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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-13
(45)【発行日】2022-06-21
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20220614BHJP
   A61F 13/476 20060101ALI20220614BHJP
   A61F 13/533 20060101ALI20220614BHJP
【FI】
A61F13/15 140
A61F13/476
A61F13/533
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020542354
(86)(22)【出願日】2020-03-05
(86)【国際出願番号】 JP2020009517
(87)【国際公開番号】W WO2020179886
(87)【国際公開日】2020-09-10
【審査請求日】2020-09-08
(31)【優先権主張番号】P 2019041043
(32)【優先日】2019-03-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
(72)【発明者】
【氏名】山本 なるみ
(72)【発明者】
【氏名】内田 祥平
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-075082(JP,A)
【文献】特開2018-196624(JP,A)
【文献】登録実用新案第3213494(JP,U)
【文献】特開2012-075569(JP,A)
【文献】特開2010-110443(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F13/15-13/84
A61L15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体を含む吸収本体と、前記吸収本体の前記長手方向の前側に位置し、所定の機能を有する機能層を含む機能本体と、を備える吸収性物品であって、
前記長手方向において、前記吸収本体における排泄口当接域の中心を通り前記幅方向に延びる中心線と、前記吸収体の前側の端縁と、の距離は、前記吸収体の前側の端縁と、前記吸収性物品の前側の端縁と、の距離よりも長く、
前記吸収本体における前記中心線よりも前記長手方向の前側の前方領域の長さは、前記機能本体の長さの110~300%である
吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収本体は、前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を有し、
前記中心線は、前記長手方向において、前記一対のウイング部の各々の中心を前記幅方向に結んでいる、
請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記機能本体は、前記吸収体よりも低い吸収性能を有する低吸収部を含む、
請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記吸収体と前記低吸収部とは、前記幅方向から見て、前記長手方向に連続している、
請求項3に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記吸収体の一部と前記低吸収部の一部とは、前記厚さ方向に重複している、
請求項3又は4に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収体の一部は、前記低吸収部の一部における肌側の部分に重複している、
請求項5に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収体の一部と前記低吸収部の一部とを前記厚さ方向に重複させつつ圧搾して形成された圧搾部を更に備える、
請求項5又は6に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、展開された状態において、
前記幅方向に沿って延び、前記長手方向に所定間隔で互いに平行に並んだ複数の折り軸を有し、
前記複数の折り軸の一つは、前記長手方向において、前記吸収体における前側の端縁よりも前記中心線の側、かつ、前記中心線よりも前側に位置する、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記吸収体における前記中心線よりも前記長手方向の前側の坪量は、前記吸収体における前記中心線よりも前記長手方向の後側の坪量よりも高い、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機能層を含む吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の装着者に皮膚を介して温感や冷感などを知覚させる等、所定の機能を有する機能層を含む吸収性物品が知られている。例えば、特許文献1には、装着者に皮膚を介して温感や冷感などを知覚させる機能を有する機能層を含む吸収性物品が開示されている。特許文献1によれば、この吸収性物品では、機能層は主に吸収体よりも長手方向の前側(腹側)に配置されている。それに伴い、この吸収性物品では、長手方向の前側の部分が、一般的な吸収性物品の形状と比較して長くなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】実用新案登録第3213494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
装着者が、特許文献1のような吸収性物品を下着に装着する場合、吸収性物品の前側の部分が下着(のウェストの開口部)の前側の端縁から外側にはみ出さないように装着する。その際、吸収性物品の前側の端部のはみ出しをより確実に防止できるように、装着者が吸収性物品を長手方向の後側(背側)に必要以上にずらして装着する場合が考えられる。すなわち、液体の排泄物を吸収するのに好適な吸収体の位置が必要以上に後側にずれる場合が考えられる。そうなると、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の領域が減少してしまい、排泄物(例示:経血、尿)が吸収体によって十分に吸収されず、吸収性物品の前側から漏れるおそれがある。機能層の長手方向の長さを短くする方法も考え得るが、機能層が十分に機能しなくなるおそれがある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、長手方向の前側に機能層を有する、前側の部分が相対的に長い吸収性物品において、下着の前側の端縁から吸収性物品の前側の端部が外側にはみ出さないように装着者が吸収性物品を長手方向の後側に必要以上にずらして装着しても、長手方向の前側からの液体の排泄物の漏れを抑制することが可能な吸収性物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明における吸収性物品は、長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体を含む吸収本体と、前記吸収本体の前記長手方向の前側に位置し、所定の機能を有する機能層を含む機能本体と、を備える吸収性物品であって、前記長手方向において、前記吸収本体における排泄口当接域の中心を通り前記幅方向に延びる中心線と、前記吸収体の前側の端縁と、の距離は、前記吸収体の前側の端縁と、前記吸収性物品の前側の端縁と、の距離よりも長い、吸収性物品。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、長手方向の前側に機能層を有する、前側の部分が相対的に長い吸収性物品において、下着の前側の端縁から吸収性物品の前側の端部が外側にはみ出さないように装着者が吸収性物品を長手方向の後側に必要以上にずらして装着しても、長手方向の前側からの液体の漏れを抑制することが可能な吸収性物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施形態に係る吸収性物品の構成例を示す平面図である。
図2図1における長手方向中心線に沿った断面図である。
図3】実施形態に係る吸収性物品の構成例を示す背面図である。
図4】実施形態に係る吸収性物品の他の構成例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
具体的には、本発明の開示は以下の態様に関する。
[態様1]
