(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】変性共役ジエン系重合体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 36/04 20060101AFI20220615BHJP
C08F 8/30 20060101ALI20220615BHJP
C08F 4/52 20060101ALI20220615BHJP
【FI】
C08F36/04
C08F8/30
C08F4/52
(21)【出願番号】P 2020528183
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 KR2018013790
(87)【国際公開番号】W WO2019103383
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2020-05-21
(31)【優先権主張番号】10-2017-0156567
(32)【優先日】2017-11-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ス-ファ
(72)【発明者】
【氏名】ペ、ヒョ-チン
(72)【発明者】
【氏名】パク、ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ス-ヨン
(72)【発明者】
【氏名】アン、チョン-ホン
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-006189(JP,A)
【文献】特開2014-169448(JP,A)
【文献】特開2012-097271(JP,A)
【文献】特表2004-513987(JP,A)
【文献】特表2003-514079(JP,A)
【文献】特表2003-514078(JP,A)
【文献】米国特許第09150671(US,B2)
【文献】国際公開第2013/115242(WO,A1)
【文献】特表2002-544342(JP,A)
【文献】特表2015-508843(JP,A)
【文献】国際公開第2008/146643(WO,A1)
【文献】特開2009-185280(JP,A)
【文献】特表2012-531494(JP,A)
【文献】特開2008-163338(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0073924(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
100℃での-S/R(stress/relaxation)値と分子量分布(MWD)の比((-S/R)/MWD)が0.30以上0.50以下である、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体であって、
前記ランタン系希土類元素触媒は、下記化学式1で表されるネオジム化合物を含み、
ランタン系希土類元素触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属部位を含む活性重合体を製造するステップを含む方法により製造され、
前記ランタン系希土類元素触媒組成物が、前記重合に用いられる共役ジエン系単量体の一部を、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、およびハロゲン化物を含む触媒組成物と予備混合して予備重合させたものであり、
前記ランタン系希土類元素触媒組成物が、
前記ランタン系希土類元素含有化合物、
前記第1アルキル化剤、
前記第2アルキル化剤、
前記ハロゲン化物、および
前記共役ジエン系単量体を1:100~200:40~60:2~4:20~50のモル比で含み、
前記第1アルキル化剤は、アルミノキサンであり、
前記第2アルキル化剤は、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドまたはジヒドロカルビルアルミニウムヒドリドであり、
前記ハロゲン化物が、有機金属ハライドである、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体。
【化7】
(前記化学式1中、
R
a~R
cは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、
但し、R
a~R
cの全てが同時に水素であることはない。)
【請求項2】
前記ネオジム化合物は、Nd(2-エチルヘキサノエート)
3、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)
3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)
3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)
3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)
3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)
3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)
3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)
3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)
3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)
3、Nd(2-t-ブチルデカノエート)
3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)
3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)
3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)
3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)
3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)
3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)
3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)
3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)
3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)
3からなる群から選択される1つ以上である、請求項1に記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体。
【請求項3】
下記化学式4または化学式5で表される変性剤由来の官能基を含む、請求項1または2に記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体。
【化8】
(前記化学式4または化学式5中、
Z
1およびZ
2は、互いに独立して、シラン基、N,N-2置換アミノフェニル基、イミン基、または環状のアミノ基であり、
R
1およびR
7は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であり、
R
3およびR
6は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であるか;それぞれR
4またはR
5およびR
8またはR
9と連結されて環を形成する3価の有機基であり、
R
4およびR
8は、互いに独立して、1価の有機基であるか;または、それぞれR
3またはR
5およびR
6またはR
9と連結されて環を形成する2価の有機基であってもよく、
R
5は、1価の有機基であるか;またはR
3またはR
4と連結されて環を形成する2価の有機基である。)
【請求項4】
ランタン系希土類元素触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属部位を含む活性重合体を製造するステップを含み、
前記ランタン系希土類元素触媒組成物が、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を1:100~200:40~60:2~4:20~50のモル比で含み、
前記第1アルキル化剤は、アルミノキサンであり、
前記第2アルキル化剤は、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドまたはジヒドロカルビルアルミニウムヒドリドであり、
前記ランタン系希土類元素触媒は、下記化学式1で表されるネオジム化合物を含み、
前記ハロゲン化物が、有機金属ハライドである
請求項1~3のいずれかに記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体の製造方法。
【化9】
(前記化学式1中、
R
a~R
cは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、
但し、R
a~R
cの全てが同時に水素であることはない。)
【請求項5】
前記
予備重合は、炭化水素系溶媒中で、前記ランタン系希土類元素含有化合物、前記第1アルキル化剤、前記第2アルキル化剤、前記ハロゲン化物、および前記共役ジエン系単量体を-30℃~-20℃の温度で混合し、-30℃~-20℃の温度で24時間~36時間静置させることで
行われる、請求項4に記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1アルキル化剤は、メチルアルミノキサン、変性メチルアルミノキサン、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、および2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンからなる群から選択される1つ以上のアルミノキサンであり、
前記変性メチルアルミノキサンは、下記化学式3で表される
請求項4または5に記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体の製造方法。
【化10】
[前記化学式3中、Rは炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する1価の有機基であり、
mおよびnは、互いに独立して、2以上の整数である。]
【請求項7】
前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、およびベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドからなる群から選択される1つ以上である、請求項4~6のいずれか一項に記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体の製造方法。
【請求項8】
