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特許7089856小麦原料の製造方法及び小麦原料の製造装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】小麦原料の製造方法及び小麦原料の製造装置
(51)【国際特許分類】
   B07B 1/00 20060101AFI20220616BHJP
   B02C 13/284 20060101ALI20220616BHJP
   B07B 1/22 20060101ALI20220616BHJP
   B07B 1/28 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
B07B1/00 B
B02C13/284
B07B1/22 Z
B07B1/28 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2017193609
(22)【出願日】2017-10-03
(65)【公開番号】P2019063755
(43)【公開日】2019-04-25
【審査請求日】2020-09-23
(73)【特許権者】
【識別番号】301049777
【氏名又は名称】日清製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112427
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 芳洋
(72)【発明者】
【氏名】土井 眞
(72)【発明者】
【氏名】林 武史
(72)【発明者】
【氏名】久世 奈奈史
(72)【発明者】
【氏名】原口 悠祐
(72)【発明者】
【氏名】保阪 亜祐実
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 保
【審査官】長谷部 智寿
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-038102(JP,A)
【文献】特表2012-532751(JP,A)
【文献】特開平10-005606(JP,A)
【文献】特開平01-090074(JP,A)
【文献】特開2000-210622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B07B 1/00-15/00
B02C 1/00- 7/18
B02C 9/00-11/08
B02C 15/00-17/24
B02C 19/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の第1縦目が形成され、前記第1縦目の短手方向における縦目篩径が2.9~3.6mmである第1縦目篩を前記第1縦目の長さ方向に沿った方向に運動させる第1運動付加工程と、
前記第1縦目篩の下段に設置され、複数の第2縦目が形成され、前記第2縦目の短手方向における縦目篩径が2.9~3.6mmであり且つ前記第1縦目の短手方向における縦目篩径より小さい第2縦目篩を前記第2縦目の長さ方向に沿った方向に運動させる第2運動付加工程と、
前記第2縦目篩の下段に設置され、複数の三角目が形成された三角目篩を運動させる第3運動付加工程と、
前記第1縦目篩に小麦原料を供給する供給工程と、
前記第1縦目篩により前記小麦原料を篩って、前記小麦原料からタデ科植物の種子を分離した後に、前記第2縦目篩により前記小麦原料を篩って、前記小麦原料からタデ科植物の種子を分離する分離工程と
前記分離工程の後に、前記三角目篩により前記小麦原料を篩って、前記小麦原料から塵埃を篩下する篩下工程と、
を含むことを特徴とする小麦原料の製造方法。
【請求項2】
前記第1及び第2縦目篩は平面形状を有しており、
前記第1及び第2運動付加工程においては、前記第1及び第2縦目篩を前記縦目の長さ方向に沿った方向に振動させることを特徴とする請求項1記載の小麦原料の製造方法。
【請求項3】
前記第2運動付加工程及び前記第3運動付加工程において、1つの装置により前記第2縦目篩及び前記三角篩を運動させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の小麦原料の製造方法。
【請求項4】
複数の第1縦目が形成され、前記第1縦目の短手方向における縦目篩径が2.9~3.6mmであって、前記第1縦目の長さ方向の一方の端部が他方の端部よりも高く設置された第1縦目篩と、
