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特許7091667表示装置、物体装置、画像形成ユニット及び表示方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】表示装置、物体装置、画像形成ユニット及び表示方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20220621BHJP
   G02B 26/10 20060101ALI20220621BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G02B27/01
G02B26/10 104Z
G02B26/10 C
B60K35/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018004108
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2018156061
(43)【公開日】2018-10-04
【審査請求日】2020-09-16
(31)【優先権主張番号】P 2017053554
(32)【優先日】2017-03-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(72)【発明者】
【氏名】田辺 啓之
(72)【発明者】
【氏名】岸 由美子
(72)【発明者】
【氏名】稲本 慎
【審査官】鈴木 俊光
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-003803(JP,A)
【文献】国際公開第2016/117278(WO,A1)
【文献】特開2014-153375(JP,A)
【文献】特開2017-032971(JP,A)
【文献】特開2016-206563(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0161191(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
G02B 26/10
B60K 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部と、
前記光源部からの光を2次元的に偏向する光偏向器と、
前記光偏向器を介した光により主走査方向及び副走査方向に2次元走査される、複数の光学素子を含む光学素子アレイと、
前記光学素子アレイを介した光を投射する投光部と、を備え、
前記光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び前記光学素子アレイにおける副走査方向の前記光学素子の配列ピッチは、前記光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上であり、前記ビームスポット径をWbeam、前記配列ピッチをPlens、前記走査線ピッチをPscan、副走査方向の画素密度をYcpd、モアレ周波数をfmoire、モアレコントラストをCmoireとしたとき、
fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscan、
Cmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5、
0.5/{5.05×exp(-0.138×fmoire)×[1.0-exp(-0.fmoire)]}≧Cmoireが成立することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記光学素子の副走査方向の幅は、前記走査線ピッチ以上であることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記配列ピッチをPlens、前記走査線ピッチをPscan、
当該表示装置の副走査方向の画素密度をYcpdとしたとき、
fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscanで求められるモアレ周波数fmoireが10cpd以上となるようにYppd、Plens、Pscanが設定されていることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項4】
前記ビームスポット径をWbeam、前記配列ピッチをPlens、前記走査線ピッチをPscan、当該表示装置の副走査方向の画素密度をYcpdとしたとき、
fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscanで求められるモアレ周波数fmoireが10cpd未満となり、かつCmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5で求められるモアレコントラストCmoireが0.5以下となるようにYcpd、Plens、Pscan、Wbeamが設定されていることを特徴とする請求項1~2のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項5】
前記光学素子アレイにおける主走査方向に互いに隣接する前記光学素子の光学中心は、副走査方向にずれていることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項6】
前記複数の光学素子それぞれは、平面視六角形状であり、
前記複数の光学素子は、ハニカム状に配列されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項7】
前記光学素子アレイ上における主走査方向のビームスポット径及び前記光学素子アレイにおける主走査方向の前記光学素子の配列ピッチは、前記光学素子アレイ上における主走査方向に隣接するビームスポットの中心間隔以上であることを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の表示装置。
【請求項8】
前記光学素子の主走査方向の幅は、前記中心間隔以上であることを特徴とする請求項7に記載の表示装置。
【請求項9】
透過反射部材が設けられた物体と、
前記物体に搭載され、前記透過反射部材に光を投射する請求項1~8のいずれか一項に記載の表示装置と、を備える物体装置。
【請求項10】
前記物体は、移動体であることを特徴とする請求項9に記載の物体装置。
【請求項11】
複数の光学素子を含む光学素子アレイを主走査方向及び副走査方向に2次元走査して画像を形成する画像形成ユニットにおいて、
前記光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び前記光学素子アレイにおける副走査方向の前記光学素子の配列ピッチは、前記光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上であり、前記ビームスポット径をWbeam、前記配列ピッチをPlens、前記走査線ピッチをPscan、副走査方向の画素密度をYcpd、モアレ周波数をfmoire、モアレコントラストをCmoireとしたとき、
fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscan、
Cmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5、
0.5/{5.05×exp(-0.138×fmoire)×[1.0-exp(-0.fmoire)]}≧Cmoireが成立する
ことを特徴とする画像形成ユニット。
【請求項12】
請求項11に記載の画像形成ユニットと、
前記画像形成ユニットからの前記画像を形成する光を投射する投光部と、を備える表示装置。
【請求項13】
複数の光学素子を含む光学素子アレイを主走査方向及び副走査方向に2次元走査して画像を形成し、該画像を形成した光を投射して画像を表示する表示方法であって、
