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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-17
(45)【発行日】2022-06-27
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子、及び吸水シート
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/26 20060101AFI20220620BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20220620BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20220620BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20220620BHJP
【FI】
B01J20/26 D
B01J20/28 Z
A61F13/53 100
A61F13/53 300
C08J3/12 Z CEY
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021516061
(86)(22)【出願日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 JP2020016757
(87)【国際公開番号】W WO2020218164
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】P 2019082037
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】岡澤 志保
【審査官】池田 周士郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124955(JP,A)
【文献】特開2000-302876(JP,A)
【文献】特開2006-068731(JP,A)
【文献】国際公開第2010/095427(WO,A1)
【文献】特開2004-217911(JP,A)
【文献】特開2004-002891(JP,A)
【文献】特開2002-284803(JP,A)
【文献】特開2000-198805(JP,A)
【文献】国際公開第2014/038324(WO,A1)
【文献】特開平07-025917(JP,A)
【文献】特開平09-157313(JP,A)
【文献】国際公開第2010/004894(WO,A1)
【文献】特開2010-273972(JP,A)
【文献】国際公開第2011/117997(WO,A1)
【文献】特開2003-088552(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 20/00-20/34
A61F 13/00-13/84
B32B 27/00-27/42
C08J 3/00- 3/28
C08F 20/00-20/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含む吸水性樹脂粒子であって、
前記エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含み、(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が前記単量体全量に対して70~100モル%であり、
前記エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度が、前記エチレン性不飽和単量体中の酸性基の75~100モル%であり、
当該吸水性樹脂粒子が表面架橋されており、
以下の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の工程をこの順で含む方法により測定される、摩擦係数の変動が0.09以上0.18以下であり、
当該吸水性樹脂粒子が生理食塩水を吸収したときの保水量が48g/g以上である、
吸水性樹脂粒子。
(1)5×15cmの長方形の粘着面を有する粘着テープを、その粘着面が上になる向きで作業台の水平面上に配置する。
(2)粘着面全体に1cm当たり0.02gの吸水性樹脂粒子を付着させる。
(3)粘着面に付着した吸水性樹脂粒子に、質量4.0kg、直径10.5cm、幅6.0cmのローラーを載せ、次いでローラーを粘着面の2つの短辺の間で1往復させる。
(4)粘着面に付着した吸水性樹脂粒子の上に、該吸水性樹脂粒子の全体が覆われるようにティッシュペーパーを載せる。
(5)ピアノ線を接触子として有するプローブを、ティッシュペーパーの吸水性樹脂粒子とは反対側の表面に押し当てながら移動させることにより、ティッシュペーパーの表面の摩擦係数を20mm以上の直線に沿って連続的に測定する。
(6)摩擦係数μとプローブの移動距離xとの関係を表す曲線から、下記式により、摩擦係数の変動を算出する。これら式中、MIUは平均摩擦係数であり、MMDは摩擦係数の変動である。
【数1】
【請求項2】
当該吸水性樹脂粒子が2.07kPaの荷重下で生理食塩水を吸収したときの吸水量が15mL/g以上である、請求項1に記載の吸水性樹脂粒子。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の吸水性樹脂粒子を含む吸収層を備える、吸水シート。
【請求項4】
前記吸水性樹脂粒子の含有量が、前記吸収層の質量を基準として70~100質量%である、請求項3に記載の吸水シート。
【請求項5】
当該吸水シートがコアラップシートを更に備え、該コアラップシートの内側に前記吸収層が配置されている、請求項又はに記載の吸水シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子、及び吸収シートに関する。
【背景技術】
【0002】
尿等の水を主成分とする液体を吸収するための吸収性物品は、一般に、吸水性樹脂粒子及び親水性繊維を含む吸収体を有することが多い。吸収性物品の更なる薄型化を実現するために、比較的嵩だかい親水性繊維の割合を少なくすることが検討されている。例えば、特許文献1は、パルプ等の親水性繊維の割合が極めて少ない吸収層を有する吸水シート構成体を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-045914号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸収層における吸水性樹脂粒子の量に対する親水性繊維の量の割合が少ないと、吸収性物品による液体の浸透速度が低下する(浸透する時間が増大する)傾向がある。
【0005】
そこで、本発明の一側面は、吸水性樹脂粒子を高い割合で含む吸収層を有する吸収性物品による液体の浸透速度を高めることが可能な吸水性樹脂粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面は、以下の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の工程をこの順で含む方法により測定される、摩擦係数の変動が0.08以上である、吸水性樹脂粒子に関する。
(1)5×15cmの長方形の粘着面を有する粘着テープを、その粘着面が上になる向きで作業台の水平面上に配置する。
(2)粘着面全体に1cm当たり0.02gの吸水性樹脂粒子を付着させる。
(3)粘着面に付着した吸水性樹脂粒子に、質量4.0kg、直径10.5cm、幅6.0cmのローラーを載せ、次いでローラーを粘着面の2つの短辺の間で1往復させる。
(4)粘着面に付着した吸水性樹脂粒子の上に、該吸水性樹脂粒子の全体が覆われるようにティッシュペーパーを載せる。
(5)ピアノ線を接触子として有するプローブを吸水性樹脂粒子とは反対側のティッシュペーパーの表面に押し当てながら移動させることにより、ティッシュペーパーの表面の摩擦係数を20mm以上の直線に沿って連続的に測定する。
(6)摩擦係数μとプローブの移動距離xとの関係を表す曲線から、下記式により、摩擦係数の変動を算出する。これら式中、MIUは平均摩擦係数であり、MMDは摩擦係数の変動である。
【数1】
【0007】
本発明の別の一側面は、上記吸水性樹脂粒子を含む吸収層を備える、吸水シートに関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、吸水性樹脂粒子を高い割合で含む吸収層を有する吸収性物品による液体の浸透速度を、エンボス加工を施さなくても高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】吸水シートの一例を示す断面図である。
図2】コアラップシート上に形成された接着剤のパターンの一例を示す平面図である。
図3】吸収性物品の一例を示す断面図である。