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体を含む吸収本体と、前記吸収本体の前記長手方向の前側に位置し、所定の機能を有する機能層を含む機能本体と、を備える吸収性物品であって、前記長手方向において、前記吸収本体における排泄口当接域の中心を通り前記幅方向に延びる中心線と、前記吸収体の前側の端縁と、の距離は、前記吸収体の前側の端縁と、前記吸収性物品の前側の端縁と、の距離よりも長い、吸収性物品。
【0010】
本吸収性物品では、長手方向において、幅方向中心線と吸収体の前側の端縁との距離が、吸収体の前側の端縁と吸収性物品の前側の端縁との距離よりも長い。ただし、各端縁の位置は、長手方向中心線上の位置とする。すなわち、吸収性物品における幅方向中心線よりも長手方向の前側の領域において、吸収体が存在する領域の長手方向の長さが、吸収体が存在しない領域の長手方向の長さよりも長い。そのため、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、液体の排泄物を吸収可能な吸収体の領域を長手方向に十分に長く確保できる。それゆえ、長手方向の前側に機能層を有し、前側の部分が相対的に長い吸収性物品を下着に装着するとき、吸収性物品の前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が吸収性物品を長手方向の後側に必要以上にずらして装着しても、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の領域を十分に確保できるため、長手方向の前側からの排泄物の漏れを抑制できる。
【0011】
[態様2]
前記吸収本体は、前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を有し、前記中心線は、前記長手方向において、前記一対のウイング部の各々の中心を前記幅方向に結んでいる、態様1に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、幅方向に延びる中心線の位置を、一対のウイング部の各々における長手方向の中心を幅方向に結んだ位置としている。そのため、吸収体が存在する領域の長手方向の長さをより確実に吸収体が存在しない領域の長手方向の長さよりも長くすることができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の領域を十分に確保できるため、長手方向の前側からの排泄物の漏れを抑制できる。
【0012】
[態様3]
前記機能本体は、前記吸収体よりも低い吸収性能を有する低吸収部を含む、態様1又は2に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収本体の前側に位置する機能本体に、低吸収部を有している。低吸収部は、液体の吸収量は吸収体より低いが、液体をある程度は吸収可能な部分である。そのため、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の長手方向の前側の端縁から液体が一部漏れ出たとしても、低吸収部でその液体を捕獲することができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側から液体が漏れることをより抑制できる。
【0013】
[態様4]
前記吸収体と前記低吸収部とは、前記幅方向から見て、前記長手方向に連続している、態様3に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体と低吸収部とが幅方向から見て長手方向に連続しており、したがって、両者は長手方向に実質的に互いに隣接している。そのため、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の長手方向の前側の端縁から液体が一部漏れ出たとしても、隣接する低吸収部でその液体を容易に捕獲することができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側から液体が漏れることをより容易に抑制できる。
【0014】
[態様5]
前記吸収体の一部と前記低吸収部の一部とは、前記厚さ方向に重複している、態様3又は4に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体と低吸収部とが長手方向に重複している。そのため、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の長手方向の前側の端縁に液体が達したとしても、そのまま重複する低吸収部にその液体を移行させて吸収することができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側から液体が漏れることをより容易に抑制できる。
【0015】
[態様6]
前記吸収体の一部は、前記低吸収部の一部における肌側の部分に重複している、態様5に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体の一部が低吸収部の一部の肌側の部分に重複している。すなわち、重複部分において、吸収体の一部が低吸収部の一部に乗り上げて、より肌側に近づくことができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、肌面を伝って液体が漏れる伝え漏れをより確実に抑制でき、したがって、吸収性物品の長手方向の前側から液体が漏れることをより確実に抑制できる。
【0016】
[態様7]
前記吸収体の一部と前記低吸収部の一部とを前記厚さ方向に重複させつつ圧搾して形成された圧搾部を更に備える、態様5又は6に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体の一部と低吸収部の一部とが重複した部分に圧搾部を有している。それゆえ、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の長手方向の前側の端縁に向かって液体が移動してきても、圧搾部により、その移動を堰き止めて吸収体の深部や他の箇所へ液体を拡散させることができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側から液体が漏れることをより確実に抑制できる。
【0017】
[態様8]
前記吸収性物品は、展開された状態において、前記幅方向に沿って延び、前記長手方向に所定間隔で互いに平行に並んだ複数の折り軸を有し、前記複数の折り軸の一つは、前記長手方向において、前記吸収体における前側の端縁よりも前記中心線の側、かつ、前記中心線よりも前側に位置する、態様1乃至7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、長手方向において、吸収体における前側の端縁よりも中心線側、かつ中心線よりも前側に、幅方向に延びる折り軸が存在する。吸収性物品が包装された状態では、吸収体はその折り軸で折り曲げられているので、吸収性物品が開封されて使用されるとき、吸収体にはその折り軸で折り曲げられていた跡が残る。それゆえ、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の長手方向の前側の端縁に向かって液体が移動してきても、その折り軸の跡により、その移動を堰き止めて吸収体の深部や他の箇所へ液体を拡散させることができる。それにより、吸収性物品の長手方向の前側から液体が漏れることをより確実に抑制できる。
【0018】
[態様9]
前記吸収体における前記中心線よりも前記長手方向の前側の坪量は、前記吸収体における前記中心線よりも前記長手方向の後側の坪量よりも高い、態様1乃至8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体の坪量は、中心線よりも長手方向の前側の方が、中心線の長手方向の後側の方よりも高い。すなわち、液体の吸収量は、中心線よりも長手方向の前側の方が、中心線の長手方向の後側の方よりも高い。そのため、吸収性物品の前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が吸収性物品を長手方向の後側に必要以上にずらして装着しても、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の領域がより十分に確保できるため、長手方向の前側から液体が漏れることをより確実に抑制できる。
【0019】
[態様10]
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体を含む吸収本体を備える吸収性物品であって、前記吸収本体は、前記幅方向の両外側に延出する一対のウイング部を含み、前記長手方向における前記一対のウイング部の各々の中心を前記幅方向に結ぶ中心線を有し、前記長手方向において、前記吸収体における前記中心線から前記吸収体の前側の端縁までの長さは、前記吸収体における前記中心線から前記吸収体の後側の端縁までの長さよりも長い、吸収性物品。
