(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ケーブル端末構造及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H02G 15/04 20060101AFI20220621BHJP
H01B 7/00 20060101ALI20220621BHJP
H01B 7/282 20060101ALI20220621BHJP
H02G 1/14 20060101ALI20220621BHJP
H02G 15/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
H02G15/04
H01B7/00 306
H01B7/282
H02G1/14 050
H02G15/00 030
(21)【出願番号】P 2018002705
(22)【出願日】2018-01-11
【審査請求日】2020-07-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】片岡 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐川 正憲
【審査官】須藤 竜也
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-007307(JP,A)
【文献】特開2016-119191(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 15/04
H01B 7/00
H01B 7/282
H02G 1/14
H02G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁電線と前記絶縁電線の周囲に設けられたシースとを有するケーブルの端末構造であって、
前記シースの端部および前記シースの端面から突出している前記絶縁電線の根元部分を収容するホルダと、
前記ホルダの外側に設けられ、少なくとも前記ホルダの一部および前記ホルダから突出している前記シースの一部を覆う外側樹脂成形体と、
前記ホルダの内側に設けられ、前記絶縁電線の前記根元部分を覆う内側樹脂成形体と、
を有し、
前記外側樹脂成形体と前記内側樹脂成形体とが、前記ホルダに設けられている開口部を通して繋がって一体化されており、
前記ホルダが前記外側樹脂成形体から突出して
おり、
前記絶縁電線は、前記外側樹脂成形体から突出している前記ホルダから延出されている、
ケーブル端末構造。
【請求項2】
請求項1に記載のケーブル端末構造において、
前記ホルダの内側に、前記シースの前記端面と前記内側樹脂成形体との間に介在する壁部が設けられ、
前記絶縁電線の前記根元部分は、前記壁部を貫通している、
ケーブル端末構造。
【請求項3】
請求項2に記載のケーブル端末構造において、
前記ホルダは、前記ケーブルの径方向両側から互いに突き合わされる下側ホルダ部材および上側ホルダ部材によって形成され、
前記壁部は、前記下側ホルダ部材に形成されている下側壁部および前記上側ホルダ部材に形成されている上側壁部によって形成され、
互いに突き合わされる前記下側壁部および前記上側壁部の端面には、前記絶縁電線の前記根元部分を受け入れる凹部が形成されている、
ケーブル端末構造。
【請求項4】
請求項3に記載のケーブル端末構造において、
前記開口部は、前記下側ホルダ部材または前記上側ホルダ部材に設けられた貫通孔である、
ケーブル端末構造。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のケーブル端末構造において、
前記シースはウレタンによって形成され、前記外側樹脂成形体および前記内側樹脂成形体はポリフタルアミドまたはポリフェニレンスルファイドによって形成されている、
ケーブル端末構造。
【請求項6】
絶縁電線と前記絶縁電線の周囲に設けられたシースとを有するケーブルの端末構造の製造方法であって、
前記シースの端部および前記シースの端面から突出している前記絶縁電線の根元部分をホルダに収容する工程と、
前記ホルダの外側に、少なくとも前記ホルダの一部および前記ホルダから突出している前記シースの一部を覆う外側樹脂成形体を成形する工程と、
前記ホルダの内側に、前記絶縁電線の前記根元部分を覆う内側樹脂成形体を成形する工程と、
を有し、
前記ホルダが前記外側樹脂成形体から突出して
おり、
前記絶縁電線は、前記外側樹脂成形体から突出している前記ホルダから延出されている、
ケーブル端末構造の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載のケーブル端末構造の製造方法において、
