(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】吸収性物品の包装体
(51)【国際特許分類】
A61F 13/56 20060101AFI20220617BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
A61F13/56 110
A61F13/15 220
(21)【出願番号】P 2018248471
(22)【出願日】2018-12-28
【審査請求日】2021-07-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【氏名又は名称】藤本 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【氏名又は名称】青木 修二郎
(72)【発明者】
【氏名】藤田 智之
(72)【発明者】
【氏名】谷尾 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅史
【審査官】佐藤 秀之
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-305135(JP,A)
【文献】特開2013-135721(JP,A)
【文献】特開2010-264078(JP,A)
【文献】特開2002-355266(JP,A)
【文献】特開2000-210328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15-13/84
A61L 15/16-15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着衣対向面が疎水性不織布で構成されている吸収性物品、剥離シート、及び包装シートがこの順に積層されている吸収性物品の包装体であって、前記包装体の展開状態において、
前記疎水性不織布は、ずれ止め用粘着材を介して前記剥離シートに固定されており、かつ前記剥離シートは、剥離シート固定用粘着材を介して前記包装シートに固定されており、
前記ずれ止め用粘着材は、前記疎水性不織布に含浸している含浸部位を有しており、
前記含浸部位は、前記包装体の厚さ方向に前記剥離シート固定用粘着材と重なる重複領域、及び前記重複領域に隣接し、かつ前記包装体の厚さ方向に前記剥離シート固定用粘着材と重ならない非重複領域を有しており、かつ
前記含浸部位の前記重複領域は、隣接する前記非重複領域よりも前記ずれ止め用粘着材の前記疎水性不織布に対する厚さが大きい部分を有する、
吸収性物品の包装体。
【請求項2】
前記吸収性物品は、前記展開状態において、前記疎水性不織布の肌対向面側に疎水性フィルムを有しており、
前記ずれ止め用粘着材は、前記重複領域を介して前記疎水性フィルムに固定されている、請求項1に記載の包装体。
【請求項3】
前記吸収性物品は、前記展開状態において厚さ方向と直交する方向に前方方向及び後方方向を有しており、
前記含浸部位は、前記前方方向の端部において前記重複領域を有している、
請求項1又は2に記載の包装体。
【請求項4】
前記吸収性物品は、基部及び中高部を有しており、前記展開状態において、
前記ずれ止め用粘着材は、前記包装体の厚さ方向に前記中高部と重複する位置及び前記基部と重複する位置に、それぞれ前記重複領域を有しており、かつ
前記中高部における前記重複領域の厚さは、前記基部における前記重複領域の厚さよりも大きい、
請求項1~3のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項5】
前記包装体は、前記吸収性物品に仮想折り線を有しており、前記展開状態において、
前記仮想折り線は、前記包装体の厚さ方向に前記重複領域と重複していない、
請求項1~4のいずれか一項に記載の包装体。
【請求項6】
前記包装体は、前記包装体の着衣当接面の少なくとも2箇所を接合することによって前記包装体を個包装体にするためのリードテープを有しており、
個包装状態において、前記重複領域は、前記包装体の厚さ方向に前記リードテープと重複している、
請求項1~5のいずれか一項に記載の包装体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品の包装体に関する。
【背景技術】
【0002】
生理用ナプキン、パンティライナー、及び失禁パッド等の吸収性物品は、着用者の体液の漏れを防止することのほかに、着用者の股間部に接触しながら長時間着用されるものであるため、身体に良好に且つ快適にフィットすることが求められている。
【0003】
吸収性物品は、着衣の肌対向面側に貼り付けて使用される場合がある。吸収性物品を着衣に接着させる手段の一つとして、吸収性物品の着衣対向面側に粘着材を設けることが挙げられる。
【0004】
特許文献1は、液透過性を有する表面シートと液不透過性を有する裏面シートと、の間に吸収体が介在されるとともに、外面側にホットメルト接着剤によるずれ止め用粘着層が設けられた挿入式使い捨て吸収性物品において、液不透過性を有する裏面シートの外側面に不織布を備えるとともに、不織布の目付量が14~18g/m2であることを特徴とする、挿入式使い捨て吸収性物品を開示している。
【0005】
特許文献2は、液保持性の吸収層及び液不透過性層を備え、非肌当接面にずれ止め粘着剤を設けた吸収性物品であって、非肌当接面は、繊維集合体により構成されており、ホットメルト接着剤から構成されるずれ止め粘着剤は、非肌当接面側の第1層と該第1層上に積層された第2層との積層構造を有し、第1層を構成するホットメルト接着剤は第2層を構成するホットメルト接着剤よりも軟化点温度近傍において流動性が高い吸収性物品を開示している。同文献は、この様な構成を有する吸収性物品は、非肌当接面が繊維集合体で構成されている場合においても、粘着剤の粘着力が低下せず、また、逆に、吸収性物品が固定される衣服や別の吸収性物品側に粘着剤が移行しない所謂糊残りが発生しない、良好なずれ止め特性を得ることができると記載している。
【0006】
特許文献3は、肌に接する当接面と、非当接面と、これら両面間に位置する吸液性コアとを有し、非当接面に着衣に対する粘着性止着域が形成されている排泄液処理用吸収性物品であって、コアの下面側には、少なくとも、高密度の熱下層整合性樹脂と、樹脂層の下面に接合し、樹脂層よりも低密度の第1の熱可塑性合成繊維層とが位置し、第1の樹脂層の下面に塗布された粘着剤によって止着域が形成されていることを特徴とする吸収性物品を開示している。同文献は、この様な構成を有する排泄液処理用吸収性物品では、着衣への止着手段となる粘着剤は、その粘着力が弱くても、合成繊維層の繊維と絡み合って物品の裏面に確実に保持されるとともに、樹脂層によって裏面シートへ内部の移行が阻止されると記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-355266号公報
【文献】特開2005-305135号公報