前記第1縦目篩の下段に設置され、複数の第2縦目が形成され、前記第2縦目の短手方向における縦目篩径が2.9~3.6mmであり且つ前記第1縦目の短手方向における縦目篩径より小さく、前記第2縦目の長さ方向の一方の端部が他方の端部よりも高く設置された第2縦目篩と、
前記第2縦目篩の下段に設置され、複数の三角目が形成された三角目篩と、
前記第1縦目篩を前記第1縦目の長さ方向に沿った方向に振動させる第1加振装置と、
前記第2縦目篩を前記第2縦目の長さ方向に沿った方向に振動させる第2加振装置と、
前記三角篩を振動させる第3加振装置と、
前記第1縦目篩に小麦原料を供給する供給部と、
前記第1縦目篩及び第2縦目篩により分離された小麦を排出する第1排出部と、
前記第1縦目篩及び第2縦目篩により分離されたタデ科植物の種子を排出する第2排出部と、を備え、
前記第1縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を分離した後に、前記第2縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を分離し、
前記第2縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を分離した後に、前記三角目篩により前記小麦原料を篩って、前記小麦原料から塵埃を篩下することを特徴とする小麦原料の製造装置。
【請求項5】
前記第1縦目篩及び第2縦目篩は、平面形状を有することを特徴とする請求項4記載の小麦原料の製造装置。
【請求項6】
前記第2加振装置及び前記第3加振装置は、1つの装置であることを特徴とする請求項4または請求項5記載の小麦原料の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、縦目篩を用いて小麦原料から夾雑物であるタデ科植物の種子を分離する小麦原料の製造方法及び小麦原料の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より我が国では、国内で消費される小麦の大半を海外から輸入される輸入小麦に依存している。輸入小麦の小麦原料は、輸入元の国において収穫時、搬送時の管理が我が国ほど十分に行われないことが多い。このため、収穫時や搬送時に小麦原料に、他の植物の茎や種子、土砂等の夾雑物が混入する場合がある。小麦原料に他の植物の茎や種子、土砂等の夾雑物が混入している場合、小麦粉の品質低下や食味の悪化等が生じるため他の植物の茎や種子、土砂等の夾雑物を小麦原料から除去する必要がある。なお夾雑物を分離するには比重や重量、粒径等の物理的性質の差異を利用して行う。ここで穀物から夾雑物を篩を用いて分離する分離装置は、例えば特許文献1などに開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平6-281430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、さまざまな物理的性質の差異を利用しても小麦粒と物理的な性質が近いために小麦原料から精度よく分離することが困難な一部の夾雑物が存在する。例えばタデ科植物の種子がこれにあたる。小麦原料である小麦は、一般には長さ5.7~6.2mm、幅3.3~3.5mm、厚さ2.6~2.8の大きさであり、タデ科植物の種子の中で小麦に大きさが近いものは、一般には長さ5.4~7.2mm、幅3.3~4.8mm、厚さ3.1~4.3の大きさで、タデ科植物の種子の中で小麦に大きさが近いものについては、小麦原料から精度よく分離することが難しいという問題があった。
【0005】
本発明の目的は、小麦原料から夾雑物であるタデ科植物の種子を精度よく分離することができる小麦原料の製造方法及び小麦原料の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の小麦原料の製造方法は、複数の縦目が形成された縦目篩を前記縦目の長さ方向に沿った方向に運動させる運動付加工程と、前記縦目篩に小麦原料を供給する供給工程と、前記縦目篩により前記小麦原料を篩って、前記小麦原料からタデ科植物の種子を分離する分離工程とを含むことを特徴とする。
【0007】
また本発明の小麦原料の製造方法は、前記縦目篩は平面形状を有しており、前記運動付加工程においては、前記縦目篩を前記縦目の長さ方向に沿った方向に振動させることを特徴とする。
