(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】複合材
(51)【国際特許分類】
C22C 1/08 20060101AFI20220620BHJP
B22F 3/11 20060101ALI20220620BHJP
B22F 3/02 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
C22C1/08 C
B22F3/11 A
B22F3/02 M
(21)【出願番号】P 2020570788
(86)(22)【出願日】2019-06-28
(86)【国際出願番号】 KR2019007900
(87)【国際公開番号】W WO2020005014
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2020-12-18
(31)【優先権主張番号】10-2018-0075959
(32)【優先日】2018-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ソ・ジン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミン・シン
(72)【発明者】
【氏名】ドン・ウ・ユ
【審査官】松村 駿一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第107936777(CN,A)
【文献】特表2014-534645(JP,A)
【文献】特開平09-162336(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 1/08
B22F 3/11
B22F 3/02
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面又は内部に金属酸化物が形成されている金属フォーム及び前記金属フォームの表面又は金属フォームの内部に存在する高分子成分を含み、
前記金属酸化物は、縦横比が1~8の範囲内である突起形状であり、
熱伝導度が0.4W/mK以上である、複合材。
【請求項2】
金属フォームの表面に存在する金属酸化物の面積割合が5%~60%の範囲内である、請求項
1に記載の複合材。
【請求項3】
金属フォームの厚さ(MT)及び全体厚さ(T)の割合(T/MT)が2.5以下である、請求項1
又は2に記載の複合材。
【請求項4】
高分子成分の体積(PV)と金属フォームの体積(MV)の割合(MV/PV)は、10以下である、請求項1~
3のいずれか一項に記載の複合材。
【請求項5】
金属成分を含む金属構造体を焼結して多孔性金属焼結体を得るステップ、
前記焼結に続いて前記多孔性金属焼結体を酸素と接触させる
ことにより、突起形状である金属酸化物を成長させるステップ、及び、
前記多孔性金属焼結体の表面又は内部に高分子成分を導入するステップ、
を含
み、
前記突起形状である金属酸化物を成長させるステップは、前記金属構造体の焼結後に前記金属焼結体を冷却させるステップ、及び、前記冷却の過程で温度が300℃~600℃の範囲内になったときに前記金属焼結体を酸素と接触させるステップ、を含む、熱伝導度が0.4W/mK以上である複合材の製造方法。
【請求項6】
金属構造体は、金属成分、分散剤及びバインダーを含むスラリーで製造する、請求項
5に記載の複合材の製造方法。
【請求項7】
分散剤は、アルコールである、請求項
6に記載の複合材の製造方法。
【請求項8】
バインダーは、アルキルセルロース、ポリアルキレンカーボネート又はポリビニルアルコール化合物である、請求項
6又は
7に記載の複合材の製造方法。
【請求項9】
スラリーは、金属成分100重量部に対して、1~500重量部のバインダーを含む、請求項
6~
8のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項10】
スラリーは、バインダー100重量部に対して、10~2,000重量部の分散剤を含む、請求項
6~
9のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項11】
酸素との接触は、
320℃~600℃の温度で行う、請求項
5~
10のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項12】
突起形状である金属酸化物を成長させるステップにおいて、金
属焼結体を自然冷却させ
る、請求項
5~
11のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【請求項13】
酸素との接触は、1ppm~10,000ppmの酸素濃度下で行う、請求項
5~
12のいずれか一項に記載の複合材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互引用
本出願は、2018年6月29日に出願された大韓民国特許出願第10-2018-0075959号に基づく優先権の利益を主張し、該当大韓民国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
技術分野
本出願は、複合材に関する。
【背景技術】
【0003】
放熱素材は多様な用途で用いられ得る。例えば、バッテリーや各種電子機器は、作動過程で熱が発生するため、このような熱を効果的に制御できる素材が要求される。
【0004】
放熱特性が良い素材としては、熱伝導度が良いセラミックス素材などが知られているが、このような素材は、加工性が落ちるため、高分子マトリックス内に高い熱伝導率を示す前記セラミックスフィラーなどを配合して製造した複合素材が用いられ得る。
【0005】
しかし、前記方式によっては、高い熱伝導度を確保するために多量のフィラー成分が適用されなければならないので、多様な問題が発生する。例えば、多量のフィラー成分を含む素材の場合、素材自体が硬くなる傾向があり、このような場合に耐衝撃性などが落ちる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願は、複合材に関するもので、一つの例示で、熱伝導特性に優れると共に、耐衝撃性や加工性など他の物性も優秀に確保される複合材又はその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で言及する物性のうち測定温度及び/又は測定圧力が結果に影響を及ぼす物性は、特に異に言及しない限り、常温及び/又は常圧で測定した結果である。
