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特許7091748情報処理装置、画像形成装置、情報処理システムおよびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】情報処理装置、画像形成装置、情報処理システムおよびプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20220621BHJP
   B41J 29/38 20060101ALI20220621BHJP
   B41J 5/30 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G06F3/12 345
B41J29/38
B41J5/30 Z
G06F3/12 314
G06F3/12 388
G06F3/12 341
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018051759
(22)【出願日】2018-03-19
(65)【公開番号】P2019164556
(43)【公開日】2019-09-26
【審査請求日】2021-01-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100089118
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 宏明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 淳示
【審査官】松浦 かおり
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第09304719(US,B1)
【文献】特開2004-348622(JP,A)
【文献】特開2006-268797(JP,A)
【文献】特開2004-178097(JP,A)
【文献】特開2012-058795(JP,A)
【文献】米国特許第06407821(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/09- 3/12
B41J 5/00- 5/52
B41J 21/00-21/18
B41J 29/00-29/70
H04N 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のページのデータ、および前記複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、
前記再構成手段が再構成したデータを画像形成装置に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記判断手段は、
前記オブジェクトの種類に応じて、当該オブジェクトを共通オブジェクトとするか否かを変更可能である、
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記判断手段は、
前記共通オブジェクトの定義方法を、当該共通オブジェクトのサイズ、もしくは、前記画像形成装置の構成に応じて変更可能である、
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記判断手段は、
前記共通オブジェクトの定義方法を切り換える閾値を設定する設定手段を、更に備える、
ことを特徴とする請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
ネットワークまたは記録メディアを介して、複数のページのデータ、および前記複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルを受信する受信手段と、
前記ファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、
前記再構成手段が再構成したデータを印字する印字手段と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
複数のページのデータ、および前記複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、
前記再構成手段が再構成したデータを画像形成装置に送信する送信手段と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項7】
端末装置と、プリントサーバと、画像形成装置と、を備える情報処理システムであって、
前記端末装置または前記プリントサーバは、
複数のページのデータ、および前記複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、
前記再構成手段が再構成したデータを前記画像形成装置に送信する送信手段と、
を備えて、
前記画像形成装置は、
前記再構成手段が再構成したデータを印字する印字手段を備える、
情報処理システム。
【請求項8】
請求項1から請求項のいずれか1項に記載の情報処理装置を制御するコンピュータを、
複数のページのデータ、および前記複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段と、
前記抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する判断手段と、
前記判断手段の判断結果に基づいて、前記オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、
前記再構成手段が再構成したデータを画像形成装置に送信する送信印字手段と、
して機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、画像形成装置、情報処理システムおよびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
