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特許7090600移動体危険度評価装置,移動体監視システム及び移動体危険度評価処理プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】移動体危険度評価装置,移動体監視システム及び移動体危険度評価処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 21/22 20060101AFI20220617BHJP
   G08B 25/00 20060101ALI20220617BHJP
   G08B 21/12 20060101ALI20220617BHJP
   G01N 21/3504 20140101ALI20220617BHJP
   G01N 21/27 20060101ALI20220617BHJP
   G01J 5/48 20220101ALI20220617BHJP
【FI】
G08B21/22
G08B25/00 510M
G08B21/12
G01N21/3504
G01N21/27 A
G01J5/48 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019517510
(86)(22)【出願日】2018-04-09
(86)【国際出願番号】 JP2018014955
(87)【国際公開番号】W WO2018207527
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2021-03-12
(31)【優先権主張番号】P 2017093583
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003285
【氏名又は名称】千代田化工建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】特許業務法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森本 隆史
(72)【発明者】
【氏名】浅野 基広
(72)【発明者】
【氏名】都築 斉一
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕晶
(72)【発明者】
【氏名】日置 輝夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 任晃
(72)【発明者】
【氏名】土岐 明史
【審査官】白川 瑞樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-234061(JP,A)
【文献】特開2007-280265(JP,A)
【文献】特開2016-161397(JP,A)
【文献】特開2006-259951(JP,A)
【文献】特開2014-035739(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J5/00-5/90
G01M3/00-3/40
G01N21/00-21/01
21/17-21/61
G08B19/00-31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外波長領域で撮像され、撮像範囲内に存在するガスを撮像した画像情報を基に、前記撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する移動体検出部と、
前記画像情報と前記移動体検出部によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する危険度評価部と、
を有する移動体危険度評価装置。
【請求項2】
前記危険度評価部が、前記撮像範囲内に存在するガスの種類と予め指定された漏洩ガスの種類との関係に基づいて、前記移動体に対する危険度を評価する請求項記載の移動体危険度評価装置。
【請求項3】
前記危険度評価部が、前記移動体検出部によって検出された移動体の移動方向及び移動速度に基づいて、前記移動体に対する危険度を評価する請求項又は記載の移動体危険度評価装置。
【請求項4】
前記危険度評価部が、前記撮像範囲内に存在するガスの種類と予め指定された漏洩ガスの種類との関係、並びに前記移動体検出部によって検出された移動体の移動方向及び移動速度に基づいて、前記移動体に対する危険度を評価する請求項のいずれか1項に記載の移動体危険度評価装置。
【請求項5】
前記画像情報が、撮像装置によって撮影された2フレーム以上の移動体の映像データからなり、前記移動体検出部が、前記映像データを用いて前記移動体の移動方向を検出する請求項のいずれか1項に記載の移動体危険度評価装置。
【請求項6】
