(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】オルガノポリシロキサン
(51)【国際特許分類】
C08G 77/20 20060101AFI20220621BHJP
C08F 299/08 20060101ALI20220621BHJP
C08F 290/00 20060101ALI20220621BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08G77/20
C08F299/08
C08F290/00
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2018019603
(22)【出願日】2018-02-06
【審査請求日】2021-01-28
(31)【優先権主張番号】P 2017019934
(32)【優先日】2017-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126505
【氏名又は名称】佐貫 伸一
(74)【代理人】
【識別番号】100151596
【氏名又は名称】下田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100105407
【氏名又は名称】高田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寺田 憲章
(72)【発明者】
【氏名】渡部 拓海
(72)【発明者】
【氏名】長坂 剛
(72)【発明者】
【氏名】古賀 尚悟
(72)【発明者】
【氏名】井上 一真
(72)【発明者】
【氏名】松村 一成
【審査官】岡谷 祐哉
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/031798(WO,A1)
【文献】特開昭59-061816(JP,A)
【文献】国際公開第2005/010077(WO,A1)
【文献】特開2006-274082(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0323677(US,A1)
【文献】米国特許第04625007(US,A)
【文献】特開平09-316338(JP,A)
【文献】米国特許第05959038(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 77/20
C08F 299/08
C08F 290/00
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式[1]で示されるオルガノポリシロキサン。
(R
1R
2R
3SiO
1/2)
M1(R
4R
5R
6SiO
1/2)
M2
(R
7R
8SiO
2/2)
D1(R
9R
6SiO
2/2)
D2
(R
10SiO
3/2)
T1(R
6SiO
3/2)
T2(SiO
4/2)
Q
(O
1/2R
11)
Y1(O
1/2R
6)
Y2 ・・・[1]
ここで、上記式[1]中、
R
1~R
5、R
7~R
10はそれぞれ独立して有機官能基、反応性官能基、又は、水素原子から選択される基である。R
1~R
3、R
7、R
8、及び、R
10は(メタ)アクリロイル基を含まない。
R
6は(メタ)アクリロイル基を含む有機基であり、同一でも異なっていてもよく、
R
11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基であり、
係数M1、D1、T1、Qは、それぞれ0以上0.6未満であり、
M1+M2>0、T1+T2+Q>0、
M2+D2+T2>0.25、
M1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1
、
D1≦0.1、
係数Y1が0.01以上0.25以下であり、
係
数Y2は、0又は正の値である。
【請求項2】
M2+D2+T2≧0.4である請求項1に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項3】
前記R
6が、下記式[2]、[3]、[4]及び[5]で表される群から選択された1種又は2種以上の官能基を1分子中に有することを特徴とする、請求項1又は2に記載のオルガノポリシロキサン。
【化1】
但し、式中Xは、分岐構造、及び/又は、環状構造を含んでいてもよい2価の有機官能基である。また、ケイ素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、ケイ素と直結する原子は、炭素原子である。また、ケイ素に直結した酸素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、酸素原子と直結する原子は、炭素原子である。
【請求項4】
前記R
6が、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシオクチル基から選択される1種又は2種以上の官能基を1分子中に有するものであることを特徴とする、請求項3に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項5】
前記係数M1が0より大きい請求項1から4のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項6】
前記係数Qが0より大きい請求項1から5のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項7】
前記係数M1が0.09以上0.5以下、かつ前記係数Qが0.04以上0.4以下である請求項1から6のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項8】
前記係数Y1が0.01以上0.1以下である請求項1から
7のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項9】
前記R
1~R
5、及びR
7~R
10がそれぞれ独立してメチル基、又は、フェニル基である請求項1から
8のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項10】
25℃において粘度が10~100,000mPa・sである請求項1から
9のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項11】
200gのオルガノポリシロキサンを1Lナス型フラスコに入れて、圧力0.15torrの排気能力を有する真空ポンプにて減圧下、内温110℃で2時間加熱した際、オルガノポリシロキサン成分の質量減少が10g以下である、請求項1から
10のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン。
【請求項12】
請求項1から
11のいずれか1項に記載のオルガノポリシロキサン、並びに(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレート化合物、及び/又は、それらの(メタ)アクリロイル基を重合させた重合体を含むオルガノポリシロキサン組成物。
【請求項13】
更に重合開始剤を含有する請求項
12に記載のオルガノポリシロキサン及び組成物。
【請求項14】
請求項
13に記載の組成物を硬化させた硬化物。
【請求項15】
請求項
12若しくは
13に記載のオルガノポリシロキサン組成物、又は請求項
14に記載の硬化物を含む光学部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学部材に適した構造を有するオルガノポリシロキサンに関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック材料は、軽量で成型しやすく、生産性が向上できるため、無機ガラスに代わって光学材料に多く用いられるようなってきた。特に、カメラやスマートフォン等に使用されるレンズには、プラスチック製レンズが採用されている。レンズ材料には、鮮明な画像を得るために高いアッベ数が求められ、また、高精細化に伴いレンズの膜厚を薄くするために高い屈折率が求められている。しかしながら、非特許文献1及び2に記載されているように、一般的には屈折率が高い材料は、アッベ数が低くなる傾向にあり、高屈折率と高アッベ数を両立するのは難しい。
【0003】
高屈折率と高アッベ数を両立するためには、フッ素以外のハロゲンや脂環式オレフィン、硫黄原子等を構造中へ導入することで達成できることが知られている。しかし、これらの官能基を導入したプラスチック製レンズは、耐熱性が不足しているため、特許文献1に記載されているハンダリフロー炉での電子部品の一括実装のような、実装工数削減による生産性向上が実現できない。また、レンズ材料は、周辺環境に対して安定な光学特性を維持することが求められるが、非特許文献3に記載されているように、レンズが吸湿した場合、屈折率の不均一分布により、波面収差が変化することが知られており、吸湿性の低い材料が求められている。
【0004】
これらの課題を解決する手法として、設計の自由度が高く、様々な機能を持たせることが可能なオルガノポリシロキサンを材料とする光学部材が提案されている。
例えば特許文献2には、シクロアルキル基を修飾したオルガノポリシロキサンが開示されており、脂環式オレフィンを導入した効果により、光学特性として、高屈折率、且つ、高アッベ数を達成したシリコーン樹脂レンズが提案されている。
また、特許文献3には、分子鎖中にシルフェニレン骨格(-Si-C6H4-Si-)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンを含む付加硬化型シリコーン樹脂組成物が開示されており、アッベ数が高く、高輝度を有する光学部材用封止材が提案されている。
他方特許文献1には、レンズモジュールの一括実装方式に適応するレンズ材料として、籠型シルセスキオキサン構造を原料とした有機-無機複合体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-158797号公報
【文献】特開2012-8201号公報
【文献】特開2015-101645号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】「透明樹脂の屈折率予測システム」谷尾宣久著 ネットワークポリマー 2009年 Vol.30 NO.1 P33-40
【文献】「含硫黄環状ポリオレフィンの合成と特性」 岡田隆志著 TOSOH Research & Technology Review Vol.52(2008)P11-18
【文献】「光ディスク用プラスチック対物レンズの吸湿シミュレーション」 小林雅也 KONICA TECHNICAL REPORT VOL3 JAN.(1990) Vol.3 P74-80
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1に開示のオルガノポリシロキサンは、非特許文献1にあるようにシクロヘキシル基を構造中に有することで、高屈折率且つ高アッベ数となることは自明であり、(メタ)アクリロイル基によるアッベ数向上の情報は記載がなく、また、ハンダリフロー工程を模した評価について示されていない。
また、上記特許文献2および3についても、(メタ)アクリロイル基によるアッベ数向上の情報は記載がなく、また、ハンダリフロー工程を模した評価について示されていない。さらに、双方とも複雑な構造の化合物であり、製造が煩雑であり、収率や歩留まりといった生産性が高くなく、プラスチックレンズを採用している目的の生産性の向上と相反する材料である。
本発明では、既に提案された手法とは異なり、(メタ)アクリロイル基が修飾された新たなオルガノポリシロキサンにより、高屈折率、且つ、高アッベ数、及び、低吸湿性を達成する材料を提供すること、並びに、該オルガノポリシロキサン及びアクリル樹脂との混合硬化物において、ハンダリフロー工程での一括実装に耐えうる材料の提供を課題とする。
