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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-15
(45)【発行日】2022-06-23
(54)【発明の名称】金属酸化物の低温ALDのための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/316 20060101AFI20220616BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20220616BHJP
   C23C 16/40 20060101ALI20220616BHJP
【FI】
H01L21/316 X
C23C16/455
C23C16/40
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020553507
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 US2019025975
(87)【国際公開番号】W WO2019195670
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2020-11-27
(31)【優先権主張番号】62/653,534
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ブイヤン, バスカー ジョティ
(72)【発明者】
【氏名】サリー, マーク
(72)【発明者】
【氏名】トリン, ツォン
(72)【発明者】
【氏名】バルシーヌ, ミハエラ
(72)【発明者】
【氏名】カルタラジ, ラクマル シー.
【審査官】田中 崇大
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-532917(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0010247(US,A1)
【文献】米国特許第09859153(US,B1)
【文献】特表2008-532932(JP,A)
【文献】特開2002-069639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/316
C23C 16/455
C23C 16/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
堆積方法であって、
基板に第1の金属表面を提供すること;及び
前記基板を第2の金属前駆体及びアルコールに別々に曝露して、前記第1の金属表面上に第2の金属酸化物層を形成することであって、前記第2の金属前駆体が、実質的に金属-酸素結合を含まず、前記アルコールが、前記アルコールのベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、前記ベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める、前記基板を第2の金属前駆体及びアルコールに別々に曝露して、前記第1の金属表面上に第2の金属酸化物層を形成すること
を含む、方法。
【請求項2】
前記基板が約350℃以下の温度で維持される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の金属が、コバルト、銅、ニッケル、ルテニウム、タングステン、又は白金のうちの一つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2の金属が、アルミニウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル、亜鉛、タンタル、又はチタンのうちの一つ又は複数を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の金属前駆体が、少なくとも1つのカルボ配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つのカルボ配位子が、1個から6個の炭素原子を含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の金属前駆体が、少なくとも1つのアミノ配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第2の金属前駆体が、少なくとも1つのハロゲン配位子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アルコールが2個から10個の炭素原子を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記アルコールが第2級アルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