前記活性重合体を下記化学式4または化学式5で表される変性剤と反応させる変性反応ステップをさらに含む、請求項4~7のいずれか一項に記載のランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体の製造方法。
【化11】
(前記化学式4または化学式5中、
Z
1およびZ
2は、互いに独立して、シラン基、N,N-2置換アミノフェニル基、イミン基、または環状のアミノ基であり、
R
1およびR
7は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であり、
R
3およびR
6は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であるか;それぞれR
4またはR
5およびR
8またはR
9と連結されて環を形成する3価の有機基であり、
R
4およびR
8は、互いに独立して、1価の有機基であるか;または、それぞれR
3またはR
5およびR
6またはR
9と連結されて環を形成する2価の有機基であってもよく、
R
5は、1価の有機基であるか;またはR
3またはR
4と連結されて環を形成する2価の有機基である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月22日付けの韓国特許出願第10-2017-0156567号に基づく優先権の利益を主張し、該当韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、高いリニアリティを有し、配合物性が改善された、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体、およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
近年、省エネルギーおよび環境問題に対する関心が高まっており、これに伴い、自動車の低燃費化が求められている。これを実現するための方法の一つとして、タイヤ形成用ゴム組成物にシリカやカーボンブラックなどの無機充填剤を用いることで、タイヤの発熱性を低める方法が提案されている。しかし、ゴム組成物中における前記無機充填剤の分散が容易ではないため、耐磨耗性、耐クラック性または加工性などを始めとするゴム組成物の物性が却って全体的に低下するという問題があった。
【0004】
このような問題を解決するために、ゴム組成物中におけるシリカやカーボンブラックなどの無機充填剤の分散性を高めるための方法として、有機リチウムを用いたアニオン重合により得られる共役ジエン系重合体の重合活性部位を、無機充填剤と相互作用が可能な官能基で変性する方法が開発された。具体的には、共役ジエン系重合体の重合活性末端をスズ系化合物で変性したり、アミノ基を導入する方法、またはアルコキシシラン誘導体で変性する方法などが提案されている。
【0005】
しかしながら、上述の方法により変性された共役ジエン系重合体を用いてゴム組成物を製造する場合、低発熱性は確保することができるが、耐磨耗性、加工性などのゴム組成物の物性改善の効果は十分ではなかった。
【0006】
また、他の方法として、ランタン系希土類元素化合物を含む触媒を用いた配位重合により得られるリビング重合体において、リビング活性末端を特定のカップリング剤や変性剤によって変性する方法が開発された。しかし、従来に知られているランタン系希土類元素化合物を含む触媒では、生成されるリビング末端の活性が弱く、末端変性率が低いため、ゴム組成物の物性改善の効果が微小であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の従来技術の問題点を解決するためになされたものであって、高いリニアリティを有し、配合物性が改善された、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、前記共役ジエン系重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、100℃での-S/R(stress/relaxation)値と分子量分布(MWD)の比((-S/R)/MWD)が0.30以上である、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体を提供する。
【0010】
また、本発明は、ランタン系希土類元素触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属部位を含む活性重合体を製造するステップを含み、前記ランタン系希土類元素触媒組成物が、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を1:100~200:40~60:2~4:20~50のモル比で含む、前記共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体は、高いリニアリティを有するため、ゴム組成物に適用された際に、優れた加工性、引張強度、および粘弾性を示すことができる。
【0012】
また、本発明の一実施形態に係る製造方法は、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を特定の割合で含む触媒組成物を用いて共役ジエン系単量体を重合することで、高いリニアリティを有する共役ジエン系重合体を製造することができる
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が容易に理解されるように、本発明をより詳細に説明する。
【0014】
本発明の説明および請求の範囲で用いられている用語や単語は、通常的もしくは辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために、用語の概念を適切に定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念で解釈すべきである。
【0015】
本発明において用いる用語「置換」は、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換されたことを意味し、官能基、原子団、または化合物の水素が特定の置換基で置換される場合、官能基、原子団、または化合物中に存在する水素の個数に応じて、1個または2個以上の複数の置換基が存在し得る。また、複数の置換基が存在する場合、それぞれの置換基は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0016】
本発明において用いる用語「アルキル基(alkyl group)」は、1価の脂肪族飽和炭化水素を意味し、メチル、エチル、プロピル、およびブチルなどの直鎖状アルキル基、およびイソプロピル(isopropyl)、sec‐ブチル(sec‐butyl)、tert‐ブチル(tert‐butyl)、およびネオペンチル(neo‐pentyl)などの分岐状アルキル基の両方を含んでもよい。
【0017】
本発明において、「シクロアルキル基(cycloalkyl group)」は、環状の飽和炭化水素、または不飽和結合を1つまたは2つ以上含む環状の不飽和炭化水素を何れも含む意味であり得る。
【0018】
本発明において用いる用語「アリール基(aryl group)」は、環状の芳香族炭化水素を意味し、また、1つの環が形成された単環芳香族炭化水素(monocyclic aromatic hydrocarbon)、または2つ以上の環が結合された多環芳香族炭化水素(polycyclic aromatic hydrocarbon)を両方とも含む意味であり得る。
【0019】
本発明において用いる用語「単結合」は、別の原子または分子団を含まない、単一共有結合のそのものを意味し得る。
【0020】
本発明は、高いリニアリティを有する、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体を提供する。
【0021】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、100℃での-S/R(stress/relaxation)値と分子量分布(MWD)の比((-S/R)/MWD)が0.30以上であることを特徴とする。
【0022】
また、本発明の他の実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、100℃での-S/R(stress/relaxation)値と分子量分布(MWD)の比((-S/R)/MWD)が0.30以上であり、下記化学式4または化学式5で表される変性剤由来の官能基を含んでもよい。
【0023】
【0024】
前記化学式4または化学式5中、
Z1およびZ2は、互いに独立して、シラン基、N,N-2置換アミノフェニル基、イミン基、または環状のアミノ基であり、R1およびR7は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であり、
R3およびR6は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であるか;それぞれR4またはR5およびR8またはR9と連結されて環を形成する3価の有機基であり、R4およびR8は、互いに独立して、1価の有機基であるか;または、それぞれR3またはR5およびR6またはR9と連結されて環を形成する2価の有機基であってもよく、R5は、1価の有機基であるか;またはR3またはR4と連結されて環を形成する2価の有機基である。
【0025】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、後述の触媒組成物の存在下で製造されることで、それを含むゴム組成物の粘弾性、引張特性、および加工性などの物性バランスが改善されるように最適化された分子量分布、ムーニー粘度などの特性を有することができ、高いリニアリティを有することができる。
【0026】
具体的に、前記共役ジエン系重合体は、100℃での-S/R(stress/relaxation)値と分子量分布(MWD)の比((-S/R)/MWD)が0.30以上であり、具体的には0.30~0.50であってもよい。
【0027】
ここで、前記-S/R値と分子量分布(MWD)の比((-S/R)/MWD)は、-S/Rに対する分子量分布を示すものであって、これから、重合体のリニアリティを予測することができる。例えば、前記-S/R値と分子量分布の比が低いほど、重合体のリニアリティが低いことを意味し、リニアリティが低いほど、ゴム組成物に適用した際に粘弾性が低下し得る。本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、上述の範囲の-S/R値と分子量分布の比を有することで、ゴム組成物に適用した際に、優れた粘弾性を有することができる。
【0028】
