(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】印刷装置、印刷方法、画像付与装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20220621BHJP
B41J 2/21 20060101ALI20220621BHJP
B41J 13/10 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
B41J2/01 305
B41J2/21
B41J13/10
(21)【出願番号】P 2018039093
(22)【出願日】2018-03-05
【審査請求日】2020-12-09
(31)【優先権主張番号】P 2017111462
(32)【優先日】2017-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】230100631
【氏名又は名称】稲元 富保
(72)【発明者】
【氏名】國岡 聡志
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-161583(JP,A)
【文献】特開2011-168052(JP,A)
【文献】特開2014-004707(JP,A)
【文献】特開2000-318140(JP,A)
【文献】特開2002-205381(JP,A)
【文献】特開2008-080750(JP,A)
【文献】特開2009-279888(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0188404(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第106853718(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
B41J 13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材が着脱可能に装着される受け部材と、
前記保持部材に保持された印刷対象物に印刷する印刷手段と、
前記印刷手段に対して、
前記受け部材を往復移動させて、前記保持部材を往復移動させる往復移動手段と、
前記受け部材に前記保持部材が装着されていることを検知する検知手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記往復移動手段による前記保持部材の往復移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記保持部材を待機位置から同じ方向に移動させて、先行の印刷と、該先行の印刷に重ね合わせる後行の印刷とを行い、
前記先行の印刷が終了した後に前記保持部材を前記待機位置に戻したときに前記保持部材の移動を所定時間停止させる制御を
行って、
前記印刷対象物に対して複数回の印刷による重ね合わせ印刷を行うとき、
前記先行の印刷が終了した後、
前記検知手段が前記保持部材を検知している状態が継続しているときにのみ前記後行の印刷を行い、
前記検知手段が前記保持部材を検知しない状態が生じたときには前記後行の印刷は行わない制御をする
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
保持部材が着脱可能に装着される受け部材と、
前記保持部材に保持された印刷対象物に印刷する印刷手段と、
前記印刷手段に対して、
前記受け部材を往復移動させて、前記保持部材を往復移動させる往復移動手段と、
前記受け部材に前記保持部材が装着されていることを検知する検知手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記往復移動手段による前記保持部材の往復移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記保持部材の往路の移動において先行の印刷を行った後、前記保持部材の復路の移動において、前記先行の印刷に重ね合わせる後行の印刷を行う制御を
して、
前記印刷対象物に対して複数回の印刷による重ね合わせ印刷を行うとき、
前記先行の印刷が終了した後、
前記検知手段が前記保持部材を検知している状態が継続しているときにのみ前記後行の印刷を行い、
前記検知手段が前記保持部材を検知しない状態が生じたときには前記後行の印刷は行わない制御をする
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項3】
前記受け部材に対する前記保持部材の着脱位置と前記待機位置とは、前記保持部材の往復移動方向において反対の位置関係にあり、
前記受け部材に装着された前記保持部材を、前記着脱位置から前記待機位置まで移動させた後に印刷を開始する