記電子吸引基が、ハロゲン化物基、ケトン基、アルケン基、アルキン基、フェニル基、エーテル基、エステル基、ニトロ基、シアノ基又は三ハロゲン化物基から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記アルコールが、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-2-ペンタノン、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノン、1-クロロ-2-プロパノール、2-メトキシエタノール、1-フェニル-2-プロパノール、4-ペンテン-2-オール、1,6-ヘプタジエン-4-オール、4,4,4-トリフルオロ-2-ブタノール又はそれらの組み合わせから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
堆積方法であって、
基板に第1の金属表面を提供することであって、前記第1の金属が本質的にコバルトからなる、基板に第1の金属表面を提供すること;及び
前記基板をトリメチルアルミニウム及び4-ヒドロキシ-2-ペンタノンに別々に曝露して、前記第1の金属表面上に酸化アルミニウム層を形成すること
を含み、
前記基板が約350℃以下の温度で維持される、方法。
【請求項14】
堆積方法であって、
基板に第1の金属表面を提供すること;
前記基板を第2の金属前駆体及び第1のアルコールに別々に曝露することであって、前記第2の金属前駆体が実質的に金属-酸素結合を含まず、前記第1のアルコールが前記第1のアルコールのベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、前記第1のアルコールの前記ベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める、前記基板を第2の金属前駆体及び第1のアルコールに別々に曝露すること;及び
前記基板を第3の金属前駆体及び第2のアルコールに別々に曝露して、前記第1の金属表面上に混合金属酸化物層を形成することであって、前記第3の金属が実質的に金属-酸素結合を含まず、前記第2のアルコールが前記第2のアルコールのベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、前記第2のアルコールの前記ベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める、前記基板を第3の金属前駆体及び第2のアルコールに別々に曝露して、前記第1の金属表面上に混合金属酸化物層を形成すること
を含み、
前記混合金属酸化物が、前記第2の金属及び前記第3の金属を含み、前記第1の金属、前記第2の金属及び前記第3の金属がそれぞれ異なる金属である、
方法。
【請求項15】
前記第1のアルコールと前記第2のアルコールが同じアルコールである、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施態様は、薄膜を堆積させる方法に関する。特に、本開示の実施態様は、低温で金属酸化物を堆積させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薄膜は、多くのプロセスの半導体製造に幅広く使用されている。例えば、金属酸化物(例えば、酸化アルミニウム)の薄膜は、スペーサ材料及びエッチング停止層として、パターニング処理において使用されることが多い。これらの材料は、より高価なEUVリソグラフィ技術を採用せずにより小さなデバイス寸法を可能にする。
【0003】
基板表面上に金属酸化物を堆積させるための一般的な技法には、基板表面の一部の酸化が関わる場合が多い。この酸化処理は、特に金属表面上では、デバイス性能に有害であり得る。
【0004】
特に、水を原子層堆積(ALD)の試薬として使用することにより、表面酸化がもたらされ得る。さらに、水はチャンバ壁に比較的接着性があり、反応物として水を使用することにより、より長いパージ時間が必要になるため、スループットが低下する。
【0005】
アルコールを酸化反応物として使用することにより、表面酸化及び低スループットに関連する懸念は改善される。しかしながら、活性化障壁が高いため、堆積温度は同様の水をベースとしたプロセスよりも高くする必要がある。
【0006】
したがって、表面酸化を伴わずに低温で実施することができる金属酸化物の原子層堆積の方法が、当該技術分野で必要である。
【発明の概要】
【0007】
本開示の一つ又は複数の実施態様は、基板に第1の金属表面を提供することを含む堆積方法を対象とする。基板は、第2の金属前駆体及びアルコールに別々に曝露され、第1の金属表面上に第2の金属酸化物層が形成される。第2の金属前駆体は、実質的に金属-酸素結合を含まない。アルコールは、アルコールのベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、ベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める。