PDF(Portable Document Format)ファイルは、電子文書のフォーマットとして普及しており、MFP(Multifunction Peripheral Printer/Product)等の画像形成装置においても、PDFファイルを直接受信して印刷することができる。しかし、他のプリンタ言語、たとえばPCL(Printer Control Language)やPS(PostScript)で記述されたファイルは、受信したファイルを逐次処理可能なフォーマットであるのに対し、PDFファイルは、ファイルに含まれるオブジェクトに対してランダムにアクセス可能な形式のため、受信したファイルを一度ストレージに保持してから印刷している。そして、PDF印刷では、PDFファイルを一度ストレージに保持してから、1ページ目の印刷処理を行わなければならないため、排紙が開始されるまで少なくともファイルの受信時間は待たなければならなかった。
【0003】
例えば、特許文献1では、PDFファイルを印刷する際に、印刷装置に送信する前に、ファイルをページ毎に分割することで、PDFファイルのデータ転送時間とラスタライズを行う時間をオーバラップさせて、ユーザに短時間で印刷出力を提供する処理を開示している。特許文献1に開示された技術によると、PDFファイルを分割して1ページずつ処理するため、省メモリで印刷が可能になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、例えば特許文献1に開示された技術であっても、ページ分割によってファイルサイズが増大するという問題は解消できていなかった。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、PDFファイルを受信して印刷処理を実行する際に、ユーザの待機時間を短縮することが可能な情報処理装置、画像形成装置、情報処理システムおよびプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の情報処理装置は、複数のページのデータ、および前記複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段と、前記抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する判断手段と、前記判断手段の判断結果に基づいて、前記オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、前記再構成手段が再構成したデータを画像形成装置に送信する送信手段と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、PDFファイルを印刷する際、全てのデータをストレージに保持することなく印刷処理を開始することができる。また、PDFファイルの中身に応じて、フォントやカラースペース、イメージオブジェクト等のリソースの定義方法を変更することによって、データサイズが増えることによる印刷速度の低下を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、画像形成システムのシステム構成の一例を示すシステム構成図である。
図2図2は、端末装置のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。
図3図3は、画像形成装置のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。
図4図4は、画像形成装置の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図5図5は、端末装置およびクラウドサーバの機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
図6図6は、画像形成システムが行う印刷処理の流れを示す図である。
図7図7は、PDFファイルのデータ構造の一例を説明する図である。
図8図8は、PDFファイルをページ順に並べ替える処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図9図9は、図8におけるリソース情報の算出の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
図10図10は、先頭ページにオブジェクトを定義するとした場合の、オブジェクトの並べ替えの一例について説明する図である。
図11図11は、ページ毎にオブジェクトを定義するとした場合の、オブジェクトの並べ替えの一例について説明する図である。
図12図12は、ページ毎にオブジェクトを配置する際に許容するデータサイズの閾値を、操作パネルの操作によって定義する例について説明する図である。
図13図13は、画像形成装置が使用可能なストレージサイズに応じて、オブジェクトの定義方法を自動的に変更する例について説明する図である。
図14図14は、PDFファイルの印刷処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
図15図15は、ページ毎のPDF生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
図16図16は、ページ毎のPDF生成処理の具体例を示す図である。
図17図17は、画像形成装置の変形例のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。
図18図18は、画像形成装置の変形例の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0010】
(画像形成システムの説明)
