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特許7090414身体貼付用冷却組成物、及びそれを使用した身体冷却用貼付剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】身体貼付用冷却組成物、及びそれを使用した身体冷却用貼付剤
(51)【国際特許分類】
   A61F 7/02 20060101AFI20220617BHJP
   A61K 9/70 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61F7/02 A
A61K9/70 405
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2017213706
(22)【出願日】2017-11-06
(65)【公開番号】P2018083069
(43)【公開日】2018-05-31
【審査請求日】2020-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2016220563
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(72)【発明者】
【氏名】合田 隆久
(72)【発明者】
【氏名】上田 梓
【審査官】関本 達基
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-016434(JP,A)
【文献】特開2012-144478(JP,A)
【文献】特開2003-088542(JP,A)
【文献】特開2010-131096(JP,A)
【文献】国際公開第96/029062(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0316626(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/02
A61K 9/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エタノール1~50重量%、(B)1,3-プロパンジオール1~50重量%、及び(C)グリセリン1~50重量%を含有する身体貼付用冷却組成物(但し、l-メントール及びエタノールを重量比で1:0.5~1:10で含む場合を除く)が、不織布上に積層されてなり、
冷凍庫で冷却した後に使用される、身体冷却用貼付剤。
【請求項2】
前記身体貼付用冷却組成物が、更に水を30~80重量%含有する、請求項に記載の身体冷却用貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、身体の冷却に使用される身体貼付用冷却組成物に関する。より具体的には、低温で冷却、保存しても凍結を抑制できる身体貼付用冷却組成物に関する。更に、本発明は、当該身体貼付用冷却組成物を使用した身体冷却用貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、運動後の身体の冷却、熱中症等の高温障害の予防又は改善、皮膚の炎症の予防又は改善、むくみの予防又は軽減、血行促進等の目的で、身体冷却用貼付剤が使用されている。従来、身体冷却用貼付剤は、水分の気化熱によって貼付部分を冷却する身体貼付用冷却組成物が、不織布等の支持体に支持されたものが使用されている。
【0003】
また、従来、身体冷却用貼付剤は、冷蔵庫内又は常温において保存され使用されるのが一般的であったが、より強い冷却感を求めて冷凍庫内に保存してより低温状態として使用されることがある。しかしながら、従来の身体冷却用貼付剤では、冷凍庫内に保存すると、身体貼付用冷却組成物が凍結し、その結果、貼付対象となる身体部位の形状に追従できず、貼付できなくなるという欠点があった。
【0004】
そこで、近年、身体冷却用貼付剤の性能として、冷凍庫内に保存しても凍結しないことが求められており、このような性能を備え得る身体冷却用貼付剤について検討が行われている。例えば、特許文献1には、身体貼付用冷却組成物として凝固点が-18℃以下である含水系粘着剤を使用することによって、冷凍庫で冷却、保存しても、凍結を抑制して身体の貼付部位への追従性を保持できることが報告されている。しかしながら、特許文献1の技術では、冷凍庫で冷却、保存による凍結抑制効果については十分に満足できるものではなく、更なる改善の余地が残されている。
【0005】
