底部の一部を支持する容器支持部と、側面部とを含み、前記容器と前記加熱手段とを収容する収容部材と、
を有する蒸発源装置であって、
前記加熱手段は、前記容器の開口が位置する高さと同じ高さに配されて前記側面部と前記材料収容部との間隔を規定する位置決め部によって間隔が規定された前記側面部と前記材料収容部との間に配されており、
前記容器は、前記開口を覆う、昇華又は気化された蒸着材料が通過する開口を有する蓋部を含み、
前記蓋部の外周端部は、前記収容部材に対して突出して設けられている
ことを特徴とする
蒸発源装置。
【請求項8】
チャンバと、
前記チャンバの内部に配置された、被処理体が載置される被処理体設置台と、蒸発源装置が設置される台座と、
を有する蒸着装置であって、
前記蒸発源装置は、請求項1乃至
7のいずれか一項に記載の蒸発源装置であり、
前記台座は、前記蒸発源装置の傾きを調整する傾き調整機構を有する
ことを特徴とする蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸発源装置及び蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディスプレイの一種として、有機材料の電界発光を用いた有機EL素子を備えた有機EL装置が注目を集めている。かかる有機ELディスプレイ等の有機電子デバイス製造において、蒸発源装置を用いて、基板上に有機材料や金属電極材料などの蒸着材料を蒸着させて成膜を行う工程がある。
【0003】
蒸着工程で用いられる蒸発源装置は、蒸着材料が収容される容器としての機能と、蒸着材料の温度を上昇させて蒸発させ、基板の表面に付着させるための加熱機能を有する。従来、加熱機能を向上させて良好な成膜を行うために、蒸着材料を均一に加熱できるような蒸発源装置が提案されている。
【0004】
特許文献1では、ヒータをノズル付近に配置することにより、蒸発源のノズル温度が熱輻射によって低下することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の構成では、蒸発材料を収容する坩堝の支持方法については記載されていない。蒸着材料を収容する坩堝を支持する機構は、蒸着材料を均一に加熱するために、坩堝との接点がなるべく少ないことが望ましい。特に、輻射熱により温度低下しやすい坩堝上部において、支持機構との接点を少なくすることで、坩堝の温度が、接点から低下するのを防止することができる。
【0007】
しかしながら、坩堝上部を固定せずに配置した場合、蒸着材料が通過する開口の位置を微調整することが難しい。開口の位置は、被蒸着体に蒸着する膜厚の均一性に影響するため、位置を制御することが重要になる。
【0008】
本発明は、蒸発源装置において、温度の低下を抑制しつつ、蒸着材料が通過する開口の位置制御を行うことができる蒸発源装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的のため、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、
蒸着材料が収容される材料収容部を含み、開口を有する容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の底部の一部を支持する容器支持部と、前記材料収容部とは離間して設けられた側面部と、を含み、前記容器と前記加熱手段とを収容する収容部材と、
を有する蒸発源装置であって、
前記容器は、前記容器の開口が位置する高さと同じ高さに設けられて前記材料収容部から前記収容部材へ向かって突出した第1位置決め部を含み、
前記収容部材は、前記側面部から前記容器へ向かって突出しその先端が前記第1位置決め部の先端と対向して設けられた第2位置決め部を含む、
ことを特徴とする蒸発源装置である。
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、
蒸着材料が収容される材料収容部を含み、開口を有する容器と、
前記容器を加熱する加熱手段と、
前記容器の底部の一部を支持する容器支持部と側面部とを含み、前記容器と、前記加熱手段とを収容する収容部材と、
を有する蒸発源装置であって、
前記加熱手段は、前記容器の開口が位置する高さと同じ高さに配されて前記側面部と前記材料収容部との間隔を規定する位置決め部によって間隔が規定された前記側面部と前記材料収容部との間に配されており、
前記容器は、前記開口を覆う、昇華又は気化された蒸着材料が通過する開口を有する蓋部を含み、
前記蓋部の外周端部は、前記収容部材に対して突出して設けられている
ことを特徴とする蒸発源装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、蒸発源装置の温度の低下を抑制しつつ、蒸着材料が通過する開口の位置制御を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状それらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。すなわち、この発明の範囲を以下の実施の形態に限定する趣旨のものではない。
【0013】
[実施例1]
<真空装置の概略構成>
