(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】画像形成装置、及び画像形成方法
(51)【国際特許分類】
G03G 5/147 20060101AFI20220615BHJP
G03G 15/00 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
G03G5/147
G03G5/147 501
G03G15/00 651
(21)【出願番号】P 2018037795
(22)【出願日】2018-03-02
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【氏名又は名称】酒井 正己
(72)【発明者】
【氏名】紙 英利
【審査官】川村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-102022(JP,A)
【文献】特開2005-249901(JP,A)
【文献】特開2006-337416(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 5/00-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光導電体と、潤滑剤を光導電体に供給する手段と
、光導電体に形成されたトナー像を印刷メディア又は中間転写体に転写する静電転写装置と、を有し、
前記光導電体は、表面層を有し、前記表面層がDLC(ダイヤモンドライクカーボン)又はセラミックスであり、
前記光導電体は、表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、
且つ、前記光導電体の表面自由エネルギー及び潤滑剤の表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下である画像形成装置。
【請求項2】
前記光導電体は、
表面のビッカース硬度が36Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下である請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記潤滑剤の表面自由エネルギーが28mJ/m
2以上42mJ/m
2以下である請求項1又は2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
光導電体に潤滑剤を供給する工程を有し、
前記光導電体は、表面層を有し、前記表面層がDLC(ダイヤモンドライクカーボン)又はセラミックスであり、
前記光導電体は、表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、前記光導電体の表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下であり、前記潤滑剤を供給する工程が、潤滑剤の表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下となるように潤滑剤を塗布する工程である画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置、及び画像形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、文書の殆どはコピー機で用いられる電子写真でプリントし、あらゆるシーンで活用されてきた。しかし、近年ではペーパレスや経費削減のはたらきに乗じてオフィスでコピーする機会は年々縮小している。電子写真がこれまでの役割を終えようとする中、電子写真は事務用印刷から商用印刷への用途の拡大が模索されている。電子写真はオフセット印刷の様な製版工程が不要なため、極小ロットで多品種の原稿を大量に印刷するようなオンデマンド印刷ができる利点がある。しかし、印刷物の品位と均質性はオフセット印刷と比べると格段に劣っているのが実情である。
【0003】
商用印刷では印刷物の画質が不均一では商品にならない。このため、電子写真を商用印刷として用いるには、画質の均質化が特に重要となる。また、オフィス用途と比べて、生産性と収益性が重要になるため、感光体の交換頻度を抑える必要がある。現在、ハイエンドクラスの電子写真装置に用いられる感光体の交換寿命は100万枚前後に設定されているものが多い。これでも商用印刷としての耐久性は十分とは言えない。コピー機がオフセット印刷機に換わるようなことは今のところ起きていないことからも未だ電子写真の性能が不充分であることが教示される。
【0004】
感光体の寿命は耐摩耗性と画像ボケの抑制とのトレードオフの関係から決定される。感光体はコンデンサーの一種と見なした場合、感光体は摩耗が進むと静電容量が増大して帯電性が劣化することが理解される。その結果、プリント画像はカブリが生じやすくなる。また、感光層が受ける電場が強くなる結果、電荷のブロッキング性は低下して地汚れも生じやすくなる。こうした帯電性の劣化を遅らせるために感光体の耐摩耗性を高めることは重要であるものの、耐摩耗性が高められると感光体表面の摩耗が遅れるために表面の汚れはリフレッシュされずに蓄積しやすくなる。汚れた感光体表面は表面抵抗が低くなりやすく、湿気の多い日は静電潜像が横流れして画像がボケてしまうことがある。こうしたトレードオフ関係があるため、感光体寿命は頭打ちされてきた。このため、電子写真の用途の拡大も制限されてきたと言える。
【0005】
また、特許文献1には、導電性支持体と導電性支持体上に設けられる感光層とを備え、前記感光層の硬さが、ビッカース硬さ(Hv)で20以上であり、かつ前記感光層の表面の表面自由エネルギー(γ)が、28mN/m以上、35mN/m以下である電子写真感光体が開示されている。この電子写真感光体は、耐摩耗性に優れて耐久寿命が長く、表面に異物が付着しにくくまた表面から異物を離脱させ易くてクリーニング性能に優れると記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、光導電体のビッカース硬さ、及び表面自由エネルギーを規定しただけでは、潤滑剤を塗布した時の、耐久性と耐画像ボケ性が両立できない。
本発明は光導電体の耐摩耗性と画像ボケのトレードオフを解消し、潤滑剤を用いても、耐久性に優れ、電子写真プロセスでも大量プリントを行っても画質の均質性が高いプリント出力を可能とする画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、下記[1]の画像形成装置が提供される。
[1]光導電体と、潤滑剤を光導電体に供給する手段とを有し、前記光導電体は、表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、前記光導電体の表面自由エネルギー及び潤滑剤の表面自由エネルギーが20mJ/m2以上78mJ/m2以下である画像形成装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、光導電体の耐久性を飛躍的に向上させることを達成し、地汚れと画像ボケを抑制することができ、商用印刷に十分適応できる画像形成装置が提供可能となる。更にプリントコストを低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】光導電体の表面自由エネルギーと潤滑剤の表面自由エネルギーの説明図である。
【
図2】潤滑剤の表面自由エネルギーと使用後の光導電体の表面自由エネルギーの説明図である。
【
図3】セラミックの保護層を形成するエアロゾルデポジッション装置の一例の概略構成図である。
【
図4】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【
図5】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図6】プロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【
図7】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図8】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図9】本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略構成図である。
【
図10】潤滑剤供給手段の一例を示す概略構成図である。
【
図11】プラズマCVD法を利用したダイヤモンドライクカーボン構造を有する保護層を製膜するための装置の真空槽の一例を示す概略構成図である。
【
図12】
図11に示す真空槽に設けられた反応槽の一例を示す概略構成図である。
【
図13】
図11に示す真空槽に設けられた反応槽の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者は光導電体について、常に所定の表面自由エネルギーと所定の硬度を呈する光導電体が摩耗と画像ボケの発生を抑制することに有効である性状を見出し、また、潤滑剤の表面自由エネルギーが特定の範囲であることでオフセット印刷機に伍する耐久性を獲得することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
なお、本発明の前記[1]の実施の形態には、次の[2]~[5]も含まれるので、これらについても併せて説明する。
[2]前記光導電体は、ビッカース硬度が36Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下である前記[1]に記載の画像形成装置。
[3]前記光導電体は、表面層を有し、前記表面層が(1)フッ素樹脂粒子と硬化性樹脂、またはフッ素樹脂粒子と金属酸化物粒子と硬化性樹脂、(2)DLC、(3)セラミックスの何れかである前記[1]または[2]に記載の画像形成装置。
[4]前記潤滑剤の表面自由エネルギーが28mJ/m2以上42mJ/m2以下である前記[1]~[3]のいずれか一項に記載の画像形成装置。
[5]光導電体に潤滑剤を供給する工程を有し、前記光導電体は、表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、前記光導電体の表面自由エネルギーが20mJ/m2以上78mJ/m2以下であり、前記潤滑剤を供給する工程が、潤滑剤の表面自由エネルギーが20mJ/m2以上78mJ/m2以下となるように潤滑剤を塗布する工程である画像形成方法。
【0012】
