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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物
(51)【国際特許分類】
   B41M 3/14 20060101AFI20220615BHJP
   B41M 3/06 20060101ALI20220615BHJP
   B42D 25/45 20140101ALI20220615BHJP
【FI】
B41M3/14
B41M3/06 C
B42D25/45
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019006161
(22)【出願日】2019-01-17
(65)【公開番号】P2020114640
(43)【公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】森永 匡
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-269475(JP,A)
【文献】特開2017-205950(JP,A)
【文献】特開2009-149043(JP,A)
【文献】特開2018-79656(JP,A)
【文献】特開2017-128054(JP,A)
【文献】特開2011-186463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0152251(US,A1)
【文献】国際公開第2013/054603(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 1/10-3/18
B42D 15/02
B42D 25/00-25/485
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の少なくとも一部に印刷画像を備え、
前記印刷画像は、少なくとも一つの有彩色を含む色相の異なる2色以上の色彩から成る色彩画像と、
前記基材と異なる色彩を有し、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともいずれか一つの特性を備えた盛り上がりを有する隆起画線が、規則的に所定のピッチで万線状に形成された隆起画像が積層されて成り、
前記隆起画像は、前記隆起画線の面積率の差によって形成された第一の濃淡画像と、前記隆起画線の配列方向の差によって形成された第二の濃淡画像を有し、
前記色彩画像と前記隆起画像は色彩共有性があり、
拡散反射光下において前記第一の濃淡画像と前記色彩画像が合成された第一のカラー画像が視認され、正反射光下において前記第二の濃淡画像と前記色彩画像が合成された第二のカラー画像が視認されることを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記色彩画像は、少なくとも彩度Cが3以上の一つ以上の有彩色を含むことを特徴とする請求項1記載の偽造防止印刷物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、偽造防止効果を必要とする銀行券、パスポート、有価証券、身分証明書、カード、通行券等のセキュリティ印刷物の分野において、観察できる画像が入射する光の角度に応じて異なる画像に変化する、色彩表現に富んだ偽造防止印刷物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のスキャナ、プリンタ、カラーコピー機等のデジタル機器の進展により、貴重印刷物の精巧な複製物を容易に作製することが可能となっている。そのような複製や偽造を防止する偽造防止技術の一つとして、貴重印刷物の観察角度を変えることで画像が変化するホログラムに代表される光学的なセキュリティ要素を貼付したものが多く存在するようになった。
【0003】
しかし、ホログラムはインキを用いた印刷によって形成する従来の偽造防止技術とは異なり、複雑な製造工程と特殊な材料を用いて形成されることから、従来の偽造防止用印刷物と比較すると製造に手間が掛り、かつ、極めて高価である。このことから、金属インキ、干渉マイカ、酸化フレークマイカ、顔料コートアルミニウムフレーク、光学的変化フレーク等の特殊な光反射性粉体をインキや塗料に配合し、かつ、特殊な材料同士の重ね合わせや複雑な網点構成を用いることによって、ホログラムと同様な画像変化を実現した、一般的な印刷方法で形成可能な偽造防止用印刷物が出現している。
【0004】
本出願人は、一般的、かつ、比較的安価な材料及び簡単な印刷手段を使用していながら、特定の観察角度において、印刷物中の特定部位における人の目に認識される情報が、観察角度を変化させることによって、全く別の情報に変化する偽造防止用情報担持体に係る発明をすでに出願している(例えば、特許文献1から特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第3718712号公報
