(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】処理液、キット、基板の洗浄方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20220617BHJP
C11D 7/32 20060101ALI20220617BHJP
C11D 7/50 20060101ALI20220617BHJP
C11D 17/08 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
C11D7/32
C11D7/50
C11D17/08
(21)【出願番号】P 2019539155
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2018030101
(87)【国際公開番号】W WO2019044463
(87)【国際公開日】2019-03-07
【審査請求日】2020-01-07
(31)【優先権主張番号】P 2017167730
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018055933
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】高橋 智威
(72)【発明者】
【氏名】上村 哲也
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-165561(JP,A)
【文献】国際公開第2017/099211(WO,A1)
【文献】特開2017-157798(JP,A)
【文献】国際公開第2016/076033(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
C11D 7/32
C11D 7/50
C11D 17/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、
コバルトイオン又はポリアミノポリカルボン酸とを含
み、
前記含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、処理液。
【化1】
一般式(I)中、R
11
及びR
12
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
11
及びR
12
は、互いに結合して環を形成してもよい。
【化2】
一般式(II)中、R
21
及びR
22
は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21
が水素原子である場合、R
22
は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
21
が水素原子であり、R
22
が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11
及びR
12
が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
22
と前記置換基とは異なる基を表す。
【化3】
一般式(III)中、R
31
及びR
32
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
31
が水素原子である場合、R
32
は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
31
が水素原子であり、R
32
が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11
及びR
12
が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
32
と前記置換基とは異なる基を表す。
【化4】
一般式(IV)中、R
41
は、水素原子を表す。R
42
は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【化5】
一般式(IV)中、R
51
及びR
52
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R
51
及びR
52
の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【請求項2】
半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、を含み、
pHが、11超13以下であ
り、
前記含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、処理液。
【化6】
一般式(I)中、R
11
及びR
12
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
11
及びR
12
は、互いに結合して環を形成してもよい。
【化7】
一般式(II)中、R
21
及びR
22
は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21
が水素原子である場合、R
22
は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
21
が水素原子であり、R
22
が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11
及びR
12
が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
22
と前記置換基とは異なる基を表す。
【化8】
一般式(III)中、R
31
及びR
32
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
31
が水素原子である場合、R
32
は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
31
が水素原子であり、R
32
が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11
及びR
12
が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
32
と前記置換基とは異なる基を表す。
【化9】
一般式(IV)中、R
41
は、水素原子を表す。R
42
は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【化10】
一般式(IV)中、R
51
及びR
52
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R
51
及びR
52
の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【請求項3】
半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する前記含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比は、2~30000である、処理液。
【化11】
一般式(I)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
11及びR
12は、互いに結合して環を形成してもよい。
【化12】
一般式(II)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21が水素原子である場合、R
22は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
21が水素原子であり、R
22が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
22と前記置換基とは異なる基を表す。
【化13】
一般式(III)中、R
31及びR
32は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
31が水素原子である場合、R
32は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
31が水素原子であり、R
32が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
32と前記置換基とは異なる基を表す。
【化14】
一般式(IV)中、R
41は、水素原子を表す。R
42は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【化15】
一般式(IV)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R
51及びR
52の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【請求項4】
半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)が、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる2種の化合物を含み、
前記2種の化合物の質量比が1~10000である、処理液。
【化16】
一般式(I)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
11及びR
12は、互いに結合して環を形成してもよい。
【化17】
一般式(II)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21が水素原子である場合、R
22は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
21が水素原子であり、R
22が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
22と前記置換基とは異なる基を表す。
【化18】
一般式(III)中、R
31及びR
32は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
31が水素原子である場合、R
32は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
31が水素原子であり、R
32が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
32と前記置換基とは異なる基を表す。
【化19】
一般式(IV)中、R
41は、水素原子を表す。R
42は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【化20】
一般式(IV)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R
51及びR
52の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【請求項5】
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量は、前記処理液の全質量に対して、0.01~10000質量ppmである、請求項
1~
4のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項6】
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する前記含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比が、100~15000である、請求項
1~
5のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項7】
更に、フッ酸、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる1種以上の含フッ素化合物を含む、請求項1~
6のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項8】
更に、コバルトイオンを含む、請求項
7に記載の処理液。
【請求項9】
前記コバルトイオンが、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンである、請求項
8に記載の処理液。
【請求項10】
前記コバルトイオンに対する前記含フッ素化合物の質量含有比が、1.0×10
5~1.0×10
8である、請求項
8又は
9に記載の処理液。
【請求項11】
半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、
コバルトイオンと、
含フッ素化合物と、を含
み、
前記コバルトイオンに対する前記含フッ素化合物の質量含有比が、4.0×10
6
~5.0×10
7
である、処理液。
【請求項12】
前記コバルトイオンが、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンである、請求項1
1に記載の処理液。
【請求項13】
前記含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1
1又は1
2に記載の処理液。
【化21】
一般式(I)中、R
11及びR
12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
11及びR
12は、互いに結合して環を形成してもよい。
【化22】
一般式(II)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21が水素原子である場合、R
22は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
21が水素原子であり、R
22が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
22と前記置換基とは異なる基を表す。
【化23】
一般式(III)中、R
31及びR
32は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
31が水素原子である場合、R
32は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
31が水素原子であり、R
32が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
32と前記置換基とは異なる基を表す。
【化24】
一般式(IV)中、R
41は、水素原子を表す。R
42は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【化25】
一般式(IV)中、R
51及びR
52は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R
51及びR
52の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【請求項14】
前記コバルトイオンに対する前記含窒素芳香族複素環化合物(B)の質量含有比は、1.0×10
2~1.0×10
6である、請求項1
3に記載の処理液。
【請求項15】
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する前記含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比が、100~15000である、請求項1