【0008】
また本発明の小麦原料の製造方法は、前記縦目篩が第1縦目篩及び該第1縦目篩の下段に設置される第2縦目篩により構成され、前記分離工程においては、前記第1縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を分離した後に、前記第2縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を更に分離することを特徴とする。
【0009】
また本発明の小麦原料の製造方法は、前記縦目篩は円筒形状を有しており、前記運動付加工程においては、前記縦目篩の前記円筒形状の中心を通る前記縦目の長さ方向と交差する方向の回転軸を中心に回転させることを特徴とする。
【0010】
また本発明の小麦原料の製造方法は、縦目篩径が2.9~3.6mmであることを特徴とする。
【0011】
また本発明の小麦原料の製造装置は、複数の縦目が形成され、前記縦目の長さ方向の一方の端部が他方の端部よりも高く設置された平面形状を有する縦目篩と、前記縦目篩を前記縦目の長さ方向に沿った方向に振動させる加振装置と、前記縦目篩に小麦原料を供給する供給部と、前記縦目篩により分離された小麦を排出する第1排出部と、前記縦目篩により分離されたタデ科植物の種子を排出する第2排出部とを備えることを特徴とする。
【0012】
また本発明の小麦原料の製造装置は、前記縦目篩が第1縦目篩及び該第1縦目篩の下段に設置される第2縦目篩により構成され、前記第1縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を分離した後に、前記第2縦目篩により前記小麦原料から前記タデ科植物の種子を更に分離することを特徴とする。
【0013】
また本発明の小麦原料の製造装置は、複数の縦目が形成された円筒形状の縦目篩であって、前記縦目篩の前記円筒形状の中心を通る前記縦目の長さ方向と交差する方向の回転軸の一方の端部が他方の端部よりも高く設置された縦目篩と、前記縦目篩を前記回転軸を中心として回転させる駆動装置と、前記縦目篩に小麦原料を供給する供給部と、前記縦目篩により分離された小麦を排出する第1排出部と、前記縦目篩により分離されたタデ科植物の種子を排出する第2排出部とを備えることを特徴とする。
【0014】
また本発明の小麦原料の製造装置は、縦目篩径が2.9~3.6mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の小麦原料の製造方法及び小麦原料の製造装置によれば、小麦原料から夾雑物であるタデ科植物の種子を精度よく分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1の実施の形態に係る夾雑物分離装置の内部構成を側方から視た図である。
図2】第1の実施の形態に係る夾雑物分離装置に配置される上網枠を示す図である。
図3】第1の実施の形態に係る夾雑物分離装置に配置される上網枠の一部を拡大した図である。
図4】第1の実施の形態に係る夾雑物分離装置に配置される中間網枠を示す図である。
図5】第1の実施の形態に係る夾雑物分離装置に配置される中間網枠の一部を拡大した図である。
図6】第1の実施の形態に係る試験篩を用いて原料を篩下させる実験を行った場合の実験結果を示す図である。
図7】第1の実施の形態に係る夾雑物分離装置を用いて小麦原料からタデ科植物の種子等の夾雑物を除去する精選処理を示すフローチャートである。
図8】第2の実施の形態に係る夾雑物分離装置の概略を示す図である。
図9】第2の実施の形態に係る縦目円筒篩装置の内部構造を側方から視た図である。
図10】第2の実施の形態に係る縦目円筒篩を示す図である。
図11】第2の実施の形態に係る縦目円筒篩を円筒状に加工する前の矩形状の縦目篩を示す図である。
図12】第2の実施の形態に係る縦目円筒篩に形成された縦目を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態に係る小麦原料の製造方法及び小麦原料の製造装置について説明する。図1は、第1の実施の形態に係る小麦原料の製造装置である夾雑物分離装置の内部構成を側方から視た図である。図1に示すように、夾雑物分離装置2は、後述する上網枠6aを傾斜させて収納する上部本体6、後述する中間網枠8xと下網枠8yを傾斜させて収納する下部本体8、及び上部本体6と下部本体8を所定の位置に保持する架台4を備えている。
