IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ラピスセミコンダクタ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図1
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図2
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図3
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図4
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図5
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図6
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図7
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図8
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図9
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図10
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図11A
  • 特許-フラグ保持回路及びフラグ保持方法 図11B
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】フラグ保持回路及びフラグ保持方法
(51)【国際特許分類】
   G06K 19/07 20060101AFI20220617BHJP
【FI】
G06K19/07 230
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018099622
(22)【出願日】2018-05-24
(65)【公開番号】P2019204328
(43)【公開日】2019-11-28
【審査請求日】2021-03-31
(73)【特許権者】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079119
【弁理士】
【氏名又は名称】藤村 元彦
(74)【代理人】
【識別番号】100147728
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 信司
(72)【発明者】
【氏名】四辻 哲章
【審査官】松尾 真人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0237844(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0015316(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02690583(EP,A1)
【文献】特開2015-089282(JP,A)
【文献】特開平08-191271(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06K 19/00-19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
リーダライタ装置から電波による電力供給を受け、前記リーダライタ装置との間で近距離無線通信による情報の送受信を行うRFID(Radio Frequency Identification)のタグ回路に搭載され、前記情報の送受信に用いる0又は1の値を有するフラグの設定を受けて前記フラグを保持するフラグ保持回路であって、
キャパシタと、
前記リーダライタ装置からの電力供給に基づいて電源電圧を供給する電圧供給ラインに接続され、入力信号の供給を受け、前記入力信号に応じて前記キャパシタを充電するフラグ設定部と、
前記キャパシタの充電電圧に基づいて、0又は1を表す出力信号を出力するフラグ判定部と、
前記キャパシタを放電する放電部と、
を有し、
前記キャパシタは、前記フラグ判定部と前記放電部とを接続する接続ラインに一端が接続されるとともに他端が接地され、
前記フラグ設定部は、
第1端が前記接続ラインに接続され、第2端が前記入力信号の信号レベルに応じて前記電圧供給ライン又は接地ラインに接続され、制御端に供給されたリーク制御信号に応じて前記電圧供給ライン又は接地ラインと前記接続ラインとの間を接続又は切断するリーク抑制スイッチと、
クロック信号の供給を受け、前記クロック信号に応じて前記電源電圧よりも大なる値に信号レベルが変化する前記リーク制御信号を生成し、前記リーク抑制スイッチの制御端に供給するリーク抑制スイッチ制御部と、
を含むことを特徴とするフラグ保持回路。
【請求項2】
前記リーク抑制スイッチ制御部は、前記クロック信号に応じて信号レベルの最大値が前記電源電圧の2倍となる前記リーク制御信号を生成し、前記リーク抑制スイッチの制御端に供給することを特徴とする請求項1に記載のフラグ保持回路。
【請求項3】
前記リーク抑制スイッチ制御部は、フラグの設定期間を示す書込制御信号の供給を受け、前記フラグの設定期間において信号レベルが前記電源電圧と前記電源電圧の2倍の電圧とに変化する信号を前記リーク制御信号として生成し、前記リーク抑制スイッチの制御端に供給することを特徴とする請求項2に記載のフラグ保持回路。
【請求項4】
前記リーク抑制スイッチは、MOSトランジスタから構成され、ソース又はドレインのいずれか一方が前記第1端として前記接続ラインに接続され、他方が前記第2端として前記電圧供給ライン又は接地ラインに接続され、ゲートが前記制御端として前記リーク制御信号の供給を受けることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1に記載のフラグ保持回路。
【請求項5】
前記接続ラインの電圧が所定の閾値を超えているか否かを判定するリフレッシュ判定部と、
前記リフレッシュ判定部の判定結果に基づいて、前記リーク抑制スイッチ制御部の動作を制御する動作制御部と、
を有し、
前記動作制御部は、
前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値以下であると判定された場合には、前記リーク抑制スイッチ制御部に前記リーク抑制スイッチの制御端への前記リーク制御信号の供給を実行させ、
前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値を超えていると判定された場合には、前記リーク抑制スイッチ制御部による前記リーク抑制スイッチの制御端への前記リーク制御信号の供給を停止させる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載のフラグ保持回路。
【請求項6】
