IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エルジー・ケム・リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】装飾部材およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20220621BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20220621BHJP
   G02B 5/22 20060101ALI20220621BHJP
   G06F 1/16 20060101ALI20220621BHJP
   H04M 1/02 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B32B7/023
G02B5/22
G06F1/16 312G
G06F1/16 313C
H04M1/02 J
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020528920
(86)(22)【出願日】2018-07-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 KR2018007584
(87)【国際公開番号】W WO2019117413
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2020-05-27
(31)【優先権主張番号】10-2017-0173250
(32)【優先日】2017-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0002278
(32)【優先日】2018-01-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ジョ、ピルソン
(72)【発明者】
【氏名】ジャン、ソン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ヨン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ション、ジョン ウー
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ジン スク
(72)【発明者】
【氏名】キム、キ ファン
【審査官】櫛引 明佳
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-037040(JP,A)
【文献】特表2015-533678(JP,A)
【文献】特開2017-220150(JP,A)
【文献】特開2009-083183(JP,A)
【文献】特開2006-350355(JP,A)
【文献】特開2009-269222(JP,A)
【文献】特開2008-083599(JP,A)
【文献】特開2001-347798(JP,A)
【文献】特開2009-255373(JP,A)
【文献】特開2016-182782(JP,A)
【文献】特開2002-248421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
G02B 5/20-5/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光反射層と、光吸収層と、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムと、を含む色発現層を含む装飾部材であって、
前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、何れか1つの傾斜面を有する領域での厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含む、装飾部材。
【請求項2】
前記カラーフィルムは、前記カラーフィルムが備えられていない場合に比べて、前記カラーフィルムが存在する場合に、前記色発現層の色座標CIE L*a*b*におけるL*a*b*の差である色差△Eabが1を超えるようにした、請求項1に記載の装飾部材。
【請求項3】
基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間、または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられる、請求項1または2に記載の装飾部材。
【請求項4】
基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間、または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられる、請求項1または2に記載の装飾部材。
【請求項5】
前記カラーフィルムは、1枚、または同種または異種が2枚以上積層された状態である、請求項1から4のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項6】
前記光吸収層は△Eab>1の異色性を有する、請求項1からのいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項7】
光反射層と、光吸収層と、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムと、を含む色発現層を含む装飾部材であって、
前記光吸収層の上面は、コーン(cone)状の突出部または溝部を有するパターン、最高点が線状の突出部、または最低点が線状の溝部を有するパターン、またはコーン状の上面が切断された構造の突出部または溝部を有するパターンを含み、
前記コーン状の突出部または溝部を有するパターンは、前記コーン状のパターンを上面から観察した時に、コーンの頂点を基準として360度回転時に同一の形態が2つ以下存在する装飾部材。
【請求項8】
光反射層と、光吸収層と、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムと、を含む色発現層を含む装飾部材であって、
前記光吸収層の上面は、コーン(cone)状の突出部または溝部を有するパターン、最高点が線状の突出部、または最低点が線状の溝部を有するパターン、またはコーン状の上面が切断された構造の突出部または溝部を有するパターンを含み、
前記最高点が線状の突出部、または最低点が線状の溝部を有するパターンは、上面から観察した時に、重心点を基準として360度回転時に同一の形態が1つしか存在しない装飾部材。
【請求項9】
前記光吸収層は、380~780nmで屈折率が0~8である、請求項1からのいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項10】
前記光吸収層は、400nmで消衰係数が0超過4以下である、請求項1からのいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項11】
前記光反射層は、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の材料;その酸化物;その窒化物;その酸窒化物;炭素および炭素複合体からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む単一層または多層である、請求項1から10のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項12】
前記光吸収層は、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の材料;その酸化物;その窒化物;その酸窒化物;炭素および炭素複合体からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む単一層または多層である、請求項1から11のいずれか一項に記載の装飾部材。
【請求項13】
装飾フィルムまたはモバイル機器のケースである、請求項1から12の何れか一項に記載の装飾部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、装飾部材およびその製造方法に関する。具体的に、本発明は、モバイル機器や電子製品に用いられるのに適した装飾部材およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、種々のモバイル機器、家電製品は、製品の機能以外にも、製品のデザイン、例えば、色相、形態、パターンなどが、顧客の製品の価値付与において大きい役割をしている。デザインによって、製品の選好度および価格も左右されている。
【0003】