【文献】特開2000-210328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
吸収性物品は、その着衣対向面側に配置されているずれ止め用粘着材によって、包装シートに直接又は剥離シートを介して貼り付けられた構成、すなわち包装体として提供することができる。包装体は、実際に消費者に提供される際には、吸収性物品が内側を向く様にして折りたたまれた個包装体の形態を有している。この様な吸収性物品は、個包装体を開封後に包装シートまたは剥離シートから剥離させて、その着衣対向面側に配置されているずれ止め用粘着材によって着衣の所望の位置に貼り付けて使用することができる。そして、この様な吸収性物品は、使用後に着衣から剥離してから廃棄することができる。
【0009】
この様な態様で提供される吸収性物品において、ずれ止め用粘着材の配置位置、形状、吸収性物品との接着強度等によっては、吸収性物品を包装シート又は剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材の一部分が吸収性物品から剥がれてしまう場合があるという問題を、本発明者らは見出した。
【0010】
このような問題を解決するための手段として、本発明者らは、吸収性物品の着衣対向面側を疎水性不織布で構成して、ずれ止め用粘着材の一部を疎水性不織布に含浸させることにより、ずれ止め用粘着材を吸収性物品の着衣対向面側から剥がれにくくすることを検討した。
【0011】
しかしながら、この様な構成であっても、ずれ止め用粘着材の位置、形状、及び不織布への含浸の程度等によっては、吸収性物品を包装シート又は剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材の一部分が疎水性不織布から剥がれる場合があること、ずれ止め用粘着材の一部分が疎水性不織布から剥がれない場合であっても、ずれ止め用粘着材のうち疎水性不織布に含侵されていた部分の一部が剥がれかかる場合があることを、本発明者らは見出した。
【0012】
吸収性物品を包装シート又は剥離シートから剥離させる際にずれ止め用粘着材の一部分が疎水性不織布から剥がれた場合には、吸収性物品を着衣に貼り付ける際の粘着力が低下してしまう。また、吸収性物品を使用後に着衣から剥がす際に、ずれ止め用粘着材の一部分が疎水性不織布から剥がれた部分を起点として、ずれ止め用粘着材が更に疎水性不織布から剥がれ、着衣に残る、すなわち糊残りが生じる場合がある。また、ずれ止め用粘着材のうち疎水性不織布に含侵されていた部分の一部が剥がれかかった場合にも、吸収性物品を使用後に着衣から剥がす際に、ずれ止め用粘着材が剥がれかかった部分の周辺からずれ止め用粘着材が剥がれてしまい、糊残りが生じる場合がある。
【0013】
本発明は、吸収性物品を基材又は剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材が吸収性物品から剥がれること、及び剥がれかかることを抑制することができ、かつ吸収性物品の使用後に吸収性物品を着衣から剥離する際の糊残りを抑制することができる、包装体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、以下の手段により上記課題を達成することができることを見出した:
【0015】
《態様1》
着衣対向面が疎水性不織布で構成されている吸収性物品、剥離シート、及び包装シートがこの順に積層されている吸収性物品の包装体であって、前記包装体の展開状態において、
前記疎水性不織布は、ずれ止め用粘着材を介して前記剥離シートに固定されており、かつ前記剥離シートは、剥離シート固定用粘着材を介して前記包装シートに固定されており、
前記ずれ止め用粘着材は、前記疎水性不織布に含浸している含浸部位を有しており、
前記含浸部位は、前記包装体の厚さ方向に前記剥離シート固定用粘着材と重なる重複領域、及び前記重複領域に隣接し、かつ前記包装体の厚さ方向に前記剥離シート固定用粘着材と重ならない非重複領域を有しており、かつ
前記含浸部位の前記重複領域は、隣接する前記非重複領域よりも前記ずれ止め用粘着材の前記疎水性不織布に対する厚さが大きい部分を有する、
吸収性物品の包装体。
【0016】
吸収性物品、剥離シート、及び包装シートがこの順に積層されている吸収性物品の包装体から吸収性物品を剥離する際に、吸収性物品の疎水性不織布と剥離シートとを固定するずれ止め用粘着材の含浸部位には、疎水性不織布側から剥離シート側に向かう力が働く。この力は、吸収性物品の包装体の積層方向に剥離シート固定用粘着材と重なる重複領域において、特に大きい。そのため、この様な領域では、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすいと考えられる。
【0017】
ずれ止め用粘着材が疎水性不織布から剥がれにくくする方法としては、例えば、ずれ止め用粘着材の含浸部位の厚さを大きくすることが考えられる。しかしながら、厚さが大きいと、疎水性不織布のずれ止め用粘着材が配置されている部分が硬くなり、着用者に違和感を与える場合がある。
【0018】
本発明の包装体は、上記態様1のような構成を有しているため、重複領域におけるずれ止め用粘着材が有するアンカー効果が、その周辺の領域である非重複領域と比較して高い。これにより、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることを抑制することができる。また、重複領域おけるずれ止め用粘着材の含浸率が非重複領域と比較して大きいため、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材の一部が剥がれかかったとしても、その程度を小さくすることができる。これにより、吸収性物品を使用後に着衣から剥離させる際に、ずれ止め用粘着材が吸収性物品から剥がれにくく、着衣への糊残りを抑制することができる。
【0019】
他方、ずれ止め用粘着材の含浸部位の厚さが大きい部分を重複領域に限定し、非重複領域では厚さが小さいため、疎水性不織布のずれ止め用粘着材のうち硬くなる部分を最小限にすることができる。これにより、着用者に与える違和感を最小限度にとどめることができる。
【0020】
《態様2》
前記吸収性物品は、前記展開状態において、前記疎水性不織布の肌対向面側に疎水性フィルムを有しており、
前記ずれ止め用粘着材は、前記重複領域を介して前記疎水性フィルムに固定されている、態様1に記載の包装体。
【0021】
上記態様2に記載の包装体では、ずれ止め用粘着材が疎水性不織布に含侵していることによるアンカー効果に加えて、ずれ止め用粘着材が疎水性フィルムに固定されていることによるアンカー効果を有する。そのため、含浸部位の重複領域におけるずれ止め用粘着材のアンカー効果をより向上させることができ、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることをより抑制することができる。
【0022】
《態様3》
前記吸収性物品は、前記展開状態において厚さ方向と直交する方向に前方方向及び後方方向を有しており、