前記光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び前記光学素子アレイにおける前記光学素子の副走査方向の配列ピッチが前記光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上となり、前記ビームスポット径をWbeam、前記配列ピッチをPlens、前記走査線ピッチをPscan、副走査方向の画素密度をYcpd、モアレ周波数をfmoire、モアレコントラストをCmoireとしたとき、
fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscan、
Cmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5、
0.5/{5.05×exp(-0.138×fmoire)×[1.0-exp(-0.fmoire)]}≧Cmoireが成立するように前記光学素子アレイを2次元走査することを特徴とする表示方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置、物体装置、画像形成ユニット及び表示方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光により複数の光学素子を含む光学素子アレイを主走査方向及び副走査方向に2次元走査して画像を形成し、該画像を形成した光を投射する装置が知られている(例えば特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されている装置では、光学素子の配列と走査線ピッチに起因するモアレの発生を抑制することに関して改善の余地があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、光源部と、前記光源部からの光を2次元的に偏向する光偏向器と、前記光偏向器を介した光により主走査方向及び副走査方向に2次元走査される、複数の光学素子を含む光学素子アレイと、前記光学素子アレイを介した光を投射する投光部と、を備え、前記光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び前記光学素子アレイにおける副走査方向の前記光学素子の配列ピッチは、前記光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上であり、前記ビームスポット径をWbeam、前記配列ピッチをPlens、前記走査線ピッチをPscan、副走査方向の画素密度をYcpd、モアレ周波数をfmoire、モアレコントラストをCmoireとしたとき、fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscan、Cmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5、0.5/{5.05×exp(-0.138×fmoire)×[1.0-exp(-0.fmoire)]}≧Cmoireが成立することを特徴とする表示装置である。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、光学素子の配列と走査線ピッチに起因するモアレの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】一実施形態のHUD装置の概略構成を示す図である。
図2】HUD装置の制御系のハードウェア構成を示すブロック図である。
図3】HUD装置の機能ブロック図である。
図4】HUD装置の光源装置について説明するための図である。
図5】HUD装置の光偏向器について説明するための図である。
図6】光偏向器のミラーと走査範囲の対応関係を示す図である。
図7】2次元走査時の走査線軌跡の一例を示す図である。
図8図8(A)及び図8(B)は、マイクロレンズアレイにおいて入射光束径とレンズ径の大小関係の違いによる作用の違いについて説明するための図である。
図9】スクリーンの構成例を示す図(その1)である。
図10】スクリーンの構成例を示す図(その2)である。
図11図11(A)~図11(D)は、レンズ配列が互いに異なるマイクロレンズアレイを有するスクリーンを示す図である。
図12】主走査方向に延びる縞模様からなるモアレの抑制について説明するための図である。
図13】レーザ光のマイクロレンズへの入射位置と該マイクロレンズ上の点像強度の関係について説明するための図である。
図14図14(A)~図14(C)は、ビームスポット径/走査線ピッチが互いに異なる3パターンにおいて副走査方向に隣接する2つのビームスポットが部分的に重なる場合のビーム強度の分布を示すグラフである。
図15】ビームスポット径/走査線ピッチと、モアレコントラストの関係を示すグラフである。
図16図16(A)はVTF曲線を示すグラフであり、図16(B)は運転者に不快感を与えないモアレ周波数とモアレコントラストの限界値を示すグラフである。
図17図17(A)及び図17(B)は、モアレコントラストの制御の実施例について説明するための図である。
図18図18(A)及び図18(B)は、レンズ配列が非平行配列の光学素子アレイの実施例について説明するための図である。
図19図19(A)~図19(C)は、走査線形状が互いに異なる3パターンの走査について説明するための図である。
図20図20(A)~図20(C)は、それぞれ図19(A)~図19(C)の走査線形状に倣った微細光学素子の配列例を示す図である。
図21】副走査方向に延びる縞模様からなるモアレの抑制について説明するための図である。
図22図11(D)のレンズ配列のマクロレンズアレイを走査して得られた描画画像を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
[概要]
以下に、一実施形態のHUD装置100について図面を参照して説明する。なお、「HUD」は「ヘッドアップディスプレイ」の略称である。
【0008】
図1には、本実施形態のHUD装置100の全体構成が概略的に示されている。
【0009】
《HUD装置の全体構成》
ところで、ヘッドアップディスプレイの投射方式は、液晶パネル、DMDパネル(デジタルミラーデバイスパネル)、蛍光表示管(VFD)のようなイメージングデバイスで中間像を形成する「パネル方式」と、レーザ光源から射出されたレーザビームを2次元走査デバイスで走査し中間像を形成する「レーザ走査方式」がある。特に後者のレーザ走査方式は、全画面発光の部分的遮光で画像を形成するパネル方式とは違い、各画素に対して発光/非発光を割り当てることができるため、一般に高コントラストの画像を形成することができる。
【0010】
そこで、HUD装置100では「レーザ走査方式」を採用している。無論、投射方式として上記「パネル方式」を用いることもできる。
【0011】
HUD装置100は、一例として、車両に搭載され、該車両のフロントウインドシールド50(図1参照)を介して該車両の操縦に必要なナビゲーション情報(例えば車両の速度、進路情報、目的地までの距離、現在地名称、車両前方における物体(対象物)の有無や位置、制限速度等の標識、渋滞情報などの情報)を視認可能にする。この場合、フロントウインドシールド50は、入射された光の一部を透過させ、残部の少なくとも一部を反射させる透過反射部材としても機能する。以下では、HUD装置100がフロントウインドシールド50を備える、車両としての自動車に搭載される例を、主に説明する。
【0012】
HUD装置100は、図1に示されるように、光源装置11、光偏向器15及び走査ミラー20を含む光走査装置10と、スクリーン30と、凹面ミラー40とを備え、フロントウインドシールド50に対して画像を形成する光(画像光)を照射することにより、視認者A(ここでは自動車の乗員である運転者)の視点位置から虚像Iを視認可能にする。つまり、視認者Aは、光走査装置10によりスクリーンに形成(描画)される画像(中間像)を、フロントウインドシールド50を介して虚像Iとして視認することができる。
【0013】