ことを特徴とする請求項
1に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記先行の印刷に使用するデータと前記後行の印刷に使用するデータが同じである
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項5】
前記先行の印刷に使用するデータと前記後行の印刷に使用するデータが異なる
ことを特徴とする請求項1ないし
3のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項6】
前記印刷対象物が布地である
ことを特徴とする請求項1ないし
5のいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
印刷対象物を保持した保持部材を印刷装置本体内の受け部材に着脱可能に装着する工程と、
前記受け部材を前記保持部材に着脱する着脱位置と反対の待機位置に移動させた後、前記受け部材を前記着脱位置側に向けて移動させて先行の印刷を行う工程と、
前記先行の印刷が終了した後前記受け部材を前記待機位置に復帰移動させ、前記待機位置で所定時間停止させる工程と、
前記所定時間経過後に、前記受け部材を前記着脱位置側に向けて移動させて
後行の印刷を行う工程と、を行
って、
前記印刷対象物に複数回の印刷による重ね合わせ印刷を行うとき、
前記先行の印刷が終了した後、
前記受け部材に前記保持部材が装着されていることを検知する検知手段が前記保持部材を検知している状態が継続しているときにのみ前記後行の印刷を行う工程を行い、
前記検知手段が前記保持部材を検知しない状態が生じたときには前記後行の印刷を行う工程を行わない
ことを特徴とする印刷方法。
【請求項8】
布地を保持する保持部材と、前記布地に印刷する印刷装置と、前記布地を加熱する加熱装置と、を備えた画像付与装置であって、
前記印刷装置は、請求項1ないし
6のいずれかに記載の印刷装置であり、
前記保持部材は、前記布地を保持したままで前記印刷装置と前記加熱装置との両方に共用される
ことを特徴とする画像付与装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は印刷装置、印刷方法、画像付与装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被記録媒体を載置するセットトレイと、セットトレイに載置された被記録媒体に記録を行う記録部と、記録部に対してセットトレイを記録実行のため第1の方向に相対移動可能な移動機構とを備えて、セットトレイを第1方向に移動させて下地記録を行い、下地記録後セットトレイを第1方向と反対方向の待機位置まで戻し、セットトレイを待機位置まで戻した後再度セットトレイを第1方向に移動させて重ね合わせ記録を行う記録装置が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、印刷対象物に対して複数回の印刷による重ね合わせて印刷を行う場合、特許文献1に開示されているように、1回目の印刷後に印刷対象物を所定の位置(待機位置)まで戻して直ちに2回目の印刷を開始すると、印刷対象物が安定していない状態で2回目の印刷が開始され、印刷品質が低下するという課題がある。
【0005】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、重ね合わせ印刷を行う場合の印刷品質を向上することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明の請求項1に係るに係る印刷装置は、
保持部材が着脱可能に装着される受け部材と、
前記保持部材に保持された印刷対象物に印刷する印刷手段と、
前記印刷手段に対して、前記受け部材を往復移動させて、前記保持部材を往復移動させる往復移動手段と、
前記受け部材に前記保持部材が装着されていることを検知する検知手段と、
前記印刷手段による印刷及び前記往復移動手段による前記保持部材の往復移動を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、
前記保持部材を待機位置から同じ方向に移動させて、先行の印刷と、該先行の印刷に重ね合わせる後行の印刷とを行い、
前記先行の印刷が終了した後に前記保持部材を前記待機位置に戻したときに前記保持部材の移動を所定時間停止させる制御を行って、
前記印刷対象物に対して複数回の印刷による重ね合わせ印刷を行うとき、
前記先行の印刷が終了した後、
前記検知手段が前記保持部材を検知している状態が継続しているときにのみ前記後行の印刷を行い、
前記検知手段が前記保持部材を検知しない状態が生じたときには前記後行の印刷は行わない制御をする