【0008】
用語「常温」は、加温したり減温されない自然そのままの温度であり、例えば、10℃~30℃の範囲内のいずれか一つの温度、約23℃又は約25℃程度の温度を意味する。また、本明細書で温度の単位は、特に異に規定しない限り、℃である。
【0009】
用語「常圧」は、加圧又は減圧されない自然そのままの圧力であり、通常、大気圧レベルの約1気圧程度を意味する。
【0010】
本明細書で測定湿度が結果に影響を及ぼす物性である場合、該当物性は、前記常温及び/又は常圧状態で特に調節されない自然そのままの湿度で測定した物性である。
【0011】
本出願は、複合材に関する。本出願で用語「複合材」は、金属フォームと高分子成分を含む材料を意味することができる。
【0012】
本明細書で用語「金属フォーム」又は「金属骨格」は、金属を主成分で含む多孔性構造体を意味する。上記で「金属を主成分とする」とは、金属フォーム又は金属骨格の全体重量を基準として金属の割合が55重量%以上、60重量%以上、65重量%以上、70重量%以上、75重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上又は95重量%以上である場合を意味する。前記主成分で含まれる金属の割合の上限は特に制限されず、例えば、前記金属の割合は、100重量%以下、99重量%以下又は98重量%以下程度であってもよい。
【0013】
本明細書で用語「多孔性」は、気孔度(porosity)が少なくとも10%以上、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、75%以上又は80%以上である場合を意味することができる。 前記気孔度の上限は、特に制限されず、例えば、約100%未満、約99%以下、約98%以下、95%以下、90%以下、85%以下又は80%以下程度であってもよい。前記で気孔度は、金属フォームなどの密度を計算して公知の方式で算出できる。
【0014】
本出願の複合材は、高い熱伝導度を有し、これによって、例えば、放熱素材のように熱の制御のための素材で用いられ得る。
【0015】
例えば、前記複合材は、熱伝導度が約0.4W/mK以上、0.45W/mK以上、0.5W/mK以上、0.55W/mK以上、0.6W/mK以上、0.65W/mK以上、0.7W/mK以上、0.75W/mK以上、0.8W/mK以上、0.85W/mK以上、0.9W/mK以上、0.95W/mK以上、1W/mK以上、1.5W/mK以上、2W/mK以上、2.5W/mK以上、3W/mK以上、3.5W/mK以上、4W/mK以上、4.5W/mK以上又は5W/mK以上、5.5W/mK以上、6W/mK以上、6.5W/mK以上、7W/mK以上、7.5W/mK以上、8W/mK以上、8.5W/mK以上、9W/mK以上、9.5W/mK以上又は10W/mK以上であってもよい。前記複合材の熱伝導度は、高いほど複合材が優れた熱制御機能を有するものなので、特に制限されず、一つの例示で、約100W/mK以下、90W/mK以下、80W/mK以下、70W/mK以下、60W/mK以下、50W/mK以下、40W/mK以下、30W/mK以下、20W/mK以下、15W/mK以下又は10W/mK以下であってもよい。前記熱伝導度を測定する方式は特に制限されず、例えば、後述する実施例で記載した方式で測定できる。
【0016】
本出願の複合材は、上記のような優れた熱伝導特性を有する同時に加工性や耐衝撃性などの他の物性も安定的に確保され得、このような効果は、本明細書で説明する内容により達成され得る。
【0017】
一つの例示で、本出願では、金属フォームと高分子成分が複合化された複合材において前記金属フォームとして表面に金属酸化物が導入された金属フォームを適用する。前記金属酸化物は、特定の方式によって金属フォームの表面に成長したもので、突起形態を有した酸化物であってもよい。このような金属酸化物は、金属フォームが有する長所、例えば、優れた熱伝導性や加工性、機械的強度などを犠牲させないと共に、その表面特性を調節して前記金属フォームが有機素材である高分子と優れた界面特性を示すようにすることができる。したがって、このような金属フォームを含む複合材は、優れた特性を示すことができる。
【0018】
上記で突起形状は、縦横比(aspect ratio)が約1~8の範囲内である形状を意味する。前記突起形状の縦横比は、他の例示で、約7.5以下、7以下、6.5以下、6以下、5.5以下、5以下、4.5以下、4以下、3.5以下又は3以下であってもよい。上記で酸化物の縦横比は、光学顕微鏡などを通じて確認される酸化物の高さ乃至幅などの寸法(Dimension)のうち最も大きい寸法(L)及び小さい寸法(S)の割合(L/S)であってもよく、このとき、前記寸法(L、S)は、同一単位での寸法である。このような突起形状の酸化物の存在によって目的とする効果を優秀に達成することができる。
【0019】
前記金属フォームで金属フォームの表面に存在する金属酸化物の面積割合が5%~60%の範囲内であってもよい。前記面積割合は、他の例示で、約7%以上又は10%以上であるか、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下又は30%以下程度であってもよい。前記面積割合は、金属フォームの全体面積に対して酸化物が存在する面積の百分率であり、光学顕微鏡などで確認される酸化物の面積と金属フォームの面積を通じて確認するか、金属フォームの重量と酸化物の重量などを通じて換算してもよい。
【0020】
複合材に含まれる金属フォームの形態は特に制限されないが、一つの例示で、フィルム形状であってもよい。本出願の複合材では、前記フィルム形態の金属フォームの表面や内部に存在する高分子成分が追加される。
【0021】
このような高分子成分は、前記金属フォームの少なくとも一つの表面上で表面層を形成しているか、金属フォーム内部の空隙に充填されて存在してもよく、場合によっては、前記表面層を形成しながらまた金属フォームの内部に充填されていてもよい。表面層を形成する場合に、金属フォームの表面のうち少なくとも一表面、一部の表面又は全ての表面に対して高分子成分が表面層を形成していてもよい。一つの例示では、少なくとも金属フォームの主表面である上部及び/又は下部表面に前記高分子成分が表面層を形成していてもよい。前記表面層は、金属フォームの表面全体を覆うように形成されてもよく、一部表面のみを覆うように形成されてもよい。
【0022】