HUD装置100は、一例として、自動車のダッシュボードの下方に配置されており、視認者Aの視点位置からフロントウインドシールド50までの距離は、数十cmから精々1m程度である。
【0014】
ここでは、凹面ミラー40は、虚像Iの結像位置が所望の位置になるように、一定の集光パワーを有するように既存の光学設計シミュレーションソフトを用いて設計されている。
【0015】
HUD装置100では、虚像Iが視認者Aの視点位置から例えば1m以上かつ30m以下(好ましくは10m以下)の位置(奥行位置)に表示されるように、凹面ミラー40の集光パワーが設定されている。
【0016】
なお、通常、フロントウインドシールドは、平面でなく、僅かに湾曲している。このため、凹面ミラー40とフロントウインドシールド50の曲面により、虚像Iの結像位置が決定される。
【0017】
光源装置11では、画像データに応じて変調されたR,G,Bの3色のレーザ光が合成される。3色のレーザ光が合成された合成光は、光偏向器15の反射面に導かれる。偏向手段としての光偏向器15は、半導体製造プロセス等で作製された2軸のMEMSスキャナであり、直交する2軸周りに独立に揺動可能な単一の微小ミラーを含む。光源装置11、光偏向器15の詳細は、後述する。
【0018】
光源装置11からの画像データに応じた光(合成光)は、光偏向器15で偏向され、走査ミラー20で折り返されてスクリーン30に照射される。そこで、スクリーン30が光走査され該スクリーン30上に中間像が形成される。すなわち、光偏向器15と走査ミラー20を含んで光走査系が構成される。なお、凹面ミラー40は、フロントウインドシールド50の影響で中間像の水平線が上または下に凸形状となる光学歪み要素を補正するように設計、配置されることが好ましい。
【0019】
スクリーン30を介した光は、凹面ミラー40でフロントウインドシールド50に向けて反射される。フロントウインドシールド50への入射光束の一部はフロントウインドシールド50を透過し、残部の少なくとも一部は視認者Aの視点位置に向けて反射される。この結果、視認者Aはフロントウインドシールド50を介して中間像の拡大された虚像Iを視認可能となる、すなわち、視認者から見て虚像Iがフロントウインドシールド50越しに拡大表示される。
【0020】
なお、フロントウインドシールド50よりも視認者Aの視点位置側に透過反射部材としてコンバイナを配置し、該コンバイナに凹面ミラー40からの光を照射するようにしても、フロントウインドシールド50のみの場合と同様に虚像表示を行うことができる。
【0021】
《HUD装置の制御系のハードウェア構成》
図2には、HUD装置100の制御系のハードウェア構成を示すブロック図が示されている。HUD装置100の制御系は、図2に示されるように、FPGA600、CPU602、ROM604、RAM606、I/F608、バスライン610、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615を備えている。
【0022】
FPGA600は、画像データに応じてLDドライバ6111を介して後述するLDを動作させ、MEMSコントローラ615を介して光偏向器15を動作させる。CPU602は、HUD装置100の各機能を制御する。ROM604は、CPU602がHUD装置100の各機能を制御するために実行する画像処理用プログラムを記憶している。RAM606は、CPU602のワークエリアとして使用される。I/F608は、外部コントローラ等と通信するためのインターフェイスであり、例えば、自動車のCAN(Controller Area Network)等に接続される。
【0023】
《HUD装置の機能ブロック》
図3には、HUD装置100の機能を示すブロック図が示されている。HUD装置100は、図3に示されるように、車両情報入力部800、外部情報入力部802、画像データ生成部804及び画像描画部806を備えている。車両情報入力部800には、CAN等から車両の情報(速度、走行距離、対象物の位置、外界の明るさ等の情報)が入力される。外部情報入力部802には、外部ネットワークから車両外部の情報(例えば自動車に搭載されたカーナビからのナビ情報等)が入力される。画像データ生成部804は、車両情報入力部800、外部情報入力部802等から入力される情報に基づいて、描画すべき画像の画像データを生成し、画像描画部806に送信する。画像描画部806は、制御部8060を備え、受信した画像データに応じた画像を描画する。画像データ生成部804及び制御部8060は、FPGA600によって実現される。画像描画部806は、FPGA600に加えて、LDドライバ6111、MEMSコントローラ615、光走査装置10、スクリーン30、凹面ミラー40等によって実現される。
【0024】
《光源装置の構成》
図4には、光源装置11の構成が示されている。光源装置11は、図4に示されるように、単数あるいは複数の発光点を有する複数(例えば3つの)の発光素子111R、111B、111Gを含む。各発光素子は、LD(レーザダイオード)であり、互いに異なる波長λR、λG、λBの光束を放射する。例えばλR=640nm、λG=530nm、λB=445nmである。以下では、発光素子111RをLD111R、発光素子111GをLD111G、発光素子111BをLD111Bとも表記する。LD111R、111G、111Bから放射された波長λR、λG、λBの光束は、対応するカップリングレンズ112R、112G、112Bにより後続の光学系にカップリングされる。カップリングされた光束は、対応するアパーチャ部材113R、113G、113Bにより整形される。各アパーチャ部材の開口形状は、光束の発散角等に応じて円形、楕円形、長方形、正方形等、様々な形状とすることができる。その後、対応するアパーチャ部材で整形された光束は、合成素子115により光路合成される。合成素子115は、プレート状あるいはプリズム状のダイクロイックミラーであり、波長に応じて光束を反射/透過し、1つの光路に合成する。合成された光束は、レンズ119により光偏向器15の反射面に導かれる。レンズ119は、光偏向器15側に凹面が向くメニスカスレンズである。
【0025】
《光偏向器の構成》
図5には、光偏向器15の構成が示されている。光偏向器15は、半導体プロセスにて製造された2軸のMEMSスキャナであり、図5に示されるように、反射面を有するミラー150と、α軸方向に並ぶ複数の梁を含み、隣り合う2つの梁が折り返し部を介して蛇行するように接続された一対の蛇行部152とを有する。各蛇行部152の隣り合う2つの梁は、梁A(152a)、梁B(152b)とされ、枠部材154に支持されている。複数の梁には、複数の圧電部材156(例えばPZT)が個別に設けられている。各蛇行部の隣り合う2つの梁の圧電部材に異なる電圧を印加することで、該蛇行部の隣り合う2つの梁が異なる方向に撓み、それが蓄積されて、ミラー150がα軸周り(=垂直方向)に大きな角度で回転することになる。このような構成により、α軸を中心とした垂直方向の光走査が、低電圧で可能となる。一方、β軸を中心とした水平方向では、ミラー150に接続されたトーションバーなどを利用した共振による光走査が行われる。
【0026】
HUD装置100からは、瞬間的にはレーザビーム径に相当する点像しか投射されないが、非常に高速に走査させるため、一フレーム画像内では十分に人間の目に残像が残っている。この残像現象を利用することで、視認者には、あたかも「表示エリア」に像を投射させているように知覚される。実際には、スクリーンに映った像が、凹面ミラー40とフロントウインドシールド50によって反射されて視認者に「表示エリア」において虚像として知覚される。このような仕組みであるので、像を表示させない場合は、LDの発光を停止すれば良い。つまり、「表示エリア」において虚像が表示される箇所以外の箇所の輝度を実質0にすることが可能となる。
【0027】
すなわち、HUD装置100による虚像の結像位置は、該虚像を結像可能な所定の「表示エリア」内の任意の位置となる。この「表示エリア」は、HUD装置の設計時の仕様で決まる。