本吸収性物品では、長手方向の前側の領域において、液体の排泄物を吸収可能な吸収体の領域を長手方向に十分に長く確保できる。それゆえ、長手方向の前側に機能層を有し、前側の部分が相対的に長い吸収性物品を下着に装着するとき、吸収性物品の前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が吸収性物品を長手方向の後側に必要以上にずらして装着しても、吸収性物品の長手方向の前側の領域において、吸収体の領域を十分に確保できるため、長手方向の前側からの排泄物の漏れを抑制できる。
【0020】
[態様11]
長手方向、幅方向及び厚さ方向を有しており、吸収体を含む吸収本体と、前記吸収本体の前記長手方向の前側に位置し、所定の機能を有する機能層を含む機能本体と、を備える吸収性物品であって、前記長手方向において、前記吸収体と前記機能層とが前記厚さ方向に重複する重複部を更に備え、前記重複部に、前記吸収体の一部と前記機能層の一部とを前記厚さ方向に圧搾して形成された圧搾部を更に備える、吸収性物品。
本吸収性物品では、吸収体の長手方向の前側の端縁に向かって移動してきた液体の排泄物を、圧搾部により堰き止めて、吸収性物品の長手方向の前側から排泄物が漏れることを確実に抑制できる。また、圧搾部の寸法(幅)が幅方向にある程度長い場合には、重複部での吸収体の剛性を高くすることができる。それにより、吸収性物品が長手方向に長すぎて、長手方向の途中の部分、例えば、吸収体と機能層との中間部分において、撚れや幅入れが生じてしまうという事象を、この圧搾部で抑制できる。
【0021】
以下、実施形態に係る吸収性物品について、生理用ナプキンを例に説明する。ただし、吸収性物品はその例に限定されるのではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の吸収性物品であってもよい。他の吸収性物品としては、例えばパンティライナー、失禁パッド、及び使い捨ておむつが挙げられる。また、以下、吸収性物品の有する所定の機能について、温感機能を一例として説明する。温感機能は、装着者に皮膚を介して温感を知覚させる機能であり、例えばシートなどに保持された温感剤により実現される。ただし、所定の機能はその例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、他の所定の機能であってもよい。他の所定の機能としては、例えば冷感剤などを用いて装着者に皮膚を介して冷感を知覚させる冷感機能、不織布等で肌を覆うことで温かさを知覚させる保温機能などが挙げられる。
【0022】
本実施形態に係る生理用ナプキン1の構成について説明する。
図1図3は本実施形態に係る生理用ナプキン1の構成例を示す図である。図1は、生理用ナプキン1の個包装シート43を開封し、展開した状態を示す平面図である。図2は、図1に示す生理用ナプキン1における長手方向中心線CL(後述)に沿った断面図である(個包装シート43を除く)。図3は、図1に示す生理用ナプキン1を示す背面図である(個包装シート43を除く)。本実施形態の生理用ナプキン1は、互いに直交する長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有する。図1に描かれた生理用ナプキン1では、図の上側を長手方向Lの前側(前方)又は腹側とし、図の下側を長手方向Lの後側(後方)又は背側とする。長手方向L及び幅方向Wを含む平面上に置いた生理用ナプキン1を厚さ方向Tの上側から見ることを「平面視」といい、平面視で把握される形状を「平面形状」という。長手方向L及び幅方向Wを含む平面内の任意の方向を「平面方向」という。装着者が生理用ナプキン1を装着したとき、厚さ方向Tにて相対的に装着者の肌面に近い側及び遠い側となる側をそれぞれ「肌側」及び「非肌側」という。これら定義は、生理用ナプキン1の各資材にも共通に用いられる。
【0023】
個包装シート43は、長手方向Lの両端部が、生理用ナプキン1の長手方向Lの両端部よりも長手方向Lの外側に長く、かつ、幅方向Wの両端部が、生理用ナプキン1の幅方向Wの両端部よりも幅方向Wの外側に長くなるように形成されている。すなわち、生理用ナプキン1を個包装シート43上に載置したとき、平面視で、個包装シート43の外側に生理用ナプキン1がはみ出さないように載置でき、それにより、生理用ナプキン1を個包装シート43と共に折り畳んだとき、個包装シート43の外側に生理用ナプキン1がはみ出さないように包装できる。
【0024】
生理用ナプキン1は、主に液体の排泄物(例示:経血)を吸収する吸収本体3と、吸収本体3の長手方向Lの前側に位置し、肌に温感を知覚させる温感本体5と、を備える。すなわち、生理用ナプキン1は、長手方向Lの後方の吸収本体3と、長手方向Lの前方の温感本体5と、に区画される。吸収本体3の形状は、概ね一般的な生理用ナプキンの形状であり、幅方向Wの両外側に延出する一対のウイング部17、17を備えている。温感本体5の形状は特に限定はなく、例えば、三角形や矩形や多角形(角が丸い場合や辺が曲線の場合を含む)、円形や楕円形、生物の形状、又はそれらの組み合わせが挙げられる。生理用ナプキン1は、幅方向Wの中心を通り長手方向Lに延びる長手方向中心線CL(仮想線)と、一対のウイング部17、17の各々の長手方向Lの中心を幅方向Wに結んだ(長手方向Lの中心を通り幅方向Wに延びる)幅方向中心線CW(仮想線)と、を有する。生理用ナプキン1において、長手方向中心線CLに向かう向き及び側をそれぞれ幅方向Wの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ幅方向Wの外向き及び外側とする。一方、幅方向中心線CWに向かう向き及び側をそれぞれ長手方向Lの内向き及び内側とし、遠ざかる向き及び側をそれぞれ長手方向Lの外向き及び外側とする。なお、一対のウイング部17、17の各々が存在しない場合、幅方向中心線CWは、長手方向Lにおいて、吸収本体3における排泄口当接域21(後述)の中心を通り幅方向Wに延びる線とする。本実施形態では、それらは一致するものとする。あるいは、吸収体11(後述)がいわゆる砂時計型の場合、幅方向中心線CWは、長手方向Lにおいて、吸収体11の幅方向Wの寸法が最小となる位置(両端部を除く)を通り幅方向Wに延びる線とする。
【0025】
生理用ナプキン1は、吸収本体3において、装着時に装着者の肌に当接する液透過性シート7と、装着時に着衣(下着)に当接する液不透過性シート9と、液透過性シート7及び液不透過性シート9の間に配置された吸収体11とを備える。また、生理用ナプキン1は、温感本体5において、装着時に装着者の肌に当接する液透過性シート7と、装着時に着衣に当接する液不透過性シート9と、液透過性シート7及び液不透過性シート9の間に配置された温感剤保持シート13と、を備える。温感剤保持シート13は、吸収体11よりも長手方向Lの前側に位置している。そして、吸収本体3における液透過性シート7と、温感本体5における液透過性シート7とは一体のシートである。また、吸収本体3における液不透過性シート9と、温感本体5における液不透過性シート9とは一体のシートである。ただし、一体のシートとは、資材が一枚のシートである場合だけでなく、複数のシートを結合して一体化させたシートも含む。吸収本体3における吸収体11と、温感本体5における温感剤保持シート13とは、別の部材である。吸収体11の長手方向Lの前側の端部が、温感剤保持シート13の長手方向Lの後側の端部と厚さ方向Tに重複することで、重複部15が形成される。すなわち、長手方向Lにおいて、吸収体11の前側の端縁11E1は、温感剤保持シート13の後側の端縁13E2よりも前側に位置する。この場合、重複部15では、その吸収体11の端部がその温感剤保持シート13の端部上に配置される。長手方向Lの前方での排泄物の漏れを抑制するためである。別の実施形態では、温感の機能を重視する場合、重複部15では、その温感剤保持シート13の端部がその吸収体11の端部上に配置される。更に別の実施形態では、その吸収体11の端部と、その温感剤保持シート13の端部とは平面視で重複せず(重複部15は存在せず)、それらの端縁同士が接するか、又は離間している。更に別の実施形態では、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁11E1の位置が、温感剤保持シート13の長手方向Lの前側の端縁13E1の位置と重なるか、又は、それよりも外側に存在する。言い換えると、温感剤保持シート13が長手方向Lの全域に亘って、吸収体11と重なる。この場合、温感剤保持シート13を吸収体11よりも肌側に配置するか、又は、吸収体11、液透過性シート7若しくは液拡散シート41に温感剤50を塗布してもよい。
【0026】
なお、別の実施形態として、生理用ナプキン1に付与する所定の機能を冷感機能とする場合、温感本体5は同一形状の冷感本体に代替され、温感剤保持シート13は同一形状の冷感剤保持シートに代替される。また、更に別の実施形態として、生理用ナプキン1に付与する所定の機能を保温機能とする場合、温感本体5は同一形状の保温本体に代替され、温感剤保持シート13は同一形状の保温性シートに代替される。