一例として、携帯電話の場合、様々な色相と色感を様々な方法により実現して製品に適用している。携帯電話のケース素材自体に色を付与する方式や、色と模様を実現した装飾フィルムをケース素材に付着してデザインを付与する方式が用いられている。
【0004】
従来の装飾フィルムにおいて、色相の発現は、印刷、蒸着などの方法により実現しようとしていた。異種の色相を単一面に表現する場合には、2回以上印刷しなければならず、立体パターンに多様な色を加えようとする場合は、現実的に実現が困難であった。また、従来の装飾フィルムは、見る角度によって色相が固定されており、やや変化があるとしても、色感差の程度に限定されていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、種々の色相を容易に実現することができ、必要に応じて、立体パターンに多数の色相を実現することができるとともに、見る角度によって色相変化を提供することができる装飾部材を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本出願の一実施態様は、光反射層と、前記光反射層上に備えられた光吸収層と、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムと、を含む色発現層を含む装飾部材を提供する。
【0007】
本出願の他の一実施態様によると、前記カラーフィルムは、前記カラーフィルムが備えられていない場合に比べて、前記カラーフィルムが存在する場合に、前記色発現層の色座標CIE L*a*b*におけるL*a*b*の差である色差△Eabが1を超えるようにする。
【0008】
本出願の他の一実施態様によると、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に基材が備えられる。前記基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間、または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられることができる。前記基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間、または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられることができる。
【0009】
本出願の他の一実施態様によると、基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間、または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられることができる。
【0010】
本出願の他の一実施態様によると、基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間、または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられることができる。
【0011】
この際、前記カラーフィルムは、1枚、または同種または異種が2枚以上積層された状態で備えられることができる。
【0012】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の地点を含む。
【0013】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の領域を含む。
【0014】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、何れか1つの傾斜面を有する領域での厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含む。
【0015】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、厚さが次第に変わる領域を1つ以上含む。
【0016】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、少なくとも1つの傾斜面を有する領域は、光吸収層の厚さが次第に変わる構造を有する。
【0017】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、400nmで消衰係数(k)値が0超過4以下である。
【0018】
本出願の他の一実施態様によると、前記装飾部材は、装飾フィルム、またはモバイル機器のケース、または家電製品のケース、またはカラー装飾が要求される生活用品である。
【発明の効果】
【0019】
本明細書に記載の実施態様によると、外部光が色発現層を介して入射する時の入射経路と、反射する時の反射経路のそれぞれで光吸収がなされ、外部光は、光吸収層の表面と光反射層の表面でそれぞれ反射されるため、光吸収層の表面における反射光と、光反射層の表面における反射光との間に強め合う干渉および弱め合う干渉現象が生じる。上記のような入射経路と反射経路における光吸収と、強め合う干渉および弱め合う干渉現象により、特定の色相が発現されることができる。したがって、光反射層の材料による反射率スペクトルと光吸収層の組成によって、特定の色相を実現することができる。また、発現される色相は厚さ依存性を有しているため、同じ物質構成を有する場合にも、その厚さによって色相を変化させることができる。さらに、カラーフィルムをさらに備えることで、前記光反射層と光吸収層の材料および厚さが決定されている場合にも、実現可能な色相の幅をより大きく増加させることができる。カラーフィルムの追加による色相変化幅は、カラーフィルムの適用前後におけるL*a*b*の差である色差(△Eab)と定義することができる。さらに、同一面で、光吸収層が厚さの異なる2以上の地点または領域を有するようにすることで、複数の色相発現が可能であり、立体パターンに色発現層を形成することで、立体パターンに種々の色相を実現することができる。
【0020】
また、光吸収層の上面が少なくとも1つの傾斜面を有するようにする場合、見る角度によって、発現される色相の変化を実現することができるだけでなく、簡単な工程により、光吸収層が厚さの異なる2以上の領域を有するように製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図2】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図3】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図4】光反射層および光吸収層の構造での色相発現の作用原理を説明するための模式図である。
図5】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図6】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図7】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面の構造を例示した図である。
図8】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面の構造を例示した図である。
図9】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面の構造を例示した図である。
図10】本出願の実施態様に係る装飾部材の光吸収層の上面の構造を例示した図である。
図11】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図12】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図13】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図14】本発明の実施態様に係る装飾部材の積層構造を例示した図である。
図15】光吸収層の厚さによって、色相が異なって発現されることを示した図である。
図16】光吸収層の厚さによって、色相が異なって発現されることを示した図である。
図17】光吸収層の厚さによって、色相が異なって発現されることを示した図である。
図18】実施例で用いられたカラーフィルムの光透過率を示した図である。
図19】実施例で用いられたカラーフィルムの光反射率を示した図である。
図20】アルミニウム酸窒化物のnおよびk値を示したグラフである。