【0008】
本開示の追加の実施態様は、基板に第1の金属表面を提供することを含む堆積方法を対象とする。第1の金属は、本質的にコバルトからなる。基板は、トリメチルアルミニウム及び3,3,3-トリフルオロプロパノールに別々に曝露され、第1の金属表面上に酸化アルミニウム層が形成される。
【0009】
本開示のさらなる実施態様は、基板に第1の金属表面を提供することを含む堆積方法を対象とする。基板は、第2の金属前駆体及び第1のアルコールに別々に曝露される。第2の金属前駆体は、実質的に金属-酸素結合を含まない。第1のアルコールは、第1のアルコールのベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、第1のアルコールのベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める。基板は、第3の金属前駆体及び第2のアルコールに別々に曝露され、第1の金属表面上に混合金属酸化物層が形成される。第3の金属前駆体は、実質的に金属-酸素結合を含まない。第2のアルコールは、第2のアルコールのベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、第2のアルコールのベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める。混合金属酸化物は、第2の金属と第3の金属とを含む。第1の金属、第2の金属及び第3の金属はそれぞれ異なる金属である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示のいくつかの例示的な実施態様を説明する前に、本開示が、以下の明細書の記載において記載される構成又は処理工程の詳細に限定されないと了解されたい。本開示は、他の実施態様も可能であり、様々なやり方で実践又は実行することが可能である。
【0011】
本開示の実施態様は、金属表面の酸化を実質的に伴わずに金属表面上に金属酸化物層を堆積させる方法を提供する。このように使用される「実質的に酸化がない」とは、表面原子の数に基づいて、表面が、5%、2%、1%、又は0.5%未満の酸素を含有することを意味する。理論に縛られるわけではないが、金属表面の酸化は、下層の金属材料の抵抗率を増加させ、デバイスの不具合を加速させる恐れがある。本開示の実施態様は、有利には、第1の金属表面を酸化させずに、第2の金属酸化物層を堆積することを提供する。
【0012】
本開示の実施態様は、より低い温度で金属表面上に金属酸化物層を堆積させる方法を提供する。これに関して使用される場合、「より低い温度」は、本開示に記載されるようにアルコールを使用しない堆積プロセスと比較して評価される。理論に縛られるわけではないが、本開示の変性アルコールは、ベータ水素化物の脱離反応を促進し、熱転位の活性化障壁を低くして、本方法がより低い温度で実施されることを可能にする。本開示の実施態様は、有利には、比較的低い温度で金属酸化物層を堆積することを提供する。
【0013】
例えば、トリメチルアルミニウム及び水を利用する、コバルトに酸化アルミニウムを堆積させる方法は、コバルト層と酸化アルミニウム層との間にかなりの量の酸化コバルトを発生させる。それに対して、トリメチルアルミニウム及びアルコールを利用する、コバルトに酸化アルミニウムを堆積させる方法は、コバルト層と酸化アルミニウム層との間に酸化コバルト層を発生させずに、同様の酸化アルミニウム層を堆積させる。
【0014】
さらに、例えば、トリメチルアルミニウム及びイソプロピルアルコールを利用する、コバルトに酸化アルミニウムを堆積させる方法は、一般的に350℃以上の温度で実施される。それに対して、開示される方法は、より低い温度での堆積を可能にする変性アルコールを利用して同様の酸化アルミニウム層を堆積させる。
【0015】
本明細書で使用される「基板表面」とは、基板の任意の部分、又は、膜の処理が実施される基板上に形成された材料表面の任意の部分のことを指す。例えば、処理を実施することができる基板表面には、用途に応じて、ケイ素、酸化ケイ素、窒化ケイ素、ドープされたケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、ガラス、サファイア、並びに金属、窒化金属、金属合金、及び他の導電材料などの任意の他の材料のような材料が含まれる。基板は、半導体ウエハを含むが、これに限定されない。基板表面を研磨、エッチング、還元、酸化、ヒドロキシル化、アニール、UV硬化、電子ビーム(eビーム)硬化、且つ/又はベークするために、基板を前処理プロセスに曝露してもよい。基板自体の表面上の直接的な膜処理に加えて、本開示では、開示された膜処理工程はいずれも、以下でより詳細に開示される基板に形成された下層に対して実施することができる。「基板表面」という用語は、文脈が示すように、このような下層を含むことが意図されている。ゆえに、例えば、膜/層又は部分的な膜/層が基板表面に堆積された場合、新たに堆積された膜/層の露出面が基板表面となる。基板は、様々な寸法(例えば、直径200mm又は300mmのウエハや、長方形又は正方形のペイン)を有し得る。いくつかの実施態様では、基板は、剛性でディスクリートな材料を含む。