【0027】
本実施形態では、吸収本体3における長手方向Lの範囲は、生理用ナプキン1の後方の端縁から、吸収体11の前方の端縁11E1までの範囲とする。一方、温感本体5における長手方向Lの範囲は、吸収体11の前方の端縁11E1から、生理用ナプキン1の前方の端縁までの範囲とする。なお、吸収本体3及び温感本体5における幅方向Wの範囲は、いずれも全幅の範囲とする。この場合、重複部15は、吸収本体3に含まれ、温感本体5の温感剤保持シート13における長手方向Lの後側の端部は吸収本体3内へ延出している、といえる。また、吸収本体3は、長手方向Lにおいて、幅方向中心線CWから吸収体11の前方の端縁11E1までの前方領域3aと、幅方向中心線CWから生理用ナプキン1の後方の端縁までの後方領域3bと、に区画される。ただし、長手方向Lにおける、生理用ナプキン1の前方及び後方の端縁、吸収体11の前方及び後方の端縁11E1、11E2、温感剤保持シート13の前方及び後方の端縁13E1、13E2は、いずれも長手方向Lの最も外側の位置とする。本実施形態では端縁11E1、11E2、端縁13E1、13E2は、いずれも長手方向中心線CLとの交差点とする。
【0028】
生理用ナプキン1では、吸収本体3において、平面視で、長手方向Lの中央やや前方寄りで幅方向Wの中央に排泄口当接域21が位置し、その周囲にそれ以外の領域として非排泄口当接域23が位置する。排泄口当接域21は、生理用ナプキン1の着用時に、着用者の排泄口に対向又は当接する領域である。排泄口当接域21は、吸収性物品の種類や用途に応じて決まる。排泄口当接域21は、例えば長手方向Lにて吸収体11の中央やや前方寄りに、吸収体11の長手方向Lの全長の約1/4~2/3の長さとされ、幅方向Wにて吸収体11の略中央に、吸収体11の幅方向Wの全長の約1/3~3/4の幅とされる。本実施形態のように一対のウイング部17、17が存在する場合、一対のウイング部17、17の各々における長手方向Lの中心を幅方向Wに結んだ線上に、排泄口当接域21の長手方向Lの中心が位置する。あるいは、吸収体11がいわゆる砂時計型の場合、吸収体11の長手方向Lの両端部を除いて、吸収体の幅方向Wの寸法が最も小さくなる位置に、排泄口当接域21の長手方向Lの中心が位置する。ただし、所定の長さの範囲内の位置ずれを許容するものとする。その所定の長さは、吸収体11の長手方向Lの長さの5%の長さとする。
【0029】
液透過性シート7は、表面シート7aと、表面シート7aの幅方向Wの両側に結合された一対のサイドシート7b、7bと、を備えている。表面シート7aの幅方向Wの寸法は、略吸収体11の幅方向Wの寸法程度の大きさである。各サイドシート7bは、幅方向Wの内側の端部に位置し、長手方向Lに沿って延びる防漏壁7Wを含んでいる。すなわち、液透過性シート7は、一対の防漏壁7W、7Wを含んでいる。各防漏壁7Wは、幅方向Wにおいて、外側の端縁を固定端とされていて、内側の端縁を自由端とされ、表面シート7aの厚さ方向Tの上方に延出されている。一対の防漏壁7W、7Wは、生理用ナプキン1が装着されたとき自由端が肌側へ起立可能に形成されている。一対の防漏壁7W、7Wは、吸収本体3及び温感本体5に形成されており、排泄物が主に幅方向Wの外側へ漏洩することを抑制すると共に、温感本体5の温感の効果により温まった空気が幅方向Wの外側へ逃げることを抑制し、保持する。別の実施形態では、液透過性シート7は一対のサイドシート7b、7bを有さない。更に別の実施形態では、液透過性シート7は一対の防漏壁7W、7Wを有さない。
【0030】
生理用ナプキン1は、表面シート7aの非肌側に当接された、排泄物を平面方向に拡散させる液拡散シート41を備えている。すなわち、液拡散シート41は、表面シート7aと吸収体11及び温感剤保持シート13との間に配置されている。液拡散シート41と表面シート7aとは、表面シート7aの肌側の表面から液拡散シート41へ向かって圧搾することで形成された複数のシート圧搾部(図示されず)を有している。複数のシート圧搾部は、表面シート7aと液拡散シート41とを一体化させると共に、装着時に表面シート7aと液拡散シート41との間に若干の隙間を形成して、温感の効果により温まった空気を保持し得る。別の実施形態では、生理用ナプキン1は液拡散シート41を有さない。
【0031】
吸収体11は、長手方向Lにおいて、略中央に位置する中央領域62と、中央領域62の前方に隣接する前方領域61と、中央領域62の後方に隣接する後方領域63と、に区画される。ここで、中央領域62は、排泄口当接域21に対応する領域を含み、長手方向Lの更に前方寄りまでの範囲に位置する。そして、中央領域62の坪量は、前方領域61及び後方領域63の坪量よりも高い。したがって、吸収体11では、幅方向中心線CWよりも長手方向Lの前側の領域の坪量が、幅方向中心線CWよりも長手方向Lの後側の領域の坪量よりも高い。言い換えると、吸収体11では、幅方向中心線CWから長手方向Lの前方の端縁11E1までの領域の坪量は、幅方向中心線CWから長手方向Lの後方の端縁11E2までの領域の坪量よりも高い。それにより、長手方向Lの中央やや前方寄りの排泄口当接域21での吸収量を高くすると共に、装着者の排泄口が排泄口当接域21よりも長手方向Lの前方へややずれた状態で、生理用ナプキン1が装着された場合でも、吸収体11で確実に排泄物を吸収することが可能となる。別の実施形態では、吸収体11の坪量は、上記とは異なる特定の部分で高い、又は、全領域で概ね一定である。
【0032】
吸収体11は、吸収コア(図示されず)及び、吸収コアを包み込むコアラップ(図示されず)を備えている。そして、吸収体11は、コアラップの肌側の表面から吸収コアの内部へ向かって圧搾することで形成された複数の吸収体圧搾部(図示されず)を有する。それら複数の吸収体圧搾部は、吸収体11の型崩れを抑制する。更に、複数の吸収体圧搾部は、非肌側に向かって窪んでいるので、液拡散シート41との間に若干の空間を形成して、温感の効果により温まった空気を保持し得る。別の実施形態では、吸収体11はコアラップを用いない。更に別の実施形態では、吸収体11は吸収体圧搾部を有さない。
【0033】
温感剤保持シート13(機能層)は、液体(排泄物)を保持可能な、不織布のような一層又は複数層のシートから構成されており、温感剤50(機能剤)を含んでいる。温感剤保持シート13の形状は、温感剤50の漏れを抑制する、生理用ナプキン1の周縁部27の内側に配置できれば、特に限定はなく、例えば温感本体5の形状を相似的に縮小した形状が挙げられる。温感剤50は、生理用ナプキン1の装着者の身体又はその近傍を加熱等することなしに、皮膚の温度受容器(温熱知覚受容器)を刺激して、装着者に温感を知覚させる温感成分を含んでおり、温感成分を溶解ないし分散し得る溶媒成分を更に含んでいる。温感剤50は、気体や液体の形態で、温度、気圧、外力などの影響により、配置された場所から移動し得る流体成分又は揮発成分を含んでおり、例えば温感成分及び溶媒成分の少なくとも一方が流体成分又は揮発成分を含んでいる。そして、温感剤保持シート13が液透過性シート7よりも非肌側に配置されていても、温感剤保持シート13の温感剤50が、生理用ナプキン1の着用時において例えば溶出又は揮発等により液透過性シート7を透過し、装着者の下腹部の肌に接触することができる。それにより、温感剤50の温感成分が皮膚の温熱知覚受容器を刺激し、装着者の下腹部に温感を付与することができる。
【0034】
温感剤50は、平面視で温感剤保持シート13における周縁部を除く内側の中央部25に配置される。温感剤保持シート13の幅方向Wの長さは、吸収体11の幅方向Wの長さよりも長くなるように構成される。それにより、温感剤50の効果が、吸収体11よりも幅方向Wに広い領域に及ぶようになっている。なお、別の実施形態では、平面視で、温感剤50は、温感剤保持シート13における周縁部を含む全体に配置される。更に別の実施形態では、温感剤50は、温感剤保持シート13の所定の部分、例えば表面シート7aの幅方向Wの範囲で、長手方向Lに延び、幅方向Wに並んだ複数のストライプ状の部分に配置される。更に別の実施形態では、温感剤保持シート13の幅方向Wの長さは吸収体11の幅方向Wの長さ以下である。更に別の実施形態では、温感剤50は溶媒成分を含まない。更に別の実施形態では、温感剤50は、温感本体5及び吸収本体3のうち、少なくとも吸収本体3(例示:液透過性シート7、吸収体11)に配置される。更に別の実施形態では、温感本体5は、温感剤保持シート13の非肌側に温感剤保持シート13を支持する支持シートを有する。
【0035】
なお、別の実施形態として、生理用ナプキン1に付与する所定の機能を冷感機能とする場合、冷感剤保持シートは冷感剤(機能剤)を含み、冷感剤は冷感成分と溶媒成分とを含んでいる。また、更に別の実施形態として、生理用ナプキン1に付与する所定の機能を保温機能とする場合、保温性不織布シートは、機能剤を含まず、例えば、保温性の高い不織布を含んでいる。