図21】比較例1および2と、実施例1および2で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図22】比較例3~6で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図23】実施例3~6で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図24】実施例7~10で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図25】実施例11~14で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図26】実施例15~18で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図27】実施例19~36と比較例7および8で用いられた異色性パターンを有するPET基材またはガラスの断面構造を示した図である。
図28】実施例19~27および比較例7~9で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図29】実施例28~36および比較例10~12で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図30】実施例37および比較例13で製造された装飾部材の色相を示した図である。
図31】光吸収層および光反射層を区別する方法を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下で、本発明を詳細に説明する。
【0023】
本明細書において、「地点」とは、面積を有しない1つの位置を意味する。本明細書では、光吸収層の厚さが互いに異なる地点が2以上存在するという点を示すために、上記の表現が用いられる。
【0024】
本明細書において、「領域」とは、一定面積を有する部分を表現する。例えば、前記装飾部材を、光反射層が下部、前記光吸収層が上部に置かれるように地面におき、前記傾斜面の両端部または厚さが等しい両端部を地面に対して垂直に区分した時に、傾斜面を有する領域は、前記傾斜面の両端部で区分された面積を意味し、厚さが等しい領域は、前記厚さが等しい両端部で区分された面積を意味する。
【0025】
本明細書において、「面」または「領域」は、平面であってもよいが、これに限定されず、全部または一部が曲面であってもよい。例えば、垂直断面の形態が、円や楕円の弧の一部、波構造、ジグザグなどである構造が含まれ得る。
【0026】
本明細書において、「傾斜面」とは、前記装飾部材を、光反射層が下部、前記光吸収層が上部に置かれるように地面においた時に、地面を基準として上面が成す角度が0度超過90度以下である面を意味する。
【0027】
本明細書において、ある層の「厚さ」とは、該当層の下面から上面までの最短距離を意味する。
【0028】
本明細書において、「または」とは、他に定義しない限り、挙げられたものなどを選択的にまたは全て含む場合、すなわち、「および/または」の意味を表す。
【0029】
本明細書において、「層」とは、該当層が存在する面積を70%以上覆っているものを意味する。好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上覆っているものを意味する。
【0030】
本出願の一実施態様に係る装飾部材は、光反射層と、前記光反射層上に備えられた光吸収層と、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、前記光反射層と前記光吸収層との間、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられたカラーフィルムと、を含む色発現層を含むことを特徴とする。
【0031】
前記カラーフィルムは、前記カラーフィルムが備えられていない場合に比べて、前記カラーフィルムが存在する場合に、前記色発現層の色座標CIE L*a*b*におけるL*a*b*の空間での距離である色差△Eabが1を超えるようにするものであれば特に限定されない。
【0032】
色の表現はCIE L*a*b*で表現可能であり、色差は、L*a*b*の空間での距離(△Eab)を利用して定義されることができる。具体的に、
【数1】
であり、0<△Eab<1の範囲内では、観察者が色差を認知することができない[参考文献:Machine Graphics and Vision 20(4):383-411]。したがって、本明細書では、カラーフィルムの追加による色差を△Eab>1と定義することができる。
【0033】
図1の(a)に、光反射層201、光吸収層301、およびカラーフィルム401が順に積層された構造を、図1の(b)に、光反射層201、カラーフィルム401、および光吸収層301が順に積層された構造を、そして図1の(c)に、カラーフィルム401、光反射層201、および光吸収層301が順に積層された構造を例示した。
【0034】
前記カラーフィルムは、基材の役割を果たすこともできる。例えば、基材として使用可能なものに、染料または顔料を添加することでカラーフィルムとして用いられることができる。
【0035】
前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面、または前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に、基材が備えられることができる。
【0036】
例えば、前記基材が前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光反射層との間、または前記基材の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられることができる。他の一例として、前記基材が前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に備えられ、前記カラーフィルムが前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に位置する場合、前記カラーフィルムは、前記基材と前記光吸収層との間、または前記基材の前記光吸収層に対向する面の反対面に備えられることができる。
【0037】
本出願の他の一実施態様によると、前記光反射層の前記光吸収層に対向する面の反対面に基材が備えられ、カラーフィルムがさらに備えられる。図2の(a)には、カラーフィルム401が光吸収層301の光反射層201側の反対面に備えられた構造、図2の(b)には、カラーフィルム401が光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造、図2の(c)には、カラーフィルム401が光反射層201と基材101との間に備えられた構造、図2の(d)には、カラーフィルム401が基材101の光反射層201側の反対面に備えられた構造を示している。図2の(e)には、カラーフィルム401a、401b、401c、401dが、それぞれ光吸収層301の光反射層201側の反対面、光吸収層301と光反射層201との間、光反射層201と基材101との間、および基材101の光反射層201側の反対面に備えられた構造を例示しているが、これらにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム401a、401b、401c、401dのうち1~3個は省略されてもよい。
【0038】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層の前記光反射層に対向する面の反対面に基材が備えられ、カラーフィルムがさらに備えられる。図3の(a)には、カラーフィルム401が基材101の光吸収層301側の反対面に備えられた構造、図3の(b)には、カラーフィルム401が基材101と光吸収層301との間に備えられた構造、図3の(c)には、カラーフィルム401が光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造、図3の(d)には、カラーフィルム401が光反射層201の光吸収層301側の反対面に備えられた構造を示している。図3の(e)には、カラーフィルム401a、401b、401c、401dが、それぞれ基材101の光吸収層301側の反対面、基材101と光吸収層301と間、光吸収層301と光反射層201との間、および光反射層201の光吸収層301側の反対面に備えられた構造を例示しているが、これらにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム401a、401b、401c、401dのうち1~3個は省略されてもよい。
【0039】
図2(b)と図3(c)のような構造は、カラーフィルムの可視光透過率が0%を超えると、光反射層でカラーフィルムを通過して入射した光を反射することができるため、光吸収層と光反射層の積層による色相実現が可能である。
【0040】
