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特許7090288新規乳酸菌、新規乳酸菌を有効成分として含有する自然免疫活性化剤、及び新規乳酸菌を含有する飲食品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】新規乳酸菌、新規乳酸菌を有効成分として含有する自然免疫活性化剤、及び新規乳酸菌を含有する飲食品
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20220617BHJP
   A23L 33/135 20160101ALI20220617BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20220617BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20220617BHJP
【FI】
C12N1/20 A ZNA
A23L33/135
A61P37/04
A61K35/744
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018534364
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(86)【国際出願番号】 JP2017028737
(87)【国際公開番号】W WO2018034203
(87)【国際公開日】2018-02-22
【審査請求日】2020-06-26
(31)【優先権主張番号】P 2016159557
(32)【優先日】2016-08-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02308
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02307
【微生物の受託番号】NPMD  NITE P-02306
(73)【特許権者】
【識別番号】501481492
【氏名又は名称】株式会社ゲノム創薬研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002136
【氏名又は名称】特許業務法人たかはし国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】関水 和久
【審査官】松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-028047(JP,A)
【文献】特開2016-086711(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/20
A23L 33/135
A61P 37/04
A61K 35/744
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02307であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌。
【請求項2】
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02306であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌。
【請求項3】
独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02308であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の乳酸菌をオートクレーブ処理し、遠心分離後に回収した菌体成分画分を有効成分とすることを特徴とする自然免疫活性化剤。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の乳酸菌を含有する飲食品。
【請求項6】
請求項4に記載の自然免疫活性化剤を含有する飲食品。
【請求項7】
請求項1ないし請求項3の何れかの請求項に記載の乳酸菌を用いて醗酵する工程を用いて製造された飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規乳酸菌、新規乳酸菌を有効成分として含有する自然免疫活性化剤、及び新規乳酸菌を含有する飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
乳酸菌は古くから醗酵食品に利用され、飲食品、医薬品、プロバイオティクス等の生産に利用されている。乳酸菌は、グラム陽性、カタラーゼ陰性、内生胞子を形成しない、運動性がない等という特徴がある。
【0003】
また、乳酸菌はプロバイオティクスとして最も利用されている。機能性の高い乳酸菌を効率的に分離する方法の確立及び、これらを食品中での培養方法を確立することは、機能性乳酸菌を利用した食品の開発に有用である。
【0004】
プロバイオティクスで注目されている機能性の一つに「自然免疫促進活性」がある。哺乳類において自然免疫は、生体防御の最前線であり、抗体産生を含むその後の免疫反応を引き起こす。哺乳動物における自然免疫では様々な刺激によりマクロファージ等の免疫担当細胞によるサイトカイン分泌が促され、侵入した病原体の排除や、他の免疫担当細胞への情報伝達が行われる。
【0005】
一方、昆虫等の無脊椎動物は獲得免疫をもっておらず、病原体の排除は自然免疫だけによっている。自然免疫機構は昆虫と哺乳動物の間で多くの共通点があることが知られている。例えばヘモサイトと呼ばれる昆虫の血液細胞は哺乳類におけるマクロファージと同様に侵入した異物を貪食する。また、哺乳動物での自然免疫応答に関与するToll-like Receptorは、ショウジョウバエで自然免疫応答に関与するToll Receptorと相同性が高いことが知られている。
【0006】
これまでに、本発明者らにより、自然免疫機構しかないカイコにおいて、自然免疫活性化反応を簡便に測定できる評価方法(スクリーニング方法)が開発されている(特許文献1等、非特許文献1等)。更に、該方法でヒト等の脊椎動物に対して自然免疫活性化作用を有する自然免疫活性化剤の評価(スクリーニング方法)ができることが確かめられている(特許文献1等)。
また、カイコが微生物感染症に対する抵抗性評価のモデル動物として有用であることは、本発明者らにより確かめられている(特許文献2、3等)。
また、緑茶からカイコの筋収縮活性を指標に精製した画分に、哺乳動物細胞のマクロファージ活性化能があることが本発明者らにより確かめられている(非特許文献2)。
【0007】
免疫機構の異常は、様々な疾患を引き起こす原因となる。従って、このような免疫機構を所望に調節することが可能な、優れた自然免疫活性化剤や自然免疫を活性化させる飲食品の開発が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2008/126905号
【文献】特開2007-327964号公報
【文献】特開2012-006917号公報
【非特許文献】
【0009】
【文献】Ishii K, Hamamoto H, Kamimura M, Sekimizu K. Activation of the silkworm cytokine by bacterial and fungal cell wall components via a reactive oxygen species-triggered mechanism. J Biol Chem. 2008 Jan 25;283(4):2185-91.