構成とした。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、重ね合わせ印刷を行う場合の印刷品質を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る印刷装置を含む画像付与装置(画像付与システム)の一例の印刷装置にカセットを装着したときの斜視説明図である。
【
図2】同じく同印刷装置による印刷終了後カセットを取り外して同加熱装置に挿入するときの斜視説明図である。
【
図3】印刷装置の一例の機構部の全体構成を説明する斜視説明図である。
【
図4】同じく
図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
【
図5】同加熱装置の長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う断面説明図である。
【
図6】同加熱装置の短手方向(カセット出し入れ方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【
図7】布地保持部材であるカセットの外観斜視図である。
【
図8】同カセットの外周カバー部材を開いた状態の斜視説明図である。
【
図9】同カセットの短手方向に沿う概略断面説明図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係る印刷装置の模式的説明図である。
【
図11】同印刷装置のステージ昇降機構の説明図である。
【
図12】同じくステージ高さ検知手段の説明に供する説明図である。
【
図13】印刷装置の制御部の概要のブロック説明図である。
【
図14】印刷装置による重ね合わせ印刷の制御の説明に供するフロー図である。
【
図20】本発明の第2実施形態に係る印刷装置の重ね合わせ印刷の制御の説明に供するフロー図である。
【
図21】本発明の第3実施形態に係る印刷装置の重ね合わせ印刷の制御の説明に供するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る印刷装置を含む画像付与装置(画像付与システム)の一例について
図1及び
図2を参照して説明する。
図1は同画像付与装置の印刷装置にカセットを装着したときの斜視説明図、
図2は同じく同印刷装置による印刷終了後カセットを取り外して同加熱装置に挿入するときの斜視説明図である。
【0010】
画像付与装置(画像付与システム)1000は、保持部材)であるカセット200と、印刷装置1と、加熱装置500とを備えている。カセット200は、印刷対象物である布地400の印刷する部分を平坦な状態で保持する布地保持部材であり、印刷装置1と加熱装置500の両装置で共用される。
【0011】
印刷装置1は、カセット200が着脱可能で、カセット200に保持された布地400に画像を印刷する。加熱装置500は、カセット200が着脱可能で、印刷が施された布地400をカセット200ごと加熱して画像を定着する。
【0012】
なお、ここでは、加熱装置500上に印刷装置1を載せ置いた状態で図示しているが、印刷装置1と加熱装置500とは、別体であり、並べて配置することも、あるいは、離れた位置に配置することもできる。
【0013】
この画像付与装置1000によって布地400に画像を付与するときには、
図1に示すように、布地400を保持したカセット200を印刷装置1のステージ111にセット(装着)し、印刷装置1によって布地400に画像を印刷する。
【0014】
印刷装置1による布地400への画像の印刷が終了したときには、加熱装置500の前扉502を開き、印刷装置1から布地400を保持したままのカセット200を取り出して、そのまま、
図2に示すように、カセット200を加熱装置500に挿し入れる。そして、カセット200を加熱装置500内に収容した後、加熱装置500の前扉502を閉じて、加熱装置500でカセット200ごと布地400を加熱する。布地400を加熱することによって布地400に印刷された画像が布地400に定着する。
【0015】
このように、布地保持部材であるカセット200は印刷装置1と加熱装置500の両方で共用できる。
【0016】
これにより、印刷した布地400を印刷したときの状態のまま保持して加熱装置500にセットすることができ、布地400を持ち運んでも皺が寄ったり、一部が重なったりして印刷面が乱れることはなく、布地400に対する画像付与の作業性が向上する。
【0017】
次に、印刷装置の一例について
図3及び
図4も参照して説明する。
図3は同印刷装置の機構部の全体構成を説明する斜視説明図、
図4は同じく
図3と異なる方向から見た斜視説明図である。
【0018】