【0028】
このように、「レーザ走査方式」を採用したことにより、表示したい部分以外では、表示の必要がないためLDを消灯したり、光量を低下させたりするなどの措置を取ることができる。
【0029】
これに対して、例えば液晶パネル及びDMDパネルのようなイメージングデバイスで中間像を表現する「パネル方式」では、パネル全体を照明する必要があるため、画像信号としては非表示とするために黒表示であったとしても、液晶パネルやDMDパネルの特性上、完全には0にし難い。このため、黒部が浮き上がって見えることがあったが、レーザ走査方式ではその黒浮きを無くすことが可能となる。
【0030】
ところで、光源装置11の各発光素子は、FPGA600によって発光強度や点灯タイミング、光波形が制御され、LDドライバ6111によって駆動され、光を射出する。各発光素子から射出され光路合成された光は、図6に示されるように、光偏向器15によってα軸周り、β軸周りに2次元的に偏向され、走査ミラー20(図1参照)を介して走査光としてスクリーン30に照射される。すなわち、走査光によりスクリーン30が2次元走査される。なお、図6では、走査ミラー20の図示が省略されている。
【0031】
走査光は、スクリーン30の走査範囲を、2~4万Hz程度の速い周波数で主走査方向に振動走査(往復走査)しつつ、数十Hz程度の遅い周波数で副走査方向に片道走査する。すなわち、第1の周波数で主走査方向について、かつ、該第1の周波数より低い第2の周波数で副走査方向について、ラスタースキャンが行われる。この際、走査位置(走査光の位置)に応じて各発光素子の発光制御を行うことで画素毎の描画、虚像の表示を行うことができる。
【0032】
1画面を描画する時間、すなわち1フレーム分の走査時間(2次元走査の1周期)は、上記のように副走査周期が数十Hzであることから、数十msecとなる。例えば主走査周期20000Hz、副走査周期を50Hzとすると、1フレーム分の走査時間は20msecとなる。
【0033】
スクリーン30は、図7に示されるように、画像が描画される(画像データに応じて変調された光が照射される)画像領域30a(有効走査領域)と、該画像領域を取り囲むフレーム領域30bとを含む。
【0034】
ここで光偏向器15によって走査しうる全範囲を「走査範囲」と呼ぶ。ここでは、走査範囲は、スクリーン30における画像領域30aとフレーム領域30bの一部(画像領域30aの外縁近傍の部分)を併せた範囲とされている。図7には、走査範囲における走査線の軌跡がジグザグ線によって示されている。図7においては、走査線の本数を、便宜上、実際よりも少なくしている。
【0035】
走査範囲における画像領域30aの周辺領域(フレーム領域30bの一部)には、受光素子を含む同期検知系60が設置されている。以下では、スクリーン30の主走査方向をX方向とし、副走査方向をY方向として説明する。ここでは、同期検知系60は、画像領域の-X側かつ+Y側の隅部の+Y側に配置されている。
【0036】
同期検知系60は、光偏向器15の動作を検出して、走査開始タイミングや走査終了タイミングを決定するための同期信号をFPGA600に出力する。
【0037】
スクリーン30の画像領域30aは、例えばマイクロレンズアレイ等の光拡散効果を持つ透過型の素子で構成されている。画像領域は、矩形、あるいは平面である必要はなく、多角形や曲面であっても構わない。また、スクリーン30は、光拡散効果を持たない平板や曲板であっても良い。また、画像領域は、装置レイアウトによっては例えばマイクロミラーアレイ等の光拡散効果を持つ反射型の素子とすることもできる。
【0038】
ここで、図8(A)及び図8(B)を参照して、スクリーン30の画像領域に用いられるマイクロレンズアレイにおける拡散と干渉性ノイズ発生について説明する。
図8(A)において、符号852はマイクロレンズアレイを示す。マイクロレンズアレイ852は、微細凸レンズ851を配列した微細凸レンズ構造を有する。符号853で示す「画素表示用ビーム」の光束径857は、微細凸レンズ851の大きさよりも小さい。すなわち、微細凸レンズ851の大きさ856は、光束径857よりも大きい。なお、説明中の形態例で、画素表示用ビーム853はレーザ光束であり、光束中心のまわりにガウス分布状の光強度分布をなす。従って、光束径857は、光強度分布における光強度が「1/e」に低下する光束半径方向距離である。
図8(A)では、光束径857は微細凸レンズ851の大きさ856に等しく描かれているが、光束径857が「微細凸レンズ851の大きさ856」に等しい必要は無い。微細凸レンズ851の大きさ856を食み出さなければよい。
図8(A)において、画素表示用ビーム853は、その全体が1個の微細凸レンズ851に入射し、発散角855をもつ拡散光束854に変換される。なお、「発散角」は、以下において「拡散角」と呼ぶこともある。
図8(A)の状態では、拡散光束854は1つで、干渉する光束が無いので、干渉性ノイズは発生しない。なお、発散角855の大きさは、微細凸レンズ851の形状により適宜設定できる。
図8(B)では、画素表示用ビーム811は、光束径が微細凸レンズの配列ピッチ812の2倍となっており、2個の微細凸レンズ813、814に跨って入射している。この場合、画素表示用ビーム811は、入射する2つの微細凸レンズ813、814により2つの発散光束815、816のように拡散される。2つの発散光束815、816は、領域817において重なり合い、この部分で互いに干渉して干渉性ノイズを発生する。
【0039】
以下、スクリーン30の構成について詳細に説明する。図9及び図10には、スクリーン30の構成例が示されている。
【0040】
スクリーン30は、複数の微細光学素子300が整列して配置された光学板301からなる。光学板301上を入射光束302が走査するとき、光束は微細光学素子300により発散され、発散光303となる。微細光学素子300の構造により、入射光束を所望の発散角304で発散させることが可能である。
【0041】
なお、図9は凸面レンズアレイの形態で記述しているが、凹面レンズアレイ、その他反射型のマイクロミラーアレイ(凸面、凹面を含む)においても同様の効果があるものとする。
【0042】
スクリーン30は、微細光学素子300が隙間なく配列されたアレイ構造を有しており、光走査装置10からのレーザ光(走査光)を所望の発散角で発散させる。微細光学素子300は、幅が200um程度のマイクロレンズもしくはマイクロミラーであり、平面形状(Z軸方向から見た形状)が六角形である。六角形であることにより、微細光学素子300を最密に配列することができる(図11(C)、図11(D)参照)。以下の説明では、「マイクロレンズ」を適宜「レンズ」とも呼び、「マイクロミラー」を適宜「ミラー」とも呼ぶ。
【0043】
なお、微細光学素子300として、平面形状が、六角形に限らず、四角形(図11(A)及び図11(B)参照)や三角形のものを採用することもできる。なお、図11(A)~図11(C)において、Plensは副走査方向のレンズピッチ(レンズの配列ピッチ)を表し、WXはレンズの主走査方向の幅を表し、WYはレンズの副走査方向の幅を表す。
【0044】
また、本実施形態においては、微細光学素子300が規則正しく並んだ構造を例にとって説明しているが、これに限らず、微細光学素子300の光学中心を幾何学中心からずらして(偏心させて)不規則な配列とした偏心配列とすることもできる。偏心配列を採用した場合は、各微細光学素子300は互いに異なる形状となる。
【0045】
図12には、スクリーン30上の走査経路とビームスポットの関係が示されている。以下では、微細光学素子300がマイクロレンズである場合、すなわちスクリーン30が光学素子アレイとしてのマイクロレンズアレイを有する場合について説明する。図12では、図11(A)のレンズ配列(正方配列)が採用されている。図12において、符号321、302は、それぞれ走査線、ビームスポットを示す。ここでは、走査線321は、ジグザグ線であるが、その他の形状でも良い。
【0046】