図4】攪拌翼(平板部にスリットを有する平板翼)の一例を示す平面図である。
図5】荷重下吸水量を測定する方法を示す模式図である。
図6】摩擦係数を測定するための簡易吸水シートの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
一実施形態に係る吸水性樹脂粒子を用いて以下の(1)、(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の工程をこの順で含む方法により測定される摩擦係数の変動は、0.08以上である。
(1)5×15cmの長方形の粘着面を有する粘着テープを、その粘着面が上になる向きで作業台の水平面上に配置する。
(2)粘着面全体に1cm当たり0.02gの吸水性樹脂粒子を付着させる。
(3)粘着面に付着した吸水性樹脂粒子に、質量4.0kg、直径10.5cm、幅6.0cmのローラーを載せ、次いでローラーを粘着面の2つの短辺の間で1往復させる。
(4)粘着面に付着した吸水性樹脂粒子の上に、該吸水性樹脂粒子の全体が覆われるようにティッシュペーパーを載せる。
(5)ピアノ線を接触子として有するプローブを、ティッシュペーパーの吸水性樹脂粒子とは反対側の表面に押し当てながら移動させることにより、ティッシュペーパーの表面の摩擦係数を20mm以上の直線に沿って連続的に測定する。
(6)摩擦係数μとプローブの移動距離xとの関係を表す曲線から、下記式により、摩擦係数の変動を算出する。これら式中、MIUは平均摩擦係数であり、MMDは摩擦係数の変動である。
【数2】
【0013】
上記方法により測定される摩擦係数の変動が適度に大きいことは、吸水性樹脂粒子で薄い樹脂層が形成されたときに、その表面の凹凸が比較的大きいことに対応する。本発明者らの知見によれば、凹凸の大きい表面を有する樹脂層を形成する吸水性樹脂粒子は、吸水性樹脂粒子を高い割合で含む吸収層を有する吸収性物品の浸透速度向上に寄与することができる。吸水性樹脂粒子を高い割合で含む吸収層の表面積が大きくなり、その結果、浸透速度が向上したと本発明者らは推定している。
【0014】
粘着面に付着した吸水性樹脂粒子に荷重を与えるローラーは、円柱状であり、ステンレス製のローラーであってもよい。
【0015】
上記方法において吸水性樹脂粒子の上に載せられるティッシュペーパーを、吸水性樹脂粒子が付着していない粘着面に載せ、その状態で上記と同様の方法でティッシュペーパー表面の摩擦係数を測定したときに、平均摩擦係数MIUが0.21±0.10で、摩擦係数の変動MMDが0.028±0.02であってもよい。ティッシュペーパーの単位面積当たりの質量は、16±2g/mであってもよい。ティッシュペーパーの厚みは、0.12±0.02mmであってもよい。
【0016】
プローブは、例えば、直径0.5mmの10本のピアノ線を有し、これらピアノ線が一定の方向に引き揃えられていてもよい。ピアノ線を接触子として有するプローブによってティッシュペーパーに印加される荷重は、測定が適切に行われるように適宜調整される。この荷重は例えば50gfであってもよい。プローブの移動速度は、例えば10mm/秒であってもよい。プローブの移動距離(摩擦係数が測定される部分の長さ)は、20mm以上であればよく、30mm以下であってもよい。プローブを備える測定装置として、例えば、カトーテック社製の摩擦感テスター、KES-SE-STP(商品名)を用いることができる。
【0017】
上記方法により測定される摩擦係数の変動は、吸収性物品の吸収性能の観点から、0.09以上、又は0.10以上であってもよい。吸収性物品の肌触りの観点から、摩擦係数の変動が0.19以下、又は0.18以下であってもよい。上記方法により測定される平均摩擦係数は、0.30以上であってもよく、0.50以下、又は0.40以下であってもよい。
【0018】
吸水性樹脂粒子が生理食塩水を吸収したときの保水量(以下、単に「保水量」ということがある。)は、35g/g以上であってもよい。これにより、吸水性樹脂粒子の量が少ない薄い吸収層であっても、吸収性物品の十分な保水量を確保し易い。同様の観点から、保水量が38g/g以上、又は40g/g以上であってもよい。保水量は、55g/g以下、又は50g/g以下であってもよい。吸水性樹脂粒子の吸水量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0019】
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下で生理食塩水を吸収したときの吸水量(以下、単に「荷重下吸水量」ということがある。)が、15mL/g以上であってもよい。荷重下吸水量が大きいと、吸収性物品の装着者の荷重を受けた状態でも、高い吸水能力を維持することができる。同様の観点から、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量が、18mL/g以上、20mL/g以上、25mL/g以上、又は30mL/g以上であってもよく、50mL/g以下、又は45mL/g以下であってもよい。荷重下吸水量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0020】
吸水性樹脂粒子の形状は、例えば略球状、破砕状、又は顆粒状であってもよい。本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、各々が単一の粒子からなる形態のほかに、微細な粒子(一次粒子)が凝集した形態(二次粒子)であってもよい。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250~850μm、300~700μm、350~650μm、400~600μm、又は、450~550μmであってよい。吸水性樹脂粒子は、後述する製造方法により得られた時点で所望の粒度分布を有していてよいが、篩による分級を用いた粒度調整等の操作を行うことにより粒度分布を調整してもよい。
【0021】
吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体の重合により形成された架橋重合体を含むことができる。架橋重合体は、エチレン性不飽和単量体に由来する単量体単位を有する。
【0022】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合させる工程を含む方法により、製造することができる。重合方法としては、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。得られる吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の制御が容易である観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法を適用してもよい。以下においては、エチレン性不飽和単量体を重合させる方法として、逆相懸濁重合法を例にとって説明する。
【0023】
エチレン性不飽和単量体は水溶性であってもよい。水溶性エチレン性不飽和単量体の例としては、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。エチレン性不飽和単量体がアミノ基を有する場合、当該アミノ基は4級化されていてもよい。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。上述の単量体のカルボキシル基、アミノ基等の官能基は、後述する表面架橋の工程において架橋が可能な官能基として機能し得る。
【0024】
工業的に入手が容易である観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩、アクリルアミド、メタクリルアミド、並びに、N,N-ジメチルアクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。エチレン性不飽和単量体が、(メタ)アクリル酸及びその塩、並びに、アクリルアミドからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。吸水特性を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでもよい。
【0025】
エチレン性不飽和単量体は、水溶液として重合反応に用いることができる。エチレン性不飽和単量体を含む水溶液(以下、単に「単量体水溶液」という)におけるエチレン性不飽和単量体の濃度は、20質量%以上飽和濃度以下、25~70質量%、又は30~55質量%であってもよい。水溶液において使用される水としては、水道水、蒸留水、イオン交換水等が挙げられる。
【0026】