印刷装置1は、装置本体100内に、布地400を保持するカセット200を着脱可能に保持して進退移動する受け部材であるステージ111と、ステージ111で保持されたカセット200に保持されている布地400に印刷する印刷手段112とを備えている。
【0019】
ここで、布地400としては、ハンカチ、タオルなどの一枚の布地で形成されるものだけではなく、Tシャツ、トレーナーなどの衣服として加工された布地、トートバック等の製品の一部となっている布地も用いることができる。
【0020】
ステージ111は、装置本体100に対して矢印Y方向(送り方向)に往復移動可能に保持された搬送構造体113上に設けられている。
【0021】
ここでは、装置本体100の底部筐体部114に矢印Y方向に沿って搬送ガイド部材115が配置され、搬送構造体113のスライダ部116が搬送ガイド部材115によって移動可能に保持されている。
【0022】
印刷手段112は、ステージ111に対して矢印X方向(主走査方向)に移動するキャリッジ121と、キャリッジ121に搭載されたヘッド122とを備えている。
【0023】
キャリッジ121は、矢印X方向に沿って配置されたガイド部材123で移動可能に保持され、駆動モータ124によってタイミングベルト125などの走査機構部を介して矢印X方向に往復移動される。ヘッド122は液体吐出ヘッドを用いて、インクを布地表面に吐出して画像の形成を行っているが、これに限るものではない。
【0024】
この印刷装置1においては、カセット200のプラテン部材300に布地400をセットした状態で、装置本体100内のステージ111にカセット200を装着して保持する。そして、ステージ111の矢印Y方向への移動とヘッド122の矢印X方向への往復移動を繰り返すことで、布地400に所要の画像を印刷する。
【0025】
この場合、ステージ111は矢印Z方向にも昇降可能とし、布地400の厚さに応じてステージ111を昇降させることで、布地400とヘッド122とのギャップを所定のギャップに調整可能としている。なお、印刷手段112を昇降可能とすることもできる。
【0026】
次に、加熱装置の一例について
図5及び
図6も参照して説明する。
図5は同加熱装置の長手方向(カセット出し入れ方向)に沿う断面説明図、
図6は同加熱装置の短手方向(カセット出し入れ方向と直交する方向)に沿う断面説明図である。
【0027】
加熱装置500は、装置本体501の内部に、画像が付与された布地400を保持するカセット200を着脱自在に装着(単なる載置を含む意味である。)する受け部材503と、カセット200に保持された布地400を加熱する加熱手段であるヒータ504とが配置されている。
【0028】
ヒータ504は、カセット200のプラテン部材300に対向し、非接触で、プラテン部材300上に保持されている布地400を加熱する。
【0029】
なお、ヒータ504のカセット200側には、例えばアルミなどの熱伝導性に優れた材料で形成した平面部材を設け、ヒータ504による発熱で面温度がほぼ均一になるように加熱する構成とすることもできる。このようにすれば、ヒータ504の加熱位置にかかわらず、面内でほぼ同じ温度で加熱することができる。
【0030】
次に、布地保持部材であるカセットについて
図7ないし
図9を参照して説明する。
図72は同カセットの外観斜視図、
図8は同カセットの外周カバー部材を開いた状態の斜視説明図、
図9は同カセットの短手方向に沿う概略断面説明図である。
【0031】
カセット200は、ベース部材201と、布地400の印刷が施される部分を平坦な状態で保持するプラテン部材300と、プラテン部材300との間で布地400を挟む外周カバー部材202とを備えている。
【0032】
プラテン部材300は、プラテン構造体302と、布地400を平坦な状態で保持する面(保持面)300aを構成する断熱部材301とで構成されている。断熱部材301は、加熱装置500による加熱に対して耐熱性を有する。
【0033】
外周カバー部材202は、プラテン部材300が露出する開口部202aを形成している枠部202bを有している。この外周カバー部材202は、ヒンジ203などでベース部材201に対して開閉可能に設けられている。外周カバー部材202は、プラテン部材300の周縁部分のフランジ部300bとの間で布地400を挟んで押さえる。
【0034】
プラテン部材300はベース部材201に対して支持部311で支持して、プラテン部材300とベース部材201との間には布地400の余剰部分400aを収容できる収容空間312を形成している。余剰部分400aは、例えばTシャツの前面に印刷を行う場合においては、両袖や襟口、すそ等が該当する。
【0035】
また、プラテン部材300を支持する支持部311は、ベース部材201側の中空支柱部231と、中空支柱部231に移動可能に嵌め合わされたプラテン部材300側の中空支柱部331と、中空支柱部231と中空支柱部331との間に配置した圧縮スプリング332とを備えている。