【文献】特許第4395586号公報
【文献】特許第4972809号公報
【文献】特許第5142156号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1から特許文献4までに記載の技術は、正反射光下において特定の色彩を呈した潜像が出現する技術である。しかし、いずれの技術においても、正反射光下で出現する潜像の色彩は、インキ中に含まれた機能性材料の光学特性に由来するものである。そのため、正反射光下で生じうる色彩は、機能性材料が正反射して発することができる色彩に限定されるという問題があった。正反射光下で特定の色彩を発する機能性材料のカラーバリエーションは、大まかな色相別に赤、黄、青、緑等の数種類程度しか存在せず、選択できる色彩は限定されていた。また、効果を高めるには、機能性材料を盛り上がりのある画線表面に配向させる必要があるため、顔料に対して特殊な撥水撥油処理(パーフルオロアルキルリン酸処理)が必要であり、手間が掛り、コストが高くなるとともに、この処理が施された機能性材料は画線から脱落し易いという堅牢性上の問題があった。
【0007】
また、特許文献1から特許文献3までに記載の技術は、正反射光下で出現する潜像画像を機能性材料由来の色彩で彩ることができるが、その色彩表現は単色の濃淡の表現、いわゆるモノトーンの表現に限られ、異なる色相の色彩によって多色表現できないという問題があった。
【0008】
さらに、特許文献4に記載の技術は、特許文献1から特許文献3までの技術とは異なり、複数の異なる色彩によって潜像画像を多色表現できる効果は有しているが、正反射光下で出現する潜像画像を、仮に2色で表現するためには、異なる色彩を発する機能性材料を含んだ2種類のインキを刷り合わせて印刷する必要があった。機能性材料の色彩のもとである正反射光下の干渉光や回折光の強さは、基本的には転写された材料の量に比例するため、高い効果を得たい場合、インキ転移量の多いスクリーン印刷の2色刷りで形成することが望ましい。しかし、紙を基材として商業印刷で使用されるスクリーン印刷機のほとんどは、単色印刷するための機械仕立てであり、2色以上の刷り合わせを考慮した機械はほぼ存在しないため、同じスクリーン印刷機でインキを換えて2回印刷する必要があった。スクリーン印刷を2度重ね刷りしたときの刷り合せ精度は低く、かつ、工数が倍増し、速度も低いため、コスト高であるとともに、製造に手間が掛った。
【0009】
本発明は、前述した課題の解決を目的とするものであり、拡散反射光下と正反射光下で画像がチェンジする効果を有する印刷物であって、拡散反射光下で視認できる画像と正反射光下で視認できる両方の画像に対して、特殊な機能性材料を用いることなく、通常の着色インキを用い、異なる色相を含む複数の異なる色彩によって豊かな色彩を自由に付与することが可能である。また、高い刷り合わせ精度を必要としない単純な2層構造の印刷物であるため、製造が容易でコストパフォーマンスが高いことを特徴とした偽造防止印刷物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の偽造防止印刷物は、基材の少なくとも一部に印刷画像を備え、前述の印刷画像は、少なくとも一つの有彩色を含む色相の異なる2色以上の色彩から成る色彩画像と、基材と異なる色彩を有し、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともいずれか一つの特性を備えた盛り上がりを有する隆起画線が、規則的に所定のピッチで万線状に形成された隆起画像が積層されて成り、隆起画像は、隆起画線の面積率の差によって形成された第一の濃淡画像と、隆起画線の配列方向の差によって形成された第二の濃淡画像を有し、色彩画像と隆起画像は色彩共有性があり、拡散反射光下において第一の濃淡画像と色彩画像が合成された第一のカラー画像が視認され、正反射光下において第二の濃淡画像と色彩画像が合成された第二のカラー画像が視認されることを特徴とする偽造防止印刷物である。
【0011】
また、本発明の偽造防止印刷物における色彩画像は、少なくとも彩度C*が3以上の一つ以上の有彩色を含むことを特徴とする偽造防止印刷物である。
【発明の効果】
【0012】
特許文献1から特許文献4までの技術と異なり、正反射光下で出現する潜像画像(第二のカラー画像)の色彩は、通常の着色インキで形成できる。このため、色彩表現が特殊な機能性材料に依存せず、また、同様に特殊な撥水撥油処理も必要としない。
【0013】
本発明の偽造防止印刷物は、特許文献1から特許文献4までに記載の技術と異なり、正反射光下で出現する第二のカラー画像を2種類以上の色相の異なる色彩で構成できることに加え、同様に拡散反射光下で視認できる第一のカラー画像も2種類以上の色相の異なる色彩で構成できる。本発明の偽造防止技術の色数について技術的な制約はない。
【0014】
本発明の偽造防止印刷物は、色彩画像と隆起画像の重ね合わせにおいて、所定の位置関係に高い精度で刷り合わせる必要がなく、製造難度が低い。
【0015】
