(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20220617BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220617BHJP
A61F 13/472 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61F13/56 110
A61F13/15 220
A61F13/472
(21)【出願番号】P 2018248328
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-07-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅史
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-28139(JP,A)
【文献】特開2014-30477(JP,A)
【文献】特開2018-15467(JP,A)
【文献】特開2011-135994(JP,A)
【文献】特開2015-211740(JP,A)
【文献】特開2010-220911(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第0471384(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着衣当接面を有する不織布シートと、前記不織布シートの前記着衣当接面に配置されている粘着材とを有している吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、展開状態において、前記着衣当接面側が凸となるように前記吸収性物品を折り曲げるための仮想折り線を有しており、かつ
前記粘着材は、前記不織布シートの前記着衣当接面の表面に存在する粘着部を有しており、
前記粘着部は、前記展開状態において、前記仮想折り線を跨って延在している低粘着性領域、及び前記低粘着性領域よりも高い粘着性を有しており、かつ前記低粘着性領域に隣接している高粘着性領域を有している、
吸収性物品。
【請求項2】
前記粘着材は、前記粘着部と連続し、かつ前記不織布シートに含侵している含浸部を有している、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記含浸部は、前記吸収性物品の厚さ方向に関して、前記低粘着性領域と重複する、低粘着性領域重複部分、及び前記高粘着性領域と重複する、高粘着性領域重複部分をそれぞれ有しており、
前記低粘着性領域重複部分は、前記高粘着性領域重複部分よりも厚い、
請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
前記仮想折り線を跨って延在している圧搾部を有している、請求項1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記低粘着性領域と前記高粘着性領域とが、前記仮想折り線を挟んで対向している一対の圧搾部によって区画されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記吸収性物品は、基部及び中高部を有しており、前記展開状態において、
前記中高部は、前記仮想折り線と重複する部分を有している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記吸収性物品は、前記展開状態において、長手方向を有しており、前記長手方向に、排泄口当接領域、並びに前記排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域を有しており、かつ
前記仮想折り線は、前記前側の領域及び前記後側の領域のそれぞれに配置されている、
請求項1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記吸収性物品は、前記展開状態において、長手方向及び幅方向を有しており、前記仮想折り線は、前記長手方向と交差する方向に沿って延在している、
請求項1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記展開状態において、前記吸収性物品の厚さ方向に関して、前記仮想折り線と重複する吸収体を有している、請求項1~8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、及び失禁パッド等の吸収性物品は、着用者の排泄液の漏れを防止することのほかに、着用者の股間部に接触しながら長時間着用されるものであるため、身体に良好に且つ快適にフィットすることが求められている。
【0003】
吸収性物品は、着衣の肌当接面側に貼り付けて使用される場合がある。吸収性物品を着衣に接着させる手段の一つとして、吸収性物品の着衣対向面側に粘着材を設けることが挙げられる。
【0004】
特許文献1は、液透過性を有する表面シートと液不透過性を有する裏面シートと、の間に吸収体が介在されるとともに、外面側にホットメルト接着剤によるずれ止め用粘着層が設けられた挿入式使い捨て吸収性物品において、液不透過性を有する裏面シートの外側面に不織布を備えるとともに、不織布の目付量が14~18g/m2であることを特徴とする、挿入式使い捨て吸収性物品を開示している。
【0005】
特許文献2は、液保持性の吸収層及び液不透過性層を備え、非肌当接面にズレ止め粘着剤を設けた吸収性物品であって、非肌当接面が、繊維集合体により構成されており、ホットメルト接着剤から構成されるズレ止め粘着剤が、非肌当接面側の第1層と該第1層上に積層された第2層との積層構造を有し、第1層を構成するホットメルト接着剤が、第2層を構成するホットメルト接着剤よりも軟化点温度近傍において流動性が高い吸収性物品を、開示している。同文献は、この様な構成を有する吸収性物品は、非肌当接面が繊維集合体で構成されている場合においても、粘着剤の粘着力が低下せず、また、逆に、吸収性物品が固定される衣服や別の吸収性物品側に粘着剤が移行しない、良好なズレ止め特性を得ることができると記載している。
【0006】
特許文献3は、肌に接する当接面と、非当接面と、これら両面間に位置する吸液性コアとを有し、非当接面に着衣に対する粘着性止着域が形成されている排泄液処理用吸収性物品であって、コアの下面側には、少なくとも、高密度の熱可塑性樹脂と、樹脂層の下面に接合し、樹脂層よりも低密度の第1の熱可塑性合成繊維層とが位置し、第1の樹脂層の下面に塗布された粘着剤によって止着域が形成されていることを特徴とする吸収性物品を開示している。同文献は、この様な構成を有する排泄液処理用吸収性物品では、着衣への止着手段となる粘着剤は、その粘着力が弱くても、合成繊維層の繊維と絡み合って物品の裏面に確実に保持されるとともに、樹脂層によって裏面シート内部への移行が阻止されると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-355266号公報