【0036】
これにより、プラテン部材300はベース部材201に対して変位可能に支持される。したがって、布地400の厚みが変化したときにプラテン部材300がスプリング332の復元力に抗して下降してベース部材201との間隔が変化し、異なる厚みの布地400にも対応することができる。
【0037】
ここで、プラテン部材300はベース部材201から着脱可能であり交換可能に形成されている。これによりプラテン部材300を複数用意し、印刷動作中に別のプラテン部材300に衣類を巻き付けておくことができ、印刷、定着終了後にプラテン部材300を交換するだけで速やかに次の布地の印刷を開始することができる。
【0038】
このカセット200に布地400を保持して印刷するときには、まず、外周カバー部材202を開いて、プラテン部材300上に布地400の印刷する部分を載せ置く。その後、布地400の余分な部分(余剰部分)400aを矢印方向から収容空間312内に押し込み、余剰部分400aを収容空間312内に収容する。そして、外周カバー部材202を閉じる。
【0039】
これにより、プラテン部材300によって布地400の印刷する部分が平坦な状態で保持され、外部に余剰部分400aがはみ出すことなく、カセット200内に収容される。
【0040】
そして、布地400に印刷するときには、布地400をセットしたカセット200を印刷装置1の装置本体100のステージ111上に装着する(セットする)。このとき、カセット200をステージ111の移動方向からステージ111に装着することができるので、カセット200をステージ111の直上からステージ111に装着する構成に比べて、ステージ111全体を装置本体100から外に露出させる必要がなく、装置の小型化を図れる。
【0041】
このように、カセット200は装置本体100から全体を取り出した状態にして印刷対象である布地400をプラテン部材300上にセットすることができるので、プラテン部材300への布地400のセット作業が容易になる。
【0042】
次に、本発明の第1実施形態について
図10ないし
図12を参照して説明する。
図10は同実施形態に係る印刷装置の模式的説明図、
図11は同印刷装置のステージ昇降機構の説明図、
図12は同じくステージ高さ検知手段の説明に供する説明図である。
【0043】
印刷装置1は、前述したように、装置本体100内に、カセット200を着脱自在に装着する受け部材としてのステージ111を備えている。
【0044】
ステージ111は、搬送構造体113のスライダ部116上に配置されている。ここでは、スライダ部116は駆動機構130によってY方向に往復移動可能である。駆動機構130は、プーリ131、132間に掛け回したタイミングベルト133と、プーリ131を回転駆動するモータ134とを備えている。
【0045】
したがって、モータ134を駆動することによって、駆動機構130、スライダ部116、ステージ111を介して、ステージ111に装着されたカセット200及びカセット200で保持されている布地400をY方向に往復移動することができる。
【0046】
つまり、ステージ111、スライダ部116を含む搬送構造体113、駆動機構130などによって、印刷手段112に対して布地400を保持したカセット200を着脱位置と待機位置との間で往復移動させる往復移動手段110を構成している。
【0047】
このステージ111の往復移動範囲に沿って配置したエンコーダスケール136と、スライダ部116に設けたエンコーダスケール136を読み取るスライダ部116(或いは、ステージ111)に設けたエンコーダセンサ135とによってリニアエンコーダを構成し、ステージ111のY方向位置を検知している。
【0048】
また、ステージ111は搬送構造体113のスライダ部116に対して上下方向に昇降可能に設けられている。
【0049】
例えば、
図11に示すように、搬送構造体113のスライダ部116にモータ141で回転駆動される台形ネジ142が上下方向に設けられ、台形ネジ142はステージ111に固定したナット143に噛み合っている。
【0050】
この構成により、モータ141を回転駆動することで台形ネジ142が正転又は逆転して、相対的にステージ111がスライダ部116に対して上下動(昇降)する。したがって、カセット200に保持されている布地400をヘッド122に対して所定の高さに移動することができる。
【0051】
ここで、カセット200の高さ(布地400の高さ)が所定の高さになったことは、例えば、
図12に示すように、側板151、152に設けた発光手段153Aと受光手段153Bとで構成される透過型フォトセンサ(カセット高さ検知手段)によって検知している。