以上の手法で形成した偽造防止印刷物は、特殊な機能性材料を必要としないことからコストパフォーマンスに優れ、また最新のデジタル機器を用いたとしてもスイッチ効果を実現することは不可能であることから、偽造防止効果に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明における偽造防止印刷物を示す。
図2】本発明における偽造防止印刷物の構成の概要を示す。
図3】本発明における色彩画像を示す。
図4】本発明における隆起画像を示す。
図5】本発明における隆起画像に含まれる二つの画像を示す。
図6】本発明における色彩共有性を示す。
図7】本発明における偽造防止印刷物の効果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。しかしながら、本発明は、以下に述べる実施するための形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲記載における技術的思想の範囲内であれば、その他の様々な実施の形態が含まれる。
【0018】
本明細書中でいう「明度」とは色の明るさを指し、高い場合には明るく、低い場合には暗い。また、「彩度」とは、色の鮮やかさの度合いを指す。加えて、本発明における「色彩」とは、色相、彩度及び明度の概念を含んで色を表したものであり、また、「色相」とは、赤、青、黄といった色の様相のことであり、具体的には、可視光領域(400~700nm)の特定の波長の強弱の分布を示すものである。本明細書中では、特に、白や黒も一つの色相とする。本発明における「色相が同じ」とは、二つの色において赤、青、黄といった色の様相が一致し、可視光領域の波長の強弱の分布が二つの色において相関を有することである。また、本明細書中においては、無彩色も一つの色相であると定義し、白、灰色、黒は、同じ色相であると考える。
【0019】
まず、本発明について図面を用いて説明する。図1に、本発明における偽造防止印刷物(1)を示す。偽造防止印刷物(1)は、基材(2)の上に、基材(2)と異なる色彩の印刷画像(3)を有する。印刷画像(3)は、拡散反射光下では第一のカラー画像を表して成る。印刷画像(3)の大きさや形状に制約はない。
【0020】
本発明の偽造防止印刷物(1)に用いる基材(2)は、紙、プラスティック、金属等のインキや塗料、色材等を受理できる特性を有することを条件として、材質は問わない。効果をより高めるためには、印刷する基材(2)表面は、平滑であることが望ましい。
【0021】
印刷画像(3)は、図2に示す色彩画像(4)及び隆起画像(5)の二つの異なる画像の重ね合わせによって構成される。積層関係は、いずれが上であっても下であってもよい。いずれの構成であっても、問題なく本発明の効果が発揮される。
【0022】
色彩画像(4)は、色相の異なる二つ以上の色彩によって構成されて成り、拡散反射光下において印刷画像(3)の中に現れる第一のカラー画像の色彩を表すとともに、同時に、正反射光下において印刷画像(3)の中に現れる第二のカラー画像の色彩も表す。一方の隆起画像(5)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともいずれか一方を有し、拡散反射光下において、隆起画像(5)中の隆起画線(6)の面積率の差異によって第一の濃淡画像(5A)を表し、隆起画像(5)の中の隆起画線(6)の画線方向の差異によって第二の濃淡画像(5B)を表す。拡散反射光下において、隆起画像(5)の中の第一の濃淡画像(5A)と色彩画像(4)の色彩とが合成されることで、第一のカラー画像を表し、また、正反射光下において、隆起画像(5)の中の第二の濃淡画像(5B)と色彩画像(4)の色彩とが合成されることで、第二のカラー画像を表す。
【0023】
以上のように、本発明において、拡散反射光下で印刷画像(3)中に現れる画像を第一のカラー画像とし、隆起画像(5)の第一の濃淡画像(5A)と、色彩画像(4)の色彩とが合成された構成を有する。また、正反射光下で印刷画像(3)中に現れる画像を第二のカラー画像とし、隆起画像(5)の第二の濃淡画像(5B)と、色彩画像(4)の色彩とが合成された構成を有する。いい方を変えると、隆起画像(5)の第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)とは、第一のカラー画像及び第二のカラー画像からカラー情報を破棄してモノクロで表現した画像であり、色彩画像(4)が表す色彩とは、第一のカラー画像と第二のカラー画像から第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)を差し引いて残った色彩である。
【0024】
本実施の形態における第一のカラー画像は、図1に示すように、二組の桜の蕾を表す画像であり、左上の桜の蕾をピンク色、右下の桜の蕾を白色、また、それぞれの桜の蕾の中央の花弁を黄色、葉を緑色としている。また、第二のカラー画像は、図7(b)に示す。中央に黄色い花弁を有し、ピンク色と白色と緑色の二組の桜の開いた花びらと緑色の葉を表した画像を指す。以下に、本発明の構成や効果についてより具体的に説明する。