本発明において、前記-S/R(stress/relaxation)値は、同量の変形(strain)に対する反応として現れるストレス(stress)の変化を示すものであって、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000EのLarge Rotorを用いて、100℃およびRotor Speed 2±0.02rpmの条件で測定する。具体的には、重合体を室温(23±5℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(platen)を作動させてトルクを印加しながらムーニー粘度を測定し、また、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度変化の勾配値を測定することで、-S/R値(絶対値)を得る。前記共役ジエン系重合体は1.5~3.5の分子量分布(Mw/Mn)を有し、具体的には、前記共役ジエン系重合体は、2.0~3.0の狭い分子量分布(Mw/Mn)を有することができる。上記のような狭い分子量分布を有する場合、ゴム組成物に適用した際に、引張特性および粘弾性に優れる効果がある。前記分子量分布は、一例として、2.0~2.8もしくは2.0~2.6であってもよい。本発明において、共役ジエン系重合体の分子量分布は、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)から計算されることができる。この際、前記数平均分子量(Mn)は、n個の重合体分子の分子量を測定し、それらの分子量の総和を求め、nで除して計算した個別重合体分子量の共通平均(common average)であり、前記重量平均分子量(Mw)は、高分子組成物の分子量分布を示す。分子量の平均は何れもモル当たりグラム(g/mol)で表されることができる。また、前記重量平均分子量および数平均分子量はそれぞれ、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析されるポリスチレン換算分子量を意味する。
【0029】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、上記の分子量分布の条件を満たすとともに、重量平均分子量(Mw)が4X105~1.0X106g/molであり、数平均分子量(Mn)が2.0X105~5.0X105g/molであってもよい。この範囲内である場合、ゴム組成物に適用した際に優れた引張特性を有するとともに、加工性に優れてゴム組成物の作業性が改善されるため混捏が容易となり、ゴム組成物の機械的物性および物性バランスに優れる効果がある。前記重量平均分子量は、一例として、4.5X105~1.0X106g/mol、または5X105~1.0X106g/molであってもよく、数平均分子量は、一例として、2.0X105~4.5X105g/mol、または2.0X105~4.0X105g/molであってもよい。
【0030】
より具体的に、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、上記の分子量分布とともに、重量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)の条件を同時に満たす場合、ゴム組成物に適用した際に、優れたゴム組成物の引張特性、粘弾性、および加工性を有し、これらの間の物性バランスに優れるという効果がある。
【0031】
また、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、100℃でのムーニー粘度(mooney viscosity、MV)が30~70であってもよく、この範囲内である場合、より優れた加工性を示す効果がある。前記100℃でのムーニー粘度は、一例として、40~60であってもよい。
【0032】
本発明において、ムーニー粘度は、ムーニー粘度計、例えば、Monsanto社のMV2000Eにより、100℃で、Rotor Speed 2±0.02rpm、Large Rotorを用いて測定することができる。この際、用いられる試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させて測定することができる。
【0033】
また、前記共役ジエン系重合体は、フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により測定した共役ジエン部のシス-1,4結合の含量が95%以上、より具体的には97%以上であってもよい。これにより、ゴム組成物に適用した際に、ゴム組成物の耐磨耗性、耐クラック性、および耐オゾン性が向上することができる。
【0034】
また、前記共役ジエン系重合体は、フーリエ変換赤外分光法により測定した共役ジエン部のビニルの含量が5%以下、より具体的には3%以下、さらに具体的には1%以下であってもよい。重合体中のビニルの含量が5%を超える場合、それを含むゴム組成物の耐磨耗性、耐クラック性、耐オゾン性が劣化する恐れがある。
【0035】
ここで、前記フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)による重合体中のシス-1,4結合の含量およびビニルの含量は、同一セルの二硫化炭素をブランクとし、5mg/mLの濃度で調製した共役ジエン系重合体の二硫化炭素溶液のFT-IR透過率スペクトルを測定した後、測定スペクトルの1130cm-1付近の最大ピーク値(a、ベースライン)、トランス-1,4結合を示す967cm-1付近の最小ピーク値(b)、ビニル結合を示す911cm-1付近の最小ピーク値(c)、およびシス-1,4結合を示す736cm-1付近の最小ピーク値(d)を用いて、それぞれの含量を求めたものである。
【0036】
また、本発明において、ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体とは、ランタン系希土類元素含有化合物を含む触媒組成物に由来した、すなわち、触媒から活性化された有機金属部位を含む共役ジエン系重合体を意味し得る。
【0037】
また、本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体は、ポリブタジエンのようなブタジエン単独重合体であってもよく、または、ブタジエン-イソプレン共重合体のようなブタジエン共重合体であってもよい。
【0038】
具体的な例として、前記共役ジエン系重合体は、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位80~100重量%、および選択的に1,3-ブタジエンと共重合可能なその他の共役ジエン系単量体由来の繰り返し単位20重量%以下を含んでもよく、前記範囲内である場合、重合体中における1,4-シス結合の含量が低下しない効果がある。この際、前記1,3-ブタジエン単量体としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、または2-エチル-1,3-ブタジエンなどの1,3-ブタジエンもしくはその誘導体が挙げられ、前記1,3-ブタジエンと共重合可能なその他の共役ジエン系単量体としては、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、または2,4-ヘキサジエンなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の化合物が使用可能である。
【0039】
本発明の一実施形態によると、前記共役ジエン系重合体は、具体的に、1,3-ブタジエン単量体由来の繰り返し単位を含むネオジム触媒化ブタジエン系重合体であってもよい。
【0040】
本発明において、共役ジエン系重合体の活性化された有機金属部位とは、共役ジエン系重合体の末端の活性化された有機金属部位(分子鎖末端の活性化された有機金属部位)、主鎖中の活性化された有機金属部位、または側鎖中の活性化された有機金属部位であってもよく、中でも、アニオン重合または配位アニオン重合によって共役ジエン系重合体の活性化された有機金属部位を得る場合、前記活性化された有機金属部位は、末端の活性化された有機金属部位であってもよい。
【0041】
具体的に、前記ランタン系希土類元素触媒は、下記化学式1で表されるネオジム化合物を含んでもよい。
【0042】
【0043】
前記化学式1中、
Ra~Rcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数1~12のアルキル基であり、但し、Ra~Rcの全てが同時に水素であることはない。
【0044】
具体的な例として、前記ネオジム化合物は、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、Nd(ネオデカノエート)3、Nd(2-エチルヘキサノエート)3、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2-t-ブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0045】
また、本発明は、前記ランタン系希土類元素で触媒化された共役ジエン系重合体の製造方法を提供する。
【0046】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体の製造方法は、ランタン系希土類元素触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属部位を含む活性重合体を製造するステップ(ステップA)を含み、前記ランタン系希土類元素触媒組成物が、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を1:100~200:40~60:2~4:20~50のモル比で含むことを特徴とする。
【0047】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体の製造方法は、上記の触媒組成物を用いて共役ジエン系単量体を重合することで、高いリニアリティを有する共役ジエン系重合体を製造することができる。
【0048】
前記ステップAは、共役ジエン系単量体を重合することで、有機金属部位を含む活性重合体を製造するステップであって、ランタン系希土類元素触媒組成物の存在下で、共役ジエン系単量体を重合して行うことができる。
【0049】
ここで、前記ランタン系希土類元素触媒組成物は、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を含むものであり、この際、前記ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体は、1:100~200:40~60:2~4:20~50のモル比を有してもよい。具体的には、前記ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体は、1:100~150:40~50:2~3:20~30のモル比を有してもよい。
【0050】
また、前記ランタン系希土類元素触媒組成物は、炭化水素系溶媒中で、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化物、および共役ジエン系単量体を-30℃~-20℃の温度で混合し、-30℃~-20℃の温度で24時間~36時間静置させて製造することができる。
【0051】
具体的に、前記ランタン系希土類元素触媒組成物は、炭化水素系溶媒中に、ランタン系希土類元素含有化合物、第1アルキル化剤、第2アルキル化剤、ハロゲン化合物、および選択的に共役ジエン系単量体を順に投入して混合することで製造されることができる。この際、前記炭化水素系溶媒は、上記の触媒組成物の構成成分と反応性を有しない非極性溶媒であってもよい。具体的に、前記炭化水素系溶媒としては、ペンタン、ヘキサン、イソペンタン、ヘプタン、オクタン、イソオクタンなどのような脂肪族炭化水素系溶媒;シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサンなどのようなシクロ脂肪族炭化水素系溶媒;またはベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレンなどのような芳香族炭化水素系溶媒などからなる群から選択される1種以上が使用可能である。具体的な例として、前記炭化水素系溶媒は、ヘキサンなどのような脂肪族炭化水素系溶媒であってもよい。