3又は1
4に記載の処理液。
【請求項16】
半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、
塩基性化合物と、を含
み、
前記塩基性化合物が、第2級アミンを含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
前記含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種であり、
前記第2級アミンの質量に対する、前記含窒素芳香族複素環化合物(B)の質量の比が、1~10000である、処理液。
【化26】
一般式(I)中、R
11
及びR
12
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
11
及びR
12
は、互いに結合して環を形成してもよい。
【化27】
一般式(II)中、R
21
及びR
22
は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21
が水素原子である場合、R
22
は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
21
が水素原子であり、R
22
が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11
及びR
12
が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
22
と前記置換基とは異なる基を表す。
【化28】
一般式(III)中、R
31
及びR
32
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
31
が水素原子である場合、R
32
は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。R
31
が水素原子であり、R
32
が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、前記一般式(I)中のR
11
及びR
12
が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、前記ベンゼン環が置換基を有するときは、R
32
と前記置換基とは異なる基を表す。
【化29】
一般式(IV)中、R
41
は、水素原子を表す。R
42
は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【化30】
一般式(IV)中、R
51
及びR
52
は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R
51
及びR
52
の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
【請求項17】
前記塩基性化合物が、含窒素脂環化合物を含む、請求項1
6に記載の処理液。
【請求項18】
前記第2級アミンの含有量が、前記処理液の全質量に対して、300質量ppb~3000質量ppmである、請求項
16又は17に記載の処理液。
【請求項19】
前記含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する前記含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比が、100~15000である、請求項
16~18のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項20】
更に、コバルトイオンを含む、請求項1
6~
19のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項21】
前記コバルトイオンが、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンである、請求項2
0に記載の処理液。
【請求項22】
前記コバルトイオンに対する前記塩基性化合物の質量含有比は、1.0×10
5~1.0×10
9である、請求項2
0又は2
1に記載の処理液。
【請求項23】
前記有機溶剤が、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、及びスルホキシド系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1~2
2のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項24】
エッチング残渣物を除去するための洗浄液、パターン形成に用いられたレジスト膜を除去するための溶液、化学機械研磨後の基板から残渣物を除去するための洗浄液、又はエッチング液として用いられる、請求項1~2
3のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項25】
前記水の含有量が、前記処理液の全質量に対して、10~97質量%であり、
前記有機溶剤の含有量が、前記処理液の全質量に対して、1~85質量%であり、
前記含窒素芳香族複素環化合物の含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.05~5質量%であり、
前記コバルトイオンの含有量が、前記処理液の全質量に対して、0.001~10質量ppbである、請求項
8~1
5、および、2
0~2
2のいずれか1項に記載の処理液。
【請求項26】
請求項1~2
5のいずれか1項に記載の処理液と、水、イソプロパノールアミン、又はアンモニアを含む希釈液からなる群より選ばれる溶剤と、を有するキット。
【請求項27】
請求項1~2
5のいずれか1項に記載の処理液を用いて、Co、W、及びCuからなる群より選ばれるいずれか1種以上を含む金属層を備えた基板を洗浄する、洗浄工程を含む、基板の洗浄方法。
【請求項28】
前記基板が、更に、Cu、Co、Co合金、W、W合金、Ru、Ru合金、Ta、Ta合金、AlOx、AlN、AlOxNy、TiAl、Ti、TiN、TiOx、ZrOx、HfOx、TaOx、LaOx、及びYSiOxからなる群より選ばれる成分を少なくとも1種以上含むメタルハードマスクを備える、請求項
27に記載の基板の洗浄方法。
なお、x=1~3、y=1~2で表される数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理液、キット、及び基板の洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CCD(Charge-Coupled Device)、及びメモリー等の半導体デバイスは、フォトリソグラフィー技術を用いて、基板上に微細な電子回路パターンを形成して製造される。半導体デバイスは、例えば、基板上に、配線材料となる金属層、エッチング停止膜、及び層間絶縁膜を有する積層体を配置し、この積層体上にレジスト膜を形成して、フォトリソグラフィー工程及びドライエッチング工程(例えば、プラズマエッチング処理)を実施することにより製造される。
具体的には、フォトリソグラフィー工程では、得られたレジスト膜をマスクとして、ドライエッチング処理により基板上の金属層及び/又は層間絶縁膜がエッチングされる。
この際には、金属層及び/又は層間絶縁膜等に由来する残渣物が基板、金属層及び/又は層間絶縁膜に付着することがある。この付着した残渣物を除去するために、通常、処理液を用いた洗浄が行われることが多い。
また、エッチング時にマスクとして用いられたレジスト膜は、その後、アッシング(灰化)による乾式の方法(ドライアッシング)、又は、湿式の方法等によって積層体から除去される。ドライアッシング方法を用いてレジストが除去された積層体には、レジスト膜等に由来する残渣物が付着することがある。この付着した残渣物を除去するために、通常、処理液を用いた洗浄が行われることが多い。
【0003】
一方、レジスト膜を除去するための湿式の方法としては、処理液を用いてレジスト膜を除去する態様が挙げられる。
上記のとおり、処理液は半導体デバイス製造工程において、残渣物(エッチング残渣及びアッシング残渣)、及び/又はレジスト膜の除去等に用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1では、防食剤として5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(5MBTA)を含む洗浄組成物を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特許文献1に記載された洗浄組成物(処理液)について検討したところ、上記処理液は、配線材料及びプラグ材料等となる金属層(例えば、Coを含む金属層、Wを含む金属層、及びCuを含む金属層等)を腐食する場合があることを確認した。つまり、処理液について、処理対象物に対する防食性を更に改善する余地があることを明らかとした。
【0007】
更に、処理液には、残渣物除去性の向上が絶えず求められている。
また、昨今の配線の微細化に伴い、基板上に付着した粒子状の欠陥(異物)のより一層の低減が求められている。つまり、処理液には、欠陥抑制性が求められている。
【0008】
そこで、本発明は、半導体デバイス用の処理液であって、処理対象物に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性に優れる処理液を提供することを課題とする。
また、本発明は、キット、及び上記処理液を用いた基板の洗浄方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、処理液が2種以上の含窒素芳香族複素環化合物を含む(好ましくは、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含む)ことにより上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、以下の構成により上記目的を達成できることを見出した。
【0010】
(1) 半導体デバイス用の処理液であって、
水と、
有機溶剤と、
2種以上の含窒素芳香族複素環化合物と、を含む、処理液。
(2) 含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)及び含窒素芳香族複素環化合物(B)を含み、
含窒素芳香族複素環化合物(A)は、後述する一般式(I)で表される化合物又は後述する一般式(IV)で表される化合物であり、
含窒素芳香族複素環化合物(B)は、後述する一般式(II)で表される化合物、後述する一般式(III)で表される化合物、及び、後述する一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)に記載の処理液。
(3) 含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比は、2~30000である、(2)に記載の処理液。
(4) 含窒素芳香族複素環化合物(B)が、一般式(II)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物、及び、一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる2種の化合物を含み、
2種の化合物の質量比が1~10000である、(2)または(3)に記載の処理液。(5) 含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~10000質量ppmである、(2)~(4)のいずれかに記載の処理液。
(6) 更に、コバルトイオンを含む、(1)~(5)のいずれかに記載の処理液。
(7) コバルトイオンが、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンである、(6)に記載の処理液。
(8) コバルトイオンに対する含窒素芳香族複素環化合物(B)の質量含有比は、1.0×102~1.0×106である、(6)又は(7)に記載の処理液。
(9) 更に、フッ酸、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる1種以上の含フッ素化合物を含む、(1)~(5)のいずれかに記載の処理液。
(10) 更に、コバルトイオンを含む、(9)に記載の処理液。
(11) コバルトイオンが、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンである、(10)に記載の処理液。
(12) コバルトイオンに対する含フッ素化合物の質量含有比が、1.0×105~1.0×108である、(10)又は(11)に記載の処理液。
(13) 更に、塩基性化合物を含む、(1)~(5)および(9)のいずれかに記載の処理液。
(14) 塩基性化合物が、含窒素脂環化合物を含む、(13)に記載の処理液。
(15) 塩基性化合物が、第2級アミンを含む、(13)又は(14)に記載の処理液。
(16) 第2級アミンの含有量が、処理液の全質量に対して、300質量ppb~3000質量ppmである、(15)に記載の処理液。
(17) 2級アミンの質量に対する、含窒素芳香族複素環化合物(B)の質量の比が、1~10000である、(15)又は(16)に記載の処理液。
(18) 更に、コバルトイオンを含む、(13)~(17)のいずれかに記載の処理液。
(19) コバルトイオンが、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンである、(18)に記載の処理液。
(20) コバルトイオンに対する塩基性化合物の質量含有比は、1.0×105~1.0×109である、(18)又は(19)に記載の処理液。
(21) 有機溶剤が、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、及びスルホキシド系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である、(1)~(20)のいずれかに記載の処理液。
(22) エッチング残渣物を除去するための洗浄液、パターン形成に用いられたレジスト膜を除去するための溶液、化学機械研磨後の基板から残渣物を除去するための洗浄液、又はエッチング液として用いられる、(1)~(21)のいずれかに記載の処理液。
(23) 水の含有量が、処理液の全質量に対して、10~97質量%であり、
有機溶剤の含有量が、処理液の全質量に対して、1~85質量%であり、
含窒素芳香族複素環化合物の含有量が、処理液の全質量に対して、0.05~5質量%であり、
コバルトイオンの含有量が、処理液の全質量に対して、0.001~10質量ppbである、(6)~(8)、(10)~(12)、および、(18)~(20)のいずれかに記載の処理液。
(24) (1)~(23)のいずれかに記載の処理液と、水、イソプロパノールアミン、又はアンモニアを含む希釈液からなる群より選ばれる溶剤と、を有するキット。
(25) (1)~(23)のいずれかに記載の処理液を用いて、Co、W、及びCuからなる群より選ばれるいずれか1種以上を含む金属層を備えた基板を洗浄する、洗浄工程を含む、基板の洗浄方法。
(26) 基板が、更に、Cu、Co、Co合金、W、W合金、Ru、Ru合金、Ta、Ta合金、AlOx、AlN、AlOxNy、TiAl、Ti、TiN、TiOx、ZrOx、HfOx、TaOx、LaOx、及びYSiOxからなる群より選ばれる成分を少なくとも1種以上含むメタルハードマスクを備える、(25)に記載の基板の洗浄方法。