【0025】
まず、色彩画像(4)について具体的に説明する。図3に示す色彩画像(4)は、少なくとも一つの有彩色を含む、色相の異なる二つ以上の色彩によって構成されて成り、拡散反射光下において印刷画像(3)の中に現れる第一のカラー画像の色彩を表し、それに加えて、正反射光下において印刷画像(3)の中に現れる第二のカラー画像の色彩を表す。
【0026】
色彩画像(4)の色彩は、物体色によって構成される。干渉や回折等の特殊な反射光を生じてもよいが、少なくともそれぞれの色彩は物体色を有する必要がある。色彩画像(4)に物体色を付与するには、一般的な色材を用いて形成すればよい。印刷で形成するのであれば、青、赤、黄色といった一般的な着色インキを用いて色彩画像(4)を形成する。
【0027】
以上のように、着色インキによって形成された色彩画像(4)が、本発明の第一のカラー画像と第二のカラー画像の色彩を表現する働きを成す。出現したそれぞれのカラー画像に色相の異なる二つ以上の色彩を付与することで、従来の技術では困難であった2色以上の多色表現を可能とした。
【0028】
色彩画像(4)は、少なくとも一つの有彩色を含む、色相の異なる二つ以上の色彩によって構成する。このため、本発明における最小の色数となる2色構成の場合、1色は白、灰、黒等の無彩色であってもよいが、もう1色は必ず有彩色を用いる必要がある。そのため、最低でも「無彩色1色+有彩色1色」の組合せである必要がある。無彩色同士の組合せや有彩色1色のみで色彩画像(4)を構成した場合には、従来技術のモノトーン表現と変わりなく、本発明の特徴が活かせないためである。色彩画像(4)の最低限の色構成の例としては、「白+赤」や「黒+黄」等の「無彩色1色+有彩色1色」の組合せとなるが、当然、「赤+青」や「黄+緑」のように有彩色2色でもよく、いうまでもなく有彩色、無彩色を合わせて3色以上としても何ら問題なく、逆に、本発明の特徴を活かす上でより望ましい。
【0029】
色彩画像(4)は、第一のカラー画像と第二のカラー画像の両方の色彩を一つの画像で表す必要がある。このため、第一のカラー画像の濃淡を表す隆起画像(5)の第一の濃淡画像(5A)と、第二のカラー画像の濃淡を表す隆起画像(5)の第二の濃淡画像(5B)の両方と矛盾なく合成できる色彩構成である必要がある。この隆起画像(5)の異なる二つの濃淡画像と、色彩画像(4)の色彩が矛盾なく適合する特性を、「色彩画像(4)と隆起画像(5)は色彩共有性を有する」と定義する。この色彩共有性の具体的な条件については、後記する。
【0030】
続いて、隆起画像(5)について具体的に説明する。隆起画像(5)は、基材(2)と異なる物体色を有し、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともどちらか一方の光学特性を備えた隆起画線(6)の集合から成る。
【0031】
隆起画線(6)とは、一定の盛り上がり高さを有した画線である。隆起画像(5)の中には、少なくとも2種類の画線面積率を有し、かつ、少なくとも2種類の画線角度を有した隆起画線(6)が存在し、それらが万線状に規則的に配列されることで、隆起画像(5)の中に二つの濃淡画像を構成する。画線面積率の違いによって第一の濃淡画像(5A)を表し、また画線方向の違いによって第二の濃淡画像(5B)を表す。なお、万線状に規則的に配列されるとは、特定のピッチで特定の方向に連続して配置されることを表す。
【0032】
隆起画像(5)は、拡散反射光下において画線面積率の違いによって第一の濃淡画像(5A)を表し、色彩画像(4)と同時に視認されることで第一のカラー画像を表す。また、正反射光下において画線角度の違いによって第二の濃淡画像(5B)を表し、色彩画像(4)と同時に視認されることで第二のカラー画像を表す。
【0033】
図4に示す本実施の形態の例では、隆起画像(5)を構成している隆起画線(6)は、3種類存在する。一つ目は、第一の画線幅(W1)で形成された第一の隆起画線(6A)であり、特定のピッチ(P1)で第二の方向(S2)に連続して配置されて成る。二つ目は、第二の画線幅(W2)で形成された第二の隆起画線(6B)であり、特定のピッチ(P1)で第二の方向(S2)に連続して配置されて成る。三つ目は、第二の画線幅(W2)で形成された第三の隆起画線(6C)であり、特定のピッチ(P1)で第一の方向(S1)に連続して配置されて成る。
【0034】
図5には、隆起画像(5)の中に含まれる二つの濃淡画像である第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)を示す。3種類の隆起画線(6A、6B、6C)のうち、画線面積率が小さい第一の画線幅(W1)により形成された画線と画線面積率が大きい第二の画線幅(W2)により形成された画線によって隆起画線(6)を分けると、図5(b)に示す桜の蕾を表した第一の濃淡画像(5A)が現れる。この画像は、拡散反射光下で視認される。
【0035】
