(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】ポリマーコアと連続したシリカシェルとを有するコア-シェル粒子の製造方法、該方法により得られる水性ポリマー分散液、再分散性ポリマー粉末、及び再分散性ポリマー粉末を含む組成物
(51)【国際特許分類】
C08J 3/12 20060101AFI20220617BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20220617BHJP
C08F 2/24 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08F2/44 A
C08F2/24 Z
(21)【出願番号】P 2018553992
(86)(22)【出願日】2017-04-07
(86)【国際出願番号】 EP2017058439
(87)【国際公開番号】W WO2017178381
(87)【国際公開日】2017-10-19
【審査請求日】2020-04-06
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ディーチュ
(72)【発明者】
【氏名】ペーター ライディンガー
(72)【発明者】
【氏名】ゾフィー プツィエン
(72)【発明者】
【氏名】ゲアハルト アルブレヒト
(72)【発明者】
【氏名】マイク シュレジンガー
【審査官】大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】特表2000-506206(JP,A)
【文献】特開2011-079912(JP,A)
【文献】特表2003-512485(JP,A)
【文献】珪酸ソーダ,富士化学株式会社,2013年12月,1-6頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J3/00-3/28、99/00、C08F2/00-2/60、
C08K3/00-13/08、C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーコアと連続シリカシェルとを有するコア-シェル粒子を製造するための方法であって、
a)ポリマー粒子を含む水性ポリマー分散液を準備するステップ、
b)水性ポリマー分散液のpHを7~10の範囲の値に調整するステップ、及び
c)7~10の範囲のpHを有する水性ポリマー分散液に7~10の範囲のpHを維持しながら水ガラスを添加して、コア-シェル粒子の分散液を得るステップ
を含み、
ステップ(a)のポリマー粒子の表面電荷が、以下の範囲
i)+300μmol/g(ポリマー)~-300μmol/g(ポリマー)又は
ii)+200μmol/g(ポリマー)~-200μmol/g(ポリマー)又は
iii)+100μmol/g(ポリマー)~-100μmol/g(ポリマー)
から選択される範囲であり、
ステップ(a)におけるポリマーの表面を、ステップ(a)のポリマー粒子にカチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー
、ポリアミン、ポリエチレンイミン及びアニオン性界面活性剤から選択される媒介物質を添加することにより改質し
、
ポリマーが、-50℃~50℃の範囲のガラス転移温度を有し、かつ
ステップ(c)において使用した水ガラスの比率が、Na
2O又はK
2Oに対するSiO
2のモル比であって、1~3.5の範囲である、
方法。
【請求項2】
ステップ(b)におけるpHを、8~10の範囲に調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)におけるpHを、8~10の範囲に維持する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ポリマーが、
α)C
3~C
6α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びα,β-モノエチレン性不飽和C
4~C
8ジカルボン酸のエステルから選択される非イオン性モノマー(i)、ビニル芳香族モノマー、及びC
1~C
18モノカルボン酸のビニル又はアリルエステルから選択される他の非イオン性モノマー(ii)、並びにそれらの分子においてアニオン性官能基又はアニオン生成官能基を有するアニオン性モノマー又はアニオン生成モノマー(iii)のコポリマー、又は
β)ビニル芳香族モノマーから選択される少なくとも1つの非イオン性モノマーと(メタ)アクリロニトリル及びブタジエンとのコポリマー、又は
γ)少なくとも1つのオレフィンとC
1~C
18モノカルボン酸の少なくとも1つのビニルエステルとのコポリマー、又は
δ)カルボン酸及び/又はカルボキシレート基及び/又はスルホ基を含むポリウレタン
である、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
ステップ(c)の得られた分散液を乾燥させて、再分散性ポリマー粉末を得る、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記再分散性ポリマー粉末が、-50℃~+50℃の範囲のガラス転移温度Tg(ASTM D3418-82にしたがった中点温度)を有するポリマーコアと連続シリカシェルとを有する粒子を含む、請求項5に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマーコアと連続したシリカシェルとを有するコア-シェル粒子の製造方法、該方法により得られる水性ポリマー分散液、再分散性ポリマー粉末、及び再分散性ポリマー粉末を含む組成物に関する。
【0002】
再分散性ポリマー粉末は、セメントベースの防水加工システム、床スクリード、タイル接着剤等において広く使用されており、これらのシステムにおいて可撓性及び疎水化を提供する。公知の再分散性粉末(例えば、Elotex(登録商標)、Vinnapas(登録商標)、Acronal(登録商標))は、添加剤、例えば保護コロイド、噴霧乾燥助剤又は凝結防止剤の存在下でラテックス分散液を噴霧乾燥させることにより得られる。これらの添加剤は、ポリマー粒子の不可逆的凝集を妨げ、最終適用システムにおいて十分な再分散が可能である。しかしながら、それらは、最終生成物の湿潤強度も低減し、望ましくない着色又は風解を生じうる。さらに、かかるポリマー粉末の貯蔵安定性は制限され、添加剤は、最終適用システムにおけるポリマー粒子の膜形成を損なう。したがって、それらの欠点を有さない再分散性ポリマー粉末が大いに望まれる。
【0003】
国際公開第2014/011730号A1(WO 2014/011730 A1)(Dow)は、エポキシ樹脂コアとエポキシ樹脂の周りにアルカリ溶解ポリマーシェルとを有する再分散性の多層ポリマー粉末を記載している。ポリマー粒子は、エポキシ樹脂分散液の存在下でモノマー混合物を共重合し、分散液を乾燥させる前に二価金属の強酸塩又は有機酸塩を添加することによって製造される。
【0004】
国際公開第2001/029106号A1(WO 2001/029106 A1)(BASF SE)は、無機固体材料の微粒子、例えばシリカゾルの微粒子の存在下でモノマー混合物を重合させることによって製造される粒子(複合材粒子)の水性分散液を製造するための方法に関する。
【0005】
米国特許第6,136,891号(US 6,136,891)及び米国特許第6,685,966号(US 6,685,966)は、有機ポリマーのコアと、アルミニウム、ケイ素、ジルコニウム、亜鉛もしくは遷移金属の酸化物又は水酸化物に基づく表皮とを含む複合材粒子を開示している。前記複合材粒子は、ポリビニルピロリドンにより安定化したポリスチレン又は塩化カルシウム中間体層を有するスチレン/ブタジエンラテックスのコア及び表皮層として二酸化ケイ素で例示されている。その後、複合材粒子は、400℃~900℃でか焼することにより、又は有機ポリマーのための溶媒で処理することにより中空粒子に変換される。中空粒子は、プラスチック又はエラストマーのための補強充填剤として使用される。
【0006】
欧州特許出願番号第258 554号A1(EP 258 554A1)は、シリカで満たされたゴムラテックス粒子を開示している。それらは、コロイド状シリカの存在下で沈降シリカをゴムラテックス分散液に添加することにより得られる。そして、分散液のpHを1~5に調整して、ゴムラテックスを凝固する。凝固したゴムラテックスは、加硫ゴム、例えばシールを製造するために、又は靴底の製造において使用される。
