(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】有機発光素子封止用組成物およびこれから製造された有機発光表示装置
(51)【国際特許分類】
H05B 33/04 20060101AFI20220616BHJP
H01L 51/50 20060101ALI20220616BHJP
H01L 27/32 20060101ALI20220616BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20220616BHJP
G09F 9/30 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H05B33/04
H05B33/14 A
H01L27/32
C08F220/10
G09F9/30 309
G09F9/30 365
(21)【出願番号】P 2020096154
(22)【出願日】2020-06-02
【審査請求日】2020-06-02
(31)【優先権主張番号】10-2019-0065539
(32)【優先日】2019-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】李 知 娟
(72)【発明者】
【氏名】南 成 龍
(72)【発明者】
【氏名】朴 昶 遠
(72)【発明者】
【氏名】韓 明 淑
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/088654(WO,A1)
【文献】特表2019-537217(JP,A)
【文献】特表2017-536429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50
H01L 27/32
C08F 220/10
G09F 9/30
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光硬化性モノマーおよび開始剤を含み、
前記光硬化性モノマーは、シリコン系光硬化性モノマーを含まず、
前記光硬化性モノマーは、下記化学式1で表される芳香族基含有モノマー、および非芳香族基含有モノマーを含み、
前記非芳香族含有モノマーは、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、有機発光素子封止用組成物:
【化1】
前記化学式1中、
L
1~L
4は、それぞれ独立して、O
、CO、COO、NR
1(ここで、R
1は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である)、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Ar
1~Ar
4は、それぞれ独立して、非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントレニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、または置換もしくは非置換のトリフェニレニル基であり、
Z
1~Z
4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、または下記化学式2で表される基であり、この際、Z
1~Z
4のうちの少なくとも1つは、下記化学式2で表される基であり:
【化2】
前記化学式2中、
Y
1は、O
、CO、COO、またはNR
1(ここで、R
1は、水素原子、または炭
素数1~5のアルキル基である)であり、
R
2は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基であり、
pおよびqは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、
kは、0または1であり、
*は他の原子に連結される位置である;
m1~m4は、それぞれ独立して、0または1であり、
n1~n4のうちの1つまたは2つは1であり、残りは0であり、
n1~n4のうちの2つが1である場合、Z
1~Z
4のうちの2つは前記化学式2で表される基であり、これら前記化学式2で表される基は、Ar
1~Ar
4のうち存在する2つの基にそれぞれ結合する。
【請求項2】
前記化学式1中のn1~n4のうちの1つは1であり、残りは0であり、
Z
1~Z
4のうちの1つは、前記化学式2で表される基であり、残りの3つは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記化学式2中のY
1は、O
、またはCOOであり、pは0であり、qは1~4の整数である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記化学式2中のY
1は、O
、またはCOOであり、pは1~4の整数であり、qは0である、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項5】
前記化学式1で表される芳香族基含有モノマーは、下記化学式
1-11、および1-14~1-17で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【化3】
【請求項6】
前記炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、メタンジオールジ(メタ)アクリレート、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記光硬化性モノマーは、炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートをさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項9】
前記炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートは、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、およびヘキサデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記光硬化性モノマーと前記開始剤との総質量を基準として、前記化学式1で表される芳香族基含有モノマーの含有量は50質量%以上である、請求項1~9のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項11】
前記光硬化性モノマーと前記開始剤との総質量を基準として、前記開始剤の含有量は10質量%未満である、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記有機発光素子封止用組成物は、下記式1により算出される拡散性が140%~170%である、請求項1~11のいずれか1項に記載の組成物:
【数1】
(前記式1中、S1は、有機発光素子封止用組成物を13ピコリットル(picoliter)の量(volume)でインクジェットプリンタを用いて基板に滴下し、30秒経過した後の滴下物の最大粒径(単位:μm)を3回測定した値の平均値であり、
S2は、有機発光素子封止用組成物を13ピコリットルの量でインクジェットプリンタを用いて基板に滴下し、300秒経過した後の滴下物の最大粒径(単位:μm)を3回測定した値の平均値である)。
【請求項13】
下記式2により算出されるプラズマエッチング率が10%未満である、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物:
【数2】
(前記式2中、
T1は、有機発光素子封止用組成物を塗布した後に光硬化して得られる有機障壁層の初期高さであり、
T2は、有機障壁層に、ICP power:2500W、RE power:300W、DC bias:200V、Ar flow:50sccm、ethching time:1分、pressure:10mtorrでICP CVD(BMR Technology社製)を利用して誘導結合(ICP)プラズマ処理した後の有機障壁層の高さである)。
【請求項14】
有機発光素子、および
前記有機発光素子上に形成され、無機障壁層と有機障壁層とを含む障壁スタックを含み、
前記有機障壁層は、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物の硬化物を含む、有機発光表示装置。
【請求項15】
前記障壁スタックは、前記無機障壁層と前記有機障壁層とが交互に積層されている、請求項14に記載の有機発光表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機発光素子封止用組成物およびこれから製造された有機発光表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
有機発光表示装置は、発光型の表示装置であって、有機発光素子を含む。有機発光素子は、外部の水分または酸素と接するようになると、発光特性が低下することがあり、有機発光素子は封止用組成物で封止されなければならない。有機発光素子は、無機障壁層と有機障壁層とが順に形成された多層構造で封止されている。無機障壁層は、プラズマによる蒸着で形成されるが、プラズマにより有機障壁層がエッチングされることがある。このようなエッチングは、有機障壁層の封止機能に損傷を与えることがあり、これによって有機発光素子は発光特性が低下し、信頼性が低下することがある。
