IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

特許7089604シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法
<>
  • 特許-シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法 図1
  • 特許-シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-14
(45)【発行日】2022-06-22
(54)【発明の名称】シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/16 20060101AFI20220615BHJP
【FI】
C01B33/16
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020570132
(86)(22)【出願日】2019-11-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-10-21
(86)【国際出願番号】 KR2019015273
(87)【国際公開番号】W WO2020130353
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2020-12-16
(31)【優先権主張番号】10-2018-0166649
(32)【優先日】2018-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】オ、キョン-シル
(72)【発明者】
【氏名】ぺク、セ-ウォン
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-335115(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第1626440(CN,A)
【文献】特開2013-067521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B33/00-33/193
H01L21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)超臨界抽出器の内部にシリカ湿潤ゲルブランケットを配置する段階;
b)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付して残留物質を排出させる段階;及び
c)前記残留物質を前記超臨界抽出器と圧力調節バルブとの間に設けられたラインフィルター(line filter)に投入して排出させる段階;を含み、
前記段階b)及び段階c)は順次に又は同時に行い、
前記段階c)は前記ラインフィルターの内部で前記残留物質間の反応で生成された塩を濾過するものであり、
前記ラインフィルターの外部表面の温度は0から50℃である、シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法。
【請求項2】
前記段階c)のラインフィルターは、塩を濾過させるための濾過膜を含み、
前記濾過膜の平均孔径は1から100μmである、請求項1に記載のシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法。
【請求項3】
前記段階c)の残留物質は、アンモニア、二酸化炭素、溶媒及び水を含む、請求項1または2に記載のシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法。
【請求項4】
前記段階c)で濾過される塩は、アンモニア、二酸化炭素及び水の反応で生成されたものである、請求項3に記載のシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法。
【請求項5】
前記超臨界乾燥方法を完了した後回収した溶媒に含まれたアンモニウムイオン(NH4 +)の量は30から300mg/kgである、請求項1~4のいずれか一項に記載のシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法。
【請求項6】
1)シリカゾルを準備する段階;
2)前記シリカゾルをブランケット基材に含浸させ、ゲル化してシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階;
3)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを表面改質する段階;及び
4)前記表面改質されたシリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付する段階;を含み、
前記超臨界乾燥は、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法によるものである、シリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項7】
前記段階4)以後、
5)前記段階4)の生成物を300℃以上の温度の減少された酸素雰囲気に暴露する段階;をさらに含む、請求項6に記載のシリカエアロゲルブランケットの製造方法。
【請求項8】
超臨界乾燥が行われる超臨界抽出器;
前記超臨界抽出器に連結されたラインフィルター;及び
前記ラインフィルターに連結された圧力調節バルブ;を含み、
前記ラインフィルターの外部表面の温度は0から50℃である、
シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥装置。
【請求項9】
前記ラインフィルターは濾過膜を含み、
