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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】色計測学を用いた基板の厚さ測定
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20220614BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
G01B11/06 H
H01L21/66 P
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019511393
(86)(22)【出願日】2017-08-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-11-07
(86)【国際出願番号】 US2017048605
(87)【国際公開番号】W WO2018039555
(87)【国際公開日】2018-03-01
【審査請求日】2020-08-18
(31)【優先権主張番号】62/379,920
(32)【優先日】2016-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ベンヴェニュ, ドミニク ジェー.
【審査官】山▲崎▼ 和子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-279297(JP,A)
【文献】特開昭62-042006(JP,A)
【文献】特開2003-346285(JP,A)
【文献】特開2010-021417(JP,A)
【文献】特開昭63-221209(JP,A)
【文献】特開平11-207614(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
H01L 21/64-21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の層の厚さを表す測定値を取得するための計測システムであって、
集積回路製造用の基板を保持する支持体と、
前記支持体によって保持される前記基板の少なくとも一部のカラー画像を撮像するように配置されたカラーカメラと、
コントローラであって、
前記カメラから前記カラー画像を受信し、
第1のカラーチャネルと第2のカラーチャネルを含む、少なくとも2次元の座標空間に所定の経路を保存し、
前記所定の経路上の位置の関数として、厚さを表す値を提供する関数を保存し、
前記カラー画像のピクセルについて、前記ピクセルの前記カラー画像のカラーデータから前記座標空間での前記ピクセルの座標を決定し、
前記ピクセルの前記座標に最も近い前記所定の経路上の点の位置を決定し、
前記関数と前記所定の経路上の前記点の前記位置から厚さを表す値を計算するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記コントローラは、前記ピクセルを取り囲む前記基板上の定められた物理領域から、ピクセルに関連する座標のクラスタを解析し、前記座標空間での前記クラスタの主軸を決定することによって前記所定の経路の縮退を解消し、前記主軸に平行で最も近い前記所定の経路の分岐を選択するように構成される、
計測システム。
【請求項2】
前記第1のカラーチャネルと前記第2のカラーチャネルは、色相、彩度、明度、X、Y、Z、赤の色度、緑の色度、及び青の色度を含むカラーチャネルのグループから選択される、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記第1のカラーチャネルは赤の色度で、前記第2のカラーチャネルは緑の色度である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、前記所定の経路の、前記座標を通過する法線ベクトルを決定することによって、前記ピクセルの前記座標に最も近い前記所定の経路上の点の位置を決定するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記関数は、第1の頂点から第2の頂点までの前記所定の経路に沿った距離(L)と前記第1の頂点から前記所定の経路上の点までの前記所定の経路に沿った距離(D)に基づいて、前記所定の経路の前記第1の頂点の第1の値(T1)と、前記所定の経路の前記第2の頂点の第2の値(T2)との間の補間によって前記所定の経路上の点での値を取得すること(T=T1+D/L(T2-T1))を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第1の頂点は前記所定の経路の始点で、前記第2の頂点は前記所定の経路の終点である、請求項に記載のシステム。
【請求項7】
前記コントローラは、前記カラー画像の複数のピクセルの各々に関して、前記ピクセルの前記カラー画像のカラーデータから前記座標空間での前記ピクセルの座標を決定し、前記ピクセルの前記座標に最も近い前記所定の経路上の前記点の前記位置を決定し、前記関数及び前記所定の経路上の前記点の前記位置から前記厚さを表す前記値を計算し、前記基板上の複数の異なる位置に対して厚さを表す複数の値を提供するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記コントローラは、前記厚さを表す前記値が閾値を満たさない前記複数のピクセルから、ピクセルの数をカウントするように構成される、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記カラーカメラは前記基板を横切ってスキャンすることにより前記基板の一部の画像を撮像するように構成され、前記コントローラは、前記カラーカメラの複数の画像から全基板の2次元カラー画像を生成するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記コントローラは、前記カラー画像に画像マスクを適用するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記支持体は集積回路製造ツール内に配置され、前記集積回路製造ツールは研磨装置を備え、前記ツールは前記基板を前記研磨装置内へ移送するロボットを備え、前記コントローラは、前記研磨装置による前記基板の表面の研磨の前又は後に基板が測定されるように構成される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