潤滑剤が塗布される画像形成装置では潤滑剤の供給と除去のバランスが摩耗と画像ボケの抑制に重要となる。摩耗に関しては、潤滑剤の塗布ムラに応じて光導電体は偏摩耗が生じる。偏摩耗の進行する部位で地汚れ等の画像欠陥が生じるため、光導電体の寿命は偏摩耗を来す最も摩耗速度の大きい局部で決定されることとなる。画像ボケに関しては、一旦、光導電体表面に供給された潤滑剤が除去されずにいつまでも光導電体表面に滞留し続ければ、潤滑剤は光導電体上で分子の切断などの変質を生じる。変質した潤滑剤は表面自由エネルギーが増大して放電生成物や水分を吸着しやすくなり画像ボケを誘発させてしまう。この画像ボケも局部で生じる画像ボケが光導電体寿命を決めてしまう。すなわち、均質性が必要なプリント画像を出力する場合、光導電体の寿命を上げるには平均的な性能よりも局所的に弱い性能を底上することが重要となる。
摩耗に対して、光導電体の表面硬度を高硬度化することで偏摩耗を抑えることが可能である。偏摩耗が実質的に無視できる程に摩耗速度を低減できれば問題はなくなる。光導電体のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であることが重要である。
【0013】
次に画像ボケの対策について説明する。光導電体表面に移された潤滑剤の除去は、通常、クリーニングブレードが用いられる。クリーニングブレードで光導電体表面をしごいただけでは潤滑剤を除去することは難しい。光導電体表面に移された潤滑剤を除去するには鉛筆で書いた黒鉛跡を消しゴムで消去する機構を用いるのが合理的である。クリーニングブレード自体を消しゴムと同じ機能を持たせることも考えられるが、潤滑剤をトナーに移着させてトナーと一緒に潤滑剤を除去する方法が装置やプロセスを複雑にしなくて良い。潤滑剤をトナーに移着し易い状態にするには光導電体の表面自由エネルギーを低くすればよい。
しかし、光導電体の表面自由エネルギーを低くしすぎると、潤滑剤が光導電体に濡れにくくなり、潤滑剤が光導電体に濡れにくくなると供給ムラと潤滑剤の消費を助長させてしまうため表面自由エネルギーは有利な範囲がある。発明者らの試験から光導電体の表面自由エネルギーは光導電体の初期と使用時において20mJ/m2以上78mJ/m2以下が良い。
また、光導電体の耐摩耗性を高めることで、画像形成装置内のクリーニング手段として用いられるクリーニングブレードの剪断力を強くする余裕ができ、結果として、光導電体表面の清掃能力を高め、画像ボケを防止する水準を高めることができる。
【0014】
電子写真プロセスでは光導電体表面に滞留した潤滑剤は帯電工程を経ることで表面自由エネルギーが帯電時間に対して直線的に上昇する。本発明者は光導電体と潤滑剤の接着性は両者の表面自由エネルギーの大きさに応じて増大するため、光導電体のみならず潤滑剤の表面自由エネルギーも適正範囲に収めることが重要であることを見出した。これは試験で実証され、光導電体の表面自由エネルギー及び潤滑剤の表面自由エネルギーは20mJ/m2以上78mJ/m2以下であることが必要である。さらに、潤滑剤の表面自由エネルギーが42mJ/m2以下の場合、光導電体の表面自由エネルギーを低減することによる潤滑剤の除去性がより改善される。潤滑剤の表面自由エネルギーは供給と除去のバランスのより優れる範囲として28mJ/m2以上42mJ/m2以下が好ましい。
画像形成装置内で潤滑剤の塗布と除去が繰り返し行われており、且つ、ドラムが一回転するごとに帯電手段を経ることで塗布された潤滑剤はコロナ放電を受ける。
したがって、光導電体上に滞留する潤滑剤の表面自由エネルギーは、新しく潤滑剤が供給される量と除去される量、および帯電の大きさや温湿度などの雰囲気によって変わる。ここで、新しい潤滑剤の供給量は概して潤滑剤の消費量によって決定される。潤滑剤の除去量は画像形成装置のクリーニング能力に影響を受ける。通常、クリーニング手段はクリーニングブレードが用いられており、光導電体とブレードが当接するときの剪断力が大きくなればクリーニング能力は増強する。また、クリーニングに介在するトナーの量や、潤滑剤とトナーとの馴染み易さもクリーニング能力に影響する。
光導電体の表面自由エネルギーは、光導電体表面に含まれる材料、形状によって調整することができる。また、潤滑剤の表面自由エネルギーは、潤滑剤塗布量等により調整することができる。
以上の特定の表面自由エネルギーを有する光導電体と潤滑剤により、これまで課題とされた画像ボケの解消が実現できる。
【0015】
尚、本発明において、表面自由エネルギーは次の通り定義する。
未使用の光導電体表面の接触角測定から求めた表面自由エネルギーは、
図1における(1)に対応し、初期の光導電体の表面自由エネルギーとする。光導電体表面に含まれる材料、形状によって表面自由エネルギーは異なる。
次に、光導電体が耐久試験等の目的で、潤滑剤を塗布する手段を有する画像形成装置内で使用された後に取りだされたものの接触角測定から求めた表面自由エネルギーは、
図1の(2)に対応するため、“潤滑剤の表面自由エネルギー”とする。なぜなら、光導電体表面が潤滑剤で覆われた状態であるからである。
(2)の状態は必ずしも潤滑剤で100%覆われる必要はなく、仮に50%の被覆率である場合は、それ自体を潤滑剤の表面自由エネルギーとみなして本発明では評価を行う。
次に、耐久試験後の光導電体自体の表面自由エネルギーは画像形成装置内で潤滑剤が塗布されているため、直接測定することはできない。
本発明では、光導電体表面に塗布される潤滑剤をA3サイズの黒ベタ画像を100枚プリントすることで、光導電体表面の潤滑剤を除去させた表面を便宜上、耐久試験後の光電導体の表面とする。これは
図2の(3)に対応し、この表面の表面自由エネルギーを、使用時の光導電体の表面自由エネルギーとする。
このように潤滑剤を強制的に除去しても厳密には潤滑剤が残存することは考えられるが、こうしたケースは光導電体そのものの表面の変質とみなすことにする。
前記初期の光導電体の表面自由エネルギーは、部材の過渡的な状態が試験結果に影響するため、試験結果の再現性が低い。従って、本発明においては、“光導電体の表面自由エネルギー”は、上記
図2の(3)に対応する、使用時の光導電体の表面自由エネルギーを言う。使用時の潤滑剤の除去のし易さを確かめるには、光導電体表面に塗布された潤滑剤を除去した状態の光導電体の表面自由エネルギーの評価が必要となる。
また、本発明においては、使用時の光導電体の表面自由エネルギーである“光導電体の表面自由エネルギー”は、10万枚連続プリント試験後に測定した値で評価したが、10万枚は過渡状態を排除するためのボリュームであり、5万枚後でも20万枚後でも光導電体の表面自由エネルギーの違いに大差はないと考える。ただし、試験枚数が新品数枚、または(例えば1000万枚など)部材の寿命を超えた条件で連続試験をした場合、部材の過渡的な状態が試験結果に影響するため試験結果の再現性が低くなる。こうした影響を排除して、ブレード、潤滑剤、光導電体がならされた値を採用している。
【0016】
光導電体の耐摩耗性の改良は光導電体として用いる光導電体表面の表面硬度や弾性仕事率を高めると良い。具体的には荷重を印加して30秒後に2.45N(0.25kgf)となるような力を加え、5秒間の保持時間を設けたときのビッカース硬度は31Hv以上870Hv以下が良い。下限は偏摩耗を最低限抑える値として規定する条件であり、上限は光導電体表面のシワや剥離などの不具合を抑える値として規定する条件である。尚、前記ビッカース硬度は、23℃55%RHで測定した値である。
弾性仕事率は40%以上、好ましくは80%以上が良い。弾性仕事率は硬度と連動することが多いことから、本発明ではビッカース硬度を代表値とした指標に用いている。
この硬度特性を得る方策として、光導電体表面の材料に(1)フッ素樹脂粒子と硬化性樹脂、またはフッ素樹脂粒子と金属酸化物粒子と硬化性樹脂、(2)DLC(ダイヤモンドライクカーボン)、(3)セラミックスの何れかを用いる方法が挙げられる。
DLC膜を用いる系では、例えば、印加するバイアスをできるだけ小さくして、プラズマ密度をできるだけ濃くすることにより、ビッカーズ硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下である光導電体を得ることができる。
また、硬化性樹脂を用いる系では、例えばフッ素樹脂粒子を添加することによりビッカーズ硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下である同導電体を得ることができる。
【0017】
光導電体の静電特性と耐久性を高度なレベルで両立させるには、光導電体として用いる光導電体の表面に表面層として、保護層を設ける機能分離型の構造体にするのが有利である。
【0018】
<光導電体の構成>
本発明の画像形成装置は、導電性支持体上に感光層をもつ光導電体を有する。
以下、本発明における光導電体について詳細に説明する。
【0019】
<導電性支持体>
前記導電性支持体としては、体積抵抗値が1010Ω・cm以下の導電性を示すもの、例えばアルミニウム、ニッケル、クロム、ニクロム、銅、銀、金、白金、鉄等の金属、酸化スズ、酸化インジウム等の酸化物を、蒸着又はスパッタリングによりフィルム状又は円筒状のプラスチック、紙等に被覆したもの、あるいはアルミニウム、アルミニウム合金、ニッケル、ステンレス等の板、及び、それらを、Drawing Ironing法、Impact Ironing法、Extruded Ironing法、Extruded Drawing法、切削法等の工法により素管化後、切削、超仕上げ、研磨等により表面処理した管等を使用することができる。
【0020】
<中間層>
本発明の光導電体は、導電性支持体と感光層との間に中間層を設けることができる。前記中間層は、接着性の向上、モアレの防止、上層の塗工性の改良、導電性支持体からの電荷注入の防止等の目的で設けられる。
【0021】
前記中間層は、通常、樹脂を主成分とする。通常、前記中間層の上に前記感光層を塗布するため、前記中間層に用いる樹脂としては、有機溶剤に難溶である熱硬化性樹脂が相応しやすい。特に、ポリウレタン、メラミン樹脂、アルキッド-メラミン樹脂は、以上の目的を十分に満たすものが多く、特に好ましい材料である。テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いて、樹脂を適度に希釈したものを、塗料とすることができる。
【0022】
また、前記中間層には、伝導度の調節やモアレを防止するために、金属、又は金属酸化物等の微粒子を加えてもよい。特に酸化チタンないし酸化亜鉛が好ましく用いられる。
前記微粒子を、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液と樹脂成分を混合した塗料とすることができる。
【0023】