前記濾過膜の平均孔径は1から100μmである、請求項8に記載のシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2018年12月20日付韓国特許出願第2018-0166649号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、超臨界乾燥時に設備内部に塩が蓄積されることを防止したシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法、及び前記超臨界乾燥方法を用いるシリカエアロゲルブランケットの製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
エアロゲル(aerogel)は、ナノ粒子で構成された高多孔性物質であって、高い空隙率と比表面積、そして低い熱伝導度を有するので、高効率の断熱材、防音材などの用途として注目されている。このようなエアロゲルは、多孔性構造によって非常に低い機械的強度を有するため、既存の断熱繊維である無機繊維又は有機繊維などの繊維状ブランケットにエアロゲルを含浸し結合させたエアロゲル複合体が開発されている。
【0004】
この中でも、シリカエアロゲルは高多孔性物質であって、高い空隙率(porosity)と比表面積を有するので、断熱材、触媒、吸音材、半導体回路の層間絶縁物質などの多様な分野での応用が期待されている。たとえ複雑な製造工程と低い機械的強度などによって商業化の速度は非常に遅いとしても、たゆまぬ研究の結果により初期的な応用商品が販売されており、断熱材を含めた市場の拡大速度がますます速くなっている。シリカエアロゲルは、多孔性構造によって低い機械的強度を有するため、通常、ガラス繊維、セラミックス繊維、又は高分子繊維などの基材とともに複合化してシリカエアロゲルブランケット又はシリカエアロゲルシートなどのような形態で製品化されている。
【0005】
一例として、シリカエアロゲルを用いたシリカエアロゲルブランケットの場合、シリカゾルのゲル化段階、熟成(エージング)段階、表面改質段階及び乾燥段階を介して製造される。
【0006】
前記ゲル化段階及び熟成段階は、一般的に塩基性触媒が用いられ、後続の表面改質段階で用いる表面改質剤が分解される場合、アンモニアなどが生成され得る。このように、超臨界乾燥以前の段階では、アンモニアが不可欠に発生するしかないが、前記アンモニアは、シリカ湿潤ゲルの製造後に行われる高圧の超臨界乾燥段階で超臨界流体として用いられる二酸化炭素と反応するようになり、アンモニウム塩、例えば、炭酸アンモニウム又は炭化水素アンモニウムなどの発生をもたらす。
【0007】
このような塩は不溶性なので、超臨界乾燥時に設備内部の超臨界抽出器の配管ラインと圧力調節バルブが連結されたラインなどに蓄積されて配管が詰まることになる虞があり、このようにライン内壁に塩が続けて蓄積される場合、高圧の運転条件で安全を脅威する要因となり得る。また、前記塩は、悪臭を誘発して作業環境を劣悪にするという問題も発生させる。
【0008】
従来には、前記問題点を解決しようと、超臨界乾燥段階で生成された塩を事後的に除去する処理方法が考案された。しかし、これは、超臨界乾燥装置以外の別途の設備を必要とし、追加の洗浄工程が必須に要求されるので連続的な超臨界乾燥工程を進める場合には適用上困難がある。
【0009】
また、アンモニアと二酸化炭素の反応を原則的に遮断するために表面改質段階の後と超臨界乾燥段階の前にアンモニアを除去する脱気法(air stripping)、減圧蒸留法などを試みたが、これも別途の装置がさらに必要であるだけでなく、工程時間をさらに長くするため、超臨界乾燥工程の経済的、時間的な側面において非効率的であるという問題がある。
【0010】
このように、超臨界乾燥段階で発生する塩を簡便で効果的に除去するための方法の開発は依然と必要な実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2005-116757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、シリカエアロゲルブランケットの超臨界乾燥時に生成される塩による超臨界乾燥工程の効率性の低下を防止するためのものであって、具体的に、超臨界乾燥工程以後に排出される残留物質の反応による塩の生成を別途のラインフィルターで起こるように誘導する超臨界乾燥方法を提供することにある。
【0013】
本発明の他の目的は、前記シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法を用いたシリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供することにある。
【0014】
本発明の他の目的は、前記シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法に用いるための超臨界乾燥装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
前記課題を解決するため、本発明は、a)超臨界抽出器の内部にシリカ湿潤ゲルブランケットを配置する段階;b)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付して残留物質を排出させる段階;及びc)前記残留物質を超臨界抽出器と圧力調節バルブとの間に設けられたラインフィルター(line filter)に投入して排出させる段階;を含み、前記段階b)及び段階c)は順次に又は同時に行い、前記段階c)はラインフィルターの内部で残留物質間の反応により生成された塩を濾過するものである、シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法を提供する。
【0016】
また、本発明は、1)シリカゾルを準備する段階;2)前記シリカゾルをブランケット基材に含浸させ、ゲル化してシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階;3)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを表面改質する段階;及び4)前記表面改質されたシリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付する段階;を含み、前記超臨界乾燥に付する段階は、本発明の超臨界乾燥方法によるものである、シリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【0017】