図2(c)、図2(d)、および図3(d)のような構造では、カラーフィルムの追加による色差変化を認識できるように、光反射層201のカラーフィルムから発現される色相の光透過率が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であることが好ましい。このような可視光線透過率の範囲で、透過された光がカラーフィルムによる色相と混合されることができるためである。
【0041】
前記カラーフィルムは、1枚、または同種または異種が2枚以上積層された状態で備えられることができる。
【0042】
前記カラーフィルムとしては、上述の光反射層および光吸収層の積層構造から発現される色相とともに組み合わされ、所望の色相を発現することができるものが使用可能である。例えば、顔料および染料の1種または2種以上がマトリックス樹脂中に分散されて色相を呈するカラーフィルムが使用できる。上記のようなカラーフィルムは、図1図3のように、カラーフィルムが備えられ得る位置にカラーフィルム形成用組成物を直接コーティングして形成してもよく、別の基材にカラーフィルム形成用組成物をコーティングするか、キャスティング、押出などの公知の成形方法によりカラーフィルムを製造した後、図1図3のように、カラーフィルムが備えられ得る位置にカラーフィルムを配置または付着する方法を用いてもよい。コーティング方法としては、湿式コーティングまたは乾式コーティングが用いられることができる。
【0043】
前記カラーフィルムに含まれ得る顔料および染料としては、最終的な装飾部材から所望の色相を達成することができるものとして、当技術分野において公知のものなどから選択されることができ、赤色系、黄色系、紫色系、青色系、ピンク色系などの顔料および染料のうち1種または2種以上が使用できる。具体的に、ペリノン(perinone)系赤色染料、アントラキノン系赤色染料、メチン系黄色染料、アントラキノン系黄色染料、アントラキノン系紫色染料、フタロシアニン系青色染料、チオインジゴ(thioindigo)系ピンク色染料、イソインジゴ(isoindigo)系ピンク色染料などの染料が単独でまたは組み合わされて用いられることができる。カーボンブラック、銅フタロシアニン(C.I.ピグメントブルー15:3)、C.I.ピグメントレッド112、ピグメントブルー、イソインドリンイエローなどの顔料が単独でまたは組み合わされて用いられてもよい。上記のような染料または顔料としては、市販のものが使用でき、例えば、Ciba ORACET社、チョグァンペイント(株)などの材料が使用可能である。前記染料または顔料の種類およびこれらの色相は例示にすぎず、公知の染料または顔料が多様に使用可能であり、これにより、さらに様々な色相を実現することができる。
【0044】
前記カラーフィルムに含まれるマトリックス樹脂としては、透明フィルム、プライマー層、接着層、コーティング層などの材料として公知されている材料が使用でき、特にその材料に限定されない。例えば、アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、ウレタン系樹脂、線状オレフィン系樹脂、シクロオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂などの種々の材料が選択されることができ、前記例示された材料の共重合体または混合物も使用可能である。
【0045】
前記カラーフィルムが、前記光反射層または前記光吸収層よりも装飾部材の観察位置に近く配置された場合、例えば、図2の(a)、(b)、図3の(a)、(b)、(c)のような構造では、前記カラーフィルムは、光反射層、光吸収層、または光反射層と光吸収層の積層構造から発現される色相の光透過率が1%以上、好ましくは3%以上、より好ましくは5%以上であることが好ましい。これにより、カラーフィルムから発現される色相と、光反射層、光吸収層、またはこれらの積層構造から発現される色相がともに組み合わされて所望の色相を達成することができる。
【0046】
前記カラーフィルムの厚さは特に限定されず、所望の色相を呈することができれば、当技術分野において通常の知識を有する者が厚さを選択して設定することができる。例えば、カラーフィルムの厚さは、500nm~1mmであることができる。
【0047】
前記実施態様によると、光吸収層では、光の入射経路および反射経路で光吸収がなされ、また、光は光吸収層の表面、および光吸収層と光反射層との界面でそれぞれ反射し、2つの反射光が強め合う干渉または弱め合う干渉をすることになる。本明細書において、光吸収層の表面で反射される光は表面反射光、光吸収層と光反射層との界面で反射される光は界面反射光と表現されることができる。図4に、このような作用原理の模式図を示した。図4には、基材101が光反射層201側に備えられ、カラーフィルム401が基材101側に備えられた構造が例示されているが、かかる構造に限定されず、カラーフィルム401および基材101の位置は、上述の説明のように他の位置に配置されてもよい。
【0048】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層がパターンを含む場合、前記パターンは、対称構造、非対称構造、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0049】
一例によると、前記光吸収層は対称構造のパターンを含むことができる。対称構造としては、プリズム構造、レンチキュラレンズ構造などが含まれる。
【0050】
図5および図6に、光吸収層301が対称構造のパターンを有する例を示した。図5は、基材101が光反射層201側に備えられた構造であり、図6は、基材101が光吸収層301側に備えられた構造である。図5および図6によると、基材101の一面、すなわち、基材201の光反射層201に接する面にパターンが備えられた形態を有する。このパターンの構造によって、光反射層201および光吸収層301が同一のパターンを有する。図5および図6には、パターンが基材101に付着されている形態を示したが、基材の一面をパターンの形態に変形させる方法により、パターンを有する一体型基材が用いられてもよい。また、基材101がパターンを有さず、光反射層201の光吸収層301に接する面にパターンが備えられるか、光反射層201は平坦面を有し、光吸収層301の光反射層201に接する面の反対面のみにパターンを有してもよい。図5および図6には、カラーフィルム401が、基材101側、基材101とパターンとの間、光吸収層301側、または光吸収層301と光反射層201との間に備えられた構造が示されている。しかし、これらにのみ限定されるものではなく、カラーフィルム101は、示された位置の2ヶ所以上に備えられてもよい。本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層が非対称構造のパターンを含むことができる。
【0051】
本明細書において、非対称構造とは、上面、側面、または断面で観察した時に、少なくとも1つの面で非対称構造を有することを意味する。このように非対称構造を有する場合、前記装飾部材は異色性を発現することができる。異色性とは、見る角度によって異なる色相が観測されることを意味する。
【0052】
異色性は、上述の色差に関連した
【数2】
で表することができ、見る角度による色差がEab>1である場合、異色性があると定義することができる。
【0053】
一例によると、前記光吸収層は、△Eab>1の異色性を有するものであることができる。
【0054】
一例によると、前記光吸収層は、上面がコーン(cone)状の突出部または溝部を有するパターンを含む。コーン状は、円錐、楕円錐、または多角錐の形態を含む。ここで、多角錐の底面の形態としては、三角形、四角形、突出点が5個以上の星状などが挙げられる。前記コーン状は、光吸収層の上面に形成された突出部の形態であってもよく、光吸収層の上面に形成された溝部の形態であってもよい。前記突出部は断面が三角形であり、前記溝部は断面が逆三角形の形態である。光吸収層の下面も、光吸収層の上面と同一の形態を有することができる。
【0055】
一例によると、前記光吸収層の上面は、コーン(cone)状の突出部または溝部を有するパターン、最高点が線状の突出部、または最低点が線状の溝部を有するパターン、またはコーン状の上面が切断された構造の突出部または溝部を有するパターンを含むことができる。
【0056】
一例によると、前記コーン状のパターンは非対称構造を有することができる。例えば、前記コーン状のパターンを上面から観察した時に、コーンの頂点を基準として360度回転時に、同一の形態が3つ以上存在する場合には、前記パターンから異色性が発現されにくい。しかし、前記コーン状のパターンを上面から観察した時に、コーンの頂点を基準として360度回転時に同一の形態が2つ以下存在する場合に、異色性が発現されることができる。図7はコーン状の上面を示した図であって、(a)は何れも対称構造のコーン状を示した図であり、(b)は非対称構造のコーン状を例示した図である。
