IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ キヤノントッキ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-成膜装置及び電子デバイスの製造方法 図1
  • 特許-成膜装置及び電子デバイスの製造方法 図2
  • 特許-成膜装置及び電子デバイスの製造方法 図3
  • 特許-成膜装置及び電子デバイスの製造方法 図4
  • 特許-成膜装置及び電子デバイスの製造方法 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-16
(45)【発行日】2022-06-24
(54)【発明の名称】成膜装置及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20220617BHJP
   C23C 14/04 20060101ALI20220617BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20220617BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20220617BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20220617BHJP
【FI】
C23C14/24 K
C23C14/04 A
H05B33/10
H05B33/14 A
H01L21/68 R
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020200859
(22)【出願日】2020-12-03
(65)【公開番号】P2021102811
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2020-12-03
(31)【優先権主張番号】10-2019-0173918
(32)【優先日】2019-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】青沼 大介
(72)【発明者】
【氏名】菅原 洋紀
【審査官】山本 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-116679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101418433(CN,A)
【文献】特開2002-075639(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
C23C 14/04
H05B 33/10
H01L 51/50
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を保持する基板保持面を有する静電チャックと、
前記基板保持面側に設置され、マスクを保持するためのマスク支持ユニットと、
前記静電チャックに対して前記基板保持面の反対側に設置され、マスクに磁力を印加するための磁力印加手段と、
前記静電チャックに対して前記基板保持面の反対側に設置され、基板を冷却するための冷却手段と、を備え、マスクを介して基板に蒸着材料を成膜する成膜装置において、
前記磁力印加手段は、第1プレート部材と、前記第1プレート部材の前記静電チャックに対向する面上に設置されるマグネットとを有し、
前記冷却手段は、前記第1プレート部材と前記静電チャックとの間に配置された第2プレート部材と、前記第2プレート部材の前記第1プレート部材に対向する面上に設置される冷却管とを有し、
前記基板保持面に平行な面内において、前記マグネットの少なくとも一部は、前記冷却管の隣り合う2つの部分の間に配置されることを特徴とする成膜装置。
【請求項2】
前記基板保持面に平行な内において、前記マグネットと前記冷却管は、交互に配置されることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項3】
前記冷却管は、渦巻き状に配置されることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項4】
前記冷却管は、ジグザグ状に配置されることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項5】