【0007】
特開2008-101049号(JP 2008-101049)は、ポリ乳酸エマルションに水ガラスを添加し、そして硫酸を添加して、ポリ乳酸とシリカ粒子を凝集させることにより得られる複合材を開示している。凝集物を、ノボラック型フェノール樹脂と組み合わせて、該樹脂から形成された成形体の摩擦摩耗特性を改良する。
【0008】
中国特許第102827379号(CN 102827379)は、建築材料のための添加剤として使用される再分散性ラテックス粉末の製造方法を開示している。前記方法は、カチオン性乳化剤により安定化されたカチオン性ポリマーのエマルションを製造し、無機材料又はそれらの前駆体、例えばテトラエトキシシランを添加し、そしてゾルゲル反応を実施することを含む。
【0009】
米国特許第2014/0031463号(US 2014/0031463)は、マイクロカプセル組成物を製造するための方法を開示しており、マイクロカプセルのシェルは、実質的にシリカから製造されており、コアは、少なくとも1つの親油性成分を含んでいる。親油性成分は液体であり、かつポリマー添加剤、又は物理的材料特性を改質する/該特性に付加するポリマー添加剤を含む。マイクロカプセルは、ポリマーに組み込まれて、それらの加工性及び性能を改善しうる。
【0010】
国際公開第2013/050388号(WO 2013/050388)は、シリカゾルを水性ポリマー分散液に添加し、そして乾燥させることによって得られるポリマー粉末を開示している。シリカ粒子とポリマー分散液の他の成分との相互作用によって、乾燥に対するシリカの自己縮合は、シリカゾル単独でよりも非常に低い程度で生じる。建築材料に添加される場合に、増加した接着効果が達せられる。
【0011】
特開2008101049号は、水ガラスを樹脂に添加し、そして酸を添加することによって、有機合成樹脂、例えばポリ乳酸の特性を高めるための方法を開示している。得られるものは、微細シリカ粒子が樹脂中に微細及び均一に分散した複合体である。この複合体は、水中での再分散性に適していない。
【0012】
本発明に基づく問題は、前記欠点を有さない水再分散性ポリマー粉末を提供することである。特に、ポリマー粉末は、その機械特性、貯蔵安定性及び加工性を損なうことなく元のポリマーを再生することが可能であるべきである。
【0013】
この問題は、ポリマーコアと連続シリカシェルとを有するコア-シェル粒子を製造するための方法であって、
a)ポリマー粒子を含む水性ポリマー分散液を準備するステップ、
b)水性ポリマー分散液のpHを7~10の範囲の値に調整するステップ、及び
c)7~10の範囲のpHを有する水性ポリマー分散液に7~10の範囲のpHを維持しながら水ガラスを添加して、コア-シェル粒子の分散液を得るステップ
を含む方法により解決される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施例8の粒子のHAADF-STEM画像(高角環状暗視野)である。
【
図2】
図2は、再分散前の実施例8の噴霧乾燥粉末の写真である。
【
図3】
図3は、
図2のポリマー粉末を再分散させ、そして乾燥させた後に形成された膜の写真である。
【
図4】
図4は、実施例15の粒子のHAADF-STEM画像(高角環状暗視野)である。
【
図5】
図5は、熱処理後の本発明のポリマー粉末の試料の写真である。
【0015】
ステップ(a)の分散液中の粒子d(50)の平均直径は、一般に、10~2000nmの範囲、好ましくは約100nm~1500nmの範囲である(以下で記載されるMalvern Zetasizer Nano-ZSを備えた動的光散乱法(Z平均)により測定される)。ステップ(c)で得られるコア-シェル粒子は、一般に、動的光散乱法により測定して、2.0μm以下、好ましくは1.1μm以下の粒径d(50)を有する。
【0016】
本発明の方法において使用される1つの成分は、一実施形態にしたがって、分散ポリマーが約-50℃~約50℃の範囲のガラス転移温度を有する水性ポリマー分散液である。
【0017】
「ガラス転移温度」又は「Tg」の用語は、本明細書の記載内容において、示差熱分析(DSC;加熱速度:20K/分)によって決定したASTM D 3418-12にしたがった中点温度である[Ullmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, page 169, Verlag Chemie, Weinheim, 1992及びZosel in paint and varnish, 82, pages 125 to 134, 1976も参照されたい]。
【0018】
Fox(T. G. Fox, Bull. At the. Phys. Soc. 1956 [Ser. II] 1, page 123及びUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry, Vol. 19, page 18, 4. Edition, Verlag Chemie, Weinheim, 1980にしたがって)にしたがって、最も弱く架橋されているコポリマーのガラス転移温度は、以下の式
1/Tg=x1/Tg1+x2/Tg2+....xn/Tgn
[式中、x1、x2、....xnは、モノマー1、2、....nの質量分率であり、かつTg1、Tg2、....Tgnは、モノマー1、2、....nのホモポリマーのケルビン度でのガラス転移温度である]により、良好な近似値に概算されてよい。大部分のエチレン性不飽和モノマーのこれらのホモポリマーのガラス転移温度は、公知であり(又は、それ自体公知の単純な方法で測定されてよい)、例えばJ. Brandrup, E. H. Immergut, Polymer Handbook, 1st Ed. J. Wiley, New York, 1966, 2nd Ed. J. Wiley, New York, 1975, 3rd Ed. J. Wiley, New York, 1989において、及びUllmann's Encyclopedia of Industrial Chemistry, page 169, Verlag Chemie, Weinheim, 1992において挙げられている。
【0019】
約-50℃~約50℃の範囲のガラス転移温度を有すると考えられる全ての天然に生じる及び/又は合成したポリマーが適していてよい。例えば、天然生成物、例えばニトロセルロース、セルロースエステル、ロジン及び/又はシェラックに基づく分散ポリマーPである。合成分散ポリマーの例は、重縮合生成物、例えばアルキド樹脂、ポリエステル、ポリアミド、シリコーン樹脂及び/又はエポキシ樹脂、並びに重付加物、例えばポリウレタンである。重付加生成物は、好ましくは、重合された形でのエチレン性不飽和化合物から構成されるポリマーである。これらの重付加化合物の調製は、一般に、当業者によく知られている方法によって、すなわち金属錯体による触媒作用、アニオン性触媒作用、カチオン性触媒作用によって、及び特にエチレン性不飽和化合物のラジカル重合によって実施される。
【0020】
エチレン性不飽和化合物のラジカル重合は、ラジカルバルク重合、ラジカル乳化重合、ラジカル溶液重合、ラジカル沈澱重合又はラジカル懸濁重合の方法によって実施されてよいが、ラジカル水性乳液重合が好ましい。
【0021】
水性媒体中でのエチレン性不飽和化合物(モノマー)のラジカル乳化重合のための手法は、例えばEncyclopedia of Polymer Science and Engineering, Vol. 8, pages 659 ff. (1987); D.C. Blackley, in High Polymer latexes, Vol. 1, pages 35 et seq. (1966); H. Warson, The Applications of Synthetic Resin Emulsions, Chapter 5, pages 246 et seq. (1972); D. Diederich, Chemie in unserer Zeit 24, pages 135-142 (1990); Emulsion Polymerization, Interscience Publishers, New York (1965); DE-A 40 03 422、及びDispersions of synthetic high polymers, F. Holscher, Springer-Verlag, Berlin (1969)において記載されている。