【0016】
本明細書で使用される「原子層堆積」又は「周期的堆積」とは、2つ以上の反応性化合物への連続的曝露により、基板表面に材料層を堆積させることを指す。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される「反応性化合物」、「反応性ガス」、「反応種」、「前駆体」、「処理ガス」などの用語は、交換可能に使用され、表面反応(例えば、化学吸着、酸化、還元)において基板表面又は基板表面上の材料と反応可能な種を有する物質を意味する。基板又は基板の一部は、処理チャンバの反応区域内に導入される2つ以上の反応性化合物に連続的に曝露される。時間領域ALDプロセスでは、各反応性化合物への曝露は、時間遅延によって分けられ、それにより、各化合物は、基板表面に付着するか且つ/又は基板表面上で反応し、次いで、処理チャンバからパージされることが可能になる。空間ALDプロセスでは、基板上の任意の所与の点が一つ又は複数の反応性化合物に同時に実質的に曝露されないように、基板表面又は基板表面上の材料の異なる部分が、2つ以上の反応性化合物に同時に曝露される。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用されるように、この観点で使用される用語「実質的に(substantially)」とは、当業者によって理解されるように、基板の小さな部分が、拡散に起因して複数の反応性ガスに同時に曝露される可能性があり、その同時曝露は意図されていないことを意味する。
【0017】
一つ又は複数の実施態様によると、本方法は、原子層堆積(ALD)プロセスを用いる。かかる実施態様では、基板表面は、別々に又は実質的に別々に前駆体(又は反応性ガス)に曝露される。本明細書で使用される「別々に(separately)」とは、金属前駆体及びアルコールが、一時的に、空間的に、又はその両方で分離されることを意味する。本明細書全体で使用される「実質的に別々に(substantially separately)」とは、時間的分離に関連する場合、前駆体の曝露の持続時間の大部分が、共反応物への曝露と重ならないが、いくらかの重複もあり得ることを意味する。本明細書全体で使用される「実質的に別々に(substantially separately)」とは、空間的分離に関連する場合、前駆体の曝露領域の大部分が、共反応物の曝露領域と重ならないが、いくらかの重複もあり得ることを意味する。
【0018】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する「前駆体」、「反応物質」、「反応性ガス」などの用語は、交換可能に使用され、基板表面と反応し得る任意のガス種、又は基板表面上に存在する種を示す。
【0019】
一つ又は複数の実施態様では、当該方法は、原子層堆積(ALD)プロセスを使用して実施される。ALDプロセスは、2成分(又はより高次の)反応を使用して材料の単一層が堆積される、自己制限型プロセスである。個々のALD反応は、理論的には、自己制限的であり、基板表面の全ての利用可能な活性部位が反応するまで継続する。ALDプロセスは、時間領域ALD又は空間的ALDプロセスによって実施され得る。
【0020】
時間領域ALDプロセスでは、処理チャンバ及び基板は、どの所与の時点においても、単一の反応性ガスに曝露される。例示的な時間領域プロセスでは、処理チャンバは、一定時間にわたり金属前駆体で満たされる場合があり、それにより、金属前駆体が基板の利用可能な部位と完全に反応することが可能になる。次いで、第2の反応性ガスを処理チャンバ内に流し込む前に処理チャンバの前駆体をパージすることができ、それにより、第2反応性ガスが、基板表面又は基板表面上の材料と完全に反応することが可能になる。時間領域プロセスは、任意の所与の時間で処理チャンバ内に1つの反応性ガスのみが存在することを確実なものとすることにより、反応性ガスの混合を最小限に抑える。任意の反応性ガス曝露の開始時では、反応性種の濃度がゼロから最終的な所定圧力になるような遅延が生じる。同様に、処理チャンバから全ての反応種のパージする時にも遅延が生じる。
【0021】
空間的ALDプロセスでは、基板は、単一の処理チャンバの中の種々のプロセス領域の間を動かされる。個別のプロセス領域の各々は、ガスカーテンによって隣接するプロセス領域から分離される。ガスカーテンは、いかなるガス相反応も最少化するよう、反応性ガス同士の混合を防止するのに役立つ。種々の処理領域を通って基板が移動することにより、気相反応を防止しながら、基板が異なる反応性ガスに連続曝露されることが可能になる。
【0022】