【文献】特開2005-305135号公報
【文献】特開2000-210328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1~3に記載されている吸収性物品のように、着衣当接面に配置されている粘着材によって着衣に貼り付けられて使用される吸収性物品では、吸収性物品に皺ができないようにする、及び/又は吸収性物品と着用者との位置関係を合わせる、特に排泄口当接領域が着用者の排泄口に当接するようにする等の観点から、吸収性物品を着衣の適切な位置に貼り付ける必要がある。
【0009】
吸収性物品を着衣の適切な位置に貼り付ける方法としては、吸収性物品の着衣当接面の接着部全体を着衣に貼り付けず、接着部の一部分のみを貼り付けて適切な位置に合わせる「仮止め」を何度か行った後に、接着部全体を着衣に貼り付けて固定する「本止め」を行うことが考えられる。
【0010】
しかしながら、粘着材の粘着性が高すぎると、吸収性物品を着衣から剥がしにくく、吸収性物品の仮止めを繰り返し行いにくい場合がある。
【0011】
他方、粘着材の粘着性が低すぎると、本止めにおける吸収性物品と着衣との粘着力が十分でなく、使用中に吸収性物品が着衣の適切な位置からずれたり剥がれたりする場合がある。
【0012】
したがって、本発明の課題は、仮止めの際に着衣への繰り返しの貼り付けが容易であり、かつ本止め後に吸収性物品が着衣の適切な位置に維持されやすい、吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
【0014】
《態様1》
着衣当接面を有する不織布シートと、前記不織布シートの前記着衣当接面に配置されている粘着材とを有している吸収性物品であって、
前記吸収性物品は、展開状態において、前記着衣当接面側が凸となるように前記吸収性物品を折り曲げるための仮想折り線を有しており、かつ
前記粘着材は、前記不織布シートの前記着衣当接面の表面に存在する粘着部を有しており、
前記粘着部は、前記展開状態において、前記仮想折り線を跨って延在している低粘着性領域、及び前記低粘着性領域よりも高い粘着性を有しており、かつ前記低粘着性領域に隣接している高粘着性領域を有している、
吸収性物品。
【0015】
態様1に記載の吸収性物品は、着衣当接面側が凸となるように吸収性物品を折り曲げるための仮想折り線を有している。
【0016】
そのため、仮止めの際に、当該仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることにより形成される凸部分を起点として仮止めを行うことにより、吸収性物品を着衣の適切な位置に合わせやすい。
【0017】
また、態様1に記載の吸収性物品は、吸収性物品を着衣に貼り付けるための粘着材が着衣当接面に配置されている。そして、展開状態において、粘着材は、仮想折り線を跨って延在している低粘着性領域、及び低粘着性領域に隣接して配置されている高粘着性領域を有している。
【0018】
そのため、吸収性物品の着衣当接面側において、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることにより形成される凸部分の着衣に対する粘着力を低くすることができる。したがって、仮止めの際に、凸部分を起点として再度位置合わせをする場合に、凸部分を着衣から剥がしやすい。これにより、位置合わせの際に吸収性物品と着衣との位置関係が適切ではない場合等にも、吸収性物品の仮止め部分を再度貼り直しやすく、位置合わせが容易である。
【0019】
他方、低粘着性領域に隣接して高粘着性領域が配置されているため、位置合わせした後に吸収性物品の粘着部全体を着衣に貼り付ける本止めの際に、吸収性物品を高い粘着力で着衣に貼り付けることができ、着用時の吸収性物品のズレや剥離等を抑制することが可能である。
【0020】
《態様2》
前記粘着材は、前記粘着部と連続し、かつ前記不織布シートに含侵している含浸部を有している、態様1に記載の吸収性物品。
【0021】
吸収性物品を着衣に仮止めした際に、吸収性物品の着衣に対する位置関係が適切ではない場合、仮止めした吸収性物品を剥がして再度仮止めを行う場合がある。
【0022】
態様2に記載の吸収性物品では、粘着材の一部分が不織布内に含侵している含浸部が粘着部と連続しているため、含浸部の粘着材に対するアンカー効果により、粘着材を不織布シートの着衣当接面に保持しやすい。
【0023】
そのため、仮止めを繰り返しても粘着部の粘着性を維持することができ、本止めの際に、吸収性物品の着衣への固定をより強固にすることができ、着用時の吸収性物品のズレや剥離等をより抑制することが可能である。
【0024】
《態様3》
前記含浸部は、前記吸収性物品の厚さ方向に関して、前記低粘着性領域と重複する、低粘着性領域重複部分、及び前記高粘着性領域と重複する、高粘着性領域重複部分をそれぞれ有しており、
前記低粘着性領域重複部分は、前記高粘着性領域重複部分よりも厚い、
態様2に記載の吸収性物品。
【0025】
態様3に記載の吸収性物品では、低粘着性領域と重複する含浸部の厚さが大きいため、仮想折り線部分及びその周辺部分の剛性が高く、仮止め時に凸形状を維持しやすいため、凸形状を起点とした仮止めがより容易である。他方、高粘着性領域と重複する部分にも含浸部を有するため、粘着材は、粘着部全体にわたって含浸部を有しており、これにより、含浸部の粘着材に対するアンカー効果をより高めることができる。
【0026】
したがって、態様3に記載の吸収性物品では、着用時の吸収性物品のズレや剥離等をより抑制すると同時に、仮止め時に凸形状を維持しやすく、仮止めがより容易である。
【0027】
《態様4》
前記仮想折り線を跨って延在している圧搾部を有している、態様1~3のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0028】
圧搾部は、吸収性物品のうち圧搾部以外の部分と比較して、材料の密度が高くなっているため、剛性が高い。態様4に記載の吸収性物品は、圧搾部が、仮想折り線に跨って延在している。
【0029】
これにより、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げた際に、折り曲げた部分と重なる圧搾部の剛性によって、折り曲げた形状が維持されやすい。そのため、仮止めの際に仮止めの起点となる仮想折り線部分の凸形状が維持されやすく、仮止めが容易である。
【0030】
《態様5》
前記低粘着性領域と前記高粘着性領域とが、前記仮想折り線を挟んで対向している一対の圧搾部によって区画されている、態様1~4のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0031】