【0018】
上部本体6は、略直方体状の筐体から成り、紙面左側の端部が紙面右側の端部よりも高くなるように、架台4に配置されている。ここで、上部本体6の紙面左側の上端部には、小麦原料を供給する第1供給口6bが形成され、上部本体6の内部には、第1供給口6bから供給された小麦原料から混合物を分離する矩形状の上網枠6aが配置されている。
【0019】
また、上部本体6の紙面右側の下端部には、上網枠6aを篩下しなかった混合物を排出する第1排出口6c、及び上網枠6aを篩下した小麦原料(即ち、茎、メイズ、大豆等の混合物を除いた小麦原料)を排出する第2排出口6dが形成されている。
【0020】
下部本体8もまた略直方体状の筐体から成り、紙面右側の端部が紙面左側の端部よりも高くなるように、架台4に配置されている。ここで、下部本体8の紙面右側の端部の上方には、第2排出口6dから排出された小麦原料を下部本体8に供給する第2供給口8aが形成されている。
【0021】
また、下部本体8の内部の上段には、第2供給口8aから供給された小麦原料からタデ科植物の種子等の夾雑物を分離する矩形の平面状の中間網枠8xが配置され、下部本体8の内部の下段には、中間網枠8xを篩下した小麦原料(即ち、夾雑物を除いた小麦原料)から更に塵埃を分離する矩形状の下網枠8yが配置されている。
【0022】
また、下部本体8の紙面左側の端部には、中間網枠8xを篩下しなかった夾雑物を排出する第3排出口8b、下網枠8yを篩下しなかった小麦(即ち、小麦原料から塵埃を除去して得られた小麦)を排出する第4排出口8c、及び下網枠8yを篩下した塵埃を排出する第5排出口8dが形成されている。
【0023】
図2は、上網枠6aを示す図である。図2に示すように、上網枠6aは、ステンレス等の金属により構成された矩形の平面状の網枠であり、上網枠6aの表面にはパンチング加工された複数の縦目6zが格子状に形成されている。なお、上網枠6aは、縦目6zが長手方向に傾斜するように上部本体6内に配置される。即ち上網枠6aは、縦目6zの長さ方向の一方の端部が他方の端部よりも高く設置されている。
【0024】
図3は、上網枠6aの一部の拡大した図である。図3に示すように、縦目6zは、一方向に長い形状を有し、両端が半円状に形成されている。なお、図3には、全長さ24.7mm、直線部分の長さ21.0mm、幅(以下、縦目篩径という。)3.7mmのサイズの縦目6zが長手方向に3.5mmの間隔、かつ短手方向に3.2mmの間隔で加工された上網枠6aが示されている。
【0025】
図4は、中間網枠8xを示す図である。中間網枠8xは、上網枠6aと同様にステンレス等の金属により構成された矩形の平面状の網枠であり、中間網枠8xの表面にはパンチング加工された複数の縦目8zが格子状に形成されている。中間網枠8xは、縦目8zが長手方向に傾斜するように下部本体8内に配置される。即ち中間網枠8xは、縦目8zの長さ方向の一方の端部が他方の端部よりも高く設置されている。
【0026】
図5は、中間網枠8xの一部の拡大した図である。図5には、全長さ24.5mm、直線部分の長さ21.0mm、縦目篩径3.5mmのサイズの縦目8zが長手方向に3.5mmの間隔、かつ短手方向に3.2mmの間隔で加工された中間網枠8xが示されている。
【0027】
なお、ここでは図示しないが、下網枠8yもまた、ステンレス等の金属により構成された矩形状の砂網枠であり、下網枠8yの表面にはパンチング加工された複数の三角形の三角目が形成されている。
【0028】
図6は、縦目を有する図示しない試験用の篩(以下、試験篩という。)を用いて原料を篩下させる実験を行った場合の実験結果を示す図である。ここで、実験は、500gの原料を試験篩で60秒間手ぶるいして行なったものであり、試験篩を交換しながら縦目篩径を1.5mm~5.0mmの間で変化させて行なった。また、原料には、小麦として1CW(No.1 Canada Western)、WW(Western White)、ASW(Australian Standard White)、DNS(Dark Northern Spring)、CAD(canadian umber durum)、DS(domestic = 国内麦)、及びタデ科植物の種子(図6ではタデ科植物の種子をAで示す。)を用いた。なお、実験で用いた500gの原料は、約5kgの原料を縮分器で3度縮分して得られたものである。