前記外側樹脂成形体および前記内側樹脂成形体を同一工程で成形する、
ケーブル端末構造の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のケーブル端末構造の製造方法において、
前記シースの前記端部および前記絶縁電線の前記根元部分が収容された前記ホルダを金型のキャビティ内に配置し、
前記ホルダが配置された前記キャビティ内に、溶融させた樹脂材料を供給して前記外側樹脂成形体を成形し、
前記キャビティ内に供給した前記樹脂材料の一部を、前記ホルダに設けられている開口部を通して前記ホルダの内側に充填して前記内側樹脂成形体を成形する、
ケーブル端末構造の製造方法。
【請求項9】
請求項6~8のいずれか一項に記載のケーブル端末構造の製造方法において、
前記シースがウレタンによって形成されているときに、前記外側樹脂成形体および前記内側樹脂成形体をポリフタルアミドまたはポリフェニレンスルファイドによって成形する、
ケーブル端末構造の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、絶縁電線と当該絶縁電線の周囲に設けられたシースとを有するケーブルの末端構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
今日、電力用ケーブルや通信用ケーブル等の各種ケーブルが様々な分野で使用されている。これらケーブルの一つに、心線としての絶縁電線と、当該絶縁電線の周囲に設けられたシースと、を有するケーブルがある。この種のケーブルは、例えば、ABSセンサー,トルクセンサ,インデックスセンサ等の車載センサーに用いられる。また、この種のケーブルの心線として用いられる絶縁電線は、導体と、当該導体の周囲に設けられた絶縁層と、を有する。以下、特に断らない限り、「ケーブル」とは、心線としての絶縁電線と、当該絶縁電線の周囲に設けられたシースと、を有するケーブルを意味するものとする。
【0003】
ケーブルの端末構造として、シースの端部と当該シースの端部から突出している絶縁電線の根元部分とが樹脂によって一括被覆された構造が知られている。言い換えれば、ケーブルの一端または両端に、シースの端部と当該シースの端部から突出している絶縁電線の根元部分とを一括して覆う樹脂成形体が設けられたケーブル(「樹脂成形体付きケーブル」と呼ばれることもある。)が知られている。このようなケーブル端末構造は、主にケーブル端部における防水性の確保を目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようなケーブル端末構造は、ケーブル端部が配置された金型内に溶融させた樹脂材料を供給して前記樹脂成形体を成形することによって製造される。このとき、金型内に供給された樹脂材料の熱によってシースや絶縁電線の表層部が溶融し、これらシースや絶縁電線の表層部と樹脂成形体とが結合する。この結果、ケーブル端部の防水性が確保される。
【0006】
ここで、シースや絶縁電線の絶縁層の材料には、ウレタンが用いられることが多い。一方、ケーブル端末構造を構成する樹脂成形体の材料にはナイロンが用いられることが多く、特にポリアミド(PA(polyamide))が用いられることが多い。もっとも、樹脂成形体の強度や耐久性を高める観点からは、ポリアミド以外のナイロン、例えば、ポリフタルアミド(PPA(Polyphthalamide))やポリフェニレンスルファイド(PPS(Polyphenylenesulfide))などによって樹脂成形体を成形することが好ましい場合もある。
【0007】
しかし、PAの融点が約220℃なのに対し、PPAの融点は約320℃、PPSの融点は約290℃である。このため、PPAやPPSを用いて樹脂成形体を成形した場合、シースや絶縁電線の絶縁層が熱によって損傷し、十分な防水性が得られない虞がある。かかる課題は、PPAやPPSを用いてケーブル端末構造を構成する樹脂成形体を成形する場合に限ったことではなく、PAよりも融点が高い他の樹脂材料を用いて樹脂成形体を成形する場合にも同じく発生し得る課題である。
【0008】
本発明の目的は、ケーブル端部を樹脂モールドする際に、樹脂材料の熱によってケーブルが受ける損傷を低減できるケーブル端末構造及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のケーブル端末構造は、絶縁電線と前記絶縁電線の周囲に設けられたシースとを有するケーブルの端末構造である。このケーブル端末構造は、前記シースの端部および前記シースの端面から突出している前記絶縁電線の根元部分を収容するホルダと、前記ホルダの外側に設けられ、少なくとも前記ホルダの一部および前記ホルダから突出している前記シースの一部を覆う外側樹脂成形体と、前記ホルダの内側に設けられ、前記絶縁電線の前記根元部分を覆う内側樹脂成形体と、を有する。そして、前記外側樹脂成形体と前記内側樹脂成形体とが、前記ホルダに設けられている開口部を通して繋がって一体化されている。