【0036】
温感剤保持シート13は、液体を保持可能なシート(例示:不織布)から構成されているので、吸収体11ほどではないが、排泄物を吸収することができる。したがって、温感剤保持シート13は、吸収体11よりも低い吸収性能を有する低吸収部と見ることができる。低吸収部は、温感本体5に属しているが、長手方向Lの前方での排泄物の吸収を補助することができる。ここで、温感剤保持シート13と吸収体11との関係から、吸収体11と低吸収部(温感剤保持シート13)とは、幅方向Wから見て、長手方向Lに連続しているということができる。同様に、吸収体11の一部と低吸収部の一部とは、重複部15において厚さ方向Tに重複しており、吸収体11の一部は、低吸収部の一部における肌側の部分に乗り上げて重複している。なお、別の実施形態として、温感本体5が温感剤保持シート13の非肌側に、例えば平面視で温感剤保持シート13と略同一形状の支持シート(例示:不織布)を有する場合、その支持シートは、温感剤保持シート13を含めて又は含めずに、吸収体11よりも低い吸収性能を有する低吸収部と見ることができる。更に別の実施形態では、吸収性能の向上のために、その支持シートは、パルプ繊維を含む薄い吸収体である。
【0037】
生理用ナプキン1は、吸収本体3及び温感本体5の両方において、生理用ナプキン1を装着者の着衣に固定するための粘着部を備えている。粘着部の一方の面は、液不透過性シート9に固定され、他方の面は、生理用ナプキン1の個包装シート43に仮固定されている。このうち、吸収本体3には、平面視で、吸収体11と重なる領域に配置され、例えば長手方向Lに沿って延び、幅方向Wに間欠的に並ぶ粘着部73と、ウイング部17の幅方向Wの略中央部に、長手方向Lに沿って延びる粘着部71と、が配置されている。一方、温感本体5には、幅方向Wの両端部の領域に粘着部72が配置されている。別の実施形態では、粘着部の他方の面は、個包装シート43に固定された剥離シートに仮固定される。
【0038】
ただし、温感剤保持シート13及び粘着部72は、厚さ方向Tにおいて、互いに一部分だけ重複するか、又は、互いに全く重複しない位置に配置される。温感剤50が粘着部72に達して、粘着部72を劣化させるのを抑制するためである。例えば、粘着部72は、温感剤50が配置された、温感剤保持シート13における幅方向Wの少なくとも中央部に対して、厚さ方向Tに重複しない位置に形成される。ここで、温感剤保持シート13における幅方向Wの中央部25は、温感機能を高める観点から、長手方向中心線CLから、幅方向Wの両側に、それぞれ温感剤保持シート13の幅方向Wの幅の30%までの範囲であり、好ましくは40%までの範囲であり、より好ましくは45%までの範囲である。
【0039】
個包装体(生理用ナプキン1+個包装シート43)は、図1に示すように、長手方向第1折線F1(例示:左方折線)及び長手方向第2折線F2(例示:右方折線)と、幅方向第1折線F3(例示:前方折線)及び幅方向第2折線F4(例示:後方折線)と、を有する。ただし、長手方向第1折線F1及び長手方向第2折線F2は、長手方向Lに沿って延び、幅方向Wの一方側から他方側へ所定間隔で互いに平行に並んでいる。幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4は、幅方向Wに沿って延び、長手方向Lの一方側から他方側へ所定間隔で互いに平行に並んでいる。すなわち、長手方向折線は2本、幅方向折線は2本である。ただし、幅方向第1折線F3は、生理用ナプキン1の前方に配置され、幅方向第2折線F4は、生理用ナプキン1の後方に配置される。幅方向第1折線F3は、吸収本体3の前側の端部及び温感本体5の後側の端部に位置する。具体的には、幅方向第1折線F3は、吸収体11における長手方向Lの前側の端縁11E1より幅方向中心線CW側に位置する。ただし、幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4は、排泄口当接域21を避けるように、排泄口当接域21よりも長手方向Lの前側及び後側に位置する。なお、別の実施形態では、長手方向折線は無い。更に別の実施形態では、幅方向折線は1本又は3本以上である。
【0040】
そして、生理用ナプキン1では、個包装されるとき、個包装シート43と共に、長手方向第1折線F1及び長手方向第2折線F2を基軸として、両折線よりも幅方向Wの外側の部分(一対の外側部分)がそれぞれ肌側の表面に向かって折畳まれる。次いで、個包装シート43と共に折り畳まれた生理用ナプキン1では、幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4を基軸として、両折線よりも長手方向Lの外側の部分がそれぞれ肌側の表面に向かって折畳まれる。その後、個包装シート43の一端部が、それに対向する個包装シート43に固定用テープ45で固定される。それにより、生理用ナプキン1の個包装体が形成される。そして、生理用ナプキン1は、使用されるとき、すなわち個包装が開封されるとき、個包装されるときとは逆の手順で開封される。
【0041】
また、生理用ナプキン1は、複数の圧搾部31、33を有する。複数の圧搾部31は、主に吸収本体3において、排泄口当接域21を囲むように、曲線状で、連続的又は間欠的に配置される。複数の圧搾部33は、吸収本体3において、複数の圧搾部31に囲まれた領域に、ドット状に分散して配置される。圧搾部31、33は、液透過性シート7及び吸収体11(重複部15では更に温感剤保持シート13)を肌側から非肌側へ向かって圧搾することで形成される。なお、複数の圧搾部31、33の形状及び配置は任意である。別の実施形態では、更に、温感本体5において、液透過性シート7及び温感剤保持シート13(重複部15では更に吸収体11)を肌側から非肌側に圧搾することで形成される一つ又は複数の圧搾部を備える。その圧搾部の形状は任意である。
【0042】
また、生理用ナプキン1は、シール部29を有する。シール部29は、液透過性シート7と液不透過性シート9とをそれらの周縁部27で、熱シールなどの公知の方法で接合・封止する。生理用ナプキン1では、液透過性シート7の非肌側の面と吸収体11及び温感剤保持シート13の肌側の面とは接着剤(例示:ホットメルト接着剤)等で接合され、吸収体11及び温感剤保持シート13の非肌側の面と液不透過性シート9の肌側の面とは接着剤(同上)等で接合される。
【0043】
ここで、生理用ナプキン1は、吸収本体3の他に、長手方向Lの前側(腹側)の部分に温感本体5を有している。そのため、生理用ナプキン1は、通常の生理用ナプキンと比較して、全体として長手方向Lに長くなる。それゆえ、装着者が、生理用ナプキン1を下着に装着する場合、長手方向Lの前側の部分(温感本体5)が下着(のウエストの開口部)の前側の端縁から外側にはみ出さないように意識しつつ、装着することになる。その際、生理用ナプキン1の前側の端部のはみ出しをより確実に防止できるように、装着者が生理用ナプキン1を長手方向Lの後側(背側)に必要以上にずらして装着する場合が考えられる。すなわち、液体の排泄物を吸収するのに好適な吸収本体3の吸収体11の位置が必要以上に後側にずれる場合が考えられる。そうなると、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の領域が減少してしまい、排泄物が吸収体11によって十分に吸収されず、前側から漏れるおそれがある。
【0044】
そこで、本実施形態の生理用ナプキン1では、長手方向Lにおいて、幅方向中心線CWと、吸収体11の前側の端縁11E1と、の距離は、吸収体11の前側の端縁11E1と、生理用ナプキン1の前側の端縁と、の距離よりも長くなるように構成される。言い換えると、生理用ナプキン1は、長手方向Lにおいて、吸収本体3の前方領域3aの長さが温感本体5の長さよりも長くなるように構成されている。
【0045】
すなわち、生理用ナプキン1における幅方向中心線CWよりも長手方向Lの前側の領域において、吸収体11が存在する領域の長手方向Lの長さが、吸収体11が存在しない領域の長手方向Lの長さよりも長い。そのため、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、排泄物(例示:経血)を吸収可能な吸収体11の領域を長手方向Lに十分に確保できる。それゆえ、長手方向Lにおいて、前側に温感本体5を有し、前側の部分が相対的に長い生理用ナプキン1を下着に装着するとき、前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が生理用ナプキン1を後側に必要以上にずらして装着しても、生理用ナプキン1の前側の領域において、吸収体11の領域が十分に確保できるため、前側から排泄物が漏れることを抑制できる。