隆起画像(5)の中に含まれる3種類の隆起画線(6A、6B、6C)のうち、画線の配置方向(第一の方向S1、第二の方向S2)の違いで隆起画線(6)を分けると、図5(c)に示す桜の花びらを表した第二の濃淡画像(5B)が現れる。この画像は、正反射光下で視認される。なお、図5(c)中には桜模様と背景の濃淡の関係が入れ替わった関係にある二種類の第二の濃淡画像(5B-1、5B-2)を示している。これは、光が入射する方向に応じて、図柄中の背景の反射光が弱く、桜模様の反射光が強い第二の濃淡画像(5B-1)のように見えたり、図柄中の桜模様の反射光が弱く、背景の反射光が強い第二の濃淡画像(5B-2)のように見えたりするためである。ただし、基本的には、ネガポジ反転するだけで、図柄自体は同じであり、本明細書中の説明では単に第二の濃淡画像(5B)と記載する。
【0036】
なお、本実施の形態における第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)の関係が、第一の濃淡画像(5A)が第二の濃淡画像(5B)の中に完全に含まれる関係であることから、第一の画線幅(W1)で形成された第一の隆起画線(6A)と、第二の画線幅(W2)で形成された第二の隆起画線(6B)を第二の方向に連続して配置し、第二の画線幅(W2)で形成された第三の隆起画線(6C)を第一の方向に連続して配置した3種類の隆起画線のみで隆起画像(5)を構成している。しかし、第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)の関係が、全く相関のない画像である場合、前述の3種類の隆起画線(6A、6B、6C)だけでは、二つの画像を表現することができない。このような場合、前述の3種類の隆起画線(6A、6B、6C)に、第一の画線幅(W1)で形成された第四の隆起画線(6D;図示せず)を第一の方向に連続して配置した構成の隆起画像(5)を加えて4種類の隆起画線(6A、6B、6C、6D)によって隆起画像(5)を構成すればよい。この第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)の関係が、全く相関のない画像である場合の画線構成については、特許第4972809号公報及び特許第5900820号公報に記載の画線構成を用いてもよい。
【0037】
隆起画像(5)を構成するに当たり、本発明の効果を高めるための二つの望ましい設計条件がある。一つは、隆起画像(5)中の画線面積率の差異についての条件、もう一つは、画線角度の差異についての条件である。
【0038】
まず、画線面積率の差異の条件について説明する。隆起画像(5)の中には、少なくとも2種類の画線面積率の異なる隆起画線(6)が存在する。本実施の形態においては、第一の画線面積率(W1/P1)の隆起画線(6A)と、第二の画線面積率(W2/P1)の隆起画線(6B、6C)がそれに当たる。隆起画像(5)の中の隆起画線(6)のそれぞれの画線面積率の差異、すなわち、第二の画線面積率(W2/P1)から第一の画線面積率(W1/P1)を減じた絶対値は、5%以上50%以下の範囲で形成することが望ましい。
【0039】
このように隆起画像(5)の中の画線面積率の差異に範囲制限を設ける理由は、5%より小さい画線面積率の差異しかない場合、第一の濃淡画像(5A)を認識することが困難であり、50%を越える場合、正反射光下で第一の濃淡画像(5A)が消失しきらない場合があるためである。この面積率の差異の範囲制限は、隆起画線(6)の物体色の色彩、濃度、光学特性に依存するものであり、最適な値は、隆起画線(6)の特徴に応じて適時見極める必要がある。特に、一般的な輝度のスクリーンインキを用いる場合、面積率の差異は10%以上25%以下で隆起画像(5)を形成することがより望ましい。
【0040】
続いて、画線方向の差異の条件について説明する。隆起画像(5)の中には、少なくとも2種類の画線方向の異なる隆起画線(6)が存在する。本実施の形態においては、第一の方向(S1)に連続して配置された第三の隆起画線(6C)と、第二の方向(S2)に連続して配置された第一の隆起画線(6A)及び第二の隆起画線(6B)がそれに当たる。隆起画像(5)の中の隆起画線(6)のそれぞれの画線方向の角度の差異は、10度以上とすることが望ましい。10度以下の角度の差異しかない場合、正反射光下においてそれぞれの画線から生じる反射光の強さに目視できる程の差異が生じず、第二の濃淡画像(5B)を認識することが困難となる場合があるためである。以上が、隆起画像(5)の望ましい設計条件である。
【0041】
さらに、隆起画像(5)の光学特性について説明する。隆起画像(5)を構成する隆起画線(6)は、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性の少なくともいずれか一方の光学特性を備える必要がある。これは、正反射光下で第一の濃淡画像(5A)を消失させるために必要となる条件である。明暗フリップフロップ性とは、光を反射した場合に、物体(画像)の明度が上昇する特性であり、一方のカラーフリップフロップ性とは、物質に光が入射した場合に、物質の色相が変わる性質を指す。