吸水性樹脂粒子を得るための単量体として、上述のエチレン性不飽和単量体以外の単量体が使用されてもよい。このような単量体は、例えば、上述のエチレン性不飽和単量体を含む水溶液に混合して用いることができる。エチレン性不飽和単量体の使用量は、単量体全量(吸水性樹脂粒子を得るための単量体全量。例えば、架橋重合体の構造単位を与える単量体の全量。以下同様。)に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってもよい。(メタ)アクリル酸及びその塩の割合が単量体全量に対して70~100モル%であってよく、80~100モル%、90~100モル%、95~100モル%、又は100モル%であってもよい。「(メタ)アクリル酸及びその塩の割合」は、(メタ)アクリル酸及びその塩の合計量の割合を意味する。
【0027】
エチレン性不飽和単量体が酸基を有する場合、その酸基をアルカリ性中和剤によって中和してから、単量体溶液を重合反応に用いてもよい。エチレン性不飽和単量体における、アルカリ性中和剤による中和度は、得られる吸水性樹脂粒子の浸透圧を高くし、吸水特性(吸水量等)を更に高める観点から、エチレン性不飽和単量体中の酸性基の10~100モル%、50~90モル%、又は60~80モル%であってもよい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便にするために水溶液の状態で用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体の酸基の中和は、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の水溶液を上述の単量体水溶液に滴下して混合することにより行うことができる。
【0028】
逆相懸濁重合法においては、界面活性剤の存在下、炭化水素分散媒中で単量体水溶液を分散し、ラジカル重合開始剤等を用いてエチレン性不飽和単量体の重合を行うことができる。ラジカル重合開始剤としては、水溶性ラジカル重合開始剤を用いることができる。
【0029】
界面活性剤としては、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤等が挙げられる。ノニオン系界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、アルキルアリルホルムアルデヒド縮合ポリオキシエチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピルアルキルエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル等が挙げられる。アニオン系界面活性剤としては、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルのリン酸エステル、及びポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルのリン酸エステル等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0030】
W/O型逆相懸濁の状態が良好であり、好適な粒子径を有する吸水性樹脂粒子が得られやすく、工業的に入手が容易である観点から、界面活性剤は、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びショ糖脂肪酸エステルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでもよい。得られる吸水性樹脂粒子の吸水特性が向上しやすい観点から、界面活性剤は、ショ糖脂肪酸エステル(例えばショ糖ステアリン酸エステル)を含んでもよい。
【0031】
界面活性剤の量は、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部、0.08~5質量部、又は0.1~3質量部であってもよい。
【0032】
逆相懸濁重合では、上述の界面活性剤と共に高分子系分散剤を併せて用いてもよい。高分子系分散剤としては、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・ブタジエン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、酸化型エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。高分子系分散剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。高分子系分散剤は、単量体の分散安定性に優れる観点から、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン共重合体、無水マレイン酸・プロピレン共重合体、無水マレイン酸・エチレン・プロピレン共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体、酸化型ポリエチレン、酸化型ポリプロピレン、及び、酸化型エチレン・プロピレン共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0033】
高分子系分散剤の量は、単量体水溶液100質量部に対して、0.05~10質量部、0.08~5質量部、又は0.1~3質量部であってもよい。
【0034】
炭化水素分散媒は、炭素数6~8の鎖状脂肪族炭化水素、及び、炭素数6~8の脂環式炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を含んでいてもよい。炭化水素分散媒としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、2-メチルヘキサン、3-メチルヘキサン、2,3-ジメチルペンタン、3-エチルペンタン、n-オクタン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、trans-1,2-ジメチルシクロペンタン、cis-1,3-ジメチルシクロペンタン、trans-1,3-ジメチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素などが挙げられる。炭化水素分散媒は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0035】
工業的に入手が容易であり、かつ、品質が安定している観点から、炭化水素分散媒は、n-ヘプタン及びシクロヘキサンからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでいてもよい。同様の観点から、上述の炭化水素分散媒の混合物としては、例えば、市販されているエクソールヘプタン(エクソンモービル社製:n-ヘプタン及び異性体の炭化水素75~85%含有)を用いてもよい。
【0036】
炭化水素分散媒の量は、重合熱を適度に除去し、重合温度を制御しやすい観点から、単量体水溶液100質量部に対して、30~1000質量部、40~500質量部、又は50~300質量部であってもよい。炭化水素分散媒の量が30質量部以上であることにより、重合温度の制御が容易である傾向がある。炭化水素分散媒の量が1000質量部以下であることにより、重合の生産性が向上する傾向があり、経済的である。
【0037】
ラジカル重合開始剤は水溶性であってもよい。水溶性ラジカル重合開始剤の例としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物;2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]2塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-メチル-N-[1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド]、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)等のアゾ化合物が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。ラジカル重合開始剤は、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2'-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]2塩酸塩、及び、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}2塩酸塩からなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0038】
ラジカル重合開始剤の量は、エチレン性不飽和単量体1モルに対して0.00005~0.01モルであってよい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.00005モル以上であると、重合反応に長時間を要さず、効率的である。ラジカル重合開始剤の量が0.01モル以下であると、急激な重合反応が起こることを抑制しやすい。
【0039】