また、本発明は、超臨界乾燥が行われる超臨界抽出器;前記超臨界抽出器に連結されたラインフィルター;及び前記ラインフィルターに連結された圧力調節バルブ;を含む、シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥装置を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明の超臨界乾燥方法によれば、超臨界乾燥時、設備内部に塩が蓄積されることを防止して超臨界乾燥工程の運転安定性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明の超臨界乾燥方法によれば、ラインフィルターのみを分離して簡便に洗浄することができるので、洗浄の所要時間及びこれから発生するアンモニア廃水の総量を減少させることができて効率性の向上及び原価節減の効果がある。
【0020】
また、本発明の超臨界乾燥方法によれば、回収された溶媒に含まれたアンモニウムイオンの濃度が減少するので、溶媒の再使用が容易である。
【0021】
また、前記超臨界乾燥方法を用いて均一な物性を有するシリカエアロゲルブランケットを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る超臨界乾燥方法に用いられる超臨界乾燥装置を示した図である。
図2】本発明の実施例及び比較例の超臨界乾燥段階でラインフィルター及び圧力調節バルブに塩が発生した程度を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に対する理解を助けるために本発明をさらに詳しく説明する。
【0024】
本発明の説明及び特許請求の範囲に用いられた用語や単語は、通常的かつ辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自身の発明を最良の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に即して、本発明の技術的思想に適合する意味と概念に解釈されなければならない。
【0025】
[シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法]
本発明は、a)超臨界抽出器の内部にシリカ湿潤ゲルブランケットを配置する段階;b)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付して残留物質を排出させる段階;及びc)前記残留物質を超臨界抽出器と圧力調節バルブとの間に設けられたラインフィルター(line filter)に投入して排出させる段階;を含み、前記段階b)及び段階c)は順次に又は同時に行い、前記段階c)はラインフィルターの内部で残留物質間の反応で生成された塩を濾過するものである、シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法を提供する。
【0026】
段階a)
前記段階a)は、超臨界抽出器(extractor)の内部にシリカ湿潤ゲルブランケットを配置する段階であって、前記超臨界抽出器は、超臨界流体を用いてシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥が行われる高圧の装置を意味する。
【0027】
前記シリカ湿潤ゲルブランケットは、シリカゾル及びゲル化触媒溶液をブランケット用基材に含浸させてゲル化反応が完了し、それ以後、熟成段階及び表面改質段階を経て疎水化されたシリカ湿潤ゲルブランケットを意味する。
【0028】
前記シリカ湿潤ゲルブランケットを製造するための方法として、超臨界乾燥段階以前の段階は、当該技術分野で通常用いられる方法を自由に用いることができる。具体的に、本発明で後述するゲル化段階、熟成段階、表面改質段階を用いてよく、前記段階で塩基性触媒及び/又はシラザン系表面改質剤を用いる場合、本発明にさらに相応しい。
【0029】
段階b)
前記段階b)は、前記シリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付して残留物質を排出させる段階であって、具体的に、超臨界流体を用いてシリカ湿潤ゲルブランケット内部の溶媒を二酸化炭素で置換し、二酸化炭素の臨界点(critical point)以上の温度と圧力でシリカ湿潤ゲルブランケットを乾燥することにより行われてよい。
【0030】
超臨界流体としては、SF6、CHF3、CHF2OCF3などのフロン類、N2O、アルコール類、ケトン類又は二酸化炭素(CO2)などを用いることができるが、本発明は、超臨界流体として二酸化炭素を用いたときの超臨界乾燥方法であってよい。
【0031】
二酸化炭素は、常温及び常圧では気体状態であるが、臨界点と呼ばれる一定の温度及び圧力の限界を超えると、蒸発過程が起こらないため、気体と液体の区別ができない臨界状態となり、この臨界状態にある二酸化炭素を超臨界二酸化炭素と称する。超臨界二酸化炭素は、分子の密度は液体に近いが粘度は低いため、気体に近い性質を有し、拡散が速くて熱伝導性が高いため、乾燥効率が高く、乾燥工程の時間を短縮させることができる。
【0032】
本発明の一実施形態によれば、前記段階b)は、シリカ湿潤ゲルを位置させた超臨界抽出器の内部に液体状態の二酸化炭素を満たし、シリカ湿潤ゲルブランケット内部の溶媒を二酸化炭素で置換する溶媒置換の工程を含む。次いで、二酸化炭素を超臨界状態にするために一定の昇温速度、具体的に、0.1から1℃/minの昇温速度で40から70℃まで昇温させた後、二酸化炭素が超臨界状態となる圧力以上の圧力、具体的には100から150barの圧力で2時間から12時間、より具体的には2時間から6時間の間維持することができる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、前記超臨界乾燥段階の後、常圧乾燥段階をさらに含むことができる。これは、超臨界乾燥段階で完全に除去されていない少量の残留溶媒を除去し、超臨界乾燥中にゲル内部のアンモニアと二酸化炭素が触れて発生し得る塩をより効果的に除去するために任意的に追加することができる段階である。