複合材で金属フォームは、気孔度(porosity)が約10%~99%の範囲内であってもよい。このような気孔度を有する金属フォームは、適合な熱伝逹ネットワークを形成している多孔性の金属骨格を有し、したがって、該当金属フォームを少量適用する場合にも優れた熱伝導度を確保することができる。他の例示で、前記気孔度は、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上又は65%以上であるか、98%以下、95%以下程度、90%以下程度、85%以下程度、80%以下程度又は75%以下程度であってもよい。
【0023】
上述したように、金属フォームは、フィルム形態であってもよい。このような場合に、フィルムの厚さは、後述する方式によって複合材を製造するにおいて、目的とする熱伝導度や厚さ割合などを考慮して調節され得る。前記フィルムの厚さは、目的とする熱伝導度の確保のために、例えば、約10μm以上、約20μm以上、約30μm以上、約40μm以上、約45μm以上、約50μm以上、約55μm以上、約60μm以上、約65μm以上又は約70μm以上であってもよい。前記フィルムの厚さの上限は、目的によって制御されるもので、特に制限されるものではないが、例えば、約1,000μm以下、約900μm以下、約800μm以下、約700μm以下、約600μm以下、約500μm以下、約400μm以下、約300μm以下、約200μm以下又は約150μm以下程度であってもよい。
【0024】
本明細書で厚さは、該当対象の厚さが一定ではない場合には、その対象の最小厚さ、最大厚さ又は平均厚さであってもよい。
【0025】
金属フォームは、熱伝導度が高い素材であってもよい。一つの例示で、前記金属フォームは、熱伝導度が約8W/mK以上、約10W/mK以上、約15W/mK以上、約20W/mK以上、約25W/mK以上、約30W/mK以上、約35W/mK以上、約40W/mK以上、約45W/mK以上、約50W/mK以上、約55W/mK以上、約60W/mK以上、約65W/mK以上、約70W/mK以上、約75W/mK以上、約80W/mK以上、約85W/mK以上又は約90W/mK以上の金属又は金属合金を含むか、それからなり得る。前記熱伝導度は、その数値が高いほど少ない量の金属フォームを適用しながら目的とする熱制御特性を確保することができるので、特に制限されるものではなく、例えば、約1,000W/mK以下程度であってもよい。
【0026】
金属フォームの骨格は、多様な種類の金属や金属合金からなり得、このような金属や金属合金のうち上記言及された範囲の熱伝導度を示すことができる素材が選択されるとよい。このような素材としては、スズ、銅、金、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、コバルト、マグネシウム、モリブデン、タングステン及び亜鉛からなる群より選択されたいずれか一つの金属や上記のうち2種以上の合金などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0027】
このような金属フォームは多様に公知されており、金属フォームを製造する方法も多様に公知されている。本出願ではこのような公知の方式で製造された金属フォームに後述する特定方式で表面に酸化物を形成させた金属フォームを適用することができる。
【0028】
金属フォーム自体を製造する方式としては、塩などの気孔形成剤と金属の複合材料を焼結する方式、高分子フォームなどの支持体に金属をコーティングし、その状態で焼結する方式やスラリー法などが知られており、このような方式が全て適用され得る。本出願の複合材で適合な金属フォームを製造する方法に対しては後述する。
【0029】
複合材は、上述したように、前記金属フォームの表面又は金属フォームの内部に存在する高分子成分をさらに含み、このような複合体の前記金属フォームの厚さ(MT)及び全体厚さ(T)の割合(T/MT)は、2.5以下であってもよい。前記厚さの割合は、他の例示で、約2以下、1.5以下、1.4以下、1.3以下、1.2以下、1.15以下又は1.1以下であってもよい。前記厚さの割合の下限は特に制限されるものではないが、一つの例示で、約1以上、約1.01以上、約1.02以上、約1.03以上、約1.04以上又は約1.05以上であってもよい。このような厚さ割合下で目的とする熱伝導度が確保されて加工性や耐衝撃性などに優れた複合材が提供され得る。
【0030】
本出願の複合材に含まれる高分子成分の種類は特に制限されず、例えば、複合材の加工性や耐衝撃性、絶縁性などを考慮して選択され得る。本出願で適用され得る高分子成分の例としては、公知のアクリル樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アミノ樹脂及びフェノール樹脂からなる群より選択された一つ以上が挙げられるが、これに制限されるものではない。
【0031】
前記複合材の場合、上述した金属フォームの適用を通じて主に熱伝導度を確保する成分の割合を最小化しながらも優れた熱伝導度を確保することができ、したがって、加工性や耐衝撃性などの損害なしに目的とする物性の確保が可能である。
【0032】
一つの例示で、前記複合材に含まれる高分子成分の体積(PV)と金属フォームの体積(MV)の割合(MV/PV)は、10以下であってもよい。上記割合(MV/PV)は、他の例示で、9以下、8以下、7以下、6以下、5以下、4以下、3以下、2以下、1以下又は0.5以下程度であってもよい。前記体積割合の下限は特に制限されず、例えば、約0.1程度であってもよい。前記体積割合は、複合材に含まれる高分子成分と金属フォームの重量と該当成分の密度を通じて算出することができる。
【0033】
一つの例示で、より高い熱伝導度の確保のために前記高分子成分に熱伝導性フィラーを含ませてもよい。
【0034】
本出願で用語「熱伝導性フィラー」は、熱伝導度が約1W/mK以上、約5W/mK以上、約10W/mK以上又は約15W/mK以上であるフィラーを意味する。前記熱伝導性フィラーの熱伝導度は、約400W/mK以下、約350W/mK以下又は約300W/mK以下であってもよい。熱伝導性フィラーの種類は特に制限されず、例えば、セラミックスフィラー又は炭素系フィラーなどを適用することができる。このようなフィラーとしては、アルミナ、AlN(aluminum nitride)、BN(boron nitride)、窒化ケイ素(silicon nitride)、SiC又はBeOなどや、炭素ナノチューブやグラファイトなどのようなフィラーが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0035】