【0052】
本発明の一実施形態に係る前記ランタン系希土類元素触媒組成物は、上述の組成を有し、上述のように製造されることで、リニアリティの高い活性重合体を製造することができる。
【0053】
また、本重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の一部を前記触媒組成物と予備混合(premix)して予備重合(preforming)触媒組成物の形態で用いることで、触媒活性を向上させるとともに、製造された共役ジエン系重合体を安定化させる効果がある。
【0054】
本発明において、前記「予備重合(preforming)」とは、触媒組成物、すなわち、触媒系にジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)などを含む場合、これとともに、様々な触媒活性種の生成可能性を減らすために、ブタジエンなどの共役ジエン系単量体を少量添加することとなるが、ブタジエンの添加とともに触媒系中で前(pre)重合が行われることを意味し得る。また、「予備混合(premix)」とは、触媒系で重合が行われず、各化合物が均一に混合された状態を意味し得る。
【0055】
具体的な例として、前記共役ジエン系単量体は、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、3-メチル-1,3-ペンタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、および2,4-ヘキサジエンなどからなる群から選択される1種以上であってもよい。前記触媒組成物の製造に使用可能な共役ジエン系単量体は、前記重合反応に用いられる共役ジエン系単量体の総使用量の範囲内で一部の量が使用可能である。
【0056】
前記ランタン系希土類元素含有化合物は、ネオジム、プラセオジム、セリウム、ランタン、またはガドリニウムなどのような、周期律表の原子番号57~71の希土類元素の何れか1つまたは2つ以上の元素を含む化合物であってもよく、具体的には、ネオジムを含む化合物であってもよい。
【0057】
さらに他の例として、前記ランタン系希土類元素含有化合物は、ランタン系希土類元素のカルボン酸塩、アルコキシド、β-ジケトン錯体、リン酸塩、または亜リン酸塩などのような、炭化水素溶媒に可溶な塩であってもよく、具体的には、ネオジム含有カルボン酸塩であってもよい。
【0058】
前記炭化水素溶媒は、一例として、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭素数4~10の飽和脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの炭素数5~20の飽和脂環式炭化水素;1-ブテン、2-ブテンなどのモノオレフィン類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;または塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、クロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロトルエンなどのハロゲン化炭化水素であってもよい。
【0059】
本発明の一実施形態によると、前記ランタン系希土類元素含有化合物は、下記化学式1で表されるネオジム化合物を含んでもよい。
【0060】
【0061】
前記化学式1中、Ra~Rcは、上述の定義のとおりである。
【0062】
さらに他の例として、オリゴマー化に対する懸念なく、重合溶媒に対する優れた溶解度、触媒活性種への転換率、およびそれによる触媒活性の改善効果の優秀性を考慮すると、前記ランタン系希土類元素含有化合物は、より具体的に、前記化学式1中、Raが炭素数4~12の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、RbおよびRcが、それぞれ独立して水素または炭素数2~8のアルキル基であって、但し、RbおよびRcが同時に水素であることはない、ネオジム化合物であってもよい。
【0063】
より具体的な例として、前記化学式1中、前記Raは、炭素数6~8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、水素、または炭素数2~6のアルキル基であってもよく、この際、前記RbおよびRcは同時に水素であることはない。その具体的な例としては、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、Nd(2,2-ジオクチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ブチルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-プロピル-2-イソプロピルデカノエート)3、Nd(2-ブチル-2-ヘキシルデカノエート)3、Nd(2-ヘキシル-2-オクチルデカノエート)3、Nd(2-t-ブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジエチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジブチルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルオクタノエート)3、Nd(2-エチル-2-ヘキシルオクタノエート)3、Nd(2,2-ジエチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルノナノエート)3、Nd(2,2-ジブチルノナノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルノナノエート)3、Nd(2-エチル-2-プロピルノナノエート)3、およびNd(2-エチル-2-ヘキシルノナノエート)3からなる群から選択される1種以上が挙げられ、中でも、前記ネオジム化合物は、Nd(2,2-ジエチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジプロピルデカノエート)3、Nd(2,2-ジブチルデカノエート)3、Nd(2,2-ジヘキシルデカノエート)3、およびNd(2,2-ジオクチルデカノエート)3からなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0064】
さらに具体的に、前記化学式1中、前記Raは、炭素数6~8の直鎖状または分岐状のアルキル基であり、RbおよびRcは、それぞれ独立して、炭素数2~6のアルキル基であってもよい。
【0065】
このように、前記化学式1で表されるネオジム化合物は、α位置に、炭素数2以上の様々な長さのアルキル基を置換基として含むカルボキシレートリガンドを含むことで、ネオジムの中心金属の周りに立体的な変化を誘導し、化合物同士の絡み合い現象を遮断することができ、これによって、オリゴマー化を抑えることができる効果がある。また、かかるネオジム化合物は、重合溶媒に対する溶解度が高く、触媒活性種への転換が困難な中心部分に位置するネオジムの割合が減少されるため、触媒活性種への転換率が高いという効果がある。
【0066】
さらに他の例として、前記化学式1で表されるネオジム化合物の重量平均分子量(Mw)は、600~2,000g/molであってもよい。上記範囲の重量平均分子量を有する場合、より安定して優れた触媒活性を示すことができる。
【0067】
また、前記ランタン系希土類元素含有化合物の溶解度は、一例として、常温(25℃)で、非極性溶媒6g当たり約4g以上であってもよい。本発明において、ランタン系希土類元素含有化合物の溶解度は、濁っている現象なしにきれいに溶解される程度を意味する。このように高い溶解度を有することで、優れた触媒活性を示すことができる。
【0068】
前記ランタン系希土類元素含有化合物は、一例として、重合に用いられる共役ジエン系単量体100g当たり0.1~0.5mmol、より具体的には0.1~0.2mmolの含量で用いられてもよく、この範囲内である場合、触媒活性が高く、適正な触媒濃度を有するため、別の脱灰工程を経なくてもよいという効果がある。
【0069】
前記ランタン系希土類元素含有化合物は、一例として、ルイス塩基との反応物の形態で用いられてもよい。この反応物は、ルイス塩基により、ランタン系希土類元素含有化合物の溶媒に対する溶解性を向上させ、長期間にわたって安定した状態で保存できる効果がある。前記ルイス塩基は、一例として、希土類元素1モル当たり30モル以下、または1~10モルの割合で用いられてもよい。前記ルイス塩基は、一例として、アセチルアセトン、テトラヒドロフラン、ピリジン、N,N-ジメチルホルムアミド、チオフェン、ジフェニルエーテル、トリエチルアミン、有機リン化合物、または1価もしくは2価のアルコールなどであってもよい。
【0070】
前記第1アルキル化剤はアルミノキサンであってもよく、前記アルミノキサンは、トリヒドロカルビルアルミニウム系化合物に水を反応させることで製造されたものであってもよい。具体的に、前記アルミノキサンは、下記化学式2aの直鎖状アルミノキサンまたは化学式2bの環状アルミノキサンであってもよい。
【0071】
【0072】
前記化学式2aおよび2b中、Rは、炭素原子を介してアルミニウム原子に結合する1価の有機基であって、ヒドロカルビル基であってもよく、xおよびyは、互いに独立して、1以上の整数、具体的には1~100、より具体的には2~50の整数であってもよい。
【0073】
さらに具体的には、前記アルミノキサンは、メチルアルミノキサン(MAO)、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、エチルアルミノキサン、n-プロピルアルミノキサン、イソプロピルアルミノキサン、ブチルアルミノキサン、イソブチルアルミノキサン、n-ペンチルアルミノキサン、ネオペンチルアルミノキサン、n-ヘキシルアルミノキサン、n-オクチルアルミノキサン、2-エチルヘキシルアルミノキサン、シクロヘキシルアルミノキサン、1-メチルシクロペンチルアルミノキサン、フェニルアルミノキサン、または2,6-ジメチルフェニルアルミノキサンなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0074】
また、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基を修飾基(R)、具体的には、炭素数2~20の炭化水素基で置換したものであって、具体的には下記化学式3で表される化合物であってもよい。
【0075】
【0076】
前記化学式3中、Rは上述の定義のとおりであり、mおよびnは、互いに独立して、2以上の整数であってもよい。また、前記化学式3中、Meはメチル基(methyl group)を表す。
【0077】