【文献】Dhital, S. Purification of innate immunostimulant from green tea using a silkworm muscle contraction assay. Drug Discov. Ther. 5, 18-25 (2011).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、高い自然免疫活性化能を有する新規な乳酸菌を提供することであり、更に、該乳酸菌又は該乳酸菌の死菌若しくは処理物を有効成分とする自然免疫活性化剤や、該乳酸菌又は該乳酸菌に由来する自然免疫活性化剤を含有する飲食品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、キムチ及び糠から新規の乳酸菌を分離した。そして、特許文献1に開示されている、自然免疫活性化反応を簡便に測定できる方法を用いて検討した結果、これまでに知られている乳酸菌より高い自然免疫活性化能を有していることが確認された。
【0012】
更に、上記の自然免疫活性化能を有する乳酸菌は、その性状の分析や16S rDNAの塩基配列等の解析結果、全て、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規乳酸菌株であることも判明した。
【0013】
また、該乳酸菌を、純培養させることが容易でない牛乳、野菜ジュース及び果物ジュースで乳酸醗酵をさせることによって、有用性の高い食品を提供できることを見出して本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、本発明は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02307であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌を提供するものである。
【0015】
また、本発明は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02306であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌を提供するものである。
【0016】
また、本発明は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02308であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌を提供するものである。
【0017】
また、本発明は、上記の乳酸菌、該乳酸菌の死菌、又は、該乳酸菌の処理物を有効成分とする自然免疫活性化剤であって、
該乳酸菌の処理物は、乳酸菌の培養物;濃縮物;ペースト化物;噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等の乾燥物;液状化物;希釈物;破砕物;殺菌加工物;及び;該培養物からの抽出物よりなる群から選ばれる少なくとも1つの処理物であることを特徴とする自然免疫活性化剤を提供するものである。
【0018】
また、本発明は、上記乳酸菌若しくは上記自然免疫活性化剤を含有する飲食品、又は、上記乳酸菌を用いて醗酵する工程を用いて製造された飲食品を提供するものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、これまでに知られている乳酸菌よりも高い自然免疫活性化能を有する新規の乳酸菌を提供することができる。
更には、該乳酸菌を有効成分とする自然免疫活性化剤、及び、該乳酸菌又は該自然免疫活性化剤を含有する飲食品、並びに、該乳酸菌を用いて醗酵する工程を用いて製造された飲食品を提供することができる。
【0020】
また、本発明の乳酸菌は、一般飲食品、健康食品、薬剤、醗酵飲食品、プロバイオティクスの生産等に利用できるばかりでなく、自然免疫活性化による病気の予防・治療への利用がなされる。また、酸に強いので、胃で分解されず小腸にまで届き易いという特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明について説明するが、本発明は、以下の具体的態様に限定されるものではなく、技術的思想の範囲内で任意に変形することができる。
【0022】
<乳酸菌#7-2>
本発明の乳酸菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02307であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌である(以下、「乳酸菌#7-2」と略記する場合がある)。
【0023】
以下、このロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規乳酸菌株(乳酸菌#7-2)について詳述する。
本発明の乳酸菌#7-2は、キムチを分離源として初めて分離された。
【0024】
グラム染色結果:陽性
菌体の形状:球形
好気/嫌気:嫌気
乳酸生成能:あり
【0025】
生理学的性質:本発明の乳酸菌#7-2の生理学的、化学分類学的性質は以下の通りである。
(1)カタラーゼ:-
(2)酸性フォスファターゼ:+
(3)アルカリフォスファターゼ:+
(4)ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ:+
(5)エステラーゼ(C4):+
(6)α-ガラクトシダーゼ:-
(7)エステラーゼリパーゼ(C8):+
(8)β-ガラクトシダーゼ:-
(9)リパーゼ(C14):-
(10)β-グルクロニダーゼ:-
(11)ロイシンアリルアミダーゼ:+
(12)α-グルコシダーゼ:+
(13)バリンアリルアミダーゼ:-
(14)β-グルコシダーゼ:-
(15)シスチンアリルアミダーゼ:-
(16)N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ:-
(17)トリプシン:-
(18)α-マンノシダーゼ:-
(19)α-キモトリプシン:-
(20)α-フコシダーゼ:-
【0026】
(21)下記の糖類等からの酸及びガスの生成能
グリセロール(Glycerol):-
エリトリトール(Erythritol):-
D-アラビノース(D-Arabinose):-
L-アラビノース(L-Arabinose):-
D-リボース(D-Ribose):+
D-キシロース(D-Xylose):-
L-キシロース(L-Xylose):-
D-アドニトール(D-Adonitol):-
β-メチル-D-キシロピラノサイド(β-Methyl-D-xylopyranoside):-
D-ガラクトース(D-Galactose):+
D-グルコース(D-Glucose):+
D-フルクトース(D-Fructose):+
D-マンノース(D-Mannose):+
L-ソルボース(L-Sorbose):-
L-ラムノース(L-Rhamnose):-
ズルシトール(Dulcitol):-
イノシトール(Inositol):-
D-マンニトール(D-Mannitol):-
D-ソルビトール(D-Sorbitol):-
α-メチル-D-マンノピラノサイド(α-Methyl-D-mannopyranoside):-
α-メチル-D-グルコピラノサイド(α-Methyl-D-glucopyranoside):+
N-アセチルグルコサミン(N-Acetyl glucosamine):+
アミグダリン(Amygdalin):+
アルブチン(Arbutin):+
エスクリンクエン酸第二鉄(Esculin ferric citrate):+
サリシン(Salicin):+
D-セロビオース(D-Cellobiose):+
D-マルトース(D-Maltose):+
D-ラクトース(D-Lactose):-
D-メリビオース(D-Melibiose):+
D-スクロース(D-Sucrose):+
D-トレハロース(D-Trehalose):+
インスリン(Insulin):-
D-メレジトース(D-Melezitose):+
D-ラフィノース(D-Raffinose):+
スターチ(Starch):+
グリコーゲン(Glycogen):-
キシリトール(Xylitol):-