いくつかの実施態様では、第1の金属層を含む基板は、第1の金属表面を有する。第1の基板は、任意の適切な金属であってもよい。理想的には、第1の金属表面は、本質的に第1の金属からなる。実際には、第1の金属表面は、第1の金属以外の元素を含む汚染物質又はその他の膜をその表面上にさらに含み得る。
【0023】
いくつかの実施態様では、第1の金属は、コバルト、銅、ニッケル、ルテニウム、タングステン、又は白金のうちの一つ又は複数を含む。いくつかの実施態様では、第1の金属は、単一の金属種を含む純金属である。このように使用される「純」金属とは、原子ベースで、記載された金属の約95%、98%、99%、又は99.5%以上の組成を有する膜を指す。いくつかの実施態様では、第1の金属は、金属合金であり、複数の金属種を含む。いくつかの実施態様では、第1の金属は、本質的にコバルト、銅、ニッケル、ルテニウム、タングステン、又は白金からなる。いくつかの実施態様では、第1の金属は、本質的にコバルトからなる。いくつかの実施態様では、第1の金属は、本質的に銅からなる。このように使用されている表現「本質的に~からなる(consists essentially of)」は、記載された材料が、記載された種の約95%、98%、99%、又は99.5%以上であることを意味する。
【0024】
基板は、開示された方法による処理のために提供される。このように使用される表現「提供される(provided)」とは、基板が、さらなる処理のために、ある位置又は環境内に配置されることを意味する。基板は、第2の金属前駆体及びアルコールに曝露され、第1の金属表面上に第2の金属酸化物層が形成される。いくつかの実施態様では、基板は、第2の金属前駆体及びアルコールに別々に曝露される。
【0025】
第2の金属前駆体は、第2の金属及び一つ又は複数の配位子を含む。第2の金属は、金属酸化物が形成され得る任意の適切な金属であり得る。いくつかの実施態様では、第2の金属は、アルミニウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル、亜鉛、タンタル、又はチタンのうちの一つ又は複数を含む。いくつかの実施態様では、第2の金属は、本質的にアルミニウム、ハフニウム、ジルコニウム、ニッケル、亜鉛、タンタル、又はチタンからなる。いくつかの実施態様では、第2の金属は、本質的にアルミニウムからなる。
【0026】
第2の金属前駆体の配位子は、任意の適切な配位子であり得る。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、実質的に金属-酸素結合を含まない。このように使用される表現「金属-酸素結合を実質的に含まない」とは、第2の金属前駆体が、金属-配位子結合の総数で測定して、2%、1%、又は0.5%未満の金属-酸素結合を有することを意味する。本開示で使用されるように、配位子は、主に、第2の金属前駆体の金属中心に付着する元素によって説明される。したがって、カルボ配位子(carbo ligand)は、金属-炭素結合を示し、アミノ配位子は、金属-窒素結合を示し、ハロゲン配位子は、金属-ハロゲン結合を示す。
【0027】
いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、少なくとも1つのカルボ配位子を含む。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、カルボ配位子のみを含む。少なくとも1つのカルボ配位子が存在する実施態様では、各カルボ配位子は、独立して1個から6個の炭素原子を含有する。第2の金属前駆体が少なくとも1つのカルボ配位子を含むいくつかの実施態様では、開示された方法は、実質的に炭素を含有しない第2の金属酸化物層を提供する。
【0028】
いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的にトリメチルアルミニウム(TMA)からなる。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的にトリエチルアルミニウム(TEA)からなる。
【0029】
いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、少なくとも1つのアミノ配位子を含む。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、アミノ配位子のみを含む。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、アミノ配位子のみを含み、各アミノ配位子は同じ配位子である。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的にトリス(ジメチルアミド)アルミニウム(TDMA)からなる。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的にトリス(ジエチルアミド)アルミニウム(TDEA)からなる。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的にトリス(エチルメチルアミド)アルミニウム(TEMA)からなる。