また本発明の別の課題は、該オルガノポリシロキサンを高い生産性で製造することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、かかる課題を解決すべく鋭意検討の結果、高屈折率になるとアッベ数が低下するという一般常識を覆す知見として、オルガノポリシロキサンに対し、(メタ)アクリロイル基を含む有機基を一定量以上修飾することで、(メタ)アクリロイル基を重合させた硬化物に於いて屈折率の上昇とともにアッベ数も上昇する領域があることを見出した。さらに、高屈折率、且つ、高アッベ数の該オルガノポリシロキサンは、低吸湿性となることを見出した。また、(メタ)アクリロイル基の修飾量が少ないオルガノポリシロキサンは、アクリル樹脂と混合しても分離してしまい、相溶性が良くないことに対し、本発明のオルガノポリシロキサンは、相溶性が良いため、透明で濁りがない硬化物を得ることができる。さらに、混合する前のアクリル樹脂よりもガラス転移温度を向上させることができ、ハンダリフロー耐性を持つ材料となる。加えて、本発明のオルガノポリシロキサンの原料には、汎用的な原料を用いることができ、籠型シルセスキオキサン等の特殊構造の形成を必要とせず、生産性が高いことに想到し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)下記一般式[1]で示されるオルガノポリシロキサン。
(R
1R
2R
3SiO
1/2)
M1(R
4R
5R
6SiO
1/2)
M2
(R
7R
8SiO
2/2)
D1(R
9R
6SiO
2/2)
D2
(R
10SiO
3/2)
T1(R
6SiO
3/2)
T2(SiO
4/2)
Q
(O
1/2R
11)
Y1(O
1/2R
6)
Y2 ・・・[1]
ここで、上記式[1]中、
R
1~R
5、R
7~R
10はそれぞれ独立して有機官能基、反応性官能基、又は、水素原子から選択される基である。R
1~R
3、R
7、R
8、及び、R
10は(メタ)アクリロイル基を含まない。
R
6は(メタ)アクリロイル基を含む有機基であり、同一でも異なっていてもよく、
R
11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基であり、
係数M1、D1、T1、Qは、それぞれ0以上0.6未満であり、
M1+M2>0、T1+T2+Q>0、
M2+D2+T2>0.25、
M1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1であり、
係数Y1およびY2は、0又は正の値である。
(2)M2+D2+T2≧0.4である請求項1記載のオルガノポリシロキサン。
(3)前記R
6が、下記式[2]、[3]、[4]、及び、[5]で表される群から選択された1種又は2種以上の官能基を1分子中に有することを特徴とする、(1)又は(2)に記載のオルガノポリシロキサン。
【化1】
但し、Xは、分岐構造、及び/又は、環状構造を含んでいてもよい2価の有機官能基である。また、ケイ素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、ケイ素原子と直結する原子は、炭素原子である。また、ケイ素原子に直結した酸素原子とXが結合している場合、Xの末端であり、酸素原子と直結する原子は、炭素原子である。
(4)前記R
6が、(メタ)アクリロイルオキシプロピル基、又は、(メタ)アクリロイルオキシオクチル基から選択される1種又は2種以上の官能基を1分子中に有するものであることを特徴とする、(3)に記載のオルガノポリシロキサン。
(5)前記係数M1が0より大きい(1)から(4)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(6)前記係数Qが0より大きい(1)から(5)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(7)前記係数M1が0.09以上0.5以下、かつ前記係数Qが0.04以上0.4以下である(1)から(6)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(8)前記係数Y1が0以上0.25以下である(1)から(7)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(9)前記係数Y1が0.01以上0.1以下である(1)から(8)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(10)前記R
1~R
5、及びR
7~R
10がそれぞれメチル基、又は、フェニル基である(1)から(9)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(11)25℃において粘度が10~100,000mPa・sである(1)から(10
)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン。
(12)200gのオルガノポリシロキサンを1Lナス型フラスコに入れて、圧力0.15torrの排気能力を有する真空ポンプにて減圧下、内温110℃で2時間加熱した際、オルガノポリシロキサン成分の質量減少が10g以下である、(1)から(11)に記載のオルガノポリシロキサン。
(13)(1)から(12)のいずれかに記載のオルガノポリシロキサン、並びに(メタ)アクリロイル基を含有する(メタ)アクリレート化合物、及び/又は、それらの(メタ)アクリロイル基を重合させた重合体を含むオルガノポリシロキサン組成物。
(14)更に重合開始剤を含有する(13)に記載のオルガノポリシロキサン及び組成物
。
(15)(14)に記載の組成物を硬化させた硬化物。
(16)(13)若しくは(14)に記載のオルガノポリシロキサン組成物、又は(15)に記載の硬化物を含む光学部材。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、(メタ)アクリロイル基を構造中に含むオルガノポリシロキサンとすることで、重合開始剤により容易に硬化物を得ることができ、その硬化物は、光学特性、特に屈折率とアッベ数が高く、吸湿率や線膨張係数も低くできるため、レンズ等の光学部材として適したオルガノポリシロキサンを提供することができる。本発明のオルガノポリシロキサンは、単体で使用することも、他の樹脂、特に好ましくはアクリル樹脂と混合して用いることもでき、本発明の最適の形態ではハンダリフロー耐性を持つ特にプラスチックレンズとして使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】(メタ)アクリロイル基含有量とアッベ数及び屈折率との関係を示す。
【
図2】ハンダリフロー条件の温度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施形態に即して詳細に説明する。ただし、本発明は本明細書に明示的又は黙示的に記載された実施形態に限定されるものではない。
【0013】
(オルガノポリシロキサンの構造)
(一般式で表す構造)
本発明で用いられるオルガノポリシロキサンは、以下の一般式[1]で示される。
(R1R2R3SiO1/2)M1(R4R5R6SiO1/2)M2
(R7R8SiO2/2)D1(R9R6SiO2/2)D2
(R10SiO3/2)T1(R6SiO3/2)T2(SiO4/2)Q
(O1/2R11)Y1(O1/2R6)Y2 ・・・[1]
ここで、上記式[1]中、
R1~R5、R7~R10は独立して有機官能基、反応性官能基、及び水素原子から選択される基である。R1~R3、R7、R8、R10は(メタ)アクリロイル基を含まず、R6は(メタ)アクリロイル基を含む有機基であり、同一でも異なっていてもよく、
R11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基であり、
係数M1、D1、T1、Qは、それぞれ0以上0.6未満であり、
M1+M2>0、T1+T2+Q>0、
M2+D2+T2>0.25、M1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1であり、
係数Y1およびY2は、0又は正の値である。
【0014】
以下、一般式[1]の説明を行う。
一般式[1]において、係数のM1、M2は、ケイ素原子に結合した酸素原子が一つである、いわゆるM単位の割合を示す。同様にD1、D2はケイ素原子に結合した酸素原子が二つであるD単位の割合を示し、T1、T2はケイ素原子に結合した酸素原子が三つであるT単位の割合を示し、Qはケイ素原子に酸素原子が4つ結合しているQ単位の割合を示す。
またM2、D2、T2はケイ素原子にR6、すなわち(メタ)アクリロイル基を含む有機基が結合しているM単位、D単位、T単位の割合をそれぞれ示す。
そしてM1+M2>0は、M単位を必須とすることを意味する。
T1+T2+Q>0は、T単位またはQ単位を必須とすることを意味する。
そしてM2+D2+T2>0.25とM1+M2+D1+D2+T1+T2+Q=1は、ケイ素原子にR6すなわち(メタ)アクリロイル基を含む有機基が結合しているM単位、D単位、T単位の割合が、M単位、D単位、T単位、Q単位の全体に対し、25mol%を超えることを意味する。
またY1は、ケイ素に結合したアルコキシ基、又は、シラノール基の含有量であることを意味する。
Y2は、ケイ素に結合した(メタ)アクリロイル基を含む有機基の含有量を意味する。
【0015】
本発明の効果の一つである硬化物のアッベ数を大きくするためには、(メタ)アクリロイル基を有する単位の割合であるM2+D2+T2が0.25を超えるものであり、好ましくは0.3以上、より好ましくは0.4以上であり、さらに好ましくは0.5以上、特に好ましくは0.6以上である。また、(メタ)アクリロイル基の含有量を高める観点、及び、液の保存安定性を高める観点から、M単位またはT単位に(メタ)アクリロイル基が存在することが好ましいため、M2+T2≧0.4であることも好ましく、より好ましくはM2+T2が0.5以上、さらに好ましくは0.6以上である。また、M2+D2+T2またはM2+T2をこれらの範囲とすることで、他の樹脂との相溶性が向上する点でも好ましい。
【0016】
また、R6を有さないM単位の割合であるM1も存在していること、つまりM1>0であることが好ましい。その理由は、オルガノポリシロキサンのアルコキシ基及びシラノール基をM単位で置換することで、オルガノポリシロキサンの保存安定性を改善し、粘度を低粘度にするためであるが、R6のような嵩高い基が修飾されたオルガノポリシロキサンにおいては、アルコキシ基及びシラノール基をM単位によって置換する際、立体障害の少ないM単位がケイ素原子に近づきやすく、R6を有さないM単位が置換に有利である。立体障害の観点からは、R1からR3は、特にメチル基や水素原子が好ましく、保存安定性の観点から、メチル基が最も好ましい。置換量については、保存安定性の観点から、好ましくは係数M1が0.09以上であり、また、通常0.6以下であり、0.5以下であることが好ましく、0.4以下であることがより好ましい。
【0017】
また本発明は、(メタ)アクリロイル基の含有量を高める観点、及び、液の保存安定性を高める観点から、好ましくはMQレジン、MTQレジン、MTレジンであることが好ましく、D単位はこれらのレジンに適度な柔軟性を付与するために組み込むこともできる。高弾性率、且つ、低線膨張率とし、光学材料として適した材とするためには、D1≦0.1であることが好ましく、より好ましくはD1≦0.05である。
【0018】
Q単位はケイ素が最も酸化された形態であり、オルガノポリシロキサンの構造に含まれることで、耐熱性を高くすることができる。したがって、Q単位を構造に有するMQレジン、MTQレジンが好ましく、Q単位の含有量としては、好ましくは係数Qが0より大きく、好ましくは0.04以上であり、上限としては通常0.6以下であり、Q単位が多い場合、固体あるいは粘度が高くなり、ハンドリング性が低下するため、より好ましくは0.4以下である。
【0019】
また、(O1/2R11)は、ケイ素に結合したアルコキシ基、又は、シラノール基であり、それぞれオルガノポリシロキサンの粘度を制御することができ、成形に適した粘度に調整できる。シラノール基は粘度を増加させる効果があり、シラノール基をアルコキシ基とすることで粘度を低下させる効果がある。
係数Y1は、0又は正の値である。係数Y1の範囲は、成形に必要な粘度調整の観点から通常0以上であり、0.01以上であることが好ましく、保存安定性や硬化収縮の観点から、通常0.25以下であり、0.2以下が好ましく、より好ましくは0.1以下である。
【0020】
係数Y2は、ケイ素に酸素原子を介して結合した(メタ)アクリロイル基を含む有機基の含有量であり、屈折率及びアッベ数の増加に寄与するため、オルガノポリシロキサンの構造に組み込むことができる。M2+D2+T2>0.25のかわりにY2>0.25とすることで、他の樹脂との相溶性に優れアッベ数の高い光学材料として使用することができる。すなわち、本発明の別の形態として、一般式[1]において、M2+D2+T2>0.25の要件をY2>0.25で代替する形態であってよい。但し、(メタ)アクリロイルオキシ基がケイ素についた化合物は水により加水分解し、脱離しやすいため、吸水率が高くなることがあり、水分の影響を受けにくい方法で使用することが好ましい。
