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特許7091743情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および機械装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および機械装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 23/02 20060101AFI20220621BHJP
   G05B 19/4063 20060101ALI20220621BHJP
   G05B 19/18 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G05B23/02 301Z
G05B19/4063 L
G05B19/18 W
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018050224
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019160250
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】後藤 理
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/134772(WO,A1)
【文献】特開2016-215333(JP,A)
【文献】特開2018-5855(JP,A)
【文献】特開2018-25945(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 23/02
G05B 19/4063
G05B 19/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知手段と、
前記検知手段が出力する物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成手段と、
前記特徴情報を複数記憶する記憶手段と、
前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記対象装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報のそれぞれを時間方向に平均して圧縮することで1つのデータに統合するデータ管理手段と、
前記データ管理手段で統合した前記1つのデータを表示部に表示させる表示制御手段と、
を有する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記データ管理手段は、
ユーザからの指示に応じて、前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報を1つに統合する処理に替えて、前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報の推移を動的なデータに統合し、
前記表示制御手段は、
前記データ管理手段で動的に統合した前記動的なデータを前記表示部に動的に表示させる、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知手段と、
前記検知手段が出力する物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成手段と、
前記対象装置の動作に関連するコンテキスト情報を生成するコンテキスト情報生成手段と、
前記コンテキスト情報生成手段が生成する前記コンテキスト情報と関連付けて前記特徴情報生成手段が生成する特徴情報を複数記憶する記憶手段と、
前記コンテキスト情報と関連付けられた複数の特徴情報に基づくデータを表示部に表示させる表示制御手段と、を有する情報処理装置において、
前記コンテキスト情報生成手段は、
前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記対象装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報のそれぞれを時間方向に平均して圧縮することで1つのデータに統合し、
前記表示制御手段は、
前記コンテキスト情報生成手段で統合した前記1つのデータを前記表示部に表示させる
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項4】
前記コンテキスト情報は、
前記対象装置に関する情報、前記対象装置に含まれるパーツに関する情報、前記対象装置の動作に関する情報、前記対象装置の環境に関する情報、及び前記対象装置の操作者に関する情報の少なくともいずれかを含み、
前記表示制御手段は、
前記複数の特徴情報とともに、前記対象装置に関する情報、前記対象装置に含まれるパーツに関する情報、前記対象装置の動作に関する情報、前記対象装置の環境に関する情報、及び前記対象装置の操作者に関する情報の少なくともいずれかを前記表示部に表示する
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知手段と、
前記検知手段が出力する物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成手段と、
前記特徴情報を複数記憶する記憶手段と、
前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記対象装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報の推移を動的なデータに統合するデータ管理手段と、
前記データ管理手段で動的に統合した前記動的なデータを表示部に動的に表示させる表示制御手段と、を有する
ことを特徴とする情報処理装置。
【請求項6】
対象装置から情報を得て情報を処理する情報処理装置が行う情報処理方法であって、