含まれる前記フィラーの形態や割合は特別に制限されない。一つの例示で、前記フィラーの形態は、おおよそ球状、針状、板状、デンドライト状又は星状(star shape)などの多様な形態を有することができるが、前記形態に特に制限されるものではない。
【0036】
一つの例示で、前記熱伝導性フィラーは、平均粒径が0.001μm~80μmの範囲内にあってもよい。前記フィラーの平均粒径は、他の例示で、0.01μm以上、0.1以上、0.5μm以上、1μm以上、2μm以上、3μm以上、4μm以上、5μm以上又は約6μm以上であってもよい。前記フィラーの平均粒径は、他の例示で、約75μm以下、約70μm以下、約65μm以下、約60μm以下、約55μm以下、約50μm以下、約45μm以下、約40μm以下、約35μm以下、約30μm以下、約25μm以下、約20μm以下、約15μm以下、約10μm以下又は約5μm以下であってもよい。
【0037】
フィラーの割合は、目的とする特性が確保されるか、あるいは損傷されない範囲内で調節され得る。一つの例示で、前記フィラーは、複合材内で体積割合で約80vol%以下程度に含まれ得る。上記で体積割合は、複合材を構成する成分、例えば、前記金属フォーム、高分子成分及びフィラーそれぞれの重量と密度を基準で計算した数値である。
【0038】
前記体積割合は、他の例示で、約75vol%以下、70vol%以下、65vol%以下、60vol%以下、55vol%以下、50vol%以下、45vol%以下、40vol%以下、35vol%以下又は30vol%以下程度であるか、約1vol%以上、2vol%以上、3vol%以上、4vol%以上又は5vol%以上程度であってもよい。
【0039】
また、本出願は、前記複合材の製造方法に関する。前記製造方法は、金属フォームを製造するステップと、製造された金属フォームに高分子成分を導入するステップと、を含むことができる。前記金属フォームの製造方法は、金属成分を含む金属構造体を焼結して多孔性の金属焼結体を得るステップ;及び前記焼結ステップに続いて前記多孔性の金属焼結体を酸素と接触させるステップを含むことができる。適正条件での前記酸素との接触を通じて金属フォームの表面に上述した突起形状の酸化物を成長させることができ、このような突起形状の酸化物は、金属フォームの長所を毀損せずに該当金属フォームの表面積を制御することができる。
【0040】
本出願で用語「金属構造体」は、前記焼結などのように金属フォームを形成するために行われる工程を経る前の構造体、すなわち、金属フォームを形成する前の構造体を意味する。また、前記金属構造体は、多孔性金属構造体と称しても必ずその自体で多孔性である必要はなく、最終的に多孔性の金属構造体である金属フォームを形成することができるものであれば、便宜上多孔性金属構造体と呼称され得る。
【0041】
金属構造体に含まれる金属成分の種類には、特に制限がなく、上述した素材が用いられ得る。
【0042】
金属構造体を形成する金属成分は、粉末(powder)形態であってもよい。例えば、前記金属成分内の金属は、平均粒径が約0.1μm~約200μmの範囲内にあってもよい。前記平均粒径は、他の例示で、約0.5μm以上、約1μm以上、約2μm以上、約3μm以上、約4μm以上、約5μm以上、約6μm以上、約7μm以上又は約8μm以上であってもよい。前記平均粒径は、他の例示で、約150μm以下、100μm以下、90μm以下、80μm以下、70μm以下、60μm以下、50μm以下、40μm以下、30μm以下又は20μm以下であってもよい。金属成分内の金属としては、互いに平均粒径が相異なっているものを適用してもよい。前記平均粒径は、目的とする金属フォームの形態、例えば、金属フォームの厚さや気孔度などを考慮して適切な範囲を選択することができ、これは特別に制限されない。
【0043】
本明細書で言及する平均粒径は、いわゆるメジアン粒径(D50粒径とも呼称される)であって、公知の粒度分析方式によって求めることができる。
【0044】
本出願で上記のような金属成分を含む金属構造体を、一つの例示で、前記金属成分、分散剤及びバインダーを少なくとも含むスラリー(以下、スラリーAと称することがある)を用いて形成することができる。
【0045】
前記スラリーA内で金属成分の割合は、特に制限されず、目的とする粘度や工程効率などを考慮して選択され得る。一つの例示で、スラリーA内での金属成分の割合は、重量を基準として0.5%~95%程度であってもよいが、これに制限されるものではない。上記割合は、他の例示で、約1%以上、約1.5%以上、約2%以上、約2.5%以上、約3%以上、約5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上、35%以上、40%以上、45%以上、50%以上、55%以上、60%以上、65%以上、70%以上、75%以上又は80%以上であるか、約90%以下、約85%以下、約80%以下、約75%以下、約70%以下、約65%以下、60%以下、55%以下、50%以下、45%以下、40%以下、35%以下、30%以下、25%以下、20%以下、15%以下、10%以下又は5%以下程度であってもよいが、これに制限されない。
【0046】
分散剤としては、例えば、アルコールが適用され得る。アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール、ペンタノール、オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ペンタノール、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-ブトキシエタノール、グリセロール、テキサノール(texanol)又はテルピネオール(terpineol)などのような炭素数1~20の1価アルコール又はエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサンジオール、オクタンジオール又はペンタンジオールなどのような炭素数1~20の2価アルコール又はその以上の多価アルコールなどが用いられ得るが、その種類が上記に制限されるものではない。
【0047】