前記含浸部位は、前記前方方向の端部において前記重複領域を有している、
態様1又は2に記載の包装体。
【0023】
吸収性物品の剥離シートからの剥離は、通常は吸収性物品の長手方向における前側の端部から行われる。そのため、吸収性物品の疎水性不織布と剥離シートとを固定するずれ止め用粘着材についても、吸収性物品の長手方向における前側の端部から剥離シートと剥離され始める。ずれ止め用粘着材が剥離シートと剥離され始める位置は、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすく、脱離しやすいと考えられる。
【0024】
上記態様3に記載の包装体では、吸収性物品の長手方向における前側の端部という、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすく、脱離しやすい位置に、アンカー効果の高い重複領域が配置される。そのため、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることをより抑制することができる。
【0025】
《態様4》
前記吸収性物品は、基部及び中高部を有しており、前記展開状態において、
前記ずれ止め用粘着材は、前記包装体の厚さ方向に前記中高部と重複する位置及び前記基部と重複する位置に、それぞれ前記重複領域を有しており、かつ
前記中高部における前記重複領域の厚さは、前記基部における前記重複領域の厚さよりも大きい、
態様1~3のいずれか1つに記載の包装体。
【0026】
吸収性物品の中高部は、吸収性物品を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分である。そのため、吸収性物品の包装体の積層方向に重複する位置にあるずれ止め用粘着材と着衣との間の接着がより強固になる。そのため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離する際に、吸収性物品積層体の積層方向に関して吸収体の中高部と重複する位置にあるずれ止め用粘着材が着衣に残りやすく、すなわち糊残りが生じやすい。
【0027】
上記態様4に記載の包装体では、吸収性物品を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分においてアンカー効果が高いため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離する際に、糊残りを抑制することができる。
【0028】
《態様5》
前記包装体は、前記吸収性物品に仮想折り線を有しており、前記展開状態において、
前記仮想折り線は、前記包装体の厚さ方向に前記重複領域と重複していない、
態様1~4のいずれか1つに記載の包装体。
【0029】
吸収性物品を仮想折り線に沿って折った部分はしわや折り癖がつくため、この部分にずれ止め用粘着材が配置されていると、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材に掛かる力が不均一になる場合がある。ずれ止め用粘着材に掛かる力が不均一となると、当該部分を起点として吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすくなる場合がある。
【0030】
上記態様5に記載の包装体では、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材に掛かる力が不均一になることを抑制することができ、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び脱離することをより抑制することができる。
【0031】
《態様6》
前記包装体は、前記包装体の着衣当接面の少なくとも2箇所を接合することによって前記包装体を個包装体にするためのリードテープを有しており、
個包装状態において、前記重複領域は、前記包装体の厚さ方向に前記リードテープと重複している、
態様1~5のいずれか1つに記載の包装体。
【0032】
リードテープを剥離させる部分と重複領域とが個包装体の厚さ方向に重複する位置に配置されている構成では、リードテープを包装体から剥離させる際に剥離シートも引っ張られる場合がある。この場合、剥離シートに固定されているずれ止め用粘着材も併せて引っ張られることにより、ずれ止め用粘着材が疎水性不織布から剥がれる、又は剥がれかかる場合がある。
【0033】
上記態様6に記載の吸収性物品の包装体では、重複領域おけるずれ止め用粘着材の含浸率自体が大きい。これにより、リードテープを剥離させる部分と重複領域とが個包装体の厚さ方向に重複する位置に配置されている構成においても、リードテープを包装体から剥離させる際にずれ止め用粘着材が疎水性不織布から剥がれにくい。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、吸収性物品を基材又は剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材が吸収性物品から剥がれること、及び剥がれかかることを抑制することができ、かつ吸収性物品の使用後に吸収性物品を着衣から剥離する際の糊残りを抑制することができる、包装体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に従う包装体を、展開状態において表面側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第1の実施形態に従う包装体を、展開状態において裏面側から見た平面図である。
【
図3B】
図3Bは、本発明の第1の実施形態に従う包装体に関して、生理用ナプキンを剥離シートから剥離している状態の、
図3Aにおける領域X
1の拡大図である。
【
図4A】
図4Aは、重複領域と非重複領域の含浸率が等しい包装体の、
図2におけるA
1-A
1’線と同様の線に沿った断面図である。
【
図4B】
図4Bは、重複領域と非重複領域の含浸率が等しい包装体に関して、生理用ナプキンを包装シートから剥離している状態の、
図4Aにおける領域X
2の拡大図である。
【
図5】
図5は、
図2におけるA
2-A
2’線に沿った断面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2の実施形態に従う包装体の、
図2におけるA
1-A
1’線と同様の線に沿った断面図である。
【
図7A】
図7Aは、本発明の第1の実施形態に従う包装体を、展開状態から個包装状態に折りたたむ過程を表面側から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態について詳述する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるのではなく、発明の本旨の範囲内で種々変形して実施できる。
【0037】