すなわち、(メタ)アクリロイルオキシ修飾のQレジン、Tレジン、MQレジン、MTレジン、MTQレジン、および、それらとD単位からなるオルガノポリシロキサンとすることができる。
【0021】
(R
1-R
11について)
次に置換基の説明を行う。
本発明において、R
6は(メタ)アクリロイル基で置換された有機基である。好ましいものとしては、下記式[2]、[3]、[4]、及び、[5]で表される群から選択された1種又は2種以上の官能基を1分子中に有するものだが、より好ましくは、アクリロイルオキシプロピル基、アクリロイルオキシオクチル基、メタクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシオクチル基であり、その中でもアクリロイルオキシプロピル基、メタクリロイルオキシプロピル基が好ましい。
【化2】
【0022】
ただし、式中Xは、2価の有機官能基であり、分岐構造、および/又は、環状構造を含んでいてもよい。また、Xは、炭素、及び、水素の他に、酸素、窒素、リン、硫黄、及びハロゲンからなる群から選択されるいずれかを含んでいてもよい。また、ケイ素原子とXが結合している場合、Xの末端でありケイ素原子と直結する原子は炭素原子である。また、ケイ素原子に直結した酸素原子とXが結合している場合、Xの末端であり酸素原子と直結する原子は炭素原子である。例えば、炭素数1~20の二価の分岐構造や環状構造を含ん
でいてもよい炭化水素基や、ポリアルキレングリコールなどが好適に用いられる。
【0023】
なお、本発明においては、M単位、D単位、T単位を構成するそれぞれのユニットは、すべて同一であることを要しない。つまり割合がM1であるユニット(R1R2R3SiO1/2)の中で、たとえばあるR1は水素原子であり、あるR1はメチル基であるような、異なった構造をもっていてもよい。これは他のR、Xにも共通である。
【0024】
またR1からR5、R7からR10はそれぞれ独立して有機官能基、及び、反応性官能
基、及び、水素原子から選択される基である。
上記反応性官能基としては、アルケニル基、SiH基、環状エーテル基、アルコールなど
の水酸基、カルボキシル基、アルデヒド基等が好適である。但し、R1からR3、R7、R8、R10は(メタ)アクリロイル基を含まない。これは例えばR1からR3が(メタ)アクリロイル基を含む有機基である場合、M1割合部分とM2割合部分の区別がつかなくなるため、このように規定している。
一方、M2割合部分にあるR4、R5は、(メタ)アクリロイル基を含む有機基であってもこのような問題は生じないため、この制限を受けることはない。D1割合部分、T1割合部分についても同様の理由で、R7、R8、R10は(メタ)アクリロイル基を含まない。
【0025】
R1からR5、R7からR10はそれぞれ独立してメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基などのアルキル基、フェニル基、ナフチル基、カルバゾール基、フェネチレン基などの芳香族性官能基、フラニル基、ポリアルキレングリコール基などのエーテル基であることが好ましく、より好ましくはメチル基、フェニル基又は水素原子である。
R11は、(メタ)アクリロイル基を含まず、炭素数1~20の有機基、及び水素原子から選択される基を表す。このうち好ましくはメチル基である。
【0026】
(オルガノポリシロキサンのその他の特性)
本実施形態のオルガノポリシロキサンの好ましい特性としては、25℃(常圧下)で液状であることが好ましい。常圧とは大気圧に等しい圧力をいい、ほぼ一気圧である。また、液体とは流動性のある状態をいう。25℃における粘度としては、ハンドリングの観点からE型粘度計により測定した値が、10~100,000mPa・sであることが好ましい。通常25℃において5mPa・s以上、好ましくは50mPa・s以上、より好ましくは100mPa・s以上であり、また通常20000mPa・s以下、好ましくは2000mPa・s以下、より好ましくは500mPa・s以下である。粘度をこの範囲にすることで、重合開始剤やアクリル樹脂などの他の成分と混和させやすく、適度な流動性を担保した硬化性樹脂組成物となるため、加工が容易になる。
【0027】
また、液状であるためには、ゲルパーミエーションカラムクロマトグラフィー(GPC)測定において、ポリスチレン換算した数平均分子量が通常10,000以下、好ましくは5000以下、より好ましくは2500以下であることが好ましい。さらに同じ液状でもより好ましくは、低分子量成分が少ないことが好ましく、数平均分子量が通常600以上、好ましくは800以上、より好ましくは900以上、特に1,000以上であることが好ましい。低分子量成分が多いと液状になりやすいが、硬化した際の弾性率が低くなることがあり、さらに、温度が変化した際、弾性率が著しく変化することがあり、上述の範囲にすることで光学部材が温度変化で劣化しにくくなる。ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)は、下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示すことができる。試料はテトラヒドロフランで約10質量%に希釈した液を用い、測定前に0.45μmのフィルターにて濾過したものを用いる。
装置: TOSOH HLC-8220 GPCカラム:KF‐G、KF‐401HQ
、KF‐402HQ、KF‐402.5HQ(昭和電工(株)製)、
カラム温度40℃溶離液:テトラヒドロフラン、
流量:0.3mL/分
【0028】
この低分子量成分の含有量を確認する手法として、圧力0.15Torrの排気能力を有する真空ポンプにて減圧下、内温110℃で2時間加熱した際のオルガノポリシロキサンの質量減少を測定する方法があり、低沸点成分の含有量は5質量%以下であることが好ましい。
より具体的には、以下の手順で測定することができる。1H-NMRを測定し、有機溶媒等、オルガノポリシロキサン以外の成分の質量を算出する。1Lナス型フラスコに16×3.5mmオーバル型PTFE回転子を入れ、それらの重さを測定する。その後、オルガノポリシロキサンを該ナス型フラスコに入れ、質量を測定する。この際、オルガノポリシロキサンの仕込み量は200gが好ましい。オイルバスにてナス型フラスコを加熱し、マグネチックスターラにより回転子を回して液面が流動する程度に撹拌し、オイル式真空ポンプにて減圧する。この際の圧力は、0.2~0.1torrが好ましく、マノメータにより、圧力が0.15torrとなるように減圧することが好ましい。2時間後、室温まで冷却し、窒素ガスにより大気圧に戻し、ナス型フラスコに付着したオイルを十分にふき取り、ナス型フラスコに入った状態のオルガノポリシロキサンの質量を測定し、先に測定していたナス型フラスコと回転子の重さを差引き、該操作により揮発した質量を算出する。該操作後のオルガノポリシロキサンの1H-NMRを測定し、有機溶媒等、オルガノポリシロキサン以外の成分の質量を算出する。揮発した質量からオルガノポリシロキサン以外の成分の量を差引き、オルガノポリシロキサンの揮発量を算出する。オルガノポリシロキサンの質量減少は仕込み量を200gとした際、10g以下であることが好ましい。
なお、オルガノポリシロキサン以外の成分が10質量%以上含まれている場合、オルガノポリシロキサン以外の成分の揮発により、内温が下がり、オルガノポリシロキサンが揮発しにくくなるため、オルガノポリシロキサン以外の成分が10質量%以上含有している場合は、温度60℃に加熱し、圧力10torrにて減圧して、オルガノポリシロキサン以外の成分を1質量%未満に除去した上で実施することが好ましい。
【0029】
(オルガノポリシロキサンの製造方法)
本実施形態のオルガノポリシロキサンは、汎用的に生産されているケイ素原料を加水分解縮合することで得ることができるが、製造に用いることができる原料を以下に例示する。
M単位源の一例として、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、ヘキサメチルジシロキサン、ヘキサメチルジシラザン、ジメチルシラノール、ジメチルメトキシシラン、テトラメチルジシロキサン、テトラメチルジシラザン、ジメチルビニルシラノール、ジメチルビニルメトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジビニルテトラメチルジシラザン、ジメチルメタクリロイルオキシプロピルシラノール、ジメチルメタクリロイルオキシプロピルメトキシシラン、1,3-ジメタクリロイルオキシプロピルテトラメチルジシロキサン、ジメチルグリシジルオキシプロピルシラノール、ジメチルグリシジルオキシプロピルメトキシシラン、1,3-ジグリシジルオキシプロピルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシロキサン、1,3-ジフェニルテトラメチルジシラザン、ジメチルフェニルシラノール、ジメチルメトキシフェニルシラン、1,4-ビス(ジメチルメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(ジメチルエトキシシリル)ベンゼン、及び、上記列挙した化合物中、シラノール性水酸基もしくはアルコキシ基を含有するものについて、シラノール性水酸基もしくはアルコキシ基の代わりにハロゲンが結合した化合物群等を用いることができ、特に、ヘキサメチルジシロキサンを好適に用いることができる。また、屈折率を上昇させる目的で芳香族化合物を含有する上記化合物を用いる事も好ましい。
【0030】
D単位源の一例として、ジメチルジシラノール、ジメチルジメトキシシラン、テトラメチルジシロキサン、ジメチルシロキサンオリゴマー、メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン、メチルジメトキシフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、メチルフェニルジシラノール、1,4-ビス(メチルジメトキシシリル)ベンゼン、1,4-ビス(メチルジエトキシシリル)ベンゼン、及び、上記列挙した化合物のシラノール性水酸基もしくはアルコキシ基の代わりにハロゲンが結合した化合物群、及び、これらの重合物等を用いることができ、特に、ジメチルジメトキシシランを好適に用いることができる。また、屈折率を上昇させる目的で芳香族化合物を含有する上記化合物を用いる
事も好ましい。
【0031】
T単位源の一例として、トリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等のC1~C20の長鎖アルコキシ基が修飾されたトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-グリシジルオキシオクチルトリメトキシシラン、1,4-ビス(トリメトキシシリル)ベンゼン、及び、これらのメトキシシラン化合物以外にも、エトキシシラン等のアルコキシシラン化合物、シラノール化合物、クロロシラン化合物、ヒドロシリルシラン化合物、及び、これらの重合物を用いることができ、特に、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、8-アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランを好適に用いることができる。
弾性率を向上させる目的では、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランを含有することが好ましい。弾性率の向上に加え、硬化性を高め、アッベ数を向上させる目的では、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランが好ましい。破断強度を向上させる目的では、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランを含有することが好ましい。破断強度の向上に加え、硬化性を高め、アッベ数を向上させる目的では、8-アクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランが好ましい。熱衝撃によるクラックを抑制するため、弾性率を低下させる場合には、アッベ数を高値に維持することが可能なデシルトリメトキシシラン、或いは、炭素数1~20の直鎖有機基が修飾されたトリアルコキシシランを含有することが好ましい。アルコキシシランの種類としては、他の成分との反応速度差や反応系中の溶媒への溶解性に合わせて選択することが好ましい。メトキシシラン類は、反応速度が速く、高極性溶媒との組み合わせが好ましい。また、系中で発生したメタノールを分離する目的でヘキサン等の非極性溶媒を用いることも好ましい。エトキシシラン類は、反応速度はメトキシシラン類より劣るが、低極性溶媒とも相溶性が良いため、特にトルエン等の低極性溶媒の反応で用いることが好ましい。また、低極性の成分と混合する際にもエトキシシラン類を用いることが好ましい。また、屈折率を上昇させる目的で芳香族化合物を含有する上記化合物を用いる事も好ましい。これらT単位は1種類のみを他のM単位、D単位、Q単位へ含有させてもよく、2種類以上を含有させてもよい。弾性率を調整する目的では、8-メクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランとデシルトリメトキシシランを含有することが好ましい。