【0034】
本発明のシリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法が前記常圧乾燥段階をさらに行う場合、本発明の常圧乾燥減量は5重量%以下であってよい。前記常圧乾燥減量とは、超臨界乾燥段階の後、シリカエアロゲルブランケットに存在する残留溶媒を除去するためにさらに行う常圧乾燥前後の重量変化率を示すものであって、下記式で計算することができる。
【0035】
-常圧乾燥減量(重量%)=[(超臨界乾燥後のエアロゲルブランケット重量 - 超臨界乾燥の後に常圧乾燥を追加で行った後のエアロゲルブランケット重量)/(超臨界乾燥後のエアロゲルブランケット重量)]×100

段階c)
前記段階c)は、前記残留物質を超臨界抽出器と圧力調節バルブとの間に設けられたラインフィルター(line filter)に投入して排出させる段階であって、具体的に、前記ラインフィルターの内部で残留物質間の反応により生成された塩を濾過する段階である。
【0036】
本発明の一実施形態によれば、前記残留物質は、アンモニア、二酸化炭素、溶媒及び水を含む。
【0037】
前記アンモニアは、シリカ湿潤ゲルを製造する工程中に発生するものであって、前述のとおり、ゲル化段階及び/又は熟成段階の塩基性触媒から由来されることがあり、これ以外にも表面改質段階で表面改質剤としてシラザン系化合物を用いる場合、表面改質剤が分解されながら発生することがある。
【0038】
また、超臨界流体として用いられた二酸化炭素、超臨界抽出段階で溶媒置換の工程によって排出された溶媒、前記溶媒として極性溶媒を用いることにより、これに含有されている水などが残留物質に含まれている。
【0039】
一般的な超臨界乾燥の方法では、超臨界抽出器でシリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥した後、超臨界抽出器から排出される残留物質、例えば、超臨界状態の二酸化炭素、ゲル内部に存在するアンモニア、超臨界乾燥時に二酸化炭素と置換された溶媒、水などが超臨界抽出器から排出されラインに沿って流れるようになり、圧力調節バルブを経ながら二酸化炭素は超臨界状態から再び気体状態に変わるようになり、分離器(separator)では溶媒を回収するようになる。
【0040】
前記過程の間、超臨界抽出器から排出された残留物質に含まれているアンモニア、二酸化炭素及び水が反応することにより、炭化水素アンモニウム(ammonium bicarbonate、(NH4)HCO3)が生成されてよく、追加的な反応を介して炭酸アンモニウム(ammonium carbonate、(NH42CO3)もまた生成されてよい。これらは白色又は半透明の固まり、結晶、粉末の不溶性塩であって、圧力調節バルブを通過する際にラインの内部に蓄積されて円滑な流れを妨害するようになり、アンモニア特有の悪臭も誘発する。
【0041】
本発明では、超臨界抽出器と圧力調節バルブとの間にラインフィルターを設けることにより、残留物質から生成された塩が圧力調節バルブに到達する前にラインフィルターで濾過されるようにすることで、圧力調節バルブのみならず、超臨界乾燥装置の他の配管に塩が詰まることを防止した。
【0042】
前述した段階b)及び段階c)は順次に又は同時に行ってよい。連続的に進められる超臨界乾燥の工程では、超臨界抽出器でシリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥させる同時に(段階b)、継続して排出される残留物質から生成された塩をラインフィルターで濾過することができ(段階c)、超臨界乾燥工程の効率の観点で同時に実施するのが好ましいことがある。
【0043】
前記段階c)のラインフィルターは、塩を濾過させるための濾過膜を含み、濾過膜の平均孔径は1から100μm、好ましくは10から90μm、より好ましくは20から50μmであってよい。
【0044】
前記濾過膜は、超臨界抽出器から排出された残留物質間の反応で生成された塩を濾過するためのものであって、炭化水素アンモニウム塩、炭酸アンモニウム塩が通過できないようにする大きさの直径を有するのが好ましい。
【0045】
前記孔径が1μm未満である場合、濾過膜内に塩が過度に蓄積されて二酸化炭素の流れを妨害するという問題が生じることがあり、前記孔径が100μm超過の場合、塩が濾過膜に捕集されず大部分通過することとなり、本発明の効果を具現できないという問題が生じることがある。
【0046】
前記ラインフィルターの外部表面の温度は0から50℃、0から30℃、好ましくは0から20℃、より好ましくは0から15℃であってよい。
【0047】
前記温度が0℃未満の場合、圧力調節バルブを通過した後に低くなった温度を高めるための加熱に過度に多くのエネルギーを消耗することとなり、前記温度が50℃超過の場合、ラインフィルターでの塩の生成が円滑に起こり得ないので、他の位置の配管から塩が発生して蓄積されることを効果的に防止することができないことがある。
【0048】
前述のアンモニア、二酸化炭素及び水の反応は低温で活発に起こり、特に、炭化水素アンモニウム塩、炭酸アンモニウム塩などは生成後にも熱がある環境で容易に分解される。
【0049】
本発明で、ラインフィルターの温度を周辺の温度に合わせて冷却させなくとも、ラインフィルター自体で圧力降下によって内部の温度が低くなるので、超臨界抽出器から排出された残留物質は、ラインフィルターを経ながら塩を形成し、これらは濾過膜に詰まるようになって、相対的に超臨界乾燥装置の他の配管に蓄積される塩の量は確実に低くなる。
【0050】
また、ラインフィルターでより多くの量の塩が生成されるようにして本発明の長所を最大化させるためには、ラインフィルターの内部及び外部の温度を低温に設定して炭化水素アンモニウム塩、炭酸アンモニウム塩などの発生を促進させることが重要である。具体的に、冷却以後、ラインフィルターの外部表面の温度は0から50℃、0から30℃、好ましくは0から20℃、より好ましくは0から15℃であってよい。