【0029】
図6の実験結果によれば、縦目篩径が3.5mmの縦目を有する試験篩を用いて原料を篩下させた場合において、小麦の累積篩下粒度が約100%となり、タデ科植物の種子の累積篩下粒度が約10%となる。また、縦目篩径が3.6mmの縦目を有する試験篩を用いて原料を篩下させた場合において、小麦の累積篩下粒度が100%となり、タデ科植物の種子の累積篩下粒度が約15%となる。このため、縦目篩径が3.5mmまたは3.6mmの縦目を有する中間網枠8xを用いることにより、タデ科植物の種子の混入濃度が極めて低く純度の高い小麦を回収できることがわかる。
【0030】
ここで縦目篩径は、分離を必要とする目的、精度によって選択することができる。例えば、小麦全量を通過させるがタデ科の植物の種子の一定割合の通過を許すような用途であれば、小麦が全量通過するように、例えば縦目篩径を3.5~3.6mmにすることができる。また小麦が篩上に残り、タデ科の植物の種子側に分類されるが、タデ科の植物の種子を全量分離したい場合には、タデ科の植物の種子が全量通過しないように、例えば縦目篩径を2.9~3.1mmにすることができる。また小麦原料の品種、銘柄等によって小麦粒の粒度分布が異なるため、その小麦原料の品種、銘柄等に合わせた最適な縦目篩径を選択することができる。更に適宜2.9~3.6mmの間の縦目篩径を選択できるのは当然である。
【0031】
次に、小麦原料の製造装置である夾雑物分離装置2を用いて小麦原料からタデ科植物の種子等の夾雑物を除去する小麦原料の製造方法について、図1、及び図7に示すフローチャートを参照しながら説明する。なお図7においてはタデ科植物の種子をAで示す。ここで、小麦原料へのタデ科植物の種子混入率は100ppm想定とする。また、以下では、縦目篩径が3.7mmの縦目6zを有する上網枠6aを上部本体6内に配置し、縦目篩径が3.5mmの縦目8zを有する中間網枠8x、及び一辺の長さが2mmの三角目を有する下網枠8yを下部本体8内に配置した場合を例に説明する。
【0032】
まず、小麦の精選工程においては、夾雑物分離装置2により上部本体6及び下部本体8を加振装置(図示せず)により、上部本体6に収容されている上網枠6aの縦目6z及び下部本体8に収容されている中間網枠8xの縦目8z長さ方向に沿った方向に振動させる。そして精選ラインの本流から小麦原料が第1供給口6bに供給される。次に、第1供給口6bに供給された小麦原料は、上網枠6aによって篩われる。これにより、茎、メイズ、大豆等の混合物が上網枠6aを篩下せずにオーバー側に残り、混合物が除かれた小麦原料が上網枠6aを篩下する。オーバー側に残った混合物は、第1排出口6cから排出されて廃棄され、上網枠6aを篩下した小麦原料は、上部本体6の底面を伝って第2排出口6dから排出される。
【0033】
次に、上部本体6の第2排出口6dから排出された小麦原料は、下部本体8の第2供給口8aに供給され、中間網枠8xによって篩われる。これにより、タデ科植物の種子等の夾雑物Aが中間網枠8xを篩下せずにオーバー側に残り、夾雑物Aが除かれた小麦原料が中間網枠8xを篩下する。オーバー側に残ったタデ科植物の種子等の夾雑物Aは、第3排出口8bから排出される。
【0034】
中間網枠8xを篩下した小麦原料は、更に下網枠8yによって篩われる。これにより、ダスト等の塵埃が下網枠8yを篩下し、塵埃が除かれた小麦がオーバー側に残る。ダスト等の塵埃は、下部本体8の底面を伝って第5排出口8dから排出された後に廃棄される。一方、オーバー側に残った小麦は、第4排出口8cから排出される。
【0035】
本発明の夾雑物分離装置2によれば、縦目篩径が3.5mmの縦目8zを有する中間網枠8xを下部本体8内に配置することにより、小麦原料からタデ科植物の種子を精度よく分離することができる。このため、タデ科植物の種子の混入量を、夾雑物分離装置2に小麦原料を供給した時点の1/10に減少させることができ、小麦原料中のタデ科植物の種子の混入率を10ppm以下に収めることができる。また、上網枠6aで茎、メイズ、大豆等の混合物を分離し、下網枠8yによってダスト等の塵埃を除去することにより、純度の高い小麦を回収することができる。
【0036】
また、上述の夾雑物分離装置2において、縦目篩径が3.6mmの縦目8zを有する中間網枠8xを下部本体8内に配置してもよい。この場合、中間網枠8xのオーバー側に小麦が残らないようにすることができ、小麦原料に含まれる全ての小麦を回収することができる。