前記中間層は、以上の塗料を浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等で導電性支持体上に成膜する。必要な場合、加熱硬化することで形成される。前記中間層の厚みは2μm~20μm程度が適当になるケースが多い。光導電体の残留電位の蓄積が大きくなる場合、3μm未満にするとよい。
【0024】
<感光層>
前記光導電体の感光層は、感光層として電荷発生層と電荷輸送層とを順次積層させた積層型感光層であることが好ましい。
【0025】
-電荷発生層-
前記電荷発生層は、前記積層型感光層の一部を指し、露光によって電荷を発生する機能をもつ。この層は含有される化合物のうち、電荷発生物質を主成分とする。前記電荷発生層は必要に応じてバインダー樹脂を用いることもある。前記電荷発生物質としては、無機系材料と有機系材料を用いることができる。
【0026】
前記無機系材料としては、例えば、結晶セレン、アモルファス・セレン、セレン-テルル、セレン-テルル-ハロゲン、セレン-ヒ素化合物、アモルファスシリコン等が挙げられる。アモルファスシリコンにおいては、ダングリングボンドを水素原子又はハロゲン原子でターミネートしたものや、ホウ素原子、リン原子等をドープしたものが好ましく用いられる。
【0027】
一方、前記有機系材料としては、公知の材料を用いることができ、例えば、チタニルフタロシアニン、クロロガリウムフタロシアニン等の金属フタロシアニン、無金属フタロシアニン、アズレニウム塩顔料、スクエアリック酸メチン顔料、カルバゾール骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、フルオレノン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、ペリレン系顔料などが挙げられる。このうち、金属フタロシアニン、フルオレノン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、トリフェニルアミン骨格を有する対称型又は非対称型のアゾ顔料、及びペリレン系顔料は、電荷発生の量子効率が軒並み高く、本発明に用いる材料として好適である。これらの電荷発生物質は、単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
【0028】
前記電荷発生層に必要に応じて用いられるバインダー樹脂としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリケトン、ポリカーボネート、ポリアリレート、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ-N-ビニルカルバゾール、ポリアクリルアミド等が挙げられる。また、後述する高分子電荷輸送物質を用いることもできる。このうちポリビニルブチラールが使用されることが多く、有用である。これらのバインダー樹脂は、単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
【0029】
前記電荷発生層を形成する方法としては、大きく分けて真空薄膜作製法と溶液分散系からのキャスティング法がある。
【0030】
前者の方法には、真空蒸着法、グロー放電分解法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、CVD(化学気相成長)法等があり、上述した前記無機系材料や前記有機系材料からなる層が良好に形成できる。
【0031】
また、前記キャスティング法によって前記電荷発生層を設けるには、上述した無機系又は有機系電荷発生物質を、必要ならばバインダー樹脂と共にテトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ジオキサン、ジクロロエタン、ブタノン等の溶媒を用いてボールミル、アトライター、サンドミル等により分散し、分散液を適度に希釈して塗布すればよい。このうちの溶媒として、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンは、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエン及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。塗布は、浸漬塗工法、スプレーコート法、ビードコート法等により行うことができる。
【0032】
以上のようにして設けられる前記電荷発生層の厚みは通常、0.01μm~5μm程度が適当である。
【0033】
残留電位の低減や高感度化が必要となる場合、前記電荷発生層を厚膜化するとこれらの特性が改良されることが多い。反面、帯電電荷の保持性や空間電荷の形成等帯電性の劣化を来すことも多い。これらのバランスから前記電荷発生層の厚みは0.05μm~2μmの範囲がより好ましい。
【0034】
また、必要により、前記電荷発生層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して、0.1phr~20phr、好ましくは、0.1phr~10phr、レベリング剤の使用量は、0.001phr~0.1phr程度が適当である。
【0035】
-電荷輸送層-
前記電荷輸送層は前記電荷発生層で生成した電荷を注入、輸送し、帯電によって設けられた光導電体の表面電荷を中和する機能を担う積層型感光層の一部を指す。前記電荷輸送層の主成分は電荷輸送成分とこれを結着するバインダー成分ということができる。
【0036】
前記電荷輸送物質に用いることのできる材料としては、例えば、低分子型の電子輸送物質、正孔輸送物質、高分子電荷輸送物質などが挙げられる。
前記電子輸送物質としては、例えば、非対称ジフェノキノン誘導体、フルオレン誘導体、ナフタルイミド誘導体等の電子受容性物質が挙げられる。これらの電子輸送物質は、単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
【0037】
前記正孔輸送物質としては、電子供与性物質が好ましく用いられる。その例としては、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、トリフェニルアミン誘導体、ブタジエン誘導体、9-(p-ジエチルアミノスチリルアントラセン)、1,1-ビス-(4-ジベンジルアミノフェニル)プロパン、スチリルアントラセン、スチリルピラゾリン、フェニルヒドラゾン類、α-フェニルスチルベン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体、フェナジン誘導体、アクリジン誘導体、ベンゾフラン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、チオフェン誘導体等が挙げられる。これらの正孔輸送物質は単独でも二種以上の混合物として用いてもよい。
【0038】
また、以下に表される高分子電荷輸送物質を用いることができる。例えば、ポリ-N-ビニルカルバゾール等のカルバゾール環を有する重合体、ヒドラゾン構造を有する重合体、ポリシリレン重合体、芳香族ポリカーボネートなどが挙げられる。これらの高分子電荷輸送物質は、単独又は二種以上の混合物として用いることができる。
【0039】
前記高分子電荷輸送物質は、低分子型の電荷輸送物質と比べて、前記電荷輸送層上に架橋樹脂の表面層を積層する際に、架橋樹脂の表面層へ電荷輸送層を構成する成分の滲みだしが少なく、架橋樹脂の表面層の硬化不良を防止するのに適当な材料である。また、電荷輸送物質の高分子量化により耐熱性にも優れる性状から架橋樹脂の表面層を成膜する際の硬化熱による劣化が少なく有利である。
【0040】
前記電荷輸送層のバインダー成分として用いることのできる高分子化合物としては、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリビニル、ポリアリレート、ポリカーボネート、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂等の熱可塑性又は熱硬化性樹脂が挙げられる。このうち、ポリスチレン、ポリエステル、ポリアリレート、ポリカーボネートは電荷輸送成分のバインダー成分として用いる場合、電荷移動特性が良好な性能を示すものが多く、有用である。また、前記電荷輸送層はこの上層に、好ましくは、架橋樹脂の表面層が積層されるため、電荷輸送層は従来型の電荷輸送層に対する機械強度の必要性が要求されない。このため、ポリスチレン等、透明性が高いものの機械強度が多少低い材料で従来技術では適用が難しいとされた材料も、電荷輸送層のバインダー成分として有効に利用することができる。
【0041】
これらの高分子化合物は単独又は二種以上の混合物として、あるいはそれらの原料モノマー二種以上からなる共重合体として、更には、電荷輸送物質と共重合化して用いることができる。
【0042】
前記電荷輸送層の改質に際して電気的に不活性な高分子化合物を用いる場合には、フルオレン等の嵩高い骨格をもつカルドポリマー型のポリエステル、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレート等のポリエステル、C型ポリカーボネートのようなビスフェノール型のポリカーボネートに対してフェノール成分の3,3´部位がアルキル置換されたポリカーボネート、ビスフェノールAのジェミナルメチル基が炭素数2以上の長鎖のアルキル基で置換されたポリカーボネート、ビフェニル又はビフェニルエーテル骨格をもつポリカーボネート、ポリカプロラクトン、ポリカプロラクトンの様な長鎖アルキル骨格を有するポリカーボネートやアクリル樹脂、ポリスチレン、水素化ブタジエンなどが有効である。
【0043】
ここで電気的に不活性な高分子化合物とは、トリアリールアミン構造のような光導電性を示す化学構造を含まない高分子化合物を指す。これらの樹脂を添加剤としてバインダー樹脂と併用する場合、光減衰感度の制約から、その添加量は、電荷輸送層の全固形分に対して50質量%以下とすることが好ましい。
【0044】
低分子型の電荷輸送物質を用いる場合、その使用量は、通常、40phr~200phrであり、好ましくは70phr~100phr程度が適当である。また、前記高分子電荷輸送物質を用いる場合、電荷輸送成分100質量部に対して樹脂成分が0質量部~200質量部、好ましくは80質量部~150質量部程度の割合で共重合された材料が好ましく用いられる。
【0045】
高感度化を満足させるには電荷輸送成分の配合量を70phr以上とすることが好ましい。また、電荷輸送物質としてα-フェニルスチルベン化合物、ベンジジン化合物、ブタジエン化合物の単量体、二量体及びこれらの構造を主鎖又は側鎖に有する高分子電荷輸送物質は電荷移動度の高い材料が多く有用である。
【0046】