前記冷却管は、線状であることを特徴とする請求項に記載の成膜装置。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか一項に記載の成膜装置を用いて、電子デバイスを製造することを特徴とする電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マスクを介して、所定のパターンで基板に蒸着材料を成膜するための成膜装置及びこれを用いて電子デバイスを製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
有機EL表示装置(有機ELディスプレイ)の製造においては、有機EL表示装置を構成する有機発光素子(有機EL素子;OLED)を形成する際に、成膜装置の蒸発源から蒸発した蒸着材料を、画素パターンが形成されたマスクを介して、基板に蒸着させることで、有機物層や金属層を形成する。
【0003】
成膜装置においては、マスク上の画素パターンを高い精度で基板上に成膜するために、基板への蒸着が行われる前にマスクと基板の相対的位置を高い精度で調整し、マスクを基板の成膜面に密着させる。マスクを基板の成膜面に密着させるための一つの方法として、マグネット板などのような磁力印加手段を使用し、基板の上部から基板の下部の金属製マスクに磁力を加える方法が知られている。
【0004】
特許文献1には、静電チャックを用いて基板を保持した状態で、磁力印加手段で基板とマスクを密着させる構成の成膜装置において、基板とマスクを隙間なく密着させるための技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-116679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の成膜装置においては、基板に蒸着された材料の変質や劣化を抑制するために、冷却手段が、静電チャックと磁力印加手段の間に設置されている。ところが、このような成膜装置においては、磁力印加手段とマスク間の距離が遠くなるので、磁力印加手段によるマスクの吸着力が低下し、成膜精度を低下させる要因となり得る。
【0007】
本発明は、磁力印加手段によるマスクの吸着力が低下することを抑制できる成膜装置及び電子デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による成膜装置は、基板を保持する基板保持面を有する静電チャックと、前記基板保持面側に設置され、マスクを保持するためのマスク支持ユニットと、前記静電チャックに対して前記基板保持面の反対側に設置され、マスクに磁力を印加するための磁力印加手段と、前記静電チャックに対して前記基板保持面の反対側に設置され、基板を冷却するための冷却手段と、を備え、マスクを介して基板に蒸着材料を成膜する成膜装置において、前記磁力印加手段は、第1プレート部材と、前記第1プレート部材の前記静電チャックに対向する面上に設置されるマグネットとを有し、前記冷却手段は、前記第1プレート部材と前記静電チャックとの間に配置された第2プレート部材と、前記第2プレート部材の前記第1プレート部材に対向する面上に設置される冷却管とを有し、前記基板保持面に平行な面内において、前記マグネットの少なくとも一部は、前記冷却管の隣り合う2つの部分の間に配置されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、磁力印加手段によるマスクの吸着力が低下することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、電子デバイスの製造装置の一部の模式図である。
図2図2は、本発明の一実施形態による成膜装置の模式図である。
図3図3は、本発明の一実施形態による成膜装置の冷却手段及び磁力印加手段の構成及び配置構造を模式的に示す断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態による成膜装置の冷却手段及び磁力印加手段の構成及び配置構造を模式的に示す平面図である。
図5図5は、電子デバイスを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態及び実施例を説明する。ただし、以下の実施形態及び実施例は本発明の好ましい構成を例示的に示すものにすぎず、本発明の範囲はそれらの構成に限定されない。また、以下の説明における、装置のハードウェア構成及びソフトウェア構成、処理フロー、製造条件、寸法、材質、形状などは、特定的な記載がないかぎりは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0012】