このような従来技術を背景として、より強い冷却感を求めて冷凍庫内に保存しても、身体貼付用冷却組成物の凍結を抑制でき、使用開始時に貼付対象となる身体部位の形状に追従できる身体冷却用貼付剤の開発が切望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2004-16434号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、冷凍庫等を用いて低温条件下で冷却、保存しても凍結を抑制できる身体貼付用冷却組成物を提供することである。更に、本発明の他の目的は、当該身体貼付用冷却組成物を使用した身体冷却用貼付剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、1価アルコール、2価アルコール、及び3価アルコールを含む身体貼付用冷却組成物は、冷凍庫内の低温で冷却、保存しても、凍結を抑制でき、使用開始時に貼付対象となる身体部位の形状に追従可能になることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0009】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)1価アルコール、(B)2価アルコール、及び(C)3価アルコールを含有する、身体貼付用冷却組成物。
項2. 前記(A)成分が、エタノール、メタノール、及びイソプロパノールよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1に記載の身体貼付用冷却組成物。
項3. 前記(B)成分が、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、及びポリエチレングリコールよりなる群から選択される少なくとも1種である、項1又は2に記載の身体貼付用冷却組成物。
項4. 前記(C)成分がグリセリンである、項1~3のいずれかに記載の身体貼付用冷却組成物。
項5. 前記(A)成分が1~50重量%、前記(B)成分が1~50重量%、及び前記(C)成分が1~50重量%含まれる、項1~4のいずれかに記載の身体貼付用冷却組成物。
項6. 冷凍庫で冷却した後に使用される、項1~5のいずれかに記載の身体貼付用冷却組成物。
項7. 支持体上に項1~6のいずれかに記載の身体貼付用冷却組成物が積層されてなる、身体冷却用貼付剤。
項8. 前記支持体が不織布である、項7に記載の身体冷却用貼付剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明の身体貼付用冷却組成物によれば、冷凍庫等を用いて低温条件下で冷却、保存しても凍結を抑制できる。それ故、本発明の身体貼付用冷却組成物は、冷凍庫等を用いて低温条件下で冷却した後に使用しても、貼付対象となる身体部位に対して形状追従性があり、貼付対象となる身体部位に対して安定に密着させることができる。また、本発明の身体貼付用冷却組成物は、冷凍庫等を用いて低温条件下で冷却した後に使用することによって、貼付対象となる身体部位に対してより強い冷却感を与えることもできる。
【0011】
1.身体貼付用冷却組成物
本発明の身体貼付用冷却組成物は、1価アルコール(以下、(A)成分と表記することもある)、2価アルコール(以下、(B)成分と表記することもある)、及び3価アルコール(以下、(C)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。このように、(A)~(C)成分を組み合わせて身体貼付用冷却組成物に含有させることにより、冷凍庫等を用いて低温条件下で冷却、保存しても、凍結を抑制することが可能になる。以下、本発明の身体貼付用冷却組成物について詳述する。
【0012】
(A)1価アルコール
本発明で使用される1価アルコールの炭素数の種類については、皮膚への適用が許容されることを限度として特に制限されないが、具体的には、1価の低級アルコールが挙げられる。より具体的には、本発明で使用される1価アルコールとして、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、2-メチル-1-プロパノール、2-ブタノール、2-メチル-2-プロパノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノール、2-メチル-1-ブタノール、2,2-ジメチル-1-プロパノール、2-ペンタノール、3-メチル-2-ブタノール、3-ペンタノール、2-メチル-2-ブタノール等の炭素数1~5の1価アルコールが挙げられる。これらの1価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0013】