【0037】
また縦目篩径が3.5mmまたは3.6mmの中間網枠8xを下部本体8内に所定の間隔で2枚重ねて設置してもよい。この場合には更に精度よく小麦原料からタデ科植物の種子を分離することができる。
【0038】
次に、図面を参照して本発明の第2の実施の形態に係る小麦原料の製造装置である夾雑物分離装置について説明する。図8は、夾雑物分離装置の概略を示す図である。図8に示すように、夾雑物分離装置22は、後述する縦目円筒篩25を収納する縦目円筒篩装置24、櫛型のフィルタ(図示せず)を用いてタデ科植物の種子等の夾雑物から石や茎等の不純物を分離する櫛型分離装置26、風力を用いて重比重物と軽比重物を分離する円筒型風量選別機28、整列フィーダ30、画像検査装置32、及び図示しない流量計を備えている。
【0039】
図9は、縦目円筒篩装置24の内部構造を側方から視た図である。図9に示すように、縦目円筒篩装置24は、略直方体状の筐体24aを備えている。筐体24a内には、小麦原料から夾雑物を分離する縦目円筒篩25、縦目円筒篩25に小麦原料を供給する供給管24cが配置されている。また、筐体24aの上部には、供給管24cを貫通させる開口部24fが形成され、供給管24cの上端部に形成された供給口24gが筐体24aの上部から露出している。また、筐体24aの長手方向の両端部には、縦目円筒篩25を回転させるシャフト24hを貫通させる図示しない貫通孔が形成されている。目円筒篩25を回転させるシャフト24hは、図示しないモータ等の回転機構に接続され、予め決められた回転数で一定方向に回転させることができる。
【0040】
また、筐体24aの下部には、縦目円筒篩25を篩下した小麦原料を排出するための第1ホッパー37、及び縦目円筒篩25を篩下しなかった夾雑物を排出する第2ホッパー38が配置されている。
【0041】
図10は、縦目円筒篩25を示す図である。縦目円筒篩25は、図11に示す矩形状の縦目篩40を円筒状に加工した篩である。縦目円筒篩25はステンレス等の金属により構成され、表面にはパンチング加工された複数の縦目25aが形成されている。ここで、縦目円筒篩25は、供給管24c側の端部が第2ホッパー38側の端部よりも高くなるように、回転軸Xを水平面Hに対して1.5°傾斜させて回転できるように体24a内に配置されている。ここで回転軸Xは、縦目円筒篩25の円筒形所の中心を通る、縦目25aの長さ方向と交差する方向の中心軸である。なお傾斜角度は、スペーサー等を利用して用途に応じて容易に変えることが可能である。
【0042】
図12は、縦目円筒篩25に形成された縦目25aを示す図である。図12に示すように、縦目25aは、一方向に長い形状を有し、長手方向の両端が半円状に形成されている。また、縦目25aは、縦目25aの中心線Yが縦目円筒篩25の回転方向と平行になるように縦目円筒篩25に形成されている。なお、図12には、長さ20mm、幅(以下、縦目篩径という。)が3.5mmのサイズの縦目25aが示されている。
【0043】
図6に示す第1の実施の形態における実験結果によれば、縦目篩径が3.5mmの縦目を有する試験篩を用いて原料を篩下させた場合において、小麦の累積篩下粒度が約100%となり、タデ科植物の種子の累積篩下粒度が約10%となる。また、縦目篩径が3.6mmの縦目を有する試験篩を用いて原料を篩下させた場合において、小麦の累積篩下粒度が100%となり、タデ科植物の種子の累積篩下粒度が約15%となる。このため、縦目篩径が3.5mmまたは3.6mmの縦目25aを有する縦目円筒篩25を用いることにより、原料からタデ科植物の種子を精度よく分離できることがわかる。
【0044】
本発明の夾雑物分離装置22によれば、縦目篩径が3.5mmの縦目25aを有する縦目円筒篩25を用いることにより、小麦原料からタデ科植物の種子を効率的に分離することができる。
【符号の説明】
【0045】
2…夾雑物分離装置、4…架台、6…上部本体、6a…上網枠、6b…第1供給口、6c…第1排出口、6d…第2排出口、6z…縦目、8…下部本体、8a…第2供給口、8b…第3排出口、8c…第4排出口、8d…第5排出口、8x…中間網枠、8y…下網枠、8z…縦目、22…夾雑物分離装置、24…縦目円筒篩装置、25…縦目円筒篩、25a…縦目
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