本発明は、基板の表面に各種材料を堆積させて成膜を行う装置に適用することができ、真空蒸着によって所望のパターンの薄膜(材料層)を形成する装置に好ましく適用することができる。基板の材料としては、ガラス、高分子材料のフィルム、金属、シリコンなどの任意の材料を選択することができ、基板は、例えば、ガラス基板上にポリイミドなどのフィルムが積層された基板又はシリコンウエハであってもよい。また、蒸着材料としては、有機材料、金属性材料(金属、金属酸化物など)などの任意の材料を選択してもよい。なお、真空蒸着装置以外にも、スパッタ装置やCVD(Chemical Vapor Deposition)装置を含む成膜装置にも、本発明を適用することができる。本発明の技術は、具体的には、有機電子デバイス(例えば、有機EL素子、薄膜太陽電池)、光学部材などの製造装置に適用可能である。その中でも、蒸着材料を蒸発させてマスクを介して基板に蒸着させることで有機EL素子を形成する有機EL素子の製造装置は、本発明の好ましい適用例の一つである。
【0013】
<電子デバイスの製造装置>
図1は、電子デバイスの製造装置の一部の構成を模式的に示す平面図である。
【0014】
図1の製造装置は、例えば、有機EL表示装置の表示パネルの製造に用いられる。VR
HMD用の表示パネルの場合、所定のサイズのシリコンウエハに有機EL素子の形成のための成膜を行った後、素子形成領域の間の領域(スクライブ領域)に沿って該シリコンウエハを切り出して、複数の小さなサイズのパネルを製作する。スマートフォン用の表示パネルの場合は、4.5世代の基板(約700mm×約900mm)や6世代のフルサイズ(約1500mm×約1850mm)又はハーフカットサイズ(約1500mm×約925mm)の基板に、有機EL素子の形成のための成膜を行った後、該基板を切り抜いて複数の小さなサイズのパネルを製作する。
【0015】
電子デバイスの製造装置は、一般的に、複数のクラスタ装置1と、クラスタ装置の間を繋ぐ中継装置とを含む。
【0016】
クラスタ装置1は、基板Wに対する処理(例えば、成膜)を行う複数の成膜装置11と、使用前後のマスクMを収納する複数のマスクストック装置12と、その中央に配置される搬送室13と、を具備する。搬送室13は、図1に示すように、複数の成膜装置11及びマスクストック装置12のそれぞれと接続される。
【0017】
搬送室13内には、基板又はマスクを搬送する搬送ロボット14が配置されている。搬
送ロボット14は、上流側に配置された中継装置のパス室15から成膜装置11へと基板Wを搬送する。また、搬送ロボット14は、成膜装置11とマスクストック装置12との間でマスクMを搬送する。搬送ロボット14は、例えば、多関節アームに、基板W又はマスクMを保持するロボットハンドが取り付けられた構造を有するロボットである。
【0018】
成膜装置11(蒸着装置とも呼ぶ)では、蒸発源に収納された蒸着材料がヒータによって加熱されて蒸発し、マスクMを介して基板W上に蒸着される。搬送ロボット14との基板W/マスクMの受け渡し、基板WとマスクMの相対位置の調整(アライメント)、マスクM上への基板Wの固定、成膜(蒸着)などの一連の成膜プロセスは、成膜装置11によって行われる。
【0019】
マスクストック装置12には、成膜装置11での成膜工程に使われる新しいマスクと、使用済みのマスクとが、二つのカセットに分けて収納される。搬送ロボット14は、使用済みのマスクを成膜装置11からマスクストック装置12のカセットに搬送し、マスクストック装置12の他のカセットから新しいマスクを成膜装置11に搬送する。
【0020】
クラスタ装置1には、基板Wの流れ方向において上流側から搬送されてきた基板Wを当該クラスタ装置1に搬送するパス室15と、当該クラスタ装置1で成膜処理が完了した基板Wを下流側のクラスタ装置に搬送するためのバッファー室16が連結して設けられる。搬送室13の搬送ロボット14は、上流側のパス室15から基板Wを受け取って、当該クラスタ装置1内の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11a)に搬送する。また、搬送ロボット14は、成膜処理が完了した基板Wを複数の成膜装置11の一つ(例えば、成膜装置11b)から受け取って、下流側に連結して設けられたバッファー室16に搬送する。
【0021】
バッファー室16とその下流側のパス室15との間には、基板の向きを変える旋回室17が設置されてもよい。旋回室17には、バッファー室16から基板Wを受け取って基板Wを180°回転させ、パス室15に搬送するための搬送ロボット18が設けられる。これにより、上流側のクラスタ装置と下流側のクラスタ装置とで基板Wの向きが同じになり、基板処理が容易になる。
【0022】
パス室15、バッファー室16、旋回室17は、クラスタ装置間を連結する、いわゆる中継装置であり、クラスタ装置の上流側及び/又は下流側に設置される中継装置は、パス室、バッファー室、旋回室のうち少なくとも1つを含む。