前記対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで出力される物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成ステップと、
前記特徴情報を複数記憶する記憶ステップと、
前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記対象装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報のそれぞれを時間方向に平均して圧縮することで1つのデータに統合する統合ステップと、
前記統合した前記1つのデータを表示部に表示させる表示制御ステップと、を行う
ことを特徴とする情報処理方法。
【請求項7】
コンピュータに、
対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知ステップと、
前記検知ステップで出力される物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成ステップと、
前記特徴情報を複数記憶する記憶ステップと、
前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記対象装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報のそれぞれを時間方向に平均して圧縮することで1つのデータに統合する統合ステップと、
前記統合した前記1つのデータを表示部に表示させる表示制御ステップと、を実行させるための、
プログラム。
【請求項8】
機械的な動作を行う機械装置に対して、
機械装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知手段と、
前記検知手段が出力する物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成手段と、
前記特徴情報を複数記憶する記憶手段と、
前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記機械装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報のそれぞれを時間方向に平均して圧縮することで1つのデータに統合するデータ管理手段と、
前記データ管理手段で統合した前記1つのデータを表示部に表示させる表示制御手段と、を設けた
ことを特徴とする機械装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および機械装置に関する。
【背景技術】
【0002】
所定の動作を行う装置において、装置の異常等を検知するため、装置のモータの電流値の情報、振動、または力等の物理量を検知してスペクトル表示する方法が既に知られている(特許文献1)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、所定時刻のびびりの推定情報と検知したびびりのスペクトルを表示するのみで、多面的な評価を行うことができない。
【0004】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、装置状態を表す複数の特徴情報が時系列で参照でき、多面的な評価が可能な情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および機械装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、対象装置の動作に応じて変化する物理量を検知する検知手段と、前記検知手段が出力する物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成手段と、前記特徴情報を複数記憶する記憶手段と、前記記憶した複数の特徴情報から、複数の区間を含むサイクルを繰り返す前記対象装置における前記サイクルが異なる前記複数の特徴情報のそれぞれを時間方向に平均して圧縮することで1つのデータに統合するデータ管理手段と、前記データ管理手段で統合した前記1つのデータを表示部に表示させる表示制御手段と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、装置状態を表す複数の特徴情報が時系列で参照でき、多面的な評価が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、実施形態にかかる診断システムの全体構成の一例を機能ブロックで示す図である。
図2図2は、実施形態にかかる加工機のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3図3は、実施形態にかかる診断装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4図4は、実施形態にかかる診断装置が検知情報から抽出した特徴情報を周波数成分で模式的に例示する図である。
図5図5は、実施形態にかかる診断装置が加工工程ごとに区分けした検知情報および特徴情報を模式的に例示する図である。
図6図6は、実施形態にかかる診断装置が同一サイクルごとに統括した特徴情報を模式的に例示する図である。
図7図7は、実施形態にかかる診断装置が表示させる履歴画面の一例を示す図である。
図8図8は、実施形態にかかる診断装置の情報処理の手順の一例を示すフロー図である。
図9図9は、実施形態の変形例1にかかる診断装置が表示させる履歴画面の一例を示す図である。
図10図10は、実施形態の変形例1にかかる診断装置の情報処理の手順の一例を示すフロー図である。
図11図11は、実施形態の変形例3にかかる診断装置によって取得されるコンテキスト情報の一例を示す図である。