ゲンチオビオース(Gentiobiose):+
D-ツラノース(D-Turanose):+
D-リキソース(D-Lyxose):-
D-タガトース(D-Tagatose):+
D-フコース(D-Fucose):-
L-フコース(L-Fucose):-
D-アラビトール(D-Arabitol):-
L-アラビトール(L-Arabitol):-
グルコネート(Gluconate):+
2-ケト-グルコネート(2-Keto-gluconate):-
5-ケト-グルコネート(5-Keto-gluconate):-
【0027】
分子生物学的解析結果:分子生物学的な系統分類の指標として用いられている16SrDNAに関する乳酸菌#7-2の解析結果は、添付した配列表の配列番号1の通りである。
すなわち、乳酸菌#7-2のゲノムDNAから、PCRにより、16SrDNA領域の塩基配列を増幅し、シーケンサーによる解析を行った結果、16SrDNAのほぼ全長に当たる塩基配列が見出された。
この塩基配列をNCBIのBLAST解析で相同性検索を行ったところ、乳酸菌#7-2の16SrDNA領域の塩基配列は、ロイコノストック属であるLeuconostoc carnosum JB16株の塩基配列(登録番号:NR_102781.1)と相同性99%を示したので、乳酸菌#7-2は、ロイコノストック・カルノサム(Leuconostoc carnosum)に属するものである。
しかしながら、16SrDNA領域だけを比較したときですら完全には一致していないので、本発明の乳酸菌#7-2は、上記の株とは異なる乳酸菌株である。
【0028】
前記の乳酸菌#7-2の生理学的・化学分類学的性質を、バージース・マニュアル・オブ・システマティックバクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology,vol.3 1989)による分類及びその他の文献の記載内容に照らし合わせ、更に、上記16SrDNA解析の結果を考慮して判断した結果、本発明の「乳酸菌#7-2」は、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規の微生物である。
また、乳酸菌#7-2の16SrDNA領域の塩基配列に一致する16SrDNA領域の塩基配列を有する微生物が存在しないこと、ロイコノストック属に属する既知の株等と比べて高い自然免疫活性作用を示すこと等を含め総合的に検討した結果、乳酸菌#7-2は単離された新規な微生物株であると判断した。
【0029】
乳酸菌#7-2は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation;以下、「NITE」と略記する)の特許微生物寄託センター(NPMD)に国内寄託され、受託番号:NITE P-02307(寄託日:2016年7月26日)として受託された微生物である。
乳酸菌#7-2は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2016年7月26日)から、ブタペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2017年7月25日)、生存が証明され、ブタペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-02307」を受けているものである。
【0030】
細菌の一般的な性状として、その菌株としての性質は変異し易いため、本発明の乳酸菌#7-2は、先に示した生理学的性状の範囲内に留まらない可能性も有している。また、かかる「変異」には、自然的な変異と人工的な変異の両方を含むことは言うまでもない。
【0031】
以下に、乳酸菌#7-2の培養方法について記載する。乳酸菌#7-2の培養方法は、ロイコノストック属の微生物に対して行われる一般的な培養方法に準じて行えばよい。
培養は嫌気条件下で行うことが好ましい。培地中の炭素源としては、例えば、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、D-マンニトール、N-アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、D-セロビオース、D-マルトース、シュクロース、D-トレハロース、ゲンチオビオース、糖蜜、水飴、油脂類等の有機炭素化合物が用いられ、窒素源としては、肉エキス、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、胚芽、大豆粉、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機・無機窒素化合物を用いることができる。
また、塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の無機塩類を必要に応じて適宜添加する。更に、ビオチン、ビタミンB1、シスチン、オレイン酸メチル、ラード油等の生育促進物質を添加することが、目的物の産生量を増加させる点で好ましい。
また、シリコン油、界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。調製済みの培地としては、例えば、MRS培地、GAM培地等を用いることが好ましい。
【0032】
培養条件は、先に記したようにロイコノストック属の微生物に対して行われる一般的な培養条件に準じて行えばよい。液体培養法であれば静置培養が望ましい。小規模であれば蓋付きガラス瓶による静置培養法を用いてもよい。
培養温度は、25℃~37℃間に保つことが好ましく、30℃~37℃で行うことがより好ましい。培養pHは7付近で行うことが好ましい。培養期間は、用いた培地組成、培養温度等により変動するファクターであるが、乳酸菌#7-2の場合、好ましくは12~72時間、より好ましくは24~48時間で充分な量の目的物を確保することができる。
培養して得られたコロニーをピックアップし、再度培地上でシングルコロニー形成を行うことも好ましい。
【0033】
<乳酸菌#4-2>
本発明の乳酸菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)におけるNITE BP-02306であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌である(以下、「乳酸菌#4-2」と略記する場合がある)。
【0034】
以下、このロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規乳酸菌株(乳酸菌#4-2)について詳述する。
本発明の乳酸菌#4-2は、糠を分離源として初めて分離された。
【0035】
グラム染色結果:陽性
菌体の形状:球形
好気/嫌気:嫌気
乳酸生成能:あり
【0036】
生理学的性質:本発明の乳酸菌#4-2の生理学的、化学分類学的性質は以下の通りである。
(1)カタラーゼ:-
(2)酸性フォスファターゼ:+
(3)アルカリフォスファターゼ:-
(4)ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ:+
(5)エステラーゼ(C4):+
(6)α-ガラクトシダーゼ:-
(7)エステラーゼリパーゼ(C8):+
(8)β-ガラクトシダーゼ:-
(9)リパーゼ(C14):-
(10)β-グルクロニダーゼ:-
(11)ロイシンアリルアミダーゼ:+
(12)α-グルコシダーゼ:+
(13)バリンアリルアミダーゼ:-
(14)β-グルコシダーゼ:+
(15)シスチンアリルアミダーゼ:-
(16)N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ:-
(17)トリプシン:-
(18)α-マンノシダーゼ:-
(19)α-キモトリプシン:+
(20)α-フコシダーゼ:-
【0037】
(21)下記の糖類等からの酸及びガスの生成能
グリセロール(Glycerol):-
エリトリトール(Erythritol):-
D-アラビノース(D-Arabinose):-
L-アラビノース(L-Arabinose):+
D-リボース(D-Ribose):+
D-キシロース(D-Xylose):+
L-キシロース(L-Xylose):-
D-アドニトール(D-Adonitol):-