【0046】
前側からの排泄物の漏れを抑制する効果の観点から、吸収本体3の前方領域3aの長さの下限は、温感本体5の長さの、好ましくは110%以上であり、より好ましくは120%以上であり、更により好ましくは130%以上である。一方、吸収本体3の前方領域3aの長さの上限は、特に制限されるものではない。例えば、前方領域3aの吸収体11の大きさを後方領域3bの吸収体11の大きさ以下に設定する場合、その上限は、温感本体5の長さの、好ましくは300%以下であり、より好ましくは200%以下であり、更により好ましくは160%以下である。温感本体5の温感の効果を十分に得る観点からである。例えば、前方領域3aの吸収体11の大きさを幅方向中心線CWから生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の端縁までとする場合、言い換えると、温感剤保持シート13が長手方向Lの全域に亘って、吸収体11と重なる場合、実質的にその上限はないことになる。このような場合、前方領域3aの吸収体11の長手方向Lの長さは、後方領域3bの吸収体11の長手方向Lの長さよりも大きくなる。温感本体5の温感の効果を維持しつつ、長手方向L前側の領域での吸収性能をより向上させることができる。
【0047】
次に、本実施形態に係る生理用ナプキン1の好ましい使用方法について説明する。
装着者が生理用ナプキン1を装着する場合、まず、吸収本体3の吸収体11の排泄口当接域21が装着者の排泄口に対応するように、生理用ナプキン1を着衣(例示:ショーツ)に固定する。それにより、温感本体5の温感剤保持シート13が装着者の下腹部に対応するように生理用ナプキン1が着衣に固定される。そして、温感本体5の肌側の面が装着者の下腹部の肌に接した状態で、生理用ナプキン1が使用される。
【0048】
言い換えると、生理用ナプキン1は、吸収体11の排泄口当接域21が装着者の排泄口に当接するように吸収本体3が着衣に配置されたとき、温感剤保持シート13が装着者の下腹部に対応する位置に配置されるような形状を有している。したがって、吸収本体3の吸収体11の排泄口当接域21と、温感本体5の温感剤保持シート13との距離は、装着者の排泄口と、下腹部との距離(肌面上の距離)とに概ね等しい。
【0049】
本実施形態では、温感剤保持シート13の温感剤50(機能剤)は、TRPチャネルを活性化する温感成分と、溶媒成分とを含んでいる。そのため、生理用ナプキン1が着衣に固定され、使用されると、温感剤保持シート13に含まれる温感剤50が、液透過性シート7を透過して、装着者の肌に接触し、装着者の肌において、温感成分が接触している温感剤接触部分のTRPチャネルを効率よく活性化し、装着者の下腹部に温感を効率よく付与することができる。
【0050】
装着者の下腹部に温感を付与することにより、装着者の下腹部の肌における温感成分に接していた温感剤接触部分のTRPチャネルが活性化される結果、交感神経系を介して、温感剤接触部分から熱が生じ、装着者の肌における温感成分の接触部分の温度を上昇させることが期待できる。その結果、装着者の子宮に近い部位を温め、痛み物質プロスタグランジンを排出させ、装着者の生理痛を緩和することが期待される。装着者の子宮に近い部位を温めることにより、装着者の月経前症候群(Premenstrual Syndrome)、冷え性、更年期障害等を軽減することが期待される。血行促進(リンパの流れの促進)により老廃物排出と冷え改善、脂肪燃焼向上、免疫力向上などが期待される。
【0051】
本実施形態の好ましい態様では、温感本体(機能本体)5は、吸収体11よりも低い吸収性能を有する低吸収部(例示:温感剤保持シート13)を含んでいる。低吸収部は、液体の排泄物(例示:経血)の吸収量は吸収体11より低いが、排泄物をある程度は吸収可能な部分である。そのため、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁から排泄物が一部漏れ出たとしても、低吸収部でその排泄物を捕獲することができる。それにより、生理用ナプキン1の長手方向の前側から排泄物が漏れることをより抑制できる。
【0052】
また、本実施形態の好ましい態様では、吸収体11と低吸収部(例示:温感剤保持シート13)とは、幅方向Wから見て、長手方向Lに連続している。したがって、両者は長手方向Lに実質的に互いに隣接している。そのため、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁からの排泄物が一部漏れ出たとしても、隣接する低吸収部でその排泄物を容易に捕獲することができる。それにより、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側から液体が漏れることをより容易に抑制できる。ただし、幅方向Wから見て長手方向Lに連続するとは、吸収体11及び低吸収部のうちの一方が他方に長手方向L接している、厚さ方向Tに重なっている、及び、幅方向Wに隣り合っている(必ずしも接していない)、の少なくとも一つの場合を含む。
【0053】
また、本実施形態の好ましい態様では、吸収体11の一部と低吸収部(例示:温感剤保持シート13)の(少なくとも)一部とは厚さ方向Tに重複している(例示:重複部15)。言い換えると、低吸収部の一部又は全部と吸収体11の一部とは厚さ方向Tに重複している。そのため、生理用ナプキン1品の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁に液体の排泄物が達したとしても、そのまま重複する低吸収部にその排泄物を移行させて吸収することができる。それにより、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側から排泄物が漏れることをより容易に抑制できる。
【0054】
また、本実施形態の好ましい態様では、吸収体11の一部は、低吸収部(例示:温感剤保持シート13)の一部における肌側の部分に重複している(例示:重複部15)。すなわち、重複部分において、吸収体11の一部が低吸収部の一部に乗り上げて、より肌側に近づくことができる。それにより、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、肌面を伝って液体の排泄物が漏れる伝え漏れをより確実に抑制でき、したがって、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側から排泄物が漏れることをより確実に抑制できる。
【0055】
また、本実施形態の好ましい態様では、生理用ナプキン1は、吸収体11の一部と低吸収部(例示:温感剤保持シート13)の一部とを厚さ方向Tに重複させつつ圧搾して形成された圧搾部(例示:圧搾部31の長手方向Lの前側の一部)を更に備える。それゆえ、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁に向かって液体の排泄物が移動してきても、圧搾部31により、その移動を堰き止めて吸収体11の深部や他の箇所へ排泄物を拡散させることができる。それにより、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側から排泄物が漏れることをより確実に抑制できる。
【0056】
また、本実施形態の好ましい態様では、生理用ナプキン1は、吸収体11と機能層(例示:温感剤保持シート13)とが厚さ方向Tに重複する重複部15において、吸収体11の(長手方向Lの前側の)一部と機能層の(長手方向Lの後側の)一部とを厚さ方向Tに圧搾して形成された圧搾部(例示:圧搾部31の長手方向Lの前側の一部)を更に備える。それにより、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁に向かって移動してきた液体の排泄物を、圧搾部31により堰き止めて、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側から排泄物が漏れることを確実に抑制できる。
【0057】
また、図4は、実施形態に係る吸収性物品の他の構成例を示す平面図である。この図に示される本実施形態の別の好ましい態様では、生理用ナプキン1は、吸収体11と機能層(例示:温感剤保持シート13)とが厚さ方向Tに重複する重複部15において、吸収体11の(長手方向Lの前側の)一部と機能層の(長手方向Lの後側の)一部とを厚さ方向Tに圧搾して形成された圧搾部31aを更に備える。この場合にも、吸収体11の長手方向Lの前側の端縁に向かって移動してきた液体の排泄物を、圧搾部31aにより堰き止めて、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側から排泄物が漏れることを確実に抑制できる。また、幅方向Wにおいて、圧搾部31aの寸法(幅)は、吸収体11の寸法(幅)の少なくとも30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上を占めている。それにより、重複部15での吸収体11の剛性を高くすることができる。それにより、生理用ナプキン1が長手方向Lに長すぎて、長手方向Lの途中の部分、例えば、吸収体11と機能層(例示:温感剤保持シート13)との中間部分において、撚れや幅入れが生じてしまうという事象を、この圧搾部31aで抑制できる。