本願明細書において、包装体の「個包装状態」とは、包装体を構成するシートが折りたたまれて、吸収性物品が外部に露出しない様に包装されている状態をいう。また、包装体の「展開状態」とは、包装体を個包装状態から開封して平面状に展開させた状態をいう。
【0038】
本願明細書において、包装体の「長手方向」は、包装体の「展開状態」において、縦長の包装体の長さの長い方向を示しており、「幅方向」は、包装体の「展開状態」において、包装体の厚さ方向に垂直であり、かつ「長手方向」に直交する方向をいう。
【0039】
本願明細書において、包装体の「表面側」とは、包装体の面のうち吸収性物品が配置されている側の面をいう。また、包装体の「裏面側」とは、包装体の面のうち包装シートが配置されている側の面をいう。
【0040】
本願明細書において、吸収性物品の「着衣対向面」とは、吸収性物品の面のうち、着用時に着衣と対向する側の面をいう。また、本願明細書において、「肌対向面」とは、吸収性物品の面のうち、着用時に、使用者の肌と対向する側の面をいう。
【0041】
本願明細書において、吸収性物品の「長手方向」は、吸収性物品の「展開状態」において、縦長の吸収性物品の長さの長い方向を示しており、「幅方向」は、吸収性物品の「展開状態」において、吸収性物品の厚さ方向に垂直であり、かつ「長手方向」に直交する方向をいう。なお、本願明細書において、吸収性物品の「展開状態」とは、包装体が「展開状態」にあるときの、吸収性物品の状態である。
【0042】
本願明細書において、吸収性物品の「前方方向」とは、吸収性物品の「長手方向」に関して、吸収性物品を着用者が着用した際に、着用者の身体の前側となる方向である。また本願明細書において、吸収性物品の「後方方向」とは、吸収性物品の「長手方向」に関して、吸収性物品を着用者が着用した際に、着用者の身体の後側となる方向である。通常は、包装シートから吸収性物品を剥離させる際には、「前方方向」の端部から剥離させる。
【0043】
《吸収性物品の包装体》
本発明の包装体は、着衣対向面が疎水性不織布で構成されている吸収性物品、剥離シート、及び包装シートがこの順に積層されている吸収性物品の包装体である。
【0044】
包装体の展開状態において、疎水性不織布は、ずれ止め用粘着材を介して剥離シートに固定されており、かつ剥離シートは、剥離シート固定用粘着材を介して包装シートに固定されており、ずれ止め用粘着材は、疎水性不織布に含浸している含浸部位を有しており、含浸部位は、包装体の厚さ方向に剥離シート固定用粘着材と重なる重複領域、及び重複領域に隣接し、かつ包装体の厚さ方向に剥離シート固定用粘着材と重ならない非重複領域を有しており、かつ含浸部位の重複領域は、隣接する非重複領域よりもずれ止め用粘着材の疎水性不織布に対する厚さが大きい部分を有する。
【0045】
本発明の第1の実施形態に従う包装体として、吸収性物品が生理用ナプキンである態様を挙げることができる。
図1~3Aは、本発明の第1の実施形態に従う包装体を図示している。
図1は、本発明の第1の実施形態に従う包装体を、展開状態において表面側から見た平面図である。また、
図2は、本発明の第1の実施形態に従う包装体を、展開状態において裏面側から見た平面図である。更に、
図3Aは、
図2におけるA
1-A
1’線に沿った断面図である。
【0046】
図1及び
図2に示す様に、本発明の第1の実施形態に従う包装体100は、生理用ナプキン10、剥離シート20、及び包装シート30を有している。生理用ナプキン10は、裏面側にずれ止め用粘着材40及びウイング部固定用粘着材50が配置されている。生理用ナプキン10は、ずれ止め用粘着材40を介して剥離シート20に固定されており、剥離シート20は、剥離シート固定用粘着材60を介して包装シート30に接着されている。また、包装シート30は、生理用ナプキン10の前方方向F側の端部にリードテープ35を有している。生理用ナプキン10が有する吸収体12は、溝12a及び12bを有している。この溝12a及び12bにより、生理用ナプキン10の着用時において、生理用ナプキン10が着用者の身体の形状に沿って折れ曲がりやすい。また、
図1及び
図2において、包装体を個包装状態にするために折り返すための折り線を、仮想折り線L
1~L
3として示している。
【0047】
また、
図3Aに示す様に、生理用ナプキン10は、厚さ方向Tに、表面シート11、吸収体12、及び裏面シートとしての疎水性不織布13を表面側から順に有している。また、図示されていないが、生理用ナプキン10の幅方向の両端にわたって、表面シート11の上にサイドシートが配置されている。
図3Aにおいて、線L
1’~L
3’は、仮想折り線L
1~L
3に直交し、かつ生理用ナプキン10の厚さ方向Tに平行な線である。
【0048】
図3Aに示す様に、ずれ止め用粘着材40は、疎水性不織布13の着衣対向面に含浸している含浸部位45を有している。含浸部位45は、包装体100の厚さ方向Tに剥離シート固定用粘着材60と重なる重複領域45a、及び重複領域45aに隣接し、かつ包装体100の厚さ方向Tに剥離シート固定用粘着材60と重ならない非重複領域45bを有している。更に、含浸部位45の重複領域45aは、隣接する非重複領域45bよりもずれ止め用粘着材40の疎水性不織布13に対する厚さが大きい部分を有している。
【0049】
なお、
図7Aは、本発明の第1の実施形態に従う包装体100を、展開状態から個包装状態に折りたたむ過程を表面側から見た平面図である。包装体100は、仮想折り線L
1~L
3に沿って、
図7A(a)~(d)に示す順に折りたたむことによって、個包装体とすることができる。ここで、
図7A(d)は、個包装状態に折りたたまれた包装体100を示している。
【0050】
原理によって限定されるものではないが、本発明の包装体により、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材が吸収性物品から剥がれること、及び/又は剥がれかかることを抑制することができ、かつ吸収性物品の使用後に吸収性物品を着衣から剥離する際の糊残りを抑制することができる原理は、以下のとおりと考えられる。
【0051】
着衣対向面が疎水性不織布で構成されている吸収性物品、剥離シート、及び包装シートがこの順に積層されている吸収性物品の包装体を使用するためには、まず、吸収性物品を剥離シートから剥離させる必要がある。
【0052】
しかしながら、吸収性物品を剥離シートから剥がす際に、疎水性不織布内部に含浸していたずれ止め用粘着材の一部分が、剥離シート側に向かう力の作用によって、場合によっては繊維ごと、疎水性不織布内から脱離する場合がある。ずれ止め用粘着材が疎水性不織布から完全に剥離しない場合でも、当該部分におけるずれ止め用粘着材と疎水性不織布との接着が弱くなるため、使用後に着衣から吸収性物品を剥がす際に、当該部分を起点としてずれ止め用粘着材が着衣側に貼りついたまま残る、すなわち糊残りが生じる場合がある。この傾向は、特に包装シートと剥離シートとを固定している剥離シート固定用粘着材が配置されている部分に対応する部分おいて起こりやすい。これは、この様な部分は、剥離シート固定用粘着材が剥離シートを支持していることにより、剥離シートの他の部分よりも剛性が高く、吸収性物品を剥離シートから剥がす際に、ずれ止め用粘着材に対して剥離シート側に向かう力が作用しやすいためと考えられる。