スラリーAは、バインダーをさらに含むことができる。バインダーの種類は特に制限されず、スラリーAの製造時に適用された金属成分や分散剤などの種類によって適切に選択できる。例えば、前記バインダーとしては、メチルセルロース又はエチルセルロースなどの炭素数1~8のアルキル基を有するアルキルセルロース、ポリプロピレンカーボネート又はポリエチレンカーボネートなどの炭素数1~8のアルキレン単位を有するポリアルキレンカーボネート又はポリビニルアルコール又はポリ酢酸ビニルなどのポリビニルアルコール系バインダーなどが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0048】
スラリーA内で各成分の割合は特に制限されない。このような割合は、スラリーAを用いた工程時のコーティング性や成形性などの工程効率を考慮して調節され得る。
【0049】
例えば、スラリーA内でバインダーは、上述した金属成分100重量部に対して、約1~500重量部の割合で含まれ得る。前記割合は、他の例示で、約2重量部以上、約3重量部以上、約4重量部以上、約5重量部以上、約6重量部以上、約7重量部以上、約8重量部以上、約9重量部以上、約10重量部以上、約20重量部以上、約30重量部以上、約40重量部以上、約50重量部以上、約60重量部以上、約70重量部以上、約80重量部以上、約90重量部以上、約100重量部以上、約110重量部以上、約120重量部以上、約130重量部以上、約140重量部以上、約150重量部以上、約200重量部以上又は約250重量部以上であってもよく、約450重量部以下、約400重量部以下、約350重量部以下、約300重量部以下、約250重量部以下、約200重量部以下、約150重量部以下、約100重量部以下、約90重量部以下、約80重量部以下、約70重量部以下、約60重量部以下、約50重量部以下、約40重量部以下、約30重量部以下、約20重量部以下又は約10重量部以下であってもよい。
【0050】
スラリーA内で分散剤は、前記バインダー100重量部に対して、約10~2,000重量部の割合で含まれ得る。前記割合は、他の例示で、約20重量部以上、約30重量部以上、約40重量部以上、約50重量部以上、約60重量部以上、約70重量部以上、約80重量部以上、約90重量部以上、約100重量部以上、約110重量部以上、約120重量部以上、約130重量部以上、約140重量部以上、約150重量部以上、約160重量部以上、約170重量部以上、約180重量部以上、約190重量部以上、約200重量部以上、約300重量部以上、約400重量部以上、約500重量部以上、約550重量部以上、約600重量部以上又は約650重量部以上であってもよく、約1,800重量部以下、約1,600重量部以下、約1,400重量部以下、約1,200重量部以下、約1,000重量部以下、約800重量部以下、約600重量部以下、約400重量部以下、約300重量部以下、約250重量部以下又は約200重量部以下、約150重量部以下又は約120重量部以下程度であってもよい。
【0051】
本明細書で単位重量部は、特に異に規定しない限り、各成分間の重量の割合を意味する。スラリーAで分散剤やバインダーの割合を上記のように制御することで、焼結工程後につながる金属酸化物形成過程で目的とする適切なレベルの金属酸化物を形成することができる。
【0052】
スラリーAは、必要に応じて、溶媒をさらに含むことができる。ただし、焼結後に酸素との接触につながる本出願の工程で、金属フォームの表面をより効率的に改質する観点では、スラリーAとして溶媒を含まないスラリーAを用いることが有利である。溶媒としては、スラリーAの成分、例えば、前記金属成分やバインダーなどの溶解性を考慮して適切な溶媒が用いられ得る。例えば、溶媒としては、誘電定数が約10~120の範囲内にあるものを用いることができる。前記誘電定数は、他の例示で、約20以上、約30以上、約40以上、約50以上、約60以上又は約70以上であるか、約110以下、約100以下又は約90以下であってもよい。このような溶媒としては、水やエタノール、、ブタノール又はメタノールなどの炭素数1~8のアルコール、DMSO(dimethyl sulfoxide)、DMF(dimethyl formamide)又はNMP(N-methylpyrrolidinone)などが例示され得るが、これに制限されるものではない。
【0053】
溶媒が適用される場合に、上記は前記バインダー100重量部に対して約50~400重量部の割合でスラリーA内に存在することができるが、これに制限されるものではない。
【0054】
スラリーAは、上記言及した成分外に追加的に必要な公知の添加剤を含んでもよい。ただし、目的とする気孔特性を効果的に得、後述する酸化工程で目的とするレベルの酸化物を形成するために、前記スラリーは、いわゆる発泡剤を含まなくてもよい。用語「発泡剤」は、業界で通常発泡剤と呼称される成分はもちろんスラリー内の他の成分との関係で発泡効果を示すことができる成分も含まれる。したがって、本出願で金属フォームを製造する過程中には発泡工程が進行されないこともある。
【0055】
上記のようなスラリーAを用いて前記金属構造体を形成する方式は特に制限されない。金属フォームの製造分野では金属構造体を形成するための多様な方式が公知にされており、本出願ではこのような方式が全て適用され得る。例えば、前記金属構造体は、適正な型板(template)に前記スラリーAを維持したり、あるいはスラリーAを適正な方式でコーティングして前記金属構造体を形成することができる。
【0056】
このような金属構造体の形態は、目的とする金属フォームによって決まるのであって、特に制限されない。一つの例示で、前記金属構造体は、フィルム又はシート状であってもよい。例えば、前記構造体がフィルム又はシート状である際に、その厚さは、2,000μm以下、1,500μm以下、1,000μm以下、900μm以下、800μm以下、700μm以下、600μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、200μm以下、150μm以下、約100μm以下、約90μm以下、約80μm以下、約70μm以下、約60μm以下又は約55μm以下であってもよい。金属フォームは、多孔性である構造的特徴上、一般的に壊れやすい特性を有するので、フィルム又はシート状、特に薄い厚さのフィルム又はシート状で製作が困難であり、製作しても容易に壊れる問題がある。しかし、本出願の方式によると、薄い厚さでありつつ内部に均一に気孔が形成され、機械的特性に優れた金属フォームの形成が可能である。
【0057】