1価アルコールの中でも、低温で冷却、保存による凍結をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくは炭素数1~4の1価アルコール、更に好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、特に好ましくはエタノール、イソプロパノールが挙げられる。
【0014】
本発明の身体貼付用冷却組成物における(A)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、1~50重量%が挙げられる。低温で冷却、保存による凍結を効果的に抑制し、且つ、所定量以下として水をより多く含有することで冷却効果を担保するという観点から、本発明の身体貼付用冷却組成物における(A)成分の含有量として、好ましくは1~40重量%、更に好ましくは2~20重量%、特に好ましくは2~10重量%が挙げられる。
【0015】
(B)2価アルコール
本発明で使用される2価アルコールの炭素数の種類については、皮膚への適用が許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、炭素数2~6の2価アルコール及びポリエチレングリコールが挙げられる。より具体的には、本発明で使用される2価アルコールとして、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、3-メチル-1,3-ブタンジオール(イソプレングリコール)等が挙げられる。また、ポリエチレングリコールとしては、ポリエチレングリコール300等の平均分子量180~2000のポリエチレングリコール等が挙げられる。ここで、ポリエチレングリコールの平均分子量は、医薬部外品原料規格2006に収載されている試験法で測定される値である。
【0016】
2価アルコールの中でも、低温で冷却、保存による凍結をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、ジプロピレングリコール、エチレングリコール、更に好ましくはプロピレングリコール、エチレングリコールが挙げられる。
【0017】
本発明の身体貼付用冷却組成物における(B)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、1~50重量%が挙げられる。低温で冷却、保存による凍結を効果的に抑制し、且つ、所定量以下として水をより多く含有することで冷却効果を担保するという観点から、本発明の身体貼付用冷却組成物における(B)成分の含有量として、好ましくは3~40重量%、更に好ましくは9~20重量%が挙げられる。
【0018】
また、本発明の身体貼付用冷却組成物において、(A)成分と(B)成分の比率については、特に制限されず、前述する各成分の含有量の範囲内で適宜設定されるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、(B)成分の総量が10~1500重量部、好ましくは100~1000重量部、更に好ましくは150~500重量部が挙げられる。
【0019】
(C)3価アルコール
本発明で使用される3価アルコールの炭素数の種類については、皮膚への適用が許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、炭素数2~6の3価アルコールが挙げられる。より具体的には、本発明で使用される3価アルコールとして、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、1,2,4-ブタントリオール等が挙げられる。これらの3価アルコールは、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0020】
3価アルコールの中でも、低温で冷却、保存による凍結をより一層効果的に抑制するという観点から、好ましくはグリセリンが挙げられる。
【0021】
本発明の身体貼付用冷却組成物における(C)成分の含有量については、特に制限されないが、例えば、1~50重量%が挙げられる。低温で冷却、保存による凍結を効果的に抑制し、且つ、所定量以下として水をより多く含有することで冷却効果を担保するという観点から、本発明の身体貼付用冷却組成物における(C)成分の含有量として、好ましくは3~40重量%、更に好ましくは9~20重量%が挙げられる。
【0022】