【0053】
ずれ止め用粘着材を疎水性不織布から脱離しにくくする方法としては、例えばずれ止め用粘着材の含浸部位の厚さを大きくすることが考えられる。しかしながら、厚さが大きいと、疎水性不織布のずれ止め用粘着材が配置されている部分が硬くなり、着用者に違和感を与える場合がある。
【0054】
これに対して、本発明の包装体では、上記のとおり、含浸部位の重複領域が、隣接する非重複領域よりもずれ止め用粘着材の疎水性不織布に対する厚さが大きい部分を有する。そのため、本発明の包装体では、重複領域におけるずれ止め用粘着材のアンカー効果が、その隣接する非含浸領域と比較して高い。これにより、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることを抑制することができる。また、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材の一部が剥がれかかったとしても、その程度が小さいため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離させる際に、ずれ止め用粘着材が吸収性物品から剥がれにくく、着衣への糊残りを抑制することができる。他方、ずれ止め用粘着材の含浸部位の厚さが大きい部分を重複領域に限定し、他の部分では厚さが小さいため、疎水性不織布のずれ止め用粘着材のうち固くなる部分を最小限にすることができる。これにより、着用者に与える違和感を最小限度にとどめることができる。
【0055】
本発明の第1の実施形態に従う包装体を例に、より具体的に説明する。
【0056】
図3Bは、本発明の第1の実施形態に従う包装体100に関して、生理用ナプキン10を剥離シート20から剥離している状態の、
図3Aにおける領域X
1の拡大図である。
【0057】
本発明の第1の実施形態に従う包装体100において、生理用ナプキン10を剥離シート20から剥離させる際に、ずれ止め用粘着材40は、剥離シート20側に向かう力を受ける。
【0058】
この力は、剥離シート20の剛性が高い部分、すなわち、剥離シート20が剥離シート固定用粘着材60によって包装シート30に固定されている部分において、特に大きいと考えられる。これは、当該部分では、剥離シート20が剥離シート固定用粘着材60によって支持されており、剛性が高くなると考えられるためである。
【0059】
本発明の第1の実施形態に従う包装体100では、ずれ止め用粘着材40の含浸部位45のうち、剥離シート20が剥離シート固定用粘着材60によって包装シート30に固定されている部分と重複する重複領域45aは、その隣接する非重複領域45bと比較して、厚さが大きくなっている。
【0060】
そのため、重複領域45aは、非重複領域45bと比較してアンカー効果が高い。これにより、生理用ナプキン10を剥離シート20から剥がす際に、ずれ止め用粘着材40が剥離シート20側に向かう力を受けたとしても、ずれ止め用粘着材40の含浸部位45が疎水性不織布13から脱離しにくい。また、含浸部位45の一部分が脱離しても、当該部分の厚さが大きいため、疎水性不織布13内にとどまったずれ止め用粘着材40がアンカー効果を十分に発揮することができ、生理用ナプキン10を使用後に着衣から剥離させる際に、ずれ止め用粘着材40が着衣に残りにくい。
【0061】
図4Aは、重複領域45aと非重複領域45bの含浸率が等しい包装体100の、
図2におけるA
1-A
1’線と同様の線に沿った断面図である。本発明の包装体と異なり、
図4Aに示す包装体100では、重複領域45aと非重複領域45bとにおけるずれ止め用粘着材40の疎水性不織布13に対する厚さは等しい。なお、
図4Aは、本発明の効果を説明するために、本発明の構成を有しない包装体の一例を示す図であり、従来の包装体100を図示するものではない。
【0062】
図4Bは、重複領域45aと非重複領域45bの含浸率が等しい包装体100に関して、生理用ナプキン10を包装シート30から剥離している状態の、
図4Aにおける領域X
2の拡大図である。
図4Bに示す様に、このような生理用ナプキン10は、本発明とは異なり、重複領域45aと非重複領域45bとにおけるずれ止め用粘着材40の疎水性不織布13に対する厚さが等しい。そのため、生理用ナプキン10を剥離シート20から剥離させる際に、重複領域45aにおけるアンカー効果が十分でなく、ずれ止め用粘着材40の含浸部位45が疎水性不織布13から脱離しやすい。更に、生理用ナプキン10を剥離シート20から剥離させた際にずれ止め用粘着材40の一部が疎水性不織布13内に残ったとしても、生理用ナプキン10を剥離シート20から剥離させる際にずれ止め用粘着材40が剥離シート20側に向かう力をうけて剥離されやすくなるため、使用後に着衣から剥がす際に、ずれ止め用粘着材40が着衣側に残りやすくなる。
【0063】
包装体は、吸収性物品に仮想折り線を有しており、かつ展開状態において、仮想折り線は、包装体の厚さ方向に重複領域と重複していないことが好ましい。ここで、仮想折り線が包装体の厚さ方向に重複領域と重複していないとは、吸収性物品を表面側から見たときに、吸収性物品の仮想折り線が形成する線に直交し、かつ吸収性物品の厚さ方向に平行な線が、重複領域と重複していないことをいう。
【0064】
吸収性物品の仮想折り線の部分は、しわや折り癖がつきやすい。そのため、この部分にずれ止め用粘着材が配置されていると、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、ずれ止め用粘着材の重複領域に掛かる力が不均一になる場合がある。重複領域に掛かる力が不均一となると、当該部分を起点として吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすくなる場合がある。
【0065】
この様な仮想折り線が包装体の厚さ方向に重複領域と重複していない場合には、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、重複領域に掛かる力が不均一になることを抑制することができる。これにより、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び脱離することをより抑制することができる。
【0066】
なお、仮想折り線は、包装体を折り曲げるための仮想折り線であり、例えば、包装体を折りたたんで個包装にする際の、折り畳みの起点となる仮想折り線であってよい。吸収性物品の仮想折り線が配置されている部分には、実際の折れ線が配置されていてもよい。
【0067】
《吸収性物品》
本発明の包装体が有している吸収性物品は、着衣対向面が疎水性不織布で構成されている。疎水性不織布は、ずれ止め用粘着材を介して剥離シートに固定されている。
【0068】