β-メチル-D-キシロピラノサイド(β-Methyl-D-xylopyranoside):-
D-ガラクトース(D-Galactose):+
D-グルコース(D-Glucose):+
D-フルクトース(D-Fructose):+
D-マンノース(D-Mannose):+
L-ソルボース(L-Sorbose):-
L-ラムノース(L-Rhamnose):-
ズルシトール(Dulcitol):-
イノシトール(Inositol):-
D-マンニトール(D-Mannitol):+
D-ソルビトール(D-Sorbitol):-
α-メチル-D-マンノピラノサイド(α-Methyl-D-mannopyranoside):-
α-メチル-D-グルコピラノサイド(α-Methyl-D-glucopyranoside):+
N-アセチルグルコサミン(N-Acetyl glucosamine):+
アミグダリン(Amygdalin):+
アルブチン(Arbutin):+
エスクリンクエン酸第二鉄(Esculin ferric citrate):+
サリシン(Salicin):+
D-セロビオース(D-Cellobiose):+
D-マルトース(D-Maltose):+
D-ラクトース(D-Lactose):-
D-メリビオース(D-Melibiose):+
D-スクロース(D-Sucrose):+
D-トレハロース(D-Trehalose):+
インスリン(Insulin):-
D-メレジトース(D-Melezitose):+
D-ラフィノース(D-Raffinose):-
スターチ(Starch):+
グリコーゲン(Glycogen):-
キシリトール(Xylitol):-
ゲンチオビオース(Gentiobiose):+
D-ツラノース(D-Turanose):+
D-リキソース(D-Lyxose):-
D-タガトース(D-Tagatose):+
D-フコース(D-Fucose):-
L-フコース(L-Fucose):-
D-アラビトール(D-Arabitol):-
L-アラビトール(L-Arabitol):-
グルコネート(Gluconate):+
2-ケト-グルコネート(2-Keto-gluconate):+
5-ケト-グルコネート(5-Keto-gluconate):-
【0038】
分子生物学的解析結果:分子生物学的な系統分類の指標として用いられている16SrDNAに関する乳酸菌#4-2の解析結果は、添付した配列表の配列番号2の通りである。
すなわち、乳酸菌#4-2のゲノムDNAから、PCRにより、16SrDNA領域の塩基配列を増幅し、シーケンサーによる解析を行った結果、16SrDNAのほぼ全長に当たる塩基配列が見出された。
この塩基配列をNCBIのBLAST解析で相同性検索を行ったところ、乳酸菌#4-2の16SrDNA領域の塩基配列は、ロイコノストック属であるLeuconostoc gelidum POUF4d株の塩基配列(登録番号:NR_133769.1)と相同性99%を示したので、乳酸菌#4-2は、ロイコノストック・ゲリダム(Leuconostoc gelidum)に属するものである。
しかしながら、16SrDNA領域だけを比較したときですら完全には一致していないので、本発明の乳酸菌#4-2は、上記の株とは異なる乳酸菌株である。
【0039】
前記の乳酸菌#4-2の生理学的・化学分類学的性質を、バージース・マニュアル・オブ・システマティックバクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology,vol.3 1989)による分類及びその他の文献の記載内容に照らし合わせ、更に、上記16SrDNA解析の結果を考慮して判断した結果、本発明の「乳酸菌#4-2」は、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規の微生物である。
また、乳酸菌#4-2の16SrDNA領域の塩基配列に一致する16SrDNA領域の塩基配列を有する微生物が存在しないこと、ロイコノストック属に属する既知の株等と比べて高い自然免疫活性作用を示すこと等を含め総合的に検討した結果、乳酸菌#4-2は単離された新規な微生物株であると判断した。
【0040】
乳酸菌#4-2は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation;以下、「NITE」と略記する)の特許微生物寄託センター(NPMD)に国内寄託され、受託番号:NITE P-02306(寄託日:2016年7月26日)として受託された微生物である。
乳酸菌#4-2は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2016年7月26日)から、ブタペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2017年7月25日)、生存が証明され、ブタペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-02306」を受けているものである。
【0041】
細菌の一般的な性状として、その菌株としての性質は変異し易いため、本発明の乳酸菌#4-2は、先に示した生理学的性状の範囲内に留まらない可能性も有している。また、かかる「変異」には、自然的な変異と人工的な変異の両方を含むことは言うまでもない。
【0042】
以下に、乳酸菌#4-2の培養方法について記載する。乳酸菌#4-2の培養方法は、ロイコノストック属の微生物に対して行われる一般的な培養方法に準じて行えばよい。
培養は嫌気条件下で行うことが好ましい。培地中の炭素源としては、例えば、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、D-マンニトール、N-アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、D-セロビオース、D-マルトース、シュクロース、D-トレハロース、ゲンチオビオース、糖蜜、水飴、油脂類等の有機炭素化合物が用いられ、窒素源としては、肉エキス、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、胚芽、大豆粉、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機・無機窒素化合物を用いることができる。
また、塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の無機塩類を必要に応じて適宜添加する。更に、ビオチン、ビタミンB1、シスチン、オレイン酸メチル、ラード油等の生育促進物質を添加することが、目的物の産生量を増加させる点で好ましい。
また、シリコン油、界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。調製済みの培地としては、例えば、MRS培地、GAM培地等を用いることが好ましい。
【0043】
培養条件は、先に記したようにロイコノストック属の微生物に対して行われる一般的な培養条件に準じて行えばよい。液体培養法であれば静置培養が望ましい。小規模であれば蓋付きガラス瓶による静置培養法を用いてもよい。
培養温度は、25℃~37℃間に保つことが好ましく、30℃~37℃で行うことがより好ましい。培養pHは7付近で行うことが好ましい。培養期間は、用いた培地組成、培養温度等により変動するファクターであるが、乳酸菌#4-2の場合、好ましくは12~72時間、より好ましくは24~48時間で充分な量の目的物を確保することができる。
培養して得られたコロニーをピックアップし、再度培地上でシングルコロニー形成を行うことも好ましい。
【0044】
<乳酸菌8/11-3>
本発明の乳酸菌は、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)における受託番号がNITE BP-02308であるロイコノストック(Leuconostoc)属に属する乳酸菌である(以下、「乳酸菌8/11-3」と略記する場合がある)。
【0045】
以下、このロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規乳酸菌株(乳酸菌8/11-3)について詳述する。