また、本発明の身体貼付用冷却組成物において、(A)成分と(C)成分の比率については、特に制限されず、前述する各成分の含有量の範囲内で適宜設定されるが、例えば、(A)成分の総量100重量部当たり、(C)成分の総量が10~1500重量部、好ましくは100~1000重量部、更に好ましくは150~500重量部が挙げられる。
【0023】

本発明の身体貼付用冷却組成物は、水分の気化熱によって貼付部分を冷却するので、水が含まれる。本発明の身体貼付用冷却組成物における水の含有量については、特に制限されないが、例えば、3~95重量%、好ましくは30~80重量%、更に好ましくは50~70重量%が挙げられる。
【0024】
ゲル基剤
本発明の身体貼付用冷却組成物には、保水性を備えさせ、且つ流動性がなく所定形状を保持するために、ゲル基剤が含まれる。ゲル基剤によって、本発明の身体貼付用冷却組成物を身体部位への粘着性を有する含水ゲルの状態にすることが可能になる。
【0025】
本発明で使用されるゲル基剤の種類については、マトリクス形成による保水性及び保形性を備えさせ得ることを限度として特に制限されないが、例えば、有機ゲル基剤、無機ゲル基剤等が挙げられる。
【0026】
有機ゲル基剤としては、具体的には、カラギーナン、アルギン酸、アルギン酸プロピレングリコールエステル、タラガム、ローカストビーンガム、グルコマンナン、キサンタンガム、ジェランガム、ペクチン、プルラン、グァーガム、サイリウムシードガム、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、マンナン、ゼラチン、寒天、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートメチルセルロース、酢酸セルロース、酢酸セルロースヒドロキシメチルエチルセルロース等の増粘多糖類;架橋型ポリアクリル酸、部分中和型ポリアクリル酸、ポリアクリル酸ポリメタクリル酸共重合体、これらの塩(ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアミン塩;アンモニウム塩等)等のポリアクリル酸系ポリマー;ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレン系共重合体、ポリスチレン-ポリイソプレン-ポリスチレン系共重合体、ポリスチレン-ポリエチレン-ポリブチレン-ポリスチレン共重合体、ポリスチレン-ポリエチレン-ポリプロピレン-ポリスチレン共重合体等のゴム系ポリマー;ポリビニルアルコール、カルボキシビニルポリマー、ウレタン系ポリマー、シリコーン系ポリマー等が挙げられる。これらの有機ゲル基剤の中でも、好ましくはポリアクリル酸系ポリマー、ポリビニルアルコール、更に好ましくはポリアクリル酸系ポリマーが挙げられる。
【0027】
無機ゲル基剤としては、具体的には、水酸化アルミニウム、塩化アルミニウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム、水酸化アルミニウムマグネシウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノアセテート、カオリン、アルミニウムミョウバンのような複塩、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、スメクタイト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト、ベイデライト、ノントロナイト、サウコナイト、ステベンサイド、ラポナイト、増粘性シリカ等が挙げられる。これらの無機ゲル基剤の中でも、好ましくは水酸化アルミニウムが挙げられる。
【0028】
これらのゲル基剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0029】
これらのゲル基剤の中でも、有機ゲル基剤は、優れた粘着性を示し、冷却が求められる身体部位において身体貼付用冷却組成物を良好に密着させることができるので、本発明で使用されるゲル基剤には、少なくとも有機ゲル基剤が含まれていることが好ましい。
【0030】
更に、保形性の向上という観点から、本発明で使用されるゲル基剤の好適な態様として、有機ゲル基剤と無機ゲル基剤とを組み合わせて含んでいることが挙げられる。ゲル基剤として、有機ゲル基剤と無機ゲル基剤を併用する場合、これらの比率については、使用する有機ゲル基剤及び無機ゲル基剤の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、有機ゲル基剤100重量部当たり、無機ゲル基剤が0.01~100重量部、好ましくは0.1~30重量部、更に好ましくは1~10重量部が挙げられる。
【0031】