【0042】
隆起画像(5)に明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を付与する方法としては、明暗フリップフロップ性又はカラーフリップフロップ性を有するインキやトナー、色材、塗料等で隆起画像(5)を形成するのが最も容易である。明暗フリップフロップ性を備えた印刷で用いるインキとしては、金色や銀色等のメタリック系の金属インキや、グロスタイプの着色インキがある。一般的に艶があると感じられる物質は、明暗フリップフロップ性を備える。例えば、銀インキは、光を強く反射しない拡散反射光下では暗い灰色にしか見えないが、光を強く反射する正反射光下では、より淡い灰色か、又は白色に見える。このように、明暗フリップフロップ性を有するインキは、正反射光下で明度が変化する。正反射光下で明度が変化するのであれば、インキ中の顔料が光を強く反射する特性を有してもよいし、インキの樹脂自体が光を強く反射する特性を有してもよい。
【0043】
一方のカラーフリップフロップ性を備えた印刷で用いるインキとしては、パールインキ、液晶インキ、OVI(Optical Variable Ink)、CSI(Color Shifting Ink)等が存在する。多くのインキは物体色を有するが、虹彩色パールインキは、無色透明である。例えば、赤色の虹彩色パールインキは、拡散反射光下では無色透明であるが、正反射光下では赤色の干渉色を発する。このように、カラーフリップフロップ性を備えたインキは、正反射光下で色相が変化する。以上が、隆起画像(5)の光学特性の説明である。
【0044】
最後に、「色彩画像(4)と隆起画像(5)は、色彩共有性を有する」ことについて説明する。これは、前段で記載したように、隆起画像(5)の中の異なる二つの濃淡画像と、色彩画像(4)の色彩が矛盾なく適合する特性である。
【0045】
本実施の形態における色彩共有性の具体例について説明する。図6(a)に示すのは、隆起画像(5)の中に含まれる第一の濃淡画像(5A)と色彩画像(4)を重ね合わせた合成画像(7(5A+4))であり、図6(b)に示すのは、隆起画像(5)の中に含まれるもう一つの画像である第二の濃淡画像(5B)と色彩画像(4)を重ね合わせた合成画像(7(5B+4))である。本実施の形態の色彩画像(4)は、第一のカラー画像の色彩と、第二のカラー画像の色彩を平均化して彩度を調整し、ぼかし処理を施して色彩を調整した画像である。「色彩画像(4)と隆起画像(5)は、色彩共有性を有する」ことは、第一の濃淡画像(5A)と色彩画像(4)を重ね合わせた合成画像(7(5A+4))と、第二の濃淡画像(5B)と色彩画像(4)を重ね合わせた合成画像(7(5B+4))において、それぞれ濃淡と色彩の矛盾がないことである。また、いい換えれば、第一のカラー画像と第二のカラー画像に色彩共有性があることと同義である。そのため、まず、第一のカラー画像と第二のカラー画像をデザインする段階で、色彩とその色彩配置に共有性がある構成とする必要がある。
【0046】
実際に、隆起画像(5)と色彩画像(4)に色彩共有性があるか否かは、図6(a)、図6(b)に示したように、画像処理ソフト上や製版フィルム上等で第一の濃淡画像(5A)と色彩画像(4)の合成画像(7(5A+4))と、第二の濃淡画像(5B)と色彩画像(4)の合成画像(7(5B+4))とを視認して合成画像(7)の濃淡と色彩に矛盾がないかを確認する必要がある。
【0047】
第一のカラー画像と第二のカラー画像を自由に設計した場合、そもそも異なる画像である二つのカラー画像の色彩配置を完全に一致させることは不可能である。そこで、まず、第一のカラー画像と第二のカラー画像自体を色彩配置の似た画像としてデザインする必要がある。まず始めに、第一のカラー画像と第二のカラー画像をデザインする段階で、色彩配置をある程度同じにすることを考慮しなければ、最終的な色彩共有性を担保することは難しい。
【0048】
第一のカラー画像と第二のカラー画像をデザインするに当たって、特に緑色の中に配された赤色や、青色の中に配された黄色等観察者の目を引く部分、すなわち、色差の大きな部分の色彩配置に共有性を持たせることを重視してデザインすることが望ましい。色差の大きな部分の色彩と濃淡のズレは、観察者に最も違和感を抱かせる。逆にいえば、色差の大きな部分の色彩と濃淡が一致していれば、観察者(9)は画像に対して違和感を抱かない。以上のように、まず、可能な限り、色差の大きな部分の濃淡と色彩が一致するように第一のカラー画像と第二のカラー画像をデザインすることが望ましい。
【0049】
第一のカラー画像と第二のカラー画像のデザインを工夫した上で、それ以上の色彩共有の余地がなくなった場合、又は顧客が第一のカラー画像と第二のカラー画像をデザインし、設計側でデザインの改善の余地がない場合等、デザイン上での改善が望めず、未だ濃淡と色彩に大きな矛盾が生じる場面では、色彩画像(4)の矛盾がある領域の色彩を調整するか、ぼかしやグラデーション等の画像処理を施す等の工夫を施す必要がある。以下に、色彩共有性を高めるいくつかの手段を記載する。