【0032】
Q単位源の一例としては、テトラクロロシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラプロポキシシラン、テトラブトキシシラン、テトラペンチルオキシシラン、テトラフェニルオキシシラン、トリメトキシモノエトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン、トリエトキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシトリブトキシシラン、モノメトキシトリペンチルオキシシラン、モノメトキシトリフェニルオキシシラン、ジメトキシジプロポキシシラン、トリプロポキシモノメトキシシラン、トリメトキシモノブトキシシラン、ジメトキシジブトキシシラン、トリエトキシモノプロポキシシラン、ジエトキシジプロポキシシラン、トリブトキシモノプロポキシシラン、ジメトキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジエトキシモノプロポキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジプロポキシモノメトキシモノブトキシシラン、ジプロポキシモノエトキシモノブトキシシラン、ジブトキシモノメトキシモノエトキシシラン、ジブトキシモノエトキシモノプロポキシシラン、モノメトキシモノエ
トキシモノプロポキシモノブトキシシランなどのアルコキシシラン、またはアリールオキシシラン、テトラメトキシシランオリゴマーとして、三菱化学株式会社製メチルシリケートMS51、MS56、MS57、MS60、テトラエトキシシランオリゴマーとして多摩化学株式会社製エチルシリケートオリゴマーES40、ES48などを用いることができ、特に、メチルシリケートMS51が好適である。
【0033】
これらのケイ素原料を加水分解縮合する触媒としては、酸触媒、塩基触媒、或いは、無機塩を使用することができ、特に、酸触媒を好適に用いることができる。
酸触媒の一例としては、塩酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、酢酸、メタクリル酸、アクリル酸などを用いることができ、特に、塩酸を好適に用いることができる。
塩基触媒の一例としては、アンモニア、ヘキサメチルジシラザン、トリエチルアミン、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ジアザビシクロウンデセン、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウムなどを用いることができ、特に、水酸化カリウムが好適である。
無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、臭化マグネシウム、臭化カルシウムなどを用いることができ、特に塩化ナトリウムが好適である。
【0034】
加水分解縮合反応時に使用する溶媒の一例としては、テトラヒドロフラン、トルエン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ヘキサン、ヘプタンなどを用いることができ、特に、テトラヒドロフランが好ましく、生成物の溶解性次第では2種類以上の溶媒を用いてもよく、特に、トルエン及びメタノールの混合液、又は、テトラヒドロフラン及びメタノールの混合液が好ましい。
【0035】
MTレジンの製造方法としては、各MT単位原料を始めから一緒に混合し、触媒により加水分解縮合するM単位の同時添加でもよく、T単位原料を予め加水分解縮合した後に、M単位原料を添加し、加水分解縮合するM単位の後添加でもよいが、低分子成分の生成量を抑制する観点から、M単位の後添加が好ましい。
【0036】
加水分解縮合せずに残存したアルコキシ基やシラノール基については、必要に応じて、有機酸あるいはアルコールにより置換してもよく、有機酸の一例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができ、アルコールの一例としては、(メタ)アクリロイル基を含まない基として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及び、それらの構造異性体を用いることができ、(メタ)アクリロイル基を含む基としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができ、安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0037】
MTQレジンの製造方法としては、各MTQ単位原料を始めから一緒に混合し、触媒により加水分解縮合するM単位の同時添加でもよく、TQ単位原料を予め加水分解縮合した後に、M単位原料を添加し、加水分解縮合するM単位の後添加でもよく、T単位原料とM単位原料とを予め加水分解縮合し、Q単位原料とM単位原料についても予め加水分解縮合しておき、それら加水分解縮合物同士を混合して、更に加水分解縮合する多段階合成を行ってもよいが、低分子成分の生成量を抑制する観点では、M単位の後添加、あるいは、多段階合成が好ましい。
【0038】
加水分解縮合せずに残存したアルコキシ基やシラノール基については、必要に応じて、有機酸あるいはアルコールにより置換してもよく、有機酸の一例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができ、アルコールの一例としては、(メタ)アクリロイル基を含まない基として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール
、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及び、それらの構造異性体を用いることができ、(メタ)アクリロイル基を含む基としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができ、安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0039】
MQレジンの製造方法としては、各MQ単位原料を始めから一緒に混合し、触媒により加水分解縮合するM単位の同時添加でもよく、Q単位原料を予め加水分解縮合した後に、M単位原料を添加し、加水分解縮合するM単位の後添加でもよいが、低分子成分の生成量を抑制する観点では、後添加が好ましく、さらに好ましくは、予め加水分解縮合がされたシリケートを原料として用いることである。
【0040】
加水分解縮合せずに残存したアルコキシ基やシラノール基については、必要に応じて、有機酸あるいはアルコールにより置換してもよく、有機酸の一例としては、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができ、アルコールの一例としては、(メタ)アクリロイル基を含まない基として、メタノール、エタノール、プロパノール、ブチルアルコール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、及び、それらの構造異性体を用いることができ、(メタ)アクリロイル基を含む基としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができ、安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0041】
また、M単位にヒドロシリル基を有する原料を用いてMQレジンを加水分解縮合した後、Karstedt触媒等の白金触媒により、ビニル化合物をヒドロシリル化により修飾することも好ましい。
【0042】
Qレジンの製造方法としては、有機酸あるいはアルコールと触媒を混合し、Q単位原料の末端アルコキシ基を有機酸あるいはアルコールと置換することで合成することができる。
有機酸の一例としては、アクリル酸、メタクリル酸を用いることができ、アルコールの一例としては、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートを用いることができ、安定性の観点から、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレートが好ましい。
【0043】
また、これらMTレジン、MTQレジン、MQレジン、QレジンをD単位原料と加水分解縮合することで、靱性を付与することができる。
また、これらMTレジン、MTQレジン、MQレジン、Qレジンは、籠型シルセスキオキサンのような剛直な構造である場合、硬化物は硬く、脆い性状となり、ハンダリフロー工程時に応力緩和しにくく、硬化物にヒビが入ることがあるため、籠型構造でないことが好ましい。籠型構造である場合、赤外吸収スペクトル分析において、波数1070~1150cm-1の領域にSi-O伸縮振動の吸収ピークを有するため、上記波数領域にSi-O伸縮振動の最大吸収波数を有さないことで、籠型シルセスキオキサンのような極端に硬くなる構造を避けることが出来る。なお、波数1070~1150cm-1の領域に、Si-O以外の有機分子由来の特性吸収帯が存在してもよい。有機分子由来の特性吸収帯の例としては、ヒドロキシル基のC-O由来、エステルのC-O-C由来、酸無水物のC-O-C由来、エーテルのC-O-C由来、アミンのC-N由来、スルホン酸、スルホキシド、フッ素化合物C-F由来、リン化合物のP=O又はP-O由来、無機塩SO4
2-又はClO4
-に起因するものが、吸収強度の高い構造として知られている。これらとSi-O伸縮振動との帰属を取り違えないように注意しなければならない。
【0044】
加水分解に使用する水の物質量としては、MDTQ単位に含まれるアルコキシ基の総物質量に対して、0.5当量以上が好ましく、0.8当量以上がより好ましく、1.1当量
以上がさらに好ましい。水の種類の一例としては、市販の塩酸等に含まれる水でもよく、蒸留やイオン交換樹脂により精製した水を用いてもよい。
本実施形態のオルガノポリシロキサンとして、好ましい構造としては、MTレジン、あるいは、MTQレジン、MQレジンであり、特に、MTQレジンが好ましい。
【0045】
(オルガノポリシロキサン組成物)
本実施形態のオルガノポリシロキサン組成物には、上記説明したオルガノポリシロキサンに加え、単官能の(メタ)アクリレート化合物や多官能の(メタ)アクリレート化合物、及び/又は、(メタ)アクリル系重合体を含有することができる。さらに、(メタ)アクリレート化合物を重合、硬化させるために重合開始剤を含有することができる。また、それらに有機溶媒を含有させてもよい。
以下、オルガノポリシロキサン組成物に含まれていてもよい成分について説明する。
【0046】
本発明において、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基の総称であり、CH2=C(R)-C(=O)-で表される。Rは水素原子またはメチル基を示す。また、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルの総称である。「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
【0047】
(単官能の(メタ)アクリレート化合物)
単官能の(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸、コハク酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、マレイン酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、フタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル、ヘキサヒドロフタル酸2-(メタ)アクリロイルオキシエチル等のカルボキシル基を含有する(メタ)アクリレート;