本発明の身体貼付用冷却組成物におけるゲル基剤の含有量については、保水性及び保形性を備えさせ得る範囲であることを限度として特に制限されず、使用するゲル基剤の種類に応じて適宜設定すればよいが、例えば、ゲル基剤の総量で1~30重量%、好ましくは2~20重量%、更に好ましくは3~10重量%が挙げられる。
【0032】
清涼化剤
本発明の身体貼付用冷却組成物には、貼付部位において清涼感を付与し、冷却効果を効果的に実感させるために、清涼化剤が含まれていてもよい。
【0033】
本発明で使用される清涼化剤の種類については、特に制限されないが、例えば、l-メントール、乳酸メンチル、メントン、カンフル、ボルネオール、チモール、スピラントール、サリチル酸メチル等が挙げられる。これらの清涼化剤の中でも、好ましくはl-メントール、乳酸メンチルが挙げられる。これらの清涼化剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、清涼化剤は、有機又は無機粒子に吸着させて粒子状に加工したものを使用してもよい。
【0034】
本発明の身体貼付用冷却組成物に清涼化剤を含有させる場合、その含有量については、付与すべき清涼感の程度等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0超~10重量%、好ましくは0.01~5重量%、更に好ましくは0.1~3重量%が挙げられる。
【0035】
pH
本発明の身体貼付用冷却組成物は、優れた保形性及び冷却効果を備えさせる上で、酸性~弱酸性であることが望ましい。本発明の身体貼付用冷却組成物のpHとしては、具体的には、4~6.5程度、好ましくはpH4.5~6程度が挙げられる。
【0036】
このようなpH範囲に調整するには、pH調整剤を使用すればよい。pH調整剤の種類については、特に制限されないが、例えば、酒石酸、クエン酸、乳酸、グルコン酸、グリコール酸、リンゴ酸、フマール酸、メタスルホン酸、マレイン酸、酢酸等の有機酸;塩酸、リン酸、硫酸、硝酸及び臭化水素酸等の無機酸が挙げられる。これらのpH調整剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0037】
その他の成分
本発明の身体貼付用冷却組成物には、前述する成分に加えて、必要に応じて、他の成分を含んでいてもよい。このような成分としては、例えば、酸性ムコポリサッカライド、カミツレ、セイヨウトチノキ、イチョウ、ハマメリエキス、グレープフルーツエキス、ローズマリーエキス、レモンエキス、ビタミンE、ニコチン酸誘導体等の血行促進剤;グリセリン、セラミド、コラーゲン、ヒアルロン酸、スクワラン等の保湿剤;バジルエキス、ジュニパーエキス等の疲労回復剤;インドメタシン、ジクロフェナック、フルルビプロフェン、ケトプロフェン、ピロキシカム、フェルビナック、サリチル酸メチル、サリチル酸グリコール等の鎮痛剤;茶エキス、朝鮮人参エキス、カフェイン、セイヨウトチノキ、アミノフィリン、エスシン、アントシアニジン、有機ヨウ素化合物、オトギリ草エキス、シモツケ草エキス、スギナ、マンネンロウ、セイヨウキヅタ、チオムカーゼ、ヒアルウロニダーゼ等のスリミング剤;テルミナリア、ビスナガ、マユス、セイヨウトチノキ、アントシアニン、ビタミンP、キンセンカ、コンコリット酸、シラノール、等のむくみ改善剤;プロテアーゼ等のピーリング剤;チオグリコール酸カルシウム等の除毛剤;γ-オリザノール等の自律神経調節剤;天然香料、単品香料等の香料;防腐剤、除菌剤、抗菌剤、色素、保湿剤、刺激緩和剤、界面活性剤、(A)~(C)成分以外の溶剤、糖アルコール等が挙げられる。
【0038】
製造方法
本発明の身体貼付用冷却組成物は、各含有成分を混合して含水ゲルを形成させることにより製造することができる。
【0039】
形態
本発明の身体貼付用冷却組成物は、支持シートに支持されることなく、含水ゲルの状態のまま使用してもよいが、身体部位への貼付簡易性、身体部位からの剥離容易性等、取り扱いを簡便にするという観点から、支持体に積層した身体冷却用貼付剤の形態にすることが好ましい。当該身体冷却用貼付剤の具体的態様については、「2.身体冷却用貼付剤」の欄で後述する。
【0040】
用途・使用方法
本発明の身体貼付用冷却組成物は、冷却が求められる身体部位に貼付し、当該身体部位を冷却する用途に使用される。具体的には、本発明の身体貼付用冷却組成物は、首筋用冷却剤、眼用冷却剤、顔用冷却剤、脚用冷却剤、肩用冷却剤、腰用冷却剤、皮膚引き締め用冷却剤、運動後の冷却剤、打撲、捻挫等の炎症を伴う疾患の冷却剤等として使用することができる。
【0041】