具体的に、前記化学式3中、前記Rは、炭素数2~20のアルキル基、炭素数3~20のシクロアルキル基、炭素数2~20のアルケニル基、炭素数3~20のシクロアルケニル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数7~20のアリールアルキル基、炭素数7~20のアルキルアリール基、アリル基、または炭素数2~20のアルキニル基であってもよく、より具体的には、エチル基、イソブチル基、ヘキシル基、またはオクチル基などのような炭素数2~10のアルキル基であり、さらに具体的には、イソブチル基であってもよい。
【0078】
より具体的に、前記変性メチルアルミノキサンは、メチルアルミノキサンのメチル基の約50モル%~90モル%を、上記の炭化水素基で置換したものであってもよい。変性メチルアルミノキサン中の置換された炭化水素基の含量が前記範囲内である場合、アルキル化を促進させて触媒活性を増加させることができる。
【0079】
このような変性メチルアルミノキサンは、通常の方法により製造されることができ、具体的には、トリメチルアルミニウムとトリメチルアルミニウム以外のアルキルアルミニウムを用いて製造されることができる。この際、前記アルキルアルミニウムは、トリイソブチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、またはトリオクチルアルミニウムなどであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0080】
前記第2アルキル化剤は、ヒドロカルビルアルミニウムジヒドリドであってもよく、具体的に、前記第2アルキル化剤は、ジエチルアルミニウムヒドリド、ジ-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ジイソプロピルアルミニウムヒドリド、ジ-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、ジ-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ジフェニルアルミニウムヒドリド、ジ-p-トリルアルミニウムヒドリド、ジベンジルアルミニウムヒドリド、フェニルエチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、フェニルイソプロピルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、フェニルイソブチルアルミニウムヒドリド、フェニル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、p-トリルエチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソプロピルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、p-トリルイソブチルアルミニウムヒドリド、p-トリル-n-オクチルアルミニウムヒドリド、ベンジルエチルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-プロピルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソプロピルアルミニウムヒドリド、ベンジル-n-ブチルアルミニウムヒドリド、ベンジルイソブチルアルミニウムヒドリド、またはベンジル-n-オクチルアルミニウムヒドリドなどのジヒドロカルビルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、n-プロピルアルミニウムジヒドリド、イソプロピルアルミニウムジヒドリド、n-ブチルアルミニウムジヒドリド、イソブチルアルミニウムジヒドリド、およびn-オクチルアルミニウムジヒドリドからなる群から選択される1種以上であってもよい。
【0081】
一方、本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物において、アルキル化剤は、ヒドロカルビル基を他の金属に伝達できる有機金属化合物であって、助触媒の役割を果たすことができる。
【0082】
また、本発明の一実施形態に係る前記触媒組成物は、必要に応じて、上記の第1および第2アルキル化剤以外に、共役ジエン系重合体の製造時にアルキル化剤として用いられる通常のアルキル化剤をさらに含んでもよい。かかるアルキル化剤としては、トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリ-n-プロピルアルミニウム、トリイソプロピルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-t-ブチルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリシクロヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウムなどのアルキルアルミニウム;ジエチルマグネシウム、ジ-n-プロピルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、ジフェニルマグネシウム、またはジベンジルマグネシウムなどのようなアルキルマグネシウム化合物などが挙げられ、また、前記有機リチウム化合物としては、n-ブチルリチウムなどのようなアルキルリチウム化合物などが挙げられる。
【0083】
また、前記ハロゲン化物としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン単体、ハロゲン間化合物(interhalogen compound)、ハロゲン化水素、有機ハライド、非金属ハライド、金属ハライド、または有機金属ハライドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。中でも、触媒活性の向上、およびそれによる反応性の優れた改善効果を考慮すると、前記ハロゲン化物としては、有機ハライド、金属ハライド、および有機金属ハライドからなる群から選択される何れか1つまたは2つ以上の混合物が用いられてもよい。
【0084】
前記ハロゲン単体としては、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素が挙げられる。
【0085】
また、前記ハロゲン間化合物としては、ヨウ素モノクロリド、ヨウ素モノブロミド、ヨウ素トリクロリド、ヨウ素ペンタフルオリド、ヨウ素モノフルオリド、またはヨウ素トリフルオリドなどが挙げられる。
【0086】
また、前記ハロゲン化水素としては、フッ化水素、塩化水素、臭化水素、またはヨウ化水素が挙げられる。
【0087】
また、前記有機ハライドとしては、t-ブチルクロリド(t-BuCl)、t-ブチルブロミド、アリルクロリド、アリルブロミド、ベンジルクロリド、ベンジルブロミド、クロロ-ジ-フェニルメタン、ブロモ-ジ-フェニルメタン、トリフェニルメチルクロリド、トリフェニルメチルブロミド、ベンジリデンクロリド、ベンジリデンブロミド、メチルトリクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン(TMSCl)、ベンゾイルクロリド、ベンゾイルブロミド、プロピオニルクロリド、プロピオニルブロミド、メチルクロロホルメート、メチルブロモホルメート、ヨードメタン、ジヨードメタン、トリヨードメタン(「ヨードホルム」とも呼ばれる)、テトラヨードメタン、1-ヨードプロパン、2-ヨードプロパン、1,3-ジヨードプロパン、t-ブチルヨージド、2,2-ジメチル-1-ヨードプロパン(「ネオペンチルヨージド」とも呼ばれる)、アリルヨージド、ヨードベンゼン、ベンジルヨージド、ジフェニルメチルヨージド、トリフェニルメチルヨージド、ベンジリデンヨージド(「ベンザルヨージド」とも呼ばれる)、トリメチルシリルヨージド、トリエチルシリルヨージド、トリフェニルシリルヨージド、ジメチルジヨードシラン、ジエチルジヨードシラン、ジフェニルジヨードシラン、メチルトリヨードシラン、エチルトリヨードシラン、フェニルトリヨードシラン、ベンゾイルヨージド、プロピオニルヨージド、またはメチルヨードホルメートなどが挙げられる。
【0088】
また、前記非金属ハライドとしては、三塩化リン、三臭化リン、五塩化リン、オキシ塩化リン、オキシ臭化リン、三フッ化ホウ素、三塩化ホウ素、三臭化ホウ素、四フッ化ケイ素、四塩化ケイ素(SiCl4)、四臭化ケイ素、三塩化ヒ素、三臭化ヒ素、四塩化セレン、四臭化セレン、四塩化テルル、四臭化テルル、四ヨウ化ケイ素、三ヨウ化ヒ素、四ヨウ化テルル、三ヨウ化ホウ素、三ヨウ化リン、オキシヨウ化リン、または四ヨウ化セレンなどが挙げられる。
【0089】
また、前記金属ハライドとしては、四塩化スズ、四臭化スズ、三塩化アルミニウム、三臭化アルミニウム、三塩化アンチモン、五塩化アンチモン、三臭化アンチモン、三フッ化アルミニウム、三塩化ガリウム、三臭化ガリウム、三フッ化ガリウム、三塩化インジウム、三臭化インジウム、三フッ化インジウム、四塩化チタン、四臭化チタン、二塩化亜鉛、二臭化亜鉛、二フッ化亜鉛、三ヨウ化アルミニウム、三ヨウ化ガリウム、三ヨウ化インジウム、四ヨウ化チタン、二ヨウ化亜鉛、四ヨウ化ゲルマニウム、四ヨウ化スズ、二ヨウ化スズ、三ヨウ化アンチモン、または二ヨウ化マグネシウムが挙げられる。
【0090】
また、前記有機金属ハライドとしては、ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジメチルアルミニウムブロミド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジメチルアルミニウムフルオリド、ジエチルアルミニウムフルオリド、メチルアルミニウムジクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、メチルアルミニウムジブロミド、エチルアルミニウムジブロミド、メチルアルミニウムジフルオリド、エチルアルミニウムジフルオリド、メチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド(EASC)、イソブチルアルミニウムセスキクロリド、メチルマグネシウムクロリド、メチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、n-ブチルマグネシウムクロリド、n-ブチルマグネシウムブロミド、フェニルマグネシウムクロリド、フェニルマグネシウムブロミド、ベンジルマグネシウムクロリド、トリメチルスズクロリド、トリメチルスズブロミド、トリエチルスズクロリド、トリエチルスズブロミド、ジ-t-ブチルスズジクロリド、ジ-t-ブチルスズジブロミド、ジ-n-ブチルスズジクロリド、ジ-n-ブチルスズジブロミド、トリ-n-ブチルスズクロリド、トリ-n-ブチルスズブロミド、メチルマグネシウムヨージド、ジメチルアルミニウムヨージド、ジエチルアルミニウムヨージド、ジ-n-ブチルアルミニウムヨージド、ジイソブチルアルミニウムヨージド、ジ-n-オクチルアルミニウムヨージド、メチルアルミニウムジヨージド、エチルアルミニウムジヨージド、n-ブチルアルミニウムジヨージド、イソブチルアルミニウムジヨージド、メチルアルミニウムセスキヨージド、エチルアルミニウムセスキヨージド、イソブチルアルミニウムセスキヨージド、エチルマグネシウムヨージド、n-ブチルマグネシウムヨージド、イソブチルマグネシウムヨージド、フェニルマグネシウムヨージド、ベンジルマグネシウムヨージド、トリメチルスズヨージド、トリエチルスズヨージド、トリ-n-ブチルスズヨージド、ジ-n-ブチルスズジヨージド、またはジ-t-ブチルスズジヨージドなどが挙げられる。