図1は、本発明の一実施の形態に係る画像形成システム10のシステム構成の一例を示すシステム構成図である。画像形成システム10は、モバイル機器12aと、PC(Personal Computer)12bと、プリンタ14aと、MFP14bと、クラウドサーバ16と、を備える。なお、画像形成システム10は、情報処理システムの一例である。
【0011】
モバイル機器12aおよびPC12bは、端末装置の一例である。以後、モバイル機器12a、PC12bのうち任意のものを端末装置12と呼ぶ。プリンタ14aおよびMFP14bは、画像形成装置の一例である。以後、プリンタ14a、MFP14bのうち任意のものを画像形成装置14と呼ぶ。
【0012】
クラウドサーバ16は、通信機能を備える情報処理装置である。クラウドサーバ16は、端末装置12または画像形成装置14からの要求に基づいて、PDFファイル等の文書ファイルを管理し、画像形成装置14へ送信するプリントサーバとして機能する。また、クラウドサーバ16は、文書ファイルの変換機能を備える。なお、クラウドサーバ16の数は1個に限定されるものではなく、複数の異なるサーバがあってもよい。なお、クラウドサーバ16および端末装置12は、情報処理装置の一例である。
【0013】
端末装置12および画像形成装置14は、直接、あるいは無線LANルータ(不図示)を介して、LAN(Local Area Network)18aに接続している。端末装置12および画像形成装置14は、LAN18aからインターネット18bに接続して、インターネット18b上のクラウドサーバ16に接続する。以後、LAN18aおよびインターネット18bのうち任意のものを通信ネットワーク18と呼ぶ。通信ネットワーク18の全部又は一部には、Wi-Fi(Wireless Fidelity)(登録商標)等の無線通信が行われる箇所があってもよい。なお、通信ネットワーク18は、ネットワークの一例である。
【0014】
端末装置12およびクラウドサーバ16は、任意のアプリケーションまたはドライバを用いて、PDFファイル等のランダムアクセス形式の文書ファイルを生成する。端末装置12およびクラウドサーバ16は、文書ファイルを含む印刷要求を画像形成装置14へ送信する。画像形成装置14は、端末装置12またはクラウドサーバ16から送信された文書ファイルを受信して印刷処理を実行する。
【0015】
なお、PDFファイルを生成するアプリケーションやドライバは多岐に渡っており、クラウドサーバ16が提供するサービスの他に、モバイル機器12aのOSやアプリケーションが提供する機能、PC12b上で動作するアプリケーション、MFP14bが備えるスキャナ機能等によって提供される。
【0016】
画像形成システム10がPDFファイルを印刷する場合には、モバイル機器12aやPC12bからクラウドサーバ16上のPDFファイルを指定して、ページ順に並び替えて印刷を実行するケースや、プリンタ14aやMFP14b上の操作パネルからクラウドサーバ16上のPDFファイルを指定して、ページ順に並び替えて印刷を実行するケースが考えられる。
【0017】
(ハードウェア構成の説明)
図2は、端末装置12のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。端末装置12は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、SSD(Solid State Drive)104と、メディアI/F(Interface)105と、ネットワークI/F107と、ユーザI/F108と、バスライン110と、を備える。
【0018】
CPU101は、端末装置12全体の動作を制御する。ROM102は、端末装置12上で動作する各種プログラムおよびアプリケーションを記憶する。以下、アプリケーションを単にアプリと表す。RAM103は、CPU101のワークエリアとして使用される。SSD104は、各種プログラムまたはアプリで利用されるデータを記憶する。メディアI/F105は、外部メモリなどの記録メディア106に記憶されている情報を読み出したり、記録メディア106に情報を書き込んだりするためのインタフェースである。ネットワークI/F107は、通信ネットワーク18(図1参照)を介して他の装置と通信するためのインタフェースである。ユーザI/F108は、ユーザによる操作入力を受け付けるためのインタフェースである。ユーザI/F108は、例えば、タッチパネル機能を搭載した液晶表示装置または有機EL(Electro Luminescence)表示装置、もしくはキーボードおよびマウスである。バスライン110は、上記各構成要素を、図2に示すように電気的に接続するためのアドレスバスまたはデータバスである。
【0019】
なお、クラウドサーバ16のハードウェア構成は、端末装置12のハードウェア構成と同様であるので説明を省略する。ただし、SSD104は、HDD(Hard Disk Drive)等の任意の不揮発性の記憶装置に置き換え可能である。
【0020】
図3は、画像形成装置14のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。図3を用いて、画像形成装置14のハードウェア構成について説明する。
【0021】
画像形成装置14のコントローラ200は、CPU201と、ROM202と、RAM203と、NVRAM(Non-volatile RAM)204と、HDD205と、ネットワークI/F206と、エンジンI/F207と、パネルI/F208と、スキャナI/F209と、バスライン210と、を備える。また、画像形成装置14は、プロッタエンジン211と、操作パネル212と、スキャナエンジン213と、を備える。
【0022】