態様5に記載の吸収性物品では、低粘着性領域と高粘着性領域とが、仮想折り線を挟んで対向している一対の圧搾部によって区画されている。
【0032】
これにより、態様5に記載の吸収性物品では、仮止めの際に、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることによって生じる皺が、剛性の高い圧搾部の反対側に伝播しにくいため、皺が高粘着性領域にまで伝播することを抑制することができる。これにより、本止めの際に高粘着性領域の着衣に対する密着性を向上させることができ、着用時の吸収性物品のズレや剥離等を更に抑制することが可能である。
【0033】
《態様6》
前記吸収性物品は、基部及び中高部を有しており、前記展開状態において、
前記中高部は、前記仮想折り線と重複する部分を有している、
態様1~5のいずれか1つに記載の吸収性物品。
【0034】
身体へのフィット性、柔らかさの向上、及び/又は吸収容量の向上等の観点から、吸収性物品には中高部が設けられる場合がある。この様な中高部は、上記性能を十分に発揮できるように、着用時に身体と適切な位置関係にあることが好ましい。
【0035】
また、吸収性物品の中高部は、吸収性物品を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分であるため、吸収性物品の厚さ方向において中高部と重なる位置に粘着材が配置されている場合、粘着材と着衣との間の接着がより強固になる。そのため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離する際に、吸収性物品の厚さ方向に関して中高部と重複する位置にある粘着材が着衣に残りやすく、すなわち糊残りが生じやすい。
【0036】
態様6に記載の吸収性物品では、仮想折り線と重複する部分に粘着材の低粘着性領域が配置されているため、この様な中高部と重複する位置にある粘着材の粘着性が低く、使用後に着衣から吸収性物品を剥離させる際に、糊残りが生じにくい。
【0037】
更に、中高部が仮想折り線と重複する部分を有しているため、吸収性物品を着衣に貼り付ける際に、当該仮想折り線を起点として、着用時に中高部が身体と適切な位置関係に配置されるように位置合わせしやすい。
【0038】
《態様7》
前記吸収性物品は、前記展開状態において、長手方向を有しており、前記長手方向に、排泄口当接領域、並びに前記排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域を有しており、かつ
前記仮想折り線は、前記前側の領域及び前記後側の領域のそれぞれに配置されている、
態様1~6のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0039】
吸収性物品を着衣に位置合わせする際には、着用時において吸収性物品の排泄口当接領域が、着用者の排泄口に当接するような位置になるように、吸収性物品を着衣に貼り付けることが好ましい。
【0040】
態様7に記載の吸収性物品は、排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域のそれぞれに仮想折り線が配置されている。
【0041】
そのため、排泄口当接領域よりも前及び後の両方の位置で仮止めを行うことができ、吸収性物品の排泄口当接領域の位置を適切な位置に調節しながら位置合わせすることができる。
【0042】
《態様8》
前記吸収性物品は、前記展開状態において、長手方向及び幅方向を有しており、前記仮想折り線は、前記長手方向と交差する方向に沿って延在している、
態様1~7のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0043】
吸収性物品を着衣に仮止めする際に、吸収性物品を着衣の形状に沿って貼り付けることが好ましい。
【0044】
態様8に記載の吸収性物品は、長手方向と交差する方向に沿って仮想折り線が延在しているため、仮止めの際に、吸収性物品を仮想折り線に沿って折り曲げて、着衣の形状に合わせた形状にすることができ、より適切に位置合わせすることができる。
【0045】
《態様9》
前記展開状態において、前記吸収性物品の厚さ方向に関して、前記仮想折り線と重複する吸収体を有している、態様1~8のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【0046】
吸収性物品を仮止めする際に、排泄物等を特に吸収させることができる吸収体の位置を適切な位置に合わせることが好ましい。
【0047】
態様9に記載の吸収性物品は、吸収体の位置を起点として位置合わせすることができるので、より適切に位置合わせすることができる。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、仮止めの際に着衣への繰り返しの貼り付けが容易であり、かつ本止め後に吸収性物品が着衣の適切な位置に維持されやすい、吸収性物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【
図1】
図1は、本発明の吸収性物品の第1の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、肌当接面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の吸収性物品の第1の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、着衣当接面側から見た平面図である。
【
図4A】
図4Aは、本発明の吸収性物品の第1の実施形態に従う生理用ナプキン100を着衣に仮止めしている状態を示す概略図である。
【
図5A】
図5Aは、本発明の吸収性物品の第2の実施形態に従う生理用ナプキン100において、粘着材6が不織布シート5に含侵している状態を示す概略図である。
【
図5B】
図5Bは、本発明の吸収性物品の第3の実施形態に従う生理用ナプキン100において、粘着材6が不織布シート5に含侵している状態を示す概略図である。
【
図6】
図6は、本発明の吸収性物品の第4の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態の、
図2におけるA-A’線と同様の線に沿った断面図である。
【
図7】
図7は、本発明の吸収性物品の第5の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、肌当接面側から見た平面図である。
【
図8】
図8は、本発明の吸収性物品の第6の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、着衣当接面側から見た平面図である。
【
図9】