ここで、図12において、マイクロレンズアレイの主走査方向(X方向)の端(より詳細には主走査方向の端にあるレンズの外側の端)における副走査方向(Y方向)に隣接する走査線の間隔のうち大きい方を「走査線ピッチPscan」と定義する(図12参照)。図12ではPscanは一定である。なお、「走査線」は、マイクロレンズアレイ上における走査ビーム(走査光)の軌跡であり、ここでは概ね主走査方向に延びる走査線を意味する。走査線ピッチは「走査線間隔」とも呼ばれる。
【0047】
なお、図12では、走査線がジグザグ線(互いに非平行)なので「走査線ピッチ」を上記のようにマイクロレンズアレイ上で隣接する走査線の間隔が最大となる主走査方向の位置における隣接する走査線の間隔で定義しているが、例えばマイクロレンズアレイを互いに平行な走査線で走査するときには、隣接する走査線の間隔が一定なので「走査線ピッチ」は「隣接する走査線の間隔」と一義的に決まる。
【0048】
また、図12には、一例として、正弦波振動で走査した光走査経路が示されているが、例えばリサージュ走査を行う場合も走査線ピッチPscanを同様に定義できるので、本発明の適用範囲内となる。
【0049】
また、マイクロレンズアレイ上における副走査方向のビームスポット径をWbeam、副走査方向のレンズピッチ(マイクロレンズの配列ピッチ)をPlensとする。
【0050】
ところで、複数の微細光学素子が規則的に配列されたマイクロレンズアレイ上を一定の走査線ピッチで走査すると、微細光学素子の配列と走査線ピッチに起因するモアレ(主走査方向に延びる縞模様)が発生し、スクリーン上に描画される画像(中間像)の品質が低下し、ひいてはHUD装置による表示像である虚像の品質が低下してしまう。以下では、特に断りがない限り、「モアレ」は主走査方向に延びる縞模様を意味する。
【0051】
そこで、発明者らは、HUD装置の表示像である虚像の品質の低下を抑制すべく、モアレの発生を抑制する技術を開発した。以下に、この技術の詳細について説明する。なお、ビームスポットは実際には互いに時間的にずれて形成されるものであるが、その時間的なずれは前述のとおり非常に小さいため、以下では時間的なずれが生じていないものとして説明する。
【0052】
ここで、一般的にモアレの縞の間隔(ピッチ)であるモアレピッチPmoireは、次の(1)式で表される。
【数1】
上記(1)式の単位を画素密度に換算すると、次の(2)式のようになる。
【数2】
さらに、HUD装置の画素密度を考慮して、モアレの縞の周波数であるモアレ周波数fmoireを画角に換算して表すと、次の(3)式のようになる。
【数3】
【0053】
発明者らは、実験により、Wbeam≧PscanかつPlens≧Pscanを満たす場合、すなわち各マイクロレンズ上において、副走査方向に隣接する走査ビームが一定以上の重なり部分を有することにより、モアレの発生を抑制できることを見出した。なお、Plens≧Pscanの場合には、各マイクロレンズ上を少なくとも1つの走査線が横切る(通過する)ように走査することができる(例えば図12参照)。また、Wbeam≧Pscanの場合には、副走査方向に隣接する走査ビームが部分的に重なるように走査することができる。
【0054】
以下に、Wbeam≧PscanかつPlens≧Pscanを満たす場合に副走査方向のモアレの発生を抑制できる理由について説明する。
【0055】
まず、PlensとPscanとの関係、すなわち副走査方向のレンズピッチと走査線ピッチとの関係におけるモアレについて説明する。
図13には、マイクロレンズアレイのマイクロレンズ801への光束803の入射位置とマイクロレンズ801上の点像強度の関係が示されている。マイクロレンズ801において光学中心は幾何学中心に一致しているものとする。
【0056】
光束803は、一般的にレーザ光特有のガウシアン分布の強度プロファイルを持ち、光束の中心の強度が高く、該中心から遠ざかるほど強度が低下する。
【0057】
ここで、マイクロレンズ801を通過した光束803をマイクロレンズ801の正面から観察する場合を考える。
【0058】
図13におけるAのようにマイクロレンズ801に対して実線のビーム強度の光束が入射された場合、マイクロレンズ801の中心と光束の中心が略一致するため、マイクロレンズ801上の点像強度は大きくなる。
【0059】
一方、図13におけるBのようにマイクロレンズ801に対して破線のビーム強度の光束が入射された場合、マイクロレンズ801の中心と光束の中心が大きくずれマイクロレンズ801の中心を通る光束の強度はガウシアン分布の裾となるため、マイクロレンズ801上の点像強度は小さくなる。すなわち、マイクロレンズ801上の点像強度は、図13においてAよりもBの方が小さくなる。
【0060】
以上の説明から明らかなように、マイクロレンズへ入射される光束の中心とマイクロレンズの中心のずれが大きくなるほど、マイクロレンズ上の点像強度が小さくなる。
【0061】
そこで、各マイクロレンズの中心に複数のビームスポットの重なり部分が位置するようにマイクロレンズアレイを走査する。これにより、該マイクロレンズ上の点像強度の低下を抑制することができ、ひいてはマイクロレンズアレイ全体として輝度ムラの低減を図ることができる。
【0062】
次に、WbeamとPscanとの関係、すなわち副走査方向のビームスポット径と走査線ピッチとの関係によって決まるモアレコントラストについて図14を参照して説明する。以下では、副走査方向のビームスポット径を、特に断りがない限り、単に「ビームスポット径」と呼ぶ。
【0063】
ここでは、中心が副走査方向に走査線ピッチ分だけ離間する2つのビームスポットを重ね合わせる場合を考える。図14(A)、図14(B)、図14(C)には、それぞれビームスポット径/走査線ピッチが1.0、1.5、2.0の場合が示されている。図14では、2つのビームスポットの強度をf1、f2、重ね合わせたビームスポットの強度をf1+f2としている。
【0064】
図14(A)~図14(C)から分かるように、走査線ピッチに対して、ビームスポット径が大きくなるほど、モアレコントラスト(2つのビームスポットの強度の谷間の深さ)は小さくなる。ここでは、モアレコントラストは、図14(A)の例が最大であり、図14(C)の例が最小である。
【0065】
そこで、モアレコントラストを小さくするために、ビームスポット径/走査線ピッチ≧1、すなわちWbeam≧Pscanとすることが好ましい。
【0066】
ここで、モアレコントラストCmoireを、隣接する2つの走査線とビームプロファイルによって形成される強度プロファイルの中で、走査線上の強度:Imaxと2つの走査線の中間位置での強度:Iminを用いて、次の(4)式のように表すことができる。
【数4】
【0067】
図15に示されるように、モアレコントラストCmoireをビームスポット径Wbeamと走査線ピッチPscanの比で表して、線形近似を取ると、次の(5)式のようになる。なお、図15では、xが横軸、yが縦軸である。
【数5】
【0068】
上記(5)式より、Wbeam≧Pscanの場合にCmoire≦0.6となり、モアレコントラストを十分に小さくできることが分かる。
【0069】
図16は、空間周波数(モアレ周波数)に対するコントラスト感度(モアレコントラストの感度)の関係を説明する図である。文献(Kenji Kagitani,Makoto Hino and Susumu ImakawaAdvanced Technology Development Center, Ricoh Co., Ltd. Yokohama, JapanImage Noise Evaluation Method for Color Hardcopy)によると、空間周波数に対するコントラスト感度の式はVTF(Visual Transfer Function)曲線として次の(6)式で表される。
【数6】
なお、上記(6)式における「f」は、fmoireを略記したものである。
【0070】
上記(6)式で表されるVTF曲線は、図16(A)に示されるように周波数ピーク(モアレ周波数のピーク)でのコントラスト感度で規格化している。そこで、周波数ピークにおいて、発生するモアレコントラストの視認性の限界値を設定することで、モアレ周波数とモアレコントラストによるモアレ視認性の限界値を設定することを試みた。