【0003】
一方、有機発光素子封止用組成物をインクジェットプリンタにより塗布して障壁層を形成することができる。この時、組成物がかたまるか、拡散性が良くない場合、加工性が低下し、最終的に製造された障壁層の厚さも均一でないため、表示装置に適用する際、画質に影響を与えることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】韓国公開特許第2012-0115841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、高い屈折率と高い硬化率とを有し、拡散性に優れ、硬化後のプラズマエッチング率が低い有機発光素子封止用組成物を提供することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、前記有機発光素子封止用組成物から製造された有機障壁層を含む有機発光表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、光硬化性モノマーおよび開始剤を含み、前記光硬化性モノマーは、シリコン系光硬化性モノマーを含まず、前記光硬化性モノマーは、下記化学式1で表される芳香族基含有モノマー、および非芳香族基含有モノマーを含み、前記非芳香族含有モノマーは、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含む:
【0008】
【0009】
前記化学式1中、
L1~L4は、それぞれ独立して、O、S、CO、COO、NR1(ここで、R1は水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である)、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Ar1~Ar4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
Z1~Z4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、または下記化学式2で表される基であり、この際、Z1~Z4のうちの少なくとも1つは下記化学式2で表される基であり:
【0010】
【0011】
前記化学式2中、
Y1は、O、S、CO、COO、またはNR1(ここで、R1は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である)であり、
R2は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基であり、
pおよびqは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、
kは、0または1であり、
*は、他の原子に連結される位置である;
m1~m4は、それぞれ独立して、0または1であり、
n1~n4は、それぞれ独立して、0または1であり、この際、n1~n4のうちの少なくとも1つは1である。
【0012】
前記化学式1中のAr1~Ar4は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントレニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、または置換もしくは非置換のトリフェニレニル基であり、n1~n4のうちの1つまたは2つは1であり、残りは0であってもよい。
【0013】
前記化学式1中のZ1~Z4のうちの1つは、前記化学式2で表される基であり、残りの3つは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0014】
前記化学式2中のY1は、O、S、またはCOOであり、pは0であり、qは1~4の整数であってもよい。
【0015】
前記化学式2中のY1は、O、S、またはCOOであり、pは1~4の整数であり、qは0であってもよい。
【0016】
前記化学式1で表される芳香族基含有モノマーは、下記化学式1-1~1-17で表されるモノマーからなる群より選択される少なくとも1つを含むことができる。
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
前記炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0022】
前記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、メタンジオールジ(メタ)アクリレート、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0023】
前記非芳香族含有モノマーは、炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートをさらに含むことができる。
【0024】
前記炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートは、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0025】
前記組成物中、前記光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、前記化学式1で表される芳香族基含有モノマーの含有量は、50質量%以上であってもよい。
【0026】
前記組成物内で、前記光硬化性モノマーと開始剤の総質量を基準として、前記開始剤の含有量は10質量%未満であってもよい。
【0027】
前記有機発光素子封止用組成物は、下記式1で算出される拡散性が140%~170%であってもよい。
【0028】
【0029】
(前記式1中、
S1は、有機発光素子封止用組成物を13ピコリットル(picoliter)の量でインクジェットプリンタを用いて基板に滴下し、30秒経過した後の滴下物の最大粒径(単位:μm)を3回測定した値の平均値であり、
S2は、有機発光素子封止用組成物を13ピコリットルの量でインクジェットプリンタを用いて基板に滴下し、300秒経過した後の滴下物の最大粒径(単位:μm)を3回測定した値の平均値である)。
【0030】
前記有機発光素子封止用組成物は、下記式2により算出されるプラズマエッチング率が10%未満であってもよい。
【0031】
【0032】
(前記式2中、
T1は、有機発光素子封止用組成物を塗布した後に光硬化して得られる有機障壁層の初期高さであり、
T2は、有機障壁層に、ICP power:2500W、RE power:300W、DC bias:200V、Ar flow:50sccm、ethching time:1分、pressure:10mtorrの条件でICP CVD(BMR Technology社製)を利用して誘導結合(ICP)プラズマ処理した後の有機障壁層の高さである)。
【0033】
他の一実施形態に係る有機発光表示装置は、有機発光素子、および前記有機発光素子上に形成され、無機障壁層と有機障壁層とを含む障壁スタックを含み、前記有機障壁層は、本発明の一実施形態に係る組成物の硬化物であってもよい。
【0034】
前記障壁スタックは、前記無機障壁層と前記有機障壁層とが交互に積層されたものであってもよい。
【発明の効果】
【0035】
本発明に係る有機発光素子封止用組成物は、光硬化率と拡散性とに優れて加工性が改善され、屈折率が高くて有機発光表示装置で無機膜上に形成されても正面および/または側面で輝度値を高めることができ、また硬化後のプラズマに対する耐性が強くて有機発光素子を保護して素子の信頼性を向上させることができる有機障壁層を実現することができる。また、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、モジュラスが低くてフレキシブル装置に使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】本発明の一実施形態による有機発光表示装置の断面図である。
【
図2】本発明の他の一実施形態による有機発光表示装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
添付した図面を参照して実施例により本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳細に説明する。本発明は、多様な異なる形態に実現することができ、ここで説明する実施例に限定されない。図面において本発明を明確に説明するために、説明上不要な部分は省略し、明細書全体にわたって同一または類似の構成要素については同一の図面符号を付した。
【0038】
本明細書で、「置換もしくは非置換」における「置換」は、当該官能基のうちの1つ以上の水素原子が炭素数1~10の飽和もしくは不飽和炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアリールアルコキシ基、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0039】