図9は、本発明の吸収性物品の第7の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、着衣当接面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0051】
本願明細書において、「展開状態」とは、吸収性物品が折り返されていない状態をいい、より具体的には、吸収性物品に折り目がないように略平面に広げた状態をいう。
【0052】
本願明細書において、「長手方向」は、吸収性物品の「展開状態」において、縦長の吸収性物品の長さの長い方向を示しており、「幅方向」は、吸収性物品の「展開状態」において、吸収性物品の厚さ方向に垂直であり、かつ「長手方向」に直交する方向をいう。
【0053】
本願明細書において、吸収性物品又は不織布シートの「着衣当接面」とは、吸収性物品又は不織布シートの面のうち、吸収性物品の着用時に下着等の着衣に当接する側の面をいう。
【0054】
また、本願明細書において、吸収性物品の「肌当接面」とは、吸収性物品の面のうち、吸収性物品の着用時に着用者の肌に当接する側の面をいう。
【0055】
本願明細書において、「排泄口当接領域」とは、吸収性物品を着用した際に、着用者の排泄口に当接する位置にある領域である。また、排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域とは、それぞれ、吸収性物品のうち、「排泄口当接領域」を基準として、吸収性物品の着用者の身体の前側方向及び後側方向に対応する位置にある領域をいう。ここで、吸収性物品にウイングが設けられる場合、排泄口当接域は、ウイングの設置領域と幅方向に重複していてもよい。また、排泄口当接域の長手方向の中心及び幅方向の中心は、ウイング設置領域の長手方向における中心及び2つのウイングの設置領域の間の幅方向の中心と、それぞれ重複していてもよい。
【0056】
本発明の吸収性物品は、着衣当接面を有する不織布シートと、不織布シートの着衣当接面に配置されている粘着材とを有している。
【0057】
本発明の吸収性物品は、展開状態において、着衣当接面側が凸となるように吸収性物品を折り曲げるための仮想折り線を有している。また、粘着材は、不織布シートの着衣当接面の表面に存在する粘着部を有している。また、粘着部は、展開状態において、仮想折り線を跨って延在している低粘着性領域、及び低粘着性領域よりも高い粘着性を有しており、かつ低粘着性領域に隣接している高粘着性領域を有している。
【0058】
本発明の吸収性物品は、着衣当接面側が凸となるように吸収性物品を折り曲げるための仮想折り線を有している。
【0059】
そのため、仮止めの際に、当該仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることにより形成される凸部分を起点として仮止めを行うことにより、吸収性物品を着衣の適切な位置に合わせやすい。
【0060】
また、本発明の吸収性物品は、吸収性物品を着衣に貼り付けるための粘着材が着衣当接面に配置されている。そして、展開状態において、粘着材は、仮想折り線を跨って延在している低粘着性領域、及び低粘着性領域に隣接して配置されている高粘着性領域を有している。
【0061】
そのため、吸収性物品の着衣当接面側において、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることにより形成される凸部分の着衣に対する粘着力を低くすることができる。したがって、仮止めを繰り返し行う際に、凸部分を着衣から剥がしやすい。これにより、位置合わせの際に吸収性物品と着衣との位置関係が適切ではない場合等にも、吸収性物品の仮止め部分を再度貼り直すことが可能であり、位置合わせが容易である。
【0062】
他方、低粘着性領域に隣接して高粘着性領域が配置されているため、位置合わせした後に吸収性物品全体を着衣に貼り付ける際に、吸収性物品を高い粘着力で着衣に貼り付けることができ、着用時の吸収性物品のズレや剥離等を抑制することが可能である。
【0063】
本発明の吸収性物品は、基部及び中高部を有していてよい。ここで、中高部は、吸収性物品の基部よりも厚い部分を意味している。中高部は、吸収性物品の基部よりも厚みを有する任意の構成であってよい。
【0064】
例えば、着用者の身体の形状に吸収性物品がフィットするように基部より大きい厚みを有する構成であってよい。吸収性物品と着用者の身体との間に空隙が存在すると、当該空隙の部分から排泄液が漏れやすくなる場合がある。そのため、吸収性物品の当該空隙の部分に対応する部分に中高部を設けることにより、吸収性物品と着用者の身体との間に空隙が発生することを抑制することができる。
【0065】
中高部は、例えば当該部分の吸収体の厚みを増加させた構造を有していてよい。中高部は、基部における吸収体よりもパルプやポリマー量を多くした中高部やポリマーシートを部分的に配置することによって形成してもよく、当該部分に配置される吸収体を複数層、例えば2層にした構成を有していてよい。
【0066】
中高部は、排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域のそれぞれに配置されていてよい。吸収性物品がウイングを有する場合には、中高部がウイングの設置領域よりも後方側に配置されていてもよい。中高部がウイングの設置領域よりも後方側に配置されている場合、着用時に着用者のお尻の割れ目に吸収体が入り込み、後方部への伝い漏れを抑制することが出来る。
【0067】
本発明の吸収性物品が生理用ナプキンである場合、具体的な構成として、例えば、肌当接面側から着衣当接面側に、サイドシート、表面シート、吸収体、及び不織布シートを有していることができるが、この様な構成に限定されない。なお、この様な構成において、不織布シートは、裏面シートであってよい。
【0068】
本発明の吸収性物品が適用される着衣は、例えば下着であってよいが、特に限定されない。
【0069】
図1~3Bは、それぞれ、本発明の一つの実施態様に従う生理用ナプキン100を示す模式図である。
【0070】
図1及び
図2に示すように、本発明の一つの実施態様に従う生理用ナプキン100は、肌当接面側から着衣当接面側に向かって、サイドシート3、表面シート1、吸収体2、不織布シート5をこの順に有している。ここで、表面シート1は、肌当接面側に配置されており、不織布シート5は、着衣当接面側に配置されている。また、不織布シート5の着衣当接面には、粘着材6が配置されている。
【0071】
ここで、
図1及び2に示すように、本発明の一つの実施態様に従う生理用ナプキン100は、展開状態において、着衣当接面側が凸となるように生理用ナプキン100を折り曲げるための仮想折り線L
1~L
3を有している。
【0072】
そのため、当該仮想折り線L1~L3を起点として着衣当接面側が凸となるように生理用ナプキン100を折り曲げて凸部を形成し、当該凸部を基準とすることにより、生理用ナプキン100が着衣の適切な位置に合うように仮止めしやすい。