【0057】
一例によると、前記最高点が線状の突出部、または最低点が線状の溝部を有するパターンは、上面から観察した時に、重心点を基準として360度回転時に同一の形態が1つしか存在しないものであることができる。
【0058】
対称構造のコーン状は、コーン状の底面が円であるか、各辺の長さが等しい正多角形であり、コーンの頂点が、底面の重心点の垂直線上に存在する構造である。しかし、非対称構造のコーン状は、それを上面から観察した時に、コーンの頂点の位置が、底面の重心点ではない点の垂直線上に存在する構造であるか、底面が非対称構造の多角形または楕円である構造である。底面が非対称構造の多角形である場合は、多角形の辺または角の少なくとも1つを、残りと異なるように設計することができる。
【0059】
例えば、図8のように、コーンの頂点の位置を変更することができる。具体的に、図8の第1の図のように、上面から観察した時に、コーンの頂点を底面の重心点O1の垂直線上に位置するように設計する場合、コーンの頂点を基準として360度回転時に、4つの同一の構造を得ることができる(4 fold symmetry)。しかし、コーンの頂点を底面の重心点O1ではない位置O2に設計することで、対称構造が破れる。底面の一辺の長さをx、コーンの頂点の移動距離をaおよびb、コーンの頂点(O1またはO2)から底面まで垂直に連結した線の長さであるコーン状の高さをh、底面とコーンの側面が成す角度をθnとしたときに、図8の面1、面2、面3、および面4について、下記のようにコサイン値が得られる。
【数3】
【0060】
この際、θ1とθ2は同一であるため異色性がない。しかし、θ3とθ4は異なり、│θ3-θ4│は二つの色間の色差(Eab)を意味するため、異色性を示すことができる。ここで、│θ3-θ4│>0である。このように、コーンの底面と側面が成す角度を利用して、対称構造がどれくらい破れているか、すなわち、非対称の程度を定量的に示すことができる。このような非対称の程度を示す数値は、異色性の色差に比例する。
【0061】
他の一例によると、前記光吸収層は、最高点が線状の突出部、または最低点が線状の溝部を有するパターンを含む。前記線状は直線状であってもよく、曲線状であってもよく、曲線と直線の両方を含んでもよい。線状の突出部または溝部を有するパターンを上面から観察した時に、上面の重心点を基準として360度回転時に同一の形態が2つ以上存在する場合には、異色性を発現しにくい。しかし、線状の突出部または溝部を有するパターンを上面から観察した時に、上面の重心点を基準として360度回転時に同一の形態が1つしか存在しない場合には、異色性を発現することができる。図9は、線状の突出部を有するパターンの上面を示した図であって、(a)は、異色性を発現しない線状の突出部を有するパターンを例示した図であり、(b)は、異色性を発現する線状の突出部を有するパターンを例示した図である。図9(a)のX-X´断面は二等辺三角形または正三角形であり、図9(b)のY-Y´断面は側辺の長さが互いに異なる三角形である。
【0062】
他の一例によると、前記光吸収層は、上面が、コーン状の上面が切断された構造の突出部または溝部を有するパターンを含む。このようなパターンの断面は、台形または逆台形の形態であることができる。この場合にも、上面、側面、または断面が非対称構造を有するように設計することで、異色性を発現することができる。
【0063】
上記で例示した構造の他にも、図10のような様々な突出部または溝部パターンを実現することができる。
【0064】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、厚さが異なる2以上の領域を含むことができる。
【0065】
図31を参照して、光吸収層と光反射層について説明する。図31の装飾部材には、光が入って来る方向を基準として、各層(layer)がLi-1層、L層、およびLi+1層の順に積層されており、Li-1層とL層との間に界面(interface)Iが位置し、L層とLi+1層との間に界面Ii+1が位置する。
【0066】
薄膜干渉が起こらないように、各層に垂直な方向に特定波長を有する光を照射した時に、界面Iiでの反射率は、下記数学式1で表することができる。
[数学式1]
【数4】
【0067】
前記数学式1中、n(λ)は、i番目の層の波長(λ)による屈折率を意味し、k(λ)は、i番目の層の波長(λ)による消衰係数(extinction coefficient)を意味する。消衰係数は、特定波長で対象物質が光をどれくらい強く吸収するかを定義する尺度であって、定義は上述のとおりである。
【0068】
前記数学式1を適用し、各波長で計算された界面Iでの波長毎の反射率の和をRとしたときに、Rは下記の数学式2のとおりである。
[数学式2]
【数5】
【0069】
前記実施態様に係る構造の例示を図11および図12に示した。図11および図12は、基材101、光反射層201、および光吸収層301が積層された構造に加えて、カラーフィルム401がさらに備えられた構造を例示した図である。図11および図12には、基材101が光反射層201側に備えられた構造を例示しているが、これらにのみ限定されるものではなく、基材101は光吸収層301側に備えられてもよい。図11および図12によると、前記光吸収層301は、互いに異なる厚さを有する2以上の地点を有する。図11によると、A地点とB地点での光吸収層301の厚さが異なる。図12によると、C領域とD領域での光吸収層301の厚さが異なる。図11および図12には、1つのカラーフィルム401が備えられた例のみを示したが、カラーフィルム401は2つ以上備えられることができる。
【0070】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、前記光吸収層は、何れか1つの傾斜面を有する領域での厚さと異なる厚さを有する領域を1つ以上含む。
【0071】
前記光反射層の上面の傾斜度のような表面特性は、前記光吸収層の上面と同一であることができる。例えば、光吸収層の形成時に蒸着方法を利用することで、光吸収層の上面が、光反射層の上面と同一の傾斜度を有することができる。
【0072】
図13に、上面が傾斜面を有する光吸収層を含む装飾部材の構造を例示した。カラーフィルム401、基材101、光反射層201、および光吸収層301が積層された構造であって、光吸収層301のE領域での厚さt1とF領域での厚さt2が異なる。
【0073】
図13は、互いに向かい合う傾斜面、すなわち、断面が三角形である構造を有する光吸収層に関する。図13のように、互いに向かい合う傾斜面を有するパターンの構造では、同一の条件で蒸着を行っても、三角形構造の2つの面で光吸収層の厚さが異なる。したがって、1回の工程だけで、厚さが異なる2以上の領域を有する光吸収層を形成することができる。これにより、光吸収層の厚さによって発現色相が異なることになる。この際、光反射層の厚さが一定以上であると、色相の変化に影響を与えない。
【0074】
図13には、基材101が光反射層201側に備えられ、カラーフィルム401が基材101側に備えられた構造が例示されているが、このような構造に限定されず、カラーフィルム401および基材101の位置は、上述の説明のように他の位置に配置されてもよい。また、図13の基材101は、光反射層201と接する面が平坦面であるが、基材101の光反射層201と接する面は、光反射層201の上面と同一の勾配を有するパターンを有してもよい。この場合、基材のパターンの勾配差によって、光吸収層の厚さにも差が生じ得る。しかし、これに限定されず、他の蒸着方法を利用して基材と光吸収層が異なる勾配を有するようにしても、パターンの両側で光吸収層の厚さが異なるようにして、上述の異色性を示すことができる。
【0075】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、厚さが次第に変わる領域を1つ以上含む。図11によると、光吸収層の厚さが次第に変わる構造が例示されている。
【0076】
本出願の他の一実施態様によると、前記光吸収層は、上面が、傾斜角が0度超過90度以下の傾斜面を有する領域を1つ以上含み、少なくとも1つの傾斜面を有する領域は、光吸収層の厚さが次第に変わる構造を有する。図14に、上面が傾斜面を有する領域を含む光吸収層の構造を例示した。図14のG領域とH領域は、両方とも光吸収層の上面が傾斜面を有し、光吸収層の厚さが次第に変わる構造を有する。
【0077】
一例によると、前記光吸収層は、傾斜角が1度~90度の範囲内である第1傾斜面を有する第1領域を含み、上面が、前記第1傾斜面と傾斜方向が異なるか傾斜角が異なる傾斜面を有するか、上面が水平である第2領域をさらに含むことができる。この際、前記第1領域と前記第2領域で、光吸収層の厚さが互いに異なることができる。
【0078】