なお、x=1~3、y=1~2で表される数である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、半導体デバイス用の処理液であって、処理対象物に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性に優れる処理液を提供できる。
また、本発明は、キット、及び上記処理液を用いた基板の洗浄方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施態様に係る基板の洗浄方法に適用できる積層体(金属層及び層間絶縁膜を備えた基板)の一例を示す断面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様に制限されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本発明において「準備」というときには、特定の材料を合成ないし調合等して備えることのほか、購入等により所定の物を調達することを含む意味である。
また、本発明において、「ppm」は「parts-per-million(10-6)」を意味し、「ppb」は「parts-per-billion(10-9)」を意味し、「ppt」は「parts-per-trillion(10-12)」を意味する。
また、本発明において、1Å(オングストローム)は、0.1nmに相当する。
また、本発明における基(原子群)の表記において、置換及び無置換を記していない表記は、本発明の効果を損ねない範囲で、置換基を有さないものと共に置換基を有するものをも包含するものである。例えば、「炭化水素基」とは、置換基を有さない炭化水素基(無置換炭化水素基)のみならず、置換基を有する炭化水素基(置換炭化水素基)をも包含するものである。このことは、各化合物についても同義である。
また、本発明における「放射線」とは、例えば、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、極紫外線(EUV光)、X線、又は、電子線等を意味する。また、本発明において「光」とは、活性光線又は放射線を意味する。本発明における「露光」とは、特に断らない限り、水銀灯の輝線スペクトル、エキシマレーザーに代表される遠紫外線、X線又はEUV光等による露光のみならず、電子線又はイオンビーム等の粒子線による描画も含まれる。
【0014】
[処理液]
本発明の処理液の特徴点としては、2種以上の含窒素芳香族複素環化合物を含む点が挙げられる。含窒素芳香族複素環化合物は、窒素原子を介して、配線材料及びプラグ材料等となる金属層の表面に配位して、金属層の表面に緻密な有機膜を形成する。このとき、含窒素芳香族複素環化合物が2種以上存在することで、金属層の表面に形成される有機膜がより緻密になると推測される。この結果として、金属層は、有機膜により保護されることによって、処理液に腐食されにくくなる。
特に、処理液が、含窒素芳香族複素環化合物として、後述する含窒素芳香族複素環化合物(A)及び後述する含窒素芳香族複素環化合物(B)を含む場合、金属層の表面に形成される有機膜はより疎水的となる。この結果として、処理液の金属層に対する防食性がより優れる。つまり、金属層からの金属の溶出が抑制され、結果として、金属層に対する防食性がより優れるものと考えられる。
また、処理液は、水と有機溶剤とを含むことにより、残渣物除去性及び欠陥除去性にも優れることも確認している。
本発明の処理液は、上記作用効果が相乗することにより、処理対象物に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性に優れる。
【0015】
〔水〕
本発明の処理液は、水を含む。
水の含有量は、特に制限されないが、処理液の全質量に対して、例えば、1~97質量%であり、処理液の全質量に対して、10~97質量%が好ましい。
水としては、半導体デバイス製造に使用される超純水が好ましい。
水としては、特に、無機陰イオン及び金属イオン等を低減させた水であることが好ましく、なかでもFe、Co、Na、K、Ca、Cu、Mg、Mn、Li、Al、Cr、Ni、及びZnの金属原子由来のイオン濃度が低減されているものがより好ましく、本発明の処理液の調液に用いる際に、pptオーダー若しくはそれ以下(一形態において、金属含有率が0.001質量ppt未満)に調整されているものが更に好ましい。調整の方法としては、ろ過膜若しくはイオン交換膜を用いた精製、又は、蒸留による精製が好ましい。調整の方法としては、例えば、特開2011-110515号公報段落<0074>~<0084>に記載の方法、及び特開2007―254168号公報に記載の方法等が挙げられる。
【0016】
なお、本発明の実施形態に使用される水は、上記のようにして得られる水であることが好ましい。また、本発明の所望の効果が顕著に得られる点で、上述した水は、本発明の処理液のみでなく収容容器の洗浄にも用いられることがより好ましい。また、上述した水は、本発明の処理液の製造工程、本発明の処理液の成分測定、及び本発明の処理液の評価のための測定等にも用いられることが好ましい。
【0017】
〔有機溶剤〕
本発明の処理液は、有機溶剤を含む。本発明の処理液は、有機溶剤を含むことで、金属層に対する防食性が優れ、欠陥抑制性が優れる。
有機溶剤としては特に制限されないが、親水性有機溶剤が好ましい。なお、本明細書において親水性有機溶剤とは、25℃の条件下において、100gの水に対して0.1g以上溶解させることができる有機溶剤のことを意図し、親水性有機溶剤としては、水といずれの比率においても均一に混合可能な有機溶剤が好ましい。
親水性有機溶剤としては、具体的には、グリコール系溶剤、グリコールエーテル系溶剤、アミド系溶剤、アルコール系溶剤、及びスルホキシド系溶剤からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0018】
グリコール系溶剤としては特に制限されないが、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、及びテトラエチレングリコール等が挙げられる。
【0019】
グリコールエーテル系溶剤としては特に制限されないが、例えば、グリコールモノエーテル等が挙げられる。
グリコールモノエーテルとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノn-プロピルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノn-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、1-メトキシ-2-プロパノール、2-メトキシ-1-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、2-エトキシ-1-プロパノール、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル、及びジエチレングリコールモノベンジルエーテル等が挙げられる。
【0020】
アミド系溶剤としては特に制限されないが、N,N-ジメチルホルムアミド、1-メチル-2-ピロリドン、2-ピロリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、2-ピロリジノン、ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、アセトアミド、N-メチルアセトアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルプロパンアミド、及びヘキサメチルホスホリックトリアミド等が挙げられる。
【0021】
アルコール系溶剤としては特に制限されないが、アルカンジオール、アルコキシアルコール、飽和脂肪族一価アルコール、及び不飽和非芳香族一価アルコール等が挙げられる。
アルカンジオールとしては、例えば、グリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,2-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、及びピナコール等が挙げられる。
アルコキシアルコールとしては、例えば、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール、3-メトキシ-1-ブタノール、1-メトキシ-2-ブタノール、及びグリコールモノエーテル等が挙げられる。
飽和脂肪族一価アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1-ブタノール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、2-ペンタノール、t-ペンチルアルコール、及び1-ヘキサノール等が挙げられる。
不飽和非芳香族一価アルコールとしては、例えば、アリルアルコール、プロパルギルアルコール、2-ブテニルアルコール、3-ブテニルアルコール、及び4-ペンテン-2-オール等が挙げられる。
環構造を含む低分子量のアルコールとしては、例えば、テトラヒドロフルフリルアルコール、フルフリルアルコール、及び1,3-シクロペンタンジオール等が挙げられる。
【0022】
スルホキシド系溶剤としては、例えば、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
【0023】
親水性有機溶剤のなかでも、金属層に対する防食性がより優れる点で、グリコールエーテル系溶剤が好ましい。
【0024】
有機溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の処理液中、有機溶剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、処理液の全質量に対して、例えば、0.05~98質量%であり、処理液の全質量に対して、1~85質量%が好ましい。
【0025】
〔含窒素芳香族複素環化合物〕
本発明の処理液において、含窒素芳香族複素環化合物は、半導体デバイスの配線等になる金属層の表面に配位して緻密な膜を形成することにより、オーバーエッチング等による金属層の腐食を防止する。つまり、防食剤として機能する。
本発明の処理液は、少なくとも2種以上の含窒素芳香族複素環化合物を含む。処理液が少なくとも2種以上の含窒素芳香族複素環化合物を含む場合、処理液が含窒素芳香族複素環化合物を1種のみ含む場合と比べると、金属層の表面に形成される上記膜がより緻密となり、金属層に対する防食性がより優れる。
【0026】
本発明の処理液は、含窒素芳香族複素環化合物として、なかでも、含窒素芳香族複素環化合物(A)と含窒素芳香族複素環化合物(B)とを含むことが好ましい。処理液が、含窒素芳香族複素環化合物として、含窒素芳香族複素環化合物(A)と含窒素芳香族複素環化合物(B)とを含む場合、金属層に対する防食性がより優れる。
含窒素芳香族複素環化合物(A)は、下記一般式(I)で表される化合物又は下記一般式(IV)で表される化合物であり、含窒素芳香族複素環化合物(B)は、下記一般式(II)で表される化合物、下記一般式(III)で表される化合物、及び、下記一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
以下に、一般式(I)~(V)で表される化合物について説明する。
<一般式(I)で表される化合物>
【0027】
【0028】
一般式(I)中、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R11及びR12は、互いに結合して環を形成してもよい。
【0029】
一般式(I)中、R11及びR12で表される炭化水素基としては、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3が更に好ましい)、アルケニル基(炭素数2~12が好ましく、炭素数2~6がより好ましい)、アルキニル基(炭素数2~12が好ましく、炭素数2~6がより好ましい)、アリール基(炭素数6~18が好ましく、炭素数6~14がより好ましく、炭素数6~10が更に好ましい)、及び、アラルキル基(炭素数7~23が好ましく、炭素数7~15がより好ましく、炭素数7~11が更に好ましい)が挙げられる。
また、R11及びR12で表される炭化水素基は、置換基を有していてもよい。上記置換基としては、例えば、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3が更に好ましい)、アリール基(炭素数6~18が好ましく、炭素数6~14がより好ましく、炭素数6~10が更に好ましい)、水酸基、カルボキシ基、及び-N(Ra)(Rb)が挙げられる。Ra及びRbは、それぞれ独立して、水素原子又は有機基を表す。有機基としては、アルキル基(例えば、炭素数1~12であり、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい)、又はヒドロキシアルキル基(例えば、炭素数1~12であり、炭素数1~6が好ましく、炭素数1~4がより好ましい)が好ましい。
【0030】
また、R11及びR12は、互いに結合して環を形成してもよい。R11及びR12が互いに結合して形成する環としては特に制限されないが、芳香族環(単環及び多環のいずれであってもよい)が好ましく、ベンゼン環が好ましい。更に、R11及びR12が互いに結合して形成する環は置換基を有していてもよい。置換基としては特に制限されないが、例えば、R11及びR12で表される炭化水素基の置換基として例示したものが挙げられる。
【0031】
なお、本明細書において、一般式(I)で表される化合物は、その互変異性体である下記一般式(IA)で表される化合物を包含する。
【0032】
【0033】
一般式(IA)中、R11及びR12は、それぞれ一般式(I)中のR11及びR12と同義であり、好適態様も同じである。
【0034】
<一般式(II)で表される化合物>
【化3】
一般式(II)中、R
21及びR
22は、それぞれ独立して、水素原子、水酸基、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
但し、R
21が水素原子である場合、R
22は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R
21が水素原子であり、R
22が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、上記一般式(I)中のR
11及びR
12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つベンゼン環が置換基を有するときは、R
22と上記置換基とは異なる基を表す。
【0035】
一般式(II)中、R21及びR22で表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、R11及びR12で表される置換若しくは無置換の炭化水素基と同義である。
R21で表される炭化水素基としては、なかでも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3が更に好ましい)、又はアリール基(炭素数6~18が好ましく、炭素数6~14がより好ましく、炭素数6~10が更に好ましい)が好ましい。なお、R21で表される炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、R11及びR12で表される炭化水素基の置換基として例示したもの挙げられる。