【0073】
更に、粘着材6は、仮想折り線L1~L3を跨って延在している低粘着性領域R1、及び低粘着性領域R1よりも高い粘着性を有しており、かつ低粘着性領域R1に隣接している高粘着性領域R2を有している。
【0074】
そのため、生理用ナプキン100の着衣当接面側において、仮想折り線L1~L3と重複する部分及びその周辺の部分は、着衣に対する粘着力が低く、仮止めの際に再度位置合わせをする場合に、当該部分を着衣から剥がしやすい。これにより、位置合わせの際に生理用ナプキン100と着衣との位置関係が適切ではない場合等にも、生理用ナプキン100の仮止め部分を再度貼り直すことが可能であり、位置合わせが容易である。
【0075】
他方、低粘着性領域R1に隣接して高粘着性領域R2が配置されているため、位置合わせした後に生理用ナプキン100全体を着衣に貼り付ける際に、生理用ナプキン100を高い粘着力で着衣に貼り付けることができ、着用時の生理用ナプキン100のズレや剥離等を抑制することが可能である。
【0076】
図3A及びBに示すように、本発明の一つの実施態様に従う生理用ナプキン100は、仮想折り線L
1~L
3に直交し、かつ生理用ナプキン100の厚さ方向Tに平行な線L
1’~L
3’を有している。粘着材6は、線L
1’を跨って低粘着性領域R
1を有しており、高粘着性領域R
2が低粘着性領域R
1に隣接している。
また、
図3A及びBに示すように、本発明の一つの実施態様に従う生理用ナプキン100では、低粘着性領域R
1における粘着部6aの厚さが、高粘着性領域R
2における粘着部6aの厚さよりも小さい。これにより、低粘着性領域R
1の粘着性は、高粘着性領域R
2の粘着性よりも小さくなっている。
【0077】
なお、
図1において、吸収体2は、溝4を有している。この溝4により、生理用ナプキン100の着用時において、生理用ナプキン100が着用者の身体の形状に沿って折り曲がりやすい。
【0078】
図4A及びBは、それぞれ、本発明の第1の実施形態に従う生理用ナプキン100を着衣に仮止めしている状態を示す概略図である。
【0079】
図4Aに示すように、本発明の第1の実施形態に従う生理用ナプキン100は、前方側及び後方側を持って、着衣200の形状に合わせて曲げながら、着衣200に仮止めすることができる。ここで、生理用ナプキン100を、仮想折り線L
1~L
3を起点として着衣200側に凸になるように折り曲げて仮止めを行うことにより、仮想折り線L
1~L
3を起点として位置合わせしやすい。
【0080】
そして、
図4Bに示すように、低粘着性領域R
1が仮想折り線L
1~L
3を跨がって配置されているため、仮想折り線L
1~L
3を折り曲げることにより形成される凸部分の着衣に対する粘着力が低い。これにより、仮止めの際に、この凸部分を起点として再度位置合わせをする場合に、凸部分を着衣から剥がしやすい。
【0081】
また、
図4Bに示すように、高粘着性領域R
2が低粘着性領域R
1に隣接しているため、位置合わせした後に生理用ナプキン100全体を着衣に貼り付ける際に、生理用ナプキン100を高い粘着力で着衣200に貼り付けることができ、着用時の生理用ナプキン100のズレや剥離等を抑制することが可能である。
【0082】
《不織布シート》
本発明の吸収性物品は、着衣当接面を有する不織布シートを有している。
【0083】
不織布シートは、吸収性物品を着衣に貼り付けるための基材とすることができる任意の不織布のシートである。不織布シートには、例えばスパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS不織布等)等の任意の不織布を用いることができる。
【0084】
また、不織布シートは、疎水性、又は撥水性の不織布から構成されていることが好ましい。
【0085】
不織布シートは、排泄液が不織布シートの下方に移動することを抑制する観点、及び製造時に粘着材の材料を含侵させることができ、かつ粘着部の仮想折り線と厚さ方向に重複する部分の厚さと当該部分に隣接する部分の厚さの差を形成する観点から、10~80g/m2の坪量を有していることが好ましい。坪量が10g/cm2以上である場合には、不織布の厚みが大きく、含浸部位の厚さを大きくすることができる。坪量が80g/cm2以下である場合には、粘着材の塗布量を少なくしつつ、含浸部位の厚さを大きくすることができる。坪量は、10g/m2以上、20g/m2以上、又は30g/m2以上、であってよく、80g/m2以下、60g/m2以下、又は50g/m2以下であってよい。
【0086】
また、排泄液が不織布シートの下方に移動することを抑制する観点から、不織布シートの肌当接面側に、フィルム等が挿入されていることが好ましい。
【0087】
《粘着材》
本発明の吸収性物品は、不織布シートの着衣当接面に配置されている粘着材を有している。粘着材は、不織布シートの着衣当接面の表面に存在する粘着部を有している。
【0088】
また、粘着材は、粘着部と連続し、かつ不織布に含侵している含浸部を有していることができる。
【0089】
粘着材の材料は、吸収性物品を着衣に貼り付けることができる粘着性の物質であれば特に限定されず、例えば、着衣に貼り付けて使用される吸収性物品に使用することができる任意の材料であってよい。より具体的には、粘着材の材料は、ホットメルト接着剤が挙げられる。上記ホットメルト接着剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体等のオレフィン系;エチレン-酢酸ビニル共重合体系;ポリアミド系;スチレン-ブチレン-スチレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー系;湿気硬化型ウレタンプレポリマー等の反応型ホットメルト等が挙げられる。
【0090】
粘着材は、材料となる粘着性の物質を不織布シート上に任意の方法によって適用することによって形成することができ、例えば材料となる粘着性の物質を不織布シートに塗布することによって形成することができる。
【0091】
粘着材の形状は、吸収性物品を着衣に貼り付けることができる任意の形状であってよい。粘着材の形状は、吸収性物品の長手方向又は幅方向に渡って延在する複数条の棒形状であってよいが、これ等に限定されない。
【0092】
〈粘着部〉
本発明の吸収性物品において、粘着材は、不織布シートの着衣当接面の表面に存在する粘着部を有している。粘着部は、低粘着性領域及び高粘着性領域を有している。
【0093】
(低粘着性領域)
低粘着性領域は、粘着部のうち、高粘着性領域よりも粘着性が低い領域である。低粘着性領域は、仮想折り線を跨って延在している。したがって、低粘着性領域は、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品の厚さ方向に関して仮想折り線と重複する部分を有する。