前記危険度評価部による評価結果から警報レベルを算出する警報レベル算出部を更に有する請求項1~のいずれか1項に記載の移動体危険度評価装置と、前記警報レベルに応じた警報を行う出力装置と、を備えた移動体監視システム。
【請求項7】
赤外波長領域で撮像され、撮像範囲内に存在するガスを撮像した画像情報を入力し、前記画像情報を基に前記撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する処理と、前記画像情報と前記処理によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する処理と、をコンピュータに実行させる移動体危険度評価処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体危険度評価装置移動体監視システム及び移動体危険度評価処理プログラムに関するものであり、例えば、赤外線撮像装置で得られた画像情報から移動体に対する漏洩ガスの危険度を評価する移動体危険度評価装置と、それを備えた移動体監視システムと、移動体危険度評価処理プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ガスプラント,石油化学プラント,火力発電所,製鉄関連施設等の構造物では、操業時に大量のガスが取り扱われている。このような施設においては、施設の経年劣化や運転ミスによるガス漏洩の危険性が認識されている。ガスは通常透明であり、無臭のものも多いため、近辺の作業者に気づかれないまま大規模な漏洩に発展する可能性がある。そこで、大量のガスが取り扱われている構造物には、大事故に至る前にガス漏洩を最小限にとどめるため、検知プローブを用いたガス検知装置が多数備え付けられている。
【0003】
検知プローブを用いたガス検知装置は、検知プローブにガス分子が接触することでプローブの電気的特性が変化することを利用して、ガスの存在を検知するものである。このため、ガスが漏洩しても、ガス分子が検知プローブに届かない限りガスを検知することはできない。ガス検知装置を施設内のいたるところに高密度に配置すれば、ガス漏洩が比較的小さい段階での検知が可能となる。しかし、設置コストや保守管理コストは高くなってしまう。さらに、ガスが風に流されたりした場合等には、多数配置されたガス検知装置が一斉に発報してしまい、その結果、ガス漏洩源の真の位置が分かりにくくなってしまう。また、ガス検知装置を低密度に配置した場合には、ガス漏洩規模が大きくなるまで検知できず、事故の危険性が高まってしまう。このため、近辺に存在する作業者や車両に対して、ガス漏洩による危険性を早く正確に知らせることは困難である。
【0004】
これに対し、ガスの存在を検知する別の手法として赤外線撮像装置を用いた方法が、特許文献1等で提案されている。その方法では、背景からの主に赤外領域の光放射(あらゆる物体から放射されている黒体放射と呼ばれるもの)と、ガスの赤外領域の光吸収特性と、を利用する。つまり、ガスの存在によって、その背景から撮像装置に入射する赤外線量が変化することを利用して、ガスを可視化して検知するのである。このガス検知技術によると、一台の検知装置で広範囲のガスを検知できるので、多数の検知装置がなくてもガス検知が可能であり、画像解析等の手法によってガス漏洩位置の特定も可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-30214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載されているように、ガスによる赤外線吸収を利用した撮像装置でガス漏れを2次元的に可視化すれば、人がその存在を知りえないガスの漏洩位置の撮像画面上での特定は可能となる。しかし、撮像画面上でのガス漏洩位置の特定結果をもとに作業者や車両に対して危険性を把握させ、警告や避難誘導を行おうとすると、監視人が撮像結果をずっと監視している必要がある。そのため、監視箇所が多数にわたる場合には監視人による判断が遅れ、事故の危険が高まるという課題がある。また、人や車両等の移動体は知らずにガス漏洩源に近づく方向に移動するおそれもあるため、移動体が置かれている環境の危険性の程度を速やかに知る必要がある。
【0007】
本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであって、その目的は、移動体が置かれている環境の危険度を評価することの可能な移動体危険度評価装置移動体監視システム及び移動体危険度評価処理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の移動体危険度評価装置は、赤外波長領域で撮像され、撮像範囲内に存在するガスを撮像した画像情報を基に、前記撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する移動体検出部と、