吸収性物品は、着衣に貼り付けて使用する吸収性物品であれば特に限定されず、具体的には、生理用ナプキン、パンティライナー、又は失禁パッド等であってよい。
【0069】
吸収性物品が生理用ナプキンである場合、具体的な構成として、例えば、肌対向面側から着衣対向面側に、サイドシート、表面シート、吸収体、及び裏面シートを有していることができるが、この様な構成に限定されない。なお、この様な構成において、裏面シートは、疎水性不織布である。
【0070】
本発明の吸収性物品が適用される着衣は、例えば下着であってよいが、特に限定されない。
【0071】
吸収性物品は、基部及び中高部を有していてよい。ここで、中高部は、吸収性物品の基部よりも厚い部分を意味している。中高部は、吸収性物品の基部よりも厚みを有する任意の構成であってよい。
【0072】
例えば、着用者の身体の形状に吸収性物品がフィットする様に基部より大きい厚みを有する構成であってよい。吸収性物品と着用者の身体との間に空隙が存在すると、当該空隙の部分から排泄液が漏れやすくなる場合がある。そのため、吸収性物品の当該空隙の部分に対応する部分に中高部を設けることにより、吸収性物品と着用者の身体との間に空隙が発生することを抑制することができる。
【0073】
中高部は、例えば当該部分の吸収体の厚みを増加させた構造を有していてよい。中高部は、基部における吸収体よりもパルプやポリマー量を多くした中高部やポリマーシートを部分的に配置することによって形成してもよく、当該部分に配置される吸収体を複数層、例えば2層にした構成を有していてよい。
【0074】
〈疎水性不織布〉
疎水性不織布は、疎水性を有するものであれば特に制限されず、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等の樹脂フィルム;樹脂フィルムに不織布を貼り合わせた積層体;疎水性不織布や積層不織布(例えば、SMS不織布)等の不織布等を好適に用いることができる。疎水性不織布は、撥水性不織布であってよい。
【0075】
疎水性不織布としては、ずれ止め用粘着材を含浸させることができる任意の疎水性の不織布を使用することができる。このような不織布としては、例えばスパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、ポイントボンド不織布、メルトブローン不織布、及びこれらの組み合わせ(例えば、SMS不織布等)等を挙げることができる。
【0076】
また、かかる不織布に用いられる繊維の種類も特に制限されず、例えば、セルロース系繊維;親水化処理を施したオレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂等の熱可塑性樹脂繊維等の親水性繊維が挙げられ、これらの繊維は単独で使用しても、二種類以上の繊維を併用してもよい。
【0077】
さらに、疎水性不織布は、疎水性又は撥水性の不織布である。疎水性不織布は、製造時にずれ止め用粘着材の材料を含侵させる等の観点から、10~80g/m2の坪量を有していることが好ましい。坪量が10g/cm2以上である場合には、不織布の厚みが大きく、含浸部位の厚さを大きくすることができる。坪量が80g/cm2以下である場合には、粘着材の塗布量を少なくしつつ、含浸部位の厚さを大きくすることができる。坪量は、10g/m2以上、20g/m2以上、又は30g/m2以上、であってよく、80g/m2以下、60g/m2以下、又は50g/m2以下であってよい。
【0078】
本発明の吸収性物品は、展開状態において、疎水性不織布の肌対向面側に疎水性フィルムを有していてよい。これにより、吸収性物品の着衣対向面側の疎水性をより高めることができる。
【0079】
《ずれ止め用粘着材》
ずれ止め用粘着材は、吸収性物品を使用する際に、吸収性物品を着衣に固定するための部材である。ずれ止め用粘着材は、包装体の状態において吸収性物品を剥離シートに固定している。ずれ止め用粘着材は、疎水性不織布に含浸している含浸部位を有している。
【0080】
ずれ止め用粘着材の材料は、吸収性物品を使用する際に、吸収性物品を着衣に固定することができ、かつ包装体の状態において吸収性物品を剥離シートに固定することができる、任意の粘着性の材料であってよい。
【0081】
より具体的には、ずれ止め用粘着材の材料は、ホットメルト接着剤が挙げられる。上記ホットメルト接着剤の例としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-α-オレフィン共重合体等のオレフィン系;エチレン-酢酸ビニル共重合体系;ポリアミド系;スチレン-ブチレン-スチレン共重合体及びスチレン-イソプレン-スチレン共重合体等の熱可塑性エラストマー系;湿気硬化型ウレタンプレポリマー等の反応型ホットメルト等が挙げられる。
【0082】
ずれ止め用粘着材は、材料となる粘着性の物質を疎水性不織布上に任意の方法によって適用することによって形成することができ、例えば材料となる粘着性の物質を疎水性不織布に塗布することによって形成することができる。また、ずれ止め用粘着材は、材料となる粘着性の物質を剥離シートに適用し、その上に疎水性不織布が接する様に吸収性物品を積層することによって形成してもよい。
【0083】
ずれ止め用粘着材の形状は、吸収性物品を着衣及び剥離シートに貼り付けることができる任意の形状であってよい。ずれ止め用粘着材の形状は、吸収性物品の長手方向又は幅方向に渡って延在する複数条の棒形状であってよいが、これ等に限定されない。
【0084】
本発明において、包装体は、含浸部位の包装体の厚さ方向と直交する所定の方向における長さが、肌対向面側に向かうにつれて小さくなることが好ましい。含浸部位がこのような構造を有すると、吸収性物品を仮想折り線に沿って折り曲げる際に、含浸部位の肌対向面側の剛性が着衣対向面側の剛性よりも低いため、より折り曲げやすい。
【0085】
図5は、本発明の第1の実施形態に従う包装体100の、
図2におけるA
2-A
2
’線に沿った断面図である。
図5に示す様に、本発明の第1の実施形態に従う包装体100は、含浸部位の包装体の厚さ方向と直交する所定の方向における断面形状が、肌対向面側に凸になる様に略三角形状を有しており、含浸部位の包装体の厚さ方向と直交する所定の方向における長さが、肌対向面側に向かうにつれて小さくなっている。これにより、包装体100を仮想折り線に沿って折り曲げる際に、含浸部位45の肌対向面側の剛性が着衣対向面側の剛性よりも低いため、より折り曲げやすい。
【0086】
また、本発明において、包装体は、包装体の厚さ方向と直交する所定の方向において、含浸部位における長さの最大値をL1とし、かつずれ止め用粘着材の疎水性不織布の剥離シート対向面における長さをL2としたときに、L1>L2を満たしていてもよい。
【0087】