電荷輸送層は、電荷輸送成分とバインダー成分を主成分とする混合物ないし共重合体を適当な溶剤に溶解ないし分散して電荷輸送層用塗料を調製し、これを塗布、乾燥することにより形成できる。塗工方法としては浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が採用される。
【0047】
電荷輸送層用塗料を調製する際に使用できる分散溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ等のエーテル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、クロロベンゼン、ジクロロメタン等のハロゲン類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類等を挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノンは、クロロベンゼンやジクロロメタン、トルエン、及びキシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独として又は混合して用いることができる。
【0048】
前記電荷輸送層の上層には、通常、架橋樹脂の表面層が積層されているため、この構成における前記電荷輸送層の厚みは、実使用上の膜削れを考慮した電荷輸送層の厚膜化の設計が不要である。前記電荷輸送層の厚みは、実用上、必要とされる感度と帯電能を確保する都合、10μm~40μm程度が適当であり、より好ましくは15μm~30μm程度が適当である。
【0049】
また、必要により、電荷輸送層中に酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して、0.1phr~20phr、好ましくは、0.1phr~10phr、レベリング剤の使用量は、0.001phr~0.1phr程度が適当である。
【0050】
<表面層>
前記表面層としては、硬化性樹脂(以下、架橋樹脂とも称す)の表面層が好ましい。
前記架橋樹脂の表面層は、光導電体表面に製膜される保護層を指す。この保護層においては、塗料がコーティングされた後、ラジカル重合性材料成分の重合反応によって架橋構造の樹脂が製膜される。樹脂膜が架橋構造をもつため前記光導電体各層のなかで最も耐摩耗性が強靱である。また、架橋の電荷輸送性の構造単位が含まれる場合には、電荷輸送層と類似の電荷輸送性を示す。
【0051】
-ラジカル重合性材料成分-
前記ラジカル重合性材料成分としては、例えば、アクリロイルオキシ基を有するアクリレートが挙げられる。
本発明では光導電体表面の耐摩耗性の強化にも優れるトリメチロールプロパンを好適に用いることができる。
【0052】
3官能以上のバインダー成分としては、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。これにより架橋膜自体の耐摩耗性が向上したり、強靱性が増大したりすることが多い。
電荷輸送性構造を有しない3官能以上のラジカル重合性モノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレート、カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートが好ましい。
これらとしては、東京化成社等の試薬メーカーのもの、日本化薬社KAYARD DPCAシリーズ、同DPHAシリーズ等が挙げられる。
【0053】
また、硬化を促進させたり、安定化させたりするためにチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社イルガキュア184等の開始剤を全固形分に対して5質量%~10質量%程度加えてもよい。
架橋性の電荷輸送材料としては、例えば、アクリロイルオキシ基やスチレン基を有する連鎖重合系の化合物、水酸基やアルコキシシリル基、イソシアネート基を有する逐次重合系の化合物が挙げられ、電荷輸送構造を含み(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有する化合物が利用できる。
また、前記架橋樹脂の表面層としては、電荷輸送構造を含まない(メタ)アクリロイルオキシ基を1つ以上有するモノマーやオリゴマーと併用した組成の構成にしても良い。
前記架橋樹脂の表面層は、例えば、少なくとも塗工液中にこのような化合物を含有させて、該塗工液を塗工して層を形成し、熱、光、電子線、γ線等の放射線によるエネルギーを与えて架橋し硬化させてできる。
前記電荷輸送構造を含み(メタ)アクリロイルオキシ基を一つ以上有する化合物としては、例えば、以下の一般式1で表される電荷輸送性化合物が挙げられる。
【0054】
【化1】
ただし、前記一般式1中、d、e、fは、それぞれ0及び1のいずれかを表す。R
13は、水素原子、及びメチル基のいずれかを表す。R
14、及びR
15は、水素原子以外の置換基で炭素数1~6のアルキル基を表し、複数の場合は異なってもよい。g、及びhは、0から3のいずれかの整数を表す。Zは、単結合、メチレン基、エチレン基、及び下記構造のいずれかを表す。
【0055】
【0056】
【0057】
【0058】
前記架橋樹脂の表面層は、例えば、前記ラジカル重合性材料成分と、溶媒などを含有する架橋樹脂の表面層塗料を塗工することにより形成することができる。
前記架橋樹脂の表面層塗料を調製する際に使用する溶媒は、モノマーを十分に溶解するものが好ましく、例えば、上述のエーテル類、芳香族類、ハロゲン類、エステル類の他、エトキシエタノールのようなセロソルブ類、1-メトキシ-2-プロパノールのようなプロピレングリコール類などを挙げることができる。このうち、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、1-メトキシ-2-プロパノールは、クロロベンゼン、ジクロロメタン、トルエン、キシレンと比較して環境負荷の程度が低いため好ましい。これらの溶媒は単独として又は混合して用いることができる。
【0059】
前記架橋樹脂の表面層塗料の塗工方法としては、例えば、浸漬法、スプレー塗工法、リングコート法、ロールコータ法、グラビア塗工法、ノズルコート法、スクリーン印刷法等が挙げられる。多くの場合、塗料はポットライフが長くないため、少量の塗料で必要な分量のコーティングができる手段が環境への配慮とコスト面で有利となる。このうちスプレー塗工法とリングコート法が好適である。
【0060】
前記架橋樹脂の表面層を製膜する際、主に紫外光に発光波長をもつ高圧水銀灯やメタルハライドランプ等のUV照射光源が利用できる。また、ラジカル重合性含有物や光重合開始剤の吸収波長に合わせ可視光光源の選択も可能である。照射光量は、50mW/cm2以上、1,000mW/cm2以下が好ましく、50mW/cm2未満では硬化反応に時間を要する。1,000mW/cm2より強いと反応の進行が不均一となり、架橋樹脂の表面層の表面に局部的な皺が発生したり、多数の未反応残基、反応停止末端が生じたりする。また、急激な架橋により内部応力が大きくなり、クラックや膜剥がれの原因となる。
【0061】
必要により、前記架橋樹脂の表面層中に前記電荷発生層で記載した酸化防止剤、可塑剤、滑剤、紫外線吸収剤等の低分子化合物及びレベリング剤、また前記電荷輸送層で記載した高分子化合物を添加することもできる。これらの化合物は単独又は二種以上の混合物として用いることができる。低分子化合物及びレベリング剤を併用すると感度劣化を来すケースが多い。このため、これらの使用量は概して塗料総固形分中の0.1質量%~20質量%、好ましくは0.1質量%~10質量%、レベリング剤の使用量は0.1質量%~5質量%程度が適当である。
【0062】
前記架橋樹脂の表面層の厚みは3μm~15μm程度が適当である。下限は製膜コストに対する効果度合いから算定される値であり、上限は帯電安定性や光減衰感度等の静電特性と膜質の均質性から設定される。
【0063】
また、特に樹脂中にフィラーを分散させた保護層は好ましい。
保護層に添加されるフィラーは、有機系及び無機系のフィラーがある。
有機系フィラーとしては、ポリテトラフルオロエチレンのようなフッ素樹脂フィラー、シリコ-ン樹脂フィラー、炭素を主成分とするフィラー等が挙げられ、無機系フィラー材料としては、銅、スズ、アルミニウム、インジウムなどの金属粉末、酸化珪素、シリカ、酸化錫、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化インジウム、酸化アンチモン、酸化ビスマス、アンチモンをド-プした酸化錫、錫をド-プした酸化インジウム等の金属酸化物、チタン酸カリウムなどの無機材料が挙げられる。
特に、この中でも無機材料もしくは炭素を主成分とするフィラー材料を用いることが有利である。特に無機材料では金属酸化物が良好であり、さらには、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化チタン等が有効に使用できる。さらに炭素を主成分とするフィラーでは、ダイヤモンドフィラーが有効に使用できる。
また、有機系フィラーとしてはフッ素樹脂フィラーが有効に使用できる。
フッ素樹脂フィラーと金属酸化物粒子を併用しても良い。
【0064】
前記フィラーの好ましい粒径は0.1μm以上3μm以下であり、より好ましくは0.2μm以上0.5μm以下が良い。
保護層のフィラー濃度は、高いほど耐摩耗性が高いので良好であるが、書き込み光透過率が低下し、副作用を生じる場合がある。従って、概ね全固形分に対して、50質量%以下、好ましくは30質量%以下である。その下限値は、通常、5質量%である。
樹脂中にフィラーを分散させた保護層の膜厚は、0.5μm以上10μm以下が適当であり、好ましくは1.0μm以上6.0μm以下である。
【0065】
<保護層:DLC(ダイヤモンドライクカーボン)>
ダイヤモンドライクカーボン構造を有する保護層は、好ましくはSP3軌道を有するダイヤモンドと類似のC-C結合を有する方が望ましい。
なお、SP2軌道を有するグラファイトと類似の構造を持つ膜でも構わないし、更に非晶質性のものでも構わない。
ダイヤモンドライクカーボン構造を有する保護層は、抵抗制御、光透過性制御、機械物性制御などを行うために、窒素、フッ素、硼素、リン、塩素、臭素、沃素などの添加物元素が含有されていても構わない。
【0066】
ダイヤモンドライクカーボン構造を有する保護層を作製するときには、炭化水素ガス(メタン、エタン、エチレン、アセチレン等)を主材料として、H2、Ar等のキャリアガスを用いる。
さらに、添加物元素を供給するガスとしては、減圧下で気化できるもの、加熱することにより気化できるものであれば構わない。例えば窒素を供給するガスとしてNH3、N2等を用い、フッ素を供給するガスとしてC2F6、CH3F等を用い、硼素を供給するガスとしてはB2H6等を用い、リンを供給するガスとしてはPH3等を用い、塩素を供給するガスとしてはCH3Cl、CH2Cl2、CHCl3、CCl4等を用い、臭素を供給するガスとしてはCH3Br等を用い、沃素を供給するガスとしては、CH3I等を用いることができる。