【0010】
本発明のケーブル端末構造の製造方法は、絶縁電線と前記絶縁電線の周囲に設けられたシースとを有するケーブルの端末構造の製造方法である。この製造方法では、前記シースの端部および前記シースの端面から突出している前記絶縁電線の根元部分をホルダに収容し、前記ホルダの外側に、少なくとも前記ホルダの一部および前記ホルダから突出している前記シースの一部を覆う外側樹脂成形体を成形し、前記ホルダの内側に、前記絶縁電線の前記根元部分を覆う内側樹脂成形体を成形する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ケーブル端部を樹脂モールドする際に、樹脂材料の熱によってケーブルが受ける損傷を低減できるケーブル端末構造及びその製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】ホルダおよび当該ホルダに収容されたケーブル端部を示す図である。
【
図4】ホルダに設けられている壁部を示す図である。
【
図6】ケーブル端末構造の製造方法の一工程を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明のケーブル端末構造の実施形態の一例について図面を参照しながら詳細に説明する。ここで説明するケーブル端末構造は、絶縁電線と当該絶縁電線の周囲に設けられたシースとを有するケーブルの端末構造である。そこで、ケーブルの構造について説明した後に、ケーブルの端末構造について詳細に説明する。
【0014】
図1に示されるケーブル1は、一対の絶縁電線3,4と、これら絶縁電線3,4を一括して被覆するシース5と、を有する。言い換えれば、ケーブル1は、一対の絶縁電線3,4を心線とする2心ケーブルである。
【0015】
それぞれの絶縁電線3,4は、導体6と、導体6の周囲に設けられた絶縁層7と、を有する。導体6は複数本の素線が集合撚りされた撚り線であり、絶縁層7はウレタンによって形成されている。導体6を形成する素線の種類は特に限定されないが、例えば、軟銅線,硬銅線,すずめっき軟銅線,すずめっき硬銅線などを用いることができる。素線の撚り方法も集合撚りに限定されるものではなく、例えば、同心撚りや複合撚りであってもよい。また、絶縁層7はウレタン以外の樹脂材料によって形成してもよい。
【0016】
シース5はウレタンによって形成されており、互いに平行に配置された絶縁電線3,4を一括して被覆している。このシース5によって一対の絶縁電線3,4の間隔が保持されている。もっとも、ウレタン以外の樹脂材料によってシース5を形成してもよい。
【0017】
図1に示されるように、ケーブル1の少なくとも一方の端末において絶縁電線3,4が露出している。具体的には、シース5の少なくとも一方の端部5aから絶縁電線3,4がそれぞれ突出している。より具体的には、シース5の少なくとも一方の端面5bから絶縁電線3,4がそれぞれ突出している。
【0018】
図2,
図3に示されるように、ケーブル1の端部はホルダ10に収容されている。具体的には、シース5の端部5aと、当該端部5aから突出している絶縁電線3,4の一部(根元部分3a,4a)と、がホルダ10に収容されている。以下の説明では、ホルダ10に収容されているシース5の端部5aおよび絶縁電線3,4の根元部分3a,4aを「ケーブル端部」と総称する場合がある。言い換えれば、ケーブル1のうち、ホルダ10の収容されている部分が「ケーブル端部」である。また、シース5の端部5aから突出している絶縁電線3,4の露出部分のうち、ホルダ10に収容されている部分が根元部分3a,4aである。
【0019】
図2,
図3に示されるように、ホルダ10は、ケーブル1の径方向両側から互いに突き合わされた下側ホルダ部材11および上側ホルダ部材12によって形成されている。下側ホルダ部材11と上側ホルダ部材12とが突き合わされると、両部材11,12の間に、シース5の端部5aが収容されるシース収容部13と、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aが収容される電線収容部14と、が形成される。つまり、ホルダ10の内側にはシース収容部13および電線収容部14が設けられており、シース収容部13にシース5の端部5aが収容され、電線収容部14に絶縁電線3,4の根元部分3a,4aが収容されている。