本明細書で、「(メタ)アクリル」は、アクリルおよび/またはメタクリルを意味し得る。
【0040】
本明細書で「アリール(aryl)基」は、環状である置換基の全ての元素がp-軌道を有しており、これらp-軌道が共役(conjugation)を形成している官能基を意味する。アリール基は、単環、非縮合型多環、または縮合型多環官能基を含む。縮合は、炭素原子が隣接した対を共有する環形態を意味する。
【0041】
アリール基は、2以上のアリール基がシグマ結合を通じて連結された形態であるビフェニル基、ターフェニル基、またはクォーターフェニル基なども含む。一実施形態において、アリール基は、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル(phenanthrenyl)基、ナフタセニル基、ピレニル(pyrenyl)基、またはクリセニル(chrysenyl)基などを意味し得る。
【0042】
具体的な例として、炭素数6~20のアリール基は、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントリル基、置換もしくは非置換のナフタセニル基、置換もしくは非置換のピレニル基、置換もしくは非置換のクリセニル基、置換もしくは非置換のビフェニル基、置換もしくは非置換のp-ターフェニル基、置換もしくは非置換のm-ターフェニル基、置換もしくは非置換のトリフェニレニル基、または置換もしくは非置換のペリレニル基などを含むことができる。
【0043】
本明細書で「有機発光素子封止用組成物」は、単に「封止用組成物」と表記されてもよい。
【0044】
有機電界発光部(OLED、Organic Light Emitting Diode)は、陽極と陰極との間に機能性有機物層が挿入された構造として、陽極に注入された正孔と陰極に注入された電子との再結合によりエネルギーが高い励起子(exiton)を形成するようになる。形成された励起子が、基底状態(ground state)に移動して特定波長の光を発生するようになる。有機電界発光部は、自発光、高速応答、広い光視野角、超薄型、高画質、耐久性などの長所を有している。このような長所により、低電圧で高輝度の発光を得るために液晶のバックライトなどに使用され、薄型平面表示デバイスとして期待されている。
【0045】
有機電界発光(EL:Electroluminescence)素子は、水分に極めて弱く、金属電界と有機EL層との界面が水分の影響で剥離されたり、金属が酸化されて高抵抗化したり、有機物自体が水分および酸素により変質したり、外部または内部で発生されるアウトガスにより有機材料および/または電極材料の酸化が起きて発光しないことがあり、また輝度が低下したりもするという問題点がある。このような問題を解決するために、有機EL素子を硬化性組成物で封止する方法が開発されている。既存の封止方法として、アクリル樹脂でモールドする方法、有機EL素子の封止樹脂中に吸湿材を添加して有機EL素子を水分から遮断する方法などが提案されている。
【0046】
本発明者らは、屈折率が高く、一定範囲の粘度を有しており、インクジェットプリンティング使用時にピンホール発生なしに有機膜を形成することができ、粘度が低くて有機膜が広がる現象を防止して加工性を改善することができ、プラズマエッチング率も低い有機膜を実現することができる有機発光素子封止用組成物を開発するために努力した。その結果、下記で説明するような本発明の一実施形態に係る組成物が、上記の目的を全て達成できることを確認して本発明を完成した。
【0047】
具体的には、本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、光硬化性モノマーおよび開始剤を含み、前記光硬化性モノマーは、シリコン系光硬化性モノマーを含まず、前記光硬化性モノマーは、下記化学式1で表される芳香族基含有モノマー、および非芳香族基含有モノマーを含み、前記非芳香族含有モノマーは、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、またはこれらの組み合わせを含むことができる:
【0048】
【0049】
前記化学式1中、
L1~L4は、それぞれ独立して、O、S、CO、COO、NR1(ここで、R1は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である)、または炭素数1~10のアルキレン基であり、
Ar1~Ar4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基であり、
Z1~Z4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、または下記化学式2で表される基であり、この際、Z1~Z4のうちの少なくとも1つは下記化学式2で表される基であり:
【0050】
【0051】
前記化学式2中、
Y1は、O、S、CO、COO、またはNR1(ここで、R1は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である)であり、
R2は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基であり、
pおよびqは、それぞれ独立して、0~10の整数であり、
kは、0または1であり、
*は、他の原子に連結される位置である;
m1~m4は、それぞれ独立して、0または1であり、
n1~n4は、それぞれ独立して、0または1であり、この際、n1~n4のうちの少なくとも1つは1である。
【0052】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、高い屈折率を有して無機膜上に形成されても正面および/または側面での輝度値を高めることができる有機膜を実現することができ、適切な粘度を有していて、インクジェットプリンティングなどを利用した印刷時に液滴の広がりが良くて加工性に優れ、これから製造される障壁層の厚さが全般的に均一で薄く、表面も均一になり得、また光硬化率に優れて加工性に優れている。また、硬化した膜は、プラズマに対する耐性が高くてプラズマエッチング率が低いため、素子に対する信頼性を向上させることができ、またモジュラスも低いため、フレキシブル装置用パネルに好適に用いられ得る。
【0053】
上記で記載したとおり、本発明の一実施形態に係る光硬化性モノマーは、シリコン(Si)を含まない非シリコン系光硬化性モノマーである。
【0054】
本発明の一実施形態に係る組成物において、上記化学式1で表される芳香族基含有モノマー、上記炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、および上記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートのうちのある1種の代わりにシリコン系光硬化性モノマーを含む場合、組成物の拡散性が良くないか、組成物のモジュラスが高くて柔軟性が低くなるという問題が発生することがある。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係る組成物において、上記化学式1で表される芳香族基含有モノマー、ならびに上記炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートおよび/または上記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートと共にシリコン系光硬化性モノマーをさらに含む場合にも、組成物の拡散性が良くないか、または組成物のモジュラスが高くて柔軟性が低くなる問題が発生することがある。
【0056】
本発明において、上記化学式1で表される芳香族基含有光硬化性モノマー、上記非芳香族含有モノマーとして炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、および開始剤は、それぞれ互いに異なる化合物である。これらは、それぞれ1種または2種以上の化合物を含むことができる。
【0057】
以下、本発明の一実施形態に係る組成物の各構成成分について詳細に説明する。
【0058】
(A)化学式1で表される芳香族基含有光硬化性モノマー
上記化学式1で表される芳香族基含有光硬化性モノマーは、封止用組成物の屈折率を1.50以上に高める効果、芳香族内のプラズマ性を有することによってプラズマCVD(plasma enhanced chemical vapor deposition)などにより有機膜がエッチングされることを防止する効果、および封止用組成物が適切な粘度を有するようにする効果を有することができる。化学式1で表されるモノマーは、単独でもまたは2種以上混合しても用いることができる。
【0059】
上記化学式1中、L1~L4は、それぞれ独立して、O、S、CO、COO、NR1(ここで、R1は、水素原子、または炭素数1~5のアルキル基である)、または炭素数1~10のアルキレン基であり、m1~m4がそれぞれ1である場合、上記基のうちの一つである連結基として存在する。一実施形態において、L1~L4は、それぞれ独立して、O、S、COO、または炭素数1~4のアルキレン基であってもよい。一方、m1~m4が、それぞれ0である場合、L1~L4は、それぞれ単結合と理解しなければならない。
【0060】