前記リフレッシュ判定部は、入力端に前記接続ラインの電位を反転した反転電圧の入力を受け、前記反転電圧と第1の閾値及び第2の閾値との比較結果に基づいて、前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値を超えているか否かを示す判定結果を出力端から出力するシュミットインバータを含むことを特徴とする請求項5に記載のフラグ保持回路。
【請求項7】
電源電圧と第1のノードとに接続され、入力信号に応じて前記第1のノードへの前記電源電圧の供給又は当該電源電圧の供給の遮断を行うフラグ設定部と、
前記第1のノードに接続され、前記電源電圧により充電されるキャパシタと、
前記第1のノードに接続され、前記キャパシタの充電電圧に基づいてフラグを判定するフラグ判定部と、
前記第1のノードに接続され、前記キャパシタを放電する放電部と、
を有し、
前記フラグ設定部は、
入力信号の供給を受け、前記入力信号の信号レベルに応じて電圧供給ライン又は接地ラインに接続され、制御端に供給されたリーク制御信号に応じて前記電圧供給ライン又は接地ラインと前記第1のノードとの間を接続又は切断するリーク抑制スイッチと、
クロック信号の供給を受け、前記クロック信号に応じて前記電源電圧よりも大なる値に信号レベルが変化する前記リーク制御信号を生成し、前記リーク抑制スイッチの制御端に供給するリーク抑制スイッチ制御部と、
を含むことを特徴とする半導体回路。
【請求項8】
請求項5に記載のフラグ保持回路が実行するフラグ保持方法であって、
前記リーダライタ装置からの電力供給を受けるステップと、
前記入力信号及び前記クロック信号の供給を受けるステップと、
前記入力信号に応じて前記キャパシタを充電するステップと、
前記キャパシタの充電電圧に基づいて、0又は1を表す出力信号を出力するステップと、
前記キャパシタを放電するステップと、
を含み、
前記入力信号に応じて前記キャパシタを充電するステップは、
前記接続ラインの電圧が所定の閾値を超えているか否かを判定するステップと、
前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値以下であると判定された場合には、前記リーク抑制スイッチ制御部に前記リーク抑制スイッチの制御端への前記リーク制御信号の供給を実行させ、前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値を超えていると判定された場合には、前記リーク抑制スイッチ制御部による前記リーク抑制スイッチの制御端への前記リーク制御信号の供給を停止させるステップと、
を含むことを特徴とするフラグ保持方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、RFIDのタグにおいてフラグを保持するフラグ保持回路及びフラグ保持方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ID(IDentification)等の情報を埋め込んだタグから近距離の無線通信を用いて情報を取得するRFID(Radio Frequency Identification)の技術が注目されている。RFIDの無線通信システムは、ID等の情報を埋め込んだタグと、電波を用いてタグに対して非接触での情報の読み書きを行うリーダライタと、から構成されている。自らが電源を持たないパッシブ型のタグを用いたRFIDの無線通信システム(以下、パッシブ型RFIDと称する)は、タグと、電波を用いてタグに対して電源を供給するとともに非接触での情報の読み書きを行うリーダライタと、から構成されている。
【0003】
パッシブ型RFIDでは、“0”及び“1”の情報からなるフラグをタグにおいて一定期間保持するためのパーシステンスタイムが設けられている(例えば、特許文献1)。例えば、EPC(Electronic Product Code)のEPCTMglobal規格では、セッションS2、S3及びSLにおいて、リーダライタからタグへの電源供給が無くなってから2秒を超えてフラグを保持することが規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-109340号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
パッシブ型RFIDのタグでは、フラグ設定部に設けられたトランジスタがオン又はオフとなることにより、容量(キャパシタ)を充電してフラグの設定を行う。このトランジスタをオンさせるためには、ゲート電圧の最大値に対して、ソース-ドレイン電圧の最大値が小さくなければならない。このため、トランジスタのゲートに電源電圧VDDを印加し、トランジスタのソースに電源電圧VDDよりも低い基準電圧VREFを印加することが行われている。
【0006】
しかし、電源電圧VDDよりも低い基準電圧VREFを生成するためには、電源電圧VDDから基準電圧VREFを生成するためのレギュレータを別途設ける必要がある。RFIDタグの回路全体はリーダライタからの受信電波から拾い上げられた電力で動作する必要があり、レギュレータに割り当てられる動作電力は限られる。レギュレータの動作電流を極力絞って電源電圧VDDから基準電圧VREFを分圧しようとすると、高抵抗を多用する必要があり、チップ面積が増大する(すなわち、チップコストが増加する)という問題があった。
【0007】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、回路規模の増大を抑えつつ、電源供給が無くなった後も所定期間に亘ってフラグを保持することが可能なRFIDのフラグ保持回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るフラグ保持回路は、リーダライタ装置から電波による電力供給を受け、前記リーダライタ装置との間で近距離無線通信による情報の送受信を行うRFID(Radio Frequency Identification)のタグ回路に搭載され、前記情報の送受信に用いる0又は1の値を有するフラグの設定を受けて前記フラグを保持するフラグ保持回路であって、キャパシタと、前記リーダライタ装置からの電力供給に基づいて電源電圧を供給する電圧供給ラインに接続され、入力信号の供給を受け、前記入力信号に応じて前記キャパシタを充電するフラグ設定部と、前記キャパシタの充電電圧に基づいて、0又は1を表す出力信号を出力するフラグ判定部と、前記キャパシタを放電する放電部と、を有し、前記キャパシタは、前記フラグ判定部と前記放電部とを接続する接続ラインに一端が接続されるとともに他端が接地され、前記フラグ設定部は、第1端が前記接続ラインに接続され、第2端が前記入力信号の信号レベルに応じて前記電圧供給ライン又は接地ラインに接続され、制御端に供給されたリーク制御信号に応じて前記電圧供給ライン又は接地ラインと前記接続ラインとの間を接続又は切断するリーク抑制スイッチと、クロック信号の供給を受け、前記クロック信号に応じて前記電源電圧よりも大なる値に信号レベルが変化する前記リーク制御信号を生成し、前記リーク抑制スイッチの制御端に供給するリーク抑制スイッチ制御部と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る半導体回路は、電源電圧と第1のノードとに接続され、入力信号に応じて前記第1のノードへの前記電源