【0091】
また、本発明の一実施形態に係る触媒組成物は、前記ハロゲン化物の代わりに、または前記ハロゲン化物とともに、非配位性アニオン含有化合物、または非配位性アニオン前駆体化合物を含んでもよい。
【0092】
具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物において、非配位性アニオンは、立体障害によって触媒系の活性中心と配位結合を形成しない、立体的に体積が大きいアニオンであって、テトラアリールボレートアニオンまたはフッ化テトラアリールボレートアニオンなどであってもよい。また、前記非配位性アニオンを含む化合物は、上記の非配位性アニオンとともに、トリアリールカルボニウムカチオンなどのようなカルボニウムカチオン;N,N-ジアルキルアニリニウムカチオンなどのようなアンモニウムカチオン、またはホスホニウムカチオンなどの対カチオンを含むものであってもよい。より具体的に、前記非配位性アニオンを含む化合物は、トリフェニルカルボニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルボニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレート、またはN,N-ジメチルアニリニウムテトラキス[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]ボレートなどであってもよい。
【0093】
また、前記非配位性アニオン前駆体としては、反応条件下で非配位性アニオンが形成可能な化合物であって、トリアリールホウ素化合物(BE3、この際、Eは、ペンタフルオロフェニル基または3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル基などのような、強い電子吸引性のアリール基である)が挙げられる。
【0094】
前記ステップAにおける重合はラジカル重合により行われてもよい。具体的な例として、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、または乳化重合であってもよく、より具体的な例としては、溶液重合であってもよい。さらに、他の例として、前記重合反応は、回分式および連続式の何れかの方法により行われてもよい。具体的な例として、前記共役ジエン系重合体を製造するための重合反応は、有機溶媒中で、前記触媒組成物に対して共役ジエン系単量体を投入して反応させることで行われてもよい。
【0095】
さらに他の例として、前記重合は、炭化水素系溶媒中で行われてもよい。前記炭化水素系溶媒は、触媒組成物の製造に用いられる炭化水素系溶媒の量に加えて追加で添加されてもよく、この際、前記炭化水素系溶媒は、上述のとおりである。また、前記炭化水素系溶媒の使用時に、単量体の濃度は3~80重量%、または10~30重量%であってもよい。
【0096】
本発明の一実施形態によると、前記活性重合体を製造するための重合反応時に、ポリオキシエチレングリコールホスフェートなどのような重合反応を完了させるための反応停止剤;または2,6-ジ-t-ブチルパラクレゾールなどのような酸化防止剤などの添加剤がさらに用いられてもよい。その他にも、通常、溶液重合を容易にする添加剤、具体的には、キレート剤、分散剤、pH調節剤、脱酸素剤、または酸素捕捉剤(oxygen scavenger)などのような添加剤が選択的にさらに用いられてもよい。
【0097】
さらに他の例として、前記活性重合体を製造するための重合反応は、20~200℃、または20~100℃の温度で15分~3時間、または30分~2時間行われてもよい。この範囲内である場合、反応の制御が容易であり、重合反応速度および効率に優れるとともに、製造された活性重合体のシス-1,4結合の含量が高いという効果がある。また、前記重合反応は、前記ランタン系希土類元素化合物を含む触媒組成物および重合体を失活させないように、一例として、重合反応系中に、酸素、水、炭酸ガスなどの失活作用のある化合物が混入されることを防止することが好ましい。
【0098】
上記のような重合反応の結果として、前記ランタン系希土類元素含有化合物を含む触媒から活性化された有機金属部位を含む活性重合体、より具体的には、1,3-ブタジエン単量体単位を含むネオジム触媒化共役ジエン系重合体が生成され、前記製造された共役ジエン系重合体は、擬似リビング性を有することができる。
【0099】
一方、本発明の一実施形態に係る前記製造方法は、活性重合体に変性剤を反応させる変性反応ステップをさらに含んでもよい。
【0100】
ここで、前記変性反応は、溶液反応または固相反応により行われてもよく、具体的な例として、溶液反応により行われてもよい。さらに他の例として、前記変性反応は、回分(batch)式反応器を用いて行われてもよく、多段連続式反応器やインラインミキサーなどの装置を用いて連続式で行われてもよい。
【0101】
さらに他の例として、前記変性反応は、通常、重合反応と同一の温度および圧力条件で行われ、具体的な例として、20~100℃の温度で行われてもよい。この範囲内である場合、重合体の粘度が上昇せず、重合体の活性化された末端が失活されない効果がある。
【0102】
また、前記変性剤としては、活性重合体に官能基を付与するか、またはカップリングにより分子量を上昇させることができる化合物が使用可能であり、例えば、アザシクロプロパン基、ケトン基、カルボキシル基、チオカルボキシル基、炭酸塩、カルボン酸無水物、カルボン酸金属塩、酸ハロゲン化物、尿素基、チオ尿素基、アミド基、チオアミド基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、ハロゲン化イソシアノ基、エポキシ基、チオエポキシ基、イミン基、およびY-Z結合(但し、前記Yは、Sn、Si、Ge、またはPであり、Zはハロゲン原子である)から選択される1種以上の官能基を含み、活性プロトンおよびオニウム塩を含まない化合物であってもよい。
【0103】
他の例として、前記変性剤は、下記化学式4または化学式5で表される化合物であってもよい。
【0104】
【0105】
前記化学式4または化学式5中、
Z1およびZ2は、互いに独立して、シラン基、N,N-2置換アミノフェニル基、イミン基、または環状のアミノ基であり、R1およびR7は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であり、
R3およびR6は、互いに独立して、単結合または2価の有機基であるか;それぞれR4またはR5およびR8またはR9と連結されて環を形成する3価の有機基であり、R4およびR8は、互いに独立して、1価の有機基であるか;または、それぞれR3またはR5およびR6またはR9と連結されて環を形成する2価の有機基であってもよく、R5は、1価の有機基であるか;またはR3またはR4と連結されて環を形成する2価の有機基である。
【0106】
具体的に、前記化学式4または化学式5で表される変性剤は、例えば、N-(3-トリエトキシシリルプロピル)-4,5-ジヒドロイミダゾール、N-(1,3-ジメチルブチリデン)-3-トリエトキシシリル)-1-プロパンアミン、これらのオリゴマーまたはこれらの混合物;ジメチルアミノベンジリデンエチルアミン、ジエチルアミノベンジリデンブチルアミンジメチルアミノベンジリデンアニリン、ジメチルアミノベンジリデンn-ブチルアニリン、ジメチルアミノベンジリデンドデシルアニリン、ジメチルアミノベンジリデンメトキシアニリン、ジメチルアミノベンジリデンジメチルアミノアニリン、ビス(ジメチルアミノフェニル)メチリデンブチルアミン、ビス(ジメチルアミノフェニル)メチリデンn-オクチルアミン、ビス(ジエチルアミノフェニル)メチリデンブチルアミン、ビス(ジエチルアミノフェニル)メチリデンn-オクチルアミン、ベンジリデンジメチルアミノアニリン、メトキシベンジリデンジメチルアミノアニリン、1-メチル-4-ペンテン-2-イル-メチリデンジメチルアニリン、1,3-ジメチルブチリデンジメチルアニリン、またはこれらの混合物;フェニレンビス(ジメチルアミノベンジリデンアミン);ベンジリデン(1-ヘキサメチレンイミノ)アニリン、ベンジリデン(1-ピロリジノ)アニリン、ジメチルアミノベンジリデン(1-ヘキサメチレンイミノ)アニリン、ジメチルアミノベンジリデン(1-ピロリジノ)アニリン、(1-ヘキサメチレンイミノ)ベンジリデンアニリン、(1-ピロリジノ)ベンジリデンアニリン、ベンジリデン((4-n-ブチル-1-ピペラジノ)メチル)アニリン、ベンジリデン((3-(1-メチル)ピロリジノ)メチル)アニリン、((4-n-ブチル-1-ピペラジノ)メチル)ベンジリデンアニリン、((3-(1-メチル)ピロリジノ)メチル)ベンジリデンアニリン、またはこれらの混合物であってもよい。
【0107】
上記の変性反応の終了後、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)のイソプロパノール溶液などを重合反応系に添加して重合反応を停止させてもよい。その後、水蒸気を供給することで溶剤の分圧を低めるスチームストリッピングなどの脱溶媒処理や真空乾燥処理を経て共役ジエン系重合体が得られる。また、上記の変性反応の結果として得られる反応生成物中には、上記の変性共役ジエン重合体とともに、変性していない、活性重合体が含まれていることがある。
【0108】
本発明の一実施形態に係る前記共役ジエン系重合体の製造方法は、製造された共役ジエン系重合体に対する沈殿および分離工程をさらに含んでもよい。前記沈殿された共役ジエン系重合体に対する濾過、分離、および乾燥工程は、通常の方法により行われてもよい。
【0109】
上記のように、本発明の一実施形態に係る共役ジエン系重合体の製造方法によると、狭い分子量分布を始めとする優れた物性的特性を有する共役ジエン系重合体、具体的な例として、ネオジム触媒化ブタジエン系重合体が製造されることができる。
【0110】
さらに、本発明は、前記共役ジエン系重合体を含むゴム組成物、および前記ゴム組成物から製造された成形品を提供する。
【0111】
本発明の一実施形態に係る前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体を0.1重量%以上100重量%以下、具体的には10重量%~100重量%、より具体的には20重量%~90重量%で含んでもよい。前記共役ジエン系重合体の含量が0.1重量%未満である場合には、結果的に、前記ゴム組成物を用いて製造された成形品、例えば、タイヤの耐磨耗性および耐クラック性などの改善効果が微小であり得る。
【0112】
また、前記ゴム組成物は、前記共役ジエン系重合体以外に、必要に応じて、他のゴム成分をさらに含んでもよく、この際、前記ゴム成分は、ゴム組成物の総重量に対して90重量%以下の含量で含まれてもよい。具体的には、前記共役ジエン系共重合体100重量部に対して、1重量部~900重量部で含まれてもよい。
【0113】