基板の層の厚さを表す測定値を取得するためのコンピュータプログラム製品であって、非一過性のコンピュータ可読媒体に有形に具現化された前記コンピュータプログラム製品は、プロセッサが、
カラーカメラから前記基板のカラー画像を受信し、
第1のカラーチャネル及び第2のカラーチャネルを含む少なくとも2次元の座標空間に所定の経路を保存し、
厚さを表す値を前記所定の経路上の位置の関数として提供する関数を保存し、
前記カラー画像のピクセルについて、前記ピクセルの前記カラー画像のカラーデータから前記座標空間での前記ピクセルの座標を決定し
前記ピクセルの前記座標に最も近い前記所定の経路上の点の位置を決定し、
前記関数及び前記所定の経路上の前記点の前記位置から前記基板上の層の厚さを表す値を計算し、また、
前記ピクセルを取り囲む前記基板上の定められた物理領域から、ピクセルに関連する座標のクラスタを解析し、前記座標空間での前記クラスタの主軸を決定することによって前記所定の経路の縮退を解消し、前記主軸に平行で最も近い前記所定の経路の分岐を選択するようにする
命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【請求項13】
基板の層の厚さを表す測定値を取得するための方法であって、
カラーカメラの視野内に集積回路製造用の基板を配置すること、
前記カラーカメラから前記基板のカラー画像を受信すること、
第1のカラーチャネルと第2のカラーチャネルを含む、少なくとも2次元の座標空間に所定の経路を保存すること、
厚さを表す値を前記所定の経路上の位置の関数として提供する関数を保存すること、
前記カラー画像のピクセルについて、前記ピクセルの前記カラー画像のカラーデータから前記座標空間の前記ピクセルの座標を決定すること
前記ピクセルの前記座標に最も近い前記所定の経路上の点の位置を決定すること、
前記関数及び前記所定の経路上の前記点の前記位置から、前記基板上の層の厚さを表す値を計算すること、及び
前記ピクセルを取り囲む前記基板上の定められた物理領域から、ピクセルに関連する座標のクラスタを解析し、前記座標空間での前記クラスタの主軸を決定することによって前記所定の経路の縮退を解消し、前記主軸に平行で最も近い前記所定の経路の分岐を選択すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板の層の厚さの計測などのための光学計測学に関する。
【背景技術】
【0002】
集積回路は、典型的には、シリコンウェハに導電層、半導電層、又は絶縁層を連続して堆積させることによって、基板上に形成される。1つの製造ステップは、非平坦面上に充填層を堆積し、充填層を平坦化することを含む。ある応用例では、充填層は、パターン層の上面が露出するまで平坦化される。例えば、導電性充填層がパターニング済み絶縁層上に堆積され、絶縁層内のトレンチまたは孔を充填することができる。平坦化後、高くなった絶縁層のパターン間に残っている金属層の部分が、基板上の薄膜回路間の導電経路になるビア、プラグ、およびラインを形成する。酸化物研磨といった他の応用例では、充填層は、非平坦面上に所定の厚さが残るまで、平坦化される。加えて、基板表面の平坦化は、フォトリソグラフィのためには通常必要とされる。
【0003】
化学機械研磨(CMP)は、認知されている平坦化方法の1つである。この平坦化方法では通常、基板がキャリアまたは研磨ヘッドに取り付けられる必要がある。基板の露出面は通常、回転研磨パッドに当たるようにして置かれる。キャリアヘッドが、基板に制御可能な荷重をかけ、基板を研磨パッドに押し付ける。通常、研磨用の研磨スラリが、研磨パッドの表面に供給される。
【0004】
スラリ分布、研磨パッド状態、研磨パッドと基板の間の相対速度、および基板への荷重の各ばらつきが、材料除去速度のばらつきを生じさせる可能性がある。これらのばらつき、並びに基板層の初期厚さのばらつきが、研磨終点に到達するのに必要な時間のばらつきを生じさせる。従って、単に研磨時間の関数として研磨終点を決定することは、基板の過剰研磨、又は研磨不足につながりうる。
【0005】
インライン又は単体の計測ステーションなどで、研磨前及び研磨後の基板の厚さ測定には、分光や偏光などの様々な光学計測システムが使用できる。加えて、単色光学モニタリングや渦電流モニタリングなどの、様々なインシトゥ(その場の)モニタリング技術が研磨終点の検出に利用できる。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、基板の層の厚さを表す測定値を得るための計測システムは、集積回路製造のための基板と、支持体によって保持される基板の少なくとも一部のカラー画像を撮像するように配置されたカラーカメラと、コントローラとを含む。コントローラは、カメラからカラー画像を受け取り、第1のカラーチャネルと第2のカラーチャネルを含む少なくとも2次元の座標空間に所定の経路を保存し、所定の経路上の位置の関数として厚さを表す値を提供する関数を保存し、カラー画像のピクセルに関して当該ピクセルのカラー画像のカラーデータから座標空間での当該ピクセルの座標を決定し、当該ピクセルの座標に最も近い所定の経路上の点の位置を決定し、所定の経路上の点の関数と位置から厚さを表す値を計算するように構成されている。
【0007】
別の態様は、プロセッサが基板上の層の厚さを表す測定値を取得できるようにする命令を含む、コンピュータプログラム製品である。別の態様は、基板上の層の厚さを表す測定値を取得する方法である。
【0008】
任意の態様の実装は、一又は複数の下記の特徴を含む。
【0009】