電圧の供給又は当該電源電圧の供給の遮断を行うフラグ設定部と、前記第1のノードに接続され、前記電源電圧により充電されるキャパシタと、前記第1のノードに接続され、前記キャパシタの充電電圧に基づいてフラグを判定するフラグ判定部と、前記第1のノードに接続され、前記キャパシタを放電する放電部と、を有し、前記フラグ設定部は、入力信号の供給を受け、前記入力信号の信号レベルに応じて電圧供給ライン又は接地ラインに接続され、制御端に供給されたリーク制御信号に応じて前記電圧供給ライン又は接地ラインと前記第1のノードとの間を接続又は切断するリーク抑制スイッチと、クロック信号の供給を受け、前記クロック信号に応じて前記電源電圧よりも大なる値に信号レベルが変化する前記リーク制御信号を生成し、前記リーク抑制スイッチの制御端に供給するリーク抑制スイッチ制御部と、を含むことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るフラグ保持方法は、前記リーダライタ装置からの電力供給を受けるステップと、前記入力信号及び前記クロック信号の供給を受けるステップと、前記入力信号に応じて前記キャパシタを充電するステップと、前記キャパシタの充電電圧に基づいて、0又は1を表す出力信号を出力するステップと、前記キャパシタを放電するステップと、を含み、前記入力信号に応じて前記キャパシタを充電するステップは、前記接続ラインの電圧が所定の閾値を超えているか否かを判定するステップと、前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値以下であると判定された場合には、前記リーク抑制スイッチ制御部に前記リーク抑制スイッチの制御端への前記リーク制御信号の供給を実行させ、前記接続ラインの電圧が前記所定の閾値を超えていると判定された場合には、前記リーク抑制スイッチ制御部による前記リーク抑制スイッチの制御端への前記リーク制御信号の供給を停止させるステップと、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るフラグ保持回路によれば、回路規模の増大を抑えつつ電源供給が無くなった後も所定期間に亘ってフラグを保持することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】セッション毎のフラグの保持期間を模式的に示す図である。
図2】本実施例のフラグ保持回路の構成を示す回路図である。
図3】リーク抑制スイッチドライバの構成を示す回路図である。
図4】リーク抑制スイッチドライバの動作を示すタイムチャートである。
図5】放電部に生じる寄生ダイオードを模式的に示す図である。
図6】電源供給の有無に応じたトランジスタMD2の入力電圧及び電流の時間変化を示す図である。
図7】リーク抑制スイッチMSLの寄生ダイオードを模式的に示す図である。
図8】フラグ保持回路の動作における入出力信号及び内部ノードの電位の時間変化を示すタイムチャートである。
図9】比較例のフラグ保持回路の構成を示す回路図である。
図10】実施例2のフラグ保持回路の構成を示す回路図である。
図11A】リフレッシュ判定部の構成を示す回路図である。
図11B】リフレッシュ判定閾値とフラグ判定閾値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施例を詳細に説明する。なお、以下の各実施例における説明及び添付図面においては、実質的に同一または等価な部分には同一の参照符号を付している。
【実施例1】
【0014】
本実施例のフラグ保持回路100は、RFID(Radio Frequency Identification)のタグ回路に搭載されている。タグ回路は、近距離無線通信を介してリーダライタからの電源供給を受ける。従って、タグ回路がリーダライタから所定の範囲内に位置している場合にのみ電源供給が行われ、当該所定の範囲内から外れた場合には電源供給が停止する。以下の説明では、リーダライタからの電源供給が有る場合を単に「電源供給が有る」と称し、リーダライタからの電源供給が無い場合を単に「電源供給が無い」と称する。
【0015】
また、RFIDのタグ回路では、インベントリのためのフラグを設定し、これをEPC(Electronic Product Code)のEPCTMglobal規格に従って、所定期間に亘って保持する必要がある。フラグの保持期間は、S0、S1、S2、S3及びSLの各セッションについて定められている。
【0016】
図1は、セッションS1、S2、S3及びSLについてのセッション毎のフラグの保持期間を模式的に示す図である。なお、ここではセッションS0については図示を省略している。
【0017】
セッションS0では、電源供給が無い場合にはフラグを保持しなくてもよく、電源供給が有る場合は常にフラグを保持する必要がある。セッションS1では、フラグ“1”が設定されると、電源供給の有無にかかわらず0.5秒~5秒の所定期間に亘ってフラグ“1”を保持しなければならない。これに対し、セッションS2、S3及びSLでは、フラグ“1”が設定されると、電源供給が無くなった後、2秒超の所定期間に亘ってフラグ“1”を保持しなければならない。
【0018】
本実施例のフラグ保持回路100は、セッションS2、S3及びSLにおけるフラグの設定及び保持を行う回路である。
【0019】
図2は、本実施例のフラグ保持回路100の構成を示す回路図である。フラグ保持回路100は、容量(キャパシタ)CFを有し、ロジック回路(図示せず)から入力信号in、クロック信号clk及び書き込み制御信号w_enの供給を受けて容量CFの充放電を行い、“0”又は“1”のフラグとして出力する。また、上記の通り、フラグ保持回路100を搭載するタグ回路がリーダライタから所定の範囲内に位置している場合にのみ、フラグ保持回路100に電源供給が行われる。
【0020】
フラグ保持回路100は、容量CF、フラグ設定部10、放電部11及びフラグ判定部12を有する。容量CFは、一方の端子が放電部11とフラグ判定部12との間の接続ラインであるノードNVFに接続され、他方の端子が接地されている。
【0021】
フラグ設定部10は、インバータFSI、トランジスタMSP、トランジスタMSN、リーク抑制スイッチMSL及びリーク抑制スイッチドライバSDを含む。
【0022】
インバータFSIは、ロジック回路(図示せず)から入力信号inの供給を受け、入力信号inの論理レベルを反転した信号(以下、反転入力信号と称する)をトランジスタMSP及びMSNの各々のゲートに供給する。
【0023】
トランジスタMSPは、第1導電型のMOSトランジスタであるPチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMSPのソースは電圧供給ライン(電源電圧VDD)に接続されている。トランジスタMSNは、第1導電型とは反対導電型の第2導電型のMOSトランジスタであるNチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMSNのソースは接地されている。トランジスタMSP及びMSNのドレインは互いに接続されるとともに、ノードNFSに接続されている。トランジスタMSP及びMSNは、ゲートに供給された反転入力信号に応じてオン又はオフに制御される。