【0050】
色彩共有性を高める、すなわち、濃淡と色彩の矛盾をなくす最も確実で容易な方法は、矛盾のある領域の色彩画像(4)の色彩を無彩色に近づける方法である。すなわち、色彩画像(4)の矛盾のある部分の色彩の彩度を下げればよい。当然のことながら、色彩画像(4)が白色や灰色、黒色等の無彩色のみで構成される場合、第一の濃淡画像(5A)及び第二の濃淡画像(5B)に対して、色彩画像(4)の色彩との矛盾は存在しない。このため、色彩画像(4)の彩度を落とせば、第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)がどんな画像の組合せであったとしても、濃度と色彩の矛盾は小さくなり、色彩共有性は必ず相対的に高まる方向へと改善される。ただし、色彩画像(4)が無彩色に近づけば近づくほど、本発明のカラー化の効果は損なわれ、本発明の効果が低下することから、彩度を下げる割合は、矛盾が目立つ領域に限定して、可能な限り最小限の幅に留めることが望ましい。彩度Cが3以上あれば、いかなる高い面積率で隆起画像(5)が重ねられたとしても、有彩色と認識できるため、色彩画像(4)の望ましい条件の一つとして、彩度Cが3以上の少なくとも一つの色彩を備えることとする。彩度Cは、CIE Lの色空間での数値とする。
【0051】
また、色彩画像(4)の色彩を調整することの他に、色彩画像(4)を部分的にぼかすことも、濃淡と色彩の矛盾を解消する上で有効である。ぼかし処理は、一般的な画像処理ソフトの効果の一つとして搭載された機能を用いればよい。ぼかし処理を施すと、色彩の境目がぼやけて周囲の色彩と区別して認識され難くなるため、色彩構成の冗長性を高めることができる。色彩画像(4)に対して、第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)の二つの異なる画像に対する色彩共有性を付与するためには、望ましい画像処理である。また、色彩を緩やかに変化させるグラデーション処理等も同様に有効である。
【0052】
実施の形態の例では、第二のカラー画像の色彩と第一のカラー画像の色彩を画像処理ソフトで平均化して色彩画像(4)としたが、この方法に限定されるものではなく、第一のカラー画像の色彩をベースとして、第二のカラー画像の色彩に適用できるように色彩を調整して色彩画像(4)としてもよいし、第二のカラー画像の色彩をベースとして、第一のカラー画像の色彩に適用できるように色彩を調整して色彩画像(4)としてもよいし、最終的に色彩画像(4)の色彩が、第一の濃淡画像(5A)と第二の濃淡画像(5B)のそれぞれと矛盾なく適応する構成を用いればよい。
【0053】
本実施の形態においては、第一のカラー画像と第二のカラー画像の色彩を平均化したのちに、色彩画像(4)にぼかし処理を施した。ぼかし処理には、画像処理ソフトのぼかし機能を用いた。最終的に、正反射光下において視認されるべき花びらの開いた状態の輪郭が、拡散反射光下では、隆起画線(6)の濃淡によって隠蔽されて視認できないようにぼかし処理を施し、最終的な色彩画像(4)とした。以上のような手順を踏み、第一のカラー画像と第二のカラー画像のそれぞれの色彩に矛盾が生じない構成とした。
【0054】
なお、第一のカラー画像と第二のカラー画像に共通し、画像がチェンジしない緑色の葉っぱについては、ぼかしを施さなかった。この緑色の葉っぱは、印刷画像(3)の中に含まれるものの、拡散反射光下でも正反射光下でも変化せず、チェンジ効果が生じない図柄である。このように、印刷画像(3)に含まれるものの、チェンジ効果が生じない図柄は、本発明の偽造防止印刷物(1)の本質の構成から外れる単なる付加物、いわゆるアクセサリーであり、様々な必須条件群から外れる条件で設計して問題ない。以上が、色彩画像(4)の説明である。
【0055】
以上の構成で形成した本発明の偽造防止印刷物(1)の効果について、図7を用いて説明する。光源(8)と偽造防止印刷物(1)と観察者(9)を、図7(a)に示すような位置関係とし、偽造防止印刷物(1)を拡散反射光が支配的な観察角度(印刷物に入射する光の入射角度と、観察者と印刷物とを結ぶ反射角度が大きく異なる角度)で観察した場合には、印刷画像(3)の中に第一の濃淡画像(5A)の濃淡と色彩画像(4)が合成された第一のカラー画像が視認される。
【0056】
また、偽造防止印刷物(1)を、図7(b)に示すような正反射光下が支配的な角度(印刷物に入射する光の角度と、観察者(9)と印刷物とを結ぶ反射角度が近い値である角度)の中で観察した場合には、第一の濃淡画像(5A)が消失し、第二の濃淡画像(5B)が出現し、第二の濃淡画像(5B)と色彩画像(4)が合成された第二のカラー画像が視認される。以上のように、拡散反射光下と正反射光下で印刷画像(3)中に視認できる画像が第一のカラー画像から第二のカラー画像へとチェンジする。以上が、本発明の効果の説明である。
【0057】