座標空間は2次元又は3次元になりうる。
【0010】
第1のカラーチャネル及び選択されたカラーチャネルは、色相、彩度、明度、X、Y、Z、赤の色度、緑の色度、及び青の色度を含むカラーチャネルのグループから選択されうる。例えば、第1のカラーチャネルは赤の色度、第2のカラーチャネルは緑の色度になりうる。
【0011】
コントローラは、厚さ経路(thickness path)の法線ベクトルが座標を通過する経路上の点を決定することによって、所定の経路上の点の位置を決定するように構成されうる。コントローラは、ピクセルを取り囲む基板上の定められた物理領域から、ピクセルに関連する座標のクラスタを解析することによって、所定の経路の縮退を解消するように構成されうる。コントローラは、座標空間でのクラスタの主軸を決定することによって所定の経路の縮退を解消し、その主軸に平行で最も近い所定の経路の分岐を選択するように構成されうる。
【0012】
関数は、第1の頂点から点までの距離に基づいて、所定の経路の第1の頂点の第1の値と所定の経路の第2の頂点の第2の値との間の補間を含みうる。第1の頂点は所定の経路の始点で、第2の頂点は所定の経路の終点である。コントローラは、一又は複数のベジェ関数又はポリラインを保存することによって、所定の経路を保存するように構成されうる。
【0013】
コントローラは、カラー画像の複数のピクセルの各々に関して、ピクセルのカラー画像のカラーデータから座標空間でのピクセルの座標を決定し、ピクセルの座標に最も近い所定の経路上の点の位置を決定し、関数及び所定の経路上の点の位置から厚さを表す値を計算し、基板上の複数の異なる位置に対して厚さを表す複数の値を提供する
ように構成されうる。コントローラは、厚さを表す値が閾値を満たさない複数のピクセルから、ピクセルの数をカウントするように構成されうる。コントローラは、カラー画像に画像マスクを適用するように構成されうる。
【0014】
カラーカメラは全基板よりも少ない数の画像を撮像するように構成されてもよく、基板を横切ってスキャンするように構成され、コントローラは、カラーカメラの複数の画像から全基板の2次元カラー画像を生成するように構成されている。カラーカメラは、基板のスキャニング中に基板の表面に平行な第1の軸に沿って配置された検出器エレメントを有するカラーラインスキャンカメラであってよく、システムは、第1の軸に平行な縦軸を有し、基板のスキャニング中に光を非ゼロ入射角で基板に向けるように構成された細長い白色光源と、光源及びカメラを支持するフレームと、光源とカメラが基板を横切ってスキャンするように、第1の軸に垂直な第2の軸にそって、フレームと支持体との間の相対運動を引き起こすモータとを含みうる。
【0015】
支持体は、半導体製造ツールのインライン計測ステーション内に配置されうる。半導体製造ツールは化学機械研磨機であってよく、このツールは、基板をインライン計測ステーションの中へ移送するロボットを含みうる。また、コントローラは、化学機械研磨機による基板表面の研磨の前又は後に基板が測定されるように構成されてもよい。
【0016】
実装は、以下の一又は複数の潜在的な利点を含みうる。基板層のある位置の厚さは、基板層の別の位置に対して絶対的又は相対的に決定されうるが、許容できない変動が検出されることがある。この情報は、研磨パラメータを制御するため、フィードフォワード又はフィードバックで使用可能で、厚さの均一性を改善しうる。変動を決定するアルゴリズムは単純で、計算負荷も軽くなりうる。
【0017】
一又は複数の実装の詳細は、添付図面及び以下の説明で記述される。その他の態様、特徴及び利点は、これらの説明及び図面から、並びに特許請求の範囲から、明白になろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】インライン光学測定システムの一例の概略図である。
図2】層の厚さを決定する方法のフロー図である。
図3】基板の概略上面図である。
図4】マスクの概略図である。
図5】2つのカラーチャネルの座標空間での基板からの反射光の色の進化を示す例示的なグラフである。
図6】2つのカラーチャネルの座標空間での所定の経路を示す例示的なグラフである。
図7】カラー画像データから層の厚さを決定する方法のフロー図である。
図8】試験基板のカラー画像に由来する2つのカラーチャネルの座標空間でのヒストグラムを示す例示的なグラフである。 様々な図面における類似の参照符号は、類似した要素を指し示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
基板上の層の厚さは、例えば、インライン又は単体の計測ステーションで、研磨の前又は後に光学的に測定されうる。しかしながら、分光分析などの幾つかの光学的手法は、高価な分光器と、スペクトルデータに対して計算負荷の大きい操作が必要となる。計算負荷は別として、幾つかの状況では、アルゴリズムは増大し続けるユーザーの精度要件を満たせない結果となる。しかしながら、別の計測手法は、基板のカラー画像を取得し、色空間内で画像を解析して、層の厚さを決定する。特に、2次元色空間内の経路に沿った位置は、研磨の現在の状態に関する情報、例えば、材料の除去量又は残存量などの情報を提供することができる。
【0020】
図1を参照すると、研磨装置100は、インライン(インシーケンスとも称される)光学計測システム160、例えば、カラー画像システムを含む。
【0021】
研磨装置100は、各キャリアヘッドが基板10を移送するように構成された一又は複数のキャリアヘッド126、一又は複数の研磨ステーション106、及び、キャリアヘッドへの基板の積み込み及び積み降ろしを行う移送ステーションを含む。各研磨ステーション106は、プラテン120上に支持された研磨パッド130を含む。研磨パッド110は、外側研磨層112及び、より軟性のバッキング層114を有する、二層研磨パッドであってよい。
【0022】