【0022】
適したモノマーは、特に、容易にラジカル重合可能なモノマー、例えばエチレン、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、o-メチルスチレン、o-クロロスチレン又はビニルトルエン、ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニル又は塩化ビニリデン、ビニルアルコールとC原子1~18を有するモノカルボン酸とのエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル及びステアリン酸ビニル、C原子3~6個を好ましくは有するα,β-モノエチレン性不飽和モノ-及びジ-カルボン酸、特にアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸と一般に炭素原子1~12個、好ましくは1~8個及び特に1~4個を有するアルカノールとのエステル、例えばメチル、エチル、n-ブチル、イソ-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル及び2-エチルヘキシルのアクリレート及びメタクリレート、ジメチルマレエート、ジ-n-ブチルフマレート、ジ-n-ブチルマレエート、α,β-モノエチレン性不飽和カルボン酸のニトリル、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロジニトリル、マレオジニトリル、並びに共役C4~C8ジエン、例えば1,3-ブタジエン及びイソプレンである。
【0023】
前記モノマーは、一般に、調製のために使用される全てのエチレン性不飽和化合物の量(全量)に基づく割合で使用される、主モノマー50質量%以上、好ましくは80質量%以上及び最も好ましくは90質量%以上を形成する。一般に、これらのモノマーは、中程度の溶解性から低い溶解性しか有さない(20℃、1.013barで)。
【0024】
前記条件下で増加した水溶性を有するモノマーは、少なくとも1つの酸基及び/又はそれらの対応するアニオン、又は少なくとも1つのアミノ基、アミド基、ウレイド基もしくはN-ヘテロ環式基を含有するもの、及び/又は窒素上でプロトン化されたもの、又はアルキル化アンモニウム誘導体である。例えば、α,β-モノエチレン性不飽和モノ-及びジカルボン酸及びそれらのアミド、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、アクリルアミド及びメタクリルアミド、並びにビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸及びそれらの水溶性塩、並びにN-ビニルピロリドン、2-ビニルピリジン、4-ビニルピリジン、2-ビニルイミダゾール、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルアクリレート、2-(N,N-ジメチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルアクリレート、2-(N,N-ジエチルアミノ)エチルメタクリレート、2-(N-tert-ブチルアミノ)エチルメタクリレート、N-(3-N’,N’-ジメチルアミノプロピル)メタクリルアミド及び2-(1-イミダゾリン-2-オニル)エチルメタクリレートを含む。通常の場合に、前記モノマーは、モノマーの全量に対して、10質量%以下、好ましくは5質量%以下の量で改質モノマーとしてのみ存在する。
【0025】
通常ポリマーマトリックスの膜の内部強度を増加するモノマーは、少なくとも1つのエポキシ基、ヒドロキシル基、N-メチロール基もしくはカルボニル基、又は少なくとも2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を通常含む。例として、2つのビニル基を有するモノマー、2つのビニリデン基を含有するモノマー、又は2つのアルケニル基を含有するモノマーを含む。特に、二価アルコールとα,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸とのジエステルが有利であり、中でもアクリル酸及びメタクリル酸が好ましい。2つの非共役エチレン性不飽和二重結合を有するモノマーの例は、アルキレングリコールジアクリレート及びジメタクリレート、例えばエチレングリコールジアクリレート、1,2-プロピレングリコールジアクリレート、1,3-プロピレングリコールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジアクリレート、1,4-ブチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,2-プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-プロピレングリコールジメタクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,4-ブチレングリコールジメタクリレート、及びジビニルベンゼン、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、アリルアクリレート、ジアリルマレエート、ジアリルフマレート、メチレンビスアクリルアミド、シクロペンタジエニルアクリレート、トリアリルシアヌレート、又はトリアリルイソシアヌレートである。本記載内容において、メタクリル酸及びアクリル酸のC1~C8ヒドロキシアルキルエステル、例えばヒドロキシアルキル、例えば2-ヒドロキシエチル、3-ヒドロキシプロピル又は4-ヒドロキシブチルのアクリレート及びメタクリレート、並びに化合物、例えばジアセトンアクリルアミド及びアセチルアセトキシエチルアクリレートも特に重要である。しばしば、前記モノマーは、それぞれ使用されるモノマーの全量に対して、5質量%以下、好ましくは3質量%以下の量で使用される。
【0026】
一実施形態において、分散ポリマーは、共重合した形で、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸とC1~12個を有するアルカノール及び/又はスチレンとのエステル 50質量%以上99.9質量%以下、又は
スチレン及び/又はブタジエン 40質量%以上99.9質量%以下、又は
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50質量%以上99.9質量%以下、又は
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又はエチレン 40質量%以上99.9質量%以下
を含む。
【0027】
他の実施形態において、分散ポリマーは、共重合した形で、
炭素原子3~6個を有する少なくとも1つのα,β-モノエチレン性不飽和モノ及び/又はジカルボン酸、及び/又はそれらのアミド 0.1質量%以上5質量%以下、及び
C1~12個のアルカノールを有するアクリル酸及び/又はメタクリル酸の少なくとも1つのエステル 50質量%以上99.9質量%以下、又は
炭素原子3~6個を有する少なくとも1つのα,β-モノエチレン性不飽和モノ及び/又はジカルボン酸、及び/又はそれらのアミド 0.1質量%以上5質量%以下、及び
スチレン及び/又はブタジエン 40質量%以上99.9質量%以下、又は
炭素原子3~6個を有する少なくとも1つのα,β-モノエチレン性不飽和モノ及び/又はジカルボン酸、及び/又はそれらのアミド 0.1質量%以上5質量%以下、及び
塩化ビニル及び/又は塩化ビニリデン 50質量%以上99.9質量%以下、又は
炭素原子3~6個を有する少なくとも1つのα,β-モノエチレン性不飽和モノ及び/又はジカルボン酸、及び/又はそれらのアミド 0.1質量%以上5質量%以下、及び
共重合した形で酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル及び/又はエチレン 40質量%以上99.9質量%以下を含む。
【0028】
他の実施形態において、分散ポリマーは、共重合した形で、