本発明の乳酸菌8/11-3は、キムチを分離源として初めて分離された。
【0046】
グラム染色結果:陽性
菌体の形状:球形
好気/嫌気:嫌気
乳酸生成能:あり
【0047】
生理学的性質:本発明の乳酸菌8/11-3の生理学的、化学分類学的性質は以下の通りである。
(1)カタラーゼ:-
(2)酸性フォスファターゼ:+
(3)アルカリフォスファターゼ:+
(4)ナフトール-AS-BI-フォスフォヒドロラーゼ:+
(5)エステラーゼ(C4):+
(6)α-ガラクトシダーゼ:+
(7)エステラーゼリパーゼ(C8):+
(8)β-ガラクトシダーゼ:+
(9)リパーゼ(C14):-
(10)β-グルクロニダーゼ:-
(11)ロイシンアリルアミダーゼ:+
(12)α-グルコシダーゼ:+
(13)バリンアリルアミダーゼ:-
(14)β-グルコシダーゼ:+
(15)シスチンアリルアミダーゼ:-
(16)N-アセチル-β-グルコサミニダーゼ:-
(17)トリプシン:-
(18)α-マンノシダーゼ:-
(19)α-キモトリプシン:-
(20)α-フコシダーゼ:-
【0048】
(21)下記の糖類等からの酸及びガスの生成能
グリセロール(Glycerol):-
エリトリトール(Erythritol):-
D-アラビノース(D-Arabinose):-
L-アラビノース(L-Arabinose):+
D-リボース(D-Ribose):+
D-キシロース(D-Xylose):+
L-キシロース(L-Xylose):-
D-アドニトール(D-Adonitol):-
β-メチル-D-キシロピラノサイド(β-Methyl-D-xylopyranoside):-
D-ガラクトース(D-Galactose):+
D-グルコース(D-Glucose):+
D-フルクトース(D-Fructose):+
D-マンノース(D-Mannose):+
L-ソルボース(L-Sorbose):-
L-ラムノース(L-Rhamnose):-
ズルシトール(Dulcitol):-
イノシトール(Inositol):-
D-マンニトール(D-Mannitol):+
D-ソルビトール(D-Sorbitol):+
α-メチル-D-マンノピラノサイド(α-Methyl-D-mannopyranoside):-
α-メチル-D-グルコピラノサイド(α-Methyl-D-glucopyranoside):+
N-アセチルグルコサミン(N-Acetyl glucosamine):+
アミグダリン(Amygdalin):+
アルブチン(Arbutin):+
エスクリンクエン酸第二鉄(Esculin ferric citrate):+
サリシン(Salicin):+
D-セロビオース(D-Cellobiose):+
D-マルトース(D-Maltose):+
D-ラクトース(D-Lactose):+
D-メリビオース(D-Melibiose):+
D-スクロース(D-Sucrose):+
D-トレハロース(D-Trehalose):+
インスリン(Insulin):-
D-メレジトース(D-Melezitose):+
D-ラフィノース(D-Raffinose):+
スターチ(Starch):-
グリコーゲン(Glycogen):-
キシリトール(Xylitol):-
ゲンチオビオース(Gentiobiose):+
D-ツラノース(D-Turanose):+
D-リキソース(D-Lyxose):-
D-タガトース(D-Tagatose):+
D-フコース(D-Fucose):-
L-フコース(L-Fucose):-
D-アラビトール(D-Arabitol):-
L-アラビトール(L-Arabitol):-
グルコネート(Gluconate):+
2-ケト-グルコネート(2-Keto-gluconate):-
5-ケト-グルコネート(5-Keto-gluconate):-
【0049】
分子生物学的解析結果:分子生物学的な系統分類の指標として用いられている16SrDNAに関する乳酸菌8/11-3の解析結果は、添付した配列表の配列番号3の通りである。
すなわち、乳酸菌8/11-3のゲノムDNAから、PCRにより、16SrDNA領域の塩基配列を増幅し、シーケンサーによる解析を行った結果、16SrDNAのほぼ全長に当たる塩基配列が見出された。
この塩基配列をNCBIのBLAST解析で相同性検索を行ったところ、乳酸菌8/11-3の16SrDNA領域の塩基配列は、ロイコノストック属であるLeuconostoc mesenteroides ATCC8293株の塩基配列(登録番号:NR_074957.1)と相同性99%を示したので、乳酸菌8/11-3は、ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属するものである。
しかしながら、16SrDNA領域だけを比較したときですら完全には一致していないので、本発明の乳酸菌8/11-3は、上記の株とは異なる乳酸菌株である。
【0050】
前記の乳酸菌8/11-3の生理学的・化学分類学的性質を、バージース・マニュアル・オブ・システマティックバクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology,vol.3 1989)による分類及びその他の文献の記載内容に照らし合わせ、更に、上記16SrDNA解析の結果を考慮して判断した結果、本発明の「乳酸菌8/11-3」は、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する新規の微生物である。
また、乳酸菌8/11-3の16SrDNA領域の塩基配列に一致する16SrDNA領域の塩基配列を有する微生物が存在しないこと、ロイコノストック属に属する既知の株等と比べて高い自然免疫活性作用を示すこと等を含め総合的に検討した結果、乳酸菌8/11-3は単離された新規な微生物株であると判断した。
【0051】
乳酸菌8/11-3は、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(National Institute of Technology and Evaluation;以下、「NITE」と略記する)の特許微生物寄託センター(NPMD)に国内寄託され、受託番号:NITE P-02308(寄託日:2016年7月26日)として受託された微生物である。
乳酸菌8/11-3は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2016年7月26日)から、ブタペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2017年5月22日)、生存が証明され、ブタペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-02308」を受けているものである。
【0052】
細菌の一般的な性状として、その菌株としての性質は変異し易いため、本発明の乳酸菌8/11-3は、先に示した生理学的性状の範囲内に留まらない可能性も有している。また、かかる「変異」には、自然的な変異と人工的な変異の両方を含むことは言うまでもない。
【0053】
以下に、乳酸菌8/11-3の培養方法について記載する。乳酸菌8/11-3の培養方法は、ロイコノストック属の微生物に対して行われる一般的な培養方法に準じて行えばよい。
培養は嫌気条件下で行うことが好ましい。培地中の炭素源としては、例えば、D-リボース、D-ガラクトース、D-グルコース、D-フルクトース、D-マンノース、D-マンニトール、N-アセチルグルコサミン、アミグダリン、アルブチン、エスクリン、サリシン、D-セロビオース、D-マルトース、シュクロース、D-トレハロース、ゲンチオビオース、糖蜜、水飴、油脂類等の有機炭素化合物が用いられ、窒素源としては、肉エキス、カゼイン、ペプトン、酵母エキス、乾燥酵母、胚芽、大豆粉、尿素、アミノ酸、アンモニウム塩等の有機・無機窒素化合物を用いることができる。
また、塩類は、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、リン酸塩、鉄塩、銅塩、亜鉛塩、コバルト塩等の無機塩類を必要に応じて適宜添加する。更に、ビオチン、ビタミンB1、シスチン、オレイン酸メチル、ラード油等の生育促進物質を添加することが、目的物の産生量を増加させる点で好ましい。