【0024】
リーク抑制スイッチMSLは、例えばNチャネル型MOSトランジスタから構成されている。リーク抑制スイッチMSLのドレインは、ノードNFSを介してトランジスタMSP及びMSNのドレインに接続されている。リーク抑制スイッチMSLのソースはノードNVFに接続されている。リーク抑制スイッチMSLのバックゲートは接地されている。リーク抑制スイッチMSLをオンさせるには、ドレインソース間の電圧の最大値である電源電圧VDDよりも大きい電圧をゲートに供給する必要がある。
【0025】
リーク抑制スイッチドライバSDは、リーク抑制スイッチMSLのゲートを制御する制御回路である。リーク抑制スイッチドライバSDは、ロジック回路(図示せず)からクロック信号clk及び書き込み制御信号w_enの供給を受け、リーク制御信号NCSを生成してリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給する。
【0026】
図3は、リーク抑制スイッチドライバSDの構成を示す回路図である。リーク抑制スイッチドライバSDは、例えばトランジスタMSD1、トランジスタMSD2、容量(キャパシタ)CSD1、容量(キャパシタ)CSD2、NANDゲートND1、インバータSDI1、インバータSDI2及びインバータSDI3から構成されている。
【0027】
トランジスタMSD1及びMSD2は、例えばNチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMSD1及びMSD2のソースは電圧供給ライン(電源電圧VDD)に接続されている。トランジスタMSD1のゲートは、ノードNBSTに接続されている。トランジスタMSD2のドレインは、ノードNBSTに接続されている。
【0028】
容量CSD1の一端は、トランジスタMSD1のドレイン及びトランジスタMSD2のゲートに接続されている。容量CSD1の他端は、NANDゲートND1の出力及びインバータSDI1の入力に接続されている。
【0029】
容量CSD2の一端は、ノードNBSTを介して、トランジスタMSD1のゲート及びトランジスタMSD2のドレインに接続されている。容量CSD2の他端は、インバータSDI1の出力に接続されている。
【0030】
NANDゲートND1は、クロック信号clk及び書き込み制御信号w_enの入力を受け、クロック信号clkと書き込み制御信号w_enとの否定論理積の信号を出力する。
【0031】
インバータSDI1は、入力端がNANDゲートND1の出力端及び容量CSD1の他端に接続されている。インバータSDI1は、入力端に供給された信号を反転して容量CSD2に供給する。
【0032】
インバータSDI2は、書き込み制御信号w_enの入力を受け、書き込み制御信号w_enの論理レベルを反転した信号を出力する。
【0033】
インバータSDI3は、インバータSDI2の出力信号(すなわち、書き込み制御信号w_enの論理レベルを反転した信号)の入力を受け、論理レベルを反転した信号をリーク制御信号NCSとして出力する。インバータSDI3の正の電源端子はノードNBSTに接続され、負の電源端子は接地されている。従って、リーク制御信号NCSは、ノードNBSTの電位に応じた信号レベルを有する信号となる。
【0034】
図4は、リーク抑制スイッチドライバSDの動作を示すタイムチャートである。電源供給が有る場合、NANDゲートND1にはクロック信号clkが供給される。書き込み制御信号w_enは、信号レベルが論理レベル“0”及び“1”に変化する信号であり、リーク抑制スイッチドライバSDによるリーク抑制スイッチMSLの制御のトリガとなる信号である。
【0035】
書き込み制御信号w_enが論理レベル“0”(すなわち、オフ)の期間では、容量CSD1及び容量CSD2に電源電圧VDDが充電される。従って、ノードNBSTの電位は電源電圧VDDレベルとなる。インバータSDI3から出力されるリーク制御信号NCSは、書き込み制御信号w_enと同様に論理レベル“0”であり、接地電位の信号レベルとなる。
【0036】
書き込み制御信号w_enが論理レベル“1”(すなわち、オン)になると、ノードNBSTの電位は、電源電圧VDDレベルの電位に、クロック信号clkに同期して電源電圧VDDレベルに変化する信号が加算された電位となる。すなわち、ノードNBSTの電位レベルは、クロック信号clkに同期したタイミングでVDDと2×VDDとに変化する。
【0037】
インバータSDI3から出力されるリーク制御信号NCSは、信号レベルがクロック信号clkに同期してVDD及び2×VDDに変化する信号となる。従って、書き込み制御信号w_enがオンの間、信号レベルが最大で2×VDDとなるリーク制御信号NCSがリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給される。
【0038】
このように、フラグ設定部10は、電源(電源電圧VDD)と第1のノードであるノードNVFとに接続され、入力信号inに基づいてノードNVFへの電源電圧VDDの供給又は電源供給の遮断を行う。
【0039】
再び図2を参照すると、放電部11は、電流源ID、容量(キャパシタ)CD、トランジスタMD1、トランジスタMD2及びトランジスタMDSを含む。
【0040】
電流源IDの一端は、電圧供給ラインに接続されている。容量CDは、一端がノードNVDに接続され、他端が接地されている。
【0041】
トランジスタMD1は、Nチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMD1のゲート(制御端)及びドレイン(第2端)は電流源IDの他端に接続されている。トランジスタMD1のソース(第1端)及びバックゲートは接地されている。トランジスタMD1は、電流源IDが流す電流を直流電圧に変換する。
【0042】
トランジスタMD2は、ノードNVFを介して容量CFを放電するトランスコンダクタンス素子である。トランジスタMD2は、例えばNチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMD2のソース(第1出力端)及びバックゲートは接地されている。トランジスタMD2のドレイン(第2出力端)は、ノードNVFに接続されている。トランジスタMD2のゲート(制御入力端)は、ノードNVDに接続されている。
【0043】
トランジスタMDSは、トランジスタMD2の入力電圧を制御する制御スイッチである。トランジスタMDSは、例えばNチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMDSのソース(第1端)は、ノードNVDに接続されている。トランジスタMDSのドレイン(第2端)は、電流源IDの他端、トランジスタMD1のゲート及びドレインに接続されている。すなわち、トランジスタMDSのドレインは、電流源IDの電流がトランジスタMDSにより変換された直流電圧のノードに接続されている。
【0044】