CPU201は、画像形成装置14全体の動作を制御する。ROM202は、画像形成装置14上で動作する各種プログラムおよびアプリ等を記憶する。RAM203は、CPU201のワークメモリ、またはフレームメモリ等として使用される。NVRAM204は、電源を切っても保持したいデータを格納可能な不揮発性RAMであり、各種プログラムまたはアプリで利用されるデータを記憶する。HDD205は、各種プログラムまたはアプリで利用されるデータを記憶する。ネットワークI/F206は、通信ネットワーク18(図1参照)を介して他の装置、例えばPC12b(図1参照)と通信するためのインタフェースである。エンジンI/F207は、プロッタエンジン211と接続するためのインタフェースである。パネルI/F208は、操作パネル212と接続するためのインタフェースである。スキャナI/F209は、スキャナエンジン213と接続するためのインタフェースである。バスライン210は、上記各構成要素を、図3に示すように電気的に接続するためのアドレスバスまたはデータバスである。
【0023】
プロッタエンジン211は、記録媒体への画像の印刷処理において、画像形成装置14のプロッタの動作を制御する。プロッタは、任意の印刷装置であり、インクジェット方式の場合、例えば、インクジェットヘッドであり、レーザープリンタ方式の場合、例えば、感光体、レーザー照射装置、あるいは転写装置である。操作パネル212は、ユーザから設定、条件、指示などの入力を受け付けるためのパネルであり、例えば、タッチパネル機能を搭載した液晶表示装置または有機EL表示装置、もしくはキーボードおよびマウスである。スキャナエンジン213は、画像形成装置14におけるスキャナの動作を制御する。なお、スキャナは、特に限定されないが、例えば、圧版、ADF(Auto Document Feeder)、および撮像素子を有する公知のものが使用される。
【0024】
(画像形成装置の機能構成の説明)
次に、画像形成装置14の機能構成について説明する。図4は、画像形成装置14の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。
【0025】
画像形成装置14は、通信部20と、表示・操作制御部30と、印刷部40と、を有する。これら各部は、図3に示されている各ハードウェア要素のいずれかが、ROM202からRAM203上に展開された画像形成装置14用の各種プログラムまたはアプリに従ったCPU201からの命令によって動作することで実現される機能である。
【0026】
通信部20は、CPU201からの命令、およびネットワークI/F206の処理により、通信ネットワーク18(図1参照)を介して、他の装置との通信を制御する。また、通信部20は、端末装置12またはクラウドサーバ16からPDFファイル等の文書ファイルを受信する受信手段として機能する。
【0027】
表示・操作制御部30は、ユーザからの指示を受け付けて、メッセージ等の通知を行う。また、表示・操作制御部30は、CPU201からの命令により、操作パネル212のディスプレイに画像を表示する制御を行う。
【0028】
印刷部40は、CPU201からの命令に基づいて、通信部20が受信した印刷データと、印刷指示と、に基づく印刷処理を実行する。なお、印刷データは、複数のページのデータ、および複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルである。印刷部40は、さらに、印刷データ受信部41と、ページデータ生成部42と、データ記憶部43と、印刷データ処理部44と、転写部45と、を有する。
【0029】
印刷データ受信部41は、通信部20が受信した印刷データのうち、印刷部40に渡された印刷データを受信する。また、印刷データ受信部41は、ページデータ生成部42に印刷の実行を指示する。
【0030】
ページデータ生成部42は、CPU201からの命令により、印刷データの分割や生成を行う。また、ページデータ生成部42は、データ記憶部43への記憶指示を行う。
【0031】
ページデータ生成部42は、さらに、ページ毎データ生成部42aと、分割可否判断部42bと、を有する。ページ毎データ生成部42aは、後述する分割可否判断部42bの判断結果に基づいて、印刷データをページ毎のPDFファイルに分割する。また、ページ毎データ生成部42aは、不足情報の算出、および算出した不足情報の付与を行うことによって、ページ毎の印刷データを生成する。さらに、ページ毎データ生成部42aは、複数のページで共通して参照される共通オブジェクトを抽出して、ストレージ(RAM203、HDD205)へのストアとロードを行う。
【0032】
分割可否判断部42bは、印刷データ内の識別情報、または表示・操作制御部30からの指示に基づいて、PDFファイルの分割可否の判断を行う。また、分割可否判断部42bは、分割可否の判断結果を、ページ毎データ生成部42aに通知する。
【0033】
データ記憶部43は、印刷データおよびページデータ生成部42が生成したページ分割データを記憶する。なお、データ記憶部43は、図3で説明したROM202、RAM203、NVRAM204、またはHDD205により構築される。
【0034】
印刷データ処理部44は、印刷データのコマンドを解釈、描画することによって、オブジェクトを配置してデータを再構成し、印刷画像を作成する。
【0035】
転写部45は、CPU201からの命令に基づくプロッタエンジン211の動作により、印刷データ処理部44が作成した印刷画像を印刷するための制御を行う。なお、転写部45は印字手段の一例である。
【0036】
(端末装置およびクラウドサーバの機能構成の説明)
次に、端末装置12およびクラウドサーバ16、すなわち情報処理装置の機能構成について説明する。図5は、端末装置12およびクラウドサーバ16の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、端末装置12およびクラウドサーバ16は、同じ機能構成を有している。
【0037】
すなわち、端末装置12(クラウドサーバ16)は、通信部50と、PDFファイル保存部51と、データ処理部52と、PDF生成部53と、表示部54と、を有する。
【0038】
通信部50は、CPU101からの命令、およびネットワークI/F107の処理により、通信ネットワーク18(図1参照)を介して、印刷データを送信する。なお、通信部50は、送信手段の一例である。