例示されたラジカル重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L-アスコルビン酸等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
【0040】
重合反応の際、単量体水溶液は、連鎖移動剤を含んでいてもよい。連鎖移動剤としては、次亜リン酸塩類、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、アミン類等が挙げられる。
【0041】
吸水性樹脂粒子の粒子径を制御するために、重合に用いる単量体水溶液は、増粘剤を含んでいてもよい。増粘剤としては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。重合時の攪拌速度が同じであれば、単量体水溶液の粘度が高いほど、得られる粒子の中位粒子径は大きくなる傾向にある。
【0042】
重合の際に自己架橋による架橋が生じるが、更に内部架橋剤を用いることで架橋を施してもよい。内部架橋剤を用いると、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。内部架橋剤は、通常、重合反応の際に反応液に添加される。内部架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類のジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上述のポリオール類と不飽和酸(マレイン酸、フマール酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビス(メタ)アクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼン等の,重合性不飽和基を2個以上有する化合物;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。内部架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。内部架橋剤としては、ポリグリシジル化合物であってもよく、ジグリシジルエーテル化合物であってもよい。内部架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0043】
内部架橋剤の量は、得られる重合体が適度に架橋されることにより水溶性の性質が抑制され、充分な吸水量が得られやすい観点から、エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0ミリモル以上、0.01ミリモル以上、0.015ミリモル以上、又は0.020ミリモル以上であってもよく、0.1モル以下であってもよい。
【0044】
エチレン性不飽和単量体、ラジカル重合開始剤、必要に応じて内部架橋剤等を含む水相と、炭化水素系分散剤と必要に応じて界面活性剤、高分子系分散剤等を含む油相を混合した状態において攪拌下で加熱し、油中水系において逆相懸濁重合を行うことができる。
【0045】
逆相懸濁重合を行う際には、界面活性剤(必要に応じて更に、高分子系分散剤)の存在下で、エチレン性不飽和単量体を含む単量体水溶液を炭化水素分散媒に分散させる。このとき、重合反応を開始する前であれば、界面活性剤、高分子系分散剤等の添加時期は、単量体水溶液の添加の前後どちらであってもよい。
【0046】
得られる吸水性樹脂に残存する炭化水素分散媒の量を低減しやすい観点から、高分子系分散剤を分散させた炭化水素分散媒に単量体水溶液を分散させた後に界面活性剤を更に分散させてから重合を行ってもよい。
【0047】
逆相懸濁重合は、1段、又は、2段以上の多段で行うことができる。逆相懸濁重合は、生産性を高める観点から、2段又は3段で行ってもよい。
【0048】
2段以上の多段で逆相懸濁重合を行う場合、1段目の逆相懸濁重合を行った後、1段目の重合反応で得られた反応混合物にエチレン性不飽和単量体を添加して混合し、1段目と同様の方法で2段目以降の逆相懸濁重合を行えばよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、エチレン性不飽和単量体の他に、上述のラジカル重合開始剤を、2段目以降の各段における逆相懸濁重合の際に添加するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行ってもよい。2段目以降の各段における逆相懸濁重合では、必要に応じて内部架橋剤を用いてもよい。内部架橋剤を用いる場合は、各段に供するエチレン性不飽和単量体の量を基準として、上述のエチレン性不飽和単量体に対する各成分のモル比の範囲内で添加して逆相懸濁重合を行ってもよい。
【0049】
重合反応の温度は、使用するラジカル重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより、経済性を高めると共に、容易に重合熱を除去して円滑に反応を行う観点から、20~150℃、又は40~120℃であってもよい。反応時間は、通常、0.5~4時間である。重合反応の終了は、例えば、反応系内の温度上昇の停止により確認することができる。これにより、エチレン性不飽和単量体の重合体は、通常、含水ゲル状重合体の状態で得られる。
【0050】
重合後、得られた含水ゲル状重合体に架橋剤を添加して加熱することで、重合後架橋を施してもよい。重合後架橋を行なうことで含水ゲル状重合体の架橋度を高め、それにより吸水性樹脂粒子の吸水特性を更に向上させることができる。
【0051】
重合後架橋を行うための架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物等が挙げられる。重合後架橋のための架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物であってもよい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0052】
重合後架橋に用いられる架橋剤の量は、得られる含水ゲル状重合体が適度に架橋されることにより好適な吸水特性を示すようにする観点から、水溶性エチレン性不飽和単量体1モル当たり、0~0.03モル、0~0.01モル、又は0.00001~0.005モルであってもよい。
【0053】
重合後架橋のための架橋剤は、エチレン性不飽和単量体の重合反応後に反応液に添加される。多段重合の場合、多段重合後に重合後架橋のための架橋剤を添加してもよい。重合時および重合後の発熱、工程遅延による滞留、架橋剤添加時の系の開放、及び架橋剤添加に伴う水の添加等による水分の変動を考慮して、重合後架橋のための架橋剤は、含水率(後述)の観点から、[重合直後の含水率±3質量%]の領域で添加してもよい。
【0054】
引き続き、得られた含水ゲル状重合体から水分が除去される。水分を除去する乾燥により、エチレン性不飽和単量体の重合体を含む重合体粒子が得られる。乾燥方法としては、例えば、(a)含水ゲル状重合体が炭化水素分散媒に分散した状態で共沸蒸留により水分を除去する方法、(b)デカンテーションにより含水ゲル状重合体を取り出し、減圧乾燥する方法、(c)フィルターにより含水ゲル状重合体をろ別し、減圧乾燥する方法等が挙げられる。
【0055】
重合反応時の攪拌機の回転数を調整することによって、あるいは、重合反応後又は乾燥の初期において凝集剤を系内に添加することによって吸水性樹脂粒子の粒子径を調整することができる。凝集剤を添加することにより、得られる吸水性樹脂粒子の粒子径を大きくすることができる。凝集剤としては、無機凝集剤を用いることができる。無機凝集剤(例えば粉末状無機凝集剤)としては、シリカ、ゼオライト、ベントナイト、酸化アルミニウム、タルク、二酸化チタン、カオリン、クレイ、ハイドロタルサイト等が挙げられる。凝集効果に優れる観点から、凝集剤が、シリカ、酸化アルミニウム、タルク及びカオリンからなる群より選ばれる少なくとも一種であってもよい。
【0056】
逆相懸濁重合において、重合で用いられるものと同種の炭化水素分散媒又は水に凝集剤を予め分散させてから、これを、攪拌下で、含水ゲル状重合体を含む炭化水素分散媒中に混合してもよい。
【0057】
凝集剤の量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体100質量部に対して、0.001~1質量部、0.005~0.5質量部、又は0.01~0.2質量部であってもよい。凝集剤の量がこれら範囲内であることによって、目的とする粒度分布を有する吸水性樹脂粒子が得られやすい。
【0058】
重合反応は、攪拌翼を有する各種攪拌機を用いて行うことができる。攪拌翼としては、平板翼、格子翼、パドル翼、プロペラ翼、アンカー翼、タービン翼、ファウドラー翼、リボン翼、フルゾーン翼、マックスブレンド翼等を用いることができる。平板翼は、軸(攪拌軸)と、軸の周囲に配置された平板部(攪拌部)とを有している。さらに、平板部は、スリット等を有していてもよい。攪拌翼として平板翼を用いると、形成される重合体粒子における重合体の架橋の均一性が高くなる傾向がある。架橋の均一性が高い重合体粒子を含む吸水性樹脂粒子は、適度に大きい摩擦係数の変動MMDを示す樹脂層を形成し易い傾向がある。