ずれ止め用粘着材の疎水性不織布の剥離シート対向面は、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際にずれ止め用粘着材が疎水性不織布から脱離する起点となりやすい部分である。そのため、包装体の厚さ方向と直交する所定の方向において、アンカー効果を有する含浸部位における長さが、ずれ止め用粘着材の疎水性不織布の剥離シート対向面における長さよりも長い場合には、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、吸収性物品の液不透過性シートからずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることをより抑制することができる。
【0088】
本発明において、包装体は、包装体の厚さ方向と直交する所定の方向において、ずれ止め用粘着材の疎水性不織布の剥離シート対向面における長さをL2とし、かつ剥離シートとの接触面における長さをL3としたときに、L2>L3を満たしているのが好ましい。
【0089】
ずれ止め用粘着材の剥離シートとの接触面は、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際にずれ止め用粘着材に剥離シート方向に向かう力がかかる起点となる部分である。そのため、包装体の厚さ方向と直交する所定の方向において、ずれ止め用粘着材の疎水性不織布の剥離シート対向面における長さがずれ止め用粘着材の剥離シートとの接触面よりも長い場合には、吸収性物品を剥離シートから剥離させる際に、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることをより抑制することができる。
【0090】
本発明の吸収性物品が、展開状態において疎水性不織布の肌対向面側に疎水性フィルムを有している場合には、ずれ止め用粘着材は、重複領域を介して疎水性フィルムに固定されているのが好ましい。
【0091】
ずれ止め用粘着材が重複領域を介して疎水性フィルムに固定されている場合には、ずれ止め用粘着材が疎水性不織布に含侵していることによるアンカー効果に加えて、ずれ止め用粘着材が疎水性フィルムに固定されていることによるアンカー効果を有する。そのため、含浸部位の重複領域におけるずれ止め用粘着材のアンカー効果をより向上させることができ、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることをより抑制することができる。
【0092】
また、不織布内への含浸によるアンカー性を向上させるという観点から、不織布シートがSMS不織布から構成されている場合には、含浸部は、SMS不織布の三つの層に連続して含浸していることが好ましい。また、同様の観点から、不織布シートがエアスルー不織布から構成されている場合には、含浸部は高密度層に含浸していることが好ましい。
【0093】
〈含浸部位〉
含浸部位は、ずれ止め用粘着材のうち疎水性不織布に含浸している部分である。含浸部位は、包装体の厚さ方向に剥離シート固定用粘着材と重なる重複領域、及び重複領域に隣接し、かつ包装体の厚さ方向に剥離シート固定用粘着材と重ならない非重複領域を有している。
【0094】
(重複領域)
重複領域は、含浸部位のうち、包装体の厚さ方向に前記剥離シート固定用粘着材と重なる領域である。重複領域は、隣接する非重複領域よりもずれ止め用粘着材の疎水性不織布に対する厚さが大きい部分を有する。
【0095】
含浸部位は、前方方向の端部において重複領域を有しているのが好ましい。吸収性物品の剥離シートからの剥離は、通常は吸収性物品の包装体の長手方向における前側の端部から行われる。そのため、吸収性物品の疎水性不織布と剥離シートとを固定するずれ止め用粘着材についても、吸収性物品の包装体の長手方向における前側の端部から剥離シートと剥離され始める。ずれ止め用粘着材が剥離シートと剥離され始める位置は、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすく、脱離しやすいと考えられる。
【0096】
ずれ止め用粘着材の前方方向の端部は、吸収性物品の包装体の長手方向における前側の端部であるから、剥離シートから吸収性物品を剥離させる際に、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれやすく、脱離しやすい位置である。この様な部分にアンカー効果の高い重複領域が配置することにより、吸収性物品の疎水性不織布からずれ止め用粘着材が剥がれること、及び剥がれかかることをより抑制することができる。
【0097】
ずれ止め用粘着材は、包装体の厚さ方向に中高部と重複する位置及び基部と重複する位置に、それぞれ重複領域を有しており、かつ中高部における重複領域の厚さは、基部における重複領域の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0098】
吸収性物品の中高部は、吸収性物品を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分である。そのため、吸収性物品の包装体の積層方向に重複する位置にあるずれ止め用粘着材と着衣との間の接着がより強固になる。そのため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離する際に、吸収性物品積層体の積層方向に関して吸収体の中高部と重複する位置にあるずれ止め用粘着材が着衣に残りやすく、すなわち糊残りが生じやすい。
【0099】
中高部における重複領域の厚さが基部における重複領域の厚さよりも大きい場合には、吸収性物品を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分においてアンカー効果が高いため、吸収性物品を使用後に着衣から剥離する際に、糊残りを抑制することができる。
【0100】
図6は、本発明の第2の実施形態に従う包装体100の、
図2におけるA
1-A
1’線と同様の線に沿った断面図である。
【0101】
図6において、生理用ナプキン10は、基部S
1及び中高部S
2を有している。また、展開状態において、ずれ止め用粘着材40は、包装体100の厚さ方向Tに中高部S
2と重複する位置及び基部S
1と重複する位置に、それぞれ重複領域45aを有している。また、中高部S
2における重複領域45aの厚さは、基部S
1における重複領域45aの厚さよりも大きい。そのため、生理用ナプキン10を着衣に貼り付けて使用した際に、脚を動かす等によって圧が掛かりやすい部分においてアンカー効果が高いため、生理用ナプキン10を使用後に着衣から剥離する際に、糊残りを抑制することができる。
【0102】
重複領域と非重複領域の厚さの差は、任意の方法によって形成することができる。
【0103】
厚さの差は、例えば、重複領域に適用する粘着材の材料の量を、非重複領域に適用する粘着材の材料の量よりも多くする方法を挙げることができる。この方法を用いる場合には、重複領域と非重複領域との厚さの差がなくならないような粘度で粘着材の材料を塗布することが好ましい。この様な粘度は、例えば塗布の際に粘着材の材料の温度を調節することにより適宜選択することができる。
【0104】