R22で表される炭化水素基としては、なかでも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3が更に好ましい)が好ましい。なお、R22で表される炭化水素基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、R11及びR12で表される炭化水素の置換基として例示したものが挙げられる。
【0036】
また、一般式(II)中、R21が水素原子である場合、R22は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。つまり、R21及びR22のいずれもが水素原子である場合はない。
更に、R21が水素原子であり、R22が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、上記一般式(I)中のR11及びR12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つ、ベンゼン環が置換基を有するときは、R22と上記置換基とは異なる基を表す。また、このとき、防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、R22の炭素数は、上記置換基中の炭素数よりも大きいことが好ましい。
【0037】
【0038】
一般式(III)中、R31及びR32は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。但し、R31が水素原子である場合、R32は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R31が水素原子であり、R32が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、上記一般式(I)中のR11及びR12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つベンゼン環が置換基を有するときは、R32と上記置換基とは異なる基を表す。
【0039】
一般式(III)中、R31及びR32は、それぞれ一般式(II)中のR21及びR22と同義であり、好適態様も同じである。
但し、R31が水素原子である場合、R32は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。また、R31が水素原子であり、R32が置換若しくは無置換の炭化水素基を表す場合であって、上記一般式(I)中のR11及びR12が互いに結合してベンゼン環を形成し、且つベンゼン環が置換基を有するときは、R32と上記置換基とは異なる基を表す。また、このとき、防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、R32の炭素数は、上記置換基中の炭素数よりも大きいことが好ましい。
【0040】
【0041】
一般式(IV)中、R41は、水素原子を表す。R42は、水素原子、水酸基、メルカプト基、または、アミノ基を表す。
【0042】
【0043】
一般式(IV)中、R51及びR52は、それぞれ独立して、水素原子、又は置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。ただし、R51及びR52の少なくとも一方は、置換若しくは無置換の炭化水素基を表す。
R51及びR52で表される置換若しくは無置換の炭化水素基としては、R11及びR12で表される置換若しくは無置換の炭化水素基と同義である。
R51及びR52で表される炭化水素基としては、なかでも、アルキル基(炭素数1~12が好ましく、炭素数1~6がより好ましく、炭素数1~3が更に好ましい)が置換していてもよいアリール基(炭素数6~18が好ましく、炭素数6~14がより好ましく、炭素数6~10が更に好ましい)が好ましい。
【0044】
含窒素芳香族複素環化合物(A)としては、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れる点で、ベンゾトリアゾール骨格(一般式(I)で表される化合物中、R11とR12とが結合して環を形成する構造)の含窒素芳香族複素環化合物が好ましく、R11とR12とが結合して形成される環上に置換基を有するベンゾトリアゾール骨格の含窒素芳香族複素環化合物がより好ましい。
また、含窒素芳香族複素環化合物(B)としては、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れる点で、一般式(III)で表される化合物が好ましい。
【0045】
以下に、含窒素芳香族複素環化合物の具体例を示すが、本発明はこれに制限されない。
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
含窒素芳香族複素環化合物(A)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、含窒素芳香族複素環化合物(B)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
本発明の処理液中、防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、上記含窒素芳香族複素環化合物(B)(複数種存在する場合はその合計)に対する上記含窒素芳香族複素環化合物(A)(複数種存在する場合はその合計)の質量含有比は、1~100000であることが好ましく、2~30000であることがより好ましく、100~15000であることが更に好ましい。特に、上記質量含有比が100以上の場合、残渣物除去性と欠陥抑制性がより優れる。また、上記質量含有比が15000以下の場合、金属層に対する防食性がより優れる。
【0052】
また、本発明の処理液の好適態様の一つとして、含窒素芳香族複素環化合物(B)が、一般式(II)で表される化合物、一般式(III)で表される化合物、及び、一般式(V)で表される化合物からなる群より選ばれる2種の化合物を含み、2種の化合物の質量比が1~10000である態様が挙げられる。
上記質量比は、10~10000が好ましく、10~1000がより好ましい。
なお、上記質量比は、2種の化合物のうち、(含有量の多い化合物の質量)/(含有量の少ない化合物の質量)を表す。なお、2種の化合物の含有量が等しい場合は、上記質量比は1である。
【0053】
本発明の処理液中、防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、上記含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~10000質量ppmであることが好ましく、0.01~1000質量ppmであることがより好ましく、0.1~1000質量ppmであることが更に好ましく、0.5~80質量ppmであることが特に好ましい。特に、上記含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量が、処理液の全質量に対して0.5質量ppm以上の場合、金属層に対する防食性がより優れる。また、上記含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量が、処理液の全質量に対して80質量ppm以下の場合、残渣物除去性と欠陥抑制性がより優れる。
【0054】
〔その他の成分〕
本発明の処理液は、上述した成分以外に、更にその他の成分を含んでいてもよい。以下に、本発明の処理液が含み得るその他の成分について詳述する。
【0055】
<コバルトイオン>
本発明の処理液は、コバルトイオンを含むことが好ましい。
本発明の処理液がコバルトイオンを含む場合、化学平衡により、金属層からの金属の溶出が抑制され、結果として、金属層に対する防食性がより優れるものと考えられる。特に、金属層がCoを含む場合、防食性がより優れる。
本発明の処理液中、コバルトイオンの含有量は、金属層(特にCo含む金属層)に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、処理液の全質量に対して、0.001~10質量ppbであることが好ましく、20~3000質量pptであることがより好ましく、50~2500質量pptであることが更に好ましく、100~1200質量pptであることが特に好ましい。
【0056】
本発明の処理液中のコバルトイオンの含有量は、SP-ICP-MS法(Single Nano Particle Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry)で測定したコバルトイオンの含有量を意図する。
【0057】
ここで、SP-ICP-MS法において使用される装置は、通常のICP-MS法(誘導結合プラズマ質量分析法)(以下、単に、「ICP-MS」とも言う)において使用される装置と同じであり、データ分析のみが異なる。SP-ICP-MSとしてのデータ分析は、市販のソフトウエアにより実施できる。
ICP-MSでは、測定対象とされた金属成分の含有量が、その存在形態に関わらず、測定される。従って、測定対象とされた金属粒子と、金属イオンの合計質量が、金属成分の含有量として定量される。
一方、SP-ICP-MSでは、金属粒子の含有量が測定される。従って、試料中の金属成分の含有量から、金属粒子の含有量を引くと、試料中の金属イオンの含有量を算出できる。
つまり、試料中のコバルト成分の含有量から、コバルト粒子の含有量を引くと、試料中のコバルトイオンの含有量を算出できる。
【0058】
SP-ICP-MS法の装置としては例えば、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(inductively coupled plasma mass spectrometry、半導体分析用、オプション#200)を用いて、実施例に記載した方法により測定できる。上記の他に、PerkinElmer社製 NexION350Sのほか、アジレントテクノロジー社製、Agilent 8900も挙げられる。
【0059】
本発明の処理液の調製に際して、コバルトイオンの導入方法は特に制限されない。なかでも、金属層(特にCo含む金属層)の防食性がより優れる点で、本発明の処理液中のコバルトイオンは、フッ化コバルト、塩化コバルト、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種のコバルトイオン源を由来とするコバルトイオンであることが好ましい。コバルトイオン源としては、金属層(特にCo含む金属層)の防食性がより優れる点で、水酸化コバルト、酸化コバルト、及び硫酸コバルトからなる群より選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
【0060】
また、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、コバルトイオンに対する上述した含窒素芳香族複素環化合物(B)(複数種存在する場合はその合計)の質量含有比は、1.0×102~1.0×106であることが好ましく、2.0×103~5.0×105であることがより好ましく、3.0×103~2.0×105であることが更に好ましく、1.0×104~1.0×105であることが特に好ましい。特に、上記質量含有比が、1.0×104以上の場合、残渣物除去性と欠陥抑制性がより優れる。また、1.0×105以下の場合、金属層に対する防食性がより優れる。
【0061】
本発明の処理液が、コバルトイオンを含む場合、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、処理液の処方は、上記水の含有量が、処理液の全質量に対して、10~97質量%であり、上記有機溶剤の含有量が、処理液の全質量に対して、1~85質量%であり、上記含窒素芳香族複素環化合物の含有量が、処理液の全質量に対して、0.05~5質量%であり、上記コバルトイオンの含有量が、処理液の全質量に対して、0.001~10質量ppbであることが好ましい。なお、コバルトイオンの含有量は、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、処理液の全質量に対して、20~3000質量pptであることがより好ましく、50~2500質量pptであることが更に好ましく、100~1200質量pptであることが特に好ましい。
【0062】
<ヒドロキシルアミン類>
本発明の処理液は、ヒドロキシルアミン(NH2-OH)、ヒドロキシルアミン誘導体、及びこれらの塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のヒドロキシルアミン類を含むことが好ましい。ヒドロキシルアミン類は、残渣物の分解及び可溶化を促進する機能を有する。
【0063】
ヒドロキシルアミン誘導体としては特に制限されないが、例えば、O-メチルヒドロキシルアミン、O-エチルヒドロキシルアミン、N-メチルヒドロキシルアミン、N,N-ジメチルヒドロキシルアミン、N,O-ジメチルヒドロキシルアミン、N-エチルヒドロキシルアミン、N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、N,O-ジエチルヒドロキシルアミン、O,N,N-トリメチルヒドロキシルアミン、N,N-ジカルボキシエチルヒドロキシルアミン、及びN,N-ジスルホエチルヒドロキシルアミン等が挙げられる。
【0064】
ヒドロキシルアミン(NH2-OH)及びヒドロキシルアミン誘導体の塩は、上述したヒドロキシルアミン(NH2-OH)及びヒドロキシルアミン誘導体の無機酸塩又は有機酸塩であることが好ましく、Cl、S、N、又はP等の非金属原子が水素原子と結合してできた無機酸の塩であることがより好ましく、塩酸、硫酸、又は硝酸のいずれかの酸の塩であることが更に好ましい。
ヒドロキシルアミン(NH2-OH)及びヒドロキシルアミン誘導体の無機酸塩としては、なかでも、硝酸ヒドロキシルアミン、硫酸ヒドロキシルアミン、塩酸ヒドロキシルアミン、リン酸ヒドロキシルアミン、硫酸N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、硝酸N,N-ジエチルヒドロキシルアミン、又はこれらの混合物が好ましい。
また、ヒドロキシルアミン(NH2-OH)及びヒドロキシルアミン誘導体の有機酸塩としては、例えば、ヒドロキシルアンモニウムクエン酸塩、ヒドロキシルアンモニウムシュウ酸塩、及びヒドロキシルアンモニウムフルオライド等が挙げられる。
【0065】
ヒドロキシルアミン類としては、なかでも、残渣物除去性がより優れる点で、ヒドロキシルアミン(NH2-OH)が好ましい。
【0066】
ヒドロキシルアミン類は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ヒドロキシルアミン類の含有量(複数種存在する場合はその合計)は、処理液の全質量に対して、通常は0.01~30質量%である。残渣物除去性がより優れる点で、その下限は、1.0質量%以上が好ましく、2.0質量%以上がより好ましい。なかでも、優れた残渣物除去性と、金属層に対する優れた防食性とを両立する点で、ヒドロキシルアミン類の含有量は、処理液の全質量に対して2.0~10質量%が更に好ましい。
【0067】
<含フッ素化合物>
本発明の処理液は、フッ酸、フッ化アンモニウム、フッ化テトラメチルアンモニウム、及びフッ化テトラブチルアンモニウムからなる群より選ばれる1種以上の含フッ素化合物を含むことが好ましい。含フッ素化合物は、本発明の処理液中、残渣物除去機能を有する。結果として、処理液が含フッ素化合物を含む場合、残渣物除去性がより優れる。
含フッ素化合物としては、フッ酸が好ましい。