図12図12は、実施形態の変形例3にかかる診断装置から得られる情報の利用例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図1図12を参照しながら、本発明に係る情報処理装置、情報処理方法、プログラム、および機械装置の実施形態を詳細に説明する。また、以下の実施形態によって本発明が限定されるものではなく、以下の実施形態における構成要素には、当業者が容易に想到できるもの、実質的に同一のもの、およびいわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、以下の実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換、変更および組み合わせを行うことができる。
【0009】
(診断システムの全体構成)
図1は、実施形態にかかる診断システム1の全体構成の一例を機能ブロックで示す図である。診断システム1が備える情報処理装置としての診断装置100は、対象装置としての加工機200の動作に応じて変化する物理量を検知する検知手段としての検知情報受信部112と、検知情報受信部112が出力する物理量情報の特徴情報を生成する特徴情報生成手段としての特徴抽出部102aと、特徴情報を複数記憶する記憶手段としての記憶部113と、複数の特徴情報から任意の特徴情報を選択する選択手段としての表示制御部104と、を有する情報処理装置において、任意の特徴情報を選択的に出力する。以下に、実施形態の診断システム1の詳細について説明する。
【0010】
図1に示すように、実施形態の診断システム1は、加工機200および加工機200に接続される診断装置100を備える。加工機200は、工具を用いて、加工対象に対して切削、研削または研磨等の加工を行う工作機械である。加工機200は、診断装置100による診断の対象となる対象装置の一例である。診断装置100は、加工機200に対して通信可能となるように接続され、加工機200の動作について異常の診断を行う装置である。
【0011】
対象装置(機械装置)としての加工機200は、数値制御部201と、通信制御部221と、駆動制御部223と、駆動部224と、検知部225と、を有する。
【0012】
数値制御部201は、駆動部224による加工を数値制御(NC:Numerical Control)により実行する機能部である。例えば、数値制御部201は、駆動部224の動作を制御する数値制御データを生成して出力する。また、数値制御部201は、工具を駆動させる駆動部224の動作状態を示すコンテキスト情報としての加工情報として、例えば、工具の加工対象に対する送り動作から実際の加工処理が終了するまでの区間(切削送り区間)を示すON/OFF信号である切削送り信号を通信制御部221に出力する。コンテキスト情報とは、加工機200の動作の種類ごとに複数定められる情報である。コンテキスト情報は、上記の切削送り信号のほか、例えば、加工機200の識別情報、駆動部224の識別情報(例えば、工具の識別情報等)、駆動部224に駆動される工具の径、および工具の材質等のコンフィギュレーション情報、ならびに、駆動部224の動作状態、駆動部224の使用開始からの累積使用時間、駆動部224に加わる負荷、駆動部224の回転数、駆動部224の加工速度等の加工条件の情報等を示す情報を含んでいてもよい。
【0013】
数値制御部201は、例えば、現在の加工機200の動作に対応するコンテキスト情報を、逐次、通信制御部221を介して診断装置100に送信する。数値制御部201は、加工対象を加工する際、加工の工程に応じて、駆動する駆動部224の種類、または駆動部224の駆動状態(回転数、回転速度等)を変更する。数値制御部201は、動作の種類を変更するごとに、変更した動作の種類に対応するコンテキスト情報を、通信制御部221を介して診断装置100に逐次送信する。
【0014】
通信制御部221は、診断装置100等の外部装置との間の通信を制御する機能部である。通信制御部221は、例えば、現在の動作に対応するコンテキスト情報を診断装置100に送信する。
【0015】
駆動制御部223は、数値制御部201により求められた数値制御データに基づいて、駆動部224を駆動制御する機能部である。
【0016】
駆動部224は、駆動制御部223による駆動制御の対象となる機能部である。駆動部224は、駆動制御部223による制御によって工具を駆動する。駆動部224は、駆動制御部223によって駆動制御されるアクチュエータ(モータ)等である。なお、駆動部224は、加工に用いられ、数値制御の対象となるものであればどのようなアクチュエータであってもよい。また、駆動部224は、2以上備えられていてもよい。
【0017】
検知部225は、加工機200で発生する物理量を検知し、検知した物理量の情報を検知情報(センサデータ)として診断装置100へ出力する機能部である。加工機200で発生する物理量としては、加工機200で発生する振動または音等である。このような振動または音等は、例えば、加工機200に設置された工具と加工対象とが加工動作中に接触することにより発生する。または、このような振動または音等は、工具もしくは加工機200自体により発せられる。検知部225の個数は任意である。例えば、同一の物理量を検知する複数の検知部225を備えてもよいし、相互に異なる物理量を検知する複数の検知部225を備えてもよい。例えば、加工に用いる工具である刃の折れ、および、刃のチッピング等が発生すると、加工時の振動や音が変化する。このため、検知部225で振動データや音響データを検知し、正常な振動や音を判断するモデル等を用いて判断することにより、加工機200の動作の異常が検知可能となる。
【0018】
情報処理装置としての診断装置100は、通信制御部111と、検知情報受信部112と、加工情報取得部101と、診断部102と、データ管理部103と、記憶部113と、入力部114と、表示制御部104と、表示部115と、を有する。
【0019】
通信制御部111は、加工機200との間の通信を制御する機能部である。例えば、通信制御部111は、加工機200の数値制御部201から、通信制御部221を介して、コンテキスト情報を受信する。
【0020】
検知手段としての検知情報受信部112は、加工機200に設置された検知部225から検知情報を受信する機能部である。