【0058】
また、本実施形態の好ましい態様では、幅方向Wに延びる複数の折り軸(例示:幅方向第1折線F3及び幅方向第2折線F4)の一つ(例示:幅方向第1折線F3)は、長手方向Lにおいて、吸収体11における前側の端縁11E1よりも幅方向中心線CW側、かつ、幅方向中心線CWよりも前側に位置する。すなわち、長手方向Lにおいて、吸収体11の前側の端部における前側の端縁11E1よりも幅方向中心線CW側に、折り軸(幅方向第1折線F3)が存在する。ここで、生理用ナプキン1の個包装状態では、吸収体11は少なくともその折り軸で折り曲げられているので、生理用ナプキン1が開封されて使用されるとき、吸収体11にはその折り軸で折り曲げられていた跡が残る。それゆえ、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の長手方向の前側の端縁に向かって液体の排泄物が移動してきても、その折り軸の跡により、その移動を堰き止めて吸収体11の深部や他の箇所へ排泄物を拡散させることができる。それにより、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側からの排泄物の漏洩をより確実に抑制できる。
【0059】
また、本実施形態の好ましい態様では、吸収体11における幅方向中心線CWよりも長手方向Lの前側(前方領域3a)の坪量は、吸収体11における幅方向中心線CWよりも長手方向Lの後側(後方領域3b)の坪量よりも高い。すなわち、液体の排泄物を吸収可能な量は、幅方向中心線CWよりも長手方向の前側の方が、後側の方よりも高い。そのため、生理用ナプキン1の前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が生理用ナプキン1を長手方向Lの後側に必要以上にずらして装着しても、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の領域がより十分に確保できるため、長手方向Lの前側から排泄物が漏れることをより確実に抑制できる。
【0060】
上記各実施形態において、所定の機能を有する機能層(例示:温感剤保持シート13)が有する機能剤(例示:温感剤50)に含まれる機能成分は温感成分である。しかし、本発明はこの例に限定されず、機能成分の種類は他の種類であってもよく、例えば、冷感剤の冷感成分や発熱剤の発熱成分であってもよい。冷感剤を用いる場合、機能層は、例えば、冷感成分と溶媒成分とを含む冷感剤を有するシートである。発熱剤を用いる場合、機能層は、例えば、発熱成分と溶媒成分とを含む発熱剤を有するシートである。また、所定の機能が保温機能の場合、機能層は保温性の高い(例示:温められた空気を保持し易い)不織布のようなシートであり、機能剤は必ずしも含まない。
【0061】
機能剤は、生理用ナプキン1が使用されるまでに揮発したり、他の領域へ移動したりすることを防止するため、水崩壊性の保護材、例えば、マイクロカプセルに保護されていてもよい。マイクロカプセルは、機能剤を内包し、液体(例示:経血、尿、汗)に触れると崩壊し、機能剤を外部に放出させる。放出された機能剤は、着用者の体温等により気化したり、着用者の肌に接触したりすることで、着用者に対して所定の機能を発揮する。
【0062】
マイクロカプセルの素材としては、例えば、糖類、例えば、単糖類(例示:ブドウ糖)、二糖類(例示:ショ糖)及び多糖類(例示:デキストリン、グルコマンナン、アルギン酸ナトリウム、水溶性でんぷん)、ゼラチン、水溶性ポリマー(例示:ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル)等が挙げられる。
【0063】
マイクロカプセルは市販されており、例えば、Symrise社から市販される、INCAP(商標)等が挙げられる。また、マイクロカプセルは、例えば、水にマイクロカプセルの素材を溶解させて水溶液を形成し、当該水溶液に機能剤及び界面活性剤を混合し、その水溶液をスプレーしながら減圧乾燥することにより製造することができる。
【0064】
また、図1図4を用いて説明される実施形態とは別の実施形態として、生理用ナプキンは、吸収体11における幅方向中心線CWから吸収体11における長手方向Lの前側の端縁11E1までの長さが、吸収体11における幅方向中心線CWから吸収体11における長手方向Lの後側の端縁11E2までの長さよりも長い。
具体的には、例えば、図1図4の生理用ナプキン1において、吸収体11が長手方向Lの前側に長く、吸収体11の前側の端縁11E1が、温感剤保持シート13の長手方向Lの前側の端縁13E1の近傍に位置する場合が考え得る。あるいは、例えば、温感剤保持シート13にも吸収体としての機能(液体吸収性及び液体保持性)を有するため、吸収体ともみなせる場合が考えられる。あるいは、例えば、機能層(例示:温感剤保持シート13)を備えず、吸収体11が長手方向Lの前側に長く、温感剤保持シート13の領域にまで延在している場合が考えられる。

この別の実施形態により、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、液体の排泄物を吸収可能な吸収体11の領域を長手方向Lに十分に長く確保できる。それゆえ、長手方向Lの前側に機能層(例示:温感剤保持シート13)を有する場合などで、前側の部分が相対的に長い生理用ナプキン1を下着に装着するとき、生理用ナプキン1の前側の端部のはみ出しを気にして、装着者が生理用ナプキン1を長手方向Lの後側に必要以上にずらして装着しても、生理用ナプキン1の長手方向Lの前側の領域において、吸収体11の領域を十分に確保できるため、長手方向Lの前側からの排泄物の漏れを抑制できる。
【0065】
(生理用ナプキン1における各資材等)
次に、各実施形態における生理用ナプキン1における各資材等について説明する。
【0066】
上記の各実施形態における機能層としての温感剤保持シート13は、TRPチャネル(温度受容器(温熱知覚受容器))を活性化する温感成分と溶媒成分とを含む温感剤50を有している。
【0067】
温感剤50は、例えば、TRPチャネルを活性化する温感成分と、溶媒成分とを含んでいる。温感成分としては、TRPチャネルを活性化するものであれば、特に制限されず、例えば、TRPV1レセプターに対するアゴニスト、TRPV3レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPV1に対するアゴニストが好ましい。TRPV1レセプターは、活性化温度閾値が43℃超と高く、装着者に高い温感を付与できるからである。
【0068】
温感成分は、装着者の安心感の観点から、植物由来の化合物が好ましい。温感成分としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例示:バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。それらの中でも、温感成分は、装着者が痛さを感じにくい観点から、カプサイシンではないことが好ましく、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例示:バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、及びジンゲロン、並びにそれらの任意の組合わせがより好ましい。
【0069】
冷感剤は、例えば、TRPチャネルを活性化する冷感成分と、溶媒成分とを含んでいる。冷感成分としては、TRPチャネルを活性化するものであれば、特に制限されず、例えば、TRPM8レセプターに対するアゴニスト、TRPA1レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPM8レセプターに対するアゴニストであることが好ましい。装着者に、過度の冷感を付与しないためである。冷感成分としては、例えば、メントール(例示:l-メントール)及びその誘導体(例示:乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル(例示:l-メンチルグリセリルエーテル))、サリチル酸メチル、カンファー、植物(例示:ミント、ユーカリ)由来の精油等が挙げられる。
【0070】