拡散反射光下と正反射光下において、隆起画像(5)中に見える画像が第一の濃淡画像(5A)から第二の濃淡画像(5B)へとチェンジする基本的な原理は、拡散反射光下及び正反射光下における物体の見え方に起因する。具体的には、物体が明暗フリップフロップ性かカラーフリップフロップ性を有する場合、拡散反射光下では、物体の立体構造よりも色彩が強調される。このため、拡散反射光下において、隆起画像(5)中には、隆起画線(6)の画線面積率の違いで構成された第一の濃淡画像(5A)がより支配的に視認される。このため、拡散反射光下において、第一の濃淡画像(5A)と色彩画像(4)が合成された第一のカラー画像が視認される。
【0058】
一方の正反射光下では、物体の色彩よりも立体構造が強調される。また、隆起画像(5)が正反射するために、物体色に起因する濃淡が淡く変化し、面積率の差異で構成された第一の濃淡画像(5A)が目視上消失する。また、隆起画像(5)中には、盛り上がりを有した隆起画線(6)の画線角度の違いによる第二の濃淡画像(5B)がより支配的に視認される。このため、正反射光下において、第一のカラー画像が消失し、第二の濃淡画像(5B)と色彩画像(4)が合成された第二のカラー画像が視認される。以上が、本発明の効果発現の原理の説明である。
【0059】
本発明の偽造防止印刷物(1)を形成する場合、隆起画線(5)の画線高さは、少なくとも2μm以上とする必要があり、原理上の高さの上限はないが、実用的な流通適性を考慮して100μm以下とすることが望ましい。印刷で形成する場合には、実用上5μmから30μm程度とすると効果が高く、望ましい。そのため、隆起画像(5)の形成には、一定の盛り上がり高さを付与できる印刷方式が望ましく、特に、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等で形成可能である。これらのフレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等のインキ転移量の多い印刷方式で隆起画像(5)を形成する場合、顔料粒子系の大きな特殊な機能性材料を使用することができるため、この場合には明暗フリップフロップ性だけでなく、カラーフリップフロップ性を付与することも可能である。また、特にスクリーン印刷の場合には、インキ転移量が多いことに加え、インキの樹脂自体も高い光沢を有するため、赤や青等の一般的な着色顔料を微量添加することで光を強く反射する着色インキとすることができる。色彩画像(4)は、生産性の高いオフセット印刷や凸版印刷等で形成可能であり、製造者のシーズに応じてフレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、凹版印刷等を用いてもよい。また、隆起画像(5)と色彩画像(4)ともに、インクジェットやレーザー等のプリンタで形成することもできる。プリンタで形成する場合には、一枚一枚付与された潜像が異なる可変印刷が可能であり、住民票やパスポート等のような個人情報付与に最適である。
【0060】
以下、前述の発明を実施するための形態にしたがって、具体的に作製した偽造防止印刷物(1)の実施例について詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0061】
本発明の実施例について、実施の形態と同様に図1から図7を用いて説明をする。まず、基材(2)として、汎用性の高いファンシーペーパー(グラディオスCC:日本製紙製)を用いた。次に、レーザープリンター(IPSIO SP C820:RICOH製)で図3に示す色彩画像(4)を印刷した。花びらの中心のピンク色の彩度Cは7.9、背景の青色の彩度Cは5、黄色の彩度Cは5.2、白の彩度Cは0であった。その上に、図4に示す隆起画像(5)を銀色のスクリーンインキ(ミラシーン ウォールステンホルム社製)でスクリーン印刷した。隆起画像(5)の最大面積率は75%、最小面積率50%とした。なお、第一の画線幅(W1)は0.20mm、第二の画線幅(W2)は0.27mmとし、ピッチ(P1)は0.4mmで構成した。第一の方向(S1)は0°、第二の方向(S2)は90°とした。
【0062】
図7に本発明の偽造防止印刷物(1)の効果を記す。図7(a)は、観察者(9)が拡散反射光下で本偽造防止印刷物(1)を観察した場合に観察される画像であり、印刷画像(3)の中には黄色の花弁を有したピンク色と白色の桜の蕾が、灰色の背景の中に視認できた。一方、図7(b)に示すように、観察者(9)が正反射光下で偽造防止印刷物(1)を観察した場合、印刷画像(3)の中には、黄色の花弁を有したピンク色と白色の桜の花びらが灰色の背景の中に視認できた。以上のように、拡散反射光下と正反射光下において、二つの異なるカラー画像がチェンジする効果が確認できた。
【符号の説明】
【0063】
1 偽造防止印刷物
2 基材
3 印刷画像
4 色彩画像
5 隆起画像
5A 第一の濃淡画像
5B、5B-1、5B-2 第二の濃淡画像
6、6A、6B、6C 隆起画線
7 合成画像
8 光源
9 観察者
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7