【0021】
加工情報取得部101は、加工機200から、通信制御部111により受信されたコンテキスト情報(加工情報)を取得する機能部である。
【0022】
診断部102は、特徴抽出部102a、モデル生成部102b、及び異常判定部102cを備え、加工機200の動作の異常等を判定する機能部である。
【0023】
特徴情報生成手段としての特徴抽出部102aは、異常判定部102cによる判定等で用いる特徴情報を検知情報から抽出する機能部である。特徴情報は、検知情報の特徴を示す情報であればどのような情報であってもよい。
【0024】
モデル生成部102bは、加工が正常に行われたことの判定に用いられるモデルを生成する機能部である。モデルは、例えばコンテキスト情報ごとに生成される。なお、モデルを外部装置で生成する場合は、モデル生成部102bは備えられなくてもよい。
【0025】
異常判定部102cは、特徴抽出部102aにより抽出された特徴情報と、モデル生成部102bにより生成されたコンテキスト情報ごとのモデルと、を用いて、加工機200の動作が正常であるか否かを判定する機能部である。
【0026】
コンテキスト情報生成手段としてのデータ管理部103は、データ生成部103a及びデータ統括部103b備え、検知情報、コンテキスト情報、および特徴情報等を加工して管理する機能部である。
【0027】
データ生成部103aは、コンテキスト情報から加工機200における加工工程ごとの切削送り区間を算出する。また、データ生成部103aは、検知情報受信部112により取得された検知情報や、特徴抽出部102aが抽出した特徴情報を加工工程ごとに区分けする。
【0028】
データ統括部103bは、データ生成部103aにより生成されたデータを時系列データとして統括する機能部である。
【0029】
記憶手段としての記憶部113は、検知情報受信部112により取得された検知情報をコンテキスト情報と関連付けて記憶する機能部である。また、記憶部113は、特徴抽出部102aにより抽出された特徴情報をコンテキスト情報と関連付けて記憶する。また、記憶部113は、モデル生成部102bにより生成されたモデルをコンテキスト情報と関連付けて記憶する。
【0030】
入力部114は、文字および数字等の入力、各種指示の選択、ならびにカーソルの移動等の操作を行う機能部である。
【0031】
選択手段としての表示制御部104は、表示部115の表示動作を制御する機能部である。具体的には、表示制御部104は、例えば、異常判定部102cによる異常判定の結果等を、表示部115に表示させる。また、表示制御部104は、データ統括部103bにより統括された時系列データ等を、表示部115に表示させる。表示部115は、表示制御部104による制御に従って各種情報を表示する機能部である。
【0032】
なお、診断装置100および加工機200それぞれの機能部は、機能を概念的に示したものであって、このような構成に限定されるものではない。例えば、図1で独立した機能部として図示した複数の機能部を、1つの機能部として構成してもよい。一方、図1の1つの機能部が有する機能を複数に分割し、複数の機能部として構成してもよい。
【0033】
また、加工機200と診断装置100とは、どのような接続形態で接続されてもよい。例えば、加工機200と診断装置100とは、専用の接続線、第5世代移動通信システム、有線LAN(Local Area Network)等の有線ネットワーク、または、無線ネットワーク等により接続されていてもよい。
【0034】
また、図1には1台の加工機200が診断装置100に接続されている例が示されているが、これに限定されるものではなく、複数台の加工機200が診断装置100に対して、それぞれ通信可能となるように接続されていてもよい。
【0035】
(加工機のハードウェア構成)
次に、図2を用い、実施形態の加工機200のハードウェア構成例について説明する。図2は、実施形態にかかる加工機200のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0036】
図2に示すように、加工機200は、CPU(Central Processing Unit)20と、ROM(Read Only Memory)20aと、RAM(Random Access Memory)20bと、通信I/F(インターフェース)21と、駆動制御回路23と、がバス2Bで通信可能に接続された構成となっている。
【0037】
CPU20は、加工機200の全体を制御する演算装置である。CPU20は、例えば、RAM20bをワークエリア(作業領域)としてROM20a等に格納されたプログラムを実行することで、加工機200全体の動作を制御し、加工機能を実現する。図1の数値制御部201は、例えば、CPU20で動作するプログラムによって実現される。
【0038】
通信I/F21は、診断装置100等の外部装置との通信に用いられるインターフェースである。通信I/F21は、例えば、TCP(Transmission Control Protocol)/IP(Internet Protocol)に対応したNIC(Network Interface Card)等である。図1の通信制御部221は、例えば、通信I/F21、およびCPU20で動作するプログラムによって実現される。
【0039】
駆動制御回路23は、モータ24の駆動を制御する回路である。モータ24は、加工に用いる工具24aを駆動する。工具24aには、ドリル、エンドミル、バイトチップ、砥石等、および、加工対象が載置され加工に合わせて移動されるテーブル等が含まれる。図1の駆動制御部223は、例えば、駆動制御回路23によって実現される。図1の駆動部224は、例えば、モータ24によって実現される。
【0040】