また、添加物元素を複数供給するガスとしては、NF3、BCl3、BBr、BF3、PF3、PCl3等を用いる。
【0067】
ダイヤモンドライクカーボン構造を有する保護層は、上記のようなガスを用い、プラズマCVD法、グロー放電分解法、光CVD法などやグラファイト等をターゲットとしたスパッタリング法等により形成される。
特にその製膜法は限定されるものではないが、保護層として良好な特性を有する炭素を主成分とする膜を形成する方法として、プラズマCVD法でありながらスパッタ効果を伴わせつつ製膜させる方法等が知られている。
【0068】
プラズマCVD法を利用した炭素を主成分とする保護層の製膜法では、支持体を特に加熱する必要がなく、約150℃以下の低温で被膜を形成できるため、耐熱性の低い有機系感光層上に保護層を形成する際にも、何ら支障がないというメリットがある。
ダイヤモンドライクカーボン構造を有する保護層の膜厚は、0.2μm以上5.0μm以下であることが望ましい。
【0069】
プラズマCVD法を利用したダイヤモンド状カーボン若しくは非晶質カーボン構造を有する保護層の形成方法の一例を以下に示す。上記のようにして作製した感光層を
図11~
図13に示すようなプラズマCVD装置にセットし、炭素又は炭素を主成分とする薄膜よりなる保護層を形成する。ここで
図11中、107はプラズマCVD装置の真空槽であり、ゲート弁109によりロード/アンロード用予備室117と仕切られている。真空槽107内は排気系120(圧力調整バルブ121、ターボ分子ポンプ122、ロータリーポンプ123よりなる)により真空排気され、また一定圧力に保たれるようになっている。真空槽107内には反応槽150が設けられている。反応槽は
図12、
図13に示すような枠状構造体102(電極側より見て四角又は六角形状を有している)と、この両端の開口部を覆うようにしたフード108、118、更にこのフード108、118に配設された一対の同一形状を有する第一及び第二の電極103、113(アルミニウム等の金属メッシュを用いている)より構成されている。130は反応槽150内へ導入するガスラインを示しており、各種材料ガス容器が接続されており、それぞれ流量計129を経てノズル125より反応槽150の中へ導入される。
【0070】
枠状構造体102中には、前記感光層を形成した支持体101(101-1、101-2…101-n)が
図12、
図13のように配置される。なおこのそれぞれの支持体は、後述するように第三の電極として配置される。電極103、113には、それぞれ第一の交番電圧を印加するための一対の電源115(115-1、115-2)が用意されている。第一の交番電圧の周波数は、1~100MHzである。これらの電源は、それぞれマッチングトランス116-1、116-2とつながる。このマッチングトランスでの位相は位相調整器126により調整し、互いに180°又は0°ずれて供給できる。即ち、対称型又は同相型の出力を有している。マッチンズトランスの一端104及び他端114は、それぞれ第一及び第二の電極103、113に連結されている。また、トランスの出力側中点105は接地レベルに保持されている。更に、この中点105と第三の電極、即ち支持体101(101-1、101-2…101-n)又はそれらに電気的に連結するホルダの間に第二の交番電圧を印加するための電源119が配設されている。この第二の交番電圧の周波数は、1~500KHzである。この第一及び第二の電極に印加する第一の交番電圧の出力は、13.56MHzの周波数の場合0.1~1KWであり、第三の電極即ち支持体に印加する第二の交番電圧の出力は、150KHzの周波数の場合約100Wである。
【0071】
<保護層:セラミックス>
まず、真空プロセス法のうちエアロゾルデポジッション法によってセラミックスの保護層を形成する方法について説明する。
この場合には、
図3に示すようなエアロゾルデポジッション装置を用いる。
図3に示すガスボンベ11には、エアロゾルを発生させるための不活性な気体が貯蔵されている。
ガスボンベ11は、配管12aを介してエアロゾル発生器13に連結され、配管12aは、エアロゾル発生器13の内部に引き出されている。エアロゾル発生器13の内部には、一定量の金属酸化物ないし化合物半導体からなる粒子20が投入されている。エアロゾル発生器13に連結されるもう1つの配管12bは成膜チャンバ14の内部で噴射ノズル15に接続されている。
【0072】
成膜チャンバ14の内部において、基板ホルダ17には、噴射ノズル15に対向するように基板16が保持されている。ここでは、基板16としてアルミニウム箔(正極集電体)が用いられている。成膜チャンバ14には、成膜チャンバ14内の真空度を調整するための排気ポンプ18が配管12cを介して接続されている。
【0073】
図示は省略するが、本実施形態の保護層を形成する成膜装置は、基板ホルダ17を横方向(基板ホルダ17において噴射ノズル15に対向する平面内の横方向)に移動させ、噴射ノズル15を縦方向(基板ホルダ17において噴射ノズル15に対向する平面内の縦方向)に一定速度で移動させる機構を備える。基板ホルダ17を横方向に、かつ噴射ノズル15を縦方向に移動させながら成膜を行うことにより、基板16の上に、所望の面積の活物質層を形成することができる。
【0074】
保護層を形成する工程では、まず、圧空バルブ19を閉じ、排気ポンプ18で成膜チャンバ14からエアロゾル発生器13までを真空引きする。次に、圧空バルブ19を開くことにより、配管12aを通じてガスボンベ11内の気体をエアロゾル発生器13に導入し、粒子20を容器内に撒き上げ、気体中に粒子20が分散した状態のエアロゾルを発生させる。発生したエアロゾルは、配管12bを通じてノズル15より基板16に向けて高速で噴射される。圧空バルブ19を開いた状態で0.5秒間経過すると、次の0.5秒間は圧空バルブ19を閉じる。その後、再び圧空バルブ19を開き、0.5秒間の周期で圧空バルブ19の開閉を繰り返す。ガスボンベ11からの気体の流量は2リットル/分、成膜時間は7時間とし、圧空バルブ19が閉じている時の成膜チャンバ14内の真空度を10Pa程度とし、圧空バルブ19が開いている時の成膜チャンバ14内の真空度を100Pa程度とする。
【0075】
エアロゾルの噴射速度は、ノズル15の形状、配管12bの長さや内径、ガスボンベ11のガス内圧、排気ポンプ18の排気量(成膜チャンバ14の内圧)などにより制御される。
例えば、エアロゾル発生器13の内圧を数万Paとし、成膜チャンバ14の内圧を数百Paとし、ノズル15の開口部の形状を内径1mmの円形状とした場合、エアロゾル発生器13と成膜チャンバ14との内圧差により、エアロゾルの噴射速度を数百m/secとすることができる。成膜チャンバ14の内圧を5~100Paに、エアロゾル発生器13の内圧を50000Paに保てば、空孔率5~30%のコバルト酸リチウム層を形成することができる。この条件でエアロゾルを供給する時間を調整することにより、保護層の厚さを0.1~10μmに調整することが好ましい。
【0076】
加速されて運動エネルギーを得たエアロゾル中の粒子20が基板16に衝突して、衝撃エネルギーで細かく破砕される。そして、これらの破砕粒子が基板16に接合されること、および破砕粒子同士が接合されることにより、電荷輸送層の上に保護層が順次形成される。
【0077】
成膜は複数回のラインパターンおよび光導電体ドラムの回転によって形成される。基板ホルダ17や噴射ノズル15を基板16の表面における縦方向および横方向にスキャンさせながら、所望の面積の保護層を形成する。その方法としては、まず、縦方向を固定して、横方向に向けて基板ホルダ17を一定速度でスキャンする。一列のスキャンが終了すると、それ以前の成膜エリアとの重なりを考慮して縦方向に噴射ノズル15を移動させ、基板ホルダ17を横方向にスキャンする。このようにして所望の縦方向位置に達するまで縦方向に複数回移動し、横方向のスキャンを繰り返すことにより、所望の成膜エリアの堆積を行う。
粒子は任意の金属酸化物が用いられる。具体的には、アルミナ、アルミン酸銅(CuAlO2)、酸化亜鉛、酸化チタン等が代表に挙げられる。
【0078】
<潤滑剤>
以上の要件に対して、潤滑剤に用いられる材料として、ワックスないし高級脂肪酸金属塩が有利である。ワックスはハゼろう、ウルシろう、パームろう、カルナウバろう等の植物系ワックス、蜜ろう、鯨ろう、イボタろう、羊毛ろう等の動物系ワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス等の鉱物系ワックスを利用できる。
【0079】
特に、従来、一般に使用されてきた高級脂肪酸金属塩の多くは材料の性質面から有利である。この代表的な化合物であるステアリン酸亜鉛はラメラ構造をとり得る化合物である。ラメラ構造とは分子が規則的に折りたたまれて成す層が積み重なって配列する構造である。このラメラ構造は両親媒性分子が自己組織化した層状構造を有しており、せん断力が加わると層間にそって結晶が割れてはがしやすい。この作用は潤滑剤の循環を成立させるのに有利である。
【0080】
ステアリン酸亜鉛がせん断力を受けて均一に光導電体表面を覆っていくラメラ構造の特性は、少量の潤滑剤によって効果的に光導電体表面を覆うことができる。この方法で潤滑剤を塗布する場合、その潤滑剤の塗布状態を制御するには様々な方法がある。例えば、固形潤滑剤と塗布ブラシとの接触圧力を高めたり、塗布ブラシの回転速度を制御したりする手段を考えることができる。また、画像形成情報に応じて、塗布ブラシの回転数を制御する試みもある。
【0081】
潤滑剤はワックスや高級脂肪酸金属塩を単独で用いても良いが、これらをバインダーとして、電荷輸送物質や酸化防止剤など他の機能材料と混合して利用することができる。
【0082】
このような潤滑剤を用い、画像形成装置内で皮膜形成と除去がしやすい材料を特定するため、潤滑剤の除去とコーティングの繰り返し工程に際して物質量の等価性を得やすい効果を享受することができる。このため、潤滑剤の塗布と除去を担うモジュールを簡単にすることができる。また、潤滑剤の皮膜を永きにわたって形成可能にすることができる。更に、前述の表面層の形状との組み合わせにより、一サイクル当たりの被覆能力を格別に高めることが実現でき、潤滑剤の消費率の減量化を享受することができる。
【0083】