前記画像情報と前記移動体検出部によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する危険度評価部と、
を有することを特徴とする。
【0009】
本発明の移動体監視システムは、前記危険度評価部による評価結果から警報レベルを算出する警報レベル算出部を更に有する本発明の移動体危険度評価装置と、前記警報レベルに応じた警報を行う出力装置と、を備えたことを特徴とする。
本発明の移動体危険度評価処理プログラムは、赤外波長領域で撮像され、撮像範囲内に存在するガスを撮像した画像情報を入力し、前記画像情報を基に前記撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する処理と、前記画像情報と前記処理によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、人体にとって危険性のある非可視の状況を撮像した画像情報を基に、画像に写った人等の移動体を検出して、移動体に対する危険度を評価する構成になっているため、移動体が置かれている環境の危険度を評価することが可能である。したがって、危険度に基づいた処置を行うこと(例えば、ガス漏洩箇所近辺の作業者や車両に対して適切な避難誘導を行う等)により、人的被害を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】移動体危険度評価装置の第1の実施の形態を示すブロック図。
図2】移動体危険度評価装置の第2の実施の形態を示すブロック図。
図3】第1,第2の実施の形態への画像情報を形成する画像情報形成装置の構成例を示すブロック図。
図4】通常時とガス漏洩時の撮像画面を示す模式図。
図5】第1の実施の形態による全体処理を示すフローチャート。
図6】第2の実施の形態による全体処理を示すフローチャート。
図7】移動体の移動方向及び移動速度の検出を説明するための撮像画面を示す模式図。
図8】危険度評価値算出処理(図5図6の#30)の第1の工程例を示すフローチャート。
図9】危険度評価値算出処理(図5図6の#30)の第2の工程例を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施した移動体危険度評価装置,移動体監視システム等を、図面を参照しつつ説明する。なお、各実施の形態等の相互で同一の部分や相当する部分には同一の符号を付して重複説明を適宜省略する。
【0013】
図1図2に、第1,第2の実施の形態に係る移動体危険度評価装置10A,10Bの概略構成を示す。移動体危険度評価装置10A,10Bは、移動体検出部1及び危険度評価部2を、機能ブロックとして有している。移動体検出部1は、可視領域とは異なる波長域で撮像された画像情報を入力とし、その画像情報を基に撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する。危険度評価部2は、前記画像情報と移動体検出部1によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する。また、移動体危険度評価装置10Bは、警報レベル算出部3及び出力情報生成部4を、機能ブロックとして更に有しており、移動体危険度評価装置10B,画像情報形成装置12及び出力装置14で移動体監視システム20を構成している。
【0014】
移動体危険度評価装置10A,10Bは、パーソナルコンピュータ,携帯機器(スマートフォン,タブレット端末等)等のデジタル機器において、CPU(Central Processing Unit),RAM(Random Access Memory),ROM(Read Only Memory),HDD(Hard Disk Drive)等によって構成されており、可視領域とは異なる波長域で撮像された画像情報を入力とし、危険度評価値を出力とする。移動体検出部1は電子計算機と画像処理ソフトウェアで構成されており、危険度評価部2は電子計算機と信号処理ソフトウェアから構成されている。つまり、HDDに格納されている移動体危険度評価処理プログラムをCPUが読み出し、RAMに展開して実行することによって、上記機能ブロックが実現される。
【0015】
図3に、移動体危険度評価装置10A,10Bへの画像情報(入力信号)を形成する画像情報形成装置12の構成例を示す。画像情報形成装置12は、図3(A)に示すように、可視領域とは異なる波長域で観察対象物を撮像する撮像装置6と、撮像装置6から出力された動画データを取り込む画像取込部7と、画像取込部7から出力された映像データに画像処理を施す画像処理部8と、を有している。図3(B)は、画像処理部8で実施される処理の例を示している。画像処理部8では、処理8aとして、画素特性バラツキの補正(ゲイン補正,オフセット補正等)が必要に応じて行われ、その後、処理8bとして、ノイズ低減化処理が必要に応じて行われる。
【0016】