センサ25は、例えば、マイクデバイス、振動センサ、加速度センサ、またはAE(Acoustic Emission)センサ等で構成され、例えば、振動または音等が検出できる工具の近傍に設置される。センサ25が接続されたセンサアンプ25aは、診断装置100に通信可能に接続されている。センサ25およびセンサアンプ25aは、加工機200に予め備えられていてもよく、または、完成機械である加工機200に対して後から取り付けられてもよい。また、センサアンプ25aは、加工機200に設置されることに限定されるものではなく、診断装置100側に設置されていてもよい。図1の検知部225は、例えば、センサ25及びセンサアンプ25aによって実現される。
【0041】
なお、図2に示したハードウェア構成は一例であり、加工機200がすべての構成機器を備えている必要はなく、また、他の構成機器を備えていてもよい。例えば、図1に示す数値制御部201および通信制御部221は、図2に示すCPU20にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよく、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現してもよく、または、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
【0042】
(診断装置のハードウェア構成)
次に、図3を用い、実施形態の診断装置100のハードウェア構成例について説明する。図3は、実施形態にかかる診断装置100のハードウェア構成の一例を示す図である。
【0043】
図3に示すように、診断装置100は、CPU10と、ROM10aと、RAM10bと、通信I/F11と、センサI/F12と、補助記憶装置13と、入力装置14と、ディスプレイ15と、がバス1Bで通信可能に接続された構成となっている。
【0044】
CPU10は、診断装置100の全体を制御する演算装置である。CPU10は、例えば、RAM10bをワークエリア(作業領域)としてROM10a等に格納されたプログラムを実行することで、診断装置100全体の動作を制御し、診断機能を実現する。図1の加工情報取得部101、診断部102、データ管理部103、および表示制御部104は、例えば、CPU10で動作するプログラムによって実現される。
【0045】
通信I/F11は、加工機200等の外部装置との通信に用いられるインターフェースである。通信I/F11は、例えば、TCP/IPに対応したNIC等である。図1の通信制御部111は、例えば、図3に示す通信I/F11、およびCPU10で動作するプログラムによって実現される。
【0046】
センサI/F12は、加工機200に設置されたセンサ25からセンサアンプ25aを介して検知情報を受信するインターフェースである。図1の検知情報受信部112は、例えば、センサI/F12、およびCPU10で動作するプログラムによって実現される。
【0047】
補助記憶装置13は、診断装置100の設定情報、加工機200から受信された検知情報およびコンテキスト情報、OS(Operating System)、およびアプリケーションプログラム等の各種データを記憶するHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、またはEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性の記憶装置である。なお、補助記憶装置13は、診断装置100が備えるものとしているが、これに限定されるものではなく、例えば、診断装置100の外部に設置された記憶装置であってもよく、または、診断装置100とデータ通信可能なクラウド方式やオンプレミス方式等のサーバ装置が備えた記憶装置であってもよい。図1の記憶部113は、例えば、RAM10bおよび補助記憶装置13等によって実現される。
【0048】
入力装置14は、文字および数字等の入力、各種指示の選択、ならびにカーソルの移動等の操作を行うマウスまたはキーボード等の入力装置である。図1の入力部114は、例えば、入力装置14によって実現される。
【0049】
ディスプレイ15は、文字、数字、および各種画面および操作用アイコン等を表示するCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)、または有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。ディスプレイ15は、独立した構成を有していてもよく、タブレットやPC(Personal Computer)等に内蔵されていてもよい。図1の表示部115は、例えば、ディスプレイ15によって実現される。
【0050】
なお、図3に示したハードウェア構成は一例であり、診断装置100がすべての構成機器を備えている必要はなく、また、他の構成機器を備えていてもよい。例えば、図1に示した診断装置100の各機能部(加工情報取得部101、診断部102、データ管理部103、および表示制御部104)は、CPU10にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよく、IC等のハードウェアにより実現してもよく、または、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。また、診断装置100が加工機200の診断動作に特化し、診断結果を外部のサーバ装置等に送信する場合、入力装置14およびディスプレイ15は備えられていない構成としてもよい。
【0051】
(データ管理部の動作例)
次に、図4図7を用い、データ管理部103の動作例について説明する。
【0052】
所定の加工品を複数製作する場合などに、加工機200では複数の加工工程を含むサイクルが繰り返し行われることがある。このとき、切削送り信号等のコンテキスト情報とともに、加工機200における振動や音等のセンサデータ(検知情報)が、診断装置100によって取得される。診断部102の特徴抽出部102aは、検知情報から検知情報の特徴を示す特徴情報を抽出する。データ管理部103のデータ生成部103aは、切削送り信号から加工工程を判別し、特徴情報を加工工程ごとに区分けする。
【0053】