【0059】
吸水性樹脂粒子の製造においては、乾燥工程又はそれ以降のいずれかの工程において、架橋剤を用いて含水ゲル状重合体の表面部分の架橋(表面架橋)が行われてもよい。表面架橋を行うことで、吸水性樹脂粒子の吸水特性を制御しやすい。表面架橋される含水ゲル状重合体の含水率が、5~50質量%、10~40質量%、又は15~35質量%であってもよい。含水ゲル状重合体の含水率(質量%)は、次の式で算出される。
含水率=[Ww/(Ww+Ws)]×100
Ww:全重合工程の重合前の単量体水溶液に含まれる水分量から、乾燥工程により系外部に排出された水分量を差し引いた量に、凝集剤、表面架橋剤等を混合する際に必要に応じて用いられる水分量を加えることで算出される含水ゲル状重合体の水分量。
【0060】
Ws:含水ゲル状重合体を構成するエチレン性不飽和単量体、架橋剤、開始剤等の材料の仕込量から算出される固形分量。
【0061】
表面架橋を行うための架橋剤(表面架橋剤)としては、例えば、反応性官能基を2個以上有する化合物を挙げることができる。架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロロヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロロヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。表面架橋剤は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。表面架橋剤は、ポリグリシジル化合物であってもよく、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及び、ポリグリセロールポリグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含んでもよい。
【0062】
表面架橋剤の量は、重合に使用するエチレン性不飽和単量体1モルに対して、0.00001~0.02モル、0.00005~0.01モル、又は0.0001~0.005モルであってもよい。表面架橋剤の量が0.00001モル以上であると、吸水性樹脂粒子の表面部分における架橋密度が充分に高められ、吸水性樹脂粒子のゲル強度を高めやすい。表面架橋剤の量が0.02モル以下であると、吸水性樹脂粒子の吸水量を高めやすい。
【0063】
表面架橋後、水及び炭化水素分散媒を留去することにより、表面架橋された吸水性樹脂粒子の乾燥品である重合体粒子を得ることができる。
【0064】
本実施形態に係る吸水性樹脂粒子は、重合体粒子のみから構成されていてもよいが、例えば、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)等から選ばれる各種の追加の成分を更に含むことができる。追加の成分は、重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分は、流動性向上剤(滑剤)であってもよい。流動性向上剤は無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0065】
吸水性樹脂粒子は、重合体粒子の表面上に配置された複数の無機粒子を含んでいてもよい。例えば、重合体粒子と無機粒子とを混合することにより、重合体粒子の表面上に無機粒子を配置することができる。この無機粒子は、非晶質シリカ等のシリカ粒子であってもよい。吸水性樹脂粒子が重合体粒子の表面上に配置された無機粒子を含む場合、重合体粒子の質量に対する無機粒子の量の割合は、0.2質量%以上、0.5質量%以上、1.0質量%以上、又は1.5質量%以上であってもよく、5.0質量%以下、又は3.5質量%以下であってもよい。ここでの無機粒子は、通常、重合体粒子の大きさと比較して微小な大きさを有する。例えば、無機粒子の平均粒子径が、0.1~50μm、0.5~30μm、又は1~20μmであってもよい。ここでの平均粒子径は、動的光散乱法、又はレーザー回折・散乱法によって測定される値であることができる。
【0066】
図1は、吸水シートの一例を示す断面図である。図1に示す吸水シート50は、吸収層10と、2枚のコアラップシート20a,20bとを有する。コアラップシート20a,20bは、吸収層10の両側に配置されている。言い換えると、吸収層10は、コアラップシート20a,20bの内側に配置されている。吸収層10は、2枚のコアラップシート20a,20bの間に挟まれることにより、保形されている。コアラップシート20a,20bは、2枚のシートであってもよいし、折り返された1枚のシート、又は1枚の袋体であってもよい。
【0067】
吸水シート50は、コアラップシート20aと吸収層10との間に介在する接着剤21を更に有していてもよい。図2は、コアラップシート上に形成された接着剤のパターンの一例を示す平面図である。図2に示される接着剤21は、コアラップシート20a上で間隔を空けながら配列された複数の線状部分から構成されるパターンを形成している。ただし、接着剤21のパターンはこれに限定されない。両側のコアラップシート20a,20bと吸収層10との間に接着層が介在してもよい。接着剤21は特に限定されず、例えばホットメルト接着剤であってもよい。
【0068】
吸収層10は、上述の実施形態に係る吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bとを有する。吸収層10は、繊維層10bを有していなくてもよい。吸収層における吸水性樹脂粒子の含有量は、吸収層10の質量を基準として、70~100質量%、80~100質量%、又は90~100質量%であってもよい。
【0069】
吸収層10の厚さは、特に限定されないが、乾燥状態で、例えば20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下、又は3mm以下であってよく、0.1mm以上、又は0.3mm以上であってもよい。吸収層10の単位面積当たりの質量は、1000g/m以下、800g/m以下、又は600g/m以下であってもよく、100g/m以上であってもよい。
【0070】
繊維層10bを構成する繊維状物は、例えば、セルロース系繊維、合成繊維、又はこれらの組み合わせであることができる。セルロース系繊維の例としては、粉砕された木材パルプ、コットン、コットンリンター、レーヨン、セルロースアセテートが挙げられる。合成繊維の例としては、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、及びポリオレフィン繊維が挙げられる。繊維状物が親水性繊維(例えばパルプ)であってもよい。繊維状物の平均繊維長は、通常、0.1~10mmであり、0.5~5mmであってよい。
【0071】
吸収層10(又は繊維層10b)は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、抗菌剤、香料等を更に含んでもよい。吸水性樹脂粒子10aが無機粒子を含む場合、吸収層10は吸水性樹脂粒子10a中の無機粒子とは別に無機粉末を含んでいてもよい。
【0072】
コアラップシート20a,20bは、例えば不織布であってもよい。2枚のコアラップシート20a,20bが、同一又は異なる不織布であることができる。不織布は、短繊維(すなわちステープル)で構成される不織布(短繊維不織布)であってもよく、長繊維(すなわちフィラメント)で構成される不織布(長繊維不織布)であってもよい。ステープルは、これに限定されないが、一般的には数百mm以下の繊維長を有していてよい。
【0073】
コアラップシート20a,20bは、サーマルボンド不織布、エアスルー不織布、レジンボンド不織布、スパンボンド不織布、メルトブロー不織布、エアレイド不織布、スパンレース不織布、ポイントボンド不織布、又はこれらから選ばれる2種以上の不織布を含む積層体であってよい。
【0074】
コアラップシート20a,20bとして用いられる不織布は、合成繊維、天然繊維、又はこれらの組み合わせによって形成された不織布であることができる。合成繊維の例としては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)及びポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ナイロン等のポリアミド、並びにレーヨンから選ばれる合成樹脂を含む繊維が挙げられる。天然繊維の例としては、綿、絹、麻、又はパルプ(セルロース)を含む繊維が挙げられる。不織布を形成する繊維が、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維又はこれらの組み合わせであってよい。コアラップシート20a,20bがティッシュペーパーであってもよい。