可視領域とは異なる波長域としては、赤外領域が好ましい。つまり、移動体検出部1に入力する画像情報は、赤外波長領域で撮像された画像情報であることが好ましい。温度が絶対温度0℃以上の物体はその温度に応じた波長分布,強度分布を持つ電磁波を発生しており、この光は黒体放射光と呼ばれる。温度が常温近辺であれば、電磁波の波長は主に赤外線領域となるので、赤外領域を撮像することで対象物の温度を知ることが可能となる。またガスが存在すると、その光吸収特性に応じて背景から発せされる黒体放射光の一部を吸収し、またガス自身の温度に応じた黒体放射光を発光する。ガスが存在しない場合の背景の黒体放射光との変化量を画像としてとらえることで、ガスの空間分布を撮像することができる。したがって、移動体検出部1に入力する画像情報は、撮像範囲内に存在するガスの空間分布を撮像した画像情報であることが好ましい。
【0017】
図4に、ガス漏洩が無い時(通常時)とガス漏洩時の撮像画面Ioを模式的に示す。図4(A)は漏洩ガスGSが空間に存在しない場合の撮像画面Ioであり、図4(B)は漏洩ガスGSが空間に存在する場合の撮像画面Ioである。図4(A),(B)の撮像画面Ioには構造物STと移動体OB(人等)が撮像されており、図4(B)の撮像画面Ioには更に漏洩ガスGSの空間分布が撮像されている。この漏洩ガスGSの画像の時間的・空間的変化を画像処理することによって、ガス漏洩源であるガス漏洩地点Ip(黒丸印)を検知することが可能となる。
【0018】
撮像装置6(例えば赤外線撮像装置)は、通常の可視像撮像装置のように、撮像レンズ,2次元エリアセンサー,制御回路等からなっており、入射した光を電気信号に変換して出力する。可視像撮像装置との違いは対象とする光の波長であり、検知対象とするガスが吸収する波長帯を含むような波長を対象とする。好ましい対象波長は1~14μmの赤外領域であり、さらに好ましい対象波長は1~5μmの赤外領域である。これらの波長帯には多くの炭化水素系ガスが吸収を持つため、ガスプラント,石油化学プラント,火力発電所,製鉄関連施設等の構造物が利用しているガスの多くに対応することができる。
【0019】
上記波長帯に対応するため、撮像レンズのレンズ材料としては、Si,Ge,カルコゲナイド,サファイヤ,ZnS,ZnSe等の赤外線透過材料が用いられ、フレネル反射による光損失を防ぐため、適切な表面コーティングがレンズ面に施される。2次元エリアセンサーとしては、いわゆる冷却型センサーや非冷却型センサーが用いられる。冷却型センサーは、InSb,MCT等の半導体材料を用いたものであり、センサーチップ自身の熱に起因する光放射の混入を防ぐためにセンサーを冷却する構成になっている。非冷却型センサーは、VO2,a-Si等の熱抵抗変換材料を用いたものである。
【0020】
図5図6のフローチャートに、移動体危険度評価装置10A,10Bによる処理工程全体の概略を示す。移動体危険度評価装置10A,10Bは、可視領域とは異なる波長域で撮像された画像情報が画像情報形成装置12から入力されると(#10)、その画像情報を基にして、画像に写っている移動体OBを移動体検出部1によって検出し(#20)、次に危険度評価部2による評価結果として、移動体OBに対する危険度評価値を算出する(#30)。移動体危険度評価装置10Bでは(図6)、さらに危険度評価値から警報レベルの算出が警報レベル算出部3で行われる(#40)。
【0021】
移動体危険度評価装置10Bにおいて(図6)、ステップ#40で算出された警報レベルは出力情報生成部4(図2)に入力され、警報レベルに基づいた出力情報が出力装置14に出力される。出力装置14は、出力情報生成部4からの出力情報に基づいて、警報レベルに応じた警報発報を行う(#50)。出力装置14は、ガス漏れが発生した場合にガス漏洩地点Ip等の情報表示,ガス漏れ報知等を行うデジタル機器に相当する。例えば、中央監視室における制御端末装置,パーソナルコンピュータ(据え置き型,可搬型等),携帯端末(スマートフォン,タッチパッド等)が挙げられる。
【0022】
次に、図7の撮像画面Ioを参照しつつ、移動体OBの移動方向及び移動速度の検出を説明する。移動体検出部1に入力する画像情報は、撮像装置6によって撮影された2フレーム以上の移動体OBの映像データからなり、移動体検出部1が、前記映像データを用いて移動体OBの移動方向を検出することが好ましい。その際、移動体OBの検知は、2フレーム又はそれ以上の複数フレームを用いて、変化のある画素を抽出することにより行われる。
【0023】
図7(A)~(C)は、移動体検出部1による2フレームを用いた移動体検知の方法の一例を示している。図7(A)の撮像画面Ioは時刻T0における画像情報であり、図7(B)の撮像画面Ioは時刻T0とは異なる時刻T1における画像情報である。この両者を比較することで、図7(C)に示すように画像情報上変化したところ、すなわち移動体OBを検知することができる。検知した移動体OBの移動方向,移動速度等の情報は、撮像画面Ioに表示してもよい。例えば、図7(C)では、白矢印の向きで移動体OBの移動方向を示しており、白矢印の大きさで移動体OBの移動速度を示している。