【0023】
成膜装置11、マスクストック装置12、搬送室13、パス室15、バッファー室16、旋回室17などは、有機発光素子の製造の過程で、高真空状態に維持される。
【0024】
本実施例では、図1を参照して、電子デバイスの製造装置の構成について説明したが、本発明はこれに限定されず、他の種類の装置やチャンバーを有してもよく、これらの装置やチャンバー間の配置が変わってもよい。例えば、本発明は、基板WとマスクMを、成膜装置11ではなく、別の装置又はチャンバーで合着させた後、これをキャリアに乗せて、一列に並んだ複数の成膜装置を通して搬送させながら成膜工程を行うインラインタイプの製造装置にも適用することができる。
【0025】
以下、成膜装置11の具体的な構成について説明する。
【0026】
<成膜装置>
図2は、成膜装置11の構成を示す模式図である。以下の説明においては、基板Wの成膜面に平行な面(XY平面)において交差する2つの方向をX方向(第1方向)とY方向
(第2方向)とし、基板Wの成膜面に垂直な鉛直方向をZ方向(第3方向)とするXYZ直交座標系を用いる。また、Z軸まわりの回転角(回転方向)をθで表す。
【0027】
成膜装置11は、真空雰囲気又は窒素ガスなどの不活性ガス雰囲気に維持される真空容器21と、真空容器21の内部に設けられる、基板支持ユニット22と、マスク支持ユニット23と、静電チャック24と、蒸発源25とを含む。
【0028】
基板支持ユニット22は、搬送室13に設けられた搬送ロボット14によって搬送される基板Wを受取って保持する手段であり、基板ホルダとも呼ばれる。
【0029】
マスク支持ユニット23は、搬送ロボット14によって搬送されるマスクMを受取って保持する手段であり、マスクホルダとも呼ばれる。マスク支持ユニット23は、静電チャック24の基板吸着面(基板保持面)側に設けられている。
【0030】
マスクMは、基板W上に形成する薄膜パターンに対応する開口を有し、マスク支持ユニット23によって支持される。特に、スマートフォン向けの有機EL素子を製造するのに用いられるマスクは、微細な開口のパターンが形成された金属製マスクであり、FMM(Fine Metal Mask)とも呼ばれる。
【0031】
基板支持ユニット22の上方には、基板Wを吸着して固定するための基板吸着手段としての静電チャック24が設けられる。
【0032】
静電チャック24は、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が高い誘電体が介在して、電極と被吸着体との間のクーロン力によって吸着が行われるクーロン力タイプの静電チャックであってもよく、電極と吸着面との間に相対的に抵抗が低い誘電体が介在して、誘電体の吸着面と被吸着体との間に発生するジョンソン・ラーベック力によって吸着が行われるジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックであってもよく、不均一電界によって被吸着体を吸着するグラジエント力タイプの静電チャックであってもよい。
【0033】
被吸着体が導体又は半導体(シリコンウエハ)である場合には、クーロン力タイプの静電チャック又はジョンソン・ラーベック力タイプの静電チャックを用いることが好ましい。被吸着体がガラスのような絶縁体である場合には、グラジエント力タイプの静電チャックを用いることが好ましい。
【0034】
静電チャック24は、一つのプレートで形成されてもよく、吸着力を独立的に制御できる複数のサブプレートを有するように形成されてもよい。また、一つのプレートで形成される場合にも、その内部に複数の電極部を有し、一つのプレート内で電極部ごとに吸着力を独立的に制御することができるようにしてもよい。
【0035】
基板吸着手段として、静電引力による静電チャックの他に、粘着力による粘着式のチャックを使ってもよい。
【0036】
成膜装置11は、静電チャック24の基板吸着面とは反対側に設置された冷却手段30と磁力印加手段32(図3参照)を備える。冷却手段30は、冷媒が流れる冷却管を有し、成膜動作中に基板W及び静電チャック24の温度上昇を抑制し、基板W上に堆積された有機材料の変質や劣化を抑制することができる。磁力印加手段32は、ヨーク板(第1プレート部材)と、ヨーク板に設けられた複数のマグネットを有し、磁力によってマスクMを引き寄せ、成膜時の基板WとマスクMの密着性を高めることができる。
【0037】
本発明の実施形態では、冷却手段30の冷却管と磁力印加手段32のマグネットは、静
電チャック24の基板吸着面に垂直な方向において、実質的に同じ領域に位置する。これにより、成膜装置11が冷却手段30を具備する場合でも、磁力印加手段32とマスクMとの間の距離が遠くならないので、磁力印加手段32によってマスクMに作用する磁力が低下することを抑制できる。