n-ブチルアクリレート及び/又は2-エチルヘキシルアクリレート 45質量%以上55質量%以下、
スチレン及び/又はメチルメタクリレート 45質量%以上55質量%以下、
アクリル酸及び/又はメタクリル酸 0.1質量%以上5質量%以下、及び
アクリルアミド及び/又はメタクリルアミド 0.1質量%以上5質量%以下
を含み、その際、全ての前記実施形態において、共重合した形で、質量%は合計で100である。
【0029】
ステップ(a)において使用される水性ポリマー分散液は、例えば国際公開第2016/012315号(WO 2016/012315)6頁19行目~10頁6行目(参照をもって本明細書に組み込まれたものとする)において開示されているように、ラジカル開始剤、連鎖移動剤等の存在下で従来の方法で実施される、α,β-モノエチレン性不飽和モノマーの乳化重合によって形成される。
【0030】
典型的に、ラジカル開始水性乳化重合による分散ポリマーPの調製において、モノマー液滴とポリマー粒子の双方を水性相中で分散させる分散助剤が使用される。ラジカル水性乳化重合を実施するために通常使用される保護コロイド及び/又は乳化剤が適している。
【0031】
適した保護コロイドは、例えば、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体又はビニルピロリドン含有コポリマーである。他の適した保護コロイドの詳細な記載は、Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Volume XIV / 1, Macromolecular Materials, pages 411-420, Georg Thieme Verlag, Stuttgart., 1961において示されている。もちろん、乳化剤及び/又は保護コロイドの混合物を使用してよい。慣例的な乳化剤は、例えば、エトキシ化モノ-、ジ-及びトリ-アルキルフェノール(EO単位:3~50、アルキル基:C4~C12)、エトキシ化脂肪アルコール(EO単位:3~50;アルキル基:C8~C36)、並びにアルカリ金属、並びに硫酸アルキル(アルキル:C8~C12)のアンモニウム塩、エトキシ化アルカノール(EO単位:4~30、アルキル基:C12~C18)の及びエトキシ化アルキルフェノール(EO単位:3~50、アルキル基:C4~C12)の硫酸モノエステルのアンモニウム塩、アルキルスルホン酸(アルキル基:C12~C18)のアンモニウム塩、及びアルキルアリールスルホン酸(アルキル基:C9~C18)のアンモニウム塩である。他の適した乳化剤は、Houben-Weyl, Methods of Organic Chemistry, Volume XIV / 1, Macromolecular Materials, pages 192 to 208 Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart., 1961において示されている。
【0032】
適した界面活性剤は、一般式Iのさらなる化合物
【化1】
[式中、R
1及びR
2は、H又はC
4~C
24アルキルであるが、同時にHではなく、M
1及びM
2はアルカリ金属イオン又はアンモニウムイオンである]である。
【0033】
ステップ(a)の水性ポリマー分散液中のポリマー粒子は、負又は正の表面電荷を有してよく、又は非電荷であってよい。一般に、ポリマー粒子の表面電荷は、以下の範囲
i)約+300μmol/g(ポリマー)~約-300μmol/g(ポリマー)又は
ii)約+200μmol/g(ポリマー)~約-200μmol/g(ポリマー)又は
iii)約+100μmol/g(ポリマー)~約-100μmol/g(ポリマー)
から選択される範囲である。
【0034】
表面電荷は、BTG Muetek粒子電荷検出器と組み合わせたMettler Toledo DL 28 Titratorを使用して、ポリ-DADMAC(ポリ(ジアリルジメチル-塩化アンモニウム))又はポリエチレンスルホン酸ナトリウムでの滴定により決定される。
【0035】
負の表面電荷は、少なくとも1つのアニオン性モノマー又はアニオン生成モノマー(anionogenic monomer)を共重合することにより達せられうる。したがって、ポリマーは、少なくとも1つの非イオン性モノマー及び非イオン性モノマーと共重合可能な少なくとも1つのアニオン性モノマー又はアニオン生成モノマーから形成されたコポリマーであってよい。適した非イオン性モノマーは、例えば、C3~C6α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びα,β-モノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸及びイタコン酸と、直鎖又は分枝鎖のC1~C12アルカノール、好ましくはC1~C8アルカノールとのエステルである。かかるエステルの例は、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、オクチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、デシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、オクチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、デシルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジ-n-ブチルフマレート、ジメチルマレエート、又はジ-n-ブチルマレエートである。適した非イオン性モノマーは、ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-クロロスチレンもしくはビニルトルエン;オレフィン、例えばエチレンもしくはプロピレン;ハロゲン化ビニル、例えば塩化ビニルもしくは塩化ビニリデン;又はC1~C18、好ましくはC1~C12モノカルボン酸のビニルエステルもしくはアリルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、ラウリン酸ビニルもしくはステアリン酸ビニルでもある。1つ、2つ又はそれ以上の非イオン性モノマーが使用されうる。
【0036】
アニオン性モノマー又はアニオン生成モノマーは、それらの分子中でアニオン性官能基又はアニオン生成官能基、例えば-COOH、-SO3H、-OPO3H2、-PO3H、-OH又は-CN(-CN基は、少なくとも部分的にアルカリ性媒体中でカルボキシル基に加水分解されていてよい)を有する。好ましい官能基は、カルボキシル基-COOHである。適したモノマーは、例えば、C3~C6α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びジカルボン酸、又は該ジカルボン酸の無水物、例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、もしくはマレイン酸無水物;ビニルスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-スルホエチルアクリレート、2-スルホエチルメタクリレート、スルホプロピルアクリレート、スルホプロピルメタクリレート、スチレンスルホン酸、及び2-プロペン-1-スルホン酸、ビニルホスホン酸、ビニルベンジルホスホン酸である。前記モノマーは、酸の形で又はそれらの塩の形で使用されうる。
【0037】
正の表面電荷は、少なくとも1つのカチオン性モノマー又はカチオン生成モノマー(cationogenic monomer)を共重合することにより達せられうる。したがって、ポリマーは、少なくとも1つの非イオン性モノマー及び非イオン性モノマーと共重合可能な少なくとも1つのカチオン性モノマー又はカチオン生成モノマーから形成されたコポリマーであってよい。適した非イオン性モノマーは前記したものである。
【0038】
カチオン性モノマー又はカチオン生成モノマーは、それらの分子中でカチオン性官能基又はカチオン生成官能基、例えば-NH2、-NH3
+、NR3、-NR3
+を有する。好ましい官能基は、第四級アンモニウム基である。適したモノマーは、例えば、2-アミノエチルアクリレート、2-アミノエチルメタクリレート、2-アンモニウムエチルアクリレートクロリド、2-アンモニウムエチルメタクリレートクロリド、2-ジメチルアミノエチルアクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、2-トリメチルアンモニウムエチルアクリレートクロリド、2-トリメチルアンモニウムエチルメタクリレートクロリドである。