【0094】
そのため、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることにより凸部分を形成したときに、凸部分の頂点を起点として、その周辺部分の粘着性が低くなる。これにより、仮止めを繰り返し行う際に、凸部分を着衣から剥がしやすい。したがって、位置合わせの際に吸収性物品と着衣との位置関係が適切ではない場合等にも、吸収性物品の仮止め部分を再度貼り直すことが可能であり、位置合わせが容易である。
【0095】
低粘着性領域は、吸収性物品の展開状態における平均厚さをdとしたときに、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品の面内における仮想折り線に直交する方向に関して仮想折り線を中心としてπdの長さの範囲内の部分である。この様な範囲内の部分は、吸収性物品を仮想折り線に沿って折り曲げた際に形成される凸部分の略弧形状の部分に含まれる。
【0096】
なお、この平均厚さdは、以下の通り測定される。株式会社大栄科学精器製作所製 FS-60DS[測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2]を準備し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)の下、吸収性物品の異なる5つの部位を加圧し、各部位における加圧10秒後の厚さを測定し、5つの測定値の平均値を厚さとする。
【0097】
(高粘着性領域)
高粘着性領域は、粘着部のうち、低粘着性領域よりも粘着性が高い領域である。高粘着性領域は、低粘着性領域に隣接している。すなわち、高粘着性領域は、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品の厚さ方向に関して仮想折り線と重複する部分を有しない。なお、高粘着性領域は、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品の面内における仮想折り線に直交する方向に関して低粘着性領域の端部から仮想折り線と反対方向にπdの長さの範囲内の部分である。高粘着性領域は、吸収性物品の面内における仮想折り線に直交する方向に関して低粘着性領域の少なくとも一方の端部に配置されていればよい。
【0098】
これにより、低粘着性領域に隣接して高粘着性領域が配置されているため、位置合わせした後に吸収性物品全体を着衣に貼り付ける際に、吸収性物品を高い粘着力で着衣に貼り付けることができ、着用時の吸収性物品のズレや剥離等を抑制することが可能である。
【0099】
本発明において、低粘着性領域と高粘着性領域との粘着性の大小関係は、粘着部のそれぞれの領域の平均の厚さの大小関係によって与えられる。したがって、低粘着性領域は、高粘着性領域よりも平均の厚さが小さい。
【0100】
低粘着性領域及び高粘着性領域のそれぞれの平均の厚さは、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品の面内において仮想折り線と直交する方向の断面における、それぞれの領域における不織布シートの着衣対向面側から粘着部の着衣対向面側までの長さの平均値によって定義される。
【0101】
ここで、この断面において、この長さの平均値の大小関係は、断面における各部分の面積の大小関係として求めることができる。そして、この面積の大小関係は、これらの断面の電子顕微鏡画像等から目視又は画像解析ソフトを用いて求めることができる。
【0102】
また、吸収性物品の断面は、吸収性物品を液体窒素につけて固めたものを切断することにより得ることができる。
【0103】
低粘着性領域及び高粘着性領域の厚さの差は、任意の方法によって形成することができる。
【0104】
この厚さは、例えば、不織布シート上の、低粘着性領域及び高粘着性領域に対応する領域に適用する粘着材の材料の塗布量を変える方法を挙げることができる。この方法を用いる場合には、低粘着性領域及び高粘着性領域の厚さの差がなくならないような粘度で粘着材の材料を塗布することが好ましい。この様な粘度は、例えば塗布の際に粘着材の材料の温度を調節することにより適宜選択することができる。
【0105】
また、この厚さの差は、例えば、不織布シート上に粘着性の物質を塗布した後に、低粘着性領域及び高粘着性領域に対応する領域に、それぞれ異なるプレス圧を加えてプレスすることにより形成することができる。より具体的には、低粘着性領域に対応する領域に掛けるプレス圧を、高粘着性領域に対応する領域に掛けるプレス圧よりも大きくすることが挙げられる。
【0106】
〈含浸部〉
本発明の吸収性物品において、粘着材は、粘着部と連続し、かつ不織布シートに含侵している含浸部を有しているのが好ましい。ここで、粘着部と含浸部は、例えば粘着材の厚さ方向において連続していることができるが、他の方向に連続していてもよい。
【0107】
吸収性物品を着衣に仮止めした際に、吸収性物品の着衣に対する位置関係が適切ではない場合、仮止めした吸収性物品を剥がして再度仮止めを行う場合がある。本発明の吸収性物品が粘着材は、粘着部と連続し、かつ不織布シートに含侵している含浸部を有している場合、含浸部の粘着材に対するアンカー効果により、仮止めを繰り返しても粘着部の粘着性を維持することができ、本止めの際に、吸収性物品の着衣への固定をより強固にすることができ、着用時の吸収性物品のズレや剥離等をより抑制することが可能である。
【0108】
また、含浸部は、吸収性物品の厚さ方向に関して、低粘着性領域と重複する、低粘着性領域重複部分、及び高粘着性領域と重複する、高粘着性領域重複部分をそれぞれ有しており、低粘着性領域重複部分は、高粘着性領域重複部分よりも厚いことが好ましい。
【0109】
低粘着性領域と重複する含浸部の厚さが大きいと、仮想折り線部分及びその周辺部分の剛性が高く、仮止め時に凸形状を維持しやすいため、凸形状を起点とした仮止めがより容易である。他方、吸収性物品が高粘着性領域と重複する部分にも含浸部を有すると、粘着材は、粘着部全体にわたって含浸部をするため、これにより、含浸部の粘着材に対するアンカー効果をより高めることができる。
【0110】
したがって、含浸部がこのような構成を有していると、着用時の吸収性物品のズレや剥離等をより抑制すると同時に、仮止め時に凸形状を維持しやすく、仮止めがより容易である。
【0111】
なお、不織布内への含浸によるアンカー性を向上させるという観点から、不織布シートがSMS不織布から構成されている場合には、含浸部は、SMS不織布の三つの層に連続して含浸していることが好ましい。また、同様の観点から、不織布シートがエアスルー不織布から構成されている場合には、含浸部は高密度層に含浸していることが好ましい。
【0112】