図1は、蒸着装置(成膜装置)の構成を示す模式図である。蒸着装置は、チャンバ200を有する。チャンバ200の内部は、減圧雰囲気に維持される。真空チャンバ200の内部には、概略、被処理体設置台210によって保持された被処理体である基板10と、マスク220と、蒸発源装置240が設けられる。被処理体設置台210は、基板10を載置するための受け爪などの支持具や、基板を押圧保持するためのクランプなどの押圧具によって基板を保持する。
【0014】
基板10は、搬送ロボット(不図示)により真空チャンバ200内に搬送されたのち、被処理体設置台210によって保持され、成膜時には水平面(XY平面)と平行となるよう固定される。マスク220は、基板10上に形成する所定パターンの薄膜パターンに対応する開口パターンをもつマスクであり、例えばメタルマスクである。成膜時にはマスク220の上に基板10が載置される。
【0015】
真空チャンバ200内には、その他、基板10の温度上昇を抑制する冷却板(不図示)を備えていてもよい。また、真空チャンバの上には、基板10のアライメントのための機構、例えばX方向またはY方向のアクチュエータや、基板保持のためのクランプ機構用アクチュエータなどの駆動手段や、基板10やマスク220を撮像するカメラ(いずれも不図示)を備えていてもよい。
【0016】
蒸発源装置240は、内部に蒸着材料242が収容される、開口を有する容器244と、容器244の加熱を行うためのヒータ246(加熱手段)と、容器244とヒータ246を収容するため収容部材248を備える。
図1ではヒータ246は容器244の外側面に、収容部材248は、容器244の外側面と底部の外側に対向するように設けられているが、後述するように、これ以外の配置も可能である。その他に、シャッタ、膜厚モニタなどを備えていてよい(いずれも不図示)。これらの各構成要素については、後ほど詳しく述べる。また、成膜を一様に行うために蒸発源装置240を移動させる、蒸発源駆動機構250を備えてもよい。なお、
図1における蒸発源装置240の各構成要素の形状、位置関係、サイズ比は例示にすぎない。
【0017】
容器244の材質としては、例えばセラミック、金属、カーボン材料などが知られているが、これに限定されず、蒸着材料242の物性やヒータ246による加熱温度との関係で好ましいものを用いる。ヒータ246としては、例えばシースヒータや金属ワイヤ線などの抵抗加熱式のヒータが知られているが、これに限定されず、蒸着材料242を蒸発させる加熱性能があればよい。またヒータの形状についても、
図1のようなワイヤ状のほか、プレート状、メッシュ状など任意の形状を採用できる。収容部材248は熱効率を高める保温材(断熱材)により形成され、例えば金属等を利用できるが、これに限定されない。
【0018】
蒸着装置は制御部270を有する。制御部270は、蒸発源装置240の制御、例えば加熱の開始や終了のタイミング制御、温度制御、シャッタを設ける場合はその開閉タイミング制御、蒸発源駆動機構250を設ける場合はその移動制御などを行う。なお、複数の制御手段を組み合わせて制御部270を構成してもよい。複数の制御手段とは例えば、加熱制御手段、シャッタ制御手段、蒸発源駆動制御手段などである。また、ヒータ246を部位ごとに制御可能とした場合、それぞれの部位ごとに加熱制御手段を設けてもよい。制御部270は、基板10の搬送およびアライメント制御手段など、蒸発源装置240以外の機構の制御手段を兼ねていてもよい。
【0019】
制御部270は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/O、UIなどを有するコンピュータにより構成可能である。この場合、制御部270の機能は、メモリ又はストレージに記憶されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のコンピュータを用いてもよいし、組込型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を用いてもよい。あるいは、制御部270の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。なお、蒸着装置ごとに制御部270が設けられていてもよいし、1つの制御部270が複数の蒸着装置を制御してもよい。
【0020】
容器244内部に蒸着材料242が収容され、基板10のマスク220への載置やアライメントなどの準備が完了すると、制御部270の制御によってヒータ246が動作を開始し、蒸着材料242が加熱される。温度が十分に高まると、蒸着材料242が蒸発して基板10の表面に付着し、膜を形成する。複数の容器に別種の蒸着材料を収容しておくことで共蒸着も可能である。形成された膜を膜厚モニタ(不図示)等で測定しながら制御を行うことで、基板上に所望の厚さを持った膜が形成される。一様な厚さで成膜するために、例えば、基板10を回転させたり、蒸発源駆動機構250により蒸発源装置240を移動させたりしながら蒸着を行ってもよい。また、基板10の大きさによっては、複数の蒸発源装置を並行して加熱することも好ましい。容器244の形状は任意である。また、蒸発源の種類も、点状の蒸発源、線状の蒸発源、面状の蒸発源のいずれでも構わない。
【0021】