【0039】
実施形態において、ポリマーは、α)(i)C3~C6α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びα,β-モノエチレン性不飽和C4~C8ジカルボン酸のエステルから選択される非イオン性モノマー、(ii)ビニル芳香族モノマー、例えばスチレン、α-メチルスチレン、o-クロロスチレン又はビニルトルエン、及びC1~C18、好ましくはC1~C12モノカルボン酸のビニル又はアリルエステル、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、n-酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル又はステアリン酸ビニルから選択される他の非イオン性モノマー、並びに(iii)それらの分子においてアニオン性官能基又はアニオン生成官能基を有するアニオン性モノマー又はアニオン生成モノマーのコポリマーである。
【0040】
コポリマーα)は、追加のモノマー(iv)の単位を含みうる。かかるモノマーは、(メタ)アクリルアミド、N,N-モノ-及びジ-C1~C4-アルキル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルニトリル、環状ラクタムのN-ビニル誘導体、ヒドロキシ-C2~C4-アルキル(メタ)アクリレート、N,N-モノ-及びジ-C1~C4-アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートから選択される。好ましいモノマー(iv)は、ヒドロキシ-C2~C4-アルキル(メタ)アクリレート、例えばヒドロキシエチルアクリレート又はヒドロキシエチルメタクリレート;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルである。
【0041】
コポリマーα)は架橋されていてもよい。これは、コモノマー、特に2つ以上のエチレン性不飽和を有するコモノマーの官能基と共重合されるか又は反応できる2つ以上の官能基を有する少なくとも1つの架橋剤(v)をさらに使用することによって達せられ、例えば、ブタジエン、ジビニルベンゼン、ビニル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレエート、メチレンビスアクリルアミド、又はアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレートもしくは1,3-プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、又はグリシジル(メタ)アクリレートである。
【0042】
実施形態にしたがって、コポリマーα)は、C3~C6α,β-モノエチレン性不飽和モノカルボン酸及びC4~C8α,β-モノエチレン性不飽和ジカルボン酸、特にメチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート及びn-ブチルメタクリレートのエステルから選択される少なくとも1つの非イオン性モノマー(i)、特にスチレン又はα-メチルスチレンである少なくとも1つのビニル芳香族モノマー(ii)、C3~C6α,β-モノエチレン性不飽和一塩基酸、特にアクリル酸又はメタクリル酸から選択される少なくとも1つのアニオン性又はアニオン生成モノマー(iii)、任意に特に(メタ)アクリロニトリル及び/又は(メタ)アクリルアミドである追加のモノマー(iv)、並びに任意に特にブタジエン、グリシジル(メタ)アクリレート又はジビニルベンゼンである架橋モノマー(v)を共重合することによって製造される。
【0043】
さらなる実施形態にしたがって、ポリマーは、β)ビニル芳香族モノマーから選択される少なくとも1つの非イオン性モノマー、例えばスチレン又はα-メチルスチレンと、(メタ)アクリロニトリル及び架橋モノマー、特にブタジエンとのコポリマーである。
【0044】
さらに他の実施形態において、ポリマーは、γ)少なくとも1つのオレフィン、例えばエチレンと、少なくとも1つのC1~C18モノカルボン酸のビニルエステル、例えば酢酸ビニルとのコポリマーである。
【0045】
さらに他の実施形態において、ポリマーは、δ)カルボン酸及び/又はカルボキシレート基及び/又はスルホ基を含むポリスチレンである。かかるポリウレタンは、少なくとも1つのポリイソシアネートと、ポリイソシアネートに対して反応性の2つ以上のヒドロキシル基、並びにポリイソシアネートに対して不活性であり、その一部又は全てを塩基の存在下でカルボキシレート及び/又はスルホ基に変換することができる1つ以上のカルボキシル基及び/又はスルホ基を有する少なくとも1つのアニオン生成ポリオールとの反応によって得られてよい。かかるポリオールの例は、2-ヒドロキシメチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-3-メチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-エチル-3-ヒドロキシプロパン酸、2-ヒドロキシメチル-2-プロピル-3-ヒドロキシプロパン酸、クエン酸、酒石酸、[トリス(ヒドロキシメチル)]-3-アミノプロパンスルホン酸、1,3-プロパンスルホンを基礎とする構成要素、又は3-メルカプトプロパンスルホン酸ナトリウム塩である。ポリオールの分子量は、一般に、100~1000ダルトンの範囲である。このタイプの好ましいポリウレタンは、米国特許第6,825,268号(US 6,825,268)において、特に特許請求の範囲において開示されており、参照をもって本明細書に組み込まれたものとする。
【0046】
イオン性又はイオン生成モノマーは、約-30μmol/g(ポリマー)~約-300μmol/g(ポリマー)又は約+30μmol/g(ポリマー)~約+300μmol/g(ポリマー)の範囲の、好ましくは約-20μmol/g(ポリマー)~約-300μmol/g(ポリマー)又は約+50μmol/g(ポリマー)~約+300μmol/g(ポリマー)の範囲の、及び特に約-10μmol/g(ポリマー)~-200μmol/g(ポリマー)又は約+50μmol/g(ポリマー)~約+200μmol/g(ポリマー)の範囲の十分な正又は負の「表面電荷」を達成するために十分な量で使用される。アニオン性又はアニオン生成モノマーは、約-5μmol/g(ポリマー)~約-200μmol/g(ポリマー)の範囲の、好ましくは約-10μmol/g(ポリマー)~約-150μmol/g(ポリマー)の範囲のポリマーの表面電荷を達成するために十分な量で使用される。
【0047】
市販の及び特にステップ(a)における使用に適している水性ポリマー分散液は、例えばBASF SE社製のAcronal(登録商標)分散液(アクリル酸及びスチレンアクリル分散液)又はStyrofan(登録商標)分散液(スチレンブタジエン分散液)である。他の特に適した水性ポリマー分散液は、エチレンビニルアセテート分散液(Wacker AG社製のVinnapas(登録商標)又はAkzo Nobel社製のElotex(登録商標))である。
【0048】
本明細書において使用される「(メタ)」の用語は、それを使用する化学名がそれぞれアクリル化合物及びメタクリル化合物を含むことを意味する。
【0049】
ポリマー粒子上でのシリカ粒子の堆積を改善するために、ポリマー粒子の表面を、少なくとも部分的に媒介物質でポリマー粒子の表面をコーティングすることにより改質してよい。媒介物質は、好ましくはステップ(b)にしたがってpHを調整する前に、ステップ(a)のポリマー分散液に添加される。媒介物質は、好ましくは、ポリマー粒子の表面電荷を変化するものである。好ましくは、媒介物質は、カチオン性界面活性剤、カチオン性ポリマー、非イオン性界面活性剤、ポリアルキレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリアミン、ポリエチレンイミン及びアニオン性界面活性剤から選択される。
【0050】
一実施形態において、媒介物質の量は、ポリマーの表面電荷が、約+50μmol/g(ポリマー)~約-20μmol/g(ポリマー)の範囲であるように選択される。