また、厚さの差は、例えば、吸収性物品の疎水性不織布上に粘着材の材料を塗布した後に、重複領域及び非重複領域を、それぞれ異なる大きさのプレス圧でプレスして、疎水性不織布に含侵される粘着材の量に差を与えることにより、形成することができる。
【0105】
なお、含浸部位における重複領域と非重複領域との厚さは、吸収性物品を展開状態において、吸収性物品の面内において含浸部位と直交する厚さ方向に切断したときの断面における、含浸部位の肌対向面側から疎水性不織布の着衣対向面側までの平均の長さによって定義することができる。そして、各領域におけるこの平均の長さの大小関係は、吸収性物品を展開状態において厚さ方向に切断したときの上記断面の電子顕微鏡画像等から、目視又は画像処理ソフトにより求めることができる。なお、吸収性物品の断面は、吸収性物品を液体窒素につけて固めたものを切断することにより得ることができる。
【0106】
(非重複領域)
非重複領域は、含浸部位のうち、重複領域に隣接し、かつ包装体の厚さ方向に剥離シート固定用粘着材と重ならない領域である。
【0107】
非重複領域は、重複領域と比較して厚さが小さいため、重複領域より柔軟である。したがって、重複領域よりも非重複領域の割合が多いほど、疎水性不織布のずれ止め用粘着材が配置されている部分のうち硬い部分が少なくなり、着用者により違和感を与えにくい。
【0108】
《剥離シート固定用粘着材》
本発明の包装体が有している剥離シート固定用粘着材は、剥離シートを包装シートに固定している。
【0109】
剥離シート固定用粘着材の材料は、剥離シートを包装シートに固定することができる、任意の粘着性の材料であってよい。剥離シート固定用粘着材の材料は、例えば上記のずれ止め用粘着材に関して記載したものと同様の材料を用いることができる。
【0110】
剥離シート固定用粘着材は、材料となる粘着性の物質を剥離シート上に任意の方法によって適用することによって形成することができ、例えば材料となる粘着性の物質を剥離シートに塗布することによって形成することができる。また、ずれ止め用粘着材は、材料となる粘着性の物質を包装シートに適用し、その上に剥離シートを積層することによって形成してもよい。
【0111】
剥離シート固定用粘着材の形状は、剥離シートを包装シートに固定することができる任意の形状を有していることがであってよいが、ずれ止め用粘着材の疎水性不織布への含浸部位が重複領域と非重複領域を有する様に形成されている。剥離シート固定用粘着材の形状は、例えば矩形であってよい。
【0112】
《剥離シート》
本発明の包装体が有している剥離シートは、剥離シート固定用粘着材を介して包装シートに固定されている。
【0113】
剥離シートは、吸収性物品を、包装体に一時的に固定することができ、かつ使用時に包装体から剥離させることができる任意の材料から構成されていることができる。剥離シートの材料としては、例えば紙や樹脂シートの基材にシリコーン樹脂系の剥離材を塗工したものが挙げられる。
【0114】
剥離シートの形状は、吸収性物品を、包装体に一時的に固定することができる任意の形状を有していることができる。例えば、剥離シートは、包装シートと同じ大きさ、形状であってよく、又は吸収性物品の長手方向に沿う帯形状であってよい。
【0115】
《包装シート》
本発明の包装体が有している包装シートは、吸収性物品を包装することができる任意の材料から構成されていることができる。包装シートの材料としては、例えば、布帛(例えば、不織布、織物及び編物)、フィルム、紙、並びにこれらのラミネート等を挙げることができる。
【0116】
《リードテープ》
包装体が、包装体の着衣当接面の少なくとも2箇所を接合することによって包装体を個包装体にするためのリードテープを有している場合には、重複領域は、包装体の厚さ方向にリードテープと重複していることが好ましい。
【0117】
リードテープを剥離させる部分と重複領域とが個包装体の厚さ方向に重複する位置に配置されている構成では、リードテープを包装体から剥離させる際に剥離シートも引っ張られる場合がある。この場合、剥離シートに固定されているずれ止め用粘着材も併せて引っ張られることにより、ずれ止め用粘着材が疎水性不織布から剥がれる、又は剥がれかかる場合がある。そのため、包装体を個包装体にする際に、リードテープが個包装体の厚さ方向に重複領域と重複する様に配置することは望ましくなく、リードテープの配置位置に技術上の制約がある。
【0118】
本発明の包装体では、重複領域おけるずれ止め用粘着材の含浸率自体が大きい。これにより、リードテープを剥離させる部分と重複領域とが個包装体の厚さ方向に重複する位置に配置されている構成においても、リードテープを包装体から剥離させる際にずれ止め用粘着材が疎水性不織布から剥がれにくい。
【0119】
リードテープは、包装体の着衣当接面の少なくとも2箇所を接合することができる任意の材料から構成することができる。リードテープの材料としては、例えば、粘着性のテープを用いることができる。
【0120】
図7Bは、
図7AにおけるA
3-A
3’線に沿った断面図である。
図7Bに示す様に、包装体100は、包装体100の着衣当接面の少なくとも2箇所を接合することによって包装体100を個包装体にするためのリードテープ35を有しており、個包装状態において、重複領域45aは、包装体100の厚さ方向Tにリードテープ35と重複している。
【0121】
ずれ止め用粘着材の重複領域45aは、非重複領域45bと比較して含浸率が大きい。そのため、包装体100が個包装状態において
図7Bのような構成を有することにより、リードテープ35を包装体100から剥離させる際に、ずれ止め用粘着材40が疎水性不織布13から剥がれにくい。
【0122】
なお、本発明の包装体において、粘着材が仮想折り線を跨って配置されており、かつ包装体の展開状態において、含浸部位の非重複領域が仮想折り線と厚さ方向に重複している場合には、包装体の厚さをDとしたときに、非重複領域内において、仮想折り線を中心に1/2πDの長さの部分の厚さは、非重複領域内の他の部分の厚さよりも大きくてよい。
【0123】
本発明が適用される包装体が有する吸収性物品は、上述の各実施形態の生理用ナプキンに限定されず、着衣に貼り付けて使用する吸収性物品全般に適用することが可能であり、例えば、軽失禁パッド、パンティライナー等の様々な吸収性物品に適用することができる。さらに、吸収性物品を構成する各シートについても、上述の表面シートや裏面シート等のほかに、適用される吸収性物品の種類等に応じて様々なシートが想定される。そのようなシートとしては、例えば、表面シートと吸収体との間又は吸収体と裏面シートとの間に配置されて、尿等の排泄液を吸収性物品の長手方向又は幅方向に拡散させる液透過性の拡散シート等が挙げられる。
【符号の説明】
【0124】
10 生理用ナプキン
11 表面シート
12 吸収体
13 疎水性不織布
20 剥離シート
30 包装シート
40 ずれ止め用粘着材
45 含浸部位
45a 重複領域
45b 非重複領域
60 剥離シート固定用粘着材
100 包装体