上記化学式1で、Ar1~Ar4は、それぞれ独立して、置換または非置換の炭素数6~20のアリール基であり、ここで、「アリール基」とは、上記で定義したとおりである。
【0061】
例えば、上記化学式1中のAr1~Ar4は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、置換もしくは非置換のナフチル基、置換もしくは非置換のアントラセニル基、置換もしくは非置換のフェナントレニル(phenanthrenyl)基、置換もしくは非置換のクリセニル基、または置換もしくは非置換のトリフェニレニル基などであってもよく、これらに制限されない。一実施形態において、上記化学式1中のAr1~Ar4は、それぞれ独立して、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のナフチル基であってもよい。
【0062】
上記「置換」とは、前述のように、上記アリール基の1つ以上の水素原子が、炭素数1~10の飽和または不飽和炭化水素基、炭素数6~20の芳香族炭化水素基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数6~20のアリールオキシ基、炭素数7~20のアリールアルコキシ基、ハロゲン原子(塩素原子、フッ素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、またはこれらの組み合わせで置換されたことを意味する。
【0063】
上記化学式1中のAr1~Ar4も、n1~n4がそれぞれ0または1であることによって、存在しなくても、存在してもよいが、上記n1~n4のうちの少なくとも1つは1であり、したがって、上記化学式1で表されるモノマーは、少なくとも1つのアリール基を含む。一実施形態において、n1~n4のうちの1つまたは2つは1であり、残りは0であってもよい。つまり、上記化学式1で表される化合物は、少なくとも1つのアリール基を有するか、または2つのアリール基を含むことができる。
【0064】
上記化学式1中のZ1~Z4は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10のアルキル基、または下記化学式2で表される基であるが、Z1~Z4のうちの少なくとも1つは下記化学式2で表される基である。
【0065】
【0066】
上記化学式2中、Y1、R2、p、q、k、および*は、それぞれ上記で定義したとおりである。
【0067】
上記化学式2で表される部分が、光によるラジカル反応により上記化学式1で表される化合物の重合および硬化を可能にする部分である。つまり、上記化学式2で表される基は、光硬化性部分構造に該当する。したがって、上記化学式1で表される芳香族基含有モノマーは、分子内に少なくとも1つの上記化学式2で表される部分構造を含むことができる。つまり、上記化学式1中のZ1~Z4のうちの少なくとも1つは、上記化学式2で表される基である。一実施形態において、上記化学式1中のZ1~Z4のうちの1つは、前記化学式2で表される基であり、残りの3つは、それぞれ独立して、水素原子、または炭素数1~10のアルキル基であってもよい。
【0068】
上記化学式2中のY1は、kが1である場合、O、S、またはCOOなどの連結基であってもよく、kが0である場合、単結合と理解しなければならない。
【0069】
一実施形態において、pは0であり、qは1~4の整数であるか、または、反対に一実施形態において、pは1~4の整数であり、qは0であってもよい。
【0070】
一実施形態において、上記R2は、水素原子、または炭素数1~4のアルキル基、例えば、メチル基であってもよい。本明細書で、下記に示すように、上記化学式1で表される化合物の具体的な化学式を示す場合、上記R2が水素原子であるかまたはメチル基である化学式のみを例示しても、当該技術分野における通常の知識を有する者であれば、当該化合物でR2がメチル基であるか、または水素原子である化合物も全て本発明の範囲に含まれることを理解できるはずである。
【0071】
前述のように、上記化学式1で表される化合物は、分子内に少なくとも1つのアリール基を有し、2つのアリール基を有するか、3つのアリール基を有するか、または4つのアリール基を有することもできる。また、それぞれの場合に、分子内に1つの上記化学式2で表される光硬化性部分構造を含むか、2つの光硬化性部分構造を含むか、3つの光硬化性部分構造を含むか、または4つの光硬化性部分構造を含むことができ、一実施形態において、上記化学式1で表される芳香族基含有光硬化性モノマーは、1つの光硬化性部分構造を含むことができる。
【0072】
一実施形態において、上記化学式1で表される化合物は、分子内に1つまたは2つのアリール基を有し、また上記化学式2で表される光硬化性部分構造を1つ含む光硬化性モノマーであってもよい。一実施形態において、上記化学式1で表される化合物は、分子内に1つのアリール基および1つの上記化学式2で表される光硬化性部分構造を含む光硬化性モノマーであってもよい。または、上記化学式1で表される化合物は、分子内に1つのアリール基および1つの上記化学式2で表される光硬化性部分構造を含む光硬化性モノマーと、分子内に2つ以上のアリール基、例えば、2つまたは3つのアリール基と、1つの上記化学式2で表される光硬化性部分構造を含む光硬化性モノマーとの組み合わせであってもよい。
【0073】
上記化学式1で表される化合物の具体的な例として、下記化学式1-1~1-17で表される化合物を例示することができるが、これらに制限されるものではなく、下記化合物はそれぞれ単独でも、または2種以上組み合わせて含まれてもよい。
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
上記化学式1-1~1-17で表される化合物は、光硬化性部分構造としてアクリレート基(アクリロイル基)またはメタクリレート基(メタクリロイル基)を含む特定の化合物として例示されている。しかし、上述のように、例えば、アクリレート基(アクリロイル基)を有するものと表された化合物の場合、残りの部分は同一の構造を有するが、アクリレート基(アクリロイル基)の代わりにメタクリレート基(メタクリロイル基)を有する化合物も、上記化学式1で表される光硬化性モノマーの種類に含まれてもよい。また、反対に、メタクリレート基(メタクリロイル基)を有するものと表された化合物の場合、残りの部分は同一の構造を有するが、メタクリレート基(メタクリロイル基)の代わりにアクリレート基(アクリロイル基)を有する化合物も、上記化学式1で表される光硬化性モノマーの種類に含まれ得ることを理解できるはずである。そればかりか、上記化学式1で表される化合物は、構造異性体の関係にある(メタ)アクリレート基を含む化合物も全て含む。例えば、化学式1で表されるモノマーの一例として、2-フェニルエチル(メタ)アクリレートのみが言及されているとしても、3-フェニルエチル(メタ)アクリレート、4-フェニル(メタ)アクリレートなども、全て本発明に係る組成物が含む上記化学式1で表されるモノマーの例として含まれてもよい。
【0079】
本発明の一実施形態に係る組成物において、上記化学式1で表される芳香族基含有モノマーの含有量は、光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、50質量%以上であってもよい。例えば、上記化学式1で表される芳香族基含有モノマーの含有量は、51質量%以上、例えば、52質量%以上、例えば、55質量%以上、例えば、60質量%以上、例えば、62質量%以上、例えば、63質量%以上、例えば、65質量%以上、例えば、68質量%以上、例えば、70質量%以上、例えば、72質量%以上、例えば、75質量%以上、例えば、77質量%以上、例えば、80質量%以上、例えば、85質量%以上であってもよく、これらに制限されない。
【0080】
化学式1で表される芳香族基含有モノマーを上記の含有量の範囲で含むことによって、本発明の一実施形態に係る組成物は、所望する屈折率、粘度、光硬化率、光透過率などを有することができ、これから製造された有機膜は、プラズマエッチング率が顕著に低くなり得、モジュラスが顕著に低くてフレキシブル有機発光表示装置の有機障壁層として用いられてもよく、同時に高い輝度値を示すことが期待される。
【0081】
(B)炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート
本発明の一実施形態に係る組成物は、非芳香族基含有光硬化性モノマーとして、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0082】
炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、封止用組成物に含まれて有機膜の硬化時に架橋率を高めることによって有機障壁層のプラズマエッチング率を低くし、これを含む有機発光表示装置などの信頼性を高めることができる。炭素数が20を超えるアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートが本発明の組成物に含まれる場合、組成物の拡散性が良くないか、または組成物のモジュラスが高くて柔軟性が低くなる場合がある。
【0083】
炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、シリコンを含まない非シリコン系ジ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0084】
炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、2つの(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイル基)の間に、非置換の炭素数8~20のアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含むことができる。この場合、アルキレン基の炭素数は、2つの(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイル基)の炭素を除いたアルキレン基自体にある炭素数のみを意味する。
【0085】
一実施形態において、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、下記化学式3で表され得る。
【0086】
【0087】
前記化学式3中、
R3は、炭素数8~20のアルキレン基であり、
R4およびR5は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。
【0088】
例えば、上記化学式3中のR3は、炭素数8~15のアルキレン基、例えば、炭素数8~13のアルキレン基であってもよい。
【0089】
炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートの例としては、オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ウンデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ドデカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリデカンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラデカンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0090】
本発明の一実施形態に係る組成物において、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、非芳香族基含有モノマーとして、組成物中の光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、42質量%以下、例えば、40質量%以下、例えば、38質量%以下、例えば、35質量%以下、例えば、32質量%以下、例えば、30質量%以下、例えば、28質量%以下、例えば、25質量%以下、例えば、22質量%以下、例えば、20質量%以下で含まれてもよく、例えば、10質量%以上、例えば、12質量%以上、例えば、15質量%以上含まれてもよく、これらに制限されない。
【0091】
炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートを上記の含有量の範囲で含むことによって、本発明の一実施形態に係る封止用組成物は、プラズマエッチング率が低い有機障壁層を実現することができ、硬化後にモジュラスが低くてフレキシブル表示装置に好適に用いられ、有機発光素子封止用組成物の拡散性がより良くなり得る。
【0092】
一実施形態において、炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、光硬化性モノマーおよび開始剤の総質量を基準として、15質量%~40質量%、例えば、20質量%~35質量%の範囲で含まれてもよい。
【0093】
炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、組成物中で、非芳香族基含有光硬化性モノマーとして、単独で含まれてもよく、または下記で説明する炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートと共に含まれてもよい。
【0094】
(C)炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート
本発明の一実施形態に係る組成物は、非芳香族基含有光硬化性モノマーとして、炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートを含むことができる。
【0095】
炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、上記炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートと同様に、封止用組成物に含まれて有機障壁層のプラズマエッチング率を低くし、これを含む有機発光表示装置などの信頼性を高めることができる。
【0096】
炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、シリコンを含まない非シリコン系ジ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0097】
炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、2つの(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイル基)の間に非置換の炭素数1~7のアルキレン基を有するジ(メタ)アクリレートを含むことができる。この際、アルキレン基の炭素数は、2つの(メタ)アクリレート基((メタ)アクリロイル基)の炭素を除いたアルキレン基自体にある炭素数のみを意味する。
【0098】
一実施形態において、炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、下記化学式4で表され得る。
【0099】
【0100】
前記化学式4中、
R6は、炭素数1~7のアルキレン基であり、
R7およびR8は、それぞれ独立して、水素原子またはメチル基である。
【0101】
上記化学式4中のR6は、炭素数1~7のアルキレン基であり、例えば、炭素数3~7のアルキレン基であってもよい。
【0102】
上記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートの例としては、メタンジオールジ(メタ)アクリレート、エタンジオールジ(メタ)アクリレート、プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレートなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0103】
上記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートも、非芳香族基含有モノマーとして、上記炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートと同様に、単独で含まれる場合、本発明の一実施形態に係る組成物中において、光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、42質量%以下、例えば、40質量%以下、例えば、38質量%以下、例えば、35質量%以下、例えば、32質量%以下、例えば、30質量%以下、例えば、28質量%以下、例えば、25質量%以下、例えば、22質量%以下、例えば、20質量%以下で含まれてもよく、例えば、10質量%以上、例えば、12質量%以上、例えば、15質量%以上で含まれてもよく、これらに制限されない。
【0104】
炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートを上記の含有量の範囲で含むことによって、本発明の一実施形態に係る封止用組成物は、プラズマエッチング率が低い有機障壁層を実現することができ、硬化後にモジュラスが低くてフレキシブル表示装置に好適に用いられ、有機発光素子封止用組成物の拡散性がより良くなり得る。一実施形態において、上記炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートは、光硬化性モノマーおよび開始剤の総質量を基準として、15質量%~40質量%、例えば、20質量%~35質量%の範囲で含まれてもよい。
【0105】
前述のように、本発明の一実施形態に係る組成物に含まれる非芳香族基含有モノマーとしては、上記の炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート、および/または炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート基が挙げられる。この際、これら2つの成分は、それぞれ単独で存在する場合、および2つの成分が混合して存在する場合の全てにおいて、非芳香族基含有モノマーの全体含有量が、本発明の組成物中の光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、42質量%以下である範囲内で含まれることを前提として、任意の含有量で含まれてもよい。つまり、上記2つの成分のいずれか1つの成分のみが存在する場合、前記のように、この1つの成分は光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として42質量%以下の含有量で含まれてもよく、前記2つの成分が共に存在する場合、この2つの成分の合計が、光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として42質量%以下の含有量で含まれればよい。この際、上記2つの成分の間の混合比率は特に限定されない。つまり、上記2つの成分が共に含まれる場合、これらの質量比は、1:99~99:1の範囲内で任意の比率で混合して含まれてもよい。