前記ゴム成分は、天然ゴムまたは合成ゴムであってもよく、例えば、前記ゴム成分は、シス-1,4-ポリイソプレンを含む天然ゴム(NR);前記一般的な天然ゴムを変性または精製した、エポキシ化天然ゴム(ENR)、脱蛋白天然ゴム(DPNR)、水素化天然ゴムなどの変性天然ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)、ブチルゴム(IIR)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリイソブチレン-コ-イソプレン、ネオプレン、ポリ(エチレン-コ-プロピレン)、ポリ(スチレン-コ-ブタジエン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン)、ポリ(スチレン-コ-イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(イソプレン-コ-ブタジエン)、ポリ(エチレン-コ-プロピレン-コ-ジエン)、ポリスルフィドゴム、アクリルゴム、ウレタンゴム、シリコンゴム、エピクロロヒドリンゴム、ハロゲン化ブチルゴムなどのような合成ゴムであってもよく、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。
【0114】
また、前記ゴム組成物は、共役ジエン系重合体100重量部に対して、0.1重量部~150重量部の充填剤を含んでもよい。前記充填剤は、シリカ系、カーボンブラック、またはこれらの組み合わせであってもよい。具体的には、前記充填剤は、カーボンブラックであってもよい。
【0115】
前記カーボンブラック系充填剤は、特に制限されるものではないが、例えば、窒素吸着比表面積(N2SA、JIS K 6217-2:2001に準じて測定)が20m2/g~250m2/gであってもよい。また、前記カーボンブラックは、ジブチルフタレート吸油量(DBP)が80cc/100g~200cc/100gであってもよい。前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積が250m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、20m2/g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微小であり得る。また、前記カーボンブラックのDBP吸油量が200cc/100gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがあり、80cc/100g未満であると、カーボンブラックによる補強性能が微小であり得る。
【0116】
また、前記シリカは、特に制限されるものではないが、例えば、湿式シリカ(含水ケイ酸)、乾式シリカ(無水ケイ酸)、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、またはコロイドシリカなどであってもよい。具体的には、前記シリカは、破壊特性の改良効果およびウェットグリップ性(wet grip)の両立効果が最も顕著な湿式シリカであってもよい。また、前記シリカは、窒素吸着比表面積(nitrogen surface area per gram、N2SA)が120m2/g~180m2/gであり、CTAB(cetyl trimethyl ammonium bromide)吸着比表面積が100m2/g~200m2/gであってもよい。前記シリカの窒素吸着比表面積が120m2/g未満であると、シリカによる補強性能が低下する恐れがあり、180m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。また、前記シリカのCTAB吸着比表面積が100m2/g未満であると、充填剤であるシリカによる補強性能が低下する恐れがあり、200m2/gを超えると、ゴム組成物の加工性が低下する恐れがある。
【0117】
一方、前記充填剤としてシリカが用いられる場合、補強性および低発熱性を改善するために、シランカップリング剤がともに用いられてもよい。
【0118】
前記シランカップリング剤としては、具体的に、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド、ビス(2-トリエトキシシリルエチル)テトラスルフィド、ビス(3-トリメトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、ビス(2-トリメトキシシリルエチル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン、3-トリメトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、2-トリエトキシシリルエチル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルベンゾリルテトラスルフィド、3-トリエトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、3-トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、ビス(3-ジエトキシメチルシリルプロピル)テトラスルフィド、3-メルカプトプロピルジメトキシメチルシラン、ジメトキシメチルシリルプロピル-N,N-ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、またはジメトキシメチルシリルプロピルベンゾチアゾリルテトラスルフィドなどが挙げられ、これらのうち何れか1つまたは2つ以上の混合物が使用可能である。より具体的には、補強性の改善効果を考慮すると、前記シランカップリング剤は、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)ポリスルフィドまたは3-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドであってもよい。
【0119】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、硫黄架橋性であってもよく、そのため、加硫剤をさらに含んでもよい。
【0120】
前記加硫剤は、具体的に、硫黄粉末であってもよく、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~10重量部で含まれてもよい。前記含量範囲で含まれる場合、加硫ゴム組成物が必要とする弾性率および強度を確保するとともに、低燃費性が得られる。
【0121】
また、本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、上記の成分の他に、ゴム工業界で通常用いられる各種添加剤、具体的には、加硫促進剤、プロセス油、可塑剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、亜鉛華(zinc white)、ステアリン酸、熱硬化性樹脂、または熱可塑性樹脂などをさらに含んでもよい。
【0122】
前記加硫促進剤としては、特に限定されないが、具体的には、M(2-メルカプトベンゾチアゾール)、DM(ジベンゾチアジルジスルフィド)、CZ(N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド)などのチアゾール系化合物、もしくはDPG(ジフェニルグアニジン)などのグアニジン系化合物が使用可能である。前記加硫促進剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~5重量部で含まれてもよい。
【0123】
また、前記プロセス油は、ゴム組成物中で軟化剤として作用するものであって、具体的には、パラフィン系、ナフテン系、または芳香族系化合物であってもよく、より具体的には、引張強度および耐磨耗性を考慮すると芳香族系プロセス油が、ヒステリシス損および低温特性を考慮するとナフテン系またはパラフィン系プロセス油が使用できる。前記プロセス油は、ゴム成分100重量部に対して100重量部以下の含量で含まれてもよく、前記含量で含まれる場合、加硫ゴムの引張強度、低発熱性(低燃費性)の低下を防止することができる。
【0124】
また、前記老化防止剤としては、具体的に、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-(1,3-ジメチルブチル)-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、6-エトキシ-2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン、またはジフェニルアミンとアセトンの高温縮合物などが挙げられる。前記老化防止剤は、ゴム成分100重量部に対して0.1重量部~6重量部で用いられてもよい。
【0125】
本発明の一実施形態に係るゴム組成物は、前記配合処方によって、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することで得られ、また、成形加工後、加硫工程により、低発熱性および耐磨耗性に優れたゴム組成物が得られる。
【0126】
これにより、前記ゴム組成物は、タイヤトレッド、アンダトレッド、サイドウォール、カーカスコーティングゴム、ベルトコーティングゴム、ビードフィラー、チェーファー、またはビードコーティングゴムなどのタイヤの各部材や、防塵ゴム、ベルトコンベア、ホースなどの各種工業用ゴム製品の製造において有用である。
【0127】
前記ゴム組成物を用いて製造された成形品は、タイヤまたはタイヤトレッドを含んでもよい。
【0128】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明する。しかし、下記実施例は、本発明を例示するためのものであって、これらのみによって本発明の範囲が限定されるものではない。
【0129】
製造例
製造例1
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdV(neodymium versatate、Nd(2-エチルヘキサノエート)3)を添加し、メチルアルミノキサン(MAO)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、および1,3-ブタジエンを、NdV:MAO:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:120:43:2~3:30のモル比となるように順に投入した後、-20℃で12時間混合することで触媒組成物を製造した。製造された触媒組成物は、-30℃~-20℃で、窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0130】
製造例2
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdVを添加し、メチルアルミノキサン(MAO)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、および1,3-ブタジエンを、VdV:MAO:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:150:48:2~3:30のモル比となるように順に投入した後、-20℃で12時間混合することで触媒組成物を製造した。製造された触媒組成物は、-30℃~-20℃で、窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0131】