【0038】
蒸発源25は、基板に成膜される蒸着材料が収納されるるつぼ(不図示)、るつぼを加熱するためのヒータ(不図示)、蒸発源からの蒸発レートが一定になるまで蒸着材料が基板に飛散することを阻むシャッタ(不図示)などを含む。蒸発源25は、点(point)蒸発源や線状(linear)蒸発源、面状蒸発源など、用途に従って多様な構成を有することができる。
【0039】
成膜装置11は、基板に蒸着された膜の厚さを測定するための膜厚モニタ(不図示)及び膜厚算出ユニット(不図示)を含む。
【0040】
真空容器21の上部外側(大気側)には、基板支持ユニットアクチュエータ26、マスク支持ユニットアクチュエータ27、静電チャックアクチュエータ28、位置調整機構29などが設けられる。基板支持ユニットアクチュエータ26は、基板支持ユニット22を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。マスク支持ユニットアクチュエータ27は、マスク支持ユニット23を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。静電チャックアクチュエータ28は、静電チャック24を昇降(Z方向移動)させるための駆動手段である。
【0041】
位置調整機構29は、基板WとマスクMとの相対位置を調整するための手段としてのアライメントステージ機構である。これらのアクチュエータと位置調整機構は、例えば、モータとボールねじ、又はモータとリニアガイドなどで構成される。位置調整機構29は、静電チャック24又は静電チャックアクチュエータ28全体を基板支持ユニット22及びマスク支持ユニット23に対して、XYθ方向(X方向、Y方向、回転方向の少なくとも一つの方向)に移動及び/又は回転させる。なお、本実施形態では、基板Wを吸着した状態で、静電チャック24をXYθ方向に位置調整することで、基板WとマスクMとの相対位置を調整する。ただし、位置調整機構29は、静電チャック24又は静電チャックアクチュエータ28ではなく、基板支持ユニット22又は基板支持ユニットアクチュエータ26及びマスク支持ユニット23又はマスク支持ユニットアクチュエータ27を静電チャック24に対してXYθ方向に相対的に移動させる構成としてもよい。
【0042】
真空容器21の外側上面には、真空容器21の上面に設けられた透明窓を介して、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークを撮影するためのアライメント用カメラ31が設置される。アライメント用カメラ31は、基板W及びマスクMに形成されたアライメントマークに対応する位置に設けられる。例えば、円形の基板Wにおいて矩形をなす4つのコーナーのうち、少なくとも対角上の二つのコーナー又は4つのコーナーすべてにアライメント用カメラ31を設置してもよい。
【0043】
成膜装置11は、アライメント用カメラ31によってアライメントマークを撮影する際に、アライメントマークを照らす照明用光源をさらに含む。真空容器21の内部は暗いので、光源でアライメントマークを照明することにより、より鮮明な画像を取得することができる。このために、光源は、同軸照明であることが好ましいが、これに限定されない。光源は、真空容器21の外部上側に設置されて、上方からアライメントマークを照らしてもよく、又は下方からアライメントマークを照らすよう真空容器21の内部に設置されてもよい。
【0044】
成膜装置11は、制御部33を具備する。制御部33は、基板W/マスクMの搬送及び
アライメント、蒸発源25の制御、成膜動作の制御などの機能を有する。
【0045】
制御部33は、例えば、プロセッサ、メモリ、ストレージ、I/Oなどを持つコンピュータによって構成可能である。この場合、制御部33の機能はメモリ又はストレージに格納されたプログラムをプロセッサが実行することにより実現される。コンピュータとしては、汎用のパーソナルコンピュータを使用してもよく、組込み型のコンピュータ又はPLC(programmable logic controller)を使用してもよい。又は、制御部の機能の一部又は全部をASICやFPGAのような回路で構成してもよい。また、成膜装置ごとに制御部が設置されていてもよく、一つの制御部が複数の成膜装置を制御するように構成してもよい。
【0046】
<冷却手段及び磁力印加手段>
図3図4は、本発明の一実施形態による成膜措置11において、冷却手段30と磁力印加手段32の構成及び配置構造を模式的に示す断面図と平面図である。
【0047】