【0020】
さらに、ホルダ10の内側には、シース収容部13と電線収容部14とを隔てる壁部20が設けられており、この壁部20には、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aがそれぞれ貫通する穴21が形成されている。壁部20は、下側ホルダ部材11に一体成形されている下側壁部22と、上側ホルダ部材12に一体成形されている上側壁部23と、から形成されている。
【0021】
下側ホルダ部材11と上側ホルダ部材12とが突き合わされると、同時に、下側壁部22の端面と上側壁部23の端面とが突き合わされ、ホルダ10の内側に壁部20が形成される。また、下側壁部22および上側壁部23の端面には、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aを受け入れる半円状の凹部24が2つずつ形成されており、対応する凹部24同士が突き合わされることによって穴21が形成される。この結果、シース収容部13に収容されているシース5の端面5bから突出している絶縁電線3,4の根元部分3a,4aは、壁部20を貫通して電線収容部14に進入している。一方、
図4に示されるように、シース5の端面5bは壁部20に覆われており、電線収容部14(
図2,
図3)に露出していない。
【0022】
図2に示されるように、ホルダ10の内側(電線収容部14の内側)には、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aを覆う内側樹脂成形体30が設けられている。言い換えれば、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aは、電線収容部14内において樹脂モールドされている。さらに、
図5に示されるように、ホルダ10の外側には、少なくともホルダ10の一部およびホルダ10から後方に突出しているシース5の一部を覆う外側樹脂成形体31が設けられている。言い換えれば、ホルダ10の一部およびホルダ10から突出しているシース5の一部は樹脂モールドされている。このような内側樹脂成形体30および外側樹脂成形体31によるモールドにより、ケーブル端部の防水性が確保されている。尚、ホルダ10の前面から突出している絶縁電線3,4の先端は、ICやその他の電子機器に接続される。
【0023】
詳細は後述するが、
図2に示されている内側樹脂成形体30、
図5に示されている外側樹脂成形体31は、同一の樹脂材料によって同時に成形されたものである。さらに、内側樹脂成形体30と外側樹脂成形体31とは、ホルダ10に設けられている開口部を通して繋がって一体化されている。本実施形態における内側樹脂成形体30および外側樹脂成形体31は、ポリフタルアミド(PPA)またはポリフェニレンスルファイド(PPS)によって形成されている。また、本実施形態における内側樹脂成形体30と外側樹脂成形体31とは、下側ホルダ部材11に設けられている開口部としての貫通孔15(
図2,
図3)を通して繋がって一体化されている。
【0024】
ここで、シース5の端面5bがシース収容部13と電線収容部14とを隔てる壁部20によって覆われていることは既述のとおりである。つまり、シース5の端面5bと電線収容部14の内側に設けられている内側樹脂成形体30との間には壁部20が介在しており、シース5の端面5bは内側樹脂成形体30に接していない。
【0025】
本実施形態におけるケーブル端末構造は、例えば、次の製造方法によって製造することができる。
【0026】
まず、ケーブル端部をホルダ10に収容する。具体的には、
図3に示されるように、シース5の端部5aおよび当該端部5aから突出している絶縁電線3,4の根元部分3a,4aを下側ホルダ部材11上の所定位置に載置する。次いで、シース5の端部5aおよび絶縁電線3,4の根元部分3a,4aが載置された下側ホルダ部材11の上に上側ホルダ部材12を重ね、両部材11,12を突き合わせる。かかる工程により、シース収容部13および電線収容部14を備えるホルダ10が形成されるとともに、シース収容部13にシース5の端部5aが収容され、電線収容部14に絶縁電線3,4の根元部分3a,4aが収容される。
【0027】
次に、同一工程によって内側樹脂成形体30(
図2)および外側樹脂成形体31(
図5)を成形する。具体的には、
図6に示されるように、ケーブル端部が収容されたホルダ10を金型40のキャビティ41内に配置する。
【0028】