【0051】
本発明の超臨界乾燥方法を用いる場合、超臨界乾燥方法を完了した後で回収した溶媒に含まれているアンモニウムイオン(NH4 +)の量は30から300mg/kg、好ましくは30から150mg/kg、より好ましくは30から100mg/kg、さらに好ましくは30から50mg/kgであってよい。
【0052】
本発明の超臨界乾燥方法を用いる場合、ラインフィルターで多量の塩を生成して濾すようになるので、相対的にラインフィルターを通過した以後の流れにはアンモニア、すなわちアンモニウムイオンが殆ど存在せず、したがって、回収した溶媒内に残留するアンモニウムイオンの量も顕著に減るようになり、溶媒の再使用が容易である。
【0053】
また、本発明の超臨界乾燥方法を用いる場合、超臨界乾燥装置の内部の所々に塩が詰まるようになり、超臨界乾燥工程を完了した後に全ての装置を洗浄しなければならなかった従来の方法と異なり、ラインフィルターのみを分離して洗浄すればよいので、使用者の便宜性を高めただけでなく、洗浄の過程で発生するアンモニア廃水の総量も減少させ、環境の保護及び効率性の向上の長所がある。
【0054】
[シリカエアロゲルブランケットの製造方法]
本発明は、1)シリカゾルを準備する段階;2)前記シリカゾルをブランケット基材に含浸させ、ゲル化してシリカ湿潤ゲルブランケットを製造する段階;3)前記シリカ湿潤ゲルブランケットを表面改質する段階;及び4)前記表面改質されたシリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥に付する段階;を含み、
前記超臨界乾燥に付する段階は、前述の超臨界乾燥方法によるものである、シリカエアロゲルブランケットの製造方法を提供する。
【0055】
段階1)
前記段階1)は、シリカゾルを準備する段階であって、シリカゾルは、シリカ前駆体、アルコール及び酸性水溶液を混合して製造されるものであってよい。
【0056】
前記シリカ前駆体は、シリコン含有アルコキシド系化合物であってよく、具体的に、テトラメチルオルトシリケート(tetramethyl orthosilicate;TMOS)、テトラエチルオルトシリケート(tetraethyl orthosilicate;TEOS)、メチルトリエチルオルトシリケート(methyl triethyl orthosilicate)、ジメチルジエチルオルトシリケート(dimethyl diethyl orthosilicate)、テトラプロピルオルトシリケート(tetrapropyl orthosilicate)、テトライソプロピルオルトシリケート(tetraisopropyl orthosilicate)、テトラブチルオルトシリケート(tetrabutyl orthosilicate)、テトラセカンダリーブチルオルトシリケート(tetra secondary butyl orthosilicate)、テトラターシャリーブチルオルトシリケート(tetra tertiary butyl orthosilicate)、テトラヘキシルオルトシリケート(tetrahexyl orthosilicate)、テトラシクロヘキシルオルトシリケート(tetracyclohexyl orthosilicate)、テトラドデシルオルトシリケート(tetradodecyl orthosilicate)などのようなテトラアルキルシリケートであってよい。より具体的に、前記シリカ前駆体は、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)であってよい。
【0057】
前記シリカ前駆体は、シリカゾル内に含まれるシリカの含量が0.1重量%から30重量%となる量で用いられてよいが、これに制限されない。前記シリカの含量が0.1重量%未満であれば、最終的に製造されるシリカエアロゲルブランケットでシリカエアロゲルの含量が低すぎて目的とする水準の断熱効果を期待することができないという問題があり、30重量%を超過する場合、過度なシリカエアロゲルの形成により、ブランケットの機械的物性、特に柔軟性が低下する虞がある。
【0058】
前記アルコールは、具体的にメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような一価アルコール;又はグリセロール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、及びソルビトールなどのような多価アルコールであってよく、これらの中でいずれか1つ又は2つ以上の混合物が用いられてよい。この中でも水及びエアロゲルとの混和性を考慮するとき、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールなどのような炭素数1から6の一価アルコール、例えば、エタノールであってよい。
【0059】
前記のようなアルコール(極性有機溶媒)は、表面改質反応を促進させる同時に、最終的に製造されるシリカエアロゲルでの疎水化度を考慮し、通常の技術者が適切な含量で用いてよい。
【0060】
前記酸性水溶液は、後述のシリカゾルのゲル化を促進させることができる。酸性水溶液に含まれる酸触媒は、具体的に硝酸、塩酸、酢酸、硫酸及びフッ酸などのような1種以上の無機酸を含むことができ、以後、シリカゾルのゲル化を促進させ得る含量で用いてよい。
【0061】
段階2)
前記段階2)は、シリカゾルをブランケット基材に含浸させ、ゲル化してシリカ湿潤ゲルを製造するためのものであって、段階1)のシリカゾルに塩基性触媒を添加した後、ブランケット用基材に含浸させて行ってよい。
【0062】
本発明で、ゲル化(gelation)は、シリカ前駆体物質から網状構造を形成させることであってよく、前記網状構造(network structure)は、原子の配列が1種あるいはそれ以上の種類からなっている、ある特定の多角形が連結された平面網状の構造、又は特定の多面体の頂点、角、面などを共有して3次元骨格の構造を形成している構造を示すものであってよい。