【0052】
また、ステージ111にはカセット200が装着されていることを検知するカセット有無センサ161を備えている。カセット有無センサ161は、たとえば、カセット200がステージ111に装着された際に、カセット200に押されることで反応するプッシュ型のセンサが用いてもよい。
【0053】
次に、この印刷装置の制御部の概要について
図13を参照して説明する。
図13は同制御部のブロック説明図である。
【0054】
制御部700は、この装置全体の制御を司るCPU701と、CPU701に本発明に係わる制御を含む印刷動作等の制御を実行させるためのプログラムを含むプログラム、その他の固定データを格納するROM702と、画像データ等を一時格納するRAM703とを含む本発明に係る制御手段を兼ねる主制御部700Aを備えている。
【0055】
制御部700は、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための不揮発性メモリ(NVRAM)704を備えている。また、制御部700は、印刷データに対する各種信号処理等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC705を備えている。
【0056】
制御部700は、外部の印刷データ作成装置800から印刷データを受信するときに使用するデータ及び信号の送受を行うためのI/F706を備えている。
【0057】
なお、印刷データ作成装置800は、布地400に印刷する画像などの印刷データを作成する装置であり、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置で構成されている。
【0058】
制御部700は、各種センサの検知信号を取り込むためのI/O707を備えている。
【0059】
制御部700は、ヘッド122を駆動制御するヘッド駆動制御部708を備えている。
【0060】
制御部700は、キャリッジ121をX方向に移動させるキャリッジ移動モータ124を駆動するモータ駆動部711と、ステージ111をY方向に移動させるステージ移動モータ134を駆動させるモータ駆動部712と、ステージ111をZ方向に昇降させるステージ昇降モータ141を駆動するモータ駆動部713を備えている。
【0061】
制御部700のI/O707には、装置の環境条件としての温度及び湿度を検出する温湿度センサ560などの検知信号、ステージ高さ検知手段を構成する受光手段153Bの出力、カセット有無センサ161の検知信号、エンコーダセンサ135の検知出力、その他のセンサ類の検知信号が入力される。
【0062】
制御部700には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル722が接続されている。
【0063】
制御部700は、印刷データ作成装置800から印刷データを受領し、キャリッジ121をX方向に走査し、ステージ111をY方向に間欠的に移動させながら、印刷データから作成した画像データに応じてヘッド駆動制御部708によってヘッド122を駆動して液体を吐出させ、カセット200に保持された布地400に所要の画像を印刷する制御を行う。
【0064】
次に、印刷装置による重ね合わせ印刷の制御について
図14のフロー図及び
図15ないし
図19の模式的説明図も参照して説明する。
【0065】
図10も参照して、使用者は、前述したように、カセット200に印刷対象物である布地400を保持した後、カセット200を装置本体100のステージ111に着脱可能に装着した後、印刷装置1に対して印刷指示を与える。
【0066】
図14を参照して、印刷開始が指示される(ステップS101、以下、単に「S101」というように表記する。)と、カセット有無センサ161によってカセット200がステージ111に装着されている(カセット有)か否かを判別する(S102)。
【0067】
このとき、カセット有であれば、
図15(a)にも示すように、ステージ111をY2方向に移動させ、
図15(b)にも示すように、ヘッド122の下方でカセット200の移動を停止させる(S103)。
【0068】
次いで、
図16(a)にも示すように、ステージ111を所定の高さまでZ1方向に上昇させ(S104)、その後、
図16(b)にも示すように、ステージ111を再度Y2方向に移動させて、ステージ111を待機位置にする(S105)。
【0069】
待機位置は、布地400に対する印刷を行うためにカセット200のY1方向(Y2方向と反対方向)への移動を開始する移動開始位置であり、書き出し位置、初期位置などとも称する。本実施形態では、受け部材(ステージ111)に対する保持部材(カセット200)の着脱位置と待機位置とは、保持部材の往復移動方向において反対の位置関係にある。そこで、受け部材に装着された保持部材を、着脱位置から印刷動作開始位置(待機位置)まで移動させた後に印刷を開始する構成としている。