【0071】
その方法として、コントラスト感度が最大となる周波数ピークにおいて、モアレコントラストの異なる縞の視認性の官能評価を実施したところ、モアレコントラストが0.5以下であれば、縞を視認できるが不快ではないレベルとなることがわかった。そこで、許容し得るモアレコントラストの値0.5に対してVTF曲線の式の逆数を取って規格化する。すなわち、図16(B)に示されるように縦軸を規格化コントラストとすると、モアレ周波数とモアレコントラストの限界曲線は、次の(7)式のように表される。
【数7】
なお、上記(7)式における「f」は、fmoireを略記したものである。
【0072】
以上から、モアレ周波数とモアレコントラストで設定される、運転者(視認者)に不快感を感じさせないモアレは、次の(8)式と図16(B)で表される。
【数8】
図16(B)において、曲線の下側の範囲が運転者に不快感を与えない範囲となる。
【0073】
なお、上記(7)式、(8)式では、Cmaxを0.5としているが、Cmaxが0.6以下であれば、敏感な運転者を除いて、不快感をほとんど感じないことが分かっている。
【0074】
次に、モアレコントラストを制御する実施例について、図17を参照して説明する。
図17(A)の(A-1)~(A-3)は、ビーム径が互いに異なる3種類の走査ビームでそれぞれ走査線ピッチが一定となるように同一の平板上を走査したときの3つの描画画像を示している。走査ビームのビーム径は(A-1)<(A-2)<(A-3)の関係にあり、描画画像の明るさは(A-1)<(A-2)<(A-3)の関係にある。
【0075】
図17(A)の(A-4)~(A-6)は、ビーム径が互いに異なる3種類の走査ビームでそれぞれ走査線ピッチが一定となるように同一のマイクロレンズアレイ上を走査したときの3つの描画画像を示している。走査ビームのビーム径は(A-1)<(A-2)<(A-3)の関係にある。
図17(A)の(A-4)~(A-6)から分かるように、走査線ピッチが一定の条件下では、ビーム径が大きくなるにつれ、描画画像のコントラストが低下する(輝度均一性が高くなる)。従って、ビーム径が大きくなるほど、モアレコントラストは低下する(輝度均一性が高くなる)。
結果として、視認性の高さは(A-4)<(A-5)<(A-6)となる。
【0076】
図17(B)の(B-1)~(B-3)は、ビーム径が一定の走査ビームで走査線ピッチが一定となるようにそれぞれ同一の平板上を走査したときの3つの描画画像を示している。
【0077】
図17(B)の(B-4)~(B-6)は、ビーム径が一定の走査ビームで走査線ピッチが一定となるようにそれぞれ副走査方向のレンズピッチが互いに異なる3種類のマイクロレンズアレイ上を走査したときの3つの描画画像を示している。
図17(B)の(B-4)~(B-6)から分かるように、ビーム径及び走査線ピッチが一定であるため、レンズピッチが大きくなるほど、横切る(通過する)走査線の数が増加するレンズが増える(暗部となるレンズが少なくなる)。従って、原理的に、レンズピッチ≧走査線ピッチの場合には、全てのレンズを走査線が通過するため、モアレコントラストは低下する(輝度均一性が高くなる。)
結果として、視認性の高さは(B-4)<(B-5)<(B-6)となる。
【0078】
図22には、図11(D)のレンズ配列(ハニカム型配列)のマイクロレンズアレイをWbeam≧PscanかつPlens≧Pscanを満たすように走査した場合の描画画像が示されている。図22より、描画画像においてモアレの発生が抑制されていることが分かる。
【0079】
次に、レンズ配列が非平行配列であるマイクロレンズアレイについて、図18を参照して説明する。ここで、「非平行配列」とは、主走査方向に並ぶ複数のレンズの中心を通る線が非平行なレンズ配列をいう。
【0080】
図18(A)に示されるマイクロレンズアレイでは、主走査方向に並ぶ複数のレンズの中心が主走査方向の中央に関して対称となる曲線線上(副走査方向の一側に凸の曲線上、言い換えると図18(A)の紙面下側に凸の曲線上)にある。また、副走査方向に並ぶ複数(図18(A)では5つ)の曲線SL1~SL5の曲率が副走査方向に関して単調に変化している。すなわち、SL1の曲率>SL2の曲率>SL3の曲率>SL4の曲率>SL5の曲率となっている。曲線SL1~SL5を、それぞれ走査線と見做すこともできる。また、主走査方向の中央において副走査方向に並ぶ複数のレンズの中心は直線(SS4)上にあるが、主走査方向の中央以外の位置において副走査方向に並ぶ複数のレンズの中心は曲線上(主走査方向の中央側とは反対側に凸の曲線上)にある。
【0081】
図18(A)において、符号SS1は、レンズm11、m21、m31、m41、m51の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する曲線を示す。符号SS2は、レンズm12、m22、m32、m42、m52の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する曲線を示す。符号SS3は、レンズm13、m23、m33、m43、m53の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する曲線を示す。符号SS4は、レンズm14、m24、m34、m44、m54の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS5は、レンズm15、m25、m35、m45、m55の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する曲線を示す。符号SS6は、レンズm16、m26、m36、m46、m56の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する曲線を示す。符号SS7は、レンズm17、m27、m37、m47、m57の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する曲線を示す。
【0082】
図18(A)では、レンズサイズ(レンズ径)が一定ではないが、走査線ピッチPscan、レンズピッチPlensを前述のように定義することができる。また、ここでは、走査線ピッチ及びレンズピッチは、いずれも一定である。よって、図18(A)に示されるマイクロレンズアレイをWbeam≧PscanかつPlens≧Pscanを満たすように走査することにより、モアレの発生を抑制することができる。
【0083】
図18(B)に示されるマイクロレンズアレイでは、主走査方向に並ぶ複数のレンズの中心が主走査方向の中央に関して対称な副走査方向の一側(図18(B)の紙面下側)に凸の曲線上にあり、副走査方向に並ぶ複数(図18(B)では5つ)の曲線SL1~SL5の曲率が副走査方向に関して一定となっている。すなわち、曲線SL1~SL5の曲率が同一になっている。曲線SL1~SL5を、それぞれ走査線と見做すこともできる。また、主走査方向の任意の位置において副走査方向に並ぶ複数のレンズの中心は同一直線上にある。
【0084】
図18(B)において、符号SS1は、レンズm11、m21、m31、m41、m51の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS2は、レンズm12、m22、m32、m42、m52の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS3は、レンズm13、m23、m33、m43、m53の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS4は、レンズm14、m24、m34、m44、m54の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS5は、レンズm15、m25、m35、m45、m55の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS6は、レンズm16、m26、m36、m46、m56の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。符号SS7は、レンズm17、m27、m37、m47、m57の中心を通り、曲線SL1~SL5に直交する直線を示す。
