(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】連続化学気相堆積(CVD)マルチゾーン処理キット
(51)【国際特許分類】
C23C 16/54 20060101AFI20220616BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
C23C16/54
C23C16/455
(21)【出願番号】P 2018563155
(86)(22)【出願日】2017-06-02
(86)【国際出願番号】 US2017035712
(87)【国際公開番号】W WO2017210575
(87)【国際公開日】2017-12-07
【審査請求日】2020-05-26
(32)【優先日】2016-06-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】イシカワ, デーヴィッド エム.
(72)【発明者】
【氏名】バロウズ, ブライアン エイチ.
【審査官】宮崎 園子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/054652(WO,A1)
【文献】特公昭49-004137(JP,B1)
【文献】特開昭61-068393(JP,A)
【文献】特開平02-180735(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0170496(US,A1)
【文献】特表2012-529562(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/54
C23C 16/455
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチゾーン処理キットであって、
本体内に形成された複数の堆積ゾーンを有する本体であって、トウの動き方向に沿って繊維トウ基板を通過させるように適合された通路を形成するために連結された2つの部分から形成されている、本体、
複数のガスインレットを介して前記複数の堆積ゾーンの各々の第1の側に流体連結された1以上のガス注入導管、
複数の排気開孔を介して前記複数の堆積ゾーンの各々の第2の側に流体連結された排気導管、及び
複数の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータを備え、前記複数の加熱ゾーンのうちの1以上が、前記複数の堆積ゾーンの各々に対応する、マルチゾーン処理キット。
【請求項2】
前記複数の堆積ゾーンに隣接して対応するように配置された複数のパージゾーンを更に備える、請求項1に記載のマルチゾーン処理キット。
【請求項3】
前記1以上のガス注入導管と前記排気導管が、石英から形成されている、請求項1に記載のマルチゾーン処理キット。
【請求項4】
前記1以上のガス注入導管が、冷却されたシュラウド内に封入されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチゾーン処理キット。
【請求項5】
前記複数のガスインレットが、1以上のゾーンに
グループ分けされている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチゾーン処理キット。
【請求項6】
前記1以上のガス注入導管と前記排気導管が、前記繊維トウ基板のトウの方向と垂直にガスを流すように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチゾーン処理キット。
【請求項7】
前記1以上のガス注入導管と前記排気導管が、前記繊維トウ基板のトウの方向と平行にガスを流すように構成されている、請求項1から3のいずれか一項に記載のマルチゾーン処理キット。
【請求項8】
堆積チャンバであって、
内部空間を有するチャンバ本体、
前記チャンバ本体に連結され且つ前記内部空間の中へ延在する複数のポスト、及び
前記内部空間内に配置されたマルチゾーン処理キットを備え、前記マルチゾーン処理キットが、
本体内に形成された複数の堆積ゾーンを有する本体、
複数のガスインレットを介して前記複数の堆積ゾーンの各々の第1の側に流体連結された1以上のガス注入導管、
複数の排気開孔を介して前記複数の堆積ゾーンの各々の第2の側に流体連結された排気導管、及び
複数の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータを備え、前記複数の加熱ゾーンのうちの1以上が、前記複数の堆積ゾーンの各々に対応し、
前記マルチゾーン処理キットの前記本体が、前記複数のポストのうちの対応するものを受け入れる複数の特徴を含む、堆積チャンバ。
【請求項9】
前記複数の特徴が、繊維トウ基板のトウの方向と平行な方向における前記マルチゾーン処理キットの熱膨張を可能にするように構成されたスロットである、請求項8に記載の堆積チャンバ。
【請求項10】
前記マルチゾーン処理キットが、
前記複数の堆積ゾーンに隣接して対応するように配置された複数のパージゾーンを更に備える、請求項8に記載の堆積チャンバ。
【請求項11】
前記1以上のガス注入導管と前記排気導管が、石英から形成されている、請求項8から10のいずれか一項に記載の堆積チャンバ。
【請求項12】
前記複数のガスインレットが、1以上のゾーンに
グループ分けされている、請求項8から10のいずれか一項に記載の堆積チャンバ。
【請求項13】
前記1以上のガス注入導管と前記排気導管が、繊維トウ基板のトウの方向と垂直にガスを流すように構成されている、請求項12に記載の堆積チャンバ。
【請求項14】