【0063】
前記ゲル化反応を誘導するために使用可能な塩基性触媒は、シリカゾルのpHを増加させてゲル化を促進する役割を担う。
【0064】
前記塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの無機塩基;又は水酸化アンモニウムのような有機塩基を挙げることができるが、無機塩基の場合、化合物内に含まれている金属イオンがSi-OH化合物に配位(coordination)される虞があるので、有機塩基が好ましいといえる。
【0065】
具体的に、前記有機塩基は、水酸化アンモニウム(NH4OH)、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAH)、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド(TPAH)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(TBAH)、メチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノイソプロピルアミン、ジエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、トリブチルアミン、コリン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、2-アミノエタノール、2-(エチルアミノ)エタノール、2-(メチルアミノ)エタノール、N-メチルジエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノール、ニトリロトリエタノール、2-(2-アミノエトキシ)エタノール、1-アミノ-2-プロパノール、トリエタノールアミン、モノプロパノールアミン、又はジブタノールアミンなどを挙げることができ、2つ以上の混合物が用いられてよい。より具体的に、前記塩基は水酸化アンモニウム(NH4OH)であってよい。
【0066】
前記塩基性触媒は、シリカゾルのpHが4から8となるようにする量で含まれてよい。前記シリカゾルのpHが前記範囲を外れる場合、ゲル化が容易でないか、ゲル化速度が過度に遅くなって工程性が低下する虞がある。また、前記塩基は、固体状で投入される時に析出される虞があるので、前記段階1)のアルコール(極性有機溶媒)によって希釈された溶液状で添加されるのが好ましいといえる。
【0067】
前述のとおり、前記ゲル化段階で用いる塩基性触媒から発生するアンモニアは、本発明の超臨界乾燥方法を介してラインフィルターで二酸化炭素と反応して塩を生成することができる。
【0068】
前記シリカゾルのゲル化は、ブランケット用基材にシリカゾルが含浸された状態で起こり得る。
【0069】
前記含浸は、ブランケット用基材を収容することができる反応容器内でなされてよく、前記反応容器にシリカゾルを注ぐか、シリカゾル入りの反応容器内にブランケット用基材を入れて浸す方法で含浸させることができる。このとき、ブランケット用基材とシリカゾルの結合を良くするために、ブランケット用基材を軽く押して十分に含浸されるようにすることができる。その後、一定の圧力でブランケット用基材を一定の厚さに加圧して余剰のシリカゾルを除去することで、以後の乾燥時間を短縮することもできる。
【0070】
前記ブランケット用基材は、フィルム、シート、ネット、繊維、多孔質体、発泡体、不織布体又はこれらの2層以上の積層体であってよい。また、用途に応じて、その表面に表面粗さが形成されるか、パターン化されたものであってもよい。具体的に、前記ブランケット用基材は、ブランケット用基材内にシリカエアロゲルの挿入が容易な空間又は空隙を含むことにより、断熱性能をより向上させることができる繊維であってよく、低い熱伝導度を有するものを用いてよい。
【0071】
具体的に、前記ブランケット用基材は、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアラミド、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン又はこれらの共重合体など)、セルロース、カーボン、綿、毛、麻、不織布、ガラスファイバー又はセラミックウールなどであってよい。
【0072】
本発明の一実施形態によれば、前記段階2)以後、熟成(エージング)段階をさらに含むことができる。
【0073】
前記熟成は、任意的な段階であって、シリカ湿潤ゲルブランケットを適当な温度で放置して化学的変化が完全になされるようにすることにより、網状構造をさらに堅固に形成させて機械的安定性も強化させることができる。
【0074】
本発明の熟成段階は、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)、水酸化アンモニウム(NH4OH)、トリエチルアミン、ピリジンなどの塩基性触媒を有機溶媒に1から10%の濃度に希釈させた溶液内で、50から90℃の温度で1から10時間放置させて行うことであってよい。前記有機溶媒は、前記段階1)で前述したアルコール(極性有機溶媒)であってよい。
【0075】
前述したとおり、前記熟成段階で用いる塩基性触媒から発生するアンモニアは、本発明の超臨界乾燥方法を介してラインフィルターで二酸化炭素と反応して塩を生成することができる。
【0076】
段階3)
前記段階3)は、前記シリカ湿潤ゲルを表面改質する段階であって、シリカ湿潤ゲルブランケットを表面改質剤で疎水化する段階であってよい。具体的に、シリカ湿潤ゲルの表面に表面改質剤から由来された疎水化基を結合させることによりなされてよい。
【0077】
シリカエアロゲルブランケットにおいて、シリカ表面にはシラノール基(Si-OH)が存在し、この親水性のため空気中の水を吸収するようになり、熱伝導度が徐々に高くなるという短所がある。よって、空気中の水気の吸収を抑制させて低い熱伝導率を維持するためには、シリカエアロゲルの表面を予め疎水性に改質する必要性がある。
【0078】