キャリアヘッド126は支持体128から吊るされ、研磨ステーション間で移動可能になりうる。幾つかの実装では、支持体128はオーバーヘッドトラックで、キャリアヘッド126はトラックに装着されたキャリッジ108に連結される。オーバーヘッドトラック128により、各カートリッジ108は研磨ステーション124及び移送ステーションの上に選択的に配置可能となる。別の態様では、幾つかの実装で、支持体128は回転可能なカルーセルであり、カルーセルの回転はキャリアヘッド126を円形の経路に沿って同時に動かす。
【0023】
研磨装置100の各研磨ステーション106は、研磨スラリなどの研磨液136を研磨パッド130の上に供給するポート134を含むことができる。研磨装置100の各研磨ステーション106は、研磨パッド130を一定した研磨状態に維持するために、研磨パッド130を磨く研磨パッド調整装置をさらに含みうる。
【0024】
各キャリアヘッド126は、基板10を研磨パッド130に当接して保持するように操作可能である。各キャリアヘッド126は、各基板それぞれに関連付けされる研磨パラメータ、例えば圧力を、個別制御することができる。具体的には、各キャリアヘッド126は、基板10を可撓性膜144の下に保持する保持リング142を含むことができる。各キャリアヘッド126はまた、膜によって画定された、個別制御可能で加圧可能な複数のチャンバ(例えば3つのチャンバ146a~146c)を含み、これらのチャンバは、可撓性膜144上の(したがって、基板10上の)関連するゾーンに、個別に制御可能な圧力を印加することができる。説明を簡略化するために、図1には3個のチャンバのみを図示したが、1個もしくは2個のチャンバ、または4個以上のチャンバ、例えば5個のチャンバがあってもよい。
【0025】
各キャリアヘッド126は、支持体128から吊るされ、そして、ドライブシャフト154によってキャリアヘッドの回転モータ156に接続されており、これによりキャリアヘッドは軸127の周囲を回転することができる。任意選択で、各キャリアヘッド140は、例えば、トラック128上のキャリッジ108の駆動によって、またはカルーセル自体の回転振動によって、横方向に振動することができる。動作中、プラテンはその中心軸121の周囲を回転し、各キャリアヘッドは、その中心軸127の周囲を回転し、研磨パッドの上面を横切って横方向に移動する。横方向のスイープは、研磨表面212に平行な方向になる。横方向のスイープは、直線運動又は円弧運動になりうる。
【0026】
プログラム可能コンピュータなどのコントローラ190が、プラテン120およびキャリアヘッド126の回転速度を独立に制御するために各モータに接続される。例えば、各モータは、付随するドライブ軸の角度位置又は回転速度を測定するエンコーダを含むことができる。同様に、コントローラ190は、各キャリアヘッド126の横方向の運動を独立に制御するため、各カートリッジ108のアクチュエータ及び/又はカルーセルの回転モータに接続されている。例えば、各アクチュエータは、トラック128に沿ってカートリッジ108の位置を測定する線形エンコーダを含みうる。
【0027】
コントローラ190は、中央処理装置(CPU)、メモリ、及びサポート回路、例えば、入力/出力回路、電源、クロック回路、キャッシュ、などを含むことができる。メモリはCPUに接続される。メモリは、非一時的な計算可能可読媒体であり、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読出し専用メモリ(ROM)、フロッピーディスク、ハードディスク、または他の形状のデジタルストレージなどの、1つまたは複数の容易に利用可能なメモリでありうる。加えて、単一のコンピュータとして図示されているが、コントローラ190は、例えば、複数の独立に動作するプロセッサ及びメモリを含む分散システムでありうる。
【0028】
インライン光学計測システム160は研磨装置100内に配置されるが、研磨工程中は測定を行わず、むしろ測定値は、各研磨工程の合間に、例えば、基板が1つの研磨ステーションから別の研磨ステーションまでの移動中に、或いは移送ステーションとの間での移動中に収集される。
【0029】
インライン光学計測システム160は、2つの研磨ステーション106の間、例えば、2つのプラテン120の間の位置で支持されるセンサアセンブリ161を含む。特に、センサアセンブリ161は、支持体128によって支持されたキャリアヘッド126が、基板10をセンサアセンブリ161の上に配置できるような位置に配置される。
【0030】
研磨装置100が3つの研磨ステーションを含み、基板を第1の研磨ステーションから第2の研磨ステーション、第3の研磨ステーションへ順次運ぶ実装では、一又は複数のセンサアセンブリ161は、移送ステーションと第1の研磨ステーションとの間、第1の研磨ステーションと第2の研磨ステーションとの間、及び/又は第3の研磨ステーションと移送ステーションとの間に配置されうる。
【0031】
センサアセンブリ161は、光源162と、光検出器164と、コントローラ190、光源162、及び光検出器164間で信号を送受信するための回路166とを含むことができる。
【0032】
光源162は白色光を放射するように操作可能であってよい。一実装では、放射される白色光は200~800ナノメートルの波長を有する光を含む。適した光源は、白色光発光ダイオード(LED)、又はキセノンランプ又はキセノン水銀ランプのアレイである。光源162は、光168を非ゼロ入射角αで基板10の露出面に向けるように配向されている。入射角αは、約30°から75°、例えば50°になりうる。
【0033】
光源は、基板10の幅に広がるほぼ直線的な細長い領域を照らすことができる。光源162は、光を光源から細長い領域に広げるビームエクスパンダなどの光学機器を含みうる。代替的に、又は追加的に、光源162は、線形配列の光源を含みうる。光源162自体、及び基板上の照らし出された領域は細長くなり、基板の表面に平行な縦軸を有しうる。
【0034】
光が基板10に到達する前に光を拡散するには、ディフューザー170を光の経路168に配置することが可能で、或いは、光源162はディフューザーを含みうる。
【0035】