【0051】
界面活性剤を媒介物として使用する場合に、界面活性剤の疎水性尾部がポリマーコアに向かって配向されている一方で、界面活性剤分子のイオン性もしくはイオン化性又は非イオン性頭部は、ポリマー粒子に表面電荷を付与する水性媒体に向かって配向されている。適した界面活性剤は、例えば、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸又はメラミンスルホン酸のホルムアルデヒド縮合物、スルホン化ケトン(アセトン)ホルムアルデヒド縮合物、C8~C12アルキルスルフェートのアルカリ金属又はアンモニウム塩、飽和もしくは不飽和C8~C18脂肪アルコールスルフェートのアルカリ金属又はアンモニウム塩、エチレンオキシド単位2~50でエトキシ化した飽和もしくは不飽和C8~C18脂肪アルコールの、もしくはエチレンオキシド単位3~50でエトキシ化したC4~C12アルキルフェノールの、もしくはC9~C18アルキルアリールスルホン酸の硫酸半エステルのアルカリ金属又はアンモニウム塩、モノ-又はジ-C8~C18アルキルスルホスクシネートのアルカリ金属又はアンモニウム塩、モノ-又はジ-C8~C18アルケニルスルホスクシネートのアルカリ金属又はアンモニウム塩、エチレンオキシド単位2~50でエトキシ化したモノ-又はジ-C8~C18アルキルスルホスクシネートのアルカリ金属又はアンモニウム塩、エチレンオキシド単位2~50でエトキシ化したモノ-又はジ-C8~C18アルケニルスルホスクシネートのアルカリ金属又はアンモニウム塩、エチレンオキシド単位2~50でエトキシ化したC8~C18アルカノールの酸性リン酸エステル及びそれらのアルカリ金属又はアンモニウム塩、飽和もしくは不飽和C8~C18脂肪酸のアルカリ金属又はアンモニウム塩、エチレンオキシド単位2~50でエトキシ化した飽和もしくは不飽和C8~C18脂肪アルコール及びそれらのホスホリル化、カルボキシル化又は硫酸化誘導体、エチレンオキシド単位2~50でエトキシ化したC9~C13オキソアルコール、C8~C14アルキルポリグルコシド、エチレンオキシド単位10~80%を有するエチレンオキシド-プロピレンオキシドブロックポリマー、又はポリカルボキシレートエーテル(アニオン性又はアニオン生成基を有する単位の骨格及びC2~C4ポリアルキレンオキシド側鎖を有する櫛形ポリマー、例えば国際公開第2014/013077号(WO 2014/013077)、10~22頁、実施形態25~49において開示されているもの)である。界面活性剤の量は、一般にポリマーの質量に対して0.1質量%~10質量%である。
【0052】
界面活性剤は、使用されるポリマー分散液により既に含まれていてよく、又は第一のもしくは第二の水溶性塩の添加前に添加されてよい。したがって、表面電荷を達成するために界面活性剤を使用する場合に、その分子中でイオン性又はイオン生成官能基を有するコモノマーを使用する必要はない。
【0053】
媒介物を使用しない場合に、水性ポリマー分散液及び/又は水ガラスは、希釈された形で使用される。合計固体濃度(ポリマー+水ガラス)は1質量%以下であることが好ましい。
【0054】
ステップ(a)の水性ポリマー分散液は、一般にpH9未満を有する。ステップ(b)において、pHは、7~10、好ましくは8~10、及び特に8超~10の範囲の値に調整される。この目的のために、有機もしくは無機酸、例えば硫酸、塩酸、硝酸、ギ酸、酢酸等、又はアルカリ水酸化物、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが、分散液に添加される。
【0055】
ステップ(c)において、水溶液の形での水ガラスを、ステップ(b)のポリマー分散液に添加する。水ガラスはpH11超を有するため、pHは、有機又は無機酸(例えば前記段落を参照されたい)を添加することにより7~10の範囲で維持されるべきである。水ガラスとして、ケイ酸ナトリウム又はケイ酸カリウムが使用されてよい。水ガラスの比率、すなわちNa2O又はK2Oに対するSiO2のモル比は、一般に、1~約3.5の範囲である。水溶液中の水ガラスの濃度は、一般に、固体含有率に対して約0.5質量%~約30質量%の範囲である。
【0056】
ポリマー及び水ガラスは、被覆されたポリマーの全質量に対して、ポリマーコアの質量は約60%~約95%の範囲であり、シリカシェルの質量は約5%~約40%の範囲である量で使用される。
【0057】
得られた分散液を乾燥させて、再分散可能なポリマー粉末を得ることができる。乾燥は、従来の方法で、例えば噴霧乾燥、流動床乾燥、ドラム乾燥、フラッシュ乾燥、凍結乾燥、又は周囲条件下での乾燥によって実施されてよい。
【0058】
本発明の方法は、有機ポリマー(ラテックス)コア及びステップ(c)において使用される水ガラスから形成されたシリカの密な連続シェル(層)を含む粒子から形成された再分散性ポリマー粉末をもたらす。シェルの厚さは、一般に、透過型電子顕微鏡(TEM)データにより、約1.5nm~約150nm、好ましくは1.5~10nmの範囲である。シェルの厚さは、使用される水ガラスの量により制御されてよい。シェルは、有機ポリマーが0℃未満のガラス転移を有する場合でさえ、コア中の有機ポリマーが他の粒子中へ移動及び拡散するのを妨げる。したがって、無機シェルは、(既存の技術と比較した場合に)全く又はほとんど乾燥剤を必要とせずに乾燥中及び貯蔵中のポリマー粒子の凝集(固化)を防げる。したがって、再分散性ポリマー粉末は、高い貯蔵安定性を有し、あらゆる着色をもたらさず、最終生成物の湿潤強度を改善する。さらに、シェルが完全な状態でポリマーコアを完全に囲んでいる限り、ポリマーコアはその性質を明らかにすることができず、外部の影響から保護される。シェルを少なくとも部分的に、特に溶解又は剪断応力によって取り出した後にのみ、コアは、その特性を生じ、周囲の媒体の影響を受けやすい(誘発放出の概念)。例えば、ポリマー粉末が最終的に例えばセメント組成物において適用される場合に、無機シェルは、アルカリ性のpHで溶解することによって及び/又は混合中に剪断応力によって少なくとも部分的に取り出され、そしてラテックス粒子が放出される。無機シェル(塩)は、セメントマトリックス中に包埋され、ラッテクス粒子がそれらの特性を現し、例えば膜を形成することができ、一方で、シリカは、最終性能プロフィールに対してネガティブな効果を全く有さず、セメントの湿潤強度を改善さえしうる。
【0059】
本明細書において使用される「再分散性」は、動的光散乱法により測定される、乾燥及び人工細孔溶液(artificial pore solution)(Ca2+ 10mmol/L、Na+ 98.5mmol/L、K+ 181.6mmol/L、SO4
2- 86.2mmol/Lを含有するアルカリ水溶液、pH=13.1)中での再分散後のポリマー粒子の粒径が、5μm以下、好ましくは3μm以下、及び特に1μm以下であることを意味する。さらに、再分散したラテックス分散液は、再度乾燥させる場合に膜形成を示す。
【0060】
本発明は、約-50℃~約+50℃の範囲のガラス転移温度Tg(ASTM D3418-82にしたがった中点温度)を有するポリマーコアと、連続シリカシェルとを有する粒子を含む再分散性ポリマー粉末にも関する。
【0061】
他の実施形態にしたがって、本発明は、本発明の方法にしたがって得られる再分散性ポリマー粉末に関する。
【0062】
本発明の再分散性ポリマー粉末は、約10μm~約100μmの範囲で乾燥後に平均粒径d(50)を有する。再分散に対して、平均粒径d(50)は、2μm以下、好ましくは1.1μm以下、及び特に約100nm~約1500nmの範囲である。
【0063】
さらに、本発明は、本発明の再分散性ポリマー粉末を含む組成物に関する。実施形態にしたがって、組成物は、水硬性バインダー、例えばセメント、特にOPC(普通ポルトランドセメント)、高アルミナセメント、潜在水硬性バインダー、例えばメタカオリン、カルシウムメタシリケート、火山スラグ、火山凝灰岩、火山土、フライアッシュ、高炉スラグ等、又はα-及びβ-半水溶物又は硬セッコウを含む気硬性バインダー、例えばセッコウを含む、建築材料組成物である。実施形態にしたがって、組成物は、修復モルタル、タイル接着剤、タイルグラウト、セルフレベリングフロアスクリード、セルフレベリングスムージング、下張り、上張り、シーリングスラリー、シーリングマッド、又はセメント質産業用床組成物として配合されてよいドライモルタル組成物である。