【0075】
吸水シート50は、例えば、吸水性樹脂粒子10a、又は吸水性樹脂粒子10aと繊維状物とを含む混合物とコアラップシート20a,20bの間に挟み、形成された構造体を必要により加熱しながら加圧する方法により、得ることができる。必要により、コアラップシート20a,20bと、吸水性樹脂粒子10a、又はこれを含む混合物との間に接着剤21が配置される。
【0076】
吸水シート50は、例えば各種の吸収性物品を製造するために用いられる。吸収性物品の例としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、及び動物排泄物処理材が挙げられる。
【0077】
図3は、吸収性物品の一例を示す断面図である。図3に示す吸収性物品100は、吸水シート50と、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40とを備える。言い換えると、吸水シート50が、液体透過性シート30と液体不透過性シート40との間に挟まれている。
【0078】
液体透過性シート30は、吸収対象の液が浸入する側の最外層の位置に配置されている。液体透過性シート30は、コアラップシート20bに接した状態でコアラップシート20bの外側に配置されている。液体不透過性シート40は、吸収性物品100において液体透過性シート30とは反対側の最外層の位置に配置されている。液体不透過性シート40は、コアラップシート20aに接した状態でコアラップシート20aの外側に配置されている。液体透過性シート30及び液体不透過性シート40は、吸水シート50の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の外縁部は、吸収層10及びコアラップシート20a,20bの周囲に延在している。ただし、吸収層10、コアラップシート20a,20b、液体透過性シート30、及び、液体不透過性シート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。
【0079】
液体透過性シート30は、不織布であってもよい。液体透過性シート30として用いられる不織布は、吸収性物品の液体吸収性能の観点から、適度な親水性を有していてもよい。その観点から、液体透過性シート30は、紙パルプ技術協会による紙パルプ試験方法No.68(2000)の測定方法に従って測定される親水度が5~200の不織布であってもよい。不織布の親水度は、10~150であってもよい。紙パルプ試験方法No.68の詳細については、例えばWO2011/086843号を参照することができる。
【0080】
親水性を有する不織布は、例えば、レーヨン繊維のように適度な親水度を示す繊維によって形成されたものでもよいし、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維のような疎水性の化学繊維を親水化処理して得た繊維によって形成されたものであってもよい。親水化処理された疎水性の化学繊維を含む不織布を得る方法としては、例えば、疎水性の化学繊維に親水化剤を混合したものを用いてスパンボンド法にて不織布を得る方法、疎水性化学繊維でスパンボンド不織布を作製する際に親水化剤を同伴させる方法、疎水性の化学繊維を用いて得たスパンボンド不織布に親水化剤を含浸させる方法が挙げられる。親水化剤としては、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩等のアニオン系界面活性剤、第4級アンモニウム塩等のカチオン系界面活性剤、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル等のノニオン系界面活性剤、ポリオキシアルキレン変性シリコーン等のシリコーン系界面活性剤、及びポリエステル系、ポリアミド系、アクリル系、ウレタン系の樹脂からなるステイン・リリース剤等が用いられる。
【0081】
液体透過性シート30として用いられる不織布の目付量(単位面積当たりの質量)は、吸収性物品に、良好な液体浸透性、柔軟性、強度及びクッション性を付与できる観点、及び吸収性物品の液体浸透速度を速める観点から、5~200g/m、8~150g/m、又は10~100g/mであってもよい。液体透過性シート30の厚さは、20~1400μm、50~1200μm、又は80~1000μmであってもよい。
【0082】
液体不透過性シート40は、吸収層10に吸収された液体が液体不透過性シート40側から外部へ漏れ出すのを防止する。液体不透過性シート40は、樹脂シート、又は不織布であってもよい。樹脂シートは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシートであってもよい。不織布は、耐水性のメルトブロー不織布を高強度のスパンボンド不織布で挟んだスパンボンド/メルトブロー/スパンボンド(SMS)不織布であってもよい。液体不透過性シート40が、樹脂シートと不織布(例えば、スパンボンド不織布、スパンレース不織布)との複合シートであってもよい。液体不透過性シート40は、装着時のムレが低減されて、着用者に与える不快感を軽減することができる等の観点から、通気性を有していてもよい。通気性を有する液体不透過性シート40として、例えば低密度ポリエチレン(LDPE)樹脂のシートを用いることができる。
【0083】
吸収性物品の着用感を損なわないよう、柔軟性を確保する観点から、液体不透過性シート40の目付量(単位面積当たりの質量)が10~50g/mであってもよい。
【0084】
吸収性物品100は、例えば、吸水シート50を液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の間に配置することを含む方法により、製造することができる。液体不透過性シート40、吸水シート50及び液体透過性シート30の順に積層された積層体が、必要により加圧される。あるいは、液体透過性シート30と、コアラップシート20bと、吸水性樹脂粒子10a、又は吸水性樹脂粒子10aと繊維状物とを含む混合物と、コアラップシート20aと液体不透過性シート40とをこの順に配置し、形成された構造体を必要により加熱しながら加圧する方法により、吸収性物品100を得ることもできる。
【実施例
【0085】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0086】
1.吸水性樹脂粒子の作製
実施例1
<第1段目の重合反応>
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び攪拌機を備えた内径11cm、内容積2Lの丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。攪拌機に、図4に概形を示す攪拌翼200を取り付けた。攪拌翼200は、軸200a及び平板部200bを備えている。平板部200bは、軸200aに溶接されると共に、湾曲した先端を有している。平板部200bには、軸200aの軸方向に沿って延びる4つのスリットSが形成されている。4つのスリットSは平板部200bの幅方向に配列されており、内側の二つのスリットSの幅は1cmであり、外側二つのスリットSの幅は0.5cmである。平板部200bの長さは約10cmであり、平板部200bの幅は約6cmである。
【0087】
準備したセパラブルフラスコ内でn-ヘプタン293g、及び分散剤(無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体、三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を、攪拌機で攪拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。形成された反応液を50℃まで冷却した。
【0088】
内容積300mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れた。外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に濃度20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液に、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HECAW-15F)、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)、及び過硫酸ナトリウム0.0162g(0.068ミリモル)、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル)を加えてこれらを溶解させて、第1段目の単量体水溶液を調製した。
【0089】