2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の水酸基を有する(メタ)アクリレート;
メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、i-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、n-ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;
シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、2-ジシクロペンテノキシエチル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、アダマンチル(メタ)アクリレート、4-t-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等の脂環式構造を含有する(メタ)アクリレート;
フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、フェニルフェニル(メタ)アクリレート、フェニルフェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニルベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、(1-ナフチル)メチル(メタ)アクリレート等の芳香環構造を含有する(メタ)アクリレート;
テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン等のヘテロ環構造を含有する(メタ)アクリレート;
メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ(メタ)アクリレート;
3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、2-(メタ)アクリロイロキシエチルアシッドホスフェート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート及びヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネートなどが挙げられる。
【0048】
(多官能の(メタ)アクリレート化合物)
多官能の(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート;
シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート等の脂環式構造を含有するジ(メタ)アクリレート;
ポリカーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、9,9-ビス(4-アクリロイルオキシエトキシフェニル)フルオレン、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート等の2官能の(メタ)アクリレート;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性トリス((メタ)アクロキシエチル)イソシアヌレート等の3官能の(メタ)アクリレート;
ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート等の4官能の(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の5官能の(メタ)アクリレート;
ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の6官能の(メタ)アクリレート等の多官能モノマーが挙げられる。
【0049】
((メタ)アクリル系重合体)
(メタ)アクリル系重合体は、組成中に(メタ)アクリレート単位を50質量%以上含む重合体である。「単位」は重合体を構成する繰り返し単位を意味する。(メタ)アクリレート化合物は、単官能であっても多官能であってもよい。
(メタ)アクリル系重合体中に含まれる(メタ)アクリレート単位は、1種でも2種以上でもよい。
また、(メタ)アクリレート単位以外の他のモノマー単位を含んでいてもよい。他のモノマーとしては、(メタ)アクリレートと共重合可能なものであればよく、例えば、スチレン、α-メチルスチレン等の芳香族ビニル系モノマー;アクリロニトリル等のシアン化ビニル系モノマー;酢酸ビニル等のビニルエステル系モノマーが挙げられる。
(メタ)アクリル系重合体を得るための重合方法は特に限定されず、例えば、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、部分重合法等の公知の方法で重合することができる。本発明においては、重合反応の制御や生成した重合体の分離が比較的容易であることから、懸濁重合法が好ましい。
【0050】
また、(メタ)アクリル系重合体として、化学修飾によって側鎖に(メタ)アクリロイル基、またはビニル基等の二重結合を含む官能基を導入し、変性したものを用いてもよい。化学修飾法としては、例えば、カルボキシル基とグリシジル基の反応や、水酸基とイソシアネート基の反応を用いることができる。
化学修飾法として、カルボキシル基とグリシジル基の反応を用いる場合、例えば、カルボキシル基を有する(メタ)アクリルレート単位を含有した(メタ)アクリル系重合体を製造し、得られた(メタ)アクリル系重合体に、例えば、グシシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジル基と二重結合を有する化合物を反応させる手法が挙げられる。
【0051】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー単位を含有した(メタ)アクリル系重合体と、グリシジル基と二重結合を有する化合物の反応には、反応時間の短縮のため反応触媒を用いることが好ましい。反応触媒としては、テトラブチルアンモニウムブロマイド等の第四級アンモニウム塩、エチルトリフェニルホスホニウムブロマイド等の第四級ホスホニウム塩、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系化合物等が挙げられる。本実施形態のオルガノポリシロキサン組成物が着色しにくい点から、第四級アンモニウム塩が特に好ましい。
これらのうち、アッベ数を向上させる観点からは、アルキル(メタ)アクリレート、脂環式構造を含有する(メタ)アクリレート、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、脂環式構造を含有するジ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0052】
(メタ)アクリル系重合体の重量平均分子量(Mw)は、5,000~500,000であることが好ましく、10,000~200,000であることがより好ましい。重量平均分子量が5,000以上であると、硬化物の強度が良好になる。500,000以下であると、本実施形態のオルガノポリシロキサン組成物の粘度が低下するため、作業性が良好になる。
【0053】
(重合開始剤)
重合開始剤としては、例えば、光重合開始剤、熱重合開始剤、レドックス重合に用いられる過酸化物などが挙げられる。重合開始剤の種類は重合方法に応じて適宜選択することができる。
【0054】
(光重合開始剤)
光重合開始剤は光重合に用いられるラジカル重合開始剤である。光重合開始剤の具体例としては、ベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、メチルオルトベンゾイルベンゾエイト、4-フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン型化合物;t-ブチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン等のアントラキノン型化合物;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、オリゴ{2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン}、ベンジルジメチルケタール、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾインメチルエーテル、2-メチル-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン等のアルキルフェノン型化合物;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、ジエチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン型化合物;2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド等のアシルフォスフィンオキサイド型化合物;フェニルグリオキシリックアシッドメチルエステル等のフェニルグリオキシレート型化合物などが挙げられる。
【0055】
これらの中でも、硬化物の着色を抑制できる点で、アルキルフェノン型化合物が好ましく、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンがより好ましい。また、硬化物の内部まで十分に硬化されやすくなる点で、アシルフォスフィンオキサイド型化合物が好ましく、硬化物の着色を抑制できる点で、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイドがより好ましい。これらの光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0056】
光重合で硬化性組成物を硬化して硬化物を得る場合、硬化性組成物に照射する光の波長は特に制限されないが、波長が200~400nmの紫外線を照射することが好ましい。紫外線の光源の具体例としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、UV-LEDランプ、ケミカルランプ、ブラックライトなどが挙げられる。硬化性組成物を光重合した後には、アフターキュアをさらに行ってもよい。これにより、硬化物中に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、硬化物の強度をより高めることができる。アフターキュアの条件としては、70~150℃で0.01~24時間が好ましく、80~130℃で0.1~10時間がより好ましい。
【0057】
(熱重合開始剤)
熱重合開始剤は熱重合に用いられるラジカル重合開始剤である。熱重合開始剤としては例えば有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。
有機過酸化物の具体例としては、メチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ジ(t-ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p-メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ-t-ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド;ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パオキシジカーボネート、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート等のパーオキシエステルなどが挙げられる。
【0058】
アゾ化合物の具体例としては、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、ジメチル-2,2’-アゾビスイソブチレート、4,4’-アゾビス-4-シアノバレリック酸、2,2’-アゾビス-(2-アミジノプロパン)ジハイドロクロライドなどが挙げられる。
【0059】