【0085】
図18(B)でも、走査線ピッチPscan、レンズピッチPlensを前述のように定義することができる。また、ここでは、レンズサイズ(レンズ径)、走査線ピッチ及びレンズピッチは、いずれも一定である。よって、図18(B)に示されるマイクロレンズアレイをWbeam≧PscanかつPlens≧Pscanを満たすように走査することにより、モアレの発生を抑制することができる。
【0086】
さらに、レンズ配列が図18とは異なる非平行配列のマイクロレンズアレイについて、図19図20を参照して説明する。
【0087】
図19(A)~図19(C)において、光学板301上で横方向に延びる線が走査線3011であり、縦方向に延びる線が各走査線に直交する線3012である。
【0088】
図19(A)では、マイクロレンズアレイ上の各走査線3011は、副走査方向の一側(図19(A)の紙面下側)に凸となるように湾曲する、主走査方向(X方向)の中央(y軸)に関して対称な曲線となっている。図19(A)でも、走査線ピッチPscanを前述のように定義することができる。ここでは、走査線ピッチは一定となっている。
【0089】
図19(B)では、マイクロレンズアレイ上の副走査方向(y方向)の中央の走査線3011は主走査方向(x方向)に平行な直線であり、その他の走査線3011は副走査方向の中央(x軸)に向けて凸となるように湾曲する、主走査方向(X方向)の中央(y軸)に関して対称な曲線となっている。図19(B)でも、走査線ピッチPscanを前述のように定義することができる。ここでは、走査線ピッチは一定となっている。
【0090】
図19(C)では、マイクロレンズアレイ上の副走査方向(y方向)の中央の走査線3011は主走査方向(x方向)に平行な直線であり、その他の走査線3011は主走査方向(x方向)の一側(図19(C)の紙面左側)から他側(図19(C)の紙面右側)にかけてx軸に徐々に近づくように傾斜する直線となっている。図19(C)でも、走査線ピッチPscanを前述のように定義することができる。ここでは、走査線ピッチは一定となっている。
【0091】
また、図20(A)~図20(C)には、それぞれ図19(A)~図19(C)に示される走査線により走査されるマイクロレンズアレイのレンズ配列例(非平行配列)が示されている。図20(A)~図20(C)でも、レンズピッチPlensを前述のように定義することができる。また、図20(A)~図20(C)では、いずれも副走査方向のレンズピッチが一定である。よって、図20(A)~図20(C)に示されるマイクロレンズアレイをWbeam≧PscanかつPlens≧Pscanを満たすように走査することにより、モアレの発生を抑制することができる。
【0092】
以上、主走査方向に延びる縞模様からなるモアレの発生を抑制することに関して説明を進めてきたが、同様の原理で副走査方向に延びる縞模様からなるモアレが発生し得る。
【0093】
そこで、図21に示されるように、マイクロレンズアレイ上における主走査方向のビームスポット径をWXbeam,、主走査方向に隣接するビームスポット302のピッチ(中心間隔)をPXscan、主走査方向のレンズピッチ(レンズの配列ピッチ)をPXlensとしたとき、WXbeam≧PXscanかつPXlens≧PXscanが満たされること、すなわち各レンズ上で主走査方向に隣接するビームスポット302が一定以上の重なり部分を有することが好ましい。これにより、主走査方向に延びる縞模様からなるモアレの発生を抑制する場合と同様の原理で、副走査方向に延びる縞模様からなるモアレの発生を抑制することができる。また、微細光学素子300の副走査方向の幅をWXlensとしたときに、WXlens≧PXscanであることが好ましい。なお、図21では、WXlens=PXlensである。
【0094】
なお、以上のような、スクリーン30が光学素子アレイとしてのマイクロレンズアレイを有する場合についての議論は、スクリーン30が光学素子アレイとしてのマイクロミレーアレイを有する場合についても妥当する。スクリーン30がマイクロミラーアレイを有する場合には、HUD装置の光学系のレイアウトを図1のレイアウトから変更する必要がある。例えば走査ミラー20を省略し、光偏向器15と凹面ミラー40との間の光路上にマイクロミラーアレイを配置しても良いし、走査ミラー20の代わりに光偏向器15で偏向された光を平行光とするレンズを配置し、該レンズと凹面ミラー40との間にマイクロミラーアレイを配置しても良い。
【0095】
以上説明した本実施形態のHUD装置100は、第1の観点からすると、複数の微細光学素子300(光学素子)を含む光学素子アレイを光により主走査方向及び副走査方向に2次元走査して画像を形成する、光走査装置10を含む画像形成ユニットと、該画像形成ユニットからの画像を形成する光を投射する凹面ミラー40(投光部)とを備える表示装置であって、光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び光学素子アレイにおける副走査方向の微細光学素子300の配列ピッチは、光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上であることを特徴とする表示装置である。ここで、「走査線ピッチ」は、走査線が互いに非平行である場合には光学素子アレイ上における隣接する走査線の間隔が最大となる主走査方向の位置における隣接する走査線の間隔を意味し、走査線が互いに平行である場合には隣接する走査線の間隔を意味する。
【0096】
また、本実施形態のHUD装置100は、第2の観点からすると、光源装置11(光源部)と、該光源装置11からの光を2次元的に偏向する光偏向器15と、該光偏向器15を介した光により主走査方向及び副走査方向に2次元走査される、複数の微細光学素子300(光学素子)を含む光学素子アレイと、光学素子アレイを介した光を投射する凹面ミラー40(投光部)と、を備え、光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び光学素子アレイにおける副走査方向の微細光学素子300の配列ピッチは、光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上であることを特徴とする表示装置である。
【0097】
本実施形態のHUD装置100によれば、微細光学素子300の配列と走査線ピッチに起因するモアレ(主走査方向に延びる縞模様)の発生を抑制することができる。
【0098】
また、微細光学素子300の副走査方向の幅は、走査線ピッチ以上であることが好ましい。この場合、各微細光学素子300上を複数の走査線を横切らせることができ、該微細光学素子300上の輝度を向上させることができ、ひいては光学素子アレイ全体での輝度ムラを低減できる。
【0099】
また、ビームスポット径をWbeam、配列ピッチをPlens、走査線ピッチをPscan、HUD装置100の副走査方向の画素密度をYcpd,、モアレ周波数をfmoire、モアレコントラストをCmoireとしたとき、fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscan、Cmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5、0.5/{5.05×exp(-0.138×fmoire[1.0-exp(-0.fmoire)]}≧Cmoireが成立することが好ましい。
【0100】