【0106】
炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートおよび炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートにおいて、ジアクリレートを有すると表された化合物とジメタクリレートを有すると表された化合物は、他の部分の構造が同一な場合、全て本願発明の上記化合物の範囲に属することができる。また、これらの構造異性体の全ては、本願発明の前記化合物の範囲に属することができる。
【0107】
(D)炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレート
一方、一実施形態に係る封止用組成物は、前述した炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートおよび/または炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートに加えて、非芳香族基含有光硬化性モノマーとして、炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートをさらに含むことができる。
【0108】
炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートを本発明の一実施形態に係る封止用組成物がさらに含むことによって、封止用組成物の光硬化率をより増加させることができる。また、炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートは、有機障壁層の光透過率を高めると同時に、プラズマエッチング率も低くすることができる。
【0109】
炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートは、シリコンを含まない非シリコン系モノ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0110】
炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートは、例えば、炭素数8~16のアルキル基、より好ましくは炭素数8~12のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートであってもよい。
【0111】
炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートの例としては、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、およびヘキサデシル(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種が挙げられるが、これらに制限されない。
【0112】
炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレートは、本発明の一実施形態に係る組成物において、光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、20質量%以下、例えば、17質量%以下、例えば、15質量%以下、例えば、12質量%以下、例えば、10質量%以下の含有量で含まれてもよく、例えば、1質量%以上、例えば、5質量%以上の含有量で含まれてもよく、これらに制限されない。
【0113】
(E)開始剤
開始剤は、光硬化性反応を行うことができる通常の光重合開始剤を制限なしに含むことができる。例えば、光重合開始剤は、トリアジン系、アセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサントン系、ベンゾイン系、リン系、オキシム系、またはこれらの混合物を含むことができる。開始剤は、単独でもまたは2種以上混合して含まれてもよい。
【0114】
リン系としては、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシド、ベンジル(ジフェニル)ホスフィンオキシド、またはこれらの混合物であり得る。例えば、リン系開始剤を用いる場合、本発明の組成物において、長波長の紫外線でより良い開始性能を示すことができる。
【0115】
本発明の一実施形態に係る封止用組成物において、開始剤の含有量は、光硬化性モノマーと開始剤との総質量を基準として、10質量%未満であってもよい。例えば、開始剤は、8質量%以下、例えば、7質量%以下、例えば、5質量%以下の含有量で含まれてもよく、例えば、0.5室量%以上、例えば、1質量%以上、例えば、2質量%以上、例えば、3質量%以上の含有量で含まれてもよく、これらに制限されない。開始剤を上記の含有量の範囲で含むことによって、露光時に光重合が十分に起こり得、光重合後に残った未反応開始剤により透過率が低下することを防止することができる。
【0116】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、上記(A)~(C)および(E)の成分を全て混合して製造することができ、本発明の一実施形態において、上記(D)の成分をさらに含んで混合することによって製造することができる。例えば、有機発光素子封止用組成物は、溶剤を含まない無溶剤タイプで形成することができる。
【0117】
有機発光素子封止用組成物は、光硬化型組成物として、紫外線の波長で、好ましくは10~500mW/cm2の照度で、1秒~50秒間照射されて硬化されてもよい。
【0118】
本発明の一実施形態に係る有機発光素子封止用組成物は、後述する実施例から分かるように、屈折率が1.50以上、例えば、1.50以上1.70以下、例えば、1.52以上1.65以下、例えば、1.52以上1.60以下であり、上記範囲の屈折率を有する場合、有機発光表示装置で無機膜上に形成されても正面および/または側面で輝度値を高めることができる有機膜を実現することができる。特に、本発明の封止用組成物を有機膜と無機膜とが交互に積層されるハイブリッド(hybrid)保護層を形成するために用いる場合、無機膜を通過した光が有機膜を通過しても輝度が低くなる現象を防止することができる。
【0119】
また、本発明の有機発光素子封止用組成物は、後述する実施例から分かるように、粘度が10cps(centi poise)(10mPa・s)以上、例えば、12cps(12mPa・s)~30cps(30mPa・s)、例えば、13cps(13mPa・s)~25cps(25mPa・s)、例えば、13cps(13mPa・s)~20cps(20mPa・s)となることによって、インクジェットプリンティングで使用する場合、有機膜を均一な厚さに形成することができると共に、粘度が過度に低くて有機膜が広がる現象を防止して、加工性を改善することができる。
【0120】
通常、封止用組成物の屈折率を高めようとする場合、高屈折率のモノマーまたは高屈折率の粒子を用いる。しかし、このような場合、封止用組成物の屈折率は高まるが、粘度が高くなってインクジェットプリンティングで有機膜を形成する際、問題が発生することがある。しかし、本発明の一実施形態に係る組成物は、粒子を含まず前述した屈折率と粘度の範囲とを同時に満足することができる。
【0121】
本発明の有機発光素子封止用組成物は、前述した屈折率および粘度と共に、プラズマエッチング率も低減して耐プラズマ性を高めることによって、有機膜と無機膜との形成を容易にし、プラズマによる有機発光素子の損傷を最小限にすることができる。無機膜は、プラズマによる蒸着で形成されてもよいが、この過程で有機膜がプラズマによりエッチングされる場合、有機発光素子が外部の水分および/または酸素により損傷されることがある。
【0122】
本発明の一実施形態に係る封止用組成物は、後述する実施例から分かるように、プラズマエッチング率が7%以下、例えば、6.8%以下、例えば、6.7%以下、例えば、6.5%以下、例えば、6.2%以下、例えば、6.0%以下であり得る。プラズマエッチング率が上記範囲である場合、薄膜の厚さで無機膜に蒸着する際、有機発光素子の損傷を最小限にすることができる。
【0123】
また、本発明の組成物は、光硬化率が85%以上、例えば、88%以上、例えば、89%以上、90%以上、例えば、90%~99%、具体的には91%~97%であり得る。上記範囲であれば、有機膜の硬化度が高くて外部の水分および/または酸素の浸透を防止して有機発光素子の損傷を防止し、信頼性を高めることができる。また、硬化後に硬化収縮応力が低くて移動が発生しない層を実現して、素子の封止用途として用いることができる。