これらの熱重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。熱重合開始剤としては、硬化物に気泡が生じにくい点で、有機過酸化物が好ましい。硬化性組成物の硬化時間とポットライフとのバランスを考慮すると、有機過酸化物の10時間半減期温度は35~80℃が好ましく、より好ましくは40~75℃であり、さらに好ましくは45~70℃である。10時間半減期温度が35℃以上であれば、常温で硬化性組成物がゲル化しにくくなり、ポットライフが良好となる。一方、10時間半減期温度が80℃以下であれば、硬化性組成物の硬化時間を短縮できる。
【0060】
このような有機過酸化物としては、例えば1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートなどが挙げられる。1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートの市販品としては、例えばパーオクタO(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:65.3℃)等が挙げられる。t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエートの市販品としては、例えばパーブチルO(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:72.1℃)等が挙げられる。ジ(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネートの市販品としては、例えばパーロイルTCP(商品名、日油株式会社製、10時間半減期温度:40.8℃)等が挙げられる。
【0061】
熱重合で硬化性組成物を硬化して硬化物を得る場合、硬化条件は特に限定されないが、着色が抑制された光学部材用樹脂が得られやすい観点から、硬化温度は40~200℃が好ましく、60~150℃がより好ましい。硬化時間(加熱時間)は、硬化温度によっても異なるが、1~120分が好ましく、1~60分がより好ましい。
硬化性組成物を熱重合した後には、アフターキュアをさらに行うことが好ましい。アフターキュアの条件としては、50~150℃で0.1~10時間が好ましく、70~130℃で0.2~5時間がより好ましい。
【0062】
(レドックス重合)
レドックス重合には、通常、レドックス系重合開始剤が用いられる。レドックス系重合開始剤は、過酸化物と還元剤とを併用した重合開始剤である。レドックス重合に用いられる過酸化物としては、例えばジベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドなどが挙げられる。これらの過酸化物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上述した過酸化物をレドックス系重合開始剤として使用する場合、還元剤との組み合わせの一例は以下の通りである。
(1)ジベンゾイルパーオキサイド(過酸化物)と、N,N-ジメチルアニリン、N,N-ジメチル-p-トルイジン、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)-p-トルイジン等の芳香族3級アミン類(還元剤)との組み合わせ。
(2)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)と金属石鹸類(還元剤)との組み合わせ。
(3)ハイドロパーオキサイド(過酸化物)とチオ尿素類(還元剤)との組み合わせ。
【0063】
レドックス重合により硬化性組成物を硬化して硬化物を得る場合、レドックス系重合開始剤を用いることで、5~40℃の常温で硬化することができる。得られる光学部材用樹脂に残存する未反応の(メタ)アクリロイル基の量を減少させることができ、光学部材用樹脂の強度をより高めることができる点から、硬化温度は15~40℃が好ましい。
また、硬化性組成物がゲル化しにくく、安定的に取り扱える点から、予め還元剤を硬化性組成物に溶解させておき、これに過酸化物を追加する手順で硬化を実施する方法が好ましい。
硬化性組成物を硬化する際は、酸素による硬化阻害を抑制するため、硬化性組成物を密閉した状態で硬化することが好ましい。密閉する方法としては、ガラスやPETフィルムに硬化性組成物を挟みこむ方法等が挙げられる。
【0064】
(有機溶媒)
オルガノポリシロキサン及び組成物を希釈する目的で有機溶媒を含有させることができる。有機化合物の種類としては、オルガノポリシロキサン及び組成物の硬化物に求める物性を損なわない限り、特に限定されないが、溶解性が良好である芳香族炭化水素(例えば、トルエン、キシレン、安息香酸エチル、エチルベンゼン、ベンジルアルコール)、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、)、エステル類(例えば、酢酸メチ
ル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸アミル、酢酸ノルマルプロピル、乳酸エチル、乳酸メチル、乳酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、γ-ブチロラクトン)、エーテル類(例えば、イソプロピルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、1,4-ジオキサン、メチルターシャリーブチルエーテル、テトラヒドロフラン)、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、ノルマルプロパノール、イソプロパノール、ブタノール、sec-ブタノール、tert-ブタノール、ノルマルペンタノール)、ハロゲン系溶媒(例えば、塩化メチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、ブロモプロパン、クロロホルム)、その他(例えば、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド)などを用いてもよく、二種類以上の溶媒を用いてもよい。
【0065】
その含有量は、オルガノポリシロキサン及び組成物の硬化物に求める物性を損なわない限り、特に限定されないが、揮発分を少量に抑えた上で粘度を低くしたい場合には、オルガノポリシロキサン又は組成物全体に対し0質量%より多く、25質量%以下であることが好ましい。また、薄膜の硬化物を得たい場合には、組成物全体に対し75質量%以上、100質量%未満であることが好ましい。
【0066】
(酸化防止剤)
硬化性組成物は、酸化防止剤をさらに含有することが好ましい。硬化性組成物が酸化防止剤を含有することで、硬化物のはんだ付けの際の加熱やデバイスの発熱等、熱による着色を抑制できる。
酸化防止剤の具体例としては、2,6-ジ-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、n-オクタデシル-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、トリエチレングリコールビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオールビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のフェノール系酸化防止剤;トリフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、トリストリデシルホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、テトラ(C12~15アルキル)-4,4‘-イソプロピリデンジフェニルジホスファイト等のリン系酸化防止剤;ジラウリルー3,3’-チオジプロピオネート、ジトリデシルー3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチルー3,3’-チオジプロピオネート、ジステリアルー3,3’-チオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(β-ラウリルチオプロピオネート)等の硫黄系酸化防止剤などが挙げられる。これら酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0067】
(その他の成分)
本実施形態の硬化性組成物は、フィラー、硬化制御剤、粘度調整剤などその他の成分を含んでもよい。これらの成分は、本実施形態に係るオルガノポリシロキサンの硬化物が有する力学物性や引火点、線膨張係数、粘度等効果を妨げない範囲で、適宜含有させることができる。
【0068】
(オルガノポリシロキサン組成物の硬化)
本発明別の実施形態は、上記説明したオルガノポリシロキサン組成物を熱や光により硬化させた硬化物である。
オルガノポリシロキサン組成物の硬化条件としては特に限定されず、重合開始剤の種類等に応じ、適宜シリコーンレジンの硬化で採用される条件により硬化できる。
【0069】
(硬化物の特性)
(メタ)アクリロイル基を含む単位を、そのM、D、T、Q単位の総量に対し25モル%より大きく有する本実施形態のオルガノポリシロキサン及び組成物を、上述のように硬化させると、以下の特性を持つ硬化物を得ることができる。
【0070】
・高アッベ数、高屈折率
アッベ数が通常44以上、好ましくは50以上、より好ましくは56以上となり、同時に、屈折率が通常1.43以上、好ましくは1.45以上、より好ましくは1.50以上となり、高アッベ数且つ高屈折率の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物よりもアッベ数及び屈折率を高くすることができる。アッベ数、屈折率の測定は、後述する実施例に記載の方法による。
【0071】
・低吸水率
硬化物を乾燥後、湿度85℃85%RH環境下、168h放置した際の吸水率が通常2質量%以下、好ましくは1質量%以下、さらに好ましくは0.8質量%以下の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物よりも吸水率を低くすることができる。吸水率の測定は、後述する実施例に記載の方法による。
・高鉛筆硬度
鉛筆強度が通常H以上、好ましくは3H以上、より好ましくは8H以上の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物よりも鉛筆硬度を高くすることができる。鉛筆硬度の測定は、後述する実施例に記載の方法による。
・高貯蔵弾性率
100℃における貯蔵弾性率が通常750MPa以上、好ましくは1000MPa以上、より好ましくは2000MPa以上の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物よりも貯蔵弾性率を高くすることができる。貯蔵弾性率の測定は、後述する実施例に記載の方法による。
【0072】
・無色透明
全光線透過率が通常85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物の全光線透過率を低下させることなく、透明な硬化物を得ることができる。
イエローインデックス(YI)が、通常2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.5以下の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物のYIを上昇させることなく、無色の硬化物を得ることができる。
ヘーズが、通常2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物のヘーズを上昇させることなく、透明な硬化物を得ることができる。全光線透過率、YI、ヘーズの測定は、後述する実施例に記載の方法による。
【0073】
・高ガラス転移温度(高Tg)
Tgが通常100℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくはTgが確認されない硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物のTgを上昇させることができる。
・低線膨張係数
線膨張係数が通常200ppm/K以下、好ましくは140ppm/K以下、より好ましくは70ppm/K以下の硬化物を得ることができる。また、オルガノポリシロキサン組成物とした際、用いた(メタ)アクリル樹脂組成物の単体硬化物よりも線膨張係数を低くすることができる。線膨張係数の測定は、後述する実施例に記載の方法による。
・高熱衝撃耐性
ハンダリフロー耐性の高い硬化物を得ることができる。
【0074】
(光学部材としての使用)