【0070】
その後、
図17(a)にも示すように、ステージ111を待機位置からY1方向に移動させてカセット200をY1方向に移動させながら、ヘッド122から液体を吐出させて、カセット200に保持されている布地400に対する1回目の印刷(先行の印刷)を行う(S106)。
【0071】
ここでは、1回目の印刷が終わったときに、ステージ111が
図17(b)に示すようにカセット200をステージ111に着脱する着脱位置になるまでステージ111をY1方向に移動させている。
【0072】
そして、1回目の印刷が終わったか否かを判別し(S107)、1回目の印刷が終わった後、2回目の印刷(後行の印刷)があるか否かを判別する(S108)。
【0073】
このとき、2回目の印刷がなければ、印刷動作を終了し、使用者がカセット200をステージ111から取り外して、加熱装置500にセットすることで、加熱工程に行うことになる。
【0074】
これに対して、2回目の印刷があるときには、
図18(a)にも示すように、ステージ111をY2方向に移動して、カセット200を待機位置に戻す(S109)。
【0075】
そして、カセット200を待機位置に戻して移動を停止させた後、所定時間が経過したか否か判別し、所定時間が経過するまで待機する(S110)。つまり、1回目の印刷を行った後2回目の印刷を行う前に、保持部材であるカセット200の移動を所定時間停止させる。
【0076】
具体的には、カセット200が待機位置に戻ってきた後、モータ駆動部712がステージ移動モータ134の駆動を停止させる。そして、制御部700が備えるカウンタ730がカウントを開始し、ROM72に記憶された所定時間に対応する規定数(カウント値)をカウントしたときに、モータ駆動部712がステージ移動モータ134を駆動する。
【0077】
また、周波数カウンタによって、カセット200が待機位置に戻ってきてからの時間を計測して、ROM72に記憶された所定時間に達したときに、モータ駆動部712がステージ移動モータ134を駆動させるようにすることもできる。
【0078】
そして、所定時間が経過した後に、
図18(b)にも示すように、ステージ111をY1方向に移動させてカセット200をY1方向に移動させながら、ヘッド122から液体を吐出させて、カセット200に保持されている布地400に対する2回目の印刷(後行の印刷)を行う(S111)。
【0079】
ここでは、2回目の印刷が終わったときに、ステージ111が
図19に示すようにカセット200をステージ111に着脱する着脱位置になるまでステージ111をY1方向に移動させている。
【0080】
この2回目の印刷が終わったか否かを判別し(S112)、2回目の印刷が終わったときには、この処理を終了する。そして、2回目の印刷が終わった後、カセット200をステージ111から取り外して、前述したように加熱装置500による加熱工程に移行することになる。
【0081】
以上のように、布地400を保持したカセット200を印刷装置本体100内のステージ111に着脱可能に装着する工程と、ステージ111を、カセット200をステージ111に着脱する着脱位置と反対の待機位置に移動させた後、ステージ111を着脱位置側に向けて移動させて先行の印刷を行う工程と、先行の印刷が終了した後ステージ111を待機位置に復帰移動させ、待機位置で所定時間停止させる工程と、所定時間経過後に、ステージ111を着脱位置側に向けて移動させて先行の印刷を行う工程とを行って、布地400に重ね合わせ印刷を行う。
【0082】
ここで、先行の印刷に使用するデータと後行の印刷に使用するデータを同じとすることで、重ね合わせて印刷によって濃度を高めることができる。また、下地処理の印刷と目的画像の印刷というように、先行の印刷に使用するデータと後行の印刷に使用するデータが異なる構成とすることもできる。
【0083】
なお、ここでは2回の印刷を行う例で説明しているが、3回以上の重ね合わせ印刷を行うこともできる。
【0084】
このように、印刷対象物に対して複数回の印刷による重ね合わせ印刷を行うとき、先行の印刷に重ねわせる後行の印刷を行う前に、印刷対象物を保持する保持部材の移動を所定時間停止させる制御をすることで、保持部材の移動に伴う振動等が減衰した後後行の印刷を開始することができ、複数回の印刷のずれが低減して、印刷品質が向上する。
【0085】
つまり、本実施形態では、1回目の印刷を終えた後に、ステージ111を着脱位置から待機位置に移動させてから、2回目の印刷を行う。着脱位置から待機位置へステージ111を移動させるときには印刷を行わないので、印刷時のステージ111の移動速度よりも、速い速度でステージ111を移動させている。そのため、ステージ111が待機位置へ戻ったときには、ステージ111に搭載されたカセット200には振動が生じる。