また、シリコン油、界面活性剤等の消泡剤を添加してもよい。調製済みの培地としては、例えば、MRS培地、GAM培地等を用いることが好ましい。
【0054】
培養条件は、先に記したようにロイコノストック属の微生物に対して行われる一般的な培養条件に準じて行えばよい。液体培養法であれば静置培養が望ましい。小規模であれば蓋付きガラス瓶による静置培養法を用いてもよい。
培養温度は、25℃~37℃間に保つことが好ましく、30℃~37℃で行うことがより好ましい。培養pHは7付近で行うことが好ましい。培養期間は、用いた培地組成、培養温度等により変動するファクターであるが、乳酸菌8/11-3の場合、好ましくは12~72時間、より好ましくは24~48時間で充分な量の目的物を確保することができる。
培養して得られたコロニーをピックアップし、再度培地上でシングルコロニー形成を行うことも好ましい。
【0055】
<自然免疫活性化剤>
本発明の自然免疫活性化剤は、上記乳酸菌、該乳酸菌の死菌、又は、該乳酸菌の処理物を有効成分とする自然免疫活性化剤であって、
上記乳酸菌の処理物は、乳酸菌の、培養物、濃縮物、ペースト化物、乾燥物、液状化物、希釈物、破砕物、殺菌加工物、及び、培養物からの抽出物よりなる群から選ばれる少なくとも1つの処理物であることを特徴とする。
【0056】
本発明の自然免疫活性化剤は、上記の本発明の乳酸菌、該乳酸菌の死菌又は該乳酸菌の処理物を種々の状態で含むことができる。例えば、懸濁液、乳酸菌体、培養上清液、培地成分を含む状態等が挙げられる。
【0057】
本発明の自然免疫活性化剤は、上記乳酸菌をそのまま含んでいてもよく、又は、該乳酸菌に何らかの処理を施した乳酸菌処理物として含んでいてもよい。
該自然免疫活性化剤に用いられる乳酸菌の処理物としては、例えば、乳酸菌の培養物;濃縮物;ペースト化物;噴霧乾燥物、凍結乾燥物、真空乾燥物、ドラム乾燥物等の乾燥物;液状化物;希釈物;破砕物;殺菌加工物;該培養物からの抽出物;等が挙げられる。
【0058】
乳酸菌としては、生菌体、湿潤菌、乾燥菌等が適宜使用可能である。また、殺菌、すなわち、加熱殺菌処理、放射線殺菌処理、破砕処理等を施した死菌であってもよい。
【0059】
本発明の自然免疫活性化剤中の有効成分である、乳酸菌、該乳酸菌の死菌、該乳酸菌の処理物の、自然免疫活性化剤全体に対する含有量は、特に制限がなく、目的に応じて適宜選択することができるが、自然免疫活性化剤全体を100質量部としたときに、「乳酸菌、該乳酸菌の死菌、該乳酸菌の処理物の合計量」として、0.001~100質量部で含有されることが好ましく、より好ましくは0.01~99質量部、特に好ましくは0.1~95質量部、更に好ましくは1~90質量部で含有される。
【0060】
また、上記有効成分は、何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の、上記自然免疫活性化剤中の各々の有効成分の含有比については、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができる。
【0061】
本発明の自然免疫活性化剤は、上記乳酸菌、上記乳酸菌の死菌又は上記乳酸菌の処理物を有効成分として含有するが、それら有効成分に加えて、「その他の成分」を含有することができる。
上記自然免疫活性化剤における、上記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薬学的に許容され得る担体等が挙げられる。
かかる担体としては、特に制限はなく、例えば、後述する剤型等に応じて適宜選択される。また、自然免疫活性化剤中の「その他の成分」の含有量としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0062】
<医薬品;飲食品;健康食品等>
本発明の乳酸菌や該乳酸菌に由来する本発明の自然免疫活性化剤は、医薬品(薬剤)、医薬部外品、一般飲食品、健康食品、醗酵飲食品、粉ミルク等の規格を有する飲食品等に配合することが可能であり、それらの形態によらず様々な医薬品、飲食品等に応用できる。また、プロバイオティクスの生産等に利用できる。
中でも、上記した本発明の乳酸菌を用いて醗酵する工程を用いて製造された飲食品、更にその中でも醗酵乳は、乳酸菌の通常の効果や、本発明に特有の上記効果を発揮し易いために好ましい。
【0063】
本発明の自然免疫活性化剤の剤型としては、特に制限はなく、例えば、後述するような所望の投与方法に応じて適宜選択することができる。
具体的には、例えば、経口固形剤(錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、ハードカプセル剤、ソフトカプセル剤等)、経口液剤(内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等)、注射剤(溶剤、懸濁剤等)、軟膏剤、貼付剤、ゲル剤、クリーム剤、外用散剤、スプレー剤、吸入散布剤等が挙げられる。
【0064】
上記経口固形剤としては、例えば、上記有効成分に、賦形剤、更には必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味・矯臭剤等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
【0065】
該賦形剤としては、例えば、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。
上記結合剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
該崩壊剤としては、例えば、乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。
該滑沢剤としては、例えば、精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。
該着色剤としては、例えば、酸化チタン、酸化鉄等が挙げられる。
上記矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0066】
上記経口液剤としては、例えば、上記有効成分に、矯味・矯臭剤、緩衝剤、安定化剤、食用(加工)油、動植物油等の添加剤を加え、常法により製造することができる。
【0067】
該矯味・矯臭剤としては、例えば、白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。上記緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム等が挙げられる。上記安定化剤としては、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0068】
上記注射剤としては、例えば、上記有効成分に、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下用、筋肉内用、静脈内用等の注射剤を製造することができる。
該pH調節剤及び該緩衝剤としては、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。上記安定化剤としては、例えば、ピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。上記等張化剤としては、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。上記局所麻酔剤としては、例えば、塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。
【0069】
上記軟膏剤としては、例えば、上記有効成分に、公知の基剤、安定剤、湿潤剤、保存剤等を配合し、常法により混合し、製造することができる。
該基剤としては、例えば、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。上記保存剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸メチル、パラオキシ安息香酸エチル、パラオキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0070】