図4は、実施形態にかかる診断装置100が検知情報から抽出した特徴情報を周波数成分で模式的に例示する図である。図4の上段に示すように、振動センサやマイクデバイス等の検知部225からは、検知情報として、振動や音響等の周波数データが得られる。特徴抽出部102aは、例えば、検知情報が振動センサやマイクデバイスにより収集された周波数データである場合、エネルギー、周波数スペクトル、および、MFCC(メル周波数ケプストラム係数)等を特徴情報として抽出する。
【0054】
図4の下段に示すように、抽出される特徴情報が、周波数スペクトルである場合、特徴抽出部102aは、例えば、検知情報に対してフレームごとにフーリエ変換を行うことによって特徴情報を抽出する。ここで、フレームとは、検知情報の所定時間(例えば、20[ms]、40[ms]等)のデータ量を示し、例えば、特徴情報が、検知情報に対してフーリエ変換されることにより得られる周波数スペクトルである場合の窓長のデータ量に相当する。図5に示す特徴情報は、対応する検知情報のフレームの時間に関連付けられている。
【0055】
図5は、実施形態にかかる診断装置100が加工工程ごとに区分けした検知情報および特徴情報を模式的に例示する図である。図5に示すように、データ生成部103aは、コンテキスト情報に含まれる切削送り信号から、加工機200における1つの切削送り区間を1つの加工工程として識別し、また、個々の加工工程の区間長を算出する。また、例えば、工具の識別情報(工具ID)等からは加工に用いられた工具の種類が識別できる。また、加工工程における工作工程の管理に目的に応じて動作番号情報を付与してもよい。図5の例では、動作番号情報1番の加工(加工1)では工具Aが用いられ、動作番号情報6番および7番の加工(加工6,7)では工具Eが用いられている。また、コンテキスト情報に含まれるサイクル情報から、例えば、加工1~3,6,7が1つのサイクルに含まれることが識別できる。このように加工工程ごとに区分けされた特徴情報は、対応するコンテキスト情報に関連付けられて記憶部113に記憶される。記憶されたこれらの情報は、表示制御部104により適宜読み出して表示させることが可能である。その際、ユーザは、周波数、スペクトル、または加工工程等、図5にかかる情報の一部、または、全体を選択して表示させることができる。
【0056】
図6は、実施形態にかかる診断装置100が同一サイクルごとに統括した特徴情報を模式的に例示する図である。図6に示すように、データ統括部103bは、データ生成部103aにより生成されたデータを、例えば同一サイクル内の同一加工工程ごとの時系列データとして統括する。図6の例では、加工1~3,6,7を含むサイクルにおいて、同一加工工程である加工1,2,3,6,7ごとに、複数サイクル分の特徴情報が統括されている。このように統括された時系列データは、対応するコンテキスト情報に関連付けられて記憶部113に記憶される。記憶されたこれらの情報は、表示制御部104により適宜読み出して表示させることが可能である。その際、ユーザは、任意のサイクル番号、サイクル数を選択して、それらに対応する情報を表示させることができる。
【0057】
図7は、実施形態にかかる診断装置100が表示させる履歴画面の一例を示す図である。図7に示すように、表示制御部104は、例えば診断装置100のユーザからの指示にしたがって、データ統括部103bが統括したデータを、例えば同一サイクル内の同一加工工程ごとに並べて表示する。図7の例では、加工1~3,6,7を含むサイクルにおいて、加工2の加工工程のサイクル1~1000における時系列データが並べて表示されている。
【0058】
ユーザは、加工工程を示す動作番号情報や、表示させたいサイクルの番号等を指定して、このような履歴画面を表示させることができる。これらのデータから、ユーザは様々な情報を得ることができる。例えば、図7の例では、サイクル初期には見られなかった中高域の周波数成分が、サイクル500以降に強く出ている。このことから、通常とは違う現象が起きている可能性が示唆される。
【0059】
(診断装置の情報処理の例)
次に、図8を用い、診断装置100による情報処理の例について説明する。図8は、実施形態にかかる診断装置100の情報処理の手順の一例を示すフロー図である。
【0060】
図8に示すように、ステップS101において、加工情報取得部101は、加工機200からコンテキスト情報を取得する。ステップS102において、検知情報受信部112は、検知部225から検知情報を受信する。
【0061】
ステップS103において、特徴抽出部102aは、受信された検知情報から特徴情報を抽出する。
【0062】
ステップS104において、データ生成部103aは、取得されたコンテキスト情報から、加工工程を識別し、個々の加工工程の区間長を算出する。また、データ生成部103aは、特徴情報を加工工程ごとに分割する。ステップS105において、データ統括部103bは、同一サイクル内の同一加工工程ごとに時系列データとしてデータを統括する。
【0063】
ステップS106において、データ管理部103は、時系列データを表示させるため、ユーザによってデータ表示範囲等が選択されたか否かを判定する。ユーザによるデータ表示の指示がなければ(No)、ステップS101に戻って、データの収集を継続する。
【0064】
ユーザによるデータ表示の指示があったときは(Yes)、ステップS107において、表示制御部104が表示部115に、選択された表示範囲の時系列データを並べて表示させる。
【0065】
以上により、診断装置100による情報処理が終了する。
【0066】
例えば、特開第2006-123013号公報には、機械の工具付近に設けたカメラにより撮影した映像により工具の摩耗を検知する工作機械について記載されている。しかしながら、切削加工等を行う工作機械においては、潤滑剤や冷却剤としてクーラントを工具付近に噴出しながら加工を行う。このため、カメラ等により直接的に工具の摩耗等を検知することは非常に困難であり、工作機械内で発生する振動等の物理量を用いた間接的な異常検知に頼らざるを得ない。
【0067】