【0124】
また、本発明の有機発光素子組成物は、後述する実施例から分かるように、拡散性が140%~170%であってもよい。この範囲であれば、組成物をインクジェットプリンティングにより印刷した時、組成物が固まることがなく、よく広がって加工性を高めることができ、表面が均一な有機障壁層を実現することができる。
【0125】
また、本発明の組成物は、シリコンウエハーに蒸着し、光硬化した後のプラズマに対する耐性、つまり、プラズマエッチング率が10%未満に低くなり得る。このような範囲であれば、プラズマにより形成される無機障壁層と有機障壁層とが順に形成される有機発光素子封止構造で有機発光素子の信頼性が良くなり得る。
【0126】
本発明の組成物は、硬化後、25±2℃でモジュラスが6.5GPa以下、好ましくは0.01GPa~6.5GPaであり得る。このような範囲であれば、フレキシブル有機発光表示装置に用いることができる。
【0127】
本発明の組成物は、硬化後の光透過率が95%以上、例えば、95%~99%になることができ、このような範囲で有機発光素子を封止した時、視認性を高めることができる。なお、光透過率は、可視光線領域、例えば波長550nmの光で測定した値である。
【0128】
有機発光素子封止用組成物は、有機発光素子を封止することに用いられてもよい。具体的には、無機障壁層と有機障壁層とが順に形成される封止構造で障壁スタックを形成することができる。特に、有機発光素子封止用組成物は、フレキシブル(flexible)有機発光表示装置に用いられてもよい。
【0129】
有機発光素子封止用組成物は、装置用部材、特にディスプレイ装置用部材として周辺環境の気体または液体、例えば大気中の酸素および/または水分および/または水蒸気と、電子製品として加工時に使用された化学物質の透過により分解されたり不良になったりする装置用部材の封止用途としても用いられてもよい。例えば、装置用部材は、照明装置、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザ、電気変色装置、光変色装置、マイクロ電子機械システム、太陽電池、集積回路、電荷結合装置、発光重合体、発光ダイオードなどが挙げられるが、これらに制限されない。
【0130】
本発明の有機発光表示装置は、本発明の有機発光素子封止用組成物で形成された有機障壁層を含むことができる。具体的に、有機発光表示装置は、有機発光素子、および有機発光素子上に形成され、無機障壁層と有機障壁層とを含む障壁スタックを含み、有機障壁層は、本発明の有機発光素子封止用組成物から形成されてもよい。すなわち、有機障壁層は、本発明の有機発光素子封止用組成物の硬化物を含むことが好ましい。その結果、有機発光表示装置の信頼性が良くなり得る。
【0131】
以下、
図1を参照して、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置を説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置の断面図である。
【0132】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係る有機発光表示装置100は、基板10、基板10上に形成された有機発光素子20、および有機発光素子20上に形成され、無機障壁層31と有機障壁層32とを含む障壁スタック30を含み、無機障壁層31は、有機発光素子20と接触する状態になっており、有機障壁層32は、本発明の有機発光素子封止用組成物から形成されてもよい。
【0133】
基板10は、有機発光素子が形成され得る基板であれば特に制限されない。例えば、透明ガラス、プラスチックシート、シリコン、または金属基板などの物質から形成される。
【0134】
有機発光素子20は、有機発光表示装置で通常使用されるものであって、
図1には示されていないが、第1電極、第2電極、および第1電極と第2電極との間に形成された有機発光層を含み、有機発光層は、ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層、電子注入層等が順に積層されたものであってもよいが、これに制限されない。
【0135】
障壁スタック30は、有機障壁層と無機障壁層とを含み、有機障壁層と無機障壁層とは、それぞれ層を構成する成分が互いに異なり、それぞれ有機発光素子封止機能を実現することができる。
【0136】
無機障壁層は、有機障壁層と成分が異なることによって、有機障壁層の効果を補完することができる。無機障壁層は、光透過性に優れ、水分および/または酸素遮断性に優れた無機材料で形成されてもよい。例えば、無機障壁層は、金属、非金属、金属間化合物もしくは合金、非金属間化合物もしくはその混合物、金属もしくは非金属の酸化物、金属もしくは非金属のフッ化物、金属もしくは非金属の窒化物、金属もしくは非金属の炭化物、金属もしくは非金属の酸窒化物、金属もしくは非金属のホウ化物、金属もしくは非金属の酸ホウ化物、金属もしくは非金属のシリサイド、またはこれらの混合物になることができる。金属または非金属の例としては、シリコン(Si)、アルミニウム(Al)、セレニウム(Se)、亜鉛(Zn)、アンチモン(Sb)、インジウム(In)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、ビスマス(Bi)、遷移金属、ランタノイド金属などが挙げられるが、これらに制限されない。より具体的には、無機障壁層は、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸素窒化物(SiOxNy)、ZnSe、ZnO、Sb2O3、Al2O3などを含むAlOx、In2O3、SnO2などが挙げられる。
【0137】
無機障壁層は、プラズマ工程、真空工程、例えばスパッタリング、化学気相蒸着、プラズマ化学気相蒸着、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴-プラズマ蒸気蒸着、およびこれらの組み合わせで形成されてもよい。
【0138】
有機障壁層は、無機障壁層と交互に積層される場合、無機障壁層の平滑化特性を確保し、無機障壁層の欠陥がまた他の無機障壁層に伝播することを防止することができる。
【0139】
有機障壁層は、本発明の有機発光素子封止用組成物のコーティング、蒸着、硬化などの組み合わせにより形成されてもよい。例えば、有機発光素子封止用組成物を1μm~50μmの厚さにコーティングし、10~500mW/cm2の照度で1秒~50秒間、紫外線を照射して硬化させることができる。
【0140】
障壁スタックは、有機障壁層と無機障壁層とを含むが、有機障壁層および無機障壁層の合計層数は制限されない。有機障壁層および無機障壁層の合計層数は、酸素および/または水分および/または水蒸気および/または化学物質に対する透過抵抗性の水準により変更することができる。例えば、有機障壁層および無機障壁層の合計層数は、10層以下、例えば2~7層であってもよく、具体的には、無機障壁層/有機障壁層/無機障壁層/有機障壁層/無機障壁層/有機障壁層/無機障壁層の順に7層で形成されてもよい。
【0141】
障壁スタックにおいて、有機障壁層と無機障壁層とは交互に積層されてもよい。これは、前述した組成物が有する物性により生成された有機障壁層に対する効果のためである。これによって、有機障壁層と無機障壁層とは、装置に対する封止効果を補完または強化することができる。
【0142】
以下、
図2を参照して、本発明の他の実施形態の有機発光表示装置を説明する。
図2は、本発明の他の実施形態の有機発光表示装置の断面図である。
【0143】
図2を参照すれば、本発明の他の実施形態の有機発光表示装置200は、基板10、基板10上に形成された有機発光素子20、および有機発光素子20上に形成され、無機障壁層31と有機障壁層32とを含む障壁スタック30を含み、無機障壁層31は、有機発光素子20が収容された内部空間40を封止し、有機障壁層32は、本発明の有機発光素子封止用組成物で形成されてもよい。無機障壁層が有機発光素子と接触しない点を除いては、本発明の一実施形態の有機発光表示装置と実質的に同一である。
【実施例】
【0144】
以下、実施例および比較例を通じて本発明を詳細に説明する。このような実施例は、本発明を説明するための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれらに制限されるのではなく、本発明の範囲は、本明細書に添付された特許請求の範囲のみにより決められる。
【0145】
後述する実施例および比較例で用いた光硬化性モノマーおよび開始剤は次のとおりである。
【0146】
(A)炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート:ドデカンジオールジメタクリレート(DDCDMA)(Sartomer社製)
(B)炭素数8~20のアルキル基を含有するモノ(メタ)アクリレート:ラウリルアクリレート(LA)(Sartomer社製)
(C)炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレート:ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)(Sartomer社製)