本実施形態のオルガノポリシロキサン及びオルガノポリシロキサン組成物の硬化物は、高アッベ数、且つ、高屈折率であり、光学特性に優れ、強度が高く、更にハンダリフロー耐性が高いことで製造プロセス適合性に優れるため、光学部材用として好ましく使用することができる。
光学部材としては、カメラレンズ、ピックアップレンズ、眼鏡レンズ、フレネルレンズ、及びプリズムレンズ等のプラスチックレンズ、光学用オーバーコート剤、ハードコート剤、反射防止膜、光ファイバー、光導波路、ホログラム、プリズムレンズ、光半導体用光学部材等の各種光学部材として使用することができ、これらの中でも特に、カメラレンズ等のプラスチックレンズ用に適している。
【実施例】
【0075】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、それらは本発明の説明を目的とするものであって、本発明をこれらの態様に限定することを意図したものではない。
【0076】
[測定方法]
1.1H-NMRの測定方法
測定対象のオルガノポリシロキサンを50mg秤量し、内部標準として15mgのトルエンを添加した。さらに重クロロホルムを入れて1gに溶解し、NMR試料管へ入れ、400MHz 1H-NMR(日本電子株式会社製AL-400)にてRelaxation Delayを20秒で測定した。各成分のシグナル強度と内部標準のトルエンのシグナル強度との比率、及び、秤量値により、官能基含有量を見積もった。
【0077】
2.29Si-NMRの測定方法
・装置:日本電子株式会社製JNM-ECS400、TUNABLE(10):Siフリー、AT10プローブ
・測定条件:Relaxation Delay/15秒、SCAN回数/1024回、測定モード/非ゲーテッドデカップルパルス法(NNE)、スピン/なし、測定温度/25℃
・試料の調製:重クロロホルムにTris(2,4-pentanedionato)chromiumIIIが0.5質量%になるよう添加し、29Si-NMR測定用溶媒を得
た。測定対象のオルガノポリシロキサンを1.5g秤量し、上記29Si-NMR測定用溶媒を2.5ml入れて溶解し、10mmΦテフロン(登録商標)製NMR試料管へ入れた。
・構成単位の算出:ケイ素の各単位のシグナル強度を測定し、上記1H-NMRで測定したシグナル強度との比率、及び、官能基含有量との比率から、ケイ素単位の構成比率を算出した。
【0078】
3.分子量の測定
各オルガノポリシロキサンの数平均分子量Mnおよび重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により下記条件で測定し、標準ポリスチレン換算値として示した。試料はテトラヒドロフランで約10質量%に希釈した液を用い、測定前に0.45μmの目開きのフィルターにて濾過したものを用いた。
・装置: TOSOH HLC-8220 GPC
・カラム:KF‐G、KF‐401HQ、KF‐402HQ、KF‐402.5HQ(昭和電工(株)製)
・カラム温度:40℃
・溶離液:テトラヒドロフラン、流量0.3mL/分
【0079】
4.屈折率の測定
4-1.硬化前の液状サンプルの屈折率測定:
(株)アタゴ製、Refractometer RX-7000αを用いて20℃にてナトリウムD線の波長での屈折率を測定した。
4-2.硬化物の屈折率測定:
測定方法1 株式会社アタゴ製、多波長アッベ屈折計DR-M2を用いて、温度25℃にて、中間液に1-ブロモナフタレンを使用し、屈折率、及び、アッベ数を測定した。
測定方法2 株式会社島津製作所製、カルニュー精密屈折計KPR2000を用いて、温度23℃にて、中間液にジヨードメタン、モノブロモナフタレン、流動パラフィンの混合物を使用し、屈折率、及び、アッベ数を測定した。
【0080】
5.粘度の測定
ブルックフィールド社製RV型粘度計RVDV-2 +Proを用いて、温度25℃における値を測定した。
【0081】
6.ガスクロマトグラフィーの測定方法
・装置:(株)島津製作所製、ガスクロマトグラフGC-14B
・カラム:Agilent Technologies株式会社製、DB-5
・injection温度:290℃
・昇温方法:50℃から290℃へ10℃/分で昇温
各オルガノポリシロキサン及びTHFを質量比1:1で秤量し、混合したものを測定した。また、1Lナス型フラスコに各オルガノポリシロキサン、及び、回転子を入れ、減圧度10torrの排気能力を有する真空ポンプにて減圧し、内温が110℃となるように加熱し、2時間減圧蒸留を実施した。本蒸留後、ガスクロマトグラフィーを実施し、蒸留前のオルガノポリシロキサンと比較し、減少したピークを確認した。確認方法としては、蒸留前のオルガノポリシロキサンを希釈したTHFのピークを基準ピークとし、オルガノポリシロキサンの各ピーク強度を確認後、蒸留後のオルガノポリシロキサンの各ピークを上記基準ピークにより、規格化し、さらに該蒸留後のオルガノポリシロキサン及びTHFの秤量値によりピーク強度を補正し、蒸留前後のオルガノポリシロキサンについて、各ピークの強度を比較した。ピーク強度が10%以上減少したピークは、Retention
Timeにおいて、0分から12分のピークであった。
【0082】
7.赤外吸収スペクトル測定方法(IR測定)
・フーリエ変換赤外分光法 Fourier Transform Infrared Spectroscopy
・装置:Thermo Fisher Scientific社製 Nic-Plan
・分解能:4cm-1
・積算回数:64 回
ATR法(Attenuated Total Reflection:全反射測定法)により、オルガノポリシロキサンの極大吸収波数を測定した。
【0083】
8.ヘーズ及び、イエローインデックスの測定方法
・装置:(株)村上色彩技術研究所製、ヘーズメーターHM-150型
JIS K7105に基づき、ヘーズの測定を実施した。
イエローインデックス(YI)の測定方法
・装置:コニカミノルタ(株)製、分光測色計CM-5。
透過測定法によりYI評価を実施した。
【0084】
9.鉛筆硬度
JIS K5600-5-4に則した測定方法により、鉛筆硬度を測定した。
【0085】
10.貯蔵弾性率の測定およびガラス転移点の測定
・装置:TA Instruments社製、動的粘弾性測定装置RSAII
・測定モード:引っ張りモード
・測定周波数:10Hz
各種硬化物を測定し、100℃又は200℃における貯蔵弾性率を算出した。
また、tanδのピーク温度をガラス転移点とした。
【0086】
11.線膨張係数の測定
以下のいずれかの方法で、線膨張係数を測定した。
方法1
・装置:TA Instruments社製、熱機械測定装置Q400
・昇温速度:20℃/分
・測定範囲:20~200℃
30~150℃の範囲において、線膨張係数を算出した。
方法2
・装置:エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製、熱機械的分析装置TMA/SS6100
・昇温速度:5℃/分
・測定範囲:30~200℃
50~100℃の範囲において、線膨張係数を算出した。
【0087】
12.吸水率の測定
・装置
IR測定:日本分光株式会社製、紫外可視近赤外分光光度計V780
乾燥機:ヤマト科学株式会社製、角型真空定温乾燥機DP63
環境試験機:エスペック株式会社製、小型環境試験機SH-221
・乾燥吸湿条件
乾燥:50℃24h、乾燥後IR測定
吸水:85℃85%168h、吸湿後IR測定
測定までの時間は1時間以内に行った。
・測定方法
1mm厚の硬化物について、乾燥後、及び、吸湿後にIRを測定した。
1850~2000nm付近に現れる水由来の吸収ピーク面積について、吸湿後の吸収ピーク面積と乾燥後の吸収ピーク面積の差から吸水率を求めた。
【0088】
13.酸価の測定方法
製造した粒状の(メタ)アクリル系重合体およびシラップ組成物をトルエンとエタノールの混合溶媒に溶解し、(メタ)アクリル系重合体1gを中和する水酸化カリウム量(mg)を測定し、酸価とした。
【0089】
14.ハンダリフロー評価
・装置:株式会社マルコム製、リフローシュミレーターSRS-1C
・ハンダリフロー条件:
図2に示す温度プロファイルを3サイクル実施した。ピーク温度
は260℃で、10秒間保持した。
・評価:試験後、硬化物を顕微鏡で観察した。
【0090】
[試料作製]
[合成例1]オルガノポリシロキサンの合成方法
オルガノポリシロキサン原料として、三菱化学株式会社製メチルシリケートMS51を22g、信越化学工業株式会社製3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランKBM503を263g、及びNusil Technology社製ヘキサメチルジシロキサンを56g、溶媒として、トルエンを170g、メタノールを170g、触媒および水として、1N塩酸81gとメタノール81gの混合物を使用し、15℃から40℃を維持しながら加水分解縮合した。その後、脱塩水により塩酸を除去した後、溶媒及び水分を除去し、濾過し、目的の液状オルガノポリシロキサンを221g得た。
汎用的なプロセス、且つ、安価な原料を用いたにも関わらず、上記オルガノポリシロキサン原料の総和に対し、65質量%の高収量で得ることができ、変動費、及び、製造コストを低く抑えることができた。
【0091】
得られたオルガノポリシロキサンをガスクロマトグラフィーにより分析し、トルエン及びメタノール、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランのピークが検出されないことを確認した。得られたオルガノポリシロキサンは、1H-NMRおよび29Si-NMR、GPCにより測定を行い、表1に示すオルガノポリシロキサンDであった。また、E型粘度計、及び、屈折率計により物性の測定を実施した。
IR測定によりSiO由来の最大吸収波数は1047cm-1であり、主構造は籠型でないことが示唆された。本手法で合成したオルガノポリシロキサンは籠型構造でない、或いは、籠型構造のオルガノポリシロキサンが存在してもIR測定で籠型の特徴のピークが出ない程度の少量であることが分かった。オルガノポリシロキサン原料の量を適宜変更し、同様に合成した各オルガノポリシロキサンA~C、E~G、I、K、及びLの分子構成比率及び物性を表1に示す。
【0092】
[合成例2]非籠型シルセスキオキサンの合成方法
オルガノポリシロキサン原料として、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランKBM503を170g、溶媒として、トルエンを85g、メタノールを85g、触媒および水として、1N塩酸40gとメタノール40gの混合物を使用し、15℃から40℃を維持しながら加水分解縮合した。その後、脱塩水により塩酸を除去した後、溶媒及び水分を除去し、濾過し、液状のオルガノポリシロキサンを235.6g得た。ガスクロマトグラフィーにより、トルエン及びメタノール、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランのピークが検出されないことを確認した。得られたオルガノポリシロキサンは、1H-NMRおよび29Si-NMR、GPCにより測定を行い、表1に示すオルガノポリシロキサンJであることが分かった。また、E型粘度計、及び、屈折率計により物性の測定を実施した。
IR測定によりSiO由来の最大吸収波数は1045cm-1であり、主構造は籠型でないことが示唆された。本手法で合成したオルガノポリシロキサンは籠型構造でない、或いは、籠型構造のオルガノポリシロキサンが存在してもIR測定で籠型の特徴のピークが出ない程度の少量であることが分かった。
【0093】
籠型シルセスキオキサンとして、オルガノポリシロキサンH(東亜合成株式会社製メタクリロリルTA-100)を用いた。
【0094】
[合成例3]T単位を2種類以上含むオルガノポリシロキサンの合成方法
オルガノポリシロキサン原料として、メチルシリケートMS51を9g、3-メタクリ
ロイルオキシプロピルトリメトキシシランKBM503を120g、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランKBM5803を154g、及びヘキサメチルジシロキサンを27g、溶媒として、トルエンを139g、メタノールを139g、触媒および水として、1N塩酸64gとメタノール64gの混合物を使用し、15℃から40℃を維持しながら加水分解縮合した。その後、脱塩水により塩酸を除去した後、溶媒及び水分を除去し、濾過し、液状のオルガノポリシロキサン214gを得た。ガスクロマトグラフィーにより、トルエン、メタノール、ヘキサメチルジシロキサン、トリメチルシラノール、トリメチルメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、及び、8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランのピークが検出されないことを確認した。得られたオルガノポリシロキサンは、1H-NMRおよび29Si-NMR、GPCにより測定を行い、表7に示すオルガノポリシロキサンNであることが分かった。また、E型粘度計、及び、屈折率計により測定を実施した。オルガノポリシロキサン原料の量を適宜変更し、同様に合成した各オルガノポリシロキサンM、Oの分子構成比率及び物性を表6に示す。