また、配列ピッチをPlens、走査線ピッチをPscan、HUD装置100の副走査方向の画素密度をYcpd,としたとき、fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscanで求められるモアレ周波数fmoireが10cpd以上となるようにYppd、Plens、Pscanが設定されていても良い。
【0101】
また、ビームスポット径をWbeam、配列ピッチをPlens、走査線ピッチをPscan、HUD装置100の副走査方向の画素密度をYcpd,としたとき、fmoire=Ycpd(Plens-Pscan)/2Pscanで求められるモアレ周波数fmoireが10cpd未満となり、かつCmoire=-0.9×Wbeam/Pscan+1.5で求められるモアレコントラストCmoireが0.5以下となるようにYcpd、Plens、Pscan、Wbeamが設定されていても良い。
【0102】
また、光学素子アレイにおける主走査方向に互いに隣接する任意の組の微細光学素子300の光学中心は、副走査方向にずれていることが好ましい(図11(D)、図18図20参照)。
【0103】
この場合、副走査方向に隣接するレンズの境界が副走査方向にずれているので、副走査方向のモアレの発生を更に抑制することが可能となる。
【0104】
また、複数の微細光学素子300それぞれは平面視六角形状であり、複数の微細光学素子300はハニカム状に配列されていることが好ましい(図10図11(C)、(D)、図20参照)。
【0105】
また、光学素子アレイ上における主走査方向のビームスポット径及び光学素子アレイにおける微細光学素子300の主走査方向の配列ピッチは、光学素子アレイ上における主走査方向に隣接するビームスポットの中心間隔以上であることが好ましい。
【0106】
この場合、微細光学素子300の配列と主走査方向に隣接するビームスポットの中心間隔に起因するモアレ(副走査方向に延びる縞模様)の発生を抑制することができる。
【0107】
また、微細光学素子300の主走査方向の幅は、上記中心間隔以上であることが好ましい。この場合、各微細光学素子300上に主走査方向に隣接する複数のビームスポットの重なり部分を位置させることができ、該微細光学素子300上の輝度を向上させることができ、ひいては光学素子アレイ全体での輝度ムラを低減できる。
【0108】
また、フロントウインドシールド50(透過反射部材)が設けられた車両(物体)と、車両に搭載され、フロントウインドシールド50に光を投射するHUD装置100と、を備える車両装置(物体装置)によれば、運転者(視認者)に有用な情報を高品質な画質で提供することができる。
【0109】
また、本実施形態の表示方法は、複数の微細光学素子300(光学素子)を含む光学素子アレイ(光学素子アレイ)を光により主走査方向及び副走査方向に2次元走査して画像を形成し、該画像を形成した光を投射して画像を表示する表示方法であって、光学素子アレイ上における副走査方向のビームスポット径及び光学素子アレイにおける微細光学素子300の副走査方向の配列ピッチが光学素子アレイ上における走査線ピッチ以上となるように光学素子アレイを2次元走査することを特徴とする表示方法である。
【0110】
この場合、微細光学素子300の配列と走査線ピッチに起因するモアレの発生を抑制することができる。
【0111】
なお、上記実施形態のHUD装置100では、平坦なスクリーン30が用いられているが、例えば主走査方向に沿って射出側に凸となるように湾曲したスクリーンを用いても良い。この場合、走査ミラー20を省略して光偏向器15で偏向された光を直接スクリーンに導く構成を採用したり、走査ミラー20として平面鏡を用いても(図1では走査ミラー20は凹面鏡)、光偏向器15からスクリーンまでの光路長をスクリーンの面内方向で略一定にすることができる。
【0112】
上記実施形態のHUD装置において、「投光部」は、凹面ミラー40(凹面鏡)から構成されているが、これに限らず、例えば、凸面鏡から構成されても良いし、曲面鏡(凹面鏡や凸面鏡)と、該曲面鏡とスクリーン30との間に配置された折り返しミラーとを含んで構成されても良い。
【0113】
また、上記実施形態では、光源としてLD(端面発光レーザ)を用いているが、例えば面発光レーザ等の他のレーザ等を用いても良い。
【0114】
また、上記実施形態では、HUD装置は、カラー画像に対応するように構成されているが、モノクロ画像に対応するように構成されても良い。
【0115】
また、透過反射部材は、車両のフロントウインドシールドに限らず、例えばサイドウインドシールド、リアウインドシールド等であっても良く、要は、透過反射部材は、虚像を視認する視認者が搭乗する車両に設けられ、該視認者が車両の外部を視認するための窓部
【0116】
また、上記実施形態では、HUD装置は、例えば自動車に搭載されるものを一例として説明したが、要は、車両、航空機、船舶、ロボット等の移動体に搭載されるものであることが好ましい。例えば、本発明の「物体装置」に用いられる車両としては、4輪の自動車に限らず、自動二輪車、自動三輪車等であっても良い。この場合、透過反射部材としてのウインドシールドもしくはコンバイナを装備する必要がある。また、車両の動力源としては、例えばエンジン、モータ、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0117】
また、本発明の表示装置は、HUD装置に限らず、例えばプロジェクタ装置、プロンプタ装置、ヘッドマウントディスプレイ装置等の画像(虚像を含む)表示する装置にも適用可能である。
【0118】
すなわち、本発明の表示装置は、要は、移動体、人体、静止物体(運搬可能な物体や恒常的に設置されている物体を含む)等の物体に装着もしくは搭載されるものであれば良い。
【0119】
例えば本発明の表示装置をプロジェクタ装置に適用する場合には、HUD装置100の光学系を転用することができる。具体的には、光源装置11から射出され、光偏向器15、スクリーン30を介した光を直接、映写幕、テーブル、壁、床、天井等の被投影対象に投影しても良いし、上記スクリーン30を介した光をレンズやミラーを含む光学系を介して上記被投影対象に投影しても良い。
【0120】
また、上記実施形態に記載した具体的な数値、形状等は、一例であって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【0121】
以下に、発明者らが、上記実施形態を発案するに至った思考プロセスについて説明する。
【0122】
従来、マイクロレンズアレイを光により走査することで中間像を形成する走査型のHUD装置において、マイクロレンズ径とビーム径を適切に制御することでコヒーレンス性の高いレーザ光による干渉ノイズを低減する技術が知られている。
【0123】
例えば、特許文献1(特開2014‐170213号公報)に開示されているHUD装置は、スクリーン部材上に格子状に配列された隣接する光学素子同士にて、湾曲面の面頂点から相互間の境界までのサグ量を相異ならせることで、コヒーレンス性の高いレーザ光による干渉ノイズを低減している。
【0124】
しかし、格子状配列により規則性をもった光学素子パターン上に、光走査部によって描画された走査線間隔(走査線ピッチ)が一定である場合に、光学素子パターンの間隔と走査線間隔に起因したモアレが発生してしまい、画質が低下することが懸念される。
【0125】
そこで、発明者らは、微細光学素子の配列ピッチ、走査線ピッチ、ビームスポット径を適切に制御することでモアレを抑制することができるHUD装置を提供することを目的として上記実施形態を発案するに至った。
【符号の説明】
【0126】
11…光源装置(光源部)、15…光偏向器、30…スクリーン(光学素子アレイを含む部材)40…凹面ミラー(投光部)、50…フロントウインドシールド(透過反射部材)、100…HUD装置(表示装置)、300…微細光学素子(光学素子)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0127】
【文献】特開2014‐170213号公報
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