他の一例によると、前記光吸収層は、傾斜角が1度~90度の範囲内である第1傾斜面を有する第1領域を含み、上面が、前記第1傾斜面と傾斜方向が異なるかまたは傾斜角が異なる傾斜面を有するか、上面が水平である2つ以上の領域をさらに含むことができる。この際、前記第1領域および前記2つ以上の領域での光吸収層の厚さは、何れも互いに異なることができる。
【0079】
前記光吸収層は、屈折率(n)、消衰係数(k)、および厚さ(t)によって種々の色相が実現可能である。図15は、光吸収層の厚さによる、波長毎の反射率を示した図であり、図16は、これにより実現した色相を示した図である。具体的に、図9は、CuO/CuのCuO蒸着厚さ毎の反射率シミュレーショングラフであり、同一の蒸着条件で、CuOの厚さを10~60nmに変更しながら作成した資料である。
【0080】
図17は、視野角度によって異なる色相が観察されることを示すシミュレーション結果である。図17は、CuON/Alのシミュレーション結果である。図17では、光吸収層の厚さを10nmから10nmまで10nmずつ増加させ、入射角を0度から60度まで15度間隔で調整している。このようなシミュレーション結果から、本出願の実施態様に係る構造で、光吸収層の厚さおよび上面の傾斜角を調整することで、種々の色相を実現することができることが分かる。これに加えて、カラーフィルムを備えることで、さらに種々の色相を実現することができる。
【0081】
前記光反射層としては、光を反射することができる材料であれば特に限定されないが、光反射率は材料によって決定され、例えば、50%以上で色相実現が容易である。光反射率はエリプソメータ(ellipsometer)を用いて測定することができる。
【0082】
前記光吸収層は、400nmで屈折率(n)が0~8であることが好ましく、0~7であってもよく、0.01~3であってもよく、2~2.5であってもよい。屈折率(n)は、sin θ1/sin θ2(θ1は、光吸収層の表面から入射される光の角であり、θ2は、光吸収層の内部での光の屈折角である)により計算されることができる。
【0083】
前記光吸収層は、380~780nmで屈折率(n)が0~8であることが好ましく、0~7であってもよく、0.01~3であってもよく、2~2.5であってもよい。
【0084】
前記光吸収層は、400nmで消衰係数(k)が0超過4以下であり、0.01~4であることが好ましく、0.01~3.5であってもよく、0.01~3であってもよく、0.1~1であってもよい。消衰係数(k)は、-λ/4πI(dI/dx)(ここで、光吸収層内で経路単位長さ(dx)、例えば、1m当たりの光の強度の減少分率dI/Iにλ/4πを乗じた値であり、この際、λは光の波長である。
【0085】
前記光吸収層は、380~780nmで消衰係数(k)が0超過4以下であり、0.01~4であることが好ましく、0.01~3.5であってもよく、0.01~3であってもよく、0.1~1であってもよい。
【0086】
400nm、好ましくは380~780nmの可視光線全波長領域で消衰係数(k)が前記範囲であるため、可視光線範囲内で光吸収層の役割を果たすことができる。
【0087】
例えば、樹脂中に染料を添加して光を吸収する方式を利用する場合と、上述のような消衰係数を有する材料を使用する場合は、光を吸収するスペクトルが異なる。樹脂中に染料を添加して光を吸収する場合、吸収波長帯が固定され、コーティング厚さの変化に伴って吸収量が変化する現象のみが発生する。また、所望の光吸収量を得るために、光吸収量を調節するために最小数マイクロメートル以上の厚さ変化が必要である。これに対し、消衰係数を有する材料では、厚さが数もしくは数十ナノメートルの規模で変化しても、吸収する光の波長帯が変わる。
【0088】
一実施態様によると、前記光反射層は、金属層、金属酸化物層、金属窒化物層、金属酸窒化物層、炭素または炭素複合体層、または無機物層であることができる。前記光反射層は、単一層で構成されてもよく、2層以上の多層で構成されてもよい。
【0089】
一例として、前記光反射層は、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の材料;その酸化物;その窒化物;その酸窒化物;炭素および炭素複合体からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む単一層または多層であることができる。例えば、前記光反射層は、前記材料から選択される2つ以上の合金、その酸化物、窒化物、または酸窒化物を含むことができる。より具体的には、モリブデン、アルミニウム、または銅を含むことができる。他の一例によると、前記光反射層は、炭素または炭素複合体を含むインクを利用して製造されることで、高抵抗の反射層を実現することができる。炭素または炭素複合体としては、カーボンブラック、CNTなどが挙げられる。前記炭素または炭素複合体を含むインクは、上述の材料またはその酸化物、窒化物、または酸窒化物を含むことができ、例えば、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の酸化物を含むことができる。前記炭素または炭素複合体を含むインクを印刷した後、硬化工程をさらに行うことができる。
【0090】
前記光反射層は、2種以上の材料を含む場合、2種以上の材料を1つの工程、例えば、蒸着または印刷の方法により形成してもよいが、1種以上の材料で先に層を形成した後、さらに1種以上の材料で、その上に層を形成する方法が利用されることができる。例えば、インジウムやスズを蒸着して層を形成した後、炭素を含むインクを印刷してから硬化させることで、光反射層を形成することができる。前記インクには、チタン酸化物、シリコン酸化物のような酸化物がさらに含まれることができる。
【0091】
一実施態様によると、前記光吸収層は、単一層であってもよく、2層以上の多層であってもよい。前記光吸収層は、380~780nmで消衰係数(k)を有する材料、すなわち、消衰係数が0超過4以下、好ましくは0.01~4の材料からなることができる。例えば、前記光吸収層は、金属、メタロイド、および金属やメタロイドの酸化物、窒化物、酸窒化物、および炭化物からなる群から選択される1つまたは2つ以上を含むことができる。前記金属またはメタロイドの酸化物、窒化物、酸窒化物、または炭化物は、当業者が設定した蒸着条件などによって形成することができる。光吸収層は、光反射層と同一の金属、メタロイド、2種以上の合金または酸窒化物を含んでもよい。
【0092】
例えば、前記光吸収層は、インジウム(In)、チタン(Ti)、スズ(Sn)、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)、タングステン(W)、タンタル(Ta)、モリブデン(Mo)、ネオジム(Nb)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、コバルト(Co)、金(Au)、および銀(Ag)から選択される1種または2種以上の材料;その酸化物;その窒化物;その酸窒化物;炭素および炭素複合体からなる群から選択される1種または2種以上の材料を含む単一層または多層であることができる。具体的な例として、前記光吸収層は、銅酸化物、銅窒化物、銅酸窒化物、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、アルミニウム酸窒化物、およびモリブデンチタン酸窒化物から選択される1種または2種以上を含む。
【0093】
一例によると、前記光吸収層は、シリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)を含む。
【0094】
シリコン(Si)またはゲルマニウム(Ge)からなる光吸収層は、400nmで屈折率(n)が0~8であり、0~7であってもよく、消衰係数(k)が0超過4以下、好ましくは0.01~4であり、0.01~3または0.01~1であってもよい。
【0095】
他の一例によると、前記光吸収層は、銅酸化物、銅窒化物、銅酸窒化物、アルミニウム酸化物、アルミニウム窒化物、アルミニウム酸窒化物、およびモリブデンチタン酸窒化物から選択される1種または2種以上を含む。この場合、光吸収層は、400nmで屈折率(n)が1~3、例えば、2~2.5であってもよく、消衰係数(k)が0超過4以下、好ましくは0.01~2.5、好ましくは0.2~2.5、より好ましくは0.2~0.6であってもよい。
【0096】
一例によると、前記光吸収層はAlOxNy(x>0、y>0)である。
【0097】
他の一例によると、前記光吸収層は、AlOxNy(0≦x≦1.5、0≦y≦1)であることができる。
【0098】
他の一例によると、前記光吸収層は、AlOxNy(x>0、y>0)であり、全原子数100%に対して、各原子の数が下記式を満たす。
【数6】
【0099】