上記で構造体の厚さの下限は、特に制限されない。例えば、前記フィルム又はシート状の構造体の厚さは、約1μm以上、約5μm以上、10μm以上又は約15μm以上であってもよい。
【0058】
上記のような方式で形成された金属構造体を焼結して多孔性金属焼結体を形成することができる。このような場合に、前記金属フォームを製造するための焼結を行う方式は特に制限されず、公知の焼結法を適用することができる。すなわち、適切な方式で前記金属構造体に適正な量の熱を印加する方式で前記焼結を進行することができる。
【0059】
熱を印加して金属構造体を焼結する場合に、印加される熱は特に制限されない。すなわち、用いられた金属の性質や目的とする機械的強度などを考慮して熱の印加条件を適切に調節すればよい。
【0060】
一つの例示で、前記多孔性金属焼結体は、金属構造体を700℃~2,000℃の範囲内のいずれか一つの温度で焼結して形成することができる。
【0061】
また、焼結時間も適切に調節され得、例えば、約30分~600分の範囲内の時間の間焼結され得る。
【0062】
本出願の他の例示で、前記金属成分を含む金属構造体を他の例示で、前記金属成分、水性溶媒及び有機溶媒及び界面活性剤をスラリー(以下、スラリーBと称することがある。)を用いて形成することができる。スラリーBは、スラリーAとは異なり発泡成分を含むスラリーであってもよい。
【0063】
スラリーBに含まれる金属成分の種類やスラリー内の前記金属成分の割合は、前記スラリーAの場合と同一である。
【0064】
前記スラリーBは、金属粉末(前記金属成分)と水性溶媒と有機溶媒及び界面活性剤を含む。スラリー内で前記水性溶媒、有機溶剤及び界面活性剤の割合及び種類を調節すると、金属フォーム前駆体内で微細エマルジョンが形成され、このようなエマルジョンが適正条件で気化しつつ発泡工程が進行され得る。例えば、前記有機溶剤及び水性溶媒間の蒸気圧の差により一層大きい蒸気圧を有する成分が発泡過程で気化されて金属フォームの気孔特性を制御することができる。
【0065】
上記で水性溶媒としては、水又はその他極性溶媒を適用することができ、代表的には、水が適用され得る。このような水性溶媒は、スラリー内で金属粉末100重量部に対して、10~100重量部の割合で含まれ得る。前記水性溶媒の割合は、他の例示で、15重量部以上程度、20重量部以上程度、25重量部以上程度、30重量部以上程度、35重量部以上程度、40重量部以上程度、45重量部以上程度、50重量部以上程度、55重量部以上程度又は60重量部以上程度であるか、95重量部以下程度、90重量部以下程度、85重量部以下程度、80重量部以下程度、75重量部以下程度又は70重量部以下程度であってもよい。
【0066】
前記有機溶剤としては、特に制限なしに適切な種類が選択され得る。このような有機溶剤としては、例えば、炭化水素系有機溶剤を適用することができる。前記炭化水素系有機溶剤としては、炭素数4~12の有機溶剤が適用され得、具体的な例としては、n-ペンタン、ネオペンタン、ヘキサン、イソヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、イソヘプタン、オクタン、トルエン又はベンゼンなどが適用され得る。このような有機溶剤は、スラリー内で金属粉末100重量部に対して、0.01~10重量部の割合で含まれ得る。前記有機溶剤の割合は、他の例示で、0.05重量部以上程度、0.1重量部以上程度、0.15重量部以上程度、0.2重量部以上程度、0.25重量部以上程度、0.3重量部以上程度、0.35重量部以上程度、0.4重量部以上程度、0.45重量部以上程度、0.5重量部以上程度、0.55重量部以上程度、0.6重量部以上程度、0.65重量部以上程度、0.7重量部以上程度、0.75重量部以上程度、0.8重量部以上程度、0.85重量部以上程度、0.9重量部以上程度、0.95重量部以上程度、1重量部以上程度、1.05重量部以上程度、1.1重量部以上程度、1.15重量部以上程度、1.2重量部以上程度、1.25重量部以上程度、1.3重量部以上程度、1.35重量部以上程度、1.4重量部以上程度又は1.45重量部以上程度であるか、9重量部以下程度、8重量部以下程度、7重量部以下程度、6重量部以下程度、5重量部以下程度、4重量部以下程度、3重量部以下程度又は2重量部以下程度であってもよい。
【0067】
金属フォーム前駆体内での適切な微細エマルジョンを形成及び/又は上述した気化の適合な調節のために界面活性剤が含まれ得る。
【0068】
本出願で界面活性剤としては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤からなる群より選択されたいずれか一つ又は上記のうち2種以上の混合物を適用することができる。場合によっては、両性界面活性剤、非イオン界面活性剤及び陰イオン界面活性剤のうちいずれか一つの種類の界面活性剤が用いられる場合にもその一つの種類内で互いに異なる構造の2以上の界面活性剤の混合が適用されてもよい。
【0069】
上のような界面活性剤のうち目的とする微細エマルジョンを形成するための適正な種類が選択され得、この過程で適用された水性溶媒及び有機溶剤の種類が考慮され得る。
【0070】
陰イオン界面活性剤は、公知されたように、界面活性を示す部分が陰イオンである界面活性剤であり、陰イオン界面活性剤としては、例えば、カルボキシレート(carboxylate)化合物、スルフェート(sulfate)化合物、イセチオネート(isethionate)化合物、スルホサクシネート(sulfosuccinate)化合物、タウレート(taurate)化合物及び/又はグルタメート(glutamate)化合物が適用され得るが、これに制限されるものではない。
【0071】
非イオン界面活性剤は、公知されたように、イオンに分離しない界面活性剤であり、このような界面活性剤としては、例えば、アルキルポリグリコシド系界面活性剤、脂肪酸アルカノールアミド系界面活性剤、又はアミンオキシド系と高級アルコールにエチレンオキシドが付加された形態及びオイルにエチレンオキシドが付加された形態の界面活性剤などが用いられ得る。
【0072】
両性界面活性剤は、陰イオン部位と陽イオン部位を同時に有する界面活性剤であり、このような界面活性剤としては、ベタイン類、例えば、コカミドプロピルベタインや、ラウラミドプロピルベタイン、ココベタイン又はラウリルベタインなどや、スルタイン系、例えば、ラウリルヒドロキシスルタイン、ラウラミドプロピルスルタイン、コカミドプロピルヒドロキシスルタイン又はココスルタインなどが適用され得るが、これに制限されるものではない。