本発明の前記表面改質剤は、シラン(silane)系化合物、シロキサン(siloxane)系化合物、シラノール(silanol)系化合物、シラザン(silazane)系化合物又はこの組み合わせであってよい。
【0079】
具体的に、トリメチルクロロシラン(Trimethylchlorosilane、TMCS)、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン(methyltrimethoxysilane)、トリメチルエトキシシラン(Trimethylethoxysilane)、ビニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン(ethyltriethoxysilane)、フェニルトリエトキシシラン(phenyltriethoxysilane)、フェニルトリメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジクロロシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどを含むシラン系化合物;ポリジメチルシロキサン、ポリジエチルシロキサン、又はオクタメチルシクロテトラシロキサンなどを含むシロキサン系化合物;トリメチルシラノール、トリエチルシラノール、トリフェニルシラノール及びt-ブチルジメチルシラノールなどを含むシラノール系化合物;1,2-ジエチルジシラザン(1,2-diethyldisilazane)、1,1,2,2-テトラメチルジシラザン(1,1,2,2-tetramethyldisilazane)、1,1,3,3-テトラメチルジシラザン(1,1,3,3-tetramethyl disilazane)、1,1,1,2,2,2-ヘキサメチルジシラザン(1,1,1,2,2,2-hexamethyldisilazane、HMDS)、1,1,2,2-テトラエチルジシラザン(1,1,2,2-tetraethyldisilazane)又は1,2-ジイソプロピルジシラザン(1,2-diisopropyldisilazane)などを含むシラザン系化合物;又はこの組み合わせであってよく、具体的にヘキサメチルジシラザンであってよい。
【0080】
特に、前記表面改質剤としてシラザン系化合物を用いる場合、これからアンモニアが発生するようになるので、これは本発明の超臨界乾燥方法を介してラインフィルターで二酸化炭素と反応して塩を生成することができる。
【0081】
前記表面改質剤は、有機溶媒に希釈させた溶液状で用いられてよく、前記有機溶媒は、段階1)で前述したアルコール(極性有機溶媒)であってよく、このとき、前記表面改質剤は、全体の希釈溶液の体積を基準に1から10体積%で希釈されてよい。
【0082】
また、前記表面改質剤は、シリカ湿潤ゲルに対して0.01から10体積%となる量で添加するものであってよい。もし、前記シリカ湿潤ゲルに対する表面改質剤の添加量が0.01体積%未満の場合、相対的にシリカ湿潤ゲル内のシラノール基(Si-OH)よりこれと反応し得る表面改質剤の量が少ないため、表面改質の反応性が低下するだけでなく、表面改質が容易になされないことがあり、よって、乾燥時に表面改質されていないシラノール基が縮合反応を起こして最終的に生成されるシリカエアロゲルの空隙の大きさが小さくなり、多孔性をなすことができないという問題が発生し得る。また、前記シリカに対する表面改質剤の添加量が10体積%を超過する場合、表面改質反応に参与しない残余表面改質剤が多量存在するようになり、高価な表面改質剤が無駄使いされて経済性が低下するという問題が発生し得る。
【0083】
前記段階3)は、50から90℃の温度、好ましくは50から70℃の温度で表面改質剤を添加し、1から10時間行うことであってよい。
【0084】
段階4)
前記段階4)は、前記表面改質されたシリカ湿潤ゲルブランケットを超臨界乾燥させる段階であって、このとき、超臨界乾燥は、本発明の超臨界乾燥方法によるものである。
【0085】
シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥方法に対する詳細な説明は、前述のとおりである。
【0086】
一方、本発明の一実施形態によるシリカエアロゲルブランケットの製造方法は、超臨界乾燥させる段階の前に洗浄する段階をさらに行ってよい。前記洗浄は、反応中に発生した不純物及び残留アンモニアなどを除去して高純度の疎水性のシリカエアロゲルを得るためのものであって、非極性有機溶媒を用いた希釈工程又は交換工程で行われてよい。
【0087】
段階5)
本発明のシリカエアロゲルブランケットの製造方法は、前記段階4)以後、5)超臨界乾燥したシリカ湿潤ゲルブランケットを300℃以上の温度の減少した酸素雰囲気に暴露する段階;をさらに含むことができる。
【0088】
前記段階5)は、超臨界乾燥したシリカ湿潤ゲルブランケットを300℃以上の温度の減少した酸素雰囲気に暴露して熱処理する段階であって、シリカ湿潤ゲルブランケットの炭化水素燃料の含量を減少させるか安定化させるためにさらに実行することができる。
【0089】
前記熱処理は、減少した酸素雰囲気で起こり得る。減少した酸素雰囲気は、10体積%以下の酸素を含む雰囲気を意味し、窒素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、アルゴン及びゼノンを含む不活性ガスの濃度が増加した陽圧の大気を含むことができる。減少した酸素雰囲気はまた、真空及び部分真空を含んで減少した酸素濃度を有する真空大気を含むことができる。減少した酸素雰囲気は、制限された燃焼が密閉雰囲気で酸素の含量の一部を消費する密閉容器に含有された大気をさらに含むことができる。
【0090】
前記減少した酸素雰囲気は、10体積%酸素以下、8体積%酸素以下、6体積%酸素以下、5体積%酸素以下、4体積%酸素以下、3体積%酸素以下、2体積%酸素以下又は1体積%酸素以下を含むことができる。また、減少した酸素雰囲気は、0.1から10体積%酸素、0.1から5体積%酸素、0.1から3体積%酸素、0.1から2体積%酸素、又は0.1から1体積%酸素を含むことができる。