【0068】
含フッ素化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の処理液中、上記含フッ素化合物(複数種存在する場合はその合計)の含有量は、処理液の全質量に対して、0.01~5.0質量%であることが好ましく、0.1~2.0質量%であることがより好ましい。
【0069】
また、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、上記コバルトイオンに対する上述した含フッ素化合物(複数種存在する場合はその合計)の質量含有比は、1.0×105~1.0×108であることが好ましく、3.0×106~8.0×107であることがより好ましく、4.0×106~5.0×107であることが更に好ましい。特に、上記質量含有比が4.0×106~5.0×107である場合、残渣物除去性がより優れる。
【0070】
<塩基性化合物>
本発明の処理液は、塩基性化合物を含むことが好ましい。上記塩基化合物は、処理液中においてpH調整剤として機能する。
塩基性化合物とは、100gの水に1g溶解させたとき、溶液のpHが9以上になるものを意図する。
なお、本明細書中、上述したヒドロキシルアミン類、及び後述する4級水酸化アンモニウムは、塩基性化合物には含まれないものとする。
【0071】
また、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がいずれもより優れる点で、上記コバルトイオンに対する上述した塩基性化合物(複数種存在する場合はその合計)の質量含有比は、1.0×105~1.0×109であることが好ましく、1.0×107~1.0×108であることがより好ましい。特に、上記質量含有比が1.0×107以上である場合、残渣物除去性と欠陥抑制性がより優れる。また、上記質量含有比が1.0×108以下である場合、金属層に対する防食性がより優れる。
【0072】
塩基性化合物としては特に制限されないが、残渣物除去性がより優れつつ、金属層に対する防食性にもより優れる点で、含窒素脂環化合物、水酸化アンモニウム、又は、第2級アミンが好ましく、含窒素脂環化合物又は第2級アミンがより好ましい。
以下に、含窒素脂環化合物、水酸化アンモニウム及び第2級アミンについてそれぞれ詳述する。
【0073】
(含窒素脂環化合物)
含窒素脂環化合物としては、例えば、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、ε-カプロラクタム、下記化合物1、下記化合物2、下記化合物3、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、テトラヒドロフルフリルアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、ヒドロキシエチルピペラジン、ピペラジン、2-メチルピペラジン、トランス-2,5-ジメチルピペラジン、シス-2,6-ジメチルピペラジン、2-ピペリジンメタノール、シクロヘキシルアミン、及び1,5-ジアザビシクロ[4,3,0]-5-ノネン等が挙げられる。
【0074】
【0075】
なかでも、残渣物除去性により優れつつ、金属層に対する防食性にもより優れる点で、含窒素脂環化合物としては、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、テトラヒドロフルフリルアミン、N-(2-アミノエチル)ピペラジン、又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)が好ましい。
【0076】
また、含窒素脂環化合物として、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)と、ε-カプロラクタム、上記化合物1、上記化合物2、及び上記化合物3からなる群より選ばれる1種以上と、を併用することも好ましい。本発明の処理液が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)と、ε-カプロラクタム、上記化合物1、上記化合物2、及び上記化合物3からなる群より選ばれる1種以上と、を含む場合、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れる。また、本発明の処理液が、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)と、ε-カプロラクタム、上記化合物1、上記化合物2、及び上記化合物3からなる群より選ばれる1種以上と、を含む場合、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れる点で、ε-カプロラクタム、上記化合物1、上記化合物2、及び上記下記化合物3の合計含有量は、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)の合計含有量に対して、質量比で、0.0001~0.3が好ましく、0.001~0.05がより好ましい。
【0077】
含窒素脂環化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
含窒素脂環化合物の含有量(複数種存在する場合はその合計)は特に制限されないが、処理液の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0078】
(水酸化アンモニウム)
塩基性化合物として、水酸化アンモニウム(NH4OH)を含む場合、その含有量は特に制限されないが、処理液の全質量に対して、0.1~10質量%が好ましく、0.1~5.0質量%がより好ましい。
【0079】
(第2級アミン)
第2級アミンは、2級アミノ基が含まれていればよく、例えば、2,2’-イミノジエタノールが挙げられる。なお、第2級アミンには、含窒素脂環化合物は含まれない。
第2級アミンの含有量は特に制限されないが、処理液の全質量に対して、300質量ppb~3000質量ppmが好ましく、1~1000質量ppmがより好ましく、10~500質量ppmが更に好ましい。
また、第2級アミンの質量に対する、含窒素芳香族複素環化合物(B)の質量の比は特に制限されないが、1~10000が好ましく、5~10000がより好ましく、5~5000が更に好ましく、5~1000が特に好ましい。
【0080】
<キレート剤>
本発明の処理液は、キレート剤を含むことが好ましい。
キレート剤は、残渣物中に含まれる酸化した金属とキレート化する機能を有する。
本発明の処理液が、キレート剤を含む場合、残渣物除去性及び欠陥抑制性がより優れる。
キレート剤としては、特に制限されないが、ポリアミノポリカルボン酸であることが好ましい。
ポリアミノポリカルボン酸は、複数のアミノ基、及び複数のカルボン酸基を有する化合物であり、例えば、モノ-又はポリアルキレンポリアミンポリカルボン酸、ポリアミノアルカンポリカルボン酸、ポリアミノアルカノールポリカルボン酸、及びヒドロキシアルキルエーテルポリアミンポリカルボン酸等が挙げられる。
【0081】
ポリアミノポリカルボン酸としては、例えば、ブチレンジアミン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンテトラプロピオン酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン-N,N,N’,N’-四酢酸、プロピレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸、エチレンジアミン二酢酸、エチレンジアミンジプロピオン酸、1,6-ヘキサメチレン-ジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシベンジル)エチレンジアミン-N,N-二酢酸、ジアミノプロパン四酢酸、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-四酢酸、ジアミノプロパノール四酢酸、及び(ヒドロキシエチル)エチレンジアミン三酢酸等が挙げられる。なかでも、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、又はトランス-1,2-ジアミノシクロヘキサン四酢酸が好ましい。
【0082】
キレート剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
キレート剤の含有量(複数種存在する場合はその合計)は特に制限されないが、処理液の全質量に対して、0.01~10質量%が好ましく、0.01~3.0質量%がより好ましい。
【0083】
<4級水酸化アンモニウム>
本発明の処理液は、4級水酸化アンモニウムを含むことが好ましい。上記4級水酸化アンモニウムは、処理液中においてpH調整剤として機能する。
4級水酸化アンモニウム化合物としては、例えば、下記式(a1)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【0085】
上記式(a1)中、Ra1~Ra4は、それぞれ独立に、炭素数1~16のアルキル基、炭素数6~16のアリール基、炭素数7~16のアラルキル基、又は炭素数1~16のヒドロキシアルキル基を示す。Ra1~Ra4の少なくとも2つは、互いに結合して環状構造を形成していてもよく、特に、Ra1とRa2との組み合わせ及びRa3とRa4との組み合わせの少なくとも一方は、互いに結合して環状構造を形成していてもよい。
【0086】
上記式(a1)で表される化合物の中でも、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、水酸化メチルトリプロピルアンモニウム、水酸化メチルトリブチルアンモニウム、水酸化エチルトリメチルアンモニウム、水酸化ジメチルジエチルアンモニウム、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム、水酸化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、水酸化(2-ヒドロキシエチル)トリメチルアンモニウム、及び水酸化スピロ-(1,1’)-ビピロリジニウムからなる群より選ばれる少なくとも1種が、入手し易さの点から好ましい。なかでも、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、又は水酸化ベンジルトリメチルアンモニウムがより好ましい。
【0087】
4級水酸化アンモニウムは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
4級水酸化アンモニウムの含有量は、処理液の全質量に対して、0.05~15質量%が好ましく、0.1~12質量%がより好ましい。
【0088】
<その他の添加剤>
また、他の添加剤としては、例えば、含窒素芳香環化合物以外の防食剤、界面活性剤、消泡剤、防錆剤、及び防腐剤等が挙げられる。含窒素芳香環化合物以外の防食剤としては特に制限されず、例えば、チオグリセロール等の公知の化合物を使用できる。
【0089】
〔処理液の物性〕
<pH>
本発明の処理液のpHは、2~15であることが好ましい。処理液のpHが2~15にあることで、金属層がCo、Cu、及びWのいずれの材料で形成されていても、防食性と洗浄性をより優れたレベルで両立できる。
処理液のpHの下限値は、残渣物除去性がより優れる点で、3以上がより好ましく、4以上が更に好ましい。
処理液のpHの上限値は、金属層に対する防食性がより優れる点で、15以下がより好ましく、13以下が更に好ましい。
処理液のpHは、公知のpHメーターを用いて測定できる。
【0090】
<粗大粒子>
本発明の処理液は、粗大粒子を実質的に含まないことが好ましい。
粗大粒子とは、例えば、粒子の形状を球体とみなした場合において、直径0.2μm以上の粒子を指す。また、粗大粒子を実質的に含まないとは、光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を用いた処理液の測定を行った際に、処理液1mL中の0.2μm以上の粒子が10個以下であることをいう。
なお、処理液に含まれる粗大粒子とは、原料に不純物として含まれる塵、埃、有機固形物及び無機固形物等の粒子、ならびに、処理液の調製中に汚染物として持ち込まれる塵、埃、有機固形物及び無機固形物等の粒子等であり、最終的に処理液中で溶解せずに粒子として存在するものが該当する。
処理液中に存在する粗大粒子の量は、レーザを光源とした光散乱式液中粒子測定方式における市販の測定装置を利用して液相で測定できる。
粗大粒子の除去方法としては、例えば、フィルタリング等の処理が挙げられる。
【0091】
[キット及び濃縮液]
上記処理液は、その原料を複数に分割したキットとしてもよい。特に制限はされないが、処理液をキットとする具体的な方法としては、例えば、処理液が、水、有機溶剤、2種以上の含窒素芳香族複素環化合物、ヒドロキシルアミン類、塩基性化合物を含む場合、第1液としてヒドロキシルアミン化合物及び塩基性化合物を水に含有する液組成物を準備し、第2液として2種以上の含窒素芳香族複素環化合物を有機溶剤に含有する液組成物を準備する態様が挙げられる。
また、処理液は、濃縮液として準備してもよい。この場合、使用時に希釈液で希釈して使用することができる。また、欠陥除去性により優れる点で、濃縮液は、水、イソプロパノールアミン、又はアンモニアを含む希釈液で希釈されることが好ましい。つまり、濃縮液の形態としての上記処理液と、上記希釈液と、を有するキットとしてもよい。
【0092】
[用途]
次に、上記実施態様に係る処理液の用途について説明する。
上記処理液は、半導体デバイス用の処理液である。本明細書において、「半導体デバイス用」とは、半導体デバイスの製造の際に用いられるという意味である。上記処理液は、半導体デバイスを製造するためのいずれの工程にも用いることができ、例えば、基板上に存在する絶縁膜、レジスト膜、反射防止膜、エッチング残渣物、及びアッシング残渣物等の処理に使用できる。なお、本明細書においては、エッチング残渣物、及びアッシング残渣物を併せて残渣物という。また、上記処理液は、化学機械研磨後の基板の処理に用いてもよく、エッチング液として用いてもよい。
処理液は、具体的には、感活性光線性又は感放射線性組成物を用いてレジスト膜を形成する工程の前に、組成物の塗布性を改良するために基板上に塗布されるプリウェット液、金属層上に付着した残渣物の除去等に用いられる洗浄液、パターン形成用の各種レジスト膜の除去に用いられる溶液(例えば、除去液及び剥離液等)、及び、永久膜(例えば、カラーフィルタ、透明絶縁膜、及び樹脂製のレンズ)等を半導体基板から除去するために用いられる溶液(例えば、除去液及び剥離液等)等として用いられる。なお、永久膜の除去後の半導体基板は、再び半導体デバイスの使用に用いられることがあるため、永久膜の除去は、半導体デバイスの製造工程に含むものとする。
また、上記処理液は、化学機械研磨後の基板から金属不純物又は微粒子等の残渣物の除去に用いられる洗浄液としても使用できる。
また、上記処理液は、酸化コバルト、及び酸化銅等に対するエッチング液としても使用できる。
上記の用途の中でも、特に、エッチング残渣物を除去するための洗浄液、パターン形成に用いられたレジスト膜を除去するための溶液、化学機械研磨後の基板から残渣物を除去するための洗浄液、又はエッチング液として好適に用いることできる。
本発明の処理液は、上記用途のうち、1つの用途のみに用いられてもよいし、2以上の用途に用いられてもよい。
【0093】