検出器164は、光源162からの光に敏感なカラーカメラである。カメラは検出器素子のアレイを含む。例えば、カメラはCCDアレイを含みうる。幾つかの実施形態では、アレイは一列の検出器素子である。例えば、カメラはラインスキャンカメラであってよい。検出器素子の列は、光源162によって照らされた細長い領域の縦軸に平行に延在しうる。光源162が光放出素子の列を含む場合、検出器素子の列は、光源162の縦軸に平行な第1の軸に沿って延在しうる。検出器素子の列は1024個以上の素子を含みうる。
【0036】
カメラ164は、基板の視野を検出器素子178のアレイの上に投影するため、適切な焦点調節光学機械172と共に構成される。視野は、基板10の幅全体を見るために、十分に長く(例えば、150~300mmの長さに)なりうる。関連する光学機械172を含むカメラ164は、個々のピクセルが約0.5mm以下の長さを有する領域に対応するように、構成されうる。例えば、視野が約200mmの長さで、検出器164が1024個の素子を含むと仮定すると、ラインスキャンカメラによって生成される画像は約0.5mmの長さのピクセルを有しうる。画像の長さの解像度を決定するため、視野(FOV)の長さは、長さ解像度に達するようにFOV上に投影されるピクセル数で除算される。
【0037】
カメラ164はまた、ピクセル幅がピクセル長と同等になるように構成されうる。例えば、ラインスキャンカメラの利点は、高速のフレームレートである。フレームレートは少なくとも5kHzになりうる。フレームレートは、画像領域が基板10を横切ってスキャンし、ピクセル幅がピクセル長と同等、例えば、約0.3mm以下になるような周波数に設定されうる。
【0038】
光源162及び光検出器164は、ステージ180上に支持されうる。光検出器164がラインスキャンカメラの場合、光源162とカメラ164は、画像領域が基板の長さを横切ってスキャンできるように、基板10に対して可動である。特に、相対運動は、基板10の表面に平行で、ラインスキャンカメラ164の検出器素子の列に垂直な方向になりうる。
【0039】
幾つかの実装では、ステージ182は静止し、キャリアヘッド126は、例えば、カートリッジ108の運動又はカルーセルの回転振動によって移動する。幾つかの実装では、画像撮影のためにキャリアヘッド126が静止している間に、ステージ180は移動可能である。例えば、ステージ180は、線形アクチュエータ182によってレール184に沿って移動可能である。いずれの場合でも、これにより、スキャンされる領域が基板10を横切って移動する際に、光源162とカメラ164は互いに対して固定された位置に留まることができる。
【0040】
基板を横切って一緒に移動するラインスキャンカメラと光源を有することで見込まれる利点は、従来の2Dカメラと比較して、光源とカメラとの間の相対角度が、ウエハを横切る位置が変化しても、一定に保たれるということである。その結果、視野角の変化によって引き起こされるアーチファクトは低減、又は除去されうる。しかも、従来の2Dカメラが固有の射影ひずみを示し、画像変換によって補正が必要となるのに対して、ラインスキャンカメラは射影ひずみを除去することが可能である。
【0041】
センサアセンブリ161は、基板10と光源162と検出器164との間の垂直距離を調整するための機構を含みうる。例えば、センサアセンブリ161は、ステージ180の垂直距離を調整するアクチュエータになりうる。
【0042】
任意選択で、偏光フィルタ174は、例えば、基板10と検出器164との間の光路に配置されうる。偏光フィルタ184は円偏光子(CPL)になりうる。典型的なCPLは、直線偏光子と1/4波長板との組み合わせである。偏光フィルタ184の偏光軸の正しい配向は、画像のかすみを減らし、望ましい視覚的特徴を際立たせ、強調することができる。
【0043】
基板の最も外側の層が半透明層、例えば、誘電体層であると仮定すると、検出器164で検出される光の色は、基板表面の組成、基板表面の平滑性、及び/又は、基板上の一又は複数の層(例えば、誘電体層)の異なる界面から反射された光の間での干渉の量、などに依存する。
【0044】
上述のように、光源162と光検出器164は、これら自体の動作を制御し、これらの信号を受信するように操作可能な演算デバイス、例えばコントローラ190に接続可能である。
【0045】
図2を参照すると、コントローラは、光検出器164からの個々の画像ラインを、2次元のカラー画像に組み立てる(ステップ200)。カメラ164は、赤青緑の各々に対して、別々の検出器素子を含みうる。2次元カラー画像は、赤青緑の各カラーチャネルに対して、白黒画像204、206、208を含みうる。
【0046】
コントローラは、各カラーチャネルの画像の強度値に、オフセット及び/又はゲイン調整を適用することができる(ステップ210)。各カラーチャネルは異なるオフセット及び/又はゲインを有しうる。
【0047】
任意選択により、画像は正規化されうる(ステップ220)。例えば、測定した画像と標準的な事前定義された画像との間の差分が計算可能である。例えば、コントローラは、赤青緑の各カラーチャネルに対して、背景画像を保存することが可能で、各カラーチャネルについて、背景画像は測定した画像から差し引くことができる。別の態様では、測定した画像は、標準的な事前定義された画像で除算されることもありうる。
【0048】
画像は低周波数の空間変動を取り除くため、フィルタ処理されうる(ステップ230)。幾つかの実装では、画像は赤青緑(RGB)の色空間から色相・彩度・輝度(HSL)の色空間に変換され、フィルタはHSL色空間に適用された後、画像は赤緑青(RGB)色空間に逆変換される。例えば、HSL色空間では、輝度チャネルは低周波数の空間変動を取り除くためフィルタ処理可能で、すなわち、色相と彩度のチャネルはフィルタ処理されない。幾つかの実装では、輝度チャネルは、次いで赤、緑及び青の画像に適用されるフィルタの生成に使用される。
【0049】
幾つかの実装では、平滑化は第1の軸にのみ沿って行われる。例えば、移動方向186に沿ったピクセルの輝度値は、第1の軸に沿った位置のみの関数である平均輝度値を提供するため、共に平均化されうる。画像ピクセルの各列は、第1の軸に沿った位置の関数である平均輝度の対応する部分によって分割されうる。