【0073】
界面活性剤としては、上記言及された各化学式の陰イオン、非イオン又は両性界面活性剤のうちいずれか一つの種類の界面活性剤が単独で用いられるか、2種以上の界面活性剤が混合されて用いられ得る。
【0074】
界面活性剤は、スラリー内で金属粉末100重量部に対して、1~10重量部の割合で含まれ得る。前記割合は、他の例示で、約1.5重量部以上程度、2重量部以上程度、2.5重量部以上程度、3重量部以上程度、3.5重量部以上程度、4重量部以上程度又は4.5重量部以上程度であるか、9.5重量部以下程度、9重量部以下程度、8.5重量部以下程度、8重量部以下程度、7.5重量部以下程度、7重量部以下程度、6.5重量部以下程度、6重量部以下又は5.5重量部以下程度であってもよい。
【0075】
スラリーBも前記成分外にも必要な成分をさらに含むことができる。例えば、スラリーは、バインダーをさらに含むことができる。
【0076】
バインダーとしては、特に制限がなく、例えば、水溶性を有するバインダーや、スラリーの製造時に適用された金属粉末、水性溶媒、有機溶剤及び/又は界面活性剤などの種類によって適切に選択することができる。例えば、前記バインダーとしては、上述した第1スラリーでバインダーとして記述したものと同一の種類の物質が適用され得る。
【0077】
バインダーは、スラリー内で金属粉末100重量部に対して、1~100重量部の割合で含まれ得る。前記割合は、他の例示で、2重量部以上程度、3重量部以上程度、4重量部以上程度、5重量部以上程度、6重量部以上程度、7重量部以上程度、8重量部以上程度、9重量部以上程度又は10重量部以上程度であるか、90重量部以下程度、80重量部以下程度、70重量部以下程度、60重量部以下程度、50重量部以下程度、40重量部以下程度、30重量部以下程度、20重量部以下程度又は15重量部以下程度であってもよい。このような割合下で目的とする気孔特性の金属フォームを効果的に製造することができる。
【0078】
金属フォーム又はその前駆体に可塑性を付与するために、スラリーBは、可塑剤をさらに含んでもよい。可塑剤としては、上述したスラリーシステム又は金属フォームに可塑性を付与することができる適切な種類が選択され得、例えば、多価アルコール、油脂、エーテル化合物又はエステル化合物などが適用され得るが、これに制限されるものではない。
【0079】
可塑剤が含まれる場合、スラリー内で金属粉末100重量部に対して、0.5~10重量部の割合で含まれ得る。前記割合は、他の例示で、1重量部以上程度、1.5重量部以上程度、2重量部以上程度、2.5重量部以上程度又は3重量部以上程度であるか、9重量部以下程度、8重量部以下程度、7重量部以下程度、6重量部以下程度、5重量部以下程度又は4重量部以下程度であってもよい。このような割合下で目的とする気孔特性の金属フォームを効果的に製造することができる。
【0080】
スラリーBは、上記言及した成分外に追加的に必要な公知の添加剤を含んでもよい。
【0081】
前記スラリーBを用いて前記金属フォーム前駆体を形成する方式は特に制限されず、スラリーAの場合と同一である。
【0082】
スラリーBを用いた金属前駆体の場合にも上記言及されたスラリーAの場合のような焼結工程を通じて金属焼結体を得ることができる。
【0083】
スラリーBで形成した金属前駆体の場合、焼結工程の前に発泡工程が進行され得る。発泡工程は、スラリーBに形成されるか、スラリーAとBを一緒に用いて形成された前駆体の場合に適用され、スラリーAのみを用いた場合には適用されないことがある。発泡工程は、例えば、前駆体内で目的とする微細エマルジョンが形成された状態で前記エマルジョンを気化させる方式で進行され得る。例えば、前記発泡工程は、金属フォーム前駆体を約20℃~100℃の範囲内の温度で適正時間の間維持して行うことができる。このような条件で、水性溶媒と有機溶剤間の蒸気圧の差によって微細エマルジョンが気化しながら発泡工程が進行され得る。前記発泡工程時間は、目的によって決まることで、特に制限されず、例えば、約1分~10時間程度の範囲内の時間の間行われ得るが、これに制限されるものではない。
【0084】
上記のような方式で形成された金属フォーム前駆体を焼結して金属フォーム焼結体を製造することができる。このような場合に前記焼結を行う方式は特に制限されず、前記スラリーAの場合に記述した内容が同一に適用され得る。
【0085】
本出願の製造方法では、上記のように形成された金属焼結体を酸素と接触させて表面を改質する。このような酸素との接触工程は、焼結工程に続いてすぐ行うことができる。一つの例示で、前記酸素との接触は、焼結工程後にすぐ多孔性金属焼結体を冷却させながら行うことができ、前記冷却過程で多孔性金属焼結体が存在する雰囲気の温度が一定レベルに至ったときに酸素との接触を始めることができる。前記冷却は、強制冷却であってもよく、自然冷却であってもよい。本出願では、このような酸素との接触条件の制御を通じて金属フォームの表面に酸化物を成長させることができ、特に、突起形態の酸化物を適切に成長させることで目的を達成することができる。
【0086】
したがって、一つの例示で、前記酸素との接触ステップは、前記金属構造体の焼結後に焼結体を自然又は強制冷却させるステップ;及び前記自然又は強制冷却過程で温度が300℃~600℃の範囲内になったときに焼結体を酸素と接触させるステップを含むことができる。
【0087】
一つの例示で、前記酸素との接触工程は、前記焼結工程に続いて金属フォームを冷却させながら行うことができ、この場合、単一工程(one step)で表面改質された金属フォームを形成することができる。
【0088】
一つの例示で、適切な酸化物の成長のために、前記酸素との接触は、前記酸素濃度が1ppm~1,000ppmである雰囲気で行うことができ、10ppm~1,000ppmの酸素濃度雰囲気で行ってもよい。一つの例示で、金属構造体の焼結は、水素、アルゴンなどの反応ガスあるいは不活性ガスの雰囲気下で行われ得、前記反応あるいは不活性ガス雰囲気で焼結を行った後、焼結体を冷却させてから、目的とする適正温度に至ったときに酸素を適正濃度で注入して酸素との接触を行うことができる。前記酸素の濃度は、例えば、チャンバなどに意図された濃度を有するように酸素を注入して調節することができる。
【0089】