また、本発明の身体貼付用冷却組成物は、常温、冷蔵庫(例えば、0℃~10℃程度)、又は冷凍庫(例えば、―15℃~-25℃程度)に保存し、使用時に取り出して身体部位に貼付すればよい。本発明の身体貼付用冷却組成物は、強い冷却感を付与するために冷凍庫に保存しても、凍結を抑制でき、貼付される身体部位の形状に追従可能になっている。このような本発明の効果に鑑みれば、本発明の身体貼付用冷却組成物の好適な態様として、冷凍庫に保存し、使用時に取り出して身体部位に貼付する態様が挙げられる。
【0042】
2.身体冷却用貼付剤
本発明の身体冷却用貼付剤は、前記身体貼付用冷却組成物が支持体上に積層された構造を有する。本発明の身体冷却用貼付剤において、支持体側とは反対側の前記身体貼付用冷却組成物の表面が皮膚貼付面になる。
【0043】
身体貼付用冷却組成物を支持するために使用される支持体の素材については、特に制限されず、不織布、織布等の布状シートであってもよく、また樹脂フィルムであってもよい。
【0044】
支持体として使用される布状シートの構成原料については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ビニロン、レーヨン、アクリル、アセテート、ポリ塩化ビニル等の合成繊維;綿、麻、絹、紙等の天然繊維;これらの混合繊維等が挙げられる。
【0045】
また、支持体として使用される布状シートの目付については、特に制限されないが、例えば、10~500g/m2、好ましくは20~400g/m2、更に好ましくは50~250g/m2が挙げられる。
【0046】
支持体として使用される樹脂フィルムの構成原料については、特に制限されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート等が挙げられる。
【0047】
また、支持体として使用される樹脂フィルムの厚みについては、特に制限されないが、例えば、0.01~10000μm、好ましくは0.1~2000μm、更に好ましくは10~1000μmが挙げられる。
【0048】
これらの支持体の中でも、良好な使用感を付与するという観点から、好ましくは布状シート、更に好ましくは不織布が挙げられる。
【0049】
また、本発明の身体冷却用貼付剤において、支持体は1種単独で形成された単層構造であってもよく、また同一又は異なる2以上の素材が積層された複層構造であってもよい。
【0050】
支持体の形状については、特に制限されず、貼付対象となる身体部位の形状に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
本発明の身体冷却用貼付剤において、前記身体貼付用冷却組成物は、支持体の一方の面の少なくとも一部に積層されていればよいが、身体部位への密着性を高めるという観点から、支持体の一方の全面に設けられていることが好ましい。
【0052】
本発明の身体冷却用貼付剤において、支持体上に設けられる前記身体貼付用冷却組成物の厚みについては、特に制限されないが、例えば0.01~50mm、好ましくは0.1~30mm、更に好ましくは0.5~20mmが挙げられる。
【0053】
本発明の身体冷却用貼付剤には、前記身体貼付用冷却組成物の皮膚貼付面側には、必要に応じて、剥離可能な離型層が設けられていてもよい。離型層を設けることによって、使用時まで前記身体貼付用冷却組成物を衛生的に保ち、且つ取り扱い性を向上させることができる。離型層は使用時に剥離除去される。
【0054】
離型層の素材については、前記身体貼付用冷却組成物から剥離可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、ポリエチレンテレフタラート、ポリアクリロニトリル、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリプロピレン等の樹脂フィルム;シリコン加工等の離型性付与加工を施した紙等が挙げられる。また、離型層として樹脂フィルムを使用する場合であっても、シリコン加工等の離型性付与加工が施されていてもよい。
【0055】
本発明の身体冷却用貼付剤は、支持体上に前記身体貼付用冷却組成物からなる層(含水ゲル)を積層させることによって調製される。具体的には、支持体に前記身体貼付用冷却組成物を所定の厚みになるように塗膏し、必要に応じて当該身体貼付用冷却組成物の上に離型層を密着させる方法;離型層上に前記身体貼付用冷却組成物を所定の厚みになるように塗膏した後に、当該身体貼付用冷却組成物の表面に支持体を密着させる方法等が挙げられる。なお、支持体又は離型層に対する前記身体貼付用冷却組成物の塗膏は、前記身体貼付用冷却組成物の含有成分を混合した後に、ゲル基剤によるゲル化がある程度進行して流動性があるゲル状になった状態で行うことが望ましい。