【0024】
図7(A),(B)は2つの時刻T0,T1を用いた例であるが、2つの時刻に限らず複数の時刻における画像を比較することで移動体OBの移動方向及び移動速度を検知することができる。それには、例えばオプティカルフロー法を用いることができる。オプティカルフロー法とは、時刻の異なる画像の間での各画素の移動の様子を、各画素の画素値の変動の様子から推測する方法であり、Lucas-Kanade法が代表的な方法として知られている。
【0025】
図8図9のフローチャートに、危険度評価値算出処理(図5図6の#30)の第1,第2の工程例をそれぞれ示す。第1の工程例(図8)では、移動体危険度評価装置10A,10Bに入力される画像情報が漏洩ガスGSの空間分布を撮像した画像(ガス分布画像)である場合の危険度評価値算出処理を示している。第2の工程例(図9)では、移動体危険度評価装置10A,10Bに入力される画像情報が温度分布を撮像した画像(温度分布画像)である場合の危険度評価値算出処理を示している。
【0026】
第1の工程例(図8)では、入力される画像情報からガス漏洩の有無を判定する(#32)。ステップ#32の判定でガス漏洩が検知されなければ、危険度評価値を0とする(#36)。ステップ#32の判定でガス漏洩が検知されれば、漏洩ガス状況を取得し(#34)、すでに検知された移動体検出結果と漏洩ガス状況から移動体OBに対する危険度評価値を算出する(#38)。例えば、撮像範囲内に存在するガスGSの種類と予め指定された漏洩ガスの種類との関係や移動体検出部1で検出された移動体OBの移動方向及び移動速度に基づいて、移動体OBに対する危険度評価値が算出される。
【0027】
漏洩ガス状況とは、例えば、ガス漏洩地点,漏洩ガスの種類,漏洩規模(画像として写っているガス画像から算出されるガスの総体積、あるいは総体積の単位時間当たりの変化),ガスの進行方向等が挙げられる。ガス漏洩地点には、現にガスが漏洩している地点だけでなく、移動体の接近時にガスが拡散していると予測される地点を含めるのが好ましい。ガスの種類ごとに爆発下限界濃度(この濃度以上になったときに着火源があると爆発する濃度)が求められているので、漏洩規模から求めたガス濃度と爆発下限界濃度を比較し、さらには移動体がガス漏洩地点に近づいているのかどうかも加味して危険度評価値を算出する。
【0028】
第2の工程例(図9)では、入力される画像情報から温度分布情報を抽出し、人が接触すると危険な温度にある箇所の有無を判定する($32)。ステップ$32の判定で人が接触すると危険な温度にある箇所が検知されなければ、危険度評価値を0とする($36)。ステップ$32の判定で接触すると危険な温度にある箇所が検知されれば、温度分布とすでに検知された移動体検出結果を基に危険度評価値を算出する($34)。
【0029】
危険度評価値の算出法としては、例えば、
・移動体OBの移動ベクトルを基に移動体OBが危険性のある箇所(入力された画像が漏洩ガスGSの空間分布を撮像した画像であればガス、入力された画像が温度分布を撮像した画像であれば、接触すると危険な温度を示す部分)に近づいているか遠ざかっているかを判定し、近づいている場合には評価値を上げる算出法、
・入力された画像が漏洩ガスGSの空間分布を撮像した画像であれば、漏洩ガスGSの進行方向が移動体OBに近づいている場合も評価値を上げる算出法、
・入力された画像が漏洩ガスGSの空間分布を撮像した画像であれば、ガス漏洩規模と漏洩ガスGSの種類から爆発下限界を考慮して爆発危険性を計算し、計算値に応じて評価値を決める算出法、
が挙げられる。
【0030】
警報レベル算出(図2図6の#40)は、危険度評価値に基づいて算出される。入力された画像が漏洩ガスGSの空間分布を撮像した画像である場合、例えば、人的被害が予想される場合(漏洩ガスGSの規模が大きく、移動体OBが漏洩ガスGSに近づいている等)に対応する危険度評価値に対しては「最高レベル」とし、人的被害がすぐには出ないと予想される場合(漏洩ガスGSは検知されたが、爆発下限界には程遠い等)に対応する危険度評価値に対しては「注意レベル」とする、というように、あらかじめ対応付けを決めておく。また、入力された画像が温度分布を撮像した画像である場合、例えば、緊急性が高い場合(温度が非常に高温又は低温な部分に移動体OBが高速で近づく等)に対応する危険度評価値に対しては「最高レベル」とし、移動体OBの速度が遅くゆっくり近づく場合に対応する危険度評価値に対しては「注意レベル」とする、というように、あらかじめ対応付けを決めておく。また、移動体OBが低速な場合は移動体は人であるので危険度評価値を高くし、移動体OBが高速な場合は移動体は車両であるので危険度評価値を低くしてもよい。また、画像から移動体OBの形状や大きさを解析することにより、移動体OBが人か車両かを区別するようにしても良い。