トランジスタMDSのゲートには、パワーオンリセット部PORからパワーオンリセット信号PRが供給される。リーダライタからタグ回路への電源供給が有る場合には、パワーオンリセット部PORは、電源電圧VDDレベルの信号をパワーオンリセット信号PRとしてトランジスタMDSのゲートに印加する。リーダライタからタグ回路への電源供給が無い場合には、パワーオンリセット部PORは、グランドレベルの信号をパワーオンリセット信号PRとしてトランジスタMDSのゲートに印加する。従って、電源供給が有る場合にはトランジスタMDSはオンとなり、電源供給が無い場合にはトランジスタMDSはオフとなる。
【0045】
放電部11は、トランジスタMD2のドレイン電流によって容量CFを放電する。その際、電源供給の有無に応じてパワーオンリセット信号PORの信号レベルが異なり、トランジスタMDSのオンオフも変わるため、トランジスタMD2のドレイン電流も電源供給の有無に応じて異なるものとなる。また、トランジスタMD2のドレイン電流は、トランジスタMDSの寄生ダイオード及びトランジスタMD2の寄生ダイオードにおける逆方向リーク電流の影響を受ける。
【0046】
図5は、トランジスタMDSの寄生ダイオードPD1及びトランジスタMD2の寄生ダイオードPD2を模式的に示す図である。
【0047】
寄生ダイオードPD1は、容量CDに対して並列となるようにノードNVDとグランドとの間に生じている。トランジスタMDSがオフの場合、寄生ダイオードPD1において発生する逆方向のリーク電流により、容量CDが徐々に放電され、ノードNVDの電位が徐々に低下する。
【0048】
図6は、電源供給が有る場合と無い場合とにおける、トランジスタMD2のゲート電圧及びドレイン電流の時間変化を示す図である。
【0049】
電源供給が有る場合、トランジスタMD2のゲート電圧は一定(電流源IDの電流値によって定まるトランジスタMD1のゲート電圧と等しい値)となる。これにより、トランジスタMD2のドレイン電流も一定となる。
【0050】
一方、電源供給が無い場合、トランジスタMD2のゲート電圧は、トランジスタMDSの寄生ダイオードPD1の逆方向リーク電流による容量CDの放電で、徐々に低下する。これにより、トランジスタMD2のドレイン電流も徐々に低下する。
【0051】
再び図5を参照すると、寄生ダイオードPD2は、トランジスタMD2に対して並列となるようにノードNVFとグランドとの間に生じている。この寄生ダイオードPD2において発生する逆方向のリーク電流は、トランジスタMD2のドレイン電流とともに容量CFの放電電流となる。従って、電源供給が無くなってトランジスタMD2のゲート電圧及びドレイン電流がほぼゼロとなった場合でも、寄生ダイオードPD2における逆方向のリーク電流のため、容量CFの放電電流はゼロにはならない。
【0052】
また、容量CFの放電電流は、トランジスタMD2のドレイン電流及びトランジスタMD2の寄生ダイオードの他、フラグ設定部10のリーク抑制スイッチMSLの寄生ダイオードによる影響を受ける。
【0053】
図7は、トランジスタMSLの寄生ダイオードPD3を模式的に示す図である。寄生ダイオードPD3は、容量CFに対して並列となるようにノードNVFとグランドとの間に生じている。
【0054】
寄生ダイオードPD3において発生する逆方向のリーク電流は、放電部11による放電電流とともに、容量CFの放電電流となる。従って、仮に放電部11による放電電流が無くなった場合でも、寄生ダイオードPD3における逆方向のリーク電流のため、容量CFの放電電流はゼロにはならない。
【0055】
再び図2を参照すると、フラグ判定部12は、シュミットインバータSI及びインバータJIを含む。シュミットインバータSIは、ノードNVFの電圧レベルに応じて、Lレベル又はHレベルの判定信号DSをインバータJIに供給する。インバータJIは、判定信号DSを反転した信号を出力信号OUTとして出力する。
【0056】
シュミットインバータSIは、入出力がヒステリシス特性を有するシュミットトリガインバータである。シュミットインバータSIは、出力電圧がL(ロー)レベルからH(ハイ)レベルに変化する際の入力閾値電圧Vth_LHと、出力電圧がHレベルからLレベルに変化する際の入力閾値電圧Vth_HLと、を有する(Vth_HL>Vth_LH)。このため、ノードNVFが電源電圧VDD及びグランドの中間電圧である場合にも、貫通電流を回避し、出力を2値化することができる。
【0057】
出力信号OUTがHレベルからLレベルに変化、すなわち判定信号DSがLレベルからHレベルに変化するノードNVFの電圧が、フラグ判定の判定閾値電圧Vth_jdgとなる。従って、電源供給が有り、ノードNVFの電圧が判定閾値電圧Vth_jdg以上の場合、判定信号DSはLレベル、出力信号OUTはHレベルとなる。また、電源供給が有り、ノードNVFの電圧が閾値電圧Vth_FL未満の場合、判定信号DSはHレベル、出力信号OUTはLレベルとなる。一方、電源供給が無い場合、ノードNVFの電圧と閾値電圧Vth_FLとの大小にかかわらず、出力信号OUTはLレベルとなる。
【0058】
次に、本実施例のフラグ保持回路100の動作について、図8のタイムチャートを参照して説明する。なお、電源供給が有る期間の長さは、電源供給が無い期間と比べて非常に短い(例えば、電源供給有の期間が10μsecオーダー、電源供給無の期間が1secオーダー)が、ここでは近い長さとして模式的に示している。
【0059】
まず、フラグ保持回路100は、電源供給が有る状態において、フラグ“0”の書き込みを行う。フラグ設定部10には、“0”を表すLレベルの入力信号inが供給される。トランジスタMSP及びMSNのゲートには入力信号inの論理レベルを反転したHレベルの信号が供給され、トランジスタMSPはオフ、トランジスタMSNはオンとなる。これにより、ノードNFSはグランド付近の電位となる。
【0060】
リーク抑制スイッチドライバSDには、クロック信号clk及びHレベルの書き込み制御信号w_enが供給される。リーク抑制スイッチドライバSDは、信号レベルが最大で電源電圧VDDの2倍となるリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給し、リーク抑制スイッチMSLをオンさせる。
【0061】
リーク抑制スイッチMSLがオンになると、容量CFが放電され、ノードNVFの電位はグランド付近となる。ノードNVFの電位がグランド付近のため、放電部11による放電電流はゼロとなる。また、ノードNVFの電位がグランド付近のため、フラグ判定部12はLレベル(グランドレベル)の出力信号OUTを出力する。
【0062】
次に、フラグ保持回路100は、電源供給が有る状態において、フラグ“1”の書き込みを行う。フラグ設定部10には、“1”を表すHレベルの入力信号inが供給される。トランジスタMSP及びMSNのゲートには入力信号inの論理レベルを反転したLレベルの信号が供給され、トランジスタMSPはオン、トランジスタMSNはオフとなる。これにより、ノードNFSは電源電圧VDD付近の電位となる。
【0063】
リーク抑制スイッチドライバSDには、クロック信号clk及びHレベルの書き込み制御信号w_enが供給される。リーク抑制スイッチドライバSDは、これに応じて信号レベルが最大で電源電圧VDDの2倍となるリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給し、リーク抑制スイッチMSLをオンに制御する。