[合成例4]T単位を2種類以上含むオルガノポリシロキサンの合成方法2
合成例3に記載の8-メタクリロイルオキシオクチルトリメトキシシランKBM5803の代わりに、信越化学工業株式会社製のデシルトリメトキシシランKBM3103Cを使用し、オルガノポリシロキサン原料の量を適宜変更し、同様に合成した各オルガノポリシロキサンP~Sの分子構成比率及び物性を表2に示す。
また、合成例3に記載の3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランKBM503の代わりに信越化学工業株式会社製のデシルトリメトキシシランKBM3103Cを使用し、オルガノポリシロキサン原料の量を適宜変更し、同様に合成した各オルガノポリシロキサンT,Uの分子構成比率及び物性を表1に示す。
【0095】
[オルガノポリシロキサン硬化物の製造方法]
実施例1から5、及び、比較例1、2として、表2に示す各オルガノポリシロキサンを100質量部と光重合開始剤としてIrgacure1173を3質量部混合したものをガラスで密閉し、高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm
2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱し、1mm厚の試験片を得た。試験片について測定した各種物性を表2、及び、
図1に示す。
【0096】
[光硬化性シラップ組成物の製造方法、及び、硬化物の製造方法]
撹拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145質量部、分散安定剤としてポリビニルアルコール(ケン化度:80%、重合度:1,700)0.5質量部を加えて撹拌した。ポリビニルアルコールが完全に溶解した後、撹拌を停止し、メチルメタクリレート96質量部、メタクリル酸4質量部、重合開始剤として、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)(大塚化学株式会社製、商品名:AMBN)0.3部、連鎖移動剤として、n-ドデシルメルカプタン1部を加えて、再度撹拌した。撹拌下で窒素置換を行い、80℃に昇温して重合を行った。重合発熱のピークを検出後、95℃に昇温して、さらに0.5時間反応を行い、30℃に冷却した。得られた水性懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄した。脱水後、40℃で24時間乾燥して、粒状の(メタ)アクリル系重合体(Mw=40,000、酸価26mgKOH/g)を得た。
続いて、冷却器を備えた反応容器に、ベンジルメタクリレート60質量部、重合禁止剤としてブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)0.04質量部、グリシジル基と二重結合を有する化合物として、グリシジルメタクリレート3.2質量部、反応触媒としてテトラブチルアンモニウムブロマイド0.12質量部を加えた。反応容器内の液を攪拌しながら、製造した粒状の(メタ)アクリル系重合体を40質量部加え、反応容器内を95℃に昇温した。温度を維持したまま10時間攪拌することで、(メタ)アクリル系重合体への二重結合導入反応行った。10時間後、常温まで冷却し、シラップ組成物を得た。シラップ
組成物中の(メタ)アクリル系重合体の酸価は、0.5mgKOH/gだった。
実施例6~8、及び比較例3~5として、表3に示す各オルガノポリシロキサン37質量部、得られたシラップ組成物23質量部、ベンジルメタクリレート37.7質量部、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(BASF社製、商品名;IRGACURE184)2.3質量部を攪拌混合して光硬化性シラップ組成物を得た。
各光硬化性シラップ組成物をガラスで密閉して高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱することで、1mm厚の試験片を得た。試験片について測定した各種物性を表3に示す。
【0097】
[光硬化性多官能オリゴマー組成物、及び、硬化物の製造方法]
実施例9~11、及び比較例6~8として、表4に示す各オルガノポリシロキサン17質量部、ベンジルメタクリレート16.4質量部、エトキシ化イソシアヌル酸トリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、商品名;NKエステルA-9300)41質量部、ε-カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(東亞合成株式会社製、商品名;アロニックスM-327)24質量部、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン1.6質量部を攪拌混合して光硬化性多官能オリゴマー組成物を得た。
各光硬化性多官能オリゴマー組成物をガラスで密閉して高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱することで、1mm厚の試験片を得た。試験片について測定した各種物性を表4に示す。
【0098】
[シルセスキオキサンとの比較]
シルセスキオキサンとは、T単位のみで構成されたオルガノポリシロキサンであり、籠型構造と非籠型構造に大別することができる。
実施例12として、合成例1で合成したオルガノポリシロキサンI、比較例9としてオルガノポリシロキサンH、比較例10として合成例2で合成したオルガノポリシロキサンJにおいて、各オルガノポリシロキサン100質量部と光重合開始剤としてIrgacure1173を3質量部混合したものをガラスで密閉し、高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱し、1mm厚の試験片を得た。硬化前組成物と試験片について測定した各種物性を表5に示す。
【0099】
[MTQ単位比率変更時の比較]
実施例13及び14として、合成例1で合成したオルガノポリシロキサンK、Lにおいて、各オルガノポリシロキサン100質量部と光重合開始剤としてIrgacure1173を3質量部混合したものをガラスで密閉し、高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱し、1mm厚の試験片を得た。硬化前組成物と試験片について測定した各種物性を表6に示す。
【0100】
[T単位種類変更、及び、2種類以上組み込んだ際の比較]
実施例15~17として、合成例3で合成したオルガノポリシロキサンM、N、Oにおいて、各オルガノポリシロキサン100質量部と光重合開始剤としてIrgacure1173を3質量部混合したものをガラスで密閉し、高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱し、1mm厚の試験片を得た。硬化前組成物と試験片について測定した各種物性を表7に示す。
【0101】
表1~8において、R6はメタクリロイルオキシプロピル基、R6‘はメタクリロイルオキシオクチル基、R10はデシル基、Meはメチル基を表す。
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
図1より、T2が0.12から0.4ではメタクリロイル基の含有量が上昇するとともに屈折率が上昇する一方、一般的に知られているようにアッベ数が低下するため、レンズ材料用のオルガノポリシロキサンを設計する際には、それ以上のメタクリロイル基の導入については着想しないはずである。しかし、驚くべきことにT2が0.4以上では、屈折
率の上昇とともにアッベ数も上昇する挙動が観測され、T2が0.53を超えるメタクリロイル基の導入量においては、T2が0.12の時のアッベ数を上回った。特に、T2が0.53を超えるオルガノポリシロキサンは、屈折率及びアッベ数が高く、レンズ材料として好適である。
また、表1より、鉛筆硬度や貯蔵弾性率などの機械物性においても高値を示すため、堅牢な材料であり、傷つきにくいレンズが製造可能である。さらに、線膨張係数が低いため、例えば、レンズモジュールをハンダリフロー工程等の加熱時にレンズと周りの部材との間に生じる応力が小さいので、レンズが割れにくいと示唆される。加えて、全光線透過率が90%以上あり、ヘーズが1未満であることから、透明で濁りが極めて少ない材料であり、本実施形態のオルガノポリシロキサンはレンズ材料として適している。
【0106】
【0107】
表3より、T2が0.25よりもメタクリロイル基が少ない領域では、アクリル樹脂との相溶性が悪いが、メタクリロイル基がそれよりも多い領域では、アクリル樹脂と相溶し、透明で、元のアクリル樹脂よりもアッベ数が高く、屈折率が高くなるため、レンズ材料
として好適である。また、鉛筆硬度や貯蔵弾性率といった機械強度が改善した。さらに、tanδピーク温度の上昇、すなわち耐熱性が向上しており、ハンダリフロー耐性が付与された。
一方、比較例5のT2が1である籠型シルセスキオキサンにおいては、アクリル樹脂との硬化物が硬く、脆くなり、アッベ数や屈折率を測定することができず、更には、ハンダリフロー時にクラックが発生した。従来より知られている籠型シルセスキオキサンにおいては、高アッベ数、高屈折率、ハンダリフロー耐性を満たすことは困難であった。
【0108】
【0109】
表4より、光硬化性多官能アクリルオリゴマー組成物とした際にも、T2が0.25よりもメタクリロイル基が少ない領域では、アクリル樹脂との相溶性が悪いが、メタクリロ
イル基がそれよりも多い領域では、アクリル樹脂と相溶し、元のアクリル樹脂よりもアッベ数が高くなる。光硬化性多官能アクリルオリゴマー組成物の場合、0.4≦T2<1の範囲に相溶性、透明性、アッベ数、屈折率のバランスが取れた最適点があることが分かる。
【0110】
【0111】
表5より、T2が1である籠型シルセスキオキサンと非籠型シルセスキオキサンとを比較し、耐熱着色性と吸水率の点でM単位とQ単位を含んだ構造が好適であることが分かる。また、アルコキシ基を含まない場合、粘度が高くなり、ハンドリング性が低下するため、アルコキシ基を少量含んだ構造が好ましい。
【0112】
【0113】
表6において、実施例13と14とを比較すると、M1単位比率を下げ、Q単位比率を上げ、且つ、T2単位比率が同等からやや少ない場合、アッベ数は上昇することが分かる。実施例13と15とを比較すると、M1単位比率が同等で、且つ、T2単位比率を下げ、Q単位比率を上げた場合、アッベ数は低下することが分かる。実施例14と15とを比較すると、Q単位比率が同程度且つ、M1単位比率が多く、且つ、T2単位比率が少ない場合、アッベ数は低下することが分かる。以上より、M単位の過剰な組込みはアッベ数を
低下させることになること、アッベ数を上昇させるためには、T2単位含有量を増加させること、Q単位の増減よりもM単位やT2単位がアッベ数への影響が大きいことが分かる。
【0114】
【0115】
表7より、T2の含有量の総和が同等であれば、2種類以上のT2単位を用いたとしても同様のアッベ数を示すことが分かる。
【0116】
[アクリル組成物、及び、硬化物の製造方法]
表8に示す各混合物をガラスで密閉して高圧水銀灯(積算光量:3,000mJ/cm2)で光硬化させ、100℃に設定した加熱炉で30分間加熱することで、1mm厚の試験片を得た。試験片について測定した各種物性を表8に示す。使用した物質として、ジシクロペンタニルメタクリレート(日立化成株式会社製、製品名ファンクリルFA-513M)、ポリブチレングリコール(重合度28)ジメタクリレート(日立化成株式会社製、製品名FA-PTG28M)、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(日本化薬株式会社製、KAYARAD DPHA)、酸化防止剤として、リン系酸化防止剤、及び/又は、フェノール系酸化防止剤を用いた。
ベース樹脂として用いたメタクリル樹脂の光学特性を損なうことなく、弾性率、ガラス転移等の物性を改質することができる。
【0117】