【0031】
警報を発報する際には(図2図6の#50)、算出された警報レベルに合わせた警報を発生する。例えば、施設内全域に警報を発生する方法、ガス漏洩箇所近辺に局所的に警報を発生する方法等が挙げられる。
【0032】
以上の説明から分かるように、上述した各実施の形態には以下の特徴的な構成(C1)~(C10)等が含まれている。
【0033】
(C1):可視領域とは異なる波長域で撮像された画像情報を基に撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する移動体検出部と、
前記画像情報と前記移動体検出部によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する危険度評価部と、
を有することを特徴とする移動体危険度評価装置。
【0034】
(C2):可視領域とは異なる波長域の画像情報を撮像により形成する画像情報形成装置と、前記画像情報形成装置で得られた画像情報から移動体に対する危険度を評価する移動体危険度評価装置と、を備えた移動体監視システムであって、
前記移動体危険度評価装置が、前記画像情報を基に撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する移動体検出部と、前記画像情報と前記移動体検出部によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する危険度評価部と、を有することを特徴とする移動体監視システム。
【0035】
(C3):可視領域とは異なる波長域で撮像された画像情報を入力し、前記画像情報を基に撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出し、前記画像情報と前記移動体検出部によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価することを特徴とする移動体危険度評価方法。
【0036】
(C4):可視領域とは異なる波長域で撮像された画像情報を入力し、前記画像情報を基に撮像範囲内にある移動体の存在又は移動を検出する処理と、前記画像情報と前記移動体検出部によって得られた移動体検出結果から、検出された移動体に対する危険度を評価する処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする移動体危険度評価処理プログラム。
【0037】
(C5):上記構成(C1)~(C4)のいずれか1つにおける画像情報が、赤外波長領域で撮像された画像情報である構成。
【0038】
(C6):上記構成(C1)~(C5)のいずれか1つにおける画像情報が、撮像範囲内に存在するガスの空間分布を撮像した画像情報である構成。
【0039】
(C7):上記構成(C6)における危険度評価部が、前記撮像範囲内に存在するガスの種類と予め指定された漏洩ガスの種類との関係に基づいて、前記移動体に対する危険度を評価する構成。
【0040】
(C8):上記構成(C6)又は(C7)における危険度評価部が、前記移動体検出部によって検出された移動体の移動方向及び移動速度に基づいて、前記移動体に対する危険度を評価する構成。
【0041】
(C9):上記構成(C8)における画像情報が、撮像装置によって撮影された2フレーム以上の移動体の映像データからなり、前記移動体検出部が、前記映像データを用いて前記移動体の移動方向を検出する構成。
【0042】
(C10):上記構成(C2)において、前記移動体危険度評価装置が、前記危険度評価部による評価結果から警報レベルを算出する警報レベル算出部を更に有し、前記移動体監視システムが、前記警報レベルに応じた警報を行う出力装置を更に備えた構成。
【0043】
上述した各実施の形態から分かるように、移動体危険度評価装置の実施の形態によれば、人体にとって危険性のある非可視の状況を撮像した画像情報を基に、画像に写った人等の移動体を検出して、移動体に対する危険度を評価する構成になっているため、移動体が置かれている環境の危険度を評価することが可能である。したがって、危険度に基づいた処置を行うこと(例えば、ガス漏洩箇所近辺の作業者や車両に対して適切な避難誘導を行う等)により、人的被害を低減することができる。これは上記移動体監視システム,移動体危険度評価方法又は移動体危険度評価処理プログラムを用いた場合でも同様である。
【符号の説明】
【0044】
1 移動体検出部
2 危険度評価部
3 警報レベル算出部
4 出力情報生成部
6 撮像装置
7 画像取込部
8 画像処理部
10A,10B 移動体危険度評価装置
12 画像情報形成装置
14 出力装置
20 移動体監視システム
Ip ガス漏洩地点
Io 撮像画面
GS 漏洩ガス
OB 移動体
ST 構造物
図1
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図9