一つの例示で、前記表面改質のための酸素との接触は、前記多孔性金属焼結体を冷却させながら行うことができる。前記冷却は、強制冷却であってもよく、自然冷却であってもよい。すなわち、前記金属焼結体を形成するための焼結工程後に金属焼結体を冷却させながら適正時点で酸素を注入する方式で前記表面改質工程を行うことができる。
【0090】
前記焼結時には、酸素と金属構造体を接触させず、焼結後に冷却過程の適正時点で酸素を注入して前記酸素との接触を行うことができる。
【0091】
一つの例示では、酸素との接触は、300℃~600℃の温度で開始及び行うことができる。すなわち、焼結後に焼結体を冷却させながら温度が前記範囲に至ったときに酸素を注入して酸素との接触を進行することができる。前記酸素接触開始時点の温度は、他の例示で、約320℃以上、340℃以上、360℃以上、380℃以上又は400℃以上であるか、580℃以下、560℃以下、540℃以下、520℃以下又は500℃以下であってもよい。
【0092】
一つの例示で、前記酸素との接触は、前記温度で始めて多孔性金属焼結体の維持温度(周辺温度)が約10℃~50℃程度まで冷却する時点まで行うことができる。
【0093】
上記のように、酸素との接触を焼結体を冷却させながら行う場合に、冷却速度は特に制限されない。一つの例示では、前記冷却は、自然冷却であってもよい。
【0094】
例えば、前記酸素との接触は、自然冷却によって前記温度が酸素接触開始温度から酸素接触終了温度まで下がるうちに行うことができ、例えば、10分~5時間の間行うことができる。
【0095】
上記のような酸素との接触を通じて目的とする表面特性を有する金属フォームを得ることができる。
【0096】
上記のような方式で金属フォームの表面に酸化物を形成した後、その金属フォームの表面又は内部に高分子成分を導入して複合材を製造することができる。このとき、高分子成分を導入する方法は特に制限されず、公知の方式で行う。例えば、硬化性高分子組成物などを用いる場合には、前記金属フォームの表面又は内部に硬化性高分子組成物が存在する状態で前記高分子組成物を硬化させるステップを含むことができる。
【0097】
上記方法で適用される金属フォームに対する具体的な内容は、既に記述した通りであり、製造される複合材に対する具体的な事項も上述した内容による。
【0098】
一方、上記で適用される高分子組成物も硬化などを通じて前記言及した高分子成分を形成することができるものであれば、特に制限されず、このような高分子成分は、業界に多様に公知されている。すなわち、例えば、公知の成分のうち適切な粘度を有する材料を用いて公知の方式を通じて硬化を進行して前記複合材を製造することができる。
【発明の効果】
【0099】
本出願は、金属フォームと高分子成分を含み、優れた熱伝導度を有すると共に、耐衝撃性、加工性及び絶縁性などの他の物性も優れた複合材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【
図1】
図1は、実施例で形成された金属フォームに対する写真である。
【発明を実施するための形態】
【0101】
以下、実施例及び比較例を通じて本出願を詳しく説明するが、本出願の範囲は、下記実施例によって制限されるものではない。
【0102】
<実施例1>
金属フォームとしては、銅金属フォームとして、表面に突起形態の酸化物が存在し、厚さが約90μm程度であり、気孔度が約65%~75%であるフィルム形状の銅フォームを用いた。前記銅フォームは、金属成分として平均粒径(D50粒径)が約10~20μm程度である銅(Cu)粉末を用い、分散剤として、α-テルピネオール(alpha-terpineol)を用い、バインダーとして、ポリ酢酸ビニル(Polyvinylacetate)を適用したスラリーで製造した。スラリーにおける金属成分(Cu)、分散剤及びバインダーの重量割合(Cu:分散剤:バインダー)は、1:1.11:0.09程度であった。前記スラリーを前記厚さのフィルムが形成されるようにコーティングし、約100℃の温度で約40分間乾燥した。その後、4%の水素/アルゴンガス雰囲気で前記フィルム形態の構造体を約900℃の温度で約1時間の間熱処理(焼結)し、有機成分を除去しながら金属成分を結合させて多孔性金属焼結体を製造した。焼結後に、焼結体を自然冷却させながら周囲温度が約500℃程度になった時点で酸素ガスを約400ppm~700ppmの範囲の濃度になるように注入し、周囲温度が常温(約25℃)になるまで酸素と接触させた。
図1は、実施例1で製造されたシートに対する写真であり、写真から、金属フォームの表面に突起形態の酸化物が成長したことを確認することができる。前記突起形状の縦横比は、約1~3の範囲内であり、酸化物の面積割合は、約10%~30%程度であった。前記銅フォームを熱硬化性シリコン樹脂組成物(Dow corning、PDMS、Sylgard 183 Kit)に含浸させ、アプリケーターを用いて最終複合材の厚さが約110μm程度になるように過量の組成物を除去した。その後、前記材料を約120℃のオーブンに約10分位維持して硬化させることで、複合材を製造した。適用された高分子成分(シリコン樹脂)と金属フォーム(銅フォーム)それぞれの密度及び適用重量を基準で計算した結果、高分子成分の体積(PV)と金属フォームの体積(MV)の割合(MV/PV)は、約0.3程度であった。この複合材の熱伝導度は、約5.12W/mK程度であった。
【0103】
前記熱伝導度は、複合材の熱拡散度(A)、比熱(B)及び密度(C)を求めて熱伝導度=ABCの数式で求め、前記熱拡散度(A)は、レーザーフラッシュ法(LFA装備、モデル名:LFA467)を用いて測定し、比熱は、DSC(Differential Scanning Calorimeter)装備を通じて測定し、密度は、アルキメデス法を用いて測定した。また、前記熱伝導度は、複合材の厚さ方向(Z軸)に対する値である。
【0104】
<実施例2>
熱硬化性シリコン樹脂組成物として、他の種類の組成物(Dow corning、PDMS、Sylgard 527 Kit)を用いたこと以外は、実施例1と同一の方式で複合材を製造した。製造された複合材の熱伝導度を上記言及された方式で測定した結果、約6.86W/mK程度であった。
【0105】
<実施例3>
熱硬化性シリコン樹脂組成物(Dow corning、PDMS、Sylgard 527 Kit)に板状型の窒化ホウ素粉末を約10重量%程度の割合で導入して用いたこと以外は、実施例2と同一の方式で複合材を製造した。製造された複合材の熱伝導度を上記言及された方式で測定した結果、約10.14W/mK程度であった。