【0030】
いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、少なくとも1つのハロゲン配位子を含む。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、ハロゲン配位子のみを含む。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的にフッ化アルミニウム(AlF)からなる。いくつかの実施態様では、第2の金属前駆体は、本質的に塩化アルミニウム(AlCl)からなる。
【0031】
アルコールは、少なくとも1つのベータ水素を含む。ベータ水素は、ヒドロキシル基の第2の炭素(ベータ炭素)に結合した水素である。アルコールは、ベータ炭素に対して配置された電子吸引基を含み、ベータ炭素に結合したベータ水素の酸性度を高める。
【0032】
適切な電子吸引基は、限定されないが、ハロゲン化物(二ハロゲン化物及び/又は三ハロゲン化物基を含む)、ケトン、アルケン、アルキン、フェニル、エーテル、エステル、ニトロ基、及びシアノ基を含む。いくつかの実施態様では、電子吸引基は、ハロゲン化物、ケトン、エーテル、エステル、ニトロ、及びシアノ基から選択される。いくつかの実施態様では、電子吸引基は、アルケン、アルキン、及びフェニル基から選択される。いくつかの実施態様では、電子吸引基は、アルキン及びフェニル基から選択される。
【0033】
ハロゲン化物基を含む例示的なアルコールには、1-クロロ-2-プロパノールが含まれる。ケトン基を含む例示的なアルコールには、4-ヒドロキシ-2-ブタノン、4-ヒドロキシ-2-ペンタノン及び4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンが含まれる。アルケン基を含む例示的なアルコールには、3-ブテン-2-オール、3-メチル-2-ブテン-2-オール、4-ペンテン-2-オール、及び1,6-ヘプタジエン-4-オールが含まれる。フェニル基を含む例示的なアルコールには、1-フェニル-2-プロパノールが含まれる。エステルを含む例示的なアルコールには、2-メトキシエタノールが含まれる。三ハロゲン化物基を含む例示的なアルコールには、4,4,4-トリフルオロ-2-ブタノールが含まれる。
【0034】
いくつかの実施態様では、アルコールは第1級アルコールである。いくつかの実施態様では、アルコールは第2級アルコールである。いくつかの実施態様では、アルコールは第3級アルコールである。いくつかの実施態様では、アルコールは、一つ又は複数のヒドロキシル基を含む。いくつかの実施態様では、アルコールは、電子吸引基により実質的に影響を受けないベータ水素を含む。いくつかの実施態様では、同じベータ水素の酸性度を高める一つ又は複数の電子吸引基を含む。
【0035】
基板は、本開示の実施態様に従って処理されるが、いくつかの条件を制御することができる。これらの条件には、基板温度、流量、第2の金属前駆体及び/又はアルコールのパルス持続時間及び/又は温度、並びに処理環境の圧力が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
堆積中の基板の温度は、例えば、使用される前駆体に応じて、任意の適切な温度であり得る。処理中に、基板は加熱又は冷却され得る。かかる加熱又は冷却は、基板支持体の温度を変化させることと、加熱された又は冷却されたガスを基板表面に流すこととを含む任意の適切な手段によって達成され得るが、これらに限定されない。いくつかの実施態様では、基板支持体は、基板温度を伝導的に変化させるように制御することができるヒータ/クーラを含む。一つ又は複数の実施態様では、利用されるガス(反応性ガス又は不活性ガス)は、加熱又は冷却され、基板温度を局所的に変化させる。いくつかの実施態様では、ヒータ/クーラは、基板温度を対流によって変化させるように、チャンバ内部で基板表面に隣接するように配置される。
【0037】
いくつかの実施態様では、基材温度は、約600℃以下、又は約550℃以下、又は約500℃以下、又は約450℃以下、又は約400℃以下、又は約350℃以下、又は約325℃以下、又は約300℃以下、又は約250℃以下、又は約200℃以下、又は約150℃以下、又は約100℃以下、又は約50℃以下、又は約25℃以下の温度で維持される。いくつかの実施態様では、基板温度は、約350℃の温度に維持される。
【0038】
理論に縛られるわけではないが、本開示のアルコールへの電子吸引基の組み込みは、酸化金属膜を形成するために必要な熱転位反応の活性化障壁を低下させる。したがって、本開示の方法は、存在する電子吸引基を伴わずにアルコールを使用して実施される同様の方法よりも低い温度で実施され得る。