更に、本発明における潤滑剤としては、ラメラ構造をとり得る脂肪酸金属塩として、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、オレイン酸のうち少なくとも一種以上の脂肪酸を含有し、かつ、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、リチウムのうち少なくとも一種以上の金属を含有する脂肪酸金属塩が好ましい。特にステアリン酸亜鉛とパルミチン酸亜鉛の混合物が好ましい。
【0084】
ステアリン酸亜鉛は、工業的規模で生産され、かつ多方面での使用実績があることから、コスト、品質、安定性、及び信頼性において最も好ましい材料である。また、従来、潤滑剤の効率的な塗布方法として蓄積してきた豊富な塗布技術を応用しやすい有利性をもつ。尚、一般に工業的に使われる高級脂肪酸金属塩は、その名称の化合物単体組成ではなく、多かれ少なかれ類似の他の脂肪酸金属塩、金属酸化物、及び遊離脂肪酸を含むものであり、本発明の脂肪酸金属塩もこの慣例に従う。
【0085】
このような潤滑剤を用いることで、潤滑剤の皮膜の形成に対して高信頼性と低コスト化を享受することができる。また、潤滑剤の塗布技術として蓄積のある塗布技術を応用しやすい装置開発の利便性を得ることができる。
【0086】
(画像形成装置)
以下、図面に沿って画像形成装置の構成例を説明する。本発明に係る画像形成装置には後述する潤滑剤を光導電体(以下電子写真感光体とも称す)表面に供給する手段が取り付けられる。この点については後述する。
【0087】
図4は本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略図であり、後述するような変形例も本発明に含まれる。
図4において、電子写真感光体11は、表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下である電子写真感光体である。電子写真感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0088】
帯電装置12は電子写真感光体11の表面を一様に帯電させる手段であり、コロトロン、スコロトロン、固体帯電器(ソリッド・ステート・チャージャー)、帯電ローラをはじめとする公知の手段が用いられる。帯電装置12は消費電力の低減の観点から、電子写真感光体11に対し接触若しくは近接配置したものが良好に用いられる。なかでも、帯電装置12への汚染を防止するため、電子写真感光体11と帯電装置12表面の間に適度なすきまを有する電子写真感光体11近傍に近接配置された帯電機構が望ましい。転写装置16には一般に上記の帯電器を使用できるが、転写チャージャーと分離チャージャーを併用したものが効果的である。
【0089】
露光装置13、また他の形態で示す除電装置(
図5の1A)等に用いられる光源には蛍光灯、タングステンランプ、ハロゲンランプ、水銀灯、ナトリウム灯、発光ダイオード(LED)、半導体レーザー(LD)、エレクトロルミネッセンス(EL)等の発光物全般を挙げることができる。そして、所望の波長域の光のみを照射するために、シャープカットフィルター、バンドパスフィルター、近赤外カットフィルター、ダイクロイックフィルター、干渉フィルター、色温度変換フィルター等の各種フィルターを用いることもできる。
【0090】
現像装置14により電子写真感光体11上に現像されたトナー15は印刷用紙やOHP用スライド等の印刷メディア18に転写されるが、全部が転写されるわけではなく、電子写真感光体上に残存するトナーも生ずる。このようなトナーはクリーニング装置17により、電子写真感光体11より除去される。クリーニング装置17はゴム製のクリーニングブレードやファーブラシ、マグファーブラシ等のブラシ等を用いることができる。
【0091】
電子写真感光体11に帯電装置12によって正(負)帯電を施し、露光装置13によって画像露光を行うと、電子写真感光体11表面上には正(負)の静電潜像が形成される。これを現像装置14によって負(正)極性のトナー(検電微粒子)で現像すれば、ポジ画像が得られるし、また正(負)極性のトナーで現像すれば、ネガ画像が得られる。かかる現像装置14には公知の方法が適用され、また、除電装置にも公知の方法が用いられる。
印刷メディア18上に現像されたトナー画像は電子写真感光体11と転写装置16との対向位置から定着装置19に搬送され、この定着装置19により印刷メディア18に定着される。
【0092】
また、潤滑剤3A及び潤滑剤を塗布する塗布ブラシ3B、塗布ブレード3Cは電子写真感光体11の回転方向において、クリーニング装置17の下流であって、帯電装置12の上流に配置される。これらの配置関係については、以下に示す他の実施の形態においても同様である。
【0093】
図5に、画像形成装置の他の例を示す。
図5において、電子写真感光体11は表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下である電子写真感光体11である。電子写真感光体11はベルト状の形状を示しているが、ドラム状、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。電子写真感光体11は駆動手段1Cにより駆動され、帯電装置12による帯電、露光装置13による像露光、現像、転写装置16による転写、クリーニング前露光装置1Bによるクリーニング前露光、クリーニング装置17によるクリーニング、除電装置1Aによる除電が繰り返し行われる。潤滑剤3A及び潤滑剤を塗布する塗布ブラシ3B、塗布ブレード3Cは電子写真感光体11の移動方向に対して図示のようにクリーニング装置17と帯電装置12の間に配置される。
【0094】
図5においては、電子写真感光体11(この場合は支持体が透光性である)の支持体側よりクリーニング前露光の光照射が行われる。
【0095】
以上の電子写真プロセスは一例であって、例えば、
図5において支持体側よりクリーニング前露光を行っているが、これは感光層側から行ってもよいし、また、像露光、除電光の照射を支持体側から行ってもよい。一方、光照射工程は像露光、クリーニング前露光、除電露光が図示されているが、他に転写前露光、像露光のプレ露光、及びその他公知の光照射工程を設けて、電子写真感光体に光照射を行うこともできる。
【0096】
また、以上に示すような画像形成手段は複写機、ファクシミリ、プリンター内に固定して組み込まれていてもよいが、プロセスカートリッジの形でそれら装置内に組み込まれてもよい。プロセスカートリッジの形状は多く挙げられるが、一般的な例として、
図6に示すものが挙げられる。電子写真感光体11はドラム状の形状を示しているが、シート状、エンドレスベルト状のものであってもよい。
【0097】
図7に画像形成装置の他の例を示す。この画像形成装置では電子写真感光体11の周囲に帯電装置12、露光装置13、ブラック(Bk)、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の色ごとの現像装置14Bk,14C,14M,14Y、中間転写体である中間転写ベルト1F、クリーニング装置17が順に配置されている。
【0098】
なお、
図7中に示す(Bk、C、M、Y)の添字は上記のトナーの色に対応し、必要に応じて適宜省略する。電子写真感光体11は表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下である電子写真感光体である。各色の現像装置14Bk,14C,14M,14Yは各々独立に制御可能となっており、画像形成を行う色の現像装置のみが駆動される。電子写真感光体11上に形成されたトナー像は中間転写ベルト1Fの内側に配置された第1の転写装置1Dにより、中間転写ベルト1F上に転写される。
【0099】
第1の転写装置1Dは電子写真感光体11に対して接離可能に配置されており、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fを電子写真感光体11に当接させる。各色の画像形成を順次行い、中間転写ベルト1F上で重ね合わされたトナー像は第2の転写装置1Eにより、印刷メディア18に一括転写された後、定着装置19により定着されて画像が形成される。
第2の転写装置1Eも中間転写ベルト1Fに対して接離可能に配置され、転写動作時のみ中間転写ベルト1Fに当接する。
【0100】
転写ドラム方式の画像形成装置では転写ドラムに静電吸着させた印刷メディアに各色のトナー像を順次転写するため、厚紙にはプリントできないという印刷メディアの制限があるのに対し、
図7に示すような中間転写方式の画像形成装置では中間転写体1F上で各色のトナー像を重ね合わせるため、印刷メディアの制限を受けないという特長がある。このような中間転写方式は
図7に示す装置に限らず前述の
図4、
図5、
図6及び後述する
図8、
図9に記すような画像形成装置にも適用することができる。
【0101】
潤滑剤3A及び潤滑剤を塗布する塗布ブラシ3B、塗布ブレード3Cは電子写真感光体11の回転方向に対して図示のように、クリーニング装置17と帯電装置12の間に配置される。
【0102】
図8に画像形成装置の他の例を示す。この画像形成装置はトナーとしてイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の4色を用いるタイプとされ、色ごとに画像形成部が配設されている。また、各色の電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkが設けられている。この画像形成装置に用いられる電子写真感光体11は表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、表面自由エネルギーが20mJ/m
2以上78mJ/m
2以下である電子写真感光体である。各電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkの周りには帯電装置12Y,12M,12C,12Bk、露光装置13Y,13M,13C,13Bk、現像装置14Y,14M,14C,14Bk、クリーニング装置17Y,17M,17C,17Bk等が配設されている。
【0103】
また、直線上に配設された各電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkの各転写位置に接離する転写材担持体としての搬送転写ベルト1Gが駆動手段1Cにて掛け渡されている。この搬送転写ベルト1Gを挟んで各電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkに対向する転写位置には転写装置16Y,16M,16C,16Bkが配設されている。
【0104】