上記貼付剤としては、例えば、公知の支持体に上記軟膏剤としてのクリーム剤、ゲル剤、ペースト剤等を、常法により塗布し、製造することができる。上記支持体としては、例えば、綿、スフ、化学繊維からなる織布、不織布、軟質塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等のフィルム、発泡体シート等が挙げられる。
【0071】
本発明の自然免疫活性化剤は、例えば、自然免疫機構の活性化を必要とする個体、細菌等に対して好適に使用できる。
具体的には、例えば、健康維持や疲労回復を必要とする個体;癌や生活習慣病の予防や治療を必要とする個体;細菌、真菌、ウイルス等に感染した個体;等に投与することにより使用することができる。
【0072】
本発明の自然免疫活性化剤の投与対象動物としては、特に制限はないが、例えば、ヒト;マウス、ラット等の実験動物;サル;ウマ;ウシ、ブタ、ヤギ、ニワトリ等の家畜;ネコ、イヌ等のペット;等が挙げられる。
【0073】
また、上記自然免疫活性化剤の投与方法としては、特に制限はなく、例えば、上記した剤型等に応じ、適宜選択することができ、経口投与、腹腔内投与、血液中への注射、腸内への注入等が挙げられる。中でも、経口投与が、簡便で上記効果を発揮する点から好ましく、一般飲食品、健康食品、醗酵飲食品等の飲食品としての経口投与が特に好ましい。
【0074】
上記自然免疫活性化剤の投与量としては、特に制限・限定はなく、投与対象である個体の年齢、体重、所望の効果の程度等に応じて適宜選択することができるが、例えば、成人への1日の投与量は、有効成分の量として、1mg~30gが好ましく、10mg~10gがより好ましく、100mg~3gが特に好ましい。
また、投与時期としても、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、予防的に投与されてもよいし、治療的に投与されてもよい。
【0075】
「本発明の上記乳酸菌、該乳酸菌の死菌若しくは処理物、自然免疫活性化剤を含有する飲食品や、該乳酸菌を用いて醗酵する工程を用いて製造された飲食品」(以下、括弧内を単に「本発明の飲食品」と略記する場合がある)中の、乳酸菌、自然免疫活性化剤の含有量は、特に制限がなく、目的や飲食品の態様(種類)に応じて、適宜選択することができるが、飲食品全体を100質量部としたときに、上記の合計量で、0.001~100質量部で含有することが好ましく、より好ましくは0.01~99質量部、特に好ましくは0.1~95質量部の含量である。
【0076】
また、上記の何れか1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。2種以上を併用する場合の、上記飲食品中の各々の物質の含有量比には、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0077】
本発明の飲食品は、自然免疫活性化能及び/又は感染症予防治療能を有する。
本発明の飲食品は、上記した本発明の自然免疫活性化剤や感染症予防治療剤に加えて、更に、「その他の成分」を含有することができる。
【0078】
上記「その他の成分」としては、特に制限はなく、本発明の効果を損なわない範囲内で目的に応じて適宜選択することができ、例えば、各種食品原料等が挙げられる。また、「その他の成分」の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0079】
本発明の乳酸菌は、一般飲食品、健康食品、薬剤、醗酵飲食品、プロバイオティクスの生産等に利用できる。醗酵飲食品としては、醗酵乳、乳酸菌飲料、ヨーグルト、漬物、漬物製造用乳酸菌スターター等としての用途に特に好適である。
【0080】
上記食品の種類としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゼリー、キャンディー、チョコレート、ビスケット、グミ等の菓子類;緑茶、紅茶、コーヒー、清涼飲料等の嗜好飲料;醗酵乳、ヨーグルト、アイスクリーム、ラクトアイス等の乳製品;野菜飲料、果実飲料、ジャム類等の野菜・果実加工品;スープ等の液体食品;パン類、麺類等の穀物加工品;各種調味料;等が挙げられる。中でも、ヨーグルト、醗酵乳等の乳製品が好ましい。
これらの食品の製造方法としては、特に制限はなく、例えば、通常の各種食品の製造方法に応じて、適宜製造することができる。
【0081】
また、上記食品は、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等の経口固形剤や、内服液剤、シロップ剤等の経口液剤として製造されたものであってもよい。上記経口固形剤、経口液剤の製造方法は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、上記した薬剤の経口固形剤、経口液剤の製造方法にならい、製造することができる。
【0082】
本発明の飲食品は、自然免疫機構の活性化や感染症に対して抵抗力を付けること等を目的とした、機能性食品、健康食品等として、特に有用である。
本発明の乳酸菌、該死菌若しくは処理物等を飲食品の製造に使用する場合、製造方法は当業者に周知の方法によって行うことができる。当業者であれば、本発明の乳酸菌の(死)菌体又は処理物を他の成分と混合する工程、成形工程、殺菌工程、醗酵工程、焼成工程、乾燥工程、冷却工程、造粒工程、包装工程等を適宜組み合わせ、目的の飲食品を作ることが可能である。
【0083】
また、本発明の乳酸菌を各種醗酵乳の製造に使用する場合、当業者に周知の方法を用いて製造することができる。例えば、本発明の乳酸菌を醗酵乳に死菌として所要量添加する工程を用いて製造された飲食品や、乳酸菌スターターとして本発明の乳酸菌を用いて醗酵する工程を用いて製造された飲食品が挙げられる。
乳酸菌スターターとして本発明の乳酸菌を用いて醗酵を行う場合、本発明の乳酸菌の培養条件と同様の条件等で行うことができる。
【実施例
【0084】
以下、実施例及び検討例に基づき本発明を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例等の具体的範囲に限定されるものではない。
【0085】
上述の通り、実施例において使用する「乳酸菌#7-2」及び「乳酸菌8/11-3」はキムチから、「乳酸菌#4-2」は糠から分離されたものである。
【0086】
ロイコノストック・カルノサム(Leuconostoc carnosum)に属する乳酸菌#7-2は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託されている(受託番号:NITE P-02307、寄託日2016年7月26日)。
乳酸菌#7-2は、その後、千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室、独立行政法人製品評価技術基盤機構(NITE)の特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2016年7月26日)から、ブタペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2017年7月25日)、生存が証明され、ブタペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-02307」を受けているものである。
【0087】
ロイコノストック・ゲリダム(Leuconostoc gelidum)に属する乳酸菌#4-2は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託されている(受託番号:NITE P-02306、寄託日2016年7月26日)。
乳酸菌#4-2も上記乳酸菌#7-2と同様に、特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2016年7月26日)から、ブタペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2017年7月25日)、生存が証明され、ブタペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-02306」を受けているものである。
【0088】