【0064】
リーク抑制スイッチMSLがオンになると、容量CFが充電され、ノードNVFの電位は電源電圧VDD付近となる。放電部11は、一定の放電電流をグランドに流すが、フラグ設定部10による容量CFの充電の方が大きいため、ノードNVFは電源電圧VDD付近を維持する。フラグ判定部12は、ノードNVFが電源電圧VDD付近であるため、Hレベルの出力信号OUTを出力する。
【0065】
次に、フラグ保持回路100は、電源供給が無い状態において、フラグ“1”の保持動作を行う。
【0066】
リーダライタからの電波の供給が途絶え、リーダライタからタグ回路への電源供給がなくなると、Lレベルの書き込み制御信号w_enがリーク抑制スイッチドライバSDに供給される。リーク抑制スイッチドライバSDは、これに応じてLレベルのリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給する。これにより、リーク抑制制御スイッチMSLはオフとなる。
【0067】
フラグ“1”が設定された後、容量CFには電源電圧VDD付近の電圧が充電されているため、ノードNVFの電位は電源電圧VDD付近となっている。このとき、図6で示したように、トランジスタMD2のドレイン電流は徐々に減少し、寄生ダイオード(PD2及びPD3)で発生する逆方向のリーク電流とともに、容量CFを徐々に放電する。これにより、ノードNVFの電位は徐々に低下する。
【0068】
ノードNVFがフラグ判定の判定閾値電圧Vth_jdgを下回る時点まで、フラグ“1”は保持される。電源供給が無くなった時点からノードNVFがフラグ判定の判定閾値電圧Vth_jdgを下回る時点までがフラグ保持期間となる。
【0069】
以上のように、本実施例のフラグ保持回路100の各部は、電源電圧VDDに基づいて動作しており、電源系が単一である。特に、フラグ設定部10では、電源電圧VDDに基づいて動作しつつ、リーク抑制スイッチドライバSDが電源電圧VDDの2倍の信号レベルを最大値として有するリーク制御信号NCSを生成し、リーク抑制スイッチMSLのゲートに供給している。リーク抑制スイッチMSLをオンにするためには、ゲート電圧の最大値をソース-ドレイン電圧の最大値よりも大きくする必要があるが、本実施例のフラグ保持回路100によれば、電源電圧VDDをリーク抑制スイッチMSLのドレインに供給しつつ、2×VDDの信号レベルを有するリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給することができる。
【0070】
図9は、本実施例のフラグ保持回路100とは異なる比較例のフラグ保持回路の構成を示す回路図である。比較例のフラグ保持回路は、フラグ設定部20、放電部21及びフラグ判定部22を有する。
【0071】
フラグ設定部20は、フラグ“1”の設定時にHレベルとなる入力信号ctrlの供給を受ける。リーク抑制スイッチMSWのゲートには、電源電圧VDDを動作電圧とするインバータINV1及びINV2を介して、入力信号ctrlの信号レベルを電源電圧VDDレベルにした信号が印加される。その際、リーク抑制スイッチMSWのドレインには、電源電圧VDDよりも小さい基準電圧VREFを動作電圧とするインバータINV3を介して、入力信号ctrlの信号レベルを基準電圧VREFレベルにした信号が供給される。リーク抑制スイッチMSWがオンとなることにより、容量CFは基準電圧VREFのレベルまで充電される。
【0072】
比較例のフラグ保持回路では、電源電圧VDDよりも小さい基準電圧VREFを生成する専用のレギュレータが別途必要になる。RFIDタグの回路全体はリーダライタからの受信電波から拾い上げられた電力で動作する必要があり、レギュレータに割り当てられる動作電力は限られる。レギュレータの動作電流を極力絞って電源電圧VDDから基準電圧VREFを分圧しようとすると、高抵抗を多用する必要があり、チップ面積が増大する。
【0073】
これに対し、本実施例のフラグ保持回路100では、リーク抑制スイッチドライバSDが電源電圧VDDの2倍の信号レベルを最大値として有するリーク制御信号NCSを生成することにより、リーク抑制スイッチMSLのゲートにドレインよりも大なる電圧を供給するため、基準電圧VREFを生成するための専用のレギュレータが不要である。
【0074】
RFIDのタグ回路は、リーダライタからの電波の供給がいつ途切れるかをあらかじめ知ることができない。また、RFIDのタグ回路は、リーダライタからの電波を整流した限られた電力だけで動作する必要があるため、低電流動作であることが望ましい。本実施例のフラグ保持回路100では、いつ電波が途切れても一定以上の期間に亘ってフラグを保持することができる。また、専用のレギュレータを別途設ける必要がないため、低動作電流で動作し、且つチップコストの増加を回避することができる。
【0075】
従って、本実施例のフラグ保持回路100によれば、回路規模の増大を抑えつつ、電源供給が無くなった後も所定期間(具体的には、2秒を超える期間)に亘ってフラグを保持することが可能となる。
【実施例2】
【0076】
次に、実施例2のフラグ保持回路200について説明する。本実施例のフラグ保持回路200は、実施例1のフラグ保持回路100と同様、RFIDのタグ回路に搭載され、EPCのEPCTMglobal規格に従って、セッションS2、S3及びSLにおけるフラグの設定及び保持を行う回路である。
【0077】
図10は、本実施例のフラグ保持回路200の構成を示す回路図である。フラグ保持回路200は、リフレッシュ判定部13、3入力のNANDゲートRND及び2入力のANDゲートRADを有する点で実施例1のフラグ保持回路100と異なる。
【0078】
リフレッシュ判定部13は、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refを上回っているか否かを判定し、判定結果を出力する。リフレッシュ判定部13は、入力端がノードNVFに接続され、出力端がNANDゲートRNDの入力端の1つに接続されている。
【0079】
図11Aは、リフレッシュ判定部11の構成を示す回路図である。リフレッシュ判定部11は、トランジスタMRP、電流源IR及びシュミットインバータSIRを含む。
【0080】
トランジスタMRPは、例えばPチャネル型MOSトランジスタから構成されている。トランジスタMRPのソースは電圧供給ライン(電源電圧VDD)に接続され、ドレインはノードNRIに接続されている。トランジスタMRPのゲートはノードNVFに接続されている。
【0081】
電流源IRの一端はノードNRI及びトランジスタMRPのドレインに接続されている。電流源IRの他端は接地されている。電流源IRは、トランジスタMRPがオンのときに、トランジスタMRPのソース-ドレイン間に流れる電流の電流値を制限し、大電流が流れるのを防止する機能を有する。
【0082】
シュミットインバータSIRは、入出力がヒステリシス特性を有するシュミットトリガインバータである。シュミットインバータSIRは、入力電圧がLレベルからHレベルに変化する際の閾値電圧及び入力電圧がHレベルからLレベルに変化する際の閾値電圧を有する。このため、ノードNRIが電圧VDD及びグランドの中間電圧である場合にも、貫通電流を回避し、出力を2値化することができる。