【0064】
本発明の組成物は、添加剤、例えば顔料、防炎材料、架橋剤、充填剤、例えば砂、石灰もしくはシリカ、補強剤、例えば繊維、抗酸化剤、殺菌剤、促進剤、例えばアルカリ金属炭酸塩、抑制剤、例えば酒石酸もしくはクエン酸、増粘剤、抑泡剤、防腐剤、湿潤剤、レオロジー改質剤、加硫剤、接着助剤等を含みうる。
【0065】
次の実施例は、制限することなく、本発明を例証するものである。
【0066】
改質のために使用した分散液を表1に示す:
【表1】
* ポリ-DADMACに対する滴定により決定
S=スチレン、BA=ブチルアクリレート、B=ブタジエン、AS=アクリル酸、EHA=エチルヘキシルアクリレート、MMA=メチルメタクリレート。
DLS=動的光散乱法:
粒径分布を、Malvern Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments GmbH、Germany)を使用して決定する。測定及び評価のために使用したソフトウェアは、装置に付属するMalvernソフトウェアパッケージである。測定原理は、動的光散乱法、より詳述すれば非接触後方散乱法に基づく。特に明記しない限り、本明細書全体にわたって与えられる粒径は、測定された粒子の63%が所与の値未満であることを意味する、いわゆるd(
63)値である。
【0067】
実施例1:分散液D1の改質
ラテックス粒子の改質を、丸底フラスコ中でpH制御下で水溶液(分散液)中で実施する。
【0068】
分散液D1 50g(純ポリマー21g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 100gで希釈し、そして60℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)2gを添加し、そしてさらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。1M硫酸溶液を絶えず滴加することにより分散液のpHを9に一定に維持しながら、5質量%(ここで及び以下で:固体含有率)水ガラス溶液(比率3.45)161gを滴加した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。改質した分散液を、凍結乾燥(5mbar、-84℃で18時間)及び噴霧乾燥もさせた。
【0069】
実施例1を以下の変法で繰り返した:
実施例2:比率3.45を有する5質量%水ガラス溶液の代わりに5質量%水ガラス溶液(比率1.0)315g
実施例3:CTABの代わりにポリエチレングリコール300 2.1g
実施例4:CTABの代わりにポリエチレングリコール6000 2.1g
実施例5:CTABの代わりにポリビニルピロリドン8000 2.1g
実施例6:pHを8~10に変動
結果は、実施例1の結果と同様であった。
【0070】
実施例8:分散液D2の改質
分散液D2 60g(純ポリマー30g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 150gで希釈し、そして60℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)2.5gを添加し、そしてさらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。1M硫酸溶液を絶えず滴加することにより分散液のpHを9に一定に維持しながら、5質量%水ガラス溶液(比率1.0)495gを滴加した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。改質した分散液を、凍結乾燥(5mbar、-84℃で18時間)及び噴霧乾燥もさせた。
【0071】
コア-シェル粒子の形成を、HAADF-STEM画像(高角環状暗視野)により確認した。実施例8の粒子を
図1において示す。
【0072】
人工細孔溶液(Ca
2+:10mmol/L、Na
+:98.5mmol/L、K
+:181.6mmol/L、SO
4
2-:86.2mmol/Lを含む、pH=13.1)中で実施例8の粒子の再分散性を15分後に試験し、そして再分散した粒子の粒径及びそれらの再分散性(PDI)を、Malvern Zetasizer Nano-ZSを用いて動的光散乱法(Z値)により決定し、表2において示した。1.5μm未満の粒径の存在は、一次ポリマー粒子を放出するため十分な再分散性を示す。レーザー回折解析データは、市販の粉末に対して比較可能な再分散性を示し、該データを表3において示す。
【表2】
【表3】
【0073】
再分散前及び再分散後の実施例8の粒子の画像を
図2及び
図3において示す。
図2は、噴霧乾燥後の易流動性粉末の形成を示し、粒子のポリマーコアを覆う密な連続シリカシェルの存在を示す。再分散後に、シェルを少なくとも部分的に破壊し、ポリマーコアを遊離して膜形成を可能にする(
図3を参照されたい)。
【0074】
実施例8を以下の変法で繰り返した:
実施例9:5質量%水ガラス溶液の量を160g~853.5gまで変動させた
実施例10:CTABの代わりにLupasol G100(ポリエチレンイミン;50.6質量%溶液)5g
実施例11:CTABの代わりにLuviquat Excellence(ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールとのコポリマー:40質量%溶液)6.25g
実施例12:CTABの代わりにPolyDADMAC(20質量%溶液)12.5g
実施例13:pHを8~10に変動。
【0075】
実施例14(比較例):フュームドシリカ粒子を使用した分散液D2の改質
分散液D2 6g(純ポリマー3g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 50gで希釈し、そして60℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)0.25gもしくは0.5gを添加し、又は媒介物なしで、さらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。フュームドシリカ(Sigma-Aldrich、d50 ~7nm;水ガラスの使用に対応する等量のSiO2沈降)1.86gを、一定のpH9で添加した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、粘着性の凝集した粉末を得た。その粉末は再分散を示さない。
【0076】
実施例15:分散液D3の改質
分散液D3 60g(純ポリマー32.88g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 150gで希釈し、そして60℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)2.5gを添加し、そしてさらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。1M硫酸溶液を滴加することによって一定のpH9で、5質量%水ガラス溶液(比率1.0)940gを滴加した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。改質した分散液を、凍結乾燥(5mbar、-84℃で18時間)及び噴霧乾燥もさせた。
【0077】
変法:
1質量%分散液D3 100g(純ポリマー1g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)した。室温で0.5M塩酸溶液を滴加することによって一定のpH8で、3.48質量%水ガラス溶液(比率3.45、固体含有率に関する)15gを滴加した。4時間後に、その固体を、飽和塩化ナトリウム水溶液200g中に注いだ。形成された沈殿物を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。
【0078】
コア-シェル粒子の形成を、HAADF-STEM画像(高角環状暗視野)により確認した。実施例15の粒子を
図4において示す。
【0079】
実施例15を以下の変法で繰り返した:
実施例16:5質量%水ガラス溶液の量を435g~1206gまで変動させた
実施例17:CTABの代わりにポリエチレングリコール300 2.5g