また、例えば、特許文献1の振動検出装置においては、切削処理の振動把握のため、モータの回転量とトルクとに基づいて外乱を推定する外乱オブザーバで、びびりを検出する。しかしながら、特許文献1に記載された技術では、びびりの推定情報と検知したびびりのスペクトルを表示するのみである。これだけの情報で工作機械の情報を把握しようとしても、多面的で充分な評価は困難である。
【0068】
実施形態の診断装置100においては、データ生成部103aにより加工され、データ統括部103bにより統括されたデータが記憶部113に蓄積され、表示制御部104により時系列データとして表示される。これにより、ユーザは、サイクルの異なるデータを表示して比較することができる。工具に摩耗や微小な欠け等が生じても、検知情報や特徴情報には、ごく微細な変化しか生じないことが多い。例えば特徴情報を時系列データとして表示することで、このようなごく微細な変化であってもユーザが検知しやすくなる。これにより、ユーザは、加工機200の徐々にしか推移しない経時変化を把握し、後に加工機200の異常や故障に繋がる微細な変化にも早期に気づくことができる。
【0069】
(変形例1)
次に、図9および図10を用いて、実施形態の変形例1の診断装置について説明する。実施形態の変形例1の診断装置においては、履歴画面を表示する際、データ統括部が時系列データを1つのグラフに統合する点が、上述の実施形態とは異なる。
【0070】
図9は、実施形態の変形例1にかかる診断装置が表示させる履歴画面の一例を示す図である。図9に示すように、実施形態の変形例1の診断装置においては、ユーザにより履歴画面の表示が指示されると、データ統括部が時系列データを1つのグラフに圧縮し、統合する。つまり、個々のデータの表示幅を圧縮することで、1つのグラフに統合する。または、所定長のデータの一部分だけを抜粋して統合してもよい。圧縮には、サイクル毎の加工データの平均、和、積、特定の部分抽出などを用いてもよい。図9の例では、サイクル毎のデータを時間方向に平均し圧縮することで、サイクル1~1000までの時系列データが、1つのグラフに統合されている。このように、ユーザは、異なるサイクルのデータを圧縮(合算)して選択表示させることができる。
【0071】
図10は、実施形態の変形例1にかかる診断装置の情報処理の手順の一例を示すフロー図である。図10に示すように、ステップS101~S106は、実施形態の診断装置100における図8のステップS101~S106と同様の手順で行われる。
【0072】
ステップS106において、ユーザによるデータ表示の指示があったときは(Yes)、ステップS207において、データ統括部は、ユーザによる指定範囲のデータを統合する。ステップS208において、表示制御部が表示部に、統合されたデータを一括して表示させる。
【0073】
以上により、実施形態の変形例1の診断装置による情報処理が終了する。
【0074】
このようにデータを統合することにより、より多くのデータを1つのグラフにまとめて表示させることができる。つまり、より多くの情報を一括して表示することができるので、ユーザは、より豊富な情報に基づき加工機の状態を把握することができる。
【0075】
なお、実施形態の変形例1の診断装置においては、複数のデータを1つのグラフに統合して表示させるものとしたが、これに限られない。データ統括部は、複数のデータの推移を動的に統括し、表示制御部がこれをアニメーションのように動的に表示させてもよい。
【0076】
(変形例2)
上述の実施形態では、診断装置100の表示制御部104が表示部115に各種データを表示させるものとしたが、データの出力手法はこれに限られない。診断装置100に接続されるプリンタ等に、各種データがプリントアウトされるようにしてもよい。その他、スピーカの音響による出力、ランプの点灯などもデータ出力手法として採用され得る。
【0077】
上述の実施形態では、検知情報は、例えば、振動データまたは音響データ等であるとしたが、電流値、負荷、トルク、力、温度、ツールなどのパーツと測定対象との距離、画像等、他のデータであっても検知情報として用いることができる。これらの検知情報(物理量)は、例えば、加工ツール、軸受け、モータ、ポンプ(コンプレッサ)、加工対象物、加工対象物や工具の保持部材(ホルダ)等から得られる。
【0078】
上述の実施形態では、診断対象の装置を例えば加工機200であるとしたが、旋盤機、組立機、測定機、検査機、または洗浄機等の機械が対象装置であってもよい。
【0079】
なお、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供するように構成してもよい。
【0080】
また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、フレキシブルディスク(FD)、CD-R(Compact Disk-Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録してコンピュータ・プログラム・プロダクトとして提供するように構成してもよい。
【0081】
また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成してもよい。
【0082】
また、上述の実施形態および各変形例の診断システムで実行されるプログラムは、上述した各機能部を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU(プロセッサ)がROMからプログラムを読み出して実行することにより上述の各機能部が主記憶装置上にロードされ、各機能部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0083】
(変形例3)
上述の実施形態では、診断装置100は、コンテキストデータのうち、主に切削送り信号を用いて、種々のデータ加工を行うこととしたが、これに限られない。上述のように、コンテキスト情報には、種々の情報を含めることができ、取得されたこれらの情報を種々に活かすことができる。
【0084】