【0083】
再び図10を参照すると、リフレッシュ判定部13は、ノードNVFの電位(すなわち、容量CFの充電電圧)が閾値電圧Vth_refよりも高い場合にはHレベルの出力信号NRFを出力する。一方、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refよりも低い場合には、リフレッシュ判定部13は、Lレベルの出力信号NRFを出力する。
【0084】
NANDゲートRNDの第1の入力端には、入力信号inが供給される。NANDゲートRNDの第2の入力端には、リフレッシュ制御信号rf_enが供給される。リフレッシュ制御信号rf_enは、リーク抑制スイッチドライバSDの動作を制御するための2値の信号であり、ロジック回路(図示せず)から供給される。NANDゲートRNDの第3の入力端には、リフレッシュ判定部13の出力信号NRFが供給される。NANDゲートRNDは、3入力に供給された信号がいずれもHレベルの場合にはLレベルの信号を出力し、いずれかがLレベルの場合にはHレベルの信号を出力する。
【0085】
ANDゲートRADの第1の入力端には、書き込み制御信号w_enが供給される。ANDゲートRADの第2の入力端は、NANDゲートRNDの出力端に接続され、NANDゲートRNDの出力信号の供給を受ける。ANDゲートRADは、書き込み制御信号w_en及びNANDゲートRNDの出力信号がいずれもHレベルである場合に、Hレベルの信号をリーク抑制スイッチドライバSDの入力端に出力する。ANDゲートRADは、書き込み制御信号w_en及びNANDゲートRNDの出力信号のいずれか一方がLレベルである場合に、Lレベルの信号をリーク抑制スイッチドライバSDの入力端に出力する。
【0086】
NANDゲートRND及びANDゲートRADは、リフレッシュ判定部13の判定結果に応じてリーク抑制スイッチドライバSDの動作を制御する動作制御部としての機能を有する。すなわち、書き込み制御信号w_en及びリフレッシュ制御信号rf_enがいずれもHレベルである場合、NANDゲートRNDがリフレッシュ判定部13からLレベルの出力信号NRFの供給を受けると、ANDゲートRADはHレベルの信号をリーク抑制スイッチドライバSDの入力端に供給する。一方、NANDゲートRNDがリフレッシュ判定部13からHレベルの出力信号NRFの供給を受けると、入力信号inがHレベルのとき、ANDゲートRADはLレベルの信号をリーク抑制スイッチドライバSDの入力端に供給する。
【0087】
次に、本実施例のフラグ保持回路200の動作について説明する。
【0088】
まず、フラグ保持回路200は、電源供給が有る状態において、フラグ“0”の書き込みを行う。フラグ設定部10には、“0”を表すLレベルの入力信号inが供給される。トランジスタMSP及びMSNのゲートには入力信号inの論理レベルを反転したHレベルの信号が供給され、トランジスタMSPはオフ、トランジスタMSNはオンとなる。これにより、ノードNFSはグランド付近の電位となる。
【0089】
NANDゲートRNDの第1の入力端には、Lレベルの入力信号inが供給される。これにより、NANDゲートRNDの出力信号はHレベルとなる。
【0090】
ANDゲートRADは、書き込み制御信号w_enと同じ論理の出力信号をリーク抑制スイッチドライバSDに供給する。フラグ“0”の書き込み時には書き込み制御信号w_enの信号レベルはHレベルであるため、リーク抑制スイッチドライバSDには、Hレベルの書き込み制御信号w_enが供給される。リーク抑制スイッチドライバSDは、信号レベルが最大で電源電圧VDDの2倍となるリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給し、リーク抑制スイッチMSLをオンさせる。
【0091】
リーク抑制スイッチMSLがオンになると、容量CFが放電され、ノードNVFの電位はグランド付近となる。ノードNVFの電位がグランド付近のため、放電部11による放電電流はゼロとなる。また、ノードNVFの電位がグランド付近のため、フラグ判定部12はLレベル(グランドレベル)の出力信号OUTを出力する。
【0092】
次に、フラグ保持回路200は、電源供給が有る状態において、フラグ“1”の書き込みを行う。フラグ設定部10には、“1”を表すHレベルの入力信号inが供給される。また、書き込み開始時には、ロジック回路(図示せず)からフラグ設定部10に、Lレベルのリフレッシュ制御信号rf_enが供給される。
【0093】
トランジスタMSP及びMSNのゲートには入力信号inの論理レベルを反転したLレベルの信号が供給され、トランジスタMSPはオン、トランジスタMSNはオフとなる。これにより、ノードNFSは電源電圧VDD付近の電位となる。
【0094】
NANDゲートRNDの第2の入力端には、Lレベルのリフレッシュ制御信号rf_enが供給される。これにより、NANDゲートRNDの出力信号はHレベルとなる。
【0095】
ANDゲートRADは、書き込み制御信号w_enと同じ論理の出力信号をリーク抑制スイッチドライバSDに供給する。フラグの書き込み時には書き込み制御信号w_enの信号レベルはHレベルであるため、リーク抑制スイッチドライバSDには、Hレベルの書き込み制御信号w_enが供給される。リーク抑制スイッチドライバSDは、これに応じて信号レベルが最大で電源電圧VDDの2倍となるリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給し、リーク抑制スイッチMSLをオンに制御する。
【0096】
リーク抑制スイッチMSLがオンになると、容量CFが充電され、ノードNVFの電位は電源電圧VDD付近となる。放電部11は、一定の放電電流をグランドに流すが、フラグ設定部10による容量CFの充電の方が大きいため、ノードNVFは電源電圧VDD付近を維持する。フラグ判定部12は、ノードNVFが電源電圧VDD付近であるため、Hレベルの出力信号OUTを出力する。
【0097】
書き込み開始から、ノードNVF(すなわち、容量CFの充電電圧)が電源電圧VDD付近まで充電されるだけの時間が経過すると、ロジック回路(図示せず)はリフレッシュ制御信号rf_enの信号レベルをHレベルに切り替える。
【0098】
NANDゲートRNDの第1の入力端にはHレベルの入力信号inが供給され、第2の入力端にはHレベルのリフレッシュ制御信号rf_enが供給された状態になる。NANDゲートRNDは、リフレッシュ判定部13の出力信号NRFの論理を反転させた信号を出力する。
【0099】
リフレッシュ判定部13は、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refよりも高い場合はHレベルの出力信号NRFを出力し、閾値電圧Vth_refよりも低い場合はLレベルの出力信号NRFを出力する。従って、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refよりも高い場合は、NANDゲートRNDの出力信号はLレベルとなり、ANDゲートRADの出力信号はLレベルとなる。一方、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refよりも低い場合は、NANDゲートRNDの出力信号はHレベルとなり、ANDゲートRADの出力信号はHレベルとなる。