【0091】
前記熱処理温度は、300から950℃、300から900℃、300から850℃、300から800℃、300から750℃、300から700℃、300から650℃、300から600℃であってよい。
【0092】
前記熱処理時間は、3時間以上、10秒から3時間、10秒から2時間、10秒から1時間、10秒から45分、10秒から30分、10秒から15分、10秒から5分、10秒から1分、1分から3時間、1分から1時間、1分から45分、1分から30分、1分から15分、1分から5分、10分から3時間、10分から1時間、10分から45分、10分から30分、10分から15分、30分から3時間、30分から1時間、30分から45分、45分から3時間、45分から90分、45分から60分、1時間から3時間、1時間から2時間、1時間から90分、又はこれら任意の2つの値の間の範囲の時間であってよい。
【0093】
具体的に、前記熱処理は、約95%から99.9%の不活性ガスを含む減少した酸素雰囲気で、約200から800℃の温度で約1分から3時間の間行うか、300から650℃の温度で約30秒から200分間、又は300から650℃の温度で約30秒から200分間行ってよい。
【0094】
[シリカエアロゲルブランケットの乾燥装置]
本発明は、超臨界乾燥が行われる超臨界抽出器;前記超臨界抽出器に連結されたラインフィルター;及び前記ラインフィルターに連結された圧力調節バルブ;を含む、シリカ湿潤ゲルブランケットの超臨界乾燥装置を提供する。ラインフィルターに対する説明は、前述したとおりである。
【0095】
具体的に、ラインフィルターは、塩を濾過するための濾過膜を含むところ、前記濾過膜の平均孔径は1から100μm、好ましくは10から90μm、より好ましくは20から50μmであってよく、ラインフィルターの外部表面の温度は0から50℃、0から30℃、好ましくは0から20℃、より好ましくは0から15℃であってよい。
【0096】
本発明の超臨界乾燥装置は、塩の生成及び濾過を誘導するためにラインフィルターをさらに備えたことが特徴であり、これを介して超臨界乾燥装置に含まれている他の種類の配管の内部には塩が蓄積されないので、安全で効率的な超臨界乾燥を行うことができる装置である。
【0097】
[実施例]
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。しかし、下記実施例は本発明を例示するためのものであり、これらだけで本発明の範囲が限定されるものではない。
【0098】
[実施例1]
1)シリカ湿潤ゲルブランケットロールの製造
75%水和されたテトラエチルオルトシリケート(HTEOS)(シリカ濃度19~20重量%)、エタノール及び水を1:2.25:0.35の重量比で混合してシリカゾルを製造した。前記シリカゾルにエタノール:アンモニア水=210:1の重量比で混合した塩基性触媒溶液を前記HTEOS対比0.44重量%添加した後、ガラス繊維(glass fiber)に含浸させてゲル化を誘導した。ゲル化の完了後、シリカゾル対比80から90体積%のアンモニア溶液(2~3vol%)を用いて50から70℃の温度で1時間放置して熟成させた後、シリカゾル対比80から90体積%のヘキサメチルジシラザン(HMDS)溶液(2~10vol%)を用いて50から70℃の温度で4時間の間放置し、熟成させてシリカ湿潤ゲルブランケットロールを製造した。
【0099】
2)シリカ湿潤ゲルブランケットロールの超臨界乾燥
前記シリカ湿潤ゲルブランケットロールを超臨界抽出器に位置させた後、60℃、100barで6時間の間超臨界乾燥を行った。ラインフィルターに含まれた濾過膜は50μmの平均孔径を有するものを用い、ラインフィルターを冷却して外部表面の温度は10℃に維持した。超臨界乾燥を完了してエタノールを回収し、50℃及び常圧条件で1時間の間さらに乾燥してシリカエアロゲルブランケットを製造した。
【0100】
[実施例2]
ラインフィルターの外部表面の温度を35から38℃としたことを除いては、実施例1と同一に行った。
【0101】
[比較例1]
ラインフィルターを用いていないことを除いては、実施例1と同一に行った。
【0102】
<実験例1>
前記実施例1、2及び比較例1の遂行を完了した後、ラインフィルター及び圧力調節バルブの内部に蓄積された塩を目視で観察した。
【0103】
図2に示したとおり、実施例1及び2のいずれもラインフィルターの内部に多量の塩が詰まっており、特に、ラインフィルターの温度を下げて塩の発生を促進させた実施例1の場合、さらに多くの量の塩が濾過膜に存在することを確認した。
【0104】
前記結果を基に、圧力調節バルブのラインを観察した結果、実施例1及び2ではいずれも塩がほとんど観察されず、特に、実施例1の場合、ラインの内部がきれいな状態で観察された。一方、ラインフィルターを用いていない比較例1の場合、圧力調節バルブのラインの内部に多量の塩が蓄積されているものと現われた。
【0105】
<実験例2>
イオンクロマトグラフィー(ion chromatography)を用いて、回収したエタノールに残留するアンモニウムイオンの量を測定した。
【0106】
【表1】
【0107】
前記表1にまとめたとおり、ラインフィルターを用いることなく超臨界乾燥工程を実施した比較例1の場合、回収したエタノールに多量のアンモニウムイオンが残留することを確認した。
【0108】
実施例2の場合、ラインフィルターを導入することにより、比較例1に比べてエタノール残留アンモニウムイオンの含量が半分以下とかなり減少したことを確認した。また、ラインフィルターの温度を10℃に下げて塩の発生をさらに促進させた実施例1の場合、実施例2よりアンモニウムイオンの含量が顕著に減少することが分かった。
【0109】
総合すると、ラインフィルターの導入によってラインフィルターで塩の発生が促進されることにより、濾過後回収したエタノールに残っているアンモニウム塩の含量は非常に減少するものと現われ、このような効果は、ラインフィルターの運転温度を下げる場合、さらに促進されるものであることが分かった。
図1
図2