第1段目の単量体水溶液を、上述のセパラブルフラスコ内の反応液に添加し、反応液を10分間攪拌した。次いで、n-ヘプタン6.62g及びショ糖ステアリン酸エステル(HLB:3、三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370)0.736gを含む界面活性剤溶液を反応液に添加し、攪拌翼の回転数を425rpmとして反応液を攪拌しながら、系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分間かけて重合反応を進行させた。この重合反応により、含水ゲル状重合体を含む第1段目の重合スラリー液を得た。
【0090】
<第2段目の重合反応>
内容積500mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れた。ビーカーを外部より冷却しつつ、アクリル酸水溶液に対して濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下し、それにより75モル%のアクリル酸を中和した。次いで、アクリル酸水溶液に、水溶性ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸ナトリウム0.0226g(0.095ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えてこれらを溶解し、第2段目の単量体水溶液を調製した。
【0091】
セパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を、攪拌翼の回転数を650rpmとして攪拌しながら22℃に冷却した。そこに、第2段目の単量体水溶液の全量を添加し、続いて系内を窒素で30分間かけて置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴中で加熱しながら、60分かけて第2段目の重合反応を進行させた。
【0092】
第2段目の重合反応後の反応液に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを攪拌下で添加した。その後、125℃の油浴にセパラブルフラスコを浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により、229.2gの水を系外へ抜き出した。その後、反応液に表面架橋剤として濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液4.42g(0.507ミリモル)を添加し、反応液を83℃で2時間保持することにより、表面架橋剤による架橋反応を進行させた。
【0093】
表面架橋剤による架橋反応後の反応液から、125℃での加熱によりn-ヘプタンを留去して、重合体粒子の乾燥品を得た。得られた重合体粒子に目開き850μmの篩に通過させた。その後、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合し、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子214.9gを得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は470μmであった。
【0094】
実施例2
第1段目の水性液の調製において使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0648g(0.272ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.010g(0.057ミリモル)に変更したこと、第1段目重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機の回転数を350rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0907g(0.381ミリモル)に変更したこと、並びに、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を271.0gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、215.8gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は470μmであった。
【0095】
実施例3
第1段目の水性液の調製において使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0648g(0.272ミリモル)に変更したこと、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテルの添加量を0.010g(0.057ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を過硫酸ナトリウム0.0907g(0.381ミリモル)に変更したこと、第2の重合反応において、第1段目の重合スラリー液を25℃に冷却して、第2段目の単量体水溶液の全量を添加したこと、並びに、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を256.5gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、230.2gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は358μmであった。
【0096】
比較例1
攪拌翼を翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有するものに変更したこと、第1段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.068ミリモル)に変更したこと、第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機の回転数を550rpmに変更したこと、第2段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.475ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.095ミリモル)に変更したこと、第2段目の水性液の調製後に、セパラブルフラスコ系内を25℃に冷却し、その際の攪拌機回転数を1000rpmに変更したこと、並びに、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を215.8gに変更したこと以外は実施例1と同様にして、228.6gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は339μmであった。
【0097】
比較例2
攪拌翼を翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有するものに変更したこと、第1段目の水性液調製において、使用するラジカル重合開始剤を2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.110g(0.407ミリモル)に変更したこと、内部架橋のための架橋剤を添加しなかったこと、使用する増粘剤をヒドロキシルエチルセルロース1.38gに変更したこと、第1段目の重合スラリー液の調製において窒素置換時の攪拌機の回転数を400rpmに変更したこと、並びに、第1段目の重合反応の後、2段目の重合反応を行うことなく、共沸蒸留により系外へ抜き出す水の量を109gに変更したこと、表面架橋剤としての濃度2質量%のエチレングリコールジグリシジルエーテル水溶液の量を9.20g(1.056ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、90.0gの吸水性樹脂粒子を得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は395μmであった。
【0098】
2.評価
2-1.保水量
吸水性樹脂粒子の生理食塩水の保水量(室温、25℃±2℃)を下記手順で測定した。吸水性樹脂粒子2.0gを量り取った綿袋(メンブロード60番、横100mm×縦200mm)を500mL容のビーカー内に設置した。吸水性樹脂粒子の入った綿袋中に0.9質量%塩化ナトリウム水溶液(生理食塩水)500gをママコができないように一度に注ぎ込み、綿袋の上部を輪ゴムで縛り、30分静置させることで吸水性樹脂粒子を膨潤させた。30分経過後の綿袋を、遠心力が167Gとなるよう設定した脱水機(株式会社コクサン製、品番:H-122)を用いて1分間脱水し、脱水後の膨潤ゲルを含んだ綿袋の質量Wa(g)を測定した。吸水性樹脂粒子を添加せずに同様の操作を行い、綿袋の湿潤時の空質量Wb(g)を測定した。以下の式から保水量を算出した。
保水量(g/g)=[Wa-Wb]/2.0
【0099】
2-2.荷重下吸水量