【0050】
コントローラは、基板10(図4参照)の上のウエハノッチ又はウエハフラットなどのウエハ配向の特徴16の位置を特定するため、画像を解析する画像処理技術を使用することができる(ステップ240)。画像処理技術はまた、基板10の中心18の位置を特定するためにも使用できる(図4参照)。
【0051】
このデータに基づいて、画像は、例えば拡大縮小、及び/又は回転、及び/又は平行移動などによって、標準的な画像座標フレームに変換される(ステップ250)。例えば、画像は、ウエハの中心が画像の中心点になるように平行移動可能であり、及び/又は、基板のエッジが画像のエッジになるように拡大縮小可能であり、及び/又は、画像のx軸と、ウエハの中心とウエハ配向の特徴とをつなぐ半径方向の放射状セグメントとの間の角度が0°になるように回転可能である。
【0052】
任意選択により、画像マスクは、画面からはみ出る画像データ部分に適用されうる(ステップ260)。例えば、図3を参照すると、典型的な基板10は複数のダイ12を含む。スクライブライン14はダイ12を分割しうる。幾つかの応用では、ダイに対応する画像データのみを処理するのが有用となりうる。この場合、図4を参照すると、非マスク領域22は空間位置でダイ12に対応し、マスク領域24はスクライブライン14に対応した状態で、画像マスクはコントローラによって保存可能である。マスク領域24に対応する画像データは、閾値化ステップ中に処理されないか、使用されない。別の態様では、非マスク領域はスクライブラインに対応し、或いは、非マスク領域は各ダイの残りの部分がマスクされた状態で各ダイの一部になり、或いは、非マスク領域は残りのダイとスクライブラインがマスクされた状態の特定のダイになり、非マスク領域は基板上の各ダイの残りの部分がマスクされた状態で特定のダイの一部になるように、マスク領域24はダイに対応しうる。幾つかの実装では、ユーザーは、コントローラ190上のグラフィカルユーザーインターフェースを使用して、マスクを定義することができる。
【0053】
このステージでのカラーデータは、厚さを表す値を計算するために使用できる(ステップ270)。この値は、厚さ、又は取り除かれた材料の量、又は研磨処理での進捗量を(例えば、基準の研磨処理との比較で)示す値になりうる。計算は、画像中のマスクされていないピクセルに対して実行されうる。次にこの値は、研磨パラメータを制御するフィードフォワード又はフィードバックの用途で利用可能で、厚さ均一性の改善をもたらす。例えば、各ピクセルの値は、エラー信号画像を生成するため、ターゲット値と比較することが可能で、このエラー信号画像は、フィードフォワード又はフィードバック制御に使用可能である。
【0054】
典型的な値の計算を理解するのに役立つ背景について説明する。カラー画像から任意のピクセルが与えられると、2つのカラーチャネルに対応する値のペアが、所定のピクセルのカラーデータから抽出することができる。したがって、値の各ペアは、第1のカラーチャネル及びこれとは異なる第2のカラーチャネルの座標空間での座標を定義することができる。見込まれるカラーチャネルは、色相、彩度、明度、X、Y、Z(例えば、CIE1931XYZ色空間の)、赤の色度、緑の色度、及び青の色度を含む。
【0055】
図5を参照すると、例えば、研磨が始まると、値のペア(例えば、V10、V20)は、2つのカラーチャネルの座標空間500内の初期座標502を定義する。しかしながら、研磨が進むにつれて、反射光のスペクトルが変化するため、光の色彩構成は変化し、2つのカラーチャネルの値(V1、V2)は変化する。その結果、2つのカラーチャネルの座標空間での座標の位置は、研磨が進むにつれて変化し、座標空間500内に経路504を描き出す。
【0056】
図6及び図7を参照すると、厚さを表す値を計算するため、
2つのカラーチャネルの座標空間500内の所定の経路604は、例えば、コントローラ190のメモリ内に保存される(ステップ710)。所定の経路は基板の測定に先立って生成される。経路404は、開始座標402から終了座標406まで続きうる。経路404は、開始時の基板の層の厚さに対応する開始座標402、及び層の最終の厚さに対応する終了座標によって、全研磨処理を表すことができる。別の態様では、経路は研磨処理の一部だけ、例えば、研磨終了時の基板を横切る層の厚さの予想される分布を表しうる。
【0057】
幾つかの実装では、所定の経路404を生成するため、設定された基板は、デバイス基板として使用される目標の厚さ近くまで研磨される。設定された基板のカラー画像は、光学計測システム160を用いて取得される。基板を横切る研磨速度は一般的に一様でないため、基板上の異なる位置は異なる厚さを有し、その結果、異なる色を反射し、第1のカラーチャネルと第2のカラーチャネルの座標空間で異なる座標を有する。
【0058】
図8を参照すると、非マスク領域内に含まれるピクセルを用いて、2次元(2D)ヒストグラムが計算されている。すなわち、カラー画像を用いると、設定された基板のマスクされていない部分のピクセルの一部又は全部に対する座標値を用いて、散布図800が第1のカラーチャネルと第2のカラーチャネルの座標空間に生成される。散布図中の各点802は、特定のピクセルの2つのカラーチャネルの値のペア(V1、V2)である。散布図800は、コントローラ190又は他のコンピュータのディスプレイに表示されうる。
【0059】
上述のように、見込まれるカラーチャネルは、色相、彩度、明度、X、Y、Z(例えば、CIE1931XYZ色空間の)、赤の色度、緑の色度、及び青の色度を含む。幾つかの実装では、第1のカラーチャネルは赤の色度(r)で、第2のカラーチャネルは緑の色度(g)で、それぞれ、r=R/(R+G+B)及びg=R/(R+G+B)で定義される。ここでR、G及びBは、カラー画像の赤、緑及び青のカラーチャネルに対する強度値である。
【0060】
厚さ経路604は、半導体製造施設のオペレータなどのユーザーによって、