前記1以上のガス注入導管と前記排気導管が、繊維トウ基板のトウの方向と平行にガスを流すように構成されている、請求項12に記載の堆積チャンバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、広くは、堆積チャンバに関し、特に、堆積チャンバ内で使用されるマルチゾーン処理キットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、繊維トウ基板上にコーティングを堆積させることによって複合材コーティングされた繊維トウを生成するために、連続化学気相堆積(CVD)が使用されている。通常、繊維トウ基板上に複数のコーティングを堆積させるために、個別のチャンバ(各材料のために1つのチャンバ)/火炎炉が必要とされる。各チャンバは、特定の材料を堆積させるのに適した1つの温度で動作する。そのようにして、繊維トウ上に種々の材料の複数のコーティングを堆積させることは、時間がかなり非効率である。
【0003】
したがって、本発明者たちは、処理チャンバ内で使用される改良された処理キットの実施形態を提供した。
【発明の概要】
【0004】
堆積チャンバ内で使用されるマルチゾーン処理キットが、本明細書で提供される。ある実施形態では、マルチゾーン処理キットが、本体内に形成された複数の堆積ゾーンを有する本体、複数のガスインレットを介して複数の堆積ゾーンの各々の第1の側に流体連結された1以上のガス注入導管、複数の排気開孔を介して複数の堆積ゾーンの各々の第2の側に流体連結された排気導管、及び複数の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータを含み、複数の加熱ゾーンのうちの1以上は、複数の堆積ゾーンの各々に対応する。
【0005】
ある実施形態では、堆積チャンバが、内部空間を有するチャンバ本体、チャンバ本体に連結され且つ内部空間の中へ延在する複数のポスト、及び内部空間内に配置されたマルチゾーン処理キットを含む。該処理キットは、本体内に形成された複数の堆積ゾーンを有する本体、複数のガスインレットを介して複数の堆積ゾーンの各々の第1の側に流体連結された1以上のガス注入導管、複数の排気開孔を介して複数の堆積ゾーンの各々の第2の側に流体連結された排気導管、及び複数の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータを含み、複数の加熱ゾーンのうちの1以上は、複数の堆積ゾーンの各々に対応し、処理キットの本体は、複数のポストのうちの対応するものを受け入れる複数の特徴を含む。
【0006】
ある実施形態では、マルチゾーン処理キットが、本体内に形成された複数の堆積ゾーンを有する本体、複数のガスインレットを介して複数の堆積ゾーンの各々の第1の側に流体連結された1以上のガス注入導管、複数の排気開孔を介して複数の堆積ゾーンの各々の第2の側に流体連結された排気導管、複数の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータを含み、複数の加熱ゾーンのうちの1以上は、複数の堆積ゾーンの各々に対応し、マルチゾーン処理キットは、更に、複数の堆積ゾーンに隣接して対応するように配置された複数のパージゾーンを含む。
【0007】
本開示の他の実施形態及び変形例が、以下で説明される。
【0008】
上記で簡潔に要約し、下記でより詳細に述べる本開示の実施形態は、付随する図面に示す本開示の例示的な実施形態を参照することにより、理解可能である。しかしながら、本開示は他の等しく有効な実施形態を許容し得ることから、添付の図面は、この開示の典型的な実施形態のみを例示しており、従って、範囲を限定していると見なされるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示のある実施形態による、堆積チャンバ内で使用される処理キットの概略図を描いている。
【
図2】本開示のある実施形態による、堆積チャンバ内で使用される処理キットの等角図を描いている。
【
図3】
図2の処理キットの一部分の概略的な断面を描いている。
【
図4】本開示のある実施形態による、堆積チャンバ内に配置された処理キットを描いている。
【
図5】本開示のある実施形態による、堆積チャンバ内で使用される処理キットの概略的な断面図を描いている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
理解を容易にするために、可能な場合には、複数の図に共通する同一の要素を指し示すために同一の参照番号を使用した。図は縮尺どおりには描かれておらず、明確性のために単純化されていることがある。一実施形態の要素及び特徴は、更なる記述がなくても、他の実施形態に有益に組み込まれ得ると想定されている。
【0011】
堆積チャンバ内で使用されるマルチゾーン処理キットの実施形態が、本明細書で提供される。本開示の処理キットは、有利なことに、個別のチャンバの必要性を消去すること及び処理キット内に複数のゾーンを提供することによって、繊維トウ基板上に複合材薄膜を堆積させるために必要とされる時間を低減させる。本開示の処理キットは、有利なことに、保守のために容易に除去可能でもある。
【0012】
図1は、本開示のある実施形態による、マルチゾーン処理キット104を有する堆積チャンバ100の概略図を描いている。ある実施形態では、堆積チャンバ100が、堆積チャンバ100のデスプール空間からスプール空間へ移動する繊維トウ基板の複数の繊維上に材料を堆積させるために使用される連続化学気相堆積(CVD)チャンバであり得る。トウの動きは、矢印120によって示されている。上述したように、本発明者たちは、各々が異なる材料を堆積させる個別のチャンバを利用するので、1つより多くの材料を繊維トウ基板上に堆積させるために一般的な処理時間が増加していることを観察した。そのようにして、本発明者たちは、各々が異なる材料を堆積させる複数の空間すなわち堆積ゾーン109、111、113を有する処理キット104を開発した。ある実施形態では、処理キット104が、そこを通ってパージガスが繊維上の任意の余剰な材料を除去するために流されるところのパージゾーン108、110、112も含み得る。処理キットは、例えば、炭化ケイ素でコーティングされたグラファイトなどの任意のプロセス対応型セラミック材料から形成され得る。