上記処理液は、半導体デバイスがCoを含む金属層を備えた基板、半導体デバイスがWを含む金属層を備えた基板、又は半導体デバイスがCuを含む金属層を備えた基板の処理にも使用できる。更に、上記処理液は、層間絶縁膜に対する優れた防食性を有するため、例えば、半導体デバイスがSiOX、SiN、及びSiOC(xは1~3の数を表す。)からなる群から選択される少なくとも1種を含む層を備えた基板の処理にも使用できる。
【0094】
[処理液、濃縮液、及びキットの製造方法]
<調液工程>
上記処理液の製造方法としては特に制限されず、公知の製造方法を使用できる。上記処理液の製造方法としては、例えば、上記各成分を混合する方法が挙げられる。
なお、各成分を混合する順序は特に制限されない。濃縮液及びキットについても上記と同様の方法により製造されることが好ましい。
【0095】
<ろ過工程>
上記製造方法は、異物及び粗大粒子等を液中から除去するために、液をろ過する、ろ過工程を含むことが好ましい。
ろ過の方法としては特に制限されず、公知のろ過方法を使用できる。なかでも、フィルタを用いたフィルタリングが好ましい。
【0096】
フィルタリングに使用されるフィルタは、従来からろ過用途等に用いられるものであれば特に限定されることなく使用できる。フィルタを構成する材料としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のフッ素樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、並びに、ポリエチレン及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン樹脂(高密度、超高分子量を含む)等が挙げられる。これらの中でも、ポリアミド系樹脂、PTFE、及び、ポリプロピレン(高密度ポリプロピレンを含む)が好ましい。
これらの素材により形成されたフィルタを使用することで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を、処理液からより効果的に除去できる。
【0097】
フィルタの臨界表面張力として、下限値としては70mN/m以上が好ましく、上限値としては、95mN/m以下が好ましい。特に、フィルタの臨界表面張力は、75~85mN/mが好ましい。
なお、臨界表面張力の値は、製造メーカーの公称値である。臨界表面張力が上記範囲のフィルタを使用することで、欠陥の原因となり易い極性の高い異物を、処理液からより効果的に除去できる。
【0098】
フィルタの孔径は、0.001~1.0μm程度が好ましく、0.02~0.5μm程度がより好ましく、0.01~0.1μm程度が更に好ましい。フィルタの孔径を上記範囲とすることで、ろ過詰まりを抑えつつ、処理液に含有される微細な異物を確実に除去することが可能となる。
【0099】
フィルタを使用する際、異なるフィルタを組み合わせてもよい。その際、第1のフィルタでのフィルタリングは、1回のみでもよいし、2回以上行ってもよい。異なるフィルタを組み合わせて2回以上フィルタリングを行う場合には、各フィルタは、互いに同じ種類のものであってもよいし、互いに種類が異なってもよいが、互いに種類が異なることが好ましい。典型的には、第1のフィルタと第2フィルタとは、孔径及び構成素材のうちの少なくとも一方が異なっていることが好ましい。
1回目のフィルタリングの孔径より2回目以降の孔径が同じ、又は、小さい方が好ましい。また、上述した範囲内で異なる孔径の第1のフィルタを組み合わせてもよい。ここでの孔径は、フィルタメーカーの公称値を参照できる。市販のフィルタとしては、例えば、日本ポール株式会社、アドバンテック東洋株式会社、日本インテグリス株式会社(旧日本マイクロリス株式会社)又は株式会社キッツマイクロフィルタ等が提供する各種フィルタの中から選択できる。また、ポリアミド製の「P-ナイロンフィルター(孔径0.02μm、臨界表面張力77mN/m)」;(日本ポール株式会社製)、高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.02μm)」;(日本ポール株式会社製)、及び高密度ポリエチレン製の「PE・クリーンフィルタ(孔径0.01μm)」;(日本ポール株式会社製)も使用できる。
【0100】
第2のフィルタは、上述した第1のフィルタと同様の材料で形成されたフィルタを使用できる。上述した第1のフィルタと同様の孔径のものが使用できる。第2のフィルタの孔径が第1のフィルタより小さいものを用いる場合には、第2のフィルタの孔径と第1のフィルタの孔径との比(第2のフィルタの孔径/第1のフィルタの孔径)が0.01~0.99が好ましく、0.1~0.9より好ましく、0.3~0.9が更に好ましい。第2フィルタの孔径を上記範囲とすることにより、処理液に混入している微細な異物がより確実に除去される。
【0101】
例えば、第1のフィルタでのフィルタリングは、処理液の一部の成分が含まれる混合液で行い、これに残りの成分を混合して処理液を調製した後で、第2のフィルタリングを行ってもよい。
【0102】
また、使用されるフィルタは、処理液を濾過する前に処理することが好ましい。この処理に使用される液体は、特に限定されないが、処理液、濃縮液、及び処理液に含有される成分を含む液体が好ましい。
【0103】
フィルタリングを行う場合には、フィルタリング時の温度の上限値は、室温(25℃)以下が好ましく、23℃以下がより好ましく、20℃以下が更に好ましい。また、フィルタリング時の温度の下限値は、0℃以上が好ましく、5℃以上がより好ましく、10℃以上が更に好ましい。
フィルタリングでは、粒子性の異物及び/又は不純物が除去できるが、上記温度で行われると、処理液中に溶解している粒子性の異物及び/又は不純物の量が少なくなるため、フィルタリングがより効率的に行われる。
【0104】
<除電工程>
上記製造方法は、更に、処理液、濃縮液、及びキットからなる群から選択される少なくとも1種を除電する、除電工程を含んでいてもよい。なお、除電の具体的方法については後述する。
【0105】
なお、上記製造方法に係る全工程は、クリーンルーム内で行うことが好ましい。クリーンルームは、14644-1クリーンルーム基準を満たすことが好ましい。ISO(国際標準化機構)クラス1、ISOクラス2、ISOクラス3、ISOクラス4のいずれかを満たすことが好ましく、ISOクラス1又はISOクラス2を満たすことがより好ましく、ISOクラス1を満たすことが更に好ましい。
【0106】
上述した処理液、濃縮液、又はキットを収容する容器としては、液による腐食性が問題とならない限り特に制限されず、公知の容器を使用できる。
上記容器としては、半導体用途向けに、容器内のクリーン度が高く、不純物の溶出が少ないものが好ましい。
上記容器の具体例としては、例えば、アイセロ化学(株)製の「クリーンボトル」シリーズ、及び、コダマ樹脂工業製の「ピュアボトル」等が挙げられる。また、原材料及び薬液への不純物混入(コンタミ)防止を目的として、容器内壁を6種の樹脂からなる6層構造である多層容器、6種の樹脂からなる7層構造である多層容器を使用することも好ましい。これらの容器としては例えば特開2015-123351号公報に記載の容器が挙げられるが、これらに限定されない。
上記容器の内壁は、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレン-ポリプロピレン樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂、これとは異なる樹脂、並びにステンレス、ハステロイ、インコネル、及びモネル等の金属で形成される、又は被覆されることが好ましい。
【0107】
上記の異なる樹脂としては、フッ素系樹脂(パーフルオロ樹脂)を好ましく使用できる。このように、容器の内壁がフッ素系樹脂で形成された、又はフッ素樹脂で被覆された容器を用いることで、内壁が、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、又はポリエチレン-ポリプロピレン樹脂で形成された、又は被覆された容器を用いる場合と比べて、エチレン又はプロピレンのオリゴマーの溶出という不具合の発生を抑制できる。
このような内壁を有する容器の具体例としては、例えば、Entegris社製 FluoroPurePFA複合ドラム等が挙げられる。また、特表平3-502677号公報の第4頁等、国際公開第2004/016526号パンフレットの第3頁等、及び、国際公開第99/46309号パンフレットの第9頁及び16頁等に記載の容器も使用できる。
【0108】
また、容器の内壁には、上述したフッ素系樹脂の他に、石英及び電解研磨された金属材料(すなわち、電解研磨済みの金属材料)も好ましく用いられる。
上記電解研磨された金属材料の製造に用いられる金属材料は、クロム及びニッケルからなる群から選択される少なくとも1種を含み、クロム及びニッケルの含有量の合計が金属材料全質量に対して25質量%超である金属材料であることが好ましく、例えばステンレス鋼、及びニッケル-クロム合金等が挙げられる。
金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計は、金属材料全質量に対して25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
なお、金属材料におけるクロム及びニッケルの含有量の合計の上限値としては特に制限されないが、一般的に90質量%以下が好ましい。
【0109】
ステンレス鋼としては、特に制限されず、公知のステンレス鋼を使用できる。なかでも、ニッケルを8質量%以上含む合金が好ましく、ニッケルを8質量%以上含むオーステナイト系ステンレス鋼がより好ましい。オーステナイト系ステンレス鋼としては、例えばSUS(Steel Use Stainless)304(Niの含有量:8質量%、Crの含有量:18質量%)、SUS304L(Niの含有量:9質量%、Crの含有量:18質量%)、SUS316(Niの含有量:10質量%、Crの含有量:16質量%)、及びSUS316L(Niの含有量:12質量%、Crの含有量:16質量%)等が挙げられる。
【0110】
ニッケル-クロム合金としては、特に制限されず、公知のニッケル-クロム合金を使用できる。なかでも、ニッケルの含有量が40~75質量%、クロムの含有量が1~30質量%のニッケル-クロム合金が好ましい。
ニッケル-クロム合金としては、例えば、ハステロイ(商品名、以下同じ。)、モネル(商品名、以下同じ)、及びインコネル(商品名、以下同じ)等が挙げられる。より具体的には、ハステロイC-276(Niの含有量:63質量%、Crの含有量:16質量%)、ハステロイ-C(Niの含有量:60質量%、Crの含有量:17質量%)、ハステロイC-22(Niの含有量:61質量%、Crの含有量:22質量%)等が挙げられる。
また、ニッケル-クロム合金は、必要に応じて、上記した合金の他に、更に、ホウ素、ケイ素、タングステン、モリブデン、銅、及びコバルト等を含んでいてもよい。
【0111】
金属材料を電解研磨する方法としては特に制限されず、公知の方法を使用できる。例えば、特開2015-227501号公報の段落<0011>~<0014>、及び特開2008-264929号公報の段落<0036>~<0042>等に記載された方法を使用できる。
【0112】
金属材料は、電解研磨されることにより表面の不動態層におけるクロムの含有量が、母相のクロムの含有量よりも多くなっているものと推測される。そのため、電解研磨された金属材料で被覆された内壁からは、処理液中に金属元素が流出しにくいため、特定金属元素が低減された処理液を得ることができるものと推測される。
なお、金属材料はバフ研磨されていることが好ましい。バフ研磨の方法は特に制限されず、公知の方法を使用できる。バフ研磨の仕上げに用いられる研磨砥粒のサイズは特に制限されないが、金属材料の表面の凹凸がより小さくなりやすい点で、#400以下が好ましい。
なお、バフ研磨は、電解研磨の前に行われることが好ましい。
また、金属材料は、研磨砥粒のサイズ等の番手を変えて行われる複数段階のバフ研磨、酸洗浄、及び磁性流体研磨等を、1又は2以上組み合わせて処理されてもよい。
【0113】
これらの容器は、充填前に容器内部を洗浄することが好ましい。洗浄に用いる液体は、用途に応じて適宜選択すればよいが、上記処理液、上記処理液を希釈した液体、又は、上記処理液に添加している成分の少なくとも1種を含む液体、が好ましい。
【0114】
保管における処理液中の成分の変化を防ぐ目的で、容器内を純度99.99995体積%以上の不活性ガス(チッソ、又はアルゴン等)で置換しておいてもよい。特に、含水率が少ないガスが好ましい。また、液収容体の輸送、保管に際しては、常温でもよいが、変質を防ぐため、-20℃から20℃の範囲に温度制御してもよい。
【0115】
[基板の洗浄方法]
本発明の一実施態様に係る基板の洗浄方法は、上記処理液を用いて、所定の基板を洗浄する洗浄工程Bを含む。また、上記基板の洗浄方法は、洗浄工程Bの前に、上記処理液を調製する処理液調製工程Aを含んでいてもよい。
以下の基板の洗浄方法の説明においては、洗浄工程Bの前に処理液調製工程Aを実施する場合を一例として示すが、これに制限されず、本発明の基板の洗浄方法は、予め準備された上記処理液を用いて行われてもよい。
【0116】
〔洗浄対象物〕
上記基板の洗浄方法の洗浄対象物は、一実施態様において、Coを含む金属層を備えることが好ましい。
また、上記基板の洗浄方法の洗浄対象物は、一実施態様において、Wを含む金属層を備えることが好ましい。
また、上記基板の洗浄方法の洗浄対象物は、一実施態様において、Cuを含む金属層を備えることが好ましい。
上記洗浄対象物としては、例えば、基板上に、金属層、層間絶縁膜、メタルハードマスクを少なくともこの順に備えた積層体が挙げられる。積層体は、更に、ドライエッチング工程等を経たことにより、金属層の表面を露出するようにメタルハードマスクの表面(開口部)から基板に向かって形成されたホールを有してもよい。
上記のような、ホールを有する積層体の製造方法は特に制限されないが、通常、基板と、金属層と、層間絶縁膜と、メタルハードマスクとをこの順で有する処理前積層体に対して、メタルハードマスクをマスクとして用いてドライエッチング工程を実施して、金属層の表面が露出するように層間絶縁膜をエッチングすることにより、メタルハードマスク及び層間絶縁膜内を貫通するホールを設ける方法が挙げられる。
なお、メタルハードマスクの製造方法は特に制限されず、例えば、まず、層間絶縁膜上に所定の成分を含む金属層を形成して、その上に所定のパターンのレジスト膜を形成する。次に、レジスト膜をマスクとして用いて、金属層をエッチングすることで、メタルハードマスク(すなわち、金属層がパターニングされた膜)を製造する方法が挙げられる。
また、積層体は、上述の層以外の層を有していてもよく、例えば、エッチング停止膜、反射防止層等が挙げられる。
【0117】
図1に、上記基板の洗浄方法の洗浄対象物である積層体の一例を示す断面模式図を示す。
図1に示す積層体10は、基板1上に、金属層2、エッチング停止層3、層間絶縁膜4、メタルハードマスク5をこの順に備え、ドライエッチング工程等を経たことで所定位置に金属層2が露出するホール6が形成されている。つまり、
図1に示す洗浄対象物は、基板1と、金属層2と、エッチング停止層3と、層間絶縁膜4と、メタルハードマスク5とをこの順で備え、メタルハードマスク5の開口部の位置において、その表面から金属層2の表面まで貫通するホール6を備える積層体である。ホール6の内壁11は、エッチング停止層3、層間絶縁膜4及びメタルハードマスク5からなる断面壁11aと、露出された金属層2からなる底壁11bとで構成され、ドライエッチング残渣物12が付着している。
【0118】