コントローラ190などのコンピュータと連動するグラフィックユーザーインターフェースを用いて作成されうる。例えば、散布図が表示されている間に、ユーザーは手動により、例えば、散布図の表示の選択された点をクリックするマウス操作で、散布図に従い散布図を覆う経路を構築することができる。
【0061】
別の態様では、厚さ経路604は、散布図の座標の組を解析し、例えば、トポロジカルな骨組化(skeletonization)を用いて、散布図800の点に適合する経路を生成するように設計されたソフトウェアを用いて、自動的に生成可能である。
【0062】
厚さ経路604は、1本の線、ポリライン、一又は複数の円弧、一又は複数のベジェ曲線などの様々な関数によって提供されうる。幾つかの実装では、厚さ経路604は、座標空間の離散点間に引かれた線分の組であるポリラインによって提供される。
【0063】
図6に戻ると、関数が所定の厚さ経路604上点と厚さの値との間の関係を提供する。例えば、コントローラ190は、所定の厚さ経路604の始点602に対する第1の厚さの値と、所定の厚さ経路604の終点606に対する第2の厚さの値を保存することができる。第1及び第2の厚さの値は、始点602及び終点606にそれぞれ最も近い点802を提供するピクセルに対応する位置で、基板層の厚さを測定する従来の厚さ計測システムを用いて取得可能である。
【0064】
操作中、コントローラ190は、始点602から所定の点610までの経路604に沿った距離に基づいて、第1の値と第2の値との間を補間することによって、経路604上の所定の点610での厚さを表す値を計算することができる。例えば、コントローラが、
T=T1+D/L(T2-T1)
に基づいて、所定の点610の厚さTを計算できるとすると、T1は始点602に対する値で、T2は終点606に対する値で、Lは始点602と終点606との間の経路に沿った総距離で、Dは始点602と所定の点610との間の経路に沿った距離となる。
【0065】
別の実施例として、コントローラ190は、所定の厚さ経路604の各頂点に対する厚さの値を保存し、2つの最も近い頂点の間の補間に基づいて、経路上の所定の点に対して厚さを表す値を計算することができる。この構成に関しては、頂点に最も近い点802を提供するピクセルに対応する位置で、基板層の厚さを測定する従来の厚さ計測システムを用いて、頂点に対する様々な値を得ることができる。
【0066】
経路上の点を厚さに関連付ける他の関数も可能である。
【0067】
しかも、計測システムを用いて設定された基板の厚さを測定するのではなく、厚さの値は光学モデルに基づいて計算して得ることができる。
【0068】
既知の「設定されたウエハに基づく理論的なシミュレーション又は経験に基づく学習を用いる場合には、厚さの値は実際の厚さの値になりうる。別の態様では、所定の厚さ経路上の所定の点での値は、相対値、例えば、基板の研磨の程度に対する値になりうる。この後者の値は、経験に基づく値を取得するため、下流のプロセスで拡大縮小可能であるか、厚さの絶対値を特定することなく、単に厚さの増減を単純に表現するために使用可能である。
【0069】
図6及び図7を参照すると、ピクセルは基板の画像から解析されるため、2つのカラーチャネルの値は、当該ピクセルのカラーデータから抽出される(ステップ720)。これは、2つのカラーチャネルの座標系600に座標620を提供する。
【0070】
次に、点、例えば、ピクセルの座標620に最も近い所定の厚さ経路604上の点610が計算される(ステップ730)。この文脈で、「最も近い」という表現は、必ずしも幾何学的な完全性を示しているわけではない。「最も近い」点は様々な方法で定義されうる。処理能力の限界、計算を容易にするためのサーチ関数の選択、サーチ関数内での複数の極大の存在などは、幾何学的な理想の決定を妨げうるが、使用に十分耐える結果をもたらす。幾つかの実装では、最も近い点は、ピクセルの座標620を通る厚さ経路に対する法線ベクトルを定義する厚さ経路604上の点として定義される。幾つかの実装では、最も近い点はユークリッド距離を最小化することによって計算される。
【0071】
次に、上述のように、厚さを表す値が、経路604上の点610の位置に基づく関数から計算される(ステップ740)。最も近い点は、必ずしもポリラインの頂点の1つではない。上述のように、この場合には、厚さの値を得るため補間が使用されうる(例えば、ポリラインの最も近い頂点の間の線形補間に基づいて)。
【0072】
カラー画像のピクセルの一部又はすべてに対してステップ720~740を繰り返すことによって、基板層の厚さのマップが生成されうる。
【0073】
基板上の幾つかの層スタックに関しては、所定の厚さ経路がそれ自体と交差し、縮退と呼ばれる状況を引き起こす。所定の厚さ経路上の縮退点(例えば、点650)は、その点に関連する2つ以上の厚さの値を有する。そのため、何らかの追加の情報がないと、どの厚さの値が正しい値なのか知ることはできない。しかしながら、基板上の所定の物理領域、例えば、所定のダイから、ピクセルに関連する座標のクラスタの特性を解析し、この追加情報を用いて縮退を解消することができる。例えば、基板の所定の小さな領域内の測定値は、さほど重要ではなく、したがって、散布図に沿った小さなセクションを占め、両分岐に沿って延在しないと、みなすことができる。
【0074】
このように、コントローラは、縮退を解消しなければならないピクセルを取り囲む、基板上の所定の物理的領域のピクセルに関連する座標のクラスタを解析することができる。特に、コントローラは、座標空間でのクラスタの主軸を決定することができる。クラスタの主軸に最も緊密に平行な所定の厚さ経路の分岐は選択可能で、厚さを表す値を計算するために使用される。
【0075】
図2に戻ると、任意選択により、基板の各領域、例えば各ダイに対して、或いは画像全体に対して、均一性の解析が実行されうる(ステップ280)。例えば、各ピクセルの値は、ターゲット値と比較可能で、ダイの中の「欠陥」ピクセル、すなわち、目標値を満たしていないピクセルの総数は、当該のダイに対して計算されうる。この総数は、ダイが許容可能かどうかを判断する閾値と比較することができ、例えば、総数が閾値を下回っている場合には、当該ダイは許容可能であるとマークされる。これは、各ダイに合格/不合格の表示を与える。