後述するように、ある種類の蒸着材料が成膜された基板上に別種の蒸着材料を成膜することで、複層構造を形成できる。その場合、容器内の蒸着材料を交換したり、容器自体を別種の蒸着材料が格納されたものに交換したりしてもよい。また、真空チャンバ内に複数の蒸発源装置を設けて交換しながら用いてもよいし、基板10を現在の蒸着装置から搬出し、別種の蒸着材料が収納された蒸発源装置を備える他の蒸着装置に搬入してもよい。
【0022】
<蒸発源装置の詳細構成>
図2(a)は、本実施形態の蒸発源装置240の構成を説明するための概略断面図である。
図2(b)、(c)は、蒸発源装置240の概略上面図である。
図1と共通する構成については同じ符号を付し、説明を簡略化する。本実施例の収容部材248は、側面部248aと位置決め部248c、容器支持部248bから構成される。
【0023】
側面部248aは、容器244の外側面に対向するように設けられる。また、容器244と側面部248aの間にヒータ246が配置される。側面部248aは、ヒータ246から容器244への加熱効率を高めるために配置される。
【0024】
容器支持部248bは、容器244の底部を支持している。
図2(a)では、容器支持部248bが凸状になっており、容器244の底部の外側の一部を支持している。底部の外側の一部を支持する形状により、容器244と容器支持部248bの接触領域が少なくなり、容器244の温度の低下を少なくすることができる。また、容器支持部248bは、側面部248aと同様に、ヒータ246から容器244への加熱効率を高める効果がある。
【0025】
位置決め部248cは、側面部248aから容器244の外側面方向へ突出して設けられる。位置決め部248cを設けることにより、容器244の位置を所定の範囲に定めることができる。容器の位置の許容範囲は、各々の状況で異なるが、例として容器の直径を1とした場合、位置決め部248cにより定められる、容器の位置の許容範囲の直径は、1.01~1.05と定めることができる。また、位置決め部248cを設けることにより、容器支持部248b、側面部248aと同様に、ヒータ246から容器244への加熱効率を高める効果もある。
【0026】
位置決め部248cの高さは、特に限定されない。しかし、容器244の開口が位置する高さと同じ高さに設けることで、容器支持部248bと容器244の底部の外側との接触領域が少なくても、容器244の位置を正確に定めることができる。
【0027】
位置決め部248cの形状例として、
図2(b)に、側面部248aから板状に突出して設けられている例を示す。
図2(c)では、位置決め部248cが、側面部248aから棒状に4つ突出して設けられている例を示す。棒状の位置決め部248cの個数は限定されない。位置決め部248cの形状として、この2例に限らず、板状の位置決め部248cが複数設けられていても良いし、側面部248aとの接続部は板状で容器244への先端部は棒状になっていても良い。また、板状、棒状の定義として、位置決め部248cが容器244に対して接する場合、接点が線接触となる位置決め部248cが板状であり、点接触となる位置決め部248cが棒状とする。
【0028】
収容部材248の側面部248a、容器支持部248b、位置決め部248cは、
図2(a)では、一体に記載されているが、別の機構を接続して構成しても良い。材質は、放射率が低く、かつ高温に耐えられるものが望ましく、具体的にはモリブデン、タンタル等があげられる。
【0029】
また、図には記載しないが、容器244に、位置決め部248cに対して棒状又は板状に突出する突出部を設けてもよい。
【0030】
[実施例2]
本実施例では、容器244に位置決め部を設ける構成について示す。他の実施例と共通する構成については同じ符号を付し、説明を簡略化する。
図3(a)に示すように、容器244は、材料収容部244aと位置決め部244bから構成される。収容部材248は、側面部248aと容器支持部248bから構成される。
【0031】
位置決め部244bは、容器244の材料収容部244aから収容部材248の側面部248aの方向へ突出して設けられる。位置決め部244bを設けることにより、容器244の位置を実施例1と同様に、所定の範囲に定めることができる。また、位置決め部2
44bを設けることにより、実施例1と同様に、ヒータ246から容器244への加熱効率を高める効果もある。
【0032】
位置決め部244bの高さは、特に限定されない。しかし、容器244の開口が位置する高さと同じ高さに設けることで、容器支持部248bと容器244の底部の外側との接触領域が少なくても、容器244の位置を正確に定めることができる。
【0033】
位置決め部244bの形状例として、
図3(b)に、材料収容部244aから板状に突出して設けられている例を示す。
図3(c)では、位置決め部244bが、材料収容部244aから棒状に4つ突出して設けられている例を示す。棒状の位置決め部244bの個数は限定されない。位置決め部244bの形状として、この2例に限らず、板状の位置決め部244bが複数設けられていても良いし、材料収容部244aとの接続部は板状で収容部材248への先端部は棒状になっていても良い。また、板状、棒状の定義として、位置決め部244bが収容部材248に対して接する場合、接点が線接触となる位置決め部244bが板状であり、点接触となる位置決め部244bが棒状とする。
【0034】
収容部材248の側面部248aと容器支持部248b、及び、容器244の材料収容部244aと位置決め部244bは、夫々、