図8に示すタンデム方式の画像形成装置は色ごとに電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkをもち、各色のトナー像を搬送転写ベルト1Gに保持された印刷メディア18に順次転写するため、電子写真感光体を一つしかもたないフルカラー画像形成装置に比べ、はるかに高速のフルカラー画像の出力が可能となる。転写材としての印刷メディア18上に現像されたトナー画像は電子写真感光体11Bkと転写装置16Bkとの対向位置から定着装置19に搬送され、この定着装置19により印刷メディア18に定着される。
【0105】
また、例えば、
図9に示されるような実施の形態における構成であってもよい。すなわち、
図8に示した搬送転写ベルト1Gを用いた直接転写方式にかえて、
図9に示すように中間転写ベルト1Fを用いる構成とすることができる。
【0106】
図9に示す例では色ごとに電子写真感光体11Y,11M,11C,11Bkをもち、これらに形成された各色のトナー像を、駆動手段であるローラ1Cにより駆動張架されてなる中間転写ベルト1F上に第1の転写手段である1次転写手段1Dにより順次転写して積層し、フルカラー画像を形成する。
【0107】
次いで、中間転写ベルト1Fはさらに駆動され、これに担持されてなるフルカラー画像は第2の転写装置である2次転写手段1Eと2次転写手段1Eに対向して配置されてなるローラとの対向位置まで搬送される。そして、2次転写手段1Eにより転写材18に2次転写され、転写材上に所望の画像が形成される。
【0108】
(潤滑剤供給手段)
図10に示すように潤滑剤3Aを電子写真感光体11の表面に供給するための潤滑剤供給手段として、潤滑剤塗布装置3を上記の画像形成装置のすべてについて設けている。この潤滑剤塗布装置3は塗布部材としての塗布ブラシ(ファーブラシ)3B、潤滑剤3A、潤滑剤をファーブラシ方向に押圧するための加圧バネ3D、及び潤滑剤3Aを規制あるいはならして塗布するための塗布ブレード3Cを有している。
【0109】
潤滑剤3Aはバー状に成型された潤滑剤である。ファーブラシ3Bは電子写真感光体表面にブラシ先端が当接しており、軸を中心に回転することによって潤滑剤3Aをいったんブラシにくみあげ、電子写真感光体11の表面との当接位置までブラシ上に担持搬送して電子写真感光体11の表面に塗布する。
【0110】
また、経時で潤滑剤3Aがファーブラシ3Bにかき削られて減少してもファーブラシ3Bに接触しなくならないように、加圧バネ3Dによって所定の圧力で潤滑剤3Aがファーブラシ3B側に押圧されている。これによって、微量の潤滑剤3Aでも常に均一にファーブラシ3Bにくみあげられる。
【0111】
また、電子写真感光体11の表面に潤滑剤3Aをコーティングする潤滑剤供給装置を設けてもよい。この手段はクリーニングブレードのような板をトレーリング方式又はカウンター方式で電子写真感光体11に押し当てる手段がある。
【0112】
潤滑剤3Aは例えば、オレイン酸鉛、オレイン酸亜鉛、オレイン酸銅、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸鉄、ステアリン酸銅、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸銅、リノレン酸亜鉛等の脂肪酸金属塩類や、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリトリフルオロクロルエチレン、ジクロロジフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン-エチレン共重合体、テトラフルオロエチレン-オキサフルオロプロピレン共重合体等のフッ素系樹脂が挙げられる。特にラメラ構造をとる材料は循環効率が高く、更にステアリン酸亜鉛がコスト面で有利である。
【0113】
(プロセスカートリッジ)
本発明のプロセスカートリッジは、静電潜像を担持する光導電体と、該光導電体上に担持された静電潜像をトナーを用いて現像し可視像を形成する現像手段と、潤滑剤を光導電体上に供給する潤滑剤供給手段とを、少なくとも有してなり、更に必要に応じて適宜選択した、帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、除電手段などのその他の手段を有してなる。
【0114】
前記現像手段としては、前記トナー乃至前記現像剤を収容する現像剤収容器と、該現像剤収容器内に収容されたトナー乃至現像剤を担持しかつ搬送する現像剤担持体とを、少なくとも有してなり、更に、現像剤担持体に担持させるトナー層厚を規制するための層厚規制部材等を有していてもよい。具体的には、上記画像形成装置及び画像形成方法で説明した一成分現像手段、及び二成分現像手段のいずれかを好適に用いることができる。
また、前記帯電手段、露光手段、転写手段、クリーニング手段、及び除電手段としては、上述した画像形成装置と同様なものを適宜選択して用いることができる。
前記プロセスカートリッジは、各種電子写真方式の画像形成装置、ファクシミリ、プリンタに着脱可能に備えさせることができ、本発明の前記画像形成装置に着脱可能に備えさせるのが特に好ましい。
【0115】
本発明の画像形成方法は、光導電体に潤滑剤を供給する工程を有し、前記光導電体は、表面のビッカース硬度が31Hv(2.45/5)以上870Hv(2.45/5)以下であり、且つ、前記光導電体の表面自由エネルギーが20mJ/m2以上78mJ/m2以下であり、前記潤滑剤を供給する工程が、潤滑剤の表面自由エネルギーが20mJ/m2以上78mJ/m2以下となるように潤滑剤を塗布する工程である。
前記潤滑剤を供給する工程は、前記潤滑剤を供給する手段を用いて行うことができる。
【実施例】
【0116】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。以下の例で「部」、「%」とあるのはそれぞれ「質量部」、「質量%」を意味する。
【0117】
(1)表面自由エネルギー
始めに本発明に係る表面自由エネルギーの測定方法について述べる。
光導電体の表面自由エネルギーの算定に対し、以下に記載の10万枚の連続プリント試験終了後、潤滑剤の供給を遮断した状態でA3サイズの全ベタ画像を100枚プリントしたのち電子写真装置から光導電体を取り出し、この状態の光導電体の接触角を測定し、表面自由エネルギーを算定した。
また、潤滑剤の表面自由エネルギーは以下に記載の10万枚の連続プリント試験終了後の光導電体表面には潤滑剤が塗布された状態であるため、上の全ベタプリントをせず、トナーや埃をブロアーで吹き払っただけの光導電体表面の接触角を測定した。
測定は、23℃、55%RHで行った。
【0118】
接触角測定は自動接触角計(CA-W、協和界面科学社製)を使用した。また、標準物質はイオン交換水、ヨウ化メチレン、α-ブロモナフタレンを選んだ。
個々の標準物質に対する接触角測定値と標準物質の表面自由エネルギー値は、北崎 寧昭、畑 敏雄ら、日本接着協会誌8(3)、131-141(1972)に記載のデータ(表1)を用いて、下記数1を用いて標準物質とサンプル(光導電体、及び潤滑剤が塗布された光導電体)間の接着仕事を算出した。
下記式において、
γ:表面自由エネルギー
γa:非極性のぬれ
γb:極性によるぬれ
γc:水素結合によるぬれ
WSolid Liquid:固体液体間の濡れ性
γLiquid:液体の表面自由エネルギー
θ:接触角
W12:1と2の濡れ性
γ1
a:1の非極性のぬれ
γ1
b:1の極性のぬれ
を表す。
【0119】
【0120】
【0121】
次に、ヨウ化メチレンとα-ブロモナフタレンとサンプルの接着力、及び下記数2を用いて連立方程式を立てる。
【数2】
ここで、標準物質のγ
1
aとγ
1
bは上記資料のデータを使用する。
これから、サンプルの√γ
aと√γ
bを算出した。
次ぎに水と感光体間の接着仕事、及び数2を用いてサンプルの√γ
cを算出した。
得られた感光体の√γ
a、√γ
b、√γ
cと数3から感光体の表面自由エネルギーを算出した。
【数3】
但し、表面自由エネルギーは測定誤差を解消するために感光体幅の端から端まで10mm間隔に測定し、その平均値を表面自由エネルギーとした。
【0122】
(2)ボケ画像評価
後述の評価画像としてプリントした中間調の画像パターンの比較から優劣を評価した。評価基準は次の通りとした。
(ボケ画像ランク)
ランク5 :画像ボケが識別されない
ランク4 :微かな画像ボケが生じる心象を受ける
ランク3 :微かな画像ボケが識別されるものの実用上問題とならない
ランク2 :僅かな画像ボケが識別される
ランク1 :明らかな画像ボケが識別される
【0123】
(3)地肌汚れ評価
地肌汚れは1200dpiのイメージスキャナーで取り込んだ、後述の全白パターンのプリント画像に対して、画像解析ソフトimageJ(米国NIH配布)を用いて評価した。評価基準は次の通りとした。ここで、「%」は、画像面積率を表す。
(地肌汚れランク)
ランク5 :0.01%未満
ランク4 :0.01%以上0.02%未満
ランク3 :0.02%以上0.07%未満
ランク2 :0.07%以上0.29%未満
ランク1 :0.29%以上
【0124】
(実施例1)
-光導電体の作製-
アルミニウム製支持体(外径φ100mm)に、下記の中間層用塗工液を、浸漬法により塗工し、中間層を形成した。170℃で30分乾燥した後の中間層の膜厚は10μmであった。
(中間層用塗工液)
・酸化亜鉛粒子(MZ-300、テイカ株式会社製): 350部
・1,3,5-トリス(3-メルカプトブチリルオキシエチル)
-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン:
1.5部
(カレンズ(登録商標)MT NR1、昭和電工株式会社製)
・ブロック化イソシアネート: 60部
(スミジュール(登録商標)3175、固形分濃度75%、住化バイエル
ウレタン株式会社製)
・ブチラール樹脂を2-ブタノンで溶解させた20%の溶解液: 225部
(BM-1、積水化学工業株式会社製)
・2-ブタノン: 365部
【0125】
得られた中間層上に、下記の電荷発生層塗工液を浸漬塗工し、電荷発生層を形成した。
電荷発生層の膜厚は0.3μmであった。
(電荷発生層用塗工液)
・Y型チタニルフタロシアニン: 6部
・ブチラール樹脂(エスレックBX-1、積水化学工業社製): 4部
・2-ブタノン(関東化学製): 200部
【0126】
得られた電荷発生層上に、下記の電荷輸送層用塗工液を浸積塗工し、電荷輸送層を形成した。
135℃で20分乾燥した後の電荷輸送層の膜厚は22μmであった。
(電荷輸送層用塗工液)
・ビスフェノールZ型ポリカーボネート: 10部
(パンライトTS-2050、帝人化成社製)
・下記構造式で表される低分子電荷輸送物質: 10部
【化5】
・テトラヒドロフラン: 80部
【0127】
(表面層)