上記基板の洗浄方法は、これらのドライエッチング残渣物12の除去を目的とした洗浄に好適に使用できる。すなわち、ドライエッチング残渣物12の除去性能(残渣除去能)に優れつつ、洗浄対象物の内壁11(例えば、金属層2等)に対する防食性にも優れる。
また、上記基板の洗浄方法は、ドライエッチング工程の後にドライアッシング工程が行われた積層体に対して実施してもよい。
以下、上述した積層体の各層構成材料について説明する。
【0119】
<メタルハードマスク>
メタルハードマスクは、Cu、Co、Co合金、W、W合金、Ru、Ru合金、Ta、Ta合金、AlOx、AlN、AlOxNy、TiAl、Ti、TiN、TiOx、ZrOx、HfOx、TaOx、LaOx、及びYSiOxからなる群より選ばれる成分を少なくとも1種含むことが好ましい。ここで、x、yは、それぞれ、x=1~3、y=1~2で表される数が好ましい。
上記メタルハードマスクの材料としては、例えば、TiN、WO2、及びZrO2等が挙げられる。
【0120】
<層間絶縁膜>
層間絶縁膜の材料は、特に制限されず、例えば、好ましくは誘電率kが3.0以下、より好ましくは2.6以下のものが挙げられる。
具体的な層間絶縁膜の材料としては、SiOX、SiN、SiOC、及びポリイミド等の有機系ポリマー;等が挙げられる。なお、xは1~3で表される数が好ましい。
【0121】
<エッチング停止層>
エッチング停止層の材料は、特に制限されない。具体的なエッチング停止層の材料としてはSiN、SiON、SiOCN系材料、及びAlOx等の金属酸化物が挙げられる。
【0122】
<金属層>
金属層を形成する材料は、コバルト、タングステン、及び銅からなる群より選ばれる1種以上を含むことが好ましい。また、コバルト、タングステン、及び銅は、他の金属との合金であってもよい。
本発明の配線材料は、コバルト、タングステン、及び銅以外の金属、窒化金属又は合金を更に含んでいてもよい。具体的には、チタン、チタン-タングステン、窒化チタン、タンタル、タンタル化合物、クロム、クロム酸化物、及びアルミニウム等が挙げられる。
【0123】
<基板>
ここでいう「基板」には、例えば、単層からなる半導体基板、及び、多層からなる半導体基板が含まれる。
単層からなる半導体基板を構成する材料は特に制限されず、一般的に、シリコン、シリコンゲルマニウム、GaAsのような第III-V族化合物、又はそれらの任意の組み合わせから構成されることが好ましい。
多層からなる半導体基板である場合には、その構成は特に制限されず、例えば、上述のシリコン等の半導体基板上に金属線及び誘電材料のような相互接続構造(interconnect features)等の露出した集積回路構造を有していてもよい。相互接続構造に用いられる金属及び合金としては、アルミニウム、銅と合金化されたアルミニウム、銅、チタン、タンタル、コバルト、シリコン、窒化チタン、窒化タンタル、及びタングステンが挙げられるが、これらに制限されるものではない。また、半導体基板上に、層間誘電体層、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン及び炭素ドープ酸化シリコン等の層を有していてもよい。
【0124】
以下、基板の洗浄方法を工程ごとに説明する。
【0125】
〔処理液調製工程A〕
処理液調製工程Aは、上記処理液を調製する工程である。本工程で使用される各成分は、上述した通りである。
本工程の手順は特に制限されず、例えば、所定の成分を撹拌混合することにより処理液を調製する方法が挙げられる。なお、各成分は、一括して添加してもよいし、複数回に渡って分割して添加してもよい。
また、処理液に含まれる各成分は、半導体グレードに分類されるもの、又は、それに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用し、フィルタリングによる異物除去及び/又はイオン交換樹脂等によるイオン成分低減を行ったものを用いることが好ましい。また、原料成分を混合した後に、更にフィルタリングによる異物除去及び/又はイオン交換樹脂等によるイオン成分低減を行うことが好ましい。
【0126】
また、処理液を濃縮液としている場合には、洗浄工程Bを実施する前に、濃縮液を5~2000倍に希釈して希釈液を得た後、この希釈液を用いて洗浄工程Bを実施する。濃縮液を希釈する溶剤としては、水又はイソプロパノールアミンが好ましい。
【0127】
〔洗浄工程B〕
洗浄工程Bで洗浄される洗浄対象物としては、上述した積層物が挙げられ、上述した通り、ドライエッチング工程が施されてホールが形成された積層物10が例示される(
図1参照)。なお、この積層物10には、ホール6内にドライエッチング残渣物12が付着している。
なお、ドライエッチング工程の後に、ドライアッシング工程が行われた積層物を、洗浄対象物としてもよい。
【0128】
洗浄対象物に処理液を接触させる方法は特に制限されないが、例えば、タンクに入れた処理液中に洗浄対象物を浸漬する方法、洗浄対象物上に処理液を噴霧する方法、洗浄対象物上に処理液を流す方法、及び、それらの任意の組み合わせが挙げられる。残渣物除去性の観点から、洗浄対象物を処理液中に浸漬する方法が好ましい。
【0129】
処理液の温度は、90℃以下が好ましく、25~80℃がより好ましく、30~75℃が更に好ましく、40~65℃が特に好ましい。
【0130】
洗浄時間は、用いる洗浄方法及び処理液の温度に応じて調整できる。
浸漬バッチ方式(処理槽内で複数枚の洗浄対象物を浸漬し処理するバッチ方式)で洗浄する場合には、洗浄時間は、例えば、60分間以内であり、1~60分間が好ましく、3~20分間がより好ましく、4~15分間が更に好ましい。
【0131】
枚葉方式で洗浄する場合には、洗浄時間は、例えば、10秒~5分間であり、15秒間~4分間が好ましく、15秒間~3分間がより好ましく、20秒間~2分間が更に好ましい。
【0132】
更に、処理液の洗浄能力をより増進するために、機械的撹拌方法を用いてもよい。
機械的撹拌方法としては、例えば、洗浄対象物上で処理液を循環させる方法、洗浄対象物上で処理液を流過又は噴霧させる方法、及び、超音波又はメガソニックにて処理液を撹拌する方法等が挙げられる。
【0133】
〔リンス工程B2〕
本発明の基板の洗浄方法は、洗浄工程Bの後に、洗浄対象物を溶剤ですすいで清浄する工程(以下「リンス工程B2」と称する。)を更に有していてもよい。
リンス工程B2は、洗浄工程Bに連続して行われ、リンス溶剤(リンス液)で5秒~5分間に渡ってすすぐ工程であることが好ましい。リンス工程B2は、上述の機械的撹拌方法を用いて行ってもよい。
【0134】
リンス溶剤としては、例えば、脱イオン(DI:De Ionize)水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、N-メチルピロリジノン、γ-ブチロラクトン、ジメチルスルホキシド、乳酸エチル、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートが挙げられる。あるいは、pH>8の水性リンス液(希釈した水性の水酸化アンモニウム等)を利用してもよい。
リンス溶剤としては、水酸化アンモニウム水溶液、DI水、メタノール、エタノール、又はイソプロピルアルコールが好ましく、水酸化アンモニウム水溶液、DI水、又はイソプロピルアルコールがより好ましく、水酸化アンモニウム水溶液又はDI水が更に好ましい。
リンス溶剤を洗浄対象物に接触させる方法としては、上述した処理液を洗浄対象物に接触させる方法を同様に適用できる。
リンス工程B2におけるリンス溶剤の温度は、16~27℃が好ましい。
【0135】
〔乾燥工程B3〕
本発明の基板の洗浄方法は、リンス工程B2の後に洗浄対象物を乾燥させる乾燥工程B3を有していてもよい。
乾燥方法としては、特に制限されない。乾燥方法としては、例えば、スピン乾燥法、洗浄対象物上に乾性ガスを流過させる方法、ホットプレート若しくは赤外線ランプのような加熱手段によって基板を加熱する方法、マランゴニ乾燥法、ロタゴニ乾燥法、IPA(イソプロピルアルコール)乾燥法、及び、それらの任意の組み合わせが挙げられる。
乾燥時間は、用いる特定の方法に依存するが、一般的には、30秒間~数分間であることが好ましい。
【0136】
〔粗大粒子除去工程H〕
上記基板の洗浄方法は、上記処理液調製工程Aの後であって上記洗浄工程Bの前に、処理液中の粗大粒子を除去する粗大粒子除去工程Hを有することが好ましい。
処理液中の粗大粒子を低減又は除去することで、洗浄工程Bを経た後の洗浄対象物上に残存する粗大粒子の量を低減できる。この結果、洗浄対象物上の粗大粒子に起因したパターンダメージを抑制でき、デバイスの歩留まり低下及び信頼性低下への影響も抑制できる。
粗大粒子を除去するための具体的な方法としては、例えば、処理液調製工程Aを経た処理液を所定の除粒子径の除粒子膜を用いて濾過精製する方法等が挙げられる。
なお、粗大粒子の定義については、上述のとおりである。
【0137】
〔除電工程I、J〕
上記基板の洗浄方法は、上記処理液調製工程Aの前に、処理液の調製に用いられる水に対して除電を行う除電工程I、及び、上記処理液調製工程Aの後であって上記洗浄工程Bの前に、上記処理液に対して除電を行う除電工程Jからなる群から選択される少なくとも1種の工程を含むことが好ましい。
洗浄対象物へ処理液を供給するための接液部の材質は、処理液に対して金属溶出のない材料で形成される、又は被覆されることが好ましい。上記の材料としては、例えば、液収容体に使用できる容器の内壁に係る材料として既に説明した材料等が挙げられる。
なお、上記材料は樹脂であってもよい。上記材料が樹脂である場合、樹脂は電気伝導率が低く、絶縁性であることが多い。そのため、例えば、上記処理液を、内壁が樹脂で形成された、若しくは被覆された配管に通液した場合、又は、樹脂製の除粒子膜及び樹脂製のイオン交換樹脂膜により濾過精製を行った場合、処理液の帯電電位が増加して静電気災害を引き起こされるおそれがある。
このため、本発明の基板の洗浄方法では、上述の除電工程I及び除電工程Jの少なくとも一方の工程を実施し、処理液の帯電電位を低減させることが好ましい。また、除電を行うことで、基板への異物(粗大粒子等)の付着及び/又は洗浄対象物へのダメージ(腐食)をより抑制できる。
除電方法としては、具体的には、水及び/又は処理液を導電性材料に接触させる方法が挙げられる。
水及び/又は処理液を導電性材料に接触させる接触時間は、0.001~1秒間が好ましく、0.01~0.1秒間がより好ましい。
樹脂の具体的な例としては、高密度ポリエチレン(HDPE)、高密度ポリプロピレン(PP)、6,6-ナイロン、テトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフロロアルキルビニルエーテルの共重合体(PFA)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合体(ECTFE)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)、及び、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)等が挙げられる。
導電性材料としては、ステンレス鋼、金、白金、ダイヤモンド、及び、グラッシーカーボン等が挙げられる。
【0138】
本発明の一の実施態様に係る基板の洗浄方法は、処理液調製工程Aと、洗浄工程Bと、洗浄工程Bで使用された処理液の排液を回収する排液回収工程Cと、回収された処理液の排液を用いて、新たに準備される所定の層を備えた基板を洗浄する洗浄工程Dと、上記洗浄工程Dで使用された上記処理液の排液を回収する排液回収工程Eと、を有し、
上記洗浄工程Dと上記排液回収工程Eとを繰り返し実施して上記処理液の排液をリサイクルする、基板の洗浄方法である。
【0139】
上記実施態様に係る基板の洗浄方法において、処理液調製工程A、洗浄工程Bの態様は、上述したとおりである。また、上記排液を再利用する態様においても、上述した態様で説明した粗大粒子除去工程H、及び除電工程I、Jを有していることが好ましい。また、洗浄工程Bの前に上述した態様で説明した処理液調製工程Aを有していてもよい。
【0140】
回収された処理液の排液を用いて基板の洗浄を実施する洗浄工程Dの態様は、上述したとおりである。
排液回収工程C、Eにおける排液回収手段は特に限定されない。回収した排液は、上記除電工程Jにおいて上述した容器に保存されることが好ましく、この時に除電工程Jと同様の除電工程を行ってもよい。また、回収した排液に濾過等を実施し不純物を除去する工程を設けてもよい。
【実施例】
【0141】
以下に実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により制限的に解釈されるべきものではない。
【0142】
〔処理液の調製〕
下記表に記載した各成分を表に記載の配合で混合し、実施例及び比較例の各処理液を調製した。なお、各処理液において、各種成分の含有量(いずれも質量基準)は表中に記載の通りである。
ここで、表に示す各種成分はいずれも、半導体グレードに分類されるもの、又は、それに準ずる高純度グレードに分類されるものを使用した。
【0143】
以下に、表に記載した各種成分について示す。
【0144】
<「水」欄>
・超純水
【0145】
<「有機溶剤」欄>
・EGBE:エチレングリコールモノn-ブチルエーテル
・EGME:エチレングリコールモノメチルエーテル
・DEGME:ジエチレングリコールモノメチルエーテル
・DEGBE:ジエチレングリコールモノブチルエーテル
・DMF:N,N-ジメチルホルムアミド
・MMB:3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール
・DMSO:ジメチルスルホキシド
・PG:プロピレングリコール
・DEGEE:ジエチレングリコールモノエチルエーテル
【0146】
<「含窒素芳香族複素環化合物」欄>
・5MBTA:5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール(一般式(I)で表される化合物に該当する)
・BTA:ベンゾトリアゾール(一般式(I)で表される化合物に該当する)
・123TZ:1H-1,2,3トリアゾール(一般式(I)で表される化合物に該当する)
・化合物A:下記構造式で表される化合物(一般式(II)で表される化合物に該当する)
・化合物B:下記構造式で表される化合物(一般式(III)で表される化合物に該当する)
・化合物C:下記構造式で表される化合物(一般式(II)で表される化合物に該当する)
・化合物D:1-アルキル置換フェニルテトラゾール(アルキル基が置換されたフェニル基が1位に置換されたテトラゾール。一般式(V)で表される化合物に該当する)
・化合物E:5-アルキル置換フェニルテトラゾール(アルキル基が置換されたフェニル基が5位に置換されたテトラゾール。一般式(V)で表される化合物に該当する)
・化合物X:下記構造式で表される化合物(一般式(II)で表される化合物に該当する)
・化合物Y:下記構造式で表される化合物(一般式(II)で表される化合物に該当する)
・tetrazole:テトラゾール(一般式(IV)で表される化合物に該当する)
・5-aminotetrazole:5-アミノテトラゾール(一般式(IV)で表される化合物に該当する)
【0147】
【0148】
【0149】
<「塩基性化合物」欄>
・DBU:1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(含窒素脂環化合物に該当する。)
・εCAP:ε-カプロラクタム(含窒素脂環化合物に該当する。)
・化合物1:下記構造式で表される化合物(含窒素脂環化合物に該当する。)
・化合物2:下記構造式で表される化合物(含窒素脂環化合物に該当する。)
・化合物3:下記構造式で表される化合物(含窒素脂環化合物に該当する。)