製造例3
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdVを添加し、メチルアルミノキサン(MAO)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、および1,3-ブタジエンを、NdV:MAO:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:100:40:2~3:30のモル比となるように順に投入した後、-20℃で12時間混合することで触媒組成物を製造した。製造された触媒組成物は、-30℃~-20℃で、窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0132】
比較製造例1
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdVを添加し、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、および1,3-ブタジエンを、NdV:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:9~10:2~3:30のモル比となるように順に投入した後、20℃で混合することで触媒組成物を製造した。この際、触媒組成物は、重合体の製造直前に製造して直ちに使用した。
【0133】
比較製造例2
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdVを添加し、メチルアルミノキサン(MAO)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、および1,3-ブタジエンを、NdV:MAO:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:50:33:2~3:30のモル比となるように順に投入した後、-20℃で12時間混合することで触媒組成物を製造した。製造された触媒組成物は、-30℃~-20℃で、窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0134】
比較製造例3
窒素条件下で、ヘキサン溶媒中に、NdVを添加し、メチルアルミノキサン(MAO)、ジイソブチルアルミニウムヒドリド(DIBAH)、塩化ジエチルアルミニウム(DEAC)、および1,3-ブタジエンを、NdV:MAO:DIBAH:DEAC:1,3-ブタジエン=1:120:64:2~3:30のモル比となるように順に投入した後、20℃で12時間混合することで触媒組成物を製造した。製造された触媒組成物は20℃で、窒素条件下で24時間保管してから使用した。
【0135】
実施例
実施例1:共役ジエン系重合体の製造
完全に乾燥させた反応器に真空と窒素を交互に加えた後、真空状態の15Lの反応器に、ヘキサン4.2kgと1,3-ブタジエン500gを投入し、70℃に昇温した。これに、前記製造例1の触媒組成物を添加した後、60分間重合を行うことで、活性重合体を製造した。この際、1,3-ブタジエンのポリブタジエン高分子への転換率は100%であった。その後、重合停止剤1.0gが含まれたヘキサン溶液、および酸化防止剤2.0gが含まれたヘキサン溶液を添加して反応を終了させ、ブタジエン重合体を製造した。
【0136】
実施例2:共役ジエン系重合体の製造
前記実施例1において、活性重合体の製造時に、触媒組成物として前記製造例2の触媒組成物を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行ってブタジエン重合体を製造した。
【0137】
実施例3:共役ジエン系重合体の製造
前記実施例1において、活性重合体の製造時に、触媒組成物として前記製造例3の触媒組成物を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行ってブタジエン重合体を製造した。
【0138】
比較例1
未変性のNd-BRとして、BR1208(LG化学社製)を使用した。
【0139】
比較例2
未変性のNd-BRとして、CB24(Lanxess社製)を使用した。
【0140】
比較例3
前記実施例1において、活性重合体の製造時に、触媒組成物として前記比較製造例1の触媒組成物を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行ってブタジエン重合体を製造した。
【0141】
比較例4
前記実施例1において、活性重合体の製造時に、触媒組成物として前記比較製造例2の触媒組成物を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行ってブタジエン重合体を製造した。
【0142】
比較例5
前記実施例1において、活性重合体の製造時に、触媒組成物として前記比較製造例3の触媒組成物を使用したことを除き、前記実施例1と同様の方法により行ってブタジエン重合体を製造した。
【0143】
実験例
実験例1
前記実施例および比較例で製造された各重合体に対して、下記のような方法により、微細構造の分析、数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、分子量分布(MWD)、ムーニー粘度(MV)、-S/R値をそれぞれ測定した。
【0144】
1)微細構造の分析
フーリエ変換赤外分光法(FT-IR)により、共役ジエン部のシス-1,4結合の含量、トランス-1,4結合の含量、およびビニルの含量を測定した。
【0145】
具体的に、同一セルの二硫化炭素をブランクとし、5mg/mLの濃度で調製した共役ジエン系重合体の二硫化炭素溶液のFT-IR透過率スペクトルを測定した後、測定スペクトルの1130cm-1付近の最大ピーク値(a、ベースライン)、トランス-1,4結合を示す967cm-1付近の最小ピーク値(b)、ビニル結合を示す911cm-1付近の最小ピーク値(c)、およびシス-1,4結合を示す736cm-1付近の最小ピーク値(d)を用いて、それぞれの含量を求めた。
【0146】
2)重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、および分子量分布(MWD)
各重合体を、40℃の条件下でテトラヒドロフラン(THF)に30分間溶かした後、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:gel permeation chromatography)に載せて流した。この際、カラムとしては、ポリマー・ラボラトリー社(Polymer Laboratories)の商品名PLgel Olexisカラム2本とPLgel mixed-Cカラム1本を組み合わせて使用した。また、新たに交替したカラムは、何れも混床(mixed bed)タイプのカラムを使用し、ゲル浸透クロマトグラフィーの標準物質(GPC Standard material)としてはポリスチレン(Polystyrene)を使用した。
【0147】
3)ムーニー粘度(MV、ML1+4、@100℃)(MU)および-S/R(stress/relaxation)値
各重合体に対して、Monsanto社のMV2000Eにより、Large Rotorを用いて、100℃、Rotor Speed 2±0.02rpmの条件でムーニー粘度(ML1+4、@100℃)(MU)を測定した。この際、使用された試料は、室温(23±3℃)で30分以上放置した後、27±3gを採取してダイキャビティの内部に満たしておき、プラテン(Platen)を作動させてトルクを印加しながらムーニー粘度を測定した。また、トルクが解放されながら現れるムーニー粘度の変化の勾配値を測定し、前記勾配値の絶対値である-S/R値を得た。
【0148】
【0149】
表1に示されたように、本発明の一実施形態に係る触媒組成物の存在下で製造された実施例1~実施例3の重合体は、-S/R値と分子量分布の比((-S/R)/MWD)が何れも0.3以上であって、高いリニアリティを有するのに対し、比較例1~比較例5の重合体は、-S/R値と分子量分布の比が何れも0.30未満であって、相対的に低いリニアリティを有することを確認した。
【0150】
上記の結果から、本発明の一実施形態に係る共役ジエン系重合体は、本発明で提示する触媒組成物の存在下で共役ジエン系単量体を重合して製造されることにより、高いリニアリティを有することができることを確認した。
【0151】
実験例2
前記実施例で製造したブタジエン重合体、および比較例で製造したブタジエン重合体を用いてゴム組成物およびゴム試験片を製造した後、下記のような方法により、引張強度、300%モジュラス、伸び、および粘弾性特性をそれぞれ測定した。その結果を下記表2に示した。
【0152】
具体的に、前記ゴム組成物は、前記各重合体100重量部に、カーボンブラック70重量部、プロセス油(process oil)22.5重量部、老化防止剤(TMDQ)2重量部、酸化亜鉛(ZnO)3重量部、およびステアリン酸(stearic acid)2重量部を配合してそれぞれのゴム組成物を製造した。その後、前記各ゴム組成物に、硫黄2重量部、加硫促進剤(CZ)2重量部、および加硫促進剤(DPG)0.5重量部を添加し、50℃で1.5分間、50rpmで弱く混合した後、50℃のロールを用いてシート状の加硫配合物を得た。得られた加硫配合物を160℃で25分間加硫してゴム試験片を製造した。
【0153】
1)引張強度(tensile strength、kg・f/cm2)、300%モジュラス(300% modulus、kg・f/cm2)、および伸び(Elongation)
前記各ゴム組成物を150℃でt90分加硫した後、ASTM D412に準じて加硫物の引張強度、300%伸び時のモジュラス(M-300%)、および破断時の加硫物の伸びを測定した。
【0154】
2)粘弾性特性(Tanδ @60℃)
低燃費特性において最も重要なTanδ物性は、ドイツGabo社のDMTS 500Nを用いて、周波数10Hz、Prestrain 3%、Dynamic Strain 3%下で、60℃での粘弾性系数(Tanδ)を測定した。この際、60℃でのTanδ値が優れるほど、ヒステリシス損が少なく、回転抵抗性特性に優れることを意味し、すなわち、燃費性に優れることを意味する。
【0155】
【0156】
ここで、引張特性のインデックス(Index)値は、比較例2の値を100として下記数学式1により計算した。粘弾性特性のインデックス値は、比較例2の値を100として下記数学式2により計算した。
【0157】
【0158】
前記表2に示されたように、本発明の一実施形態に係る実施例1~実施例3の重合体を含むゴム組成物から製造されたゴム試験片が、比較例1~比較例5の重合体を含むゴム組成物から製造されたゴム試験片に比べて、引張特性および粘弾性特性が全般的に向上していることを確認した。
【0159】
特に、触媒組成物を除いては実施例1と同一の条件で製造された比較例3~比較例5に比べて、実施例1~実施例3の引張特性および粘弾性特性が著しく改善された。これは、本発明の一実施形態に係る共役ジエン系重合体が高いリニアリティを有することで、相対的に低いリニアリティを有する重合体に比べて配合加工性が増加し、これにより、配合物性が向上したことを表す結果である。