溶媒成分としては、温感成分及び冷感成分を含むことができるものであれば、特に限定されず、例えば、親油性溶媒及び親水性溶媒が挙げられる。このような溶媒成分は、温感成分及び冷感成分を、溶解、分散等することができる。親油性溶媒としては、例えば、油脂があげられる。油脂としては、例えば、天然油(例示:トリグリセリド等の脂肪酸エステル、ヤシ油、アマニ油等)、炭化水素(例示:パラフィン(例示:流動パラフィン))等が挙げられる。親水性溶媒としては、例えば、水及びアルコールが挙げられる。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の低級アルコール、カプリルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。それらの中でも、溶媒成分としては、揮発性を制御しやすい、特に揮発性を下げやすい観点からは、油脂(親油性溶媒)又はアルコール(親水性溶媒)が好ましい。また、生理用ナプキン1では、吸収性を阻害しにくい観点から、上記溶媒成分は親油性溶媒であることが好ましい。
【0071】
温感剤50における温感成分の濃度は、好ましくは1~50質量%であり、より好ましくは3~30質量%であり、さらに好ましくは5~15質量%である。一方、冷感剤における冷感成分の濃度は、好ましくは5~90質量%であり、より好ましくは10~80質量%であり、さらに好ましくは30~70質量%である。いずれも、温感又は冷感の効果の観点からである。また、生理用ナプキン1では、温感剤50又は冷感剤における温感成分又は冷感成分の坪量は、好ましくは0.001~30g/mであり、より好ましくは0.01~20g/mであり、さらに好ましくは0.1~10g/mである。装着者に温感又は冷感を付与する観点からである。
【0072】
生理用ナプキン1では、温感剤又は冷感剤は、上述の温感成分又は冷感成分及び溶媒成分以外に、装着者に温感又は冷感を付与する効果を阻害しない範囲で、所望の作用を有する少なくとも一種の他の成分を含むことができる。そのような少なくとも一種の他の成分としては、例えば、抗菌剤や皮膚収斂剤や抗炎症剤のような薬剤、ビタミン、アミノ酸、ゼオライト、ヒアルロン酸、コラーゲン、ワセリン、トレハロース、pH調整剤、保湿剤、香料などが挙げられる。
【0073】
生理用ナプキン1の温感剤は、剤自体が発熱する発熱剤とは異なり、低温やけどを起こし難く、かつ、粘着部72等が軟化し難くので生理用ナプキン1を使用後に下着等から取り外す際に、粘着部72等が下着等に残り難く、好ましい。
【0074】
生理用ナプキン1において、液透過性シート7の素材としては、液透過性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、布帛(例示:不織布、織布、編物)、開孔フィルム等が挙げられる。布帛としては、生理用ナプキン1の製造し易さの観点から不織布が好ましい。不織布としては、例えば、エアレイドパルプ、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、スパンレース不織布、ニードルパンチ不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例示:SMS)が挙げられる。液透過性シート7は、好ましくは5~100g/m2、より好ましくは10~50g/m2の坪量を有する。液透過性シート7は、好ましくは0.001g/cm~0.6g/cm、より好ましくは0.003g/cm~0.1g/cmの繊維密度を有する。
【0075】
布帛を構成する繊維としては、例えば、天然繊維、合成繊維、及び半合成繊維が挙げられる。天然繊維としては、例えば、パルプ繊維及び再生セルロース繊維が挙げられる。再生セルロース繊維としては、例えば、レーヨン繊維が挙げられる。半合成繊維としては、例えば、アセテート繊維のような半合成セルロース繊維が挙げられる。合成繊維としては、例えば、熱可塑性繊維が挙げられる。熱可塑性繊維としては、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)やポリブチレンテレフタレートやポリペンチレンテレフタレートのようなポリエステル系ポリマー、ナイロン6やナイロン6,6のようなポリアミド系ポリマー、アクリル系ポリマー、ポリアクリロニトリル系ポリマー、又はそれらの変性物、あるいはそれらの組み合わせ等から形成された繊維が挙げられる。開孔フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのシートに、複数の開孔部を設けたものが挙げられる。
【0076】
生理用ナプキン1において、液拡散シート41の素材としては、液透過性及び液拡散性を有するシートであれば特に制限はなく、例えば、液透過性・親水性の不織布、その積層不織布が挙げられ、具体的には、液透過性シート7の素材として列挙されるものが挙げられる。また、液拡散シート41は、好ましくは10~200g/m2、より好ましくは20~100g/m2の坪量を有する。液拡散シート41は、好ましくは0.002g/cm~0.8g/cm、より好ましくは0.004g/cm~0.2g/cmの繊維密度を有する。このとき、液拡散シート41の繊維密度は、液透過性シート7の繊維密度よりも高いことが好ましい。
【0077】
生理用ナプキン1において、液不透過性シート9の素材としては、液不透過性を有するものであれば特に制限はない。ただし、温感剤50の温感剤の効果で温められた空気を液不透過性シート9と肌との間の領域から散逸し難くする観点から、液不透過性シート9の素材としては非通気性を有するものを用いることが好ましい。液不透過性シート9の素材として、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の合成樹脂フィルム、スパンボンド又はスパンレース等の不織布に合成樹脂フィルムを接合したもの、SMS等の複層不織布等が挙げられ、非通気性を有する合成樹脂フィルムが好ましい。液不透過性シート9は、好ましくは10~50g/m2、より好ましくは15~30g/m2の坪量を有する。
【0078】
生理用ナプキン1において、温感剤保持シート13の素材としては、例えば、液透過性シート7の素材として列挙されるものや、スポンジシートのような多孔質樹脂シートなど、温感剤50を含浸可能なものが挙げられる。具体的には、温感剤50の溶媒が親油性溶媒であるときには、合成繊維の布帛、例えば、不織布、織布、編物等が挙げられ、好ましくは合成繊維の不織布が挙げられる。温感剤の溶媒が親水性溶媒であるときには、例えば、セルロース系繊維から構成される布帛、例えば、不織布、織布、編物等が挙げられ、好ましくはパルプ繊維から構成されるティッシュ、エアレイドパルプが挙げられる。なお、別の実施形態として、生理用ナプキン1に付与する所定の機能を保温機能とする場合、温感剤保持シート13に代替される保温性シートの素材は、例えば、温感剤保持シート13の素材として列挙されるものが挙げられ、この場合には温感剤50は含浸させない。
【0079】
生理用ナプキン1において、吸収体11(の吸収コア)の素材としては、例えば、パルプ繊維及び高吸水性ポリマーが挙げられる。吸収体11がコアラップを有する場合には、コアラップの素材としては、例えばティッシュが挙げられる。
【0080】
生理用ナプキン1において、粘着部71、72、73等の素材としては、ホットメルト接着剤、例えば、例えば、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレン(SEBS)、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。
【0081】
生理用ナプキン1において、個包装シート43の素材としては、例えば、ポリエチレン及びポリプロピレンのようなポリオレフィン系ポリマーが挙げられる。個包装シート43は、気密性を高める観点から、気密層を含んでもよい。気密層の素材としては、例えば、エチレンビニルアルコールコポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、例えば、塩化ビニリデンメチルアクリレートコポリマー、ポリビニルアルコール、ナイロン、例えば、ナイロン6、アルミ箔、基材フィルム(ポリエチレンテレフタレート等)上にアルミナ、シリカ等が蒸着されたものが挙げられる。
【0082】
生理用ナプキン1では、温感剤50は吸収体11と厚さ方向Tに概ね重複しない位置に配置されているが、吸収体11と厚さ方向Tに重複する位置にも配置することも可能である。具体的には、生理用ナプキン1では、温感剤50は、例えば、液透過性シート7、液拡散シート41、吸収体11における肌側及び/又は非肌側の表面に配置され得る。
【0083】
本発明の吸収性物品(例示:生理用ナプキン)は、上述した各実施形態に制限されることなく、本発明の目的、趣旨を逸脱しない範囲内において、各実施形態同士を組合せることや公知技術を適用すること等が可能である。
【符号の説明】
【0084】
1 生理用ナプキン
3 吸収本体
5 温感本体(機能本体)
11 吸収体
13 温感剤保持シート(機能層)
17 ウイング部
21 排泄口当接域
図1
図2
図3
図4