図3(a)では、一体に記載されているが、別の機構を接続して構成しても良い。
【0035】
また、図には記載しないが、収容部材248に、位置決め部244bに対して棒状又は板状に突出する突出部を設けてもよい。
【0036】
[実施例3]
本実施例では、収容部材248に位置決め部を、容器244に突出部および蓋部を設ける構成について示す。他の実施例と共通する構成については同じ符号を付し、説明を簡略化する。
図4に示すように、容器244は、材料収容部244aと位置決め部244bから構成される。収容部材248は、側面部248aと容器支持部248b、突出部248dから構成される。
【0037】
位置決め部244bは、容器244の材料収容部244aから突出して設けられる。突出部248dは、収容部材248から突出して設けられる。位置決め部244bは、突出部248dに向けて設けられる。また、突出部248dは、位置決め部244bに向けて設けられる。このように、突出部248dと位置決め部244bは、お互いの方向に向けて設けられ、実施例1、2と同様に、容器244の位置を所定の範囲に定めることができる。また、位置決め部244b及び突出部248dを設けることにより、実施例1、2と同様に、ヒータ246から容器244への加熱効率を高める効果もある。
【0038】
容器244の開口上に、その開口を覆うように、昇華又は気化された蒸着材料が通過する開口を有する蓋部244cを設けても良い。この場合、蓋部244cの外周端部は、容器244の位置決め部244bと同様に、収容部材248の突出部248dに対して突出して設けられる。蓋部244cをこのような構成にすることで、蒸着材料の飛散方向に指向性を持たせることができ、かつ蓋部244cに設けられた開口をより正確に位置決めすることができるという効果を奏する。
【0039】
本実施例では、収容部材248に突出部248dを設ける構成としたが、突出部248dを設けない構成とし、位置決め部244b及び蓋部244cの外周端部が、収容部材248の側面部248aに対して突出して設けられている構成としてもよい。その場合も、上記と同様の効果を奏する。
【0040】
[実施例4]
本実施例では、収容部材248の下部に傾き調整機構を設ける構成について示す。他の実施例と共通する構成については同じ符号を付し、説明を簡略化する。
図5(a)に示すように、収容部材248は、チャンバ200内部に配置される台座320の上に設置されている。台座320は、ねじ穴を有しており、ねじで構成される傾き調整機構322が、そのねじ穴内に配置されている。
【0041】
傾き調整機構322は、台座320の下面から上面に向けて配置されており、台座320の上面より高い位置に傾き調整機構322のねじ先端を配置することで、台座320上に配置された収容部材248を傾けることができる。台座320は、
図5(b)に示すように、傾き調整機構322を複数有している。これらの傾き調整機構322を調整することによって、収容部材248の傾き方向を調整する。
図5(b)は、傾き調整機構322を有する台座320の概略平面図である。
図5(b)では、傾き調整機構322を6点としているが、これに限定されない。
【0042】
本実施例の傾き調整機構322を設けることによって、容器244が位置決め部248cにより定められた容器の位置の許容範囲内に配置された後でも、容器の位置の許容範囲内での配置誤差を調整することができる。また、傾き調整機構322について、本実施例では、ねじによる傾き調整機構を記載したが、台座320そのものが傾く機構としても良い。
【0043】
[実施例5]
上記各実施例は、それぞれの構成を可能な限り互いに組み合わせることができる。
図6は、その一例である。実施例5では、実施例3の蓋部244cと突出部248dを有する構成と、実施例4の傾き調整機構322を有する構成としている。更に、加熱効率を上げるため、側面部248aの外周に、第1の遮蔽板420を設け、材料収容部244a底部の外側にも、第2の遮蔽板422を設けている。ヒータ246は、上部と下部に分けられ、各々を個別に制御することが可能であり、より冷えやすい材料収容部244a上部をより高温に制御することができる。第1の遮蔽板420の外部には、ヒータ246の熱が外部に及ばないように、冷却用の配管440が設けられている。上記構成とすることで、より蒸発源装置の温度の低下を防止し、蒸着材料が通過する開口の位置制御を行うことができる構成としている。他の実施例と共通する構成については同じ符号を付した。本実施例で特に説明しない事項は、上記実施例と同様である。
【0044】
[実施例6]
<有機電子デバイスの製造方法の具体例>
本実施例では、蒸発源装置を備える蒸着装置を用いた有機電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、有機電子デバイスの例として有機EL表示装置を取り上げ、その構成及び製造方法を例示する。まず、製造する有機EL表示装置について説明する。
図7(a)は有機EL表示装置60の全体図、
図7(b)は1画素の断面構造を表している。本実施形態の蒸着装置が備える蒸発源装置240(
図1)としては、上記の各実施形態にいずれかに記載の装置を用いる。
【0045】