次いで、ホルダ10が配置されたキャビティ41内に、加熱溶融させた樹脂材料を供給して外側樹脂成形体31(
図5)を成形する。同時に、キャビティ41内に供給された樹脂材料の一部が、下側ホルダ部材11に設けられている貫通孔15を通してホルダ10の内側(電線収容部14)に充填され、内側樹脂成形体30(
図2)が成形される。このとき、ホルダ10の電線収容部14とシース収容部13とは壁部20によって仕切られているので、貫通孔15から電線収容部14に流入した樹脂材料がシース5の端面5bに接することはなく、シース5と絶縁電線3,4との間の隙間に侵入することもない。尚、本実施形態では、内側樹脂成形体30および外側樹脂成形体31の材料として、ポリフタルアミド(PPA)またはポリフェニレンスルファイド(PPS)を用いた。
【0029】
かかる工程により、ホルダ10の外側に、少なくともホルダ10の一部およびホルダ10から突出しているシース5の一部を覆う外側樹脂成形体31(
図5)が成形されるとともに、ホルダ10の内側に、絶縁電線3,4の根元部分3a,4aを覆う内側樹脂成形体30(
図2)が成形される。つまり、外側樹脂成形体31および内側樹脂成形体30が同時に成形される。また、キャビティ41内に供給された樹脂材料の熱により、外側樹脂成形体31に覆われているホルダ10およびシース5の表層部が適度に溶融して外側樹脂成形体31と結合する。同じく、樹脂材料の熱により、内側樹脂成形体30に覆われている絶縁電線3,4の絶縁層7の表層部も適度に溶融して内側樹脂成形体30と結合する。この結果、ケーブル端部の防水性が確保される。
【0030】
ここで、ポリフタルアミド(PPA)の融点は約320℃、ポリフェニレンスルファイド(PPS)の融点は約290℃であり、絶縁電線3,4の絶縁層7を形成しているウレタンの融点よりも高い。しかし、キャビティ41内に供給された樹脂材料(PPAまたはPPS)は、直ちに絶縁電線3,4(絶縁層7)に触れることはなく、下側ホルダ部材11に設けられている貫通孔15を通してホルダ10の内側に充填された後に絶縁電線3,4(絶縁層7)に触れる。また、キャビティ41内に供給される樹脂材料の全量に比べて、絶縁電線3,4(絶縁層7)に触れる樹脂材料の量は少ない。よって、ウレタンよりも融点が高い樹脂材料を用いて外側樹脂成形体31および内側樹脂成形体30を成形しても、樹脂材料の熱によって絶縁電線3,4(絶縁層7)が受ける損傷を低減できる。
【0031】
さらに、本実施形態では、キャビティ41の樹脂供給口(ゲート)42とホルダ10の開口部(貫通孔15)とを遠ざけてある。具体的には、
図6に示されるように、樹脂供給口(ゲート)42はキャビティ41の側面に設けられている。そこで、貫通孔15が設けられている底面(下側ホルダ部材11の底面)がキャビティ41の底面と対向するように、ホルダ10をキャビティ41内に配置している。よって、樹脂供給口(ゲート)42からキャビティ41内に流入した樹脂材料が直接的にホルダ10内に流入することがなく、絶縁電線3,4(絶縁層7)の損傷をより確実に低減できる。
【0032】
なお、キャビティ41の樹脂供給口(ゲート)42とホルダ10の貫通孔15とをなるべく遠ざければ上記効果が得られることは明らかである。よって、樹脂供給口(ゲート)42の位置に応じてホルダ10の位置や向きを適宜変更することが好ましい。
【0033】
然る後、樹脂モールドされたホルダ10をキャビティ41から取り出すことによって、本実施形態に係るケーブル端末構造が製造される。
【0034】
本発明は上記実施形態に限定されるものでなく、その趣旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、ケーブル1は2心ケーブルに限定されるものではなく、単心ケーブルであっても、3心以上のケーブルであってもよい。また、ホルダ10の開口部は上側ホルダ部材に設けられていてもよく、その位置も図示されている位置に限定されない。例えば、ホルダ10の上面や側面に開口部が設けられていてもよい。
【0035】
さらに、内側樹脂成形体30や外側樹脂成形体31の材料は、ポリフタルアミド(PPA)またはポリフェニレンスルファイド(PPS)に限られない。
【符号の説明】
【0036】
1 ケーブル
3,4 絶縁電線
3a,4a 根元部分
5 シース
5a 端部
5b 端面
6 導体
7 絶縁層
10 ホルダ
11 下側ホルダ部材
12 上側ホルダ部材
13 シース収容部
14 電線収容部
15 貫通孔
20 壁部
21 穴
22 下側壁部
23 上側壁部
24 凹部
30 内側樹脂成形体
31 外側樹脂成形体
40 金型
41 キャビティ
42 樹脂供給口