一実施態様によると、前記光吸収層は、400nm、好ましくは380~780nmで消衰係数(k)を有する材料からなることができ、例えば、光吸収層/光反射層は、CuO/Cu、CuON/Cu、CuON/Al、AlON/Al、AlN/AL/AlON/Cu、AlN/Cuなどの材料で形成されることができる。
【0100】
一実施態様によると、前記光反射層の厚さは、最終構造で所望の色相によって決定可能であり、例えば、1nm以上、好ましくは25nm以上、例えば、50nm以上、好ましくは70nm以上である。
【0101】
一実施態様によると、前記光吸収層の厚さは5~500nm、例えば、30~500nmであることができる。
【0102】
一実施態様によると、前記光吸収層の領域毎の厚さ差は2~200nmであり、所望の色相差によって決定可能である。
【0103】
一実施態様によると、前記光反射層の下面または前記光吸収層の上面に備えられた基材をさらに含むことができる。前記基材の上面の傾斜度のような表面特性は、前記光反射層および光吸収層の上面と同一であることができる。これは、光反射層と光吸収層が蒸着方法により形成されることで、基材、光反射層、および光吸収層が同一の角度の傾斜面を有することができる。例えば、上記のような構造は、基材の上面に傾斜面または立体構造を形成し、その上に、光反射層および光吸収層を順に蒸着するか、光吸収層および光反射層を順に蒸着することで実現されることができる。
【0104】
一例によると、前記基材の表面に傾斜面または立体構造を形成することは、紫外線硬化型樹脂にパターンを形成し、紫外線を利用して硬化することで製造してもよく、レーザーで加工する方法により行ってもよい。一実施態様によると、前記装飾部材は、装飾フィルムまたはモバイル機器のケースであることができる。前記装飾部材は、必要に応じて、粘着層をさらに含んでもよい。
【0105】
前記基材の材料は特に限定されず、上記のような方法により傾斜面または立体構造を形成する場合、当技術分野で公知の紫外線硬化型樹脂が用いられることができる。
【0106】
前記光吸収層上には、保護層がさらに備えられてもよい。
【0107】
一例によると、前記光吸収層または光反射層が備えられた基材の反対面には、接着剤層がさらに備えられてもよい。この接着剤層は、OCA(optically clear adhesive)層であることができる。前記接着剤層上には、必要に応じて、保護のための剥離層(release liner)がさらに備えられることができる。
【0108】
本明細書では、光反射層および光吸収層を形成する方法の例として、スパッタリング方式のような蒸着を言及したが、本明細書に記載の実施態様に係る構成および特性を有することができれば、薄膜を製作するための様々な方式が適用可能である。例えば、蒸発蒸着法、CVD(chemical vapor deposition)、湿式コーティング(wet coating)などが用いられることができる。
[発明を実施するための形態]
【0109】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を例示するためのものにすぎず、本発明の範囲を限定するためのものではない。
【0110】
実施例1および2
PET基材上に、青色顔料が分散された溶液を湿式コーティング(wet coating)工程により塗布し、青色カラーフィルムを形成した。ここで、形成されたカラーフィルムの物性を確認するために、図18および図19に示された構造で光透過率および光反射率を測定した値を図18および図19に示した。その上に窒素を添加し、反応性スパッタリング法(reactive sputtering)によりAlON(58at%のAl、3.5at%のO、38.5at%のN)光吸収層を形成した。この際、実施例1では、光吸収層の厚さを約40nmで形成し、実施例2では、光吸収層の厚さを約80nmで形成した。光吸収層上にAlをスパッタリング方式により蒸着し、光反射層(Al、厚さ120nm)を形成した。参照に、アルミニウム酸窒化物のnおよびk値は図20に示したとおりである。
【0111】
比較例1および2
カラーフィルムを積層していないことを除き、実施例1と同様に行った。比較例1、2および実施例1、2で製造された装飾フィルムの色相を図21に示した。コニカミノルタ社のCM-2600d装備で測定した可視光領域での反射率(SCI、Specular Component Included)を用いて色相を計算した。具体的な色相変換条件は、D65光源で、視野角10゜観察者を基準とした。
【0112】
図21によると、実施例1と比較例1、実施例2と比較例2を比較すると、カラーフィルムの積層により色差△Eabが1を超えていることを確認することができ、光吸収層の組成や厚さが同一である場合にも、カラーフィルムの追加により、所望の色相を製作することができることが分かる。
【0113】
比較例3
ガラス上にAlをスパッタリング方式により蒸着して光反射層(Al、厚さ120nm)を形成した後、その上に、窒素を添加して反応性スパッタリング法(reactive sputtering)によりAlON(58at%のAl、3.5at%のO、38.5at%のN)光吸収層を形成した。比較例3では、光吸収層の厚さを10nmから100nmまで、10nmの間隔で10種類の厚さを有するようにした。これから得られた装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算し、その結果を図22に示した。各厚さでのCIE色座標L*、a*、b*値は、1Onm(95.32,-0.51,2.23)、20nm(91.26,-1.30,11.00)、30nm(81.91,-0.53,31.90)、40nm(64.91,10.37,46.92)、50nm(47.30,21.19,3.89)、60nm(47.80,5.22,-21.29)、70nm(58.83,-5.56,-17.77)、80nm(67.80,-6.78,-10.08)、90nm(73.44,-6.36,-2.44)、100nm(76.52,-6.43,6.39)であった。
【0114】
比較例4
ガラス上にAlON(58at%のAl、3.5at%のO、38.5at%のN)光吸収層を形成した後、光反射層(Al、厚さ120nm)を形成したことを除き、比較例3と同様に行った。これから得られた装飾部材のガラスを介して視認される色相を実施例1と同様に計算し、その結果を図22に示した。
【0115】
比較例5
光吸収層の厚さを、120nmから300nmまで20nmの間隔で、10種類の厚さを有するようにしたことを除き、比較例3と同様に行った。これから得られた装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算し、その結果を図22に示した。
【0116】
比較例6
光吸収層の厚さを、120nmから300nmまで20nmの間隔で、10種類の厚さを有するようにしたことを除き、比較例4と同様に行った。これから得られた装飾部材のガラスを介して視認される色相を実施例1と同様に計算し、その結果を図22に示した。
【0117】
比較例3~6による装飾部材の各厚さでのCIE Lab座標値を下記表1および表2に示した。
【0118】
【表1】
【表2】
【0119】
実施例3~6
実施例3および5は、光吸収層上に赤色顔料が分散された溶液を湿式コーティング(wet coating)工程により塗布して赤色カラーフィルムを形成したことを除き、比較例3および5と同様に行った。実施例4および6は、光吸収層を形成する前に、ガラス上に赤色顔料が分散された溶液を湿式コーティング(wet coating)工程により塗布して赤色カラーフィルムを形成したことを除き、比較例4および6と同様に行った。ここで、形成されたカラーフィルムの物性を確認するために、図18および図19に示された構造で光透過率および光反射率を測定した値を図18および図19に示した。これから得られた実施例3および5の装飾部材の空気を介して視認される色相と、実施例4および6の装飾部材のガラスを介して視認される色相を、実施例1と同様に計算し、その結果を図23に示した。
【0120】
実施例3~6による装飾部材の各厚さでのCIE Lab座標値を下記表3および表4に示した。
【0121】
【表3】
【表4】
【0122】
実施例7~10
実施例7~10では、赤色カラーフィルムの代わりに、青色カラーフィルムを使用したことを除き、それぞれ実施例3~6と同様に行った。この際、青色カラーフィルムは実施例1と同一である。これから得られた実施例7および9の装飾部材の空気を介して視認される色相と、実施例8および10の装飾部材のガラスを介して視認される色相を、実施例1と同様に計算し、その結果を図24に示した。
【0123】
実施例7~10による装飾部材の各厚さでのCIE Lab座標値を下記表5および表6に示した。