低粘着性領域重複部分と高粘着性領域重複部分との厚さの差は、2つの異なる領域における含浸部分の厚さを変えることができる任意の方法を用いることができる。この様な方法としては、例えば、低粘着性領域、及び高粘着性領域に塗布する粘着材の材料として、それぞれ不織布シートへの含浸しやすさが異なる材料を用いる、それぞれの領域に塗布する粘着材の材料の塗布量を変える、それぞれの領域に粘着材の材料を塗布した後に、それぞれの領域を、互いに異なるプレス圧でプレスすること等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0113】
低粘着性領域重複部分の厚さと高粘着性領域重複部分の厚さの大小関係は、吸収性物品の展開状態において、吸収性物品の面内において仮想折り線と直交する方向の断面における、それぞれの領域における不織布シートの着衣対向面側から粘着部の着衣対向面側までの平均の長さによって定義される。
【0114】
ここで、この断面において、この平均の長さの大小関係は、断面における各部分の面積の大小関係として求めることができる。そして、この面積の大小関係は、これらの断面の電子顕微鏡画像等から目視又は画像解析ソフトを用いて求めることができる。
【0115】
また、吸収性物品の断面は、吸収性物品を液体窒素につけて固めたものを切断することにより得ることができる。
【0116】
図5Aは、本発明の吸収性物品の第2の実施形態に従う生理用ナプキン100において、粘着材6が不織布シート5に含侵している状態を示す概略図である。
【0117】
図5Aに示すように、本発明の吸収性物品の第2の実施形態に従う生理用ナプキン100において、粘着材6は、粘着部6aと連続し、かつ不織布シート5に含侵している含浸部6bを有している。
【0118】
含浸部6bは粘着材6に対するアンカー効果を有するため、生理用ナプキン100を着衣から剥離させる際に、粘着材6を不織布シート5の着衣当接面に維持しやすく、仮止めを複数回繰り返し行った場合にも、粘着材6の粘着性を維持することができる。
【0119】
図5Bは、本発明の吸収性物品の第3の実施形態に従う生理用ナプキン100において、粘着材6が不織布シート5に含侵している状態を示す概略図である。
【0120】
図5Bに示すように、生理用ナプキン100において、含浸部6bは、生理用ナプキン100の厚さ方向Tに関して、低粘着性領域R
1と重複する、低粘着性領域重複部分R
1’、及び高粘着性領域R
2と重複する、高粘着性領域重複部分R
2’をそれぞれ有している。また、低粘着性領域重複部分R
1’は、高粘着性領域重複部分R
2’よりも厚い。
【0121】
本発明の吸収性物品の第3の実施形態に従う生理用ナプキン100では、含浸部6bのうち、低粘着性領域R1と重複する低粘着性領域重複部分R1’の厚さが大きいため、仮想折り線L1~L3及びその周辺部分の剛性が高く、仮止め時に凸形状を維持しやすい。他方、この生理用ナプキン100は、含浸部6bのうち、高粘着性領域R2と重複する高粘着性領域重複部分R2’を有するため、含浸部6bの粘着部6aに対するアンカー効果が大きい。
【0122】
《仮想折り線》
本発明の吸収性物品は、展開状態において、着衣当接面側が凸となるように吸収性物品を折り曲げるための仮想折り線を有している。仮想折り線は、着衣当接面側が凸となるように吸収性物品を折り曲げたときの折り軸である。仮想折り線は、例えば、着衣当接面側が凸となるように吸収性物品を折り曲げたときに形成される凸形状の頂点となる部分に配置されている。
【0123】
本発明の吸収性物品は、仮止めの際に、当該仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることにより形成される凸部分を起点として仮止めを行うことにより、吸収性物品を着衣の適切な位置に合わせやすい。
【0124】
吸収性物品の展開状態において、仮想折り線は、長手方向と交差する方向に沿って延在しているのが好ましい。
【0125】
長手方向と交差する方向に沿って仮想折り線が延在している場合、仮止めの際に、吸収性物品を仮想折り線に沿って折り曲げて、着衣の形状に合わせた形状にすることができ、より適切に位置合わせすることができる。
【0126】
吸収性物品が基部及び中高部を有している場合、展開状態において、中高部は、仮想折り線と重複する部分を有しているのが好ましい。
【0127】
身体へのフィット性、柔らかさの向上、及び/又は吸収容量の向上等の観点から、吸収性物品には中高部が設けられる場合がある。この様な中高部は、上記性能を十分に発揮できるように、着用時に身体と適切な位置関係にあることが好ましい。
【0128】
また、吸収性物品の中高部は、吸収性物品を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分であるため、吸収性物品の厚さ方向において中高部と重なる位置に粘着材が配置されている場合、粘着材と着衣との間の接着がより強固になる。そのため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離する際に、吸収性物品の厚さ方向に関して中高部と重複する位置にある粘着材が着衣に残りやすく、すなわち糊残りが生じやすい。
【0129】
中高部が、仮想折り線と重複する部分を有している場合、仮想折り線と重複する部分に粘着材の低粘着性領域が配置されているため、この様な中高部と重複する位置にある粘着材の粘着性が低く、使用後に着衣から吸収性物品を剥離させる際に、糊残りが生じにくい。
【0130】
更に、中高部が仮想折り線と重複する部分を有しているため、吸収性物品を着衣に貼り付ける際に、当該仮想折り線を起点として、着用時に中高部が身体と適切な位置関係に配置されるように位置合わせしやすい。
【0131】
吸収性物品は、展開状態において、長手方向に、排泄口当接領域、並びに排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域を有しており、かつ仮想折り線は、排泄口当接領域よりも前側の領域及び排泄口当接領域よりも後側の領域のそれぞれに配置されているのが好ましい。
【0132】
吸収性物品を着衣に位置合わせする際には、着用時において吸収性物品の排泄口当接領域が、着用者の排泄口に当接するような位置になるように、吸収性物品を着衣に貼り付けることが好ましい。
【0133】
仮想折り線が、排泄口当接領域よりも前側の領域及び排泄口当接領域よりも後側の領域のそれぞれに配置されている場合、排泄口当接領域よりも前及び後の両方の位置で仮止めを行うことができ、吸収性物品の排泄口当接領域の位置を適切な位置に調節しながら位置合わせすることができる。
【0134】
本発明の吸収性物品は、展開状態において、吸収性物品の厚さ方向に関して、仮想折り線と重複する吸収体を有しているのが好ましい。
【0135】
吸収性物品を仮止めする際に、排泄物等を特に吸収させることができる吸収体の位置を適切な位置に合わせることが好ましい。
【0136】