【0076】
別の実施例として、基板のマスクされていない領域内の「欠陥」ピクセルの総数も計算されうる。この総数は、基板が許容可能な同化を判断する閾値と比較することができ、例えば、総数が閾値を下回る場合には、当該基板は許容可能であるとマークされる。閾値はユーザーによって設定可能である。これは、基板に合格/不合格の表示を与える。
【0077】
ダイ又はウエハか「欠陥」と判定されると、コントローラ190は警告を発するか、研磨システム100に是正措置を講じさせる。例えば、音声警告又は視覚的警告が生成されるか、特定のダイが使用不可であることを示すデータファイルが生成されうる。別の実施例として、基板は再作業のため送り返されることがある。
【0078】
一般的にピクセルが1024又はそれ以上の強度値によって表される分光学的処理と比較して、カラー画像では、ピクセルは3つ(赤、緑及び青)だけの強度値によって表現されるが、計算に必要なのは2つのカラーチャネルだけである。その結果、カラー画像を処理する計算負荷は大幅に低くなる。
【0079】
一般的に、データは、CMP装置の一又は複数の操作パラメータを制御するために使用されうる。操作パラメータには、例えば、プラテン回転速度、基板回転速度、基板の研磨経路、プレートを横切る基板の速度、基板に作用する圧力、スラリの組成、スラリの流量、及び基板表面の温度が含まれる。操作パラメータはリアルタイムで制御可能で、また、人が介在する必要なく自動的に調整可能である。
【0080】
本明細書で使用されているように、基板という用語は、例えば、製品基板(例えば、複数のメモリ又はプロセッサダイを含む)、テスト基板、ベア基板、及びゲーティング基板を含みうる。基板は、集積回路の製造の様々な段階のものであってよく、例えば、基板はベアウエハであってよく、又は基板は一又は複数の堆積層及び/またはパターン層を含むことができる。基板という用語は、円板及び矩形薄板を含むことができる。
【0081】
しかしながら、上述のカラー画像処理技術は、3D垂直NAND(VNAND)フラッシュメモリとの関連で、特に有用になりうる。特に、VNANDの製造で使用される層スタックは非常に複雑なため、現在の計測方法(例えば、Novaスペクトル分析)は、不適切な厚さの領域の検出では、十分な信頼度で実行することはできない。これとは対照的に、カラー画像処理は優れたスループットを有している。
【0082】
本発明の実施形態及び本明細書に記載されている機能的な操作のすべては、本明細書に開示されている構造的な手段、及び、構造的な均等物、或いはこれらの組み合わせを含む、デジタル電子回路、又はコンピュータソフトウェア、ファームウェア、ハードウェアに実装可能である。本発明の実施形態を一又は複数のコンピュータプログラム製品、すなわち、データ処理装置、例えばプログラマブルプロセッサ、コンピュータ、又は複数のプロセッサ又はコンピュータによって実行される、又はこれらの作業を制御するための固定の機械可読記憶媒体に有形で具現化された一又は複数のコンピュータプログラムとして実装可能である。
【0083】
相対位置決めという用語は、システムの構成要素を互いに対して位置決めすることを意味するときに使用され、必ずしも重力に対してではない。研磨面及び基板は垂直配向又は他の配向に保持されうることを理解されたい。
【0084】
幾つかの実行形態について説明してきた。しかしながら、様々な改変が行われうることを理解されたい。例えば、
・ラインスキャンカメラではなく、基板全体を撮影するカメラが使用されうる。この場合、基板に対するカメラの動きは不要である。
・カメラは基板の幅全体をカバーすることはできない。この場合、基板全体をスキャンするためには、カメラは、例えばX-Yステージ上に支持された、2つの垂直方向に移動することが必要となる。
・光源は基板全体を照らしうる。この場合、光源は基板に対して動く必要はない。
・光検出器はカラーカメラというよりは分光計で、スペクトルデータは適切なカラーチャネルに単純化されうる。
・2次元座標空間での値のペアによって表される座標については既に述べたが、この技術は、3つ以上のカラーチャネルによって定義される3つ以上の次元に適用可能である。
・センサアセンブリは、研磨ステーション間、又は研磨ステーションと移送ステーションとの間に配置されるインラインシステムである必要はない。例えば、センサアセンブリは、移送ステーション内に配置されてよく、カセットインターフェースユニット内に配置されてよく、或いは独立型のシステムであってもよい。
・均一性分析のステップは任意選択である。例えば、閾値変換の適用によって生成される画像は、
基板に対するその後の処理ステップを調整するため、フィードフォワード処理に入力すること、或いは、後続の基板に対する処理ステップを調整するため、フィードバック処理に入力することができる。
・インラインシステムが説明されているが、この技術は、インシトゥ測定、すなわち、基板が研磨されている間の測定に適用されうる。この場合、モニタリングシステムの様々な構成要素は、プラテンの凹部に取り付けられ、プラテンの回転により、構成要素は基板を横切ってスキャンすることができる。インシトゥ測定では、画像を構築するのではなく、モニタリングシステムは、基板上のスポットから反射された白色光線の色を単純に検出し、また、上述の技術を用いて、このカラーデータを使用して厚さを決定しうる。
・説明は研磨に焦点を当てたが、当該技術は、層を追加又は除去し、光学的にモニタリングされる、他の種類の半導体製造プロセスに、例えばエッチングや堆積などに適用されうる。
したがって、その他の実装も特許請求の範囲に含まれる。
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図2
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