得られた電荷輸送層上に、下記の架橋樹脂の表面層用塗工液を窒素気流中でスプレー塗工後、10分間窒素気流中に放置して指触乾燥した。その後、酸素濃度が2%以下となるようにブース内を窒素ガスで置換したUV照射ブースにて、光照射を行った。
さらに、130℃で20分乾燥し、実施例1の光導電体を得た。架橋樹脂の表面層の膜厚は2.5μmであった。
(光照射条件)
・メタルハライドランプ:160W/cm
・照射距離:120mm
・照射強度:700mW/cm2
・照射時間:60秒
【0128】
(架橋樹脂の表面層塗工液(ビヒクル))
・トリメチロールプロパントリアクリレート: 5部
(KAYARAD TMPTA、日本化薬製、アクリル当量99、電荷輸送性構造を
有さない3官能以上のラジカル重合性化合物)
・ジペンタエリスリトールカプロラクトン変性ヘキサアクリレート: 5部
(KAYARAD DPCA-120、日本化薬製、アクリル当量324)
・下記構造式の1官能の電荷輸送性構造を有するラジカル重合性化合物
(アクリル当量420): 10部
【化6】
・1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン: 1部
(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ製、光重合開始剤)
・テトラヒドロフラン: 119部
・シリコーンオイル
(KF-50-100CS、信越化学社製) 0.0042部
【0129】
[フッ素樹脂微粒子の分散液]
50cc用のマヨネーズびんに、
・φ1mmのPSZボール 112.5部
・ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA) 11.25部
(MPE-056、三井・デュポンフロロケミカル社製)
・フッ素系グラフトポリマー溶液: 2.4部
(GF-400、東亞合成社製)
・フッ素系溶剤: 65.35部
(ゼオローラ-H、ゼオン社製)
を加え、160rpmの回転数速度でマヨネーズ瓶を24時間回転し、PSZボールを分離してフッ素樹脂微粒子の分散液を得た。
この分散液5部に表面層塗工液(ビヒクル)を95部注いで得られた架橋樹脂の表面層塗工液を用いて成膜した。
【0130】
以上のように作製した実施例1の光導電体を実装用にした後、電子写真装置(Ricoh Pro C901、リコー社製)のブラック現像ステーションに搭載して30℃90%の環境下で10万枚の連続プリント試験を行った。この時の光導電体の走距離に対する潤滑剤の消費量は220mg/kmだった。試験終了後、電源スイッチを落とし16時間放置した後、評価画像として中間調の画像パターンと全シロパターンをプリントした。画像評価は評価画像のボケ画像と地肌汚れを5段階のランクに分類して評価した。
潤滑剤は全てRICOH PRO C901の純正品を用いた。潤滑剤はステアリン酸亜鉛とパルチミン酸亜鉛の混合物である。画像形成装置内で潤滑剤はスティック状に成型したものが用いられている。この潤滑剤を回転駆動するブラシで擦りとって感光体表面に塗布している。潤滑剤塗布手段もRICOH PRO C901の純正品がそのまま用いられている。
潤滑剤の消費量は潤滑剤の質量減少量を光導電体の走行距離で除した値として算定される。
連続プリントした画像は、文字と矩形パッチをA4サイズ全面に均等となるように配置した画像面積率が5%となるテストパターンを選んだ。
【0131】
(実施例2)
実施例1の架橋樹脂の表面層塗工液について、フッ素樹脂微粒子の分散液20部に架橋樹脂の表面層塗工液(ビヒクル)を80部注いで得られた架橋樹脂の表面層塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。
【0132】
(実施例3)
実施例1におけるフッ素樹脂微粒子の分散液と架橋樹脂の表面層塗工液(ビヒクル)の配合比率を順に30部対70部に変えた以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。
【0133】
(実施例4)
[アルミナフィラーの分散液]
50cc用のマヨネーズびんに、
・φ5mmアルミナボール: 60部
・アルミナフィラー: 9部
(スミコランダムAA-03、住友化学社、平均1次粒径0.3μm)
・分散剤: 0.36部
(BYK-P105(ビックケミー社)の50%THF溶液)
・シクロペンタノン: 9.8部
を加えたものを、160rpmで24時間回転したのち、アルミナボールを除去し、固形分濃度が27%となるようTHFで希釈したものをアルミナフィラー分散液とした。
【0134】
実施例1の架橋樹脂の表面層塗工液の固形分、実施例1のフッ素樹脂微粒子の分散液の固形分およびアルミナフィラーの分散液の固形分の混合比が85:7:8となるよう塗工液を調合した表面層塗工液を用いた以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。
【0135】
(実施例5)
実施例1の光導電体における表面層を次に変えた以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。
[保護層の成膜]
アルミニウム製支持体上に中間層、電荷発生層、および電荷輸送層が成膜されたものをプラズマCVD装置にセットした。原料ガスとしてC2H4(60ml/min)、H2(150ml/min)、NF3(40ml/min)の3種のガスを使用し、PIG電力500W、コイル電流5A、基板バイアス-100V、反応圧0.21Paの条件で体積抵抗を変化させた膜厚0.5μmのDLC膜を形成した。
【0136】
(実施例6)
実施例5における保護層の成膜条件について基板バイアスを-400Vに変えた以外は実施例5と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。
【0137】
(実施例7)
実施例5で得られた光導電体を用い、実施例5における連続プリント試験において、光導電体の走距離に対する潤滑剤の消費量を320mg/kmに変えた以外は同様にして試験を行った。
(実施例8)
実施例5で得られた光導電体を用い、実施例5における連続プリント試験において、光導電体の走距離に対する潤滑剤の消費量を300mg/kmに変えた以外は同様にして試験を行った。
(実施例9)
実施例5で得られた光導電体を用い、実施例5における連続プリント試験において、光導電体の走距離に対する潤滑剤の消費量を150mg/kmに変えた以外は同様にして試験を行った。
(実施例10)
実施例5で得られた光導電体を用い、実施例5における連続プリント試験において、光導電体の走距離に対する潤滑剤の消費量を130mg/kmに変えた以外は同様にして試験を行った。
【0138】
(実施例11)
実施例1の表面層を次に変えた以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1の光導電体と同様に評価した。
[保護層の成膜]
アルミニウム製支持体上に中間層、電荷発生層、および電荷輸送層が成膜されたものをプラズマCVD装置にセットした。原料ガスとしてC2H4(90ml/min)、H2(150ml/min)、NF3(45ml/min)の3種のガスを使用し、RF電力(13.56MHz)100W、基板バイアス-100V、反応圧2.6Paの条件で体積抵抗を変化させた膜厚0.5μmのDLC膜を形成した。
【0139】
(比較例1)
実施例1の架橋樹脂の表面層塗工液について、フッ素樹脂微粒子の分散液を用いなかった以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。この場合の光導電体の表面自由エネルギーは81mJ/cm2だった。
(比較例2)
実施例1におけるフッ素樹脂微粒子の分散液と架橋樹脂の表面層塗工液(ビヒクル)の配合比率を順に55部対45部に変えた以外は実施例1と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。この場合の光導電体の表面自由エネルギーは18mJ/cm2だった。
(比較例3)
実施例5における保護層の成膜を下記の条件に変えた以外は実施例5と同様にして光導電体を得、実施例1と同様に評価した。この場合の光導電体の表面自由エネルギーは80mJ/cm2だった。
[保護層の成膜]
アルミニウム製支持体上に中間層、電荷発生層、および電荷輸送層が成膜されたものをプラズマCVD装置にセットした。原料ガスとしてC2H4(200ml/min)、Air(50ml/min)のガスを使用し、PIG電力500W、コイル電流10A、基板バイアス-400V、反応圧0.2Paの条件で体積抵抗を変化させた膜厚0.5μmのDLC膜を形成した。この場合の光導電体の表面自由エネルギーは80mJ/cm2だった。
評価結果を表2に記す。
【0140】
【0141】
以上、実施例に記される通り、本発明によれば、光導電体の耐久性を飛躍的に向上させることを達成し、電子写真が商用印刷に十分適応できる画像形成装置が提供可能となる。
更にプリントコストを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0142】
(
図3について)
11 ガスボンベ
12a、12b、12c 配管
13 エアロゾル発生器
14 成膜チャンバ
15 噴射ノズル
16 基板
17 基板ホルダ
18 排気ポンプ
19 圧空バルブ
20 粒子
【0143】
(
図4~
図10について)
1A 除電装置
1B クリーニング前露光装置
1C 駆動手段
1D 第1の転写装置
1E 第2の転写装置
1F 中間転写体
1G 搬送転写ベルト
3 潤滑剤塗布装置
3A 潤滑剤
3B 塗布ブラシ
3C 塗布ブレード
3D 加圧バネ
11,11Bk,11C,11M,11Y 電子写真感光体
12,12Y,12M,12C,12Bk 帯電装置
13,13Y,13M,13C,13Bk 露光装置
14,14Bk,14C,14M,14Y 現像装置
15 トナー
16,16Y,16M,16C,16Bk 転写装置
17,17Y,17M,17C,17Bk クリーニング装置
18 印刷メディア
19 定着装置
【0144】
(
図11~13について)
101-1~101-n 支持体
102 枠状構造体
103、113 電極
104、114 マッチングトランスの端部
105 トランス出力側中点
107 真空槽
108、118 フード
109 ゲート弁
115 電源
116-1、116-2 マッチングトランス
117 ロード/アンロード用予備室
119 電源
120 排気系統
121 調整バルブ
122 ターボ分子ポンプ
123 ロータリーポンプ
125 ガス導入ノズル
126 位相調整器
129 流量計
130~134 ガスライン
140 交番電源系
150 反応槽
【先行技術文献】
【特許文献】
【0145】