【0056】
本発明の身体冷却用貼付剤の用途及び使用方法については、前記「1.身体貼付用冷却組成物」の欄に記載の通りである。
【実施例
【0057】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0058】
試験例1
表1~6に示す組成に従って身体貼付用冷却組成物を調製した。一般的な身体貼付用冷却組成物では、ゲル基剤が含まれ、保形性が付与されているが、本試験例では、不凍性の評価を目的としているので、身体貼付用冷却組成物の不凍性に影響を及ぼさないゲル基剤は便宜上配合しなかった。
【0059】
得られた身体貼付用冷却組成物40mlを約50ml容のスクリュー管に入れて蓋をした状態で、-20℃に設定された冷凍庫に入れて24時間保存した。その後、各身体貼付用冷却組成物の性状を目視にて確認し、以下の判定基準に従って、不凍性について評価した。
<不凍性の判定基準>
○:凍結している箇所がなく、組成物全体が流動性を維持しており、取り出した直後に振動を与えても凍結が生じない。
△:部分的に凍結した部分が存在する、又は取り出した直後に振動を与えると凍結が生じる。
×:全体が凍結している。
【0060】
得られた結果を表1~6に示す。1価アルコール、2価アルコール、又は3価アルコールをそれぞれ単独で使用した場合には、-20℃での保存によって凍結が認められた(比較例1~5)。また、1価アルコール、2価アルコール、及び3価アルコールの内、2つ以上を組み合わせた場合であっても、-20℃での保存によって凍結が認められた(比較例6~18)。これに対して、1価アルコール、2価アルコール、及び3価アルコールを組み合わせて使用した場合には、-20℃での保存によっても、凍結が一切認められず、流動性を維持できていた(実施例1~72)。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
【表5】
【0066】
【表6】
【0067】
試験例2
表7に示す組成に従って身体貼付用冷却組成物を調製した。具体的には、酒石酸、青色1号及び水を混合して混合液Aを調製した。また、別途、1価アルコール、2価アルコール、3価アルコール、部分中和型ポリアクリル酸ナトリウム、及び水酸化アルミニウムゲルを混合して混合液Bを調製した。次いで、混合液Aと混合液Bを混合し、3分間撹拌してゲル状を呈し始めたのを確認し、その時点でポリエステル製の不織布(縦5cm、横13cmの長方形)の一方の面の全面に厚み2mmとなるように塗膏し、支持体上に身体貼付用冷却組成物からなる含水ゲルを積層させた。次いで、ポリプロピレン製のフィルムからなる離型層を身体貼付用冷却組成物上に積層させた後に、アルミラミネート袋に収容して密封し、60℃で24時間静置した後に常温に戻すことにより身体冷却用貼付剤を製造した。
【0068】
常温に戻して24時間経過した時点で、アルミラミネート袋に収容した状態で身体冷却用貼付剤を-20℃に設定された冷凍庫に入れて24時間保存した。その後、アルミラミネート袋から身体冷却用貼付剤を取り出し、身体貼付用冷却組成物(含水ゲル)の性状を目視にて確認し、以下の判定基準に従って、不凍性について評価した。
<不凍性の判定基準>
○:身体貼付用冷却組成物に凍結している箇所がなく、身体冷却用貼付剤が身体の形状への追従性を有している。
△:身体貼付用冷却組成物が部分的に凍結した部分が存在し、身体冷却用貼付剤の身体の形状への追従性が悪くなっている。
×:身体貼付用冷却組成物の全体が凍結しており、身体冷却用貼付剤の身体の形状への追従性がない。
【0069】
得られた結果を表7に示す。2価アルコールと3価アルコールの組み合わせの場合及び1価アルコールと2価アルコールの組み合わせの場合では、-20℃での保存によって、身体冷却用貼付剤における身体貼付用冷却組成物の凍結が認められ、身体の形状への追従性が低下していた(比較例19及び20)。これに対して、1価アルコール、2価アルコール、及び3価アルコールを組み合わせて使用した場合には、-20℃で保存しても身体冷却用貼付剤における身体貼付用冷却組成物の凍結が認められず、身体の形状への流動性を維持できていた(実施例73~75)。
【0070】
【表7】
【0071】
製造例
表8に示す組成の身体貼付用冷却組成物からなる含水ゲルをポリエステル製の不織布(縦5cm、横13cmの長方形)の一方の面の全面に厚み2mmとなるように塗膏し、身体冷却用貼付剤を製造した。得られた各身体冷却用貼付剤は、-20℃の冷凍庫に保存しても、凍結を防止できていた。
【0072】
【表8】