図7(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。詳細は後で説明するが、発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本図の有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されることが多いが、黄色
発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせでもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0046】
図7(b)は、
図7(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、被蒸着体である基板63上に、第1電極(陽極)64と、正孔輸送層65と、発光層66R,66G,66Bのいずれかと、電子輸送層67と、第2電極(陰極)68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R,66G,66B、電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R,66G,66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、第1電極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と第2電極68は、複数の発光素子62R,62G,62Bと共通で形成されていてもよいし、発光素子毎に形成されていてもよい。なお、第1電極64と第2電極68とが異物によってショートするのを防ぐために、第1電極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けられている。
【0047】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)および第1電極64が形成された基板63を準備する。
【0048】
第1電極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、第1電極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0049】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の蒸着装置に搬入し、被処理体設置台210にて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の第1電極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。ここで、本ステップでの成膜や、以下の各レイヤーの成膜において用いられる蒸着装置は、上記各実施形態のいずれかに記載された蒸発源装置を備えている。
【0050】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の蒸着装置に搬入し、被処理体設置台210にて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、基板をマスクの上に載置し、基板63の赤色を発する素子を配置する部分に、赤色を発する発光層66Rを成膜する。本例によれば、マスクと基板とを良好に重ね合わせることができ、高精度な成膜を行うことができる。
【0051】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の蒸着装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の蒸着装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の蒸着装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層65は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0052】
電子輸送層65までが形成された基板をスパッタリング装置に移動し、第2電極68を成膜し、その後プラズマCVD装置に移動して保護層70を成膜して、有機EL表示装置60が完成する。
【0053】
絶縁層69がパターニングされた基板63を蒸着装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、蒸着装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気または不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0054】
このようにして得られた有機EL表示装置は、発光素子ごとに発光層が精度よく形成される。従って、上記製造方法を用いれば、発光層の位置ずれに起因する有機EL表示装置の不良の発生を抑制することができる。本実施形態に係る蒸着装置によれば、蒸発源装置の温度の低下を抑制しつつ、蒸着材料が通過する開口の位置制御を行うことができるため、良好な蒸着が可能となる。
【符号の説明】
【0055】
240:蒸発源装置,244:容器,246:加熱手段,248:収容部材,248a:側面部,248b:容器支持部,248c:位置決め部