冷却手段30は、冷媒が流れる冷却管30aと、被冷却体としての静電チャック24又は基板Wとの接触面積を増やすための冷却板30b(第2プレート部材)とを有し、静電チャック24の基板吸着面24a(基板保持面)の反対側に配置されている。
【0048】
冷媒は、冷却管30aの入口(IN)から流入されて、出口(OUT)から流出される。図4において、冷却管30aの入口(IN)と出口(OUT)の位置は、例示的なものである。冷却管30aを通して冷媒が流れることによって、その下部の静電チャック24及び、静電チャック24に吸着されている基板Wを冷却させることができる。
【0049】
本発明の一実施形態による成膜装置11の冷却手段30において、冷却管30aの形状は線状である。ここで、線状とは、入口(IN)から出口(OUT)まで冷却管30aが途中で分かれることなく一つの路でつながっていることを意味する。冷却管30aが線状であることで、冷却管30a内を通って流れる冷媒の流れが停滞することがなく、効果的な冷却が可能となる。
【0050】
具体的に、冷却手段30の冷却管30aは、静電チャック24と基板Wを効果的に冷却するよう、様々な形状で設けることができる。例えば、図4(a)に示すように、冷却管30aは、渦巻き状に構成してもよく、又は、図4(b)に示すように、ジグザグ状に構成してもよい。この構成によれば、冷却手段30における静電チャック24に対向する平面の全域にわたって冷媒の流れが存在するため、静電チャック24と基板(W)の全体を冷却することができる。
【0051】
磁力印加手段32は、前述したように、ヨーク板(第1プレート部材)32bと、第1プレート部材32bに設けられ、磁力を発生する複数のマグネット32aを含む。磁力印加手段32も、冷却手段30と同様に、静電チャック24の基板吸着面24aの反対側に配置されている。マグネット32aによって生じた磁力によって、マスクMを静電チャック24の方に引き寄せて、基板Wに密着させることができる。
【0052】
本実施形態の一態様によれば、冷却手段30の冷却管30aは、磁力印加手段32の第1プレート部材32bに対して、静電チャック24に対向する面に設置されている。そして、冷却管30aは、静電チャック24の基板吸着面24aに垂直の方向において、マグネット32aと実質的に同じ領域に位置する。すなわち、基板吸着面24aと交差する交差方向において磁力印加手段32と冷却手段30は重複して配置される。特に本実施形態の一態様では、前記交差方向においてマグネット32aと冷却管30aは重複して配置されている。マグネット32aは、基板吸着面24aから離れる方向において冷却管30a
と同じ位置に設けられるため、マグネット32aの基板吸着面24a(又はマスクM)からの距離は冷却管30aの存在によって影響を受けない。この構成によると、マグネット32aとマスクMとの間の距離を近くすることができ、マグネット32aによってマスクMへ作用する磁力(引力)の大きさが弱まることがない。
【0053】
マグネット32aの少なくとも一部は、図4に示すように、基板吸着面24aに平行な面内において、隣接する冷却管30aの間の領域に配置される。これによって、基板吸着面24aに平行な面内において、冷却管30aとマグネット32aは、図3に図示するように、交互に配置される。
【0054】
本実施形態の一態様によれば、マグネット32aは、冷却管30aとともに第1プレート部材32bの静電チャック24に対向する面上に設置されるが、本発明は、これに限定されない。例えば、マグネット32aは、第1プレート部材32bに設けられ、冷却管30aは、第2プレート部材30bの、静電チャック32に対向する面の反対側の面に取り付けてもよい。
【0055】
本発明の成膜装置は、磁力印加手段及び冷却手段が、静電チャック24の基板吸着面に垂直な方向において、同じ領域に位置するので、冷却手段によって基板を冷却しながらも、磁力印加手段によってマスクに作用する磁力が低下することを抑制することができる。
【0056】
<電子デバイスの製造方法>
次に、本実施形態の成膜装置を用いた電子デバイスの製造方法の一例を説明する。以下、電子デバイスの例として有機EL表示装置の構成及び製造方法を例示する。
【0057】
まず、製造する有機EL表示装置について説明する。図5(a)は有機EL表示装置60の全体図、図5(b)は1画素の断面構造を表している。
【0058】