図11は、実施形態の変形例3にかかる診断装置によって取得されるコンテキスト情報の一例を示す図である。具体的には、コンテキスト情報は、工作機械等のメーカー、加工機、旋盤機等の機械の種類、機械のシリアル番号等、工作機械等に関する情報を含んでいてよい。また、コンテキスト情報は、加工ツールのメーカーや種類、ロット番号、識別番号、ホルダ、工具ID等、工作機械等に付随するパーツの情報を含んでいてよい。また、コンテキスト情報は、動作番号情報や、サイクル情報、ステップ情報、加工条件等に関する情報を含んでいてよい。また、コンテキスト情報は、日、時、秒、ms等の時刻や、状況情報、環境情報等、工作機械等が置かれた状況を示す情報を含んでいてよい。また、コンテキスト情報は、機械操作者、所属組織等の情報を含んでいてよい。
【0085】
これらのコンテキスト情報は、例えば、加工機等の対象装置から得られた検知情報や特徴情報等とともに、選択的に表示されることができる。つまり、種々のコンテキスト情報から、ユーザは、表示させたい情報を選択し、表示することができる。また、種々のコンテキスト情報の中から所定の情報を指定することで、膨大なデータの中から所望のデータを選択し、表示させる際に有用である。種々のコンテキスト情報のうち、いずれを記録するかを選択できるようにしてもよい。このように、種々のコンテキスト情報を、工作機械等の状態を示す検知情報と共に取得し、統括することで、より包括的な情報が得られる。
【0086】
図12は、実施形態の変形例3にかかる診断装置から得られる情報の利用例を示す図である。図12に示すように、例えば複数のメーカー50がそれぞれ提供する加工機、旋盤機、洗浄機等のユーザ60がそれぞれ所有する機械70の種々の情報を蓄積センタ30に集約させることができる。これらのユーザ60は、1社内における各工場等であってもよいし、協業状態にある複数の企業等であってもよい。
【0087】
蓄積センタ30は、ハードディスク31およびデータサーバ32(クラウド方式でもオンプレミス方式でもよい)を有し、データ圧縮部33、データ伸長・復元部34等の機能部を有する。このようなデータの圧縮機能および復元機能は、膨大な量のデータを蓄積するうえで有用である。蓄積センタ30には、例えば蓄積されたデータを解析する解析センタ40が付随している。解析センタ40は、データを解析するため、データ選択的抽出部41、データ表示部42、AI分析部43、故障予測部44、異常検知部45、状態検知部46等の機能部のうち、少なくとも1つまたは幾つかあるいは全部を有する。
【0088】
これらの蓄積センタ30および解析センタ40は、複数メーカー50の機械を所有し各ユーザ60サイトで使用する1社により運用されていてもよい。または、蓄積センタ30および解析センタ40は、協業状態にあるユーザ60やメーカー50等により運用されていてもよい。
【0089】
(変形例4)
上述の実施形態では、診断対象の装置を例えば加工機200、その他の工作機械としたが、診断対象の機械装置はこれに限られない。工場内で使用される機械類から種々の情報を得たり、発電所のタービン等から情報を得たりすることで、施設全体を診断対象とすることができる。このときのコンテキスト情報としては、上記に挙げた種々の情報のほか、例えば、時刻情報やGPS(Global Positioning System)による位置情報等がある。時刻情報や位置情報等によって、例えば、加工サイクルによる時間帯比較や、加工機械のサイトによる比較をしやすくなる。
【0090】
また、診断対象の機械装置は、例えば、自動車や航空機、ロケット等の移動物であってもよい。例えば、自動車を例にとって以下に詳細を説明する。
【0091】
診断対象が自動車である場合、装置により繰り返される区間を示すコンテキスト情報としては、例えば、時刻情報やGPSによる位置情報等がある。または、コンテキスト情報は、フットペダルの操作を示す信号、ギアチェンジを示す信号等、自動車の状態が変わるタイミングで発せられる信号等であってもよい。装置の動作に応じて変化する物理量(検知情報)としては、例えば、アクセルの踏み込み量、エネルギー消費量等がある。これらの情報を用いる例について、以下に幾つかを示す。
【0092】
例えば、時刻情報により単位時間(秒、時間、日、月)あたりのエネルギー消費量を時系列データとして観察することで、日々のサイクルにおける自動車の状態や経時変化が把握しやすくなる。
【0093】
また例えば、GPSの位置情報に加え、加速度センサまたは地図情報に基づく高低差の情報と、アクセルの踏み込み量とを対比させて観察することで、例えば、下り坂であるにもかかわらずアクセルの踏み込み量が大きい等の異常な点に気付きやすくなる。
【0094】
また例えば、GPSの位置情報に加え、加速度センサまたは地図情報に基づく高低差の情報からエネルギー消費量の予測値を計算で求め、実際のエネルギー消費量と比較することで、何らかの異常に気づきやすくなる。
【0095】
以上、本発明の幾つかの実施形態および変形例で示したように、本発明は様々に適用可能である。
【符号の説明】
【0096】
1 診断システム
1B バス
10 CPU
10a ROM
10b RAM
11 通信I/F
12 センサI/F
13 補助記憶装置
14 入力装置
15 ディスプレイ
2B バス
20 CPU
20a ROM
20b RAM
21 通信I/F
23 駆動制御回路
24 モータ
24a 工具
25 センサ
25a センサアンプ
100 診断装置
101 加工情報取得部
102 診断部
102a 特徴抽出部
103 データ管理部
103a データ生成部
103b データ統括部
104 表示制御部
111 通信制御部
112 検知情報受信部
113 記憶部
114 入力部
115 表示部
200 加工機
201 数値制御部
221 通信制御部
223 駆動制御部
224 駆動部
225 検知部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0097】
【文献】特開2015-229216号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12