【0124】
【表5】
【表6】
【0125】
実施例11~14
実施例11~14では、赤色カラーフィルムの代わりに、金色カラーフィルムを使用したことを除き、それぞれ実施例3~6と同様に行った。ここで、形成されたカラーフィルムの物性を確認するために、図18および図19に示された構造で光透過率および光反射率を測定した値を図18および図19に示した。これから得られた実施例11および13の装飾部材の空気を介して視認される色相、実施例12および14の装飾部材のガラスを介して視認される色相を、実施例1と同様に計算し、その結果を図25に示した。
【0126】
実施例11~14による装飾部材の各厚さでのCIE Lab座標値を下記表7および表8に示した。
【0127】
【表7】
【表8】
【0128】
実施例15~18
実施例15~18では、赤色カラーフィルムの代わりに、orchidカラーフィルムを使用したことを除き、それぞれ実施例3~6と同様に行った。ここで、形成されたカラーフィルムの物性を確認するために、図18および図19に示された構造で光透過率および光反射率を測定した値を図18および図19に示した。これから得られた実施例15および17の装飾部材の空気を介して視認される色相、実施例16および18の装飾部材のガラスを介して視認される色相を、実施例1と同様に計算し、その結果を図26に示した。
【0129】
図22図26によると、比較例に比べて、カラーフィルムを適用した実施例で、カラーフィルムの積層により色差△Eabが1を超えていることを確認することができ、光吸収層の組成や厚さが同一である場合にも、種々の色相のカラーフィルムの追加により、所望の色相を製作することができることが分かる。
【0130】
実施例15~18による装飾部材の各厚さでのCIE Lab座標値を下記表9および表10に示した。
【0131】
【表9】
【表10】
【0132】
実施例19~21
平板ガラスの代わりに、図27のような異色性パターンを有するガラスを使用したことを除き、実施例3と同様に赤色カラーフィルムを含む装飾部材を製造した。これらの実施例で製造された装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図28に示した。この際、光吸収層のLow Angleで見える側の厚さと、High Angleで見える側の厚さは、実施例19がそれぞれ30nmおよび10nmであ、実施例20がそれぞれ80nmおよび30nmであり、実施例21がそれぞれ140nm/50nmであった。
【0133】
実施例22~24
平板ガラスの代わりに、図27のような異色性パターンを有するガラスを使用したことを除き、実施例7と同様に青色カラーフィルムを含む装飾部材を製造した。これらの実施例で製造された装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図28に示した。この際、光吸収層のLow Angleで見える側の厚さと、High Angleで見える側の厚さは、実施例22がそれぞれ30nmおよび10nmであり、実施例23がそれぞれ80nmおよび30nmであり、実施例24がそれぞれ140nmおよび50nmであった。
【0134】
実施例25~27
平板ガラスの代わりに、図27のような異色性パターンを有するガラスを使用したことを除き、実施例11と同様に金色カラーフィルムを含む装飾部材を製造した。これらの実施例で製造された装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図28に示した。この際、光吸収層のLow Angleで見える側の厚さと、High Angleで見える側の厚さは、実施例25がそれぞれ30nmおよび10nmであり、実施例26がそれぞれ80nmおよび30nmであり、実施例27がそれぞれ140nmおよび50nmであった。
【0135】
比較例7~9
カラーフィルムを追加していないことを除き、実施例19~21と同様に装飾部材を製造し、製造された装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図28に示した。図28によると、カラーフィルムの積層により色差△Eabが1を超えていることを確認することができ、光吸収層の組成や厚さが同一である場合にも、種々の色相のカラーフィルムの追加により、所望の色相を製作することができることが分かる。
【0136】
図28の結果を下記表11~表13に示した。
【0137】
【表11】
【表12】
【表13】
【0138】
実施例28~30
平板ガラスの代わりに、図27のような異色性パターンを有するガラスを使用したことを除き、実施例4と同様に赤色カラーフィルムを含む装飾部材を製造した。これらの実施例で製造された装飾部材のガラスを介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図29に示した。この際、光吸収層のLow Angleで見える側の厚さと、High Angleで見える側の厚さは、実施例28がそれぞれ30nmおよび10nmであり、実施例29がそれぞれ80nmおよび30nmであり、実施例30がそれぞれ140nmおよび50nmであった。
【0139】
実施例31~33
平板ガラスの代わりに、図27のような異色性パターンを有するガラスを使用したことを除き、実施例8と同様に青色カラーフィルムを含む装飾部材を製造した。これらの実施例で製造された装飾部材のガラスを介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図29に示した。この際、光吸収層のLow Angleで見える側の厚さと、High Angleで見える側の厚さは実施例31がそれぞれ30nmおよび10nmであり、実施例32がそれぞれ80nmおよび30nmであり、実施例33がそれぞれ140nmおよび50nmであった。
【0140】
実施例34~36
平板ガラスの代わりに、図27のような異色性パターンを有するガラスを使用したことを除き、実施例12と同様に金色カラーフィルムを含む装飾部材を製造した。これらの実施例で製造された装飾部材のガラスを介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図29に示した。この際、光吸収層のLow Angleで見える側の厚さと、High Angleで見える側の厚さは、実施例34がそれぞれ30nmおよび10nmであり、実施例35がそれぞれ80nmおよび30nmであり、実施例36がそれぞれ140nmおよび50nmであった。
【0141】
比較例10~12
カラーフィルムを追加していないことを除き、実施例28~30と同様に装飾部材を製造し、製造された装飾部材の空気を介して視認される色相を実施例1と同様に計算した結果を図29に示した。図29によると、カラーフィルムの積層により色差△Eabが1を超えていることを確認することができ、光吸収層の組成や厚さが同一である場合にも、種々の色相のカラーフィルムの追加により、所望の色相を製作することができることが分かる。
【0142】
図29の結果を下記表14~表16に示した。
【0143】
【表14】
【表15】
【表16】
【0144】
実施例37
図27のような異色性パターンを有するガラス上に、実施例1と同様に青色カラーフィルムを形成した後、反応性スパッタリング蒸着を利用して、光吸収層としてアルミニウム酸窒化物層を形成した。ベース圧力(Base Pressure)3X10-6Torr、プロセス圧力3mTorrの真空条件下で蒸着工程を行い、Arガスは100sccmに調節し、反応性ガスのNは14sccmに調節した。前記光吸収層上に、光反射層としてアルミニウム層を厚さ100nmで蒸着した。このように製造された装飾部材のガラスを介して観察された色相を比較した結果を図30に示した。
【0145】
比較例13
青色カラーフィルムを形成していないことを除き、実施例37と同様に行った。このように製造された装飾部材のガラスを介して観察された色相を比較した結果を図30に示した。
【0146】
図30から、比較例13でHigh AngleとLow Angleの色相差は△E*ab=9.88であり、実施例37でHigh AngleとLow Angleの色相差は△E*ab=8.99であった。青色カラーフィルムを追加しても、比較例13の装飾部材の異色性特性は維持され、且つHigh AngleとLow Angleで示す色相調節が可能であることを確認することができた。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10(a)】
図10(b)】
図10(c)】
図10(d)】
図10(e)】
図10(f)】
図10(g)】
図10(h)】
図10(i)】
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31