図5(a)に示すように、有機EL表示装置60の表示領域61には、発光素子を複数備える画素62がマトリクス状に複数配置されている。発光素子のそれぞれは、一対の電極に挟まれた有機層を備えた構造を有している。なお、ここでいう画素とは、表示領域61において所望の色の表示を可能とする最小単位を指している。本実施例にかかる有機EL表示装置の場合、互いに異なる発光を示す第1発光素子62R、第2発光素子62G、第3発光素子62Bの組合せにより画素62が構成されている。画素62は、赤色発光素子と緑色発光素子と青色発光素子の組合せで構成されてもよく、また、黄色発光素子とシアン発光素子と白色発光素子の組み合わせで構成されてもよく、少なくとも1色以上であれば特に制限されるものではない。
【0059】
図5(b)は、図5(a)のA-B線における部分断面模式図である。画素62は、基板63上に、陽極64と、正孔輸送層65と、発光層66R、66G、66Bのいずれかと、電子輸送層67と、陰極68と、を備える有機EL素子を有している。これらのうち、正孔輸送層65、発光層66R、66G、66B、及び電子輸送層67が有機層に当たる。また、本実施形態では、発光層66Rは赤色を発する有機EL層、発光層66Gは緑色を発する有機EL層、発光層66Bは青色を発する有機EL層である。発光層66R、66G、66Bは、それぞれ赤色、緑色、青色を発する発光素子(有機EL素子と記述する場合もある)に対応するパターンに形成されている。また、陽極64は、発光素子ごとに分離して形成されている。正孔輸送層65と電子輸送層67と陰極68は、複数の発光素子62R、62G、62Bに対して共通に形成されていてもよいし、発光素子ごとに形成されていてもよい。なお、陽極64と陰極68とが異物によってショートするのを防ぐために、陽極64間に絶縁層69が設けられている。さらに、有機EL層は水分や酸素によって劣化するため、水分や酸素から有機EL素子を保護するための保護層70が設けら
れている。
【0060】
図5(b)では正孔輸送層65や電子輸送層67が一つの層で示されているが、有機EL表示素子の構造によって、正孔ブロック層や電子ブロック層を含む複数の層で形成されてもよい。また、陽極64と正孔輸送層65との間には陽極64から正孔輸送層65への正孔の注入が円滑に行われるようにすることのできるエネルギーバンド構造を有する正孔注入層を形成することもできる。同様に、陰極68と電子輸送層67の間にも電子注入層が形成されことができる。
【0061】
次に、有機EL表示装置の製造方法の例について具体的に説明する。
【0062】
まず、有機EL表示装置を駆動するための回路(不図示)及び陽極64が形成された基板63を準備する。
【0063】
陽極64が形成された基板63の上にアクリル樹脂をスピンコートで形成し、アクリル樹脂をリソグラフィ法により、陽極64が形成された部分に開口が形成されるようにパターニングし絶縁層69を形成する。この開口部が、発光素子が実際に発光する発光領域に相当する。
【0064】
絶縁層69がパターニングされた基板63を第1の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて基板を保持し、正孔輸送層65を、表示領域の陽極64の上に共通する層として成膜する。正孔輸送層65は真空蒸着により成膜される。実際には正孔輸送層65は表示領域61よりも大きなサイズに形成されるため、高精細なマスクは不要である。
【0065】
次に、正孔輸送層65までが形成された基板63を第2の有機材料成膜装置に搬入し、静電チャックにて保持する。基板とマスクとのアライメントを行い、静電チャック24に基板を介してマスクを吸着させた後、赤色を発する発光層66Rを成膜する。
【0066】
発光層66Rの成膜と同様に、第3の有機材料成膜装置により緑色を発する発光層66Gを成膜し、さらに第4の有機材料成膜装置により青色を発する発光層66Bを成膜する。発光層66R、66G、66Bの成膜が完了した後、第5の成膜装置により表示領域61の全体に電子輸送層67を成膜する。電子輸送層67は、3色の発光層66R、66G、66Bに共通の層として形成される。
【0067】
電子輸送層67まで形成された基板を金属性蒸着材料成膜装置で移動させて陰極68を成膜する。
【0068】
絶縁層69がパターニングされた基板63を成膜装置に搬入してから保護層70の成膜が完了するまでは、水分や酸素を含む雰囲気にさらしてしまうと、有機EL材料からなる発光層が水分や酸素によって劣化してしまうおそれがある。従って、本例において、成膜装置間の基板の搬入搬出は、真空雰囲気又は不活性ガス雰囲気の下で行われる。
【0069】
前記実施例は本発明の一例を示すものであり、本発明は前記実施例の構成に限定されないし、その技術思想の範囲内で適切に変形してもよい。
【符号の説明】
【0070】
22:基板支持ユニット、23:マスク支持ユニット、24:静電チャック、29:位置調整機構、30:冷却手段、30a:冷却管、31:アライメント用カメラ、32:磁力印加手段、32a:マグネット
図1
図2
図3
図4
図5