【0100】
このように、ノードNVFの電位(すなわち、容量CFの充電電圧)が閾値電圧Vth_refよりも高くなると、ANDゲートRADの出力信号はLレベルとなり、リーク抑制スイッチドライバSDにLレベルの信号が入力される。従って、リーク抑制スイッチドライバSDは、Lレベルのリーク制御信号NCSを生成してリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給する。これにより、リーク抑制スイッチMSLがオフとなるため、容量CFの充電動作が停止する。
【0101】
その後、充電動作の停止により放電動作が優位となり、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refよりも低くなると、ANDゲートRADの出力信号はHレベルとなり、リーク抑制スイッチドライバSDにHレベルの信号が入力される。従って、リーク抑制スイッチドライバSDは、Hレベルのリーク制御信号NCSを生成してリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給する。これにより、リーク抑制スイッチMSLがオンとなるため、再び容量CFの充電が行われる。
【0102】
以上のように、本実施例のフラグ保持回路200は、充電動作を開始して所定時間の経過後、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refを超えている場合には、充電動作を停止する。そして、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refまで低下したときに、再度充電を行う。
【0103】
このため、電源供給が有る限り、ノードNVFの電位は閾値電圧Vth_ref以上を確保している。すなわち、ノードNVFの電位は、電源供給がなくなる直前まで、閾値電圧Vth_ref以上の電圧レベルを維持した状態となる。従って、容量CFの充電電圧がVth_refからフラグ判定閾値Vth_jdgに放電されるまでの期間が2秒を超えていれば、2秒を超えたフラグ保持期間を確保することができる。
【0104】
図11Bは、リフレッシュ判定の閾値電圧Vth_refとフラグ判定閾値Vth_jdgとの関係を示す図である。電源供給が無くなった時点における容量CFの充電電圧がVth_refだとすると、その時点から容量CFの充電電圧がフラグ判定閾値Vth_jdgのレベルに放電されるまでの期間(図に示すt_refからt_hdまで)が2秒を超えていれば、EPCのEPCTMglobal規格に従ったセッションS2、S3及びSLにおけるフラグ保持期間を確保することができる。
【0105】
本実施例のフラグ保持回路200では、実施例1のフラグ保持回路100と同様、リーク抑制スイッチドライバSDがVDDの2倍の信号レベルを有するリーク制御信号NCSを生成してリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給するため、専用のレギュレータを別途設ける必要がない。従って、本実施例のフラグ保持回路200によれば、回路規模の増大を抑えつつフラグの設定及び保持を行うことが可能となる。
【0106】
また、本実施例のフラグ保持回路200では、容量CFの充電を開始後、所定期間の経過後に充電動作を停止し、ノードNVFの電位が閾値電圧Vth_refを下回る度にリーク抑制スイッチドライバSDを動作させて容量CFの再充電を行う。このため、動作電流を大幅に削減することができる。
【0107】
例えば、本実施例のフラグ保持回路200とは異なり、フラグ1の書き込み時において、リーク抑制スイッチドライバSDにクロック信号clkを印加し続けると、リーク抑制スイッチドライバSD内のNANDゲートやインバータで貫通電流が発生し続ける。
【0108】
これに対し、本実施例のフラグ保持回路200では、リーク抑制スイッチドライバSDの動作による貫通電流は、容量CFの充電電圧が電源電圧VDD付近から放電されて閾値電圧Vth_refまで下がる時間間隔(図11Bの0~t_refまで)で発生することになる。貫通電流による動作電流の実効値は、次の式(1)で表される。
【0109】
【数1】
例えば、クロック信号clkの周期が1MHz(周期:1μsec)、電源電圧VDD付近から閾値電圧Vth_refまで放電する時間間隔(t1-t0)が1秒、1回の充電で16クロック必要だとすると、貫通電流による動作電流の実効値は、1/250(=4/1000:16×10-6の平方根)程度まで削減できる。
【0110】
従って、本実施例のフラグ保持回路200によれば、動作電流を抑えつつ、一定以上の期間(例えば、2秒を超える期間)に亘ってフラグを保持することが可能となる。
【0111】
なお、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施例では、リーク抑制スイッチドライバSDが、最大値が電源電圧VDDの2倍となるように信号レベルが変化するリーク制御信号NCSを生成してリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給する構成について説明した。しかし、リーク制御信号NCSの信号レベルは電源電圧VDDの2倍に限られない。すなわち、リーク抑制スイッチドライバSDは、リーク抑制スイッチMSLのゲート電圧がソース-ドレイン電圧よりも大きくなるように、電源電圧VDDよりも大なる信号レベルを有するリーク制御信号NCSをリーク抑制スイッチMSLのゲートに供給するものであればよい。
【0112】
また、上記実施例では、Nチャネル型MOSトランジスタからなるリーク抑制スイッチMSLのソースがノードNVFに接続され、ドレインがNFSに接続されている場合について説明した。しかし、リーク抑制スイッチMSLのソース及びドレインは、いずれか一方がノードNFSに接続され、他方がノードNVFに接続されていればよい。
【0113】
また、上記実施例では、トランジスタMDSのドレインが電流源IDの他端に接続され、ソースがノードNVDに接続されている場合について説明した。しかし、トランジスタMDSのソース及びドレインは、いずれか一方が電流源IDに接続され、他方がノードNVDに接続されていればよい。
【符号の説明】
【0114】
100,200 フラグ保持回路
10,20 フラグ設定部
11,21 放電部
12,22 フラグ判定部
13 リフレッシュ判定部
FSI,JI インバータ
SD リーク抑制スイッチドライバ
MSL リーク抑制スイッチ
SI,SIR シュミットインバータ
ND1,RND NANDゲート
INV1,INV2,INV3 インバータ
SDI1,SDI2,SDI3 インバータ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11A
図11B