吸水性樹脂粒子の2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量を、温度25℃±2℃、湿度50±10%の環境下で、図5に示す測定装置Yを用いて測定した。測定装置Yは、ビュレット部71、導管72、測定台73、及び、測定台73上に置かれた測定部74から構成される。ビュレット部71は、鉛直方向に伸びるビュレット71aと、ビュレット71aの上端に配置されたゴム栓71bと、ビュレット71aの下端に配置されたコック71cと、コック71cの近傍において一端がビュレット71a内に伸びる空気導入管71dと、空気導入管71dの他端側に配置されたコック71eとを有している。導管72は、ビュレット部71と測定台73との間に取り付けられている。導管72の内径は6mmである。測定台73の中央部には、直径2mmの穴があいており、導管72が連結されている。測定部74は、円筒74a(アクリル樹脂(プレキシグラス)製)と、円筒74aの底部に接着されたナイロンメッシュ74bと、重り74cとを有している。円筒74aの内径は20mmである。ナイロンメッシュ74bの目開きは75μm(200メッシュ)である。そして、測定時にはナイロンメッシュ74b上に測定対象の吸水性樹脂粒子75が均一に撒布される。重り74cの直径は19mmであり、重り74cの質量は59.8gである。重り74cは、吸水性樹脂粒子75上に置かれ、吸水性樹脂粒子75に対して2.07kPaの荷重を加えることができる。
【0100】
測定装置Yの円筒74aの中に0.100gの吸水性樹脂粒子75を入れた後、重り74cを載せて測定を開始した。吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水と同容積の空気が、空気導入管より、速やかにかつスムーズにビュレット71aの内部に供給されるため、ビュレット71aの内部の生理食塩水の水位の減量が、吸水性樹脂粒子75が吸水した生理食塩水量となる。ビュレット71aの目盛は、上から下方向に0mLから0.5mL刻みで刻印されている。生理食塩水の水位として、吸水開始前のビュレット71aの目盛りVaと、吸水開始から60分後のビュレット71aの目盛りVbとを読み取り、下記式より荷重下吸水量(2.07kPaの荷重下での生理食塩水に対する吸水量)を算出した。
荷重下吸水量[mL/g]=(Vb-Va)/0.1
【0101】
2-3.摩擦係数
摩擦係数を測定するための簡易吸水シートを作製した。図6は、作製した簡易吸水シートを示す断面図である。作業台の水平面の上に、5×15cmの長方形の粘着面25Sを有する粘着テープ25(ダイヤテックス株式会社製、バイオランテープ(商品名))を、その粘着面25Sが上になる向きで置いた。粘着面25S全体にわたって、吸水性樹脂粒子1.5gを均一に散布した。散布により粘着面25に付着した吸水性樹脂粒子の樹脂層10Aの短辺に沿う端部に、4.0kgのローラー(ステンレス製、直径10.5cm、幅6.0cm)を載せ、ローラーを粘着面25Sの2つの短辺の間で1往復させた。次いで、吸水性樹脂粒子の樹脂層10Aの上に、樹脂層10A全体を覆うティッシュペーパー27(単位面積当たりの質量:16g/m)を載せ、摩擦係数の評価サンプルとした。なお、該評価サンプルは、長手方向に4等分に分割した際の各領域(5×3.75cm)に散布された吸水性樹脂粒子の質量の標準偏差が0.05以下となるように作製した。
【0102】
温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で、摩擦感テスター(カトーテック社製、KES-SE-STP(商品名))のプローブを、ティッシュペーパーの吸水性樹脂粒子の樹脂層10Aとは反対側の表面27Sに押し当てながら、直線状に往復させることにより、表面の摩擦係数を所定の動作距離にわたって連続的に測定した。測定条件は以下のとおりである。動作距離は、ティッシュペーパーの表面をプローブが移動した距離である。この測定により、摩擦係数μとセンサの移動距離xとの関係を示す曲線を得た。
・接触子:ピアノ線
・Sens:H
・移動速度:10mm/秒
・荷重:50gf
・動作距離:26.67mm
【0103】
得られた曲線から、下記式により平均摩擦係数(MIU)、及び摩擦係数の変動(MMD)を求めた。これら式中、μは各測定点における摩擦係数で、xは各測定点までのセンサの移動距離である。同様の測定を5回行い、得られた測定値のうち最大値及び最小値を除く3個の値の平均値を求めた。この平均値を表1に示した。試験に用いたティッシュペーパーを直接粘着面に載せ、その状態で上記と同様の方法でティッシュペーパー表面の摩擦係数を測定したところ、MIUは0.21で、MMDは0.028であった。
【数3】
【0104】
2-4.吸水シートの浸透速度
評価用吸水シートの作製
ロールから巻き出した目付量30g/mのエアスルー不織布を、41cm×14cmのサイズに裁断した。エアスルー不織布のロールで外側であった表面上に、気流型混合装置(有限会社オーテック社製、パッドフォーマー)を用いて吸水性樹脂粒子12gを均一に分散させた。41cm×14cmのサイズを有する目付量13g/mのスパンボンド不織布の表面に、ホットメルト塗工機によって、0.5gのホットメルト接着剤を1mm間隔で12本の直線に沿って塗布した。塗布のパターンは、スパイラルストライプであった。スパンボンド不織布のホットメルト接着剤が付着した面、及びエアスルー不織布の吸水性樹脂粒子が散布された面を内側にして、スパンボンド不織布とエアスルー不織布の端部が揃うようにこれらを重ね合わせた。次いで全体を剥離紙で挟み、ラミネート機を用いて、110℃に加熱しながら0.1MPaの圧力でプレスすることにより、スパンボンド不織布、ホットメルト接着剤、吸水性樹脂粒子からなる吸収層、及びエアスルー不織布の順に配置された、図1と同様の構成を有する評価用吸水シートを得た。
【0105】
2-5.浸透速度
温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で、評価用吸収シートを、エアスルー不織布が上側に位置する向きで、作業台の水平面上に置いた。容量100mLの液体収容部及び液体収容部の底部から伸びた内径3cmの投入口を有する液投入用のシリンダーを準備し、これを、投入口の先端が評価用吸収性物品の中央部に接した状態で保持した。シリンダーの液体収容部に25±1℃の50mLの人工尿を一気に投入し、投入口の先端から人工尿を吸水シートに吸収させた。ストップウォッチを用いて、人工尿を投入した時点から人工尿がシリンダー内から完全に消失するまでの時間を測定した。この時間を1回目の浸透速度(秒)とした。同様の操作を、30分間隔で更に2回行い、2回目及び3回目の浸透時間(秒)を測定した。人工尿は以下の成分を混合して調製した。
・イオン交換水:5919.6g
・NaCl:60.0g
・CaCl2・H2O:1.8g
・MgCl2・6H2O:3.6g
・食用青色1号(着色用):0.15g
・トリトン X-100(1%):15.0g
【0106】
2-6.中位粒子径
吸水性樹脂粒子50gを中位粒子径測定用に用いた。測定は温度25±2℃、湿度50±10%の環境下で行なわれた。JIS標準篩を上から、目開き850μmの篩、目開き500μmの篩、目開き425μmの篩、目開き300μmの篩、目開き250μmの篩、目開き180μmの篩、目開き150μmの篩、及び受け皿の順に組み合わせた。最上部の篩に、吸水性樹脂粒子を入れ、ロータップ式振とう器(株式会社飯田製作所製)を用いてJIS Z 8815(1994)に準じて分級した。分級後、各篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量を全量に対する質量百分率として算出し粒度分布を求めた。この粒度分布に関して粒子径の大きい方から順に、篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率を積算することにより、篩の目開きと篩上に残った吸水性樹脂粒子の質量百分率の積算値との関係を対数確率紙にプロットした。確率紙上のプロットを直線で結ぶことにより、積算質量百分率50質量%に相当する粒子径を中位粒子径とした。
【0107】
【表1】
【0108】
表1に評価結果が示される。摩擦係数の変動MMDが特定の数値である吸水性樹脂粒子を用いて作製された吸水シートを有する吸収性物品は、改善された浸透速度を示した。
【符号の説明】
【0109】
10…吸収層、10a…吸水性樹脂粒子、10b…繊維層、20a…コアラップシート、20b…コアラップシート、21…接着剤、30…液体透過性シート、40…液体不透過性シート、50…吸水シート、71…ビュレット部、71a…ビュレット、71b…ゴム栓、71c…コック、71d…空気導入管、71e…コック、72…導管、73…測定台、74…測定部、74a…円筒、74b…ナイロンメッシュ、74c…重り、75…吸水性樹脂粒子、100…吸収性物品、200…攪拌翼、200a…軸、200b…平板部、S…スリット。
図1
図2
図3
図4
図5
図6