ロイコノストック・メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroides)に属する乳酸菌8/11-3は、独立行政法人製品評価技術基盤機構特許微生物寄託センター(NPMD)(千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託されている(受託番号:NITE P-02308、寄託日2016年7月26日)。
乳酸菌8/11-3も上記乳酸菌#7-2と同様に、特許微生物寄託センター(NPMD)に、原寄託申請書を提出して、国内寄託(原寄託日:2016年7月26日)から、ブタペスト条約に基づく寄託への移管申請を行い(移管日(国際寄託日):2017年5月22日)、生存が証明され、ブタペスト条約に基づく寄託(国際寄託)への移管申請が受領された結果、受託番号「NITE BP-02308」を受けているものである。
【0089】
<材料と方法>
<<カイコ筋肉標本を用いた、乳酸菌の自然免疫促進活性の測定>>
自然免疫促進活性の測定は、特許文献1に記載されている方法を用い、カイコ筋肉収縮活性を指標に行った。乳酸菌を0.5%炭酸カルシウムMRS寒天培地に広げて、30℃で嫌気培養し、コロニーを形成させた。コロニーを採取して、15mLチューブに加えたMRS培地14mLに植菌し、30℃にて2日間静置培養した。この培養液全量を100mLのMRS液体培地に加えて、30℃で1日静置培養した。この培養液を121℃で20分間オートクレーブ処理し、8000rpm、4℃で10分間遠心分離した。沈殿を0.9%NaCl50mLで洗浄した後、再度8000rpm、4℃で10分間遠心分離し、その沈殿を1mLの0.9%NaCl液に懸濁した。この懸濁液50μLを希釈してカイコ筋肉標本に注射し、注射前後のカイコ標本の長さの変化を測定した。カイコ筋肉標本の長さが15%縮むサンプル量を1unitとした。一方、菌の懸濁液100μLを、遠心エバポレーターで乾燥させて、乾燥重量を測定した。
【0090】
<<各乳酸菌の牛乳・果物・野菜ジュース中での増殖試験>>
乳酸菌の前培養は、MRS液体培地を用いて30℃で嫌気培養することにより行った。各種野菜・果物ジュース50mL中に、前培養液を添加して、30℃で静置培養を行った。乳酸菌の生菌数測定は、培養液をMRS寒天培地に広げて30℃で嫌気培養し、現れたコロニー数を計測することにより行った。1.0×10細胞/mL以上になった場合には増殖能「有」と判定した。
【0091】
ゴーヤジュースは、RO水にゴーヤを入れてジューサーで処理したものを121℃で20分間オートクレーブ処理して調製した。
キウイジュースは、キウイ100gに対してRO水500mLを加えて調製した。ミカンジュースは「オレンジ100%(株式会社東京めいらく製)」、リンゴジュースは「アップル100%(株式会社東京めいらく製)」、野菜ミックスジュースは「1日分の野菜(株式会社伊藤園製)」を使用した。
ブロッコリージュースは、オートクレーブ処理後37℃で1日間インキュベートして調製した。
pHの調整は、10規定の水酸化ナトリウム溶液を加えて行い、キウイジュースはpH7に、アップルジュース、オレンジジュース及びグレープフルーツジュースはpH6に調節した。
【0092】
牛乳(株式会社明治製、おいしい牛乳)50mLに対して、3種の乳酸菌のグリセロールストックを添加して30℃で1日嫌気培養を行った。牛乳中の生菌数は、牛乳の希釈液をMRS寒天培地上に100μL広げて、30℃で嫌気培養して出現したコロニー数を計測することにより算出した。
グリセロールストックは、各菌株を0.5%炭酸カルシウムMRS寒天培地に広げて、30℃で嫌気培養してコロニーを形成させた。該コロニーを14mLのMRS液体培地に植菌して30℃で1日嫌気培養した後に、8000rpm、4℃で5分間遠心分離した沈殿を2mLの0.9%NaClに懸濁して、これを等量の80%グリセロール液とよく混ぜて-80℃にて保存した。
【0093】
<<野菜・果物ジュース中での糖濃度の定量>>
ジュース中の全糖濃度をフェノール硫酸法で定量した。グルコース濃度はAccu-Chek(ロシュ社製)を用いて定量した。
フェノール硫酸法は以下のように行った。培養液を8000rpmで10分間遠心分離して、上清を100μL回収した。次に、5%フェノールを100μL加えて、5秒間vortexミキサーで強く撹拌し、硫酸を500μL加えて、発熱するまでvortexミキサーで強く撹拌した。室温で20分間静置後、OD490を測定した。アキュチェックアビバにアキュチェックアビバストリップFをセットしてグルコース濃度の定量を行った。
【0094】
実施例1
<各乳酸菌の自然免疫促進活性の測定>
分離した各種乳酸菌をオートクレーブ処理し、遠心分離後、菌体成分画分を回収した。菌の懸濁液をカイコ筋肉標本に注射して、筋肉の収縮を測定することにより各乳酸菌の自然免疫促進活性を評価した。結果を表1に示す。
その結果、Leuconostoc carnosum #7-2(乳酸菌#7-2)の比活性は460units/mg、Leuconostoc gelidum #4-2(乳酸菌#4-2)の比活性は250units/mg、Leuconostoc mesenteroides 8/11-3(乳酸菌8/11-3)の比活性は250units/mgであり、何れの乳酸菌も高い活性値が得られた(表1)。
【0095】
【表1】
【0096】
実施例2
<各乳酸菌の果物・野菜ジュース及び牛乳中での増殖>
上記の乳酸菌3株それぞれを果物・野菜ジュース及び牛乳に植菌し、菌の増殖の有無を検討した。結果を表2~4に示す。
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【0100】
乳酸菌8/11-3のみ、中和していない果物・野菜ジュースで増殖が認められた(表2)。一方、乳酸菌#7-2及び乳酸菌#4-2は、果物ジュースを中和した場合に増殖をした(表3)。
また、各乳酸菌を牛乳中で、30℃で24時間培養した結果、何れも増殖が認められた(表4)。
【0101】
実施例3
<各乳酸菌の果物・野菜ジュース中での増殖による糖含量の低下>
3株それぞれの乳酸菌を果物ジュース中で培養し、ジュース中の糖濃度を定量した。全糖濃度はフェノール硫酸法で測定した。グルコース濃度はAccu-Chek(ロシュ社製)で定量した。測定結果を表5に示す。
【0102】
【表5】
【0103】
表5の結果、乳酸菌#7-2を増殖させたオレンジ・グレープフルーツジュース、乳酸菌#4-2を増殖させたオレンジ・グレープフルーツジュース、乳酸菌8/11-3を増殖させたキウイ・グレープフルーツジュースで、全糖濃度及びグルコース濃度の大きな減少が認められた。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明の新規乳酸菌や該処理物は、高い自然免疫活性化能を有し、更には、感染症予防治療効果もある。よって、本発明の乳酸菌を利用した、自然免疫を活性化させる自然免疫活性化剤や感染症予防治療剤を含有する薬剤や飲食品を提供することができ、医薬品業界、食品業界等で広く利用可能である。
【0105】
本願は、2016年8月16日に出願した日本の特許出願である特願2016-159557に基づくものであり、それらの出願の全ての内容はここに引用し、本願発明の明細書の開示として取り込まれるものである。
【受託番号】
【0106】
NITE BP-02307
NITE BP-02306
NITE BP-02308
【配列表フリーテキスト】
【0107】
配列番号1は、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する未知の菌株(乳酸菌#7-2)の、16SrDNAのほぼ全長にあたる塩基配列である。
配列番号2は、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する未知の菌株(乳酸菌#4-2)の、16SrDNAのほぼ全長にあたる塩基配列である。
配列番号3は、ロイコノストック(Leuconostoc)属に属する未知の菌株(乳酸菌8/11-3)の、16SrDNAのほぼ全長にあたる塩基配列である。
【配列表】
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