(D)トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)(Aldrich社製)
(E)化学式1で表される芳香族基含有光硬化性モノマー
(E-1)2-Phenylphenoxyethyl acrylate(Hitachi Chemical社製)
(E-2)下記化学式1-13で表される2-(Phenylthio)ethyl acrylate(chemieliva社製)
【0147】
【0148】
(E-3)下記化学式1-9で表される2-phenyl-2-(phenylthio)ethyl acrylate(chemieliva社製)
【0149】
【0150】
(E-4)下記化学式1-3で表される2-Propenoic acid、2-(triphenylmethoxy)ethyl ester(SDI社製)
【0151】
【0152】
(E-5)下記化学式1-6で表される3-Phenoxybenzyl acrylate(chemieliva社製)
【0153】
【0154】
(E-6)下記化学式1-14で表される2-Phenoxyethyl methacrylate(Aldrich社製)
【0155】
【0156】
(E-7)下記化学式1-12で表される2-Naphthalenylthioethyl acrylate(chemieliva社製)
【0157】
【0158】
(E-8)下記化学式1-17で表される2-(1-Naphthoxy)ethyl methacrylate(chemieliva社製)
【0159】
【0160】
(F)開始剤:リン系開始剤(Darocure(登録商標) TPO、BASF社製)
実施例1:有機発光素子封止用組成物の製造
上記の(B)ラウリルアクリレート(LA)(Sartomer社製)10g、(C)ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)(Sartomer社製)17g、(E-8)2-(1-Naphthoxy)ethyl methacrylate(chemieliva社製)70g、および(F)Darocure(登録商標) TPO 3gを125mLの褐色ポリプロピレン瓶に入れて、シェーカーを利用して3時間室温で混合して、封止用組成物を製造した。
【0161】
実施例2~実施例8、および比較例1~比較例3:有機発光素子封止用組成物の製造
下記表1に記載したような成分および含有量で組成物を製造したことを除いては、実施例1と同様の方法で、実施例2~実施例8、および比較例1~比較例3による封止用組成物をそれぞれ製造した。
【0162】
評価1:封止用組成物の物性評価
実施例1~実施例8、および比較例1~比較例3で製造された封止用組成物の粘度、屈折率、および拡散性を、それぞれ下記に記載した方法で測定し、その結果を下記表1に共に記載した。
【0163】
(1)粘度(単位:centi poise(cps)(mPa・s)):封止用組成物に対して、25℃で粘度計Brookfield DV-III+Rheometer(Brookfield社製)でスピンドル番号(No.spindle)40、およびRPM 10で測定した。
【0164】
(2)屈折率:封止用組成物に対して、25℃で、アッベ屈折計(Abbe refractometer)Abbe5で測定した。
【0165】
(3)拡散性(%):封止用組成物を13ピコリットルの量でインクジェットプリンタ(OMNIJET 300、Unijet社製)を用いて基板に滴下し、30秒経過した後の滴下物1滴の最大粒径(単位:μm)を3回測定して平均値(S1)を算出した。滴下速度は、2.5~3.5meter/secondである。また、封止用組成物を13ピコリットルの量でインクジェットプリンタ(OMNIJET 300、Unijet社製)を用いて基板に滴下し、300秒経過した後の滴下物1滴の最大粒径(単位:μm)を3回測定して平均値(S2)を算出し、下記式1により拡散性を評価した。
【0166】
【0167】
評価2:有機障壁層の製造および物性評価
実施例1~実施例8、および比較例1~比較例3で製造した封止用組成物を、シリコンウエハー上にスピンコーティングして有機膜を製造し、この有機膜を有機発光素子が形成されたパネルに取り付けて、下記に記載した方法で相対輝度を測定した。
【0168】
また、実施例1~実施例8、および比較例1~比較例3で製造した封止用組成物を、シリコンウエハー上に所定の厚さに塗布および光硬化して有機障壁層を形成した後、下記に記載した方法でプラズマエッチング率を測定した。測定したプラズマエッチング率、および相対輝度は下記表1に共に記載した。
【0169】
(1)相対輝度(%):有機発光素子が形成されたパネルに製造した有機膜を取り付けた後、パネルの正面を0°とし、EZcontrast(Eldim社製)を利用して、0°で輝度(luminance)値を得たる。この際、比較例1の輝度値をC、実施例または比較例で測定した輝度値をDとし、相対輝度(%)はD/C×100と計算した。相対輝度が高いほど輝度が高いことを意味する。相対輝度が105%以上である時、輝度が高いとみることができる。
【0170】
(2)プラズマエッチング率(%):形成された有機障壁層の初期高さ(T1、単位:μm)を測定し、ここにICP-CVD(BMR Technology社製)を利用して、ICP(inductively coupled plasma)power:2500W、RF(radio frequency)power:300W、DC bias:200V、Ar flow:50sccm、エッチング時間(ethching time):1分、圧力:10mtorrの条件でプラズマ処理した後、有機障壁層の高さ(T2、単位:μm)を測定し、下記式2によりプラズマエッチング率を算出した。
【0171】
【0172】
【0173】
上記表1から明らかなように、本発明の一実施形態による光硬化性モノマーとして、化学式1で表される芳香族基含有ジ(メタ)アクリレートと、非芳香族基含有モノマーとして炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートおよび/または炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートを含む実施例1~実施例8による封止用組成物は、屈折率、相対輝度、粘度、プラズマエッチング率、および拡散性の全てのデータが、比較例1~3による組成物よりも優れていることが分かる。
【0174】
具体的には、屈折率の場合、実施例1~実施例8による組成物の屈折率は全て1.50を超えることに対し、比較例1~3による組成物の屈折率は全て1.50未満である。
【0175】
相対輝度の場合、比較例1の輝度を100%基準とする時、実施例1~実施例8の場合、最も低い相対輝度が実施例1の106%であり、残りの実施例はより高い相対輝度を示す反面、比較例2と3は100%または98%であり、比較例1と同一の水準またはより低い相対輝度を示す。
【0176】
粘度は、実施例の中では、実施例7の粘度が最も低く13.4cps(13.4mPa・s)を示し、実施例1の粘度が最も高く17.4cps(17.4mPa・s)を示しており、実施例1~実施例8の組成物の全てが適切な粘度範囲を維持することが分かる。一方、比較例1~3の組成物は、最も高い粘度が比較例1の12.9cps(12.9mPa・s)であり、比較例2および3は、粘度が10cps(10mPa・s)未満と非常に低い。
【0177】
プラズマエッチング率においては、実施例1~8は全て10%未満、具体的には、7%未満の非常に低いプラズマエッチング率を示すのに対し、比較例1~3は最も小さくても15%以上であって、高いエッチング率を示す。
【0178】
最後に、組成物の拡散性は、実施例1~実施例8による組成物が158%~160%の範囲にあり、このような範囲は、有機膜形成のための加工性を良くし、インクジェット印刷時にノズルなどが詰まらないようにする範囲として適切な範囲である。一方、比較例1の拡散性は135%で、実施例に比べて非常に低く、これはインクジェット印刷時にノズルが詰まったり、液滴がよく分散しなかったりということがあり、均一な膜の形成が難しくなり得る。また、比較例2と比較例3の場合、拡散性が190%以上で、過度に高い。この場合、適切な厚さの有機膜で形成することが難しい。
【0179】
結論として、一実施形態に係る組成物は、光硬化性モノマーとして、化学式1で表される芳香族基含有ジ(メタ)アクリレートと、非芳香族基含有ジ(メタ)アクリレートである炭素数8~20のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートおよび/または炭素数1~7のアルキレン基を含有するジ(メタ)アクリレートを共に含むことによって、屈折率と相対輝度が高く、適切な範囲の粘度を有し、低いプラズマエッチング率を有し、拡散性に優れた有機発光素子封止用組成物を実現できることが分かる。
【0180】
以上で本願発明の実施例を説明したが、これは単に本願発明を例示するものであり、これによって本願発明の範囲が制限されないことが分かるだろう。また、本願発明の単なる変形や変更は、当該分野の通常の知識を有する者により容易に実施可能であり、このような変形や変更は、全て本発明の領域に含まれるとみることができる。