【0086】
そこで、ステージ111が待機位置に戻った後、先行の印刷に対して後行の印刷が位置ずれしない程にカセット200の振動が減衰するまで、ステージ111の移動を停止させる。
【0087】
本実施形態では、ステージ111に直接布地400が保持されているのではなく、ステージ111に着脱可能に保持されたカセット200に布地400が保持されている。カセット200にステージ111の移動に伴う振動が起こりやすいので、振動が減衰するまで所定時間ステージ111の移動を停止することが特に有効である。
【0088】
次に、本発明の第2実施形態に係る印刷装置の重ね合わせ印刷の制御について
図20のフロー図を参照して説明する。
【0089】
本実施形態では、ステップS201ないしステップS206において、第1実施形態のステップS101ないしステップ106と同様の処理を行って1回目の印刷を行い、1回目の印刷が終了したか否かを判別する(S207)。
【0090】
ここで、1回目の印刷(先行の印刷)が終了したときには、カセット有無センサ161がカセット200を検知している状態が継続しているか否かを判別する(S209)。
【0091】
ここで、カセット200を検知している状態が継続しているときには、2回目の印刷が有るか否かの判別(S209)に移行し、2回目の印刷が有れば、前記第1実施形態と同様に、2回目の印刷(後行の印刷)の動作に移行する(S210~S213)。
【0092】
これに対し、カセット200を検知している状態が継続していないとき、つまり、カセット有無センサ161が1度でもカセット200がない状態を検知したときには、そのまま印刷の動作を終了し、2回目の印刷には移行しない。
【0093】
すなわち、1回目の印刷終了後にカセット200がステージ111から一度でも外されると、再度、カセット200がステージ111に装着されたとしても、1回目の印刷を行ったときとはカセット200とステージ111の位置関係がずれるおそれがある。
【0094】
したがって、1度でもカセット200がない状態が検知されたときには2回目の印刷には移行しないようにしている。
【0095】
次に、本発明の第3実施形態に係る印刷装置の重ね合わせ印刷の制御について
図21のフロー図を参照して説明する。
【0096】
第1実施形態では、1回目の印刷を終えた後に、ステージ111をY2方向に移動させて、カセット200を待機位置に戻した後に、2回目の印刷を行っていた。これにより、カセット200が待機位置まで移動することに伴う振動が生じていたので、第1実施形態ではステージ111の移動を所定時間停止させている。
【0097】
これに対し、本実施形態では、ステップS301ないしステップS308において、第1実施形態のステップS101ないしステップ108と同様の処理を行って1回目の印刷を行う。そして、1回目の印刷が終了した後、2回目の印刷があるか否かを判別する。(
【0098】
ここで、2回目の印刷があるときには、カセット200をY2方向に移動させて2回目の印刷を行う(S309)。そして、2回目の印刷が終了したか否かを判別し(S310)、2回目の印刷が終了したときには、カセット200をY1方向に移動し、初期位置の戻す(S311)。
【0099】
すなわち、第1実施形態とは異なり、1回目の印刷を行った後2回目の印刷を行う前に、カセット200の移動を所定時間停止させることなく、ステージ111を着脱位置から待機位置に向けてY2方向に間欠的に移動させながら、2回目の印刷を行う(
図18(a)参照)。
【0100】
ここで、印刷動作中はステージ111を間欠的に移動させていることで、1回目の印刷を終えてカセット200が着脱位置に移動した時点で、カセット200には略振動が生じていない状態なる。したがって、振動を減衰させるために、カセット200の移動を所定時間停止させることなく、2回目の印刷を行うことができる。
【0101】
そして、2回目の印刷終了時点で、カセット200は待機位置に移動しているため、2回目の印刷が終了した後は、カセット200を着脱位置へ移動させている。
【0102】
なお、上記実施形態では、印刷対象物がTシャツなどの布地である場合について説明しているが、例えば布地を含めて、印刷対象物が媒体(メディア)である場合にも本発明を同様に適用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 印刷装置
100 印刷装置の装置本体
110 往復移動手段
111 ステージ(受け部材)
112 印刷手段
116 スライダ部
122 ヘッド
200 カセット(保持部材)
400 布地
500 加熱装置