実施例18:CTABの代わりにポリエチレングリコール6000 2.5g
実施例19:CTABの代わりにポリエチレングリコール8000 2.5g
実施例20:Lupamin 4595(約95%まで加水分解させ、分子量約45000g/molを有するポリビニルアミドホモポリマーの29.18質量%水溶液)2.5g
実施例21:Lupamin 4570(約70%まで加水分解させ、分子量約45000g/molを有するポリビニルアミドホモポリマーの32.12質量%水溶液)2.5g
実施例22:Lupamin 1595(約95%まで加水分解させ、分子量約10000g/molを有するポリビニルアミドホモポリマーの30.75質量%水溶液)2.5g
実施例23:CTABの代わりにLuviquat Excellence(ビニルピロリドンと四級化ビニルイミダゾールとのコポリマー:40質量%溶液)6.25g
実施例24:CTABの代わりにPolyDADMAC(20質量%溶液)12.5g
実施例25: CTABの代わりにLupasol G100(50.6質量%溶液)5g
実施例26:pHを8~10に変動。
【0080】
実施例27:分散液D4の改質
分散液D4 60g(純ポリマー36.54g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 250gで希釈し、そして50℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)2.5gを添加し、そしてさらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。1M硫酸溶液を滴加することによって一定のpH9で、5質量%水ガラス溶液(比率1.0)1100gを滴加した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。改質した分散液を、凍結乾燥(5mbar、-84℃で18時間)もさせた。
【0081】
変法:
分散液D4 50g(純ポリマー30.45g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 150gで希釈し、そして50℃まで加熱した。pHを8.5に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。0.33M硫酸溶液を滴加することによって一定のpH8.5で、5質量%水ガラス溶液(比率1.0)461.5gを滴加した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。
【0082】
実施例27を以下の変法で繰り返した:
実施例28:5質量%水ガラス溶液の量を554g~1728gまで変動させた
実施例29:CTABの代わりにポリエチレングリコール20000 2.5g
実施例30:pHを8~9.5に変動。
【0083】
実施例31:分散液D5の改質
分散液D5 60g(純ポリマー30.30g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 250gで希釈し、そして60℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)5gを添加し、そしてさらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M水酸化ナトリウム溶液)。5質量%水ガラス溶液(比率1.0)488gを滴加し、そのpHを、1M硫酸溶液を滴加することによって一定のpH9で維持した。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、無色の粉末を得た。改質した分散液を、凍結乾燥(5mbar、-84℃で18時間)もさせた。
【0084】
実施例31を以下の変法で繰り返した:
実施例32:5質量%水ガラス溶液の量を488g~1600gまで変動させた
実施例33:pHを8~9.5に変動。
【0085】
実施例34(比較例):シリカゾルを使用した分散液D2の改質
分散液D2 6g(純ポリマー3g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 50gで希釈し、そして60℃まで加熱した。セチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)0.25gもしくは0.5gを添加し又は媒介物なしで、さらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M硫酸溶液)。Koestrosol 0515(~5nm、アニオン;Co. Chemiewerke Bad Koestritz)8.88g、Koestrosol 1030(~10nm、アニオン;Co. Chemiewerke Bad Koestritz)4.44g、又はKoestrosol K1530(~15nm、カチオン;Co. Chemiewerke Bad Koestritz)4.44g(水ガラスを使用する場合に等量のSiO2沈降)、1M硫酸溶液の添加によりpHを一定に維持することによる。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、粘着性の凝集した粉末を得た。得られた粉末は再分散を示さなかった。
【0086】
実施例35(比較例):シリカゾルを使用した分散液D3の改質
分散液D3 6g(純ポリマー3g)を、丸底フラスコ中で撹拌(500rpm)し、H2O 50gで希釈し、そして60℃まで加熱した。Luviquat Excellence(40質量%溶液)0.625gを添加し又は媒介物なしで、さらに10分間撹拌した。pHを9に調整した(1M硫酸溶液)。Koestrosol 1030(~10nm、アニオン;Co. Chemiewerke Bad Koestritz)4.44g、又はKoestrosol K1530(~15nm、カチオン;Co. Chemiewerke Bad Koestritz)4.44g(水ガラスを使用する場合に等量のSiO2沈降)、1M硫酸溶液の添加によりpHを一定に維持することによる。4時間後に、その固体を濾別し、周囲温度で乾燥させ、粘着性の凝集した粉末を得た。得られた粉末は再分散を示さなかった。
【0087】
実施例36:セメントタイル接着配合物での改質分散液D2の使用
実施例8のポリマー粉末を、タイル接着剤において適用試験をした。組成を表4において示す。
【表4】
【0088】
Milke Cem I 52.5は、Heidelberg Cement AG社製の市販のポルトランドセメントである。Juraperle Ulmerweiss MHMSは、Eduard Merkle GmbH & Co.KG.(Blaubeuren-Altental、Germany)社製の石灰岩(炭酸カルシウム)である。Cellulose ether MC30USは、セルロースエーテル(Samsung Fine Chemicals社製)であり、Starvis SE 45 Fは、BASF SE(Ludwigshafen、Germany)社製のレオロジー改質気泡安定剤であり、Starvis T 50 Fは、混合特性を改良するための増粘剤(BASF SE、Germany)である。
【0089】
分散剤の量を、合計でポリマー(シリカシェルの質量なし)含有率4%まで常にか焼した。液体分散液を使用した場合に、ポリマー(純ポリマーについてか焼した)20gを添加し、付加する水の量を、液体分散液中に存在する量だけ減少させる。
【0090】
硬化の28日後に、試験体の3点曲げ試験を実施した。ここで、2.27mm~2.33mmの3点曲げ強度(Zwick Roell 1120試験機を使用するDIN EN 12002)を、本発明のコア-シェル粒子を含む組成物を使用した場合に観察した。前記粒子を使用せずに同一条件を使用して調製した参照試料は、1.53mmの値を示す。
【0091】
実施例37:改質分散液D2の貯蔵安定性
D2の改質ポリマー粉末(実施例8)を、2つの顕微鏡ガラスシートの間にパックした。続いてこれらのスライドの上に1kgの重りを置き、全体のセットアップを60℃での乾燥炉に1週間置いた。最終的に粉末の品質を評価した。実施例8の改質粉末ポリマーは、外観において変化を示さなかった(
図5)。これは、本発明のポリマー粉末が高い貯蔵安定性を有すること(固化なし及び変色なし)を意味する。