【0039】
例えば、イソプロピルアルコールとのTMAの反応は、典型的には350℃超で実施される。TMA及び4-ヒドロキシ-2-ペンタノンを使用して実施される同様の方法は、350℃未満の温度での成功が期待される。
【0040】
ここで使用される「パルス(pulse)」又は「適用(dose)」は、処理チャンバ内に断続的に又は非連続的に導入される原料ガスの量を指すことが意図される。各パルス内の特定の化合物の量は、パルスの持続時間に応じて、経時的に変動し得る。特定の処理ガスは、単一の化合物、又は2つ以上の化合物の混合物/組み合わせ(例えば、以下に記載される処理ガス)を含み得る。
【0041】
各パルス/適用の持続時間は、可変であり、例えば、処理チャンバの空間容量、並びに処理チャンバに連結された真空システムの能力に適合するように調整され得る。さらに、処理ガスの適用時間は、処理ガスの流量、処理ガスの温度、制御弁の種類、使用される処理チャンバの種類、及び基板表面に吸着する処理ガスの成分の能力に応じて変動し得る。適用時間は、形成される層の種類、及び形成されるデバイスの形状に基づいても変動し得る。適用時間は、基板の表面全体に実質的に吸着/化学吸着し、その上に処理ガス成分の層を形成するのに十分な量の化合物を供給するのに十分な長さでなければならない。
【0042】
反応物(例えば、第2の金属前駆体及びアルコール)は、一つ又は複数のパルスで、又は連続的に供給され得る。反応物の流量は、約1から約5000sccmの範囲、又は約2から約4000sccmの範囲、又は約3から約3000sccmの範囲、又は約5から約2000sccmの範囲を含む任意の適切な流量であり得るが、これらに限定されない。反応物は、約5mTorrから約25Torrの範囲、又は約100mTorrから約20Torrの範囲、又は約5Torrから約20Torrの範囲、又は約50mTorrから約2000mTorrの範囲、又は約100mTorrから約1000mTorrの範囲、又は約200mTorrから約500mTorrの範囲の圧力を含む任意の適切な圧力で供給することができるが、これらに限定されない。
【0043】
基板が各反応物に曝露される期間は、反応物が基板表面の上に適切な核形成層を形成することを可能にするのに必要な任意の適切な時間量であり得る。例えば、反応物は、約0.1秒から約90秒の期間にわたって処理チャンバ内に流入し得る。いくつかの時間領域ALDプロセスでは、反応物は、約0.1秒から約90秒の範囲、又は約0.5秒から約60秒の範囲、又は約1秒から約30秒の範囲、又は約2秒から約25秒の範囲、又は約3秒から約20秒の範囲、又は約4秒から約15秒の範囲、又は約5秒から約10秒の範囲の時間にわたって、基板表面に曝露される。
【0044】
いくつかの実施態様では、不活性ガスが、反応物と同時に処理チャンバに追加的に供給され得る。不活性ガスは、(例えば、希釈ガスとしての)反応物と混合されてもよく、又は別々に混合されてもよく、且つ不活性ガスは、パルス化されてもよく、又は一定の流れであってもよい。いくつかの実施態様では、不活性ガスは、約1から約10000sccmの範囲の一定流量で処理チャンバ内に流入する。不活性ガスは、任意の不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、これらの組み合わせなど)であってもよい。一つ又は複数の実施態様では、反応物は、処理チャンバ内に流入する前に、アルゴンと混合される。
【0045】
いくつかの実施態様では、(特に時間領域ALDにおける)処理チャンバは、不活性ガスを使用してパージされ得る。(空間的ALDプロセスでは、反応性ガスを分離するガスカーテンが存在するので、これは必要とされない場合がある。)不活性ガスは、任意の不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオンなど)であってもよい。いくつかの実施態様では、不活性ガスは、基板を反応物に曝露する間に処理チャンバに供給される不活性ガスと同一であってもよく、又は代替的にそれと異なっていてもよい。不活性ガスが同一である実施態様では、第1の処理ガスを処理チャンバから偏向させ、不活性ガスが処理チャンバを通って流れることを可能にすることによってパージが実施され得る。それにより、処理チャンバから任意の過剰な第1の処理ガス成分又は反応副生成物をパージする。いくつかの実施態様では、不活性ガスは、上述の第2の金属前駆体に関連して使用される同じ流量で供給されてもよく、又はいくつかの実施態様では、流量を増加又は減少させてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、不活性ガスは、処理チャンバをパージするために約0から約10000sccmの流量で処理チャンバに供給され得る。空間的ALDでは、反応物の流れと流れとの間にパージガスカーテンが維持されており、処理チャンバをパージする必要がない場合がある。空間的ALDプロセスのいくつかの実施態様では、処理チャンバ又は処理チャンバ領域は、不活性ガスでパージされ得る。