・NH4OH:水酸化アンモニウム
・DABCO:1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(含窒素脂環化合物に該当する。)
・THFA:テトラヒドロフルフリルアミン(含窒素脂環化合物に該当する。)
・2AEPZ:N-(2-アミノエチル)ピペラジン(含窒素脂環化合物に該当する。)
・IE:2,2’-イミノジエタノール
【0150】
【0151】
<「コバルトイオン源」欄>
・CoOx:酸化コバルト(x:1~2)
・Co(OH)x:水酸化コバルト(x:2~3)
・CoSO4:硫酸化コバルト
【0152】
<「添加剤1」欄>
・DTPA:ジエチレントリアミン五酢酸(キレート剤に該当する。)
・HF:フッ化水素(含フッ素化合物に該当する。)
【0153】
<「添加剤2」欄>
・HA:ヒドロキシルアミン(NH2-OH、ヒドロキシルアミン類に該当する。)
・TMAH:テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(4級水酸化アンモニウムに該当する。)
【0154】
<「添加剤3」欄>
TG:1-チオグリセロール(防食剤に該当する。)
【0155】
〔各種定量〕
微量成分については、下記の方法により定量した。
<コバルトイオン含有量>
測定には、Agilent 8800 トリプル四重極ICP-MS(半導体分析用、オプション#200)を用いた。測定結果をもとに、コバルトイオンの含有量を求めた。
【0156】
・測定条件
サンプル導入系は石英のトーチと同軸型PFA(パーフルオロアルコキシアルカン)ネブライザ(自吸用)、及び、白金インターフェースコーンを使用した。クールプラズマ条件の測定パラメータは以下のとおりである。
・RF(Radio Frequency)出力(W):600
・キャリアガス流量(L/min):0.7
・メークアップガス流量(L/min):1
・サンプリング深さ(mm):18
【0157】
<含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量>
測定には、ガスクロマトグラフ質量分析装置(製品名「GCMS-2020」、島津製作所社製、測定条件は以下のとおり)を用いた。
【0158】
(測定条件)
キャピラリーカラム:InertCap 5MS/NP 0.25mmI.D. ×30m df=0.25μm
試料導入法:スプリット 75kPa 圧力一定
気化室温度 :230℃
カラムオーブン温度:80℃(2min)-500℃(13min)昇温速度15℃/min
キャリアガス:ヘリウム
セプタムパージ流量:5mL/min
スプリット比:25:1
インターフェイス温度:250℃
イオン源温度:200℃
測定モード:Scan m/z=85~500
試料導入量:1μL
【0159】
<含窒素脂環化合物(化合物1、化合物2、及び化合物3)の含有量>
含窒素芳香族複素環化合物(B)と同様に、ガスクロマトグラフ質量分析装置(製品名「GCMS-2020」、島津製作所社製、測定条件は上記のとおり)を用いた。
【0160】
〔評価〕
<防食性>
(Co層に対する防食性評価)
Coからなる膜(配線モデル、以下「Co膜」ともいう。)を準備して、そのエッチングレートに基づいて、防食性の評価を行った。Co膜の膜厚は、1000Åの膜厚である。エッチングレートが低い場合は、防食性に優れ、エッチングレートが高い場合は、防食性に劣る、といえる。
実施例及び比較例の各処理液を用いて、Co膜のエッチング処理をした。具体的には、実施例及び比較例の処理液中にCo膜を10分間浸漬して、処理液の浸漬前後におけるCo膜の膜厚差に基づいて、エッチングレート(Å/分)を算出した。
なお、処理前後のCo膜の膜厚は、エリプソメトリー(分光エリプソメーター、商品名「Vase」、ジェー・エー・ウーラム・ジャパン社製)を用いて、測定範囲250-1000nm、測定角度70度及び75度の条件で測定した。
また、Cuからなる膜、Wからなる膜、及びSiO2からなる膜を準備して、上記と同様にしてエッチングレートを算出した。
なお、結果は膜の種類ごとに以下の基準により評価し、測定結果と評価を表にまとめて示した。
【0161】
(評価基準)
「A」:0.5Å/min以下(防食性が特に優れている)
「B」:0.5Å/min超1.0Å/min以下(防食性が優れている)
「C」:1.0Å/min超2.0Å/min以下(実用上使用可能なレベル)
「D」:2.0Å/min超3.0Å/min以下(防食性に問題があり、使用できないレベル)
「E」:3.0Å/min超(金属層が溶解し、使用できないレベル)
【0162】
<残渣物除去性>
基板(Si)上に、Co膜、SiN膜、SiO
2膜、及び所定の開口部を有するメタルハードマスク(TiN)をこの順で備える積層物(処理前積層物に該当)を形成した。得られた積層物を使用し、メタルハードマスクをマスクとしてプラズマエッチングを実施して、Co膜表面が露出するまでSiN膜及びSiO
2膜のエッチングを行い、ホールを形成し、試料1を製造した(
図1参照)。この積層物の断面を走査型電子顕微鏡写真(SEM:Scanning Electron Microscope)で確認すると、ホール壁面にはプラズマエッチング残渣物が認められた。
そして、下記の手順により、残渣物除去性を評価した。まず、60℃に調温した各処理液に、用意した上記試料1の切片(約2.0cm×2.0cm)を浸漬し、10分後に試料1の切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N
2乾燥を行った。その後、浸漬後の試料1の切片表面をSEMで観察し、プラズマエッチング残渣物の除去性(「残渣物除去性」)について、下記の判断基準にしたがって評価を行った。
「A」:5分以内にプラズマエッチング残渣物が完全に除去された。
「B」:5分超、8分以下でプラズマエッチング残渣物が完全に除去された。
「C」:8分超、10分以下でプラズマエッチング残渣物が完全に除去された。
「D」:10分超過した時点でプラズマエッチング残渣物が完全に除去されなかったが、性能に問題ない。
「E」:10分超過した時点でプラズマエッチング残渣物の除去が足らず、性能に影響が出てしまう。
【0163】
<欠陥抑制性>
ウェハ上表面検査装置(SP-5、KLA-Tencor社製)により、直径300mmのシリコン基板表面に存在する直径32nm以上の異物数及び各異物のアドレスを計測した。
そして、スピン回転ウェハ処理装置(イーケーシーテクノロジーズ社製)に、シリコン基板表面に存在する異物数を計測したウェハをセットした。
次に、セットされたウェハの表面に、実施例及び比較例の各処理液を1.5L/minの流量で1分間吐出した。その後、ウェハのスピン乾燥を行った。
得られた乾燥後のウェハについて、ウェハ上表面検査装置を用いて、ウェハ上の異物数及びアドレスを計測した。
得られたパーティクルの数を以下の評価基準にしたがって評価した。結果を表に示す。
「A」:直径32nm以上のパーティクルの数が0個以上100個未満である。
「B」:直径32nm以上のパーティクルの数が100個以上500個未満である。
「C」:直径32nm以上のパーティクルの数が500個以上1000個未満である。
「D」:直径32nm以上のパーティクルの数が1000個以上である。
【0164】
以上の評価結果を下記表に示す。
【0165】
<レジスト残渣剥離試験>
特開2012-194536号の段落0030を参考にして、Si基板上にレジスト膜が形成された試料2を得た。試料2の切片(約2.0cm×2.0cm)を60℃に調温した各処理液に浸漬し、10分後に試料2の切片を取り出し、直ちに超純水で水洗、N2乾燥を行った。その後、浸漬後の試料2の切片表面を目視で観察し、下記判断基準に従って評価した。なお、表中「-」は測定を実施していないことを示す。
「A」:2分以内にレジストが完全に除去された。
「B」:レジストを完全に除去するのにレジスト2分超を要した。
【0166】
なお、下記表において、表1-1に処理液(実施例1~23)の組成を示し、表1-2に、表1-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
表2-1に処理液(実施例24~51)の組成を示し、表2-2に、表2-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
表3-1に処理液(実施例52~74)の組成を示し、表3-2に、表3-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
表4-1に処理液(実施例75~101)の組成を示し、表4-2に、表4-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
表5-1に処理液(実施例102~119)の組成を示し、表5-2に、表5-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
表6-1に処理液(比較例1~6)の組成を示し、表6-2に、表6-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
つまり、例えば、実施例1を例に挙げると、実施例1の処理液は、表1-1に示すように、水(残量部)、有機溶剤(EGBE:3.00質量%)、含窒素芳香族複素環化合物(A)(5MBTA:0.20質量%)、及び含窒素芳香族複素環化合物(B)(化合物A:8質量ppm)からなる。また、表1-2に示すように、実施例1中、含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比は250である。また、実施例1の処理液の防食性は、Coに対する防食性が0.7Å/分(評価B)、Cuに対する防食性が0.8Å/分(評価B)、Wに対する防食性が1.2Å/分(評価C)、SiO2に対する防食性が0.6Å/分(評価B)である。また、実施例1の処理液は、残渣物除去性がC評価であり、欠陥抑制性はB評価である。
なお、下記表において、例えば「1.E+01」等の表記は、1.0×10の1乗を意味する。つまり、「2.E×05」とは、2.0×10の5乗を意味する。
【0167】
【0168】
【0169】
【0170】
【0171】
【0172】
【0173】
【0174】
【0175】
【0176】
【0177】
【0178】
【0179】
表中の結果から、実施例の処理液によれば、処理対象物に対する防食性(金属層に対する防食性)、残渣物除去性、及び欠陥抑制性に優れることが明らかである。
一方、比較例の処理液は、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性が鼎立しないことが明らかである。
【0180】
また、実施例4、及び実施例19~23の対比から、本発明の処理液中、含窒素芳香族複素環化合物(B)に対する含窒素芳香族複素環化合物(A)の質量含有比が、100以上の場合、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れ、15000以下の場合、金属層に対する防食性がより優れることが確認された。
また、実施例4、及び実施例19~23の対比から、本発明の処理液中、含窒素芳香族複素環化合物(B)の含有量が、処理液の全質量に対して、0.5質量ppm以上の場合、金属層に対する防食性がより優れ、80質量ppm以下の場合、残渣物除去性と欠陥抑制性がより優れることが確認された。
また、実施例1、及び実施例5~10の対比、実施例2、及び実施例11~14の対比、実施例33~35の対比から、コバルトイオンに対する含窒素芳香族複素環化合物(B)の質量含有比が、1.0×104以上の場合、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れ、1.0×105以下の場合、金属層に対する防食性がより優れることが確認された。
また、実施例32~35の対比から、コバルトイオンに対する含フッ素化合物の質量含有比が、4.0×106~5.0×107である場合、残渣物除去性がより優れることが確認された。
また、実施例2、及び実施例11~14の対比から、コバルトイオンに対する塩基性化合物の質量含有比が、1.0×107以上である場合、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れ、上記質量含有比が1.0×108以下である場合、防食性がより優れることが確認された。
また、実施例1、及び実施例5~10の対比、実施例2、及び実施例11~14の対比、実施例33~35の対比から、コバルトイオンの含有量は、処理液の全質量に対して、100質量ppt以上の場合、金属層に対する防食性がより優れ、1200質量ppt以下の場合、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れることが確認された。
【0181】
また、実施例4、及び実施例15~16の対比から、含窒素芳香族複素環化合物(A)として、ベンゾトリアゾール骨格(一般式(I)で表される化合物中、R11とR12とが結合して環を形成する構造)の含窒素芳香族複素環化合物を用い、且つ、含窒素芳香族複素環化合物(B)として、一般式(III)で表される化合物を用いた場合、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れることが確認された。
【0182】
また、実施例4、及び実施例17~18の対比から、含窒素芳香族複素環化合物(A)として、R11とR12とが結合して形成される環上に置換基を有するベンゾトリアゾール骨格(一般式(I)で表される化合物中、R11とR12とが結合して環を形成する構造)の含窒素芳香族複素環化合物を用いた場合、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れることが確認された。
【0183】
また、実施例3、及び実施例24~27の対比から、塩基性化合物として含窒素脂環化合物を2種以上含む場合(好ましくは、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)と、ε-カプロラクタム、化合物1、化合物2、及び化合物3からなる群より選ばれる1種以上と、を含む場合)、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性がより優れることが確認された。
【0184】
〔処理液の調製〕
塩基性化合物の含有量を表7-1に記載した配合量とした以外は実施例36の処理液と同様の方法により、実施例120~122の各処理液を調製した。なお、各処理液において、各種成分の含有量(いずれも質量基準)は表中に記載の通りである。また、得られた実施例120~122の各処理液のpHを公知のpHメーターにて測定した。
結果を表2に示す。
なお、下記表2において、表7-1に処理液(実施例120~122)の組成を示し、表7-2に、表7-1に示した処理液の各種組成比及び評価結果を示す。
【0185】
【0186】
【0187】
表7-2の結果から、処理液は、pHが異なる場合においても、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性に優れることが明らかである。また、処理液のpHが、13以下である場合(好ましくはpHが11超13以下である場合)、金属層に対する防食性、残渣物除去性、及び欠陥抑制性により優れることが明らかである。
【符号の説明】
【0188】
1 基板
2 金属層
3 エッチング停止層
4 層間絶縁膜
5 メタルハードマスク
6 ホール
10 積層体
11 内壁
11a 断面壁
11b 底壁
12 ドライエッチング残渣物