【0013】
処理キット104は、所望に各堆積ゾーンを加熱するための複数の加熱ゾーンを有するマルチゾーンヒータ106を更に含む。ある実施形態では、マルチゾーンヒータ106が、複数の堆積ゾーン109、111、113に対応する複数のゾーンを有し得る。ある実施形態では、マルチゾーンヒータ106が、代替的に、各堆積ゾーンに対応する2以上の加熱ゾーンを有し得る。
【0014】
図2は、組み立てられた処理キット104の等角図を描いている。
図2で示されているように、処理キット104は、そこを通って繊維トウ基板が通過するところの通路206を形成するために、互いに連結された第1の部分104aと第2の部分104bを有する本体を含む。
図2で描かれている実施形態では、マルチゾーンヒータ106が、3つの加熱ゾーン204a、204b、204cを含む。それらは、処理キット104内の(
図2では示されていない)堆積ゾーンに対応する。処理キット104は、堆積ゾーンの中へガスを流すために、それに対してそれぞれのガス源が連結されるところの複数のガス注入導管202a、202b、202cを更に含む。ある実施形態では、処理キット104が、繊維トウ基板上に、窒化ホウ素、シリコンがドープされた窒化ホウ素、窒化ケイ素、及び様々な炭素を含有する薄膜を堆積させるために使用される堆積チャンバ内に配置される。そのような材料の堆積を容易にするために、マルチゾーンヒータ106が処理キット104に近接して配置されて、処理キット104の各堆積ゾーンにわたる所望の加熱プロファイルを保証する。
【0015】
図3は、
図2の3‐3’線に沿って切り取られた処理キット104の概略的な断面図を描いている。明瞭さと簡潔さのために、以下の説明は、1つの堆積ゾーンに関して行われ、複数の堆積ゾーン109、111、113の各々に適用されることとなる。
図3で示されているように、ガス注入導管202cは、複数のガスインレット302を介して第3の堆積ゾーン113に連結されている。ある実施形態では、ガス注入導管202cが、石英から形成され、ガス注入導管202cと複数のガスインレット302を通過するガスを冷却する冷却剤を使用して冷却され得る。結果として、ガス注入導管202cと複数のガスインレット302内での寄生堆積が、実質的に低減され又は消去される。ある実施形態では、ガス注入導管202cが、(図示せぬ)冷却されたシュラウド内にガス注入導管202cを封入することによって冷却され得る。ある実施形態では、そこを通って冷却剤を流すための冷却チャネルが延在するところの該シュラウドが、例えば、ニッケルなどの金属から形成され得る。
【0016】
図3では、第3の堆積ゾーン113に関連して1つのガス注入導管202cが描かれているが、処理キット104は、堆積ゾーン内での混合のために且つ繊維トウ基板上への堆積のために第3の堆積ゾーン113の中へ2以上の前駆体を流す2以上のガス注入導管を含み得る。堆積ゾーン内で且つ堆積ゾーンの上流(すなわち、ガス注入導管内)ではない範囲内で前駆体ガスが混合することを可能にすることによって、(1以上の)ガス注入導管及び複数のガスインレット内での寄生堆積が更に低減される。複数のガスインレット302は、更に、処理パラメータに応じて、個別の異種のガス流又は1つの均一なガス流の分配を容易にするために、1以上のゾーンの中へグループ分けされ得る。
【0017】
処理キット104は、排気導管306に流体連結された複数の排気開孔304を含む。ある実施形態では、排気導管306も、石英から形成され、排気導管306内での寄生堆積を避けるために冷却され得る。さもなければ、排気導管306は、堆積ゾーンからの排気流を妨害することになってしまう。
【0018】
図4は、本開示のある実施形態による、堆積チャンバ400の内部空間内に配置された処理キット104を描いている。
図4で示されているように、処理キット104は、複数のポスト404を介してチャンバ本体402の内部に連結されている。複数のポストは、任意の手段(例えば、溶接、螺子など)を使用して、堆積チャンバ400の内部に固定され得る。処理キット104をチャンバ本体402に連結するために、処理キット104は、各々が対応するポスト404の端を受け入れるように構成された複数の特徴406を含み得る。ある実施形態では、複数の特徴が、処理キット104が複数のポスト404からぶら下がることを可能にするように、そこを通って複数のポスト404のうちのそれぞれのものの端が挿入されるところのスロットである。スロットは、トウの方向と平行な軸に沿った処理キットの熱膨張を可能にするように構成され得る。ある実施形態では、処理キット104が、そこを通って高温計が延在し且つトウの温度を直接的に測定するところの(図示せぬ)1以上の孔を含み得る。マルチゾーンヒータ106に供給される電力は、1以上の高温計の測定値に基づいて、より高い精度で制御され得る。
【0019】
図5は、本開示のある実施形態による処理キット504を描いている。明瞭さのために、処理キット504のうちのただ1つのゾーンが、示され説明される。処理キット504は、上述の処理キット104と実質的に類似している。但し、ガス注入導管502と排気導管506は、矢印520によって示されているトウの動きの方向と平行にガスを流すように配置されているという点が異なっている。一方、処理キット104は、トウの方向と垂直にガスを流すように構成されている。
【0020】
上記は本開示の実施形態を対象とするが、本開示の基本的な範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態及び更なる実施形態が考案され得る。