【0046】
不活性ガスの流れは、処理チャンバからの任意の過剰な第1の処理ガス成分及び/又は過剰な反応副生成物の除去を促進させ、第1及び第2の処理ガスの望ましくない気相反応を防止することができる。
【0047】
本明細書に記載される処理方法の一般的な実施態様は、反応性ガスの2つのパルスのみを含むが、これは例示に過ぎず、反応性ガスの追加のパルスを使用してもよいことを理解されたい。同様に、反応性ガスのパルスは、所定の厚さの金属酸化物膜が形成されるまで、全体的に又は部分的に繰り返され得る。
【0048】
いくつかの実施態様では、基板は、第2の金属前駆体、第1のアルコール及び第3の金属前駆体に曝露される。いくつかの実施態様では、基板は、第2の金属前駆体、第1のアルコール、第3の金属前駆体及び第2のアルコールに曝露される。これらの曝露は、任意の順序で実施されてもよく、全体的に又は部分的に繰り返されてもよい。
【0049】
第3の金属前駆体は、それに接着する配位子に関して第2の金属前駆体と同様であるが、異なる金属を含み得る。第2のアルコールは、酸性度が高められたベータ水素を有する点で第1のアルコールと同様であるが、異なるアルコールを含み得る。
【0050】
いくつかの実施態様では、基板は、第2の金属前駆体、第1のアルコール、第3の金属前駆体及び第2のアルコールに曝露されて、基板上に混合金属酸化物層が形成される。いくつかの実施態様では、混合金属酸化物は、第2の金属と第3の金属とを含む。いくつかの実施態様では、第1の金属、第2の金属及び第3の金属はそれぞれ異なる金属である。
【0051】
堆積中の処理チャンバの圧力は、約50mTorrから750Torrの範囲、又は約100mTorrから約400Torrの範囲、又は約1Torrから約100Torrの範囲、又は約2Torrから約10Torrの範囲であり得る。
【0052】
形成された第2の金属酸化物層は、任意の適切な膜であってもよい。いくつかの実施態様では、形成される膜は、MOに従う一つ又は複数の種を含む非晶質膜又は結晶質膜であり、式は、化学量論的ではなく、原子組成を表す。いくつかの実施態様では、第2の金属酸化物は、化学量論的である。いくつかの実施態様では、第2の金属膜は、化学量論比よりも大きな、酸素に対する第2の金属の比を有する。いくつかの実施態様では、第2の金属膜は、化学量論比よりも少ない、酸素に対する第2の金属の比を有する。
【0053】
第2の金属酸化物層を所定の厚さに堆積し終えると、本方法は、概して終了し、基板は、任意のさらなる処理に進むことができる。
【0054】
原子層堆積型チャンバ内で、基板は、空間的或いは時間的に分離されたプロセスにおいて、第1と第2の前駆体に曝露され得る。時間的ALDは、第1前駆体がチャンバに流れ込んで表面と反応する、慣習的なプロセスである。第2前駆体を流す前に、第1前駆体はチャンバからパージされる。空間的ALDでは、第1前駆体と第2前駆体の両方が、同時にチャンバに流されるが、前駆体の混合を防止する領域が流れと流れの間に存在するように空間的に分離される。空間的ALDでは、基板はガス分配プレートに対して動かされるか、又はその逆である。
【0055】
1つのチャンバ内で方法の部分のうちの一つ又は複数が実行される実施態様では、プロセスは、時間的ALDプロセスであり得る。上記の化学特性の一つ又は複数が両立しない(即ち、基板表面上以外で反応する結果となるか、及び/又はチャンバ上に堆積する結果となる)ものであってよいが、空間的な分離によって、気相にある複数の試薬が互いに曝露されないことが確保される。例えば、時間的ALDは、堆積チャンバをパージすることを含む。しかし実際には、余剰の試薬の全てを、次の試薬を流し込む前にチャンバからパージすることは、時として不可能である。したがって、チャンバ内に残った試薬のうちのいずれかが、反応を起こしかねない。空間的に分離されていれば、余剰の試薬をパージする必要はなく、交差汚染が制限される。さらに、チャンバをパージするのに多くの時間を要することがあり、それゆえに、パージ工程をなくすことによってスループットを増大させることができる。
【0056】
この明細書全体を通じての、「一実施態様(one embodiment)」、「特定の実施態様(certain embodiments)」、「一つ又は複数の実施態様(one or more embodiments)」、又は、「実施態様(an embodiment)」に対する言及は、実施態様に関連して説明されている特定の特徴、構造、材料、又は特徴が、本開示の少なくとも1つの実施態様に含まれることを意味する。ゆえに、本明細書全体の様々な箇所での「一つ又は複数の実施態様で」、「ある特定の実施態様で」、「一実施態様で」、又は「実施態様において」などの表現の表出は、必ずしも、本開示の同一の実施態様に言及するものではない。さらに、特定の特徴、構造、材料、又は特徴は、一つ又は複数の実施態様において、任意の最適なやり方で組み合わされ得る。