吸収性物品が吸収性物品の厚さ方向に関して、仮想折り線と重複する吸収体を有している場合、仮止めの際に吸収体の位置を起点として位置合わせすることができるので、より適切に位置合わせすることができる。
【0137】
図6は、本発明の吸収性物品の第4の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態の、
図2におけるA-A’線と同様の線に沿った断面図である。
【0138】
図6に示すように、本発明の吸収性物品の第4の実施形態に従う生理用ナプキン100は、基部S
1及び中高部S
2を有しており、展開状態において、中高部S
2は、仮想折り線L
1~L
3と重複する部分を有している。
【0139】
本発明の吸収性物品の第6の実施形態に従う生理用ナプキン100は、仮想折り線L2と重複する部分に粘着部6aの低粘着性領域R1が配置されているため、中高部S2と重複する位置にある粘着部6aの粘着性が低く、使用後に着衣から生理用ナプキン100を剥離させる際に、糊残りが生じにくい。
【0140】
更に、中高部S2が仮想折り線L2と重複する部分を有しているため、生理用ナプキン100を着衣に貼り付ける際に、当該仮想折り線L2を起点として、着用時に中高部S2が身体と適切な位置関係に配置されるように位置合わせしやすい。
【0141】
図7は、本発明の吸収性物品の第5の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、肌当接面側から見た平面図である。
【0142】
図7に示すように、本発明の吸収性物品の第5の実施形態に従う生理用ナプキン100は、展開状態において、長手方向Lに、排泄口当接領域E、並びに排泄口当接領域Eよりも前側の領域F及び後側の領域Bを有している。そして、仮想折り線L
1~L
3は、前側の領域F及び後側の領域Bのそれぞれに配置されている。
【0143】
本発明の吸収性物品の第5の実施形態に従う生理用ナプキンは、排泄口当接領域よりも前側の領域及び後側の領域のそれぞれに仮想折り線が配置されている。
【0144】
そのため、排泄口当接領域よりも前及び後の両方の位置で仮止めを行うことができ、吸収性物品の排泄口当接領域の位置を適切な位置に調節しながら位置合わせすることができる。
【0145】
〈圧搾部〉
本発明の吸収性物品は、圧搾部を有していることができる。圧搾部は、仮想折り線を跨って延在して配置されていてよく、仮想折り線を挟んで対向して低粘着性領域と高粘着性領域とを区画するようにして配置されていてよい。
【0146】
圧搾部は、吸収性物品のうち圧搾部以外の部分と比較して、材料の密度が高くなっているため、剛性が高い。そのため、圧搾部が仮想折り線に跨って延在している場合、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げた際に、折り曲げた部分と重なる圧搾部の剛性によって、折り曲げた形状が維持されやすい。そのため、仮止めの際に仮止めの起点となる仮想折り線部分の凸形状が維持されやすく、仮止めが容易である。
【0147】
低粘着性領域と高粘着性領域とが、仮想折り線を挟んで対向している一対の圧搾部によって区画されている場合、本発明の吸収性物品を着衣に貼り付ける際に、仮想折り線に沿って吸収性物品を折り曲げることによって生じる皺が、剛性の高い圧搾部を介して反対側に伝播しにくいため、皺が高粘着性領域にまで伝播することを抑制することができる。
【0148】
圧搾部は、吸収性物品のうち、他の領域よりも剛性が大きい部分である。ここで、剛性が大きいとは、材料が、応力に対して形状を維持しやすいことを意味している。圧搾部は、吸収性物品の特定の位置に、吸収性物品に対してエンボス処理等を行うことによって、当該部分の材料の密度を高めることによって形成してもよい。
【0149】
図8は、本発明の吸収性物品の第6の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、着衣当接面側から見た平面図である。
【0150】
図8に示すように、本発明の吸収性物品の第6の実施形態に従う生理用ナプキン100は、仮想折り線L
1~L
3をそれぞれ跨って延在している圧搾部7aを有している。
【0151】
これにより、本発明の吸収性物品の第6の実施形態に従う生理用ナプキン100は、仮想折り線L1~L3に沿って生理用ナプキン100を折り曲げた際に、折り曲げた部分と重なる圧搾部7aの剛性によって、折り曲げた形状が維持されやすい。そのため、仮止めの際に仮止めの起点となる仮想折り線L1~L3の凸形状が維持されやすく、仮止めが容易である。
【0152】
図9は、本発明の吸収性物品の第7の実施形態に従う生理用ナプキン100を展開した状態を、着衣当接面側から見た平面図である。
【0153】
図9に示すように、本発明の吸収性物品の第7の実施形態に従う生理用ナプキン100では、低粘着性領域R
1と高粘着性領域R
2とが、仮想折り線L
1~L
3をそれぞれ挟んで対向している一対の圧搾部7bによって区画されている。
【0154】
これにより、本発明の吸収性物品の第7の実施形態に従う生理用ナプキン100では、仮止めの際に、仮想折り線L1~L3に沿って生理用ナプキン100を折り曲げることによって生じる皺が、高粘着性領域R2にまで伝播することを抑制することができる。
【0155】
これにより、本発明の吸収性物品の第7の実施形態に従う生理用ナプキン100では、仮止めの際に、仮想折り線L1~L3に沿って生理用ナプキン100を折り曲げることによって生じる皺が、剛性の高い圧搾部7bの反対側に伝播しにくいため、皺が高粘着性領域R2にまで伝播することを抑制することができる。これにより、本止めの際に高粘着性領域R2の着衣に対する密着性を向上させることができ、着用時の生理用ナプキン100のズレや剥離等を更に抑制することが可能である。
【0156】
本発明が適用される吸収性物品は、上述の各実施形態の生理用ナプキンに限定されず、着衣に貼り付けて使用する吸収性物品全般に適用することが可能であり、例えば、軽失禁パッド、パンティライナー等の様々な吸収性物品に適用することができる。更に、吸収性物品を構成する各シートについても、上述の表面シートや不織布シート等のほかに、適用される吸収性物品の種類等に応じて様々なシートが想定される。そのようなシートとしては、例えば、表面シートと吸収体との間又は吸収体と不織布シートとの間に配置されて、尿等の排泄液を長手方向又は幅方向に拡散させる液透過性の拡散シート等が挙げられる。
【符号の説明】
【0157】
1 表面シート
2 吸収体
3 サイドシート
4 溝
5 不織布シート
6 粘着材
6a 粘着部
6b 含浸部
7a、7b 圧搾部
100 生理用ナプキン
200 200
L1~L3 仮想折り線
R1 低粘着性領域
R2 高粘着性領域
R1’ 低粘着性領域重複部分
R2’ 高粘着性領域重複部分
S1 基部
S2 中高部