【0039】
PDFファイル保存部51は、CPU101からの命令に基づいて、印刷対象となるPDFファイルを、記録メディア106等に保存する。
【0040】
データ処理部52は、CPU101からの命令に基づいて、PDFファイル保存部51が保存しているPDFファイルをページ毎に分割するか否かを判断する。なお、データ処理部52は、抽出手段、判断手段、設定手段の一例である。
【0041】
PDF生成部53は、CPU101からの命令に基づいて、PDFファイルの分割を行う。また、PDF生成部53は、共通オブジェクトの判定ならびに定義方法を決定する。なお、PDF生成部53は、再構成手段の一例である。
【0042】
表示部54は、ユーザからの指示を受け付けて、メッセージ等の通知を行う。
【0043】
すなわち、端末装置12およびクラウドサーバ16は、前記した画像形成装置14が有する機能のうち、実際に印刷を行う印字手段以外の機能を備えている。
【0044】
(印刷処理の流れの説明)
次に、図6を用いて、画像形成システム10が行う印刷処理の流れについて説明する。図6は、画像形成システム10が行う印刷処理の流れを示す図である。
【0045】
ユーザは、端末装置12上やクラウドサーバ16上の操作部で印刷実行を指示する(ステップS10)。
【0046】
端末装置12またはクラウドサーバ16は、ユーザの指示を受けて、印刷データを読み込む(ステップS11)。そして、端末装置12またはクラウドサーバ16は、印刷データを、PDFファイルに記録された情報がページ順に並んだ形式に変換する(ステップS12)。そして、端末装置12またはクラウドサーバ16の通信部50は、変換された印刷データを画像形成装置14に送信する(ステップS13)。
【0047】
画像形成装置14の通信部20は、印刷データを受信して(ステップS14)、受信した印刷データをページ毎に分割してPDFファイルを生成する(ステップS15)。さらに、画像形成装置14は、ページ毎のPDFファイルに対して、言語解析および描画処理を実施する(ステップS16)。そして、印刷データは、印刷(排紙)される(ステップS17)。
【0048】
(PDFファイルの構造の説明)
次に、図7を用いて、PDFファイルの構造について説明する。図7は、PDFファイルのデータ構造の一例を説明する図である。PDFファイルは、国際標準化機構(ISO: International Organization for Standardization)で管理されているオープンスタンダードに準拠して、先頭から順に、ヘッダPH、ボディPB、相互参照表PR、およびトレーラPTを有する。
【0049】
ヘッダPHは、PDFのバージョン情報等を含む。
【0050】
ボディPBは、オブジェクト番号毎に、ドキュメントカタログ、ページ情報、各ページのオブジェクト情報等を定義する。オブジェクト番号は、オブジェクトの識別子であり、例えば、「x y obj」のように、参照番号(x)、生成番号(y)、および「obj」を列挙して構成される。ドキュメントカタログは、オブジェクト階層のルート(最上位)である。ページ情報は、各ページのオブジェクト情報への参照等を含む。各ページのオブジェクト情報は、各ページを描画するためのデータを含む。
【0051】
PDFの言語仕様上、オブジェクト情報はページ順に並べる必要はなく、オブジェクト番号も連番である必要はない。そのため、図7に示すように、各ページに必要なオブジェクトがばらばらに点在している。したがって、オブジェクトを整列しなければ、どこまで受信すればnページ目なのかが判断できない。
【0052】
相互参照表PRは、ボディPBに定義されている各オブジェクト番号のオブジェクトのアドレス情報(位置情報)を含む。アドレス情報は、オブジェクトがヘッダPHの先頭から何バイト目かを示すオフセット情報である。画像形成装置14は、相互参照表PRに基づいて、オブジェクトの位置を特定し、任意のオブジェクトに直接アクセスすることができる。
【0053】
トレーラPTは、相互参照表PRの位置を示すアドレス情報(startxref)、ドキュメントカタログのオブジェクト番号(Root)、およびPDFファイルの作成日時等の情報(Info)を含む。
【0054】
PDFファイルの構造上、画像形成装置14は、ドキュメントカタログのオブジェクト番号をトレーラPTから特定し、このオブジェクト番号に対応するアドレス情報を相互参照表PRから特定することで、ドキュメントカタログにアクセスする。すなわち、画像形成装置14は、PDFファイル全体を読み込んだ上で、PDFファイルに係る画像処理を行う。
【0055】
(PDFファイルをページ順に並べ替えるシーケンスの説明)
次に、図8図9を用いて、PDFファイルをページ順に並べ替えるシーケンスについて説明する。図8は、PDFファイルをページ順に並べ替える処理の流れの一例を示すフローチャートである。図9は、図8におけるリソース情報の算出の詳細な流れの一例を示すフローチャートである。
【0056】
端末装置12またはクラウドサーバ16は、PDFファイルの印刷を指示されると、ページ順に並び替えられたPDFファイルを作成するために、以下の処理を実行する。
【0057】
まず、データ処理部52は、印刷対象のページに必要なオブジェクトを抽出する(ステップS30)。
【0058】
次に、データ処理部52およびPDF生成部53は、抽出したオブジェクトの全てに対して、以下の処理を実行する。
【0059】
データ処理部52は、リソース情報を算出する(ステップS32)。なお、リソース情報を算出する処理の詳細な流れは後述する(図9参照)。
【0060】
続いて、PDF生成部53は、ページ毎にリソースを定義するか否かを判定する(ステップS34)。ページ毎にリソースを定義すると判定される(ステップS34:Yes)と、ステップS36に移行する。一方、ページ毎にリソースを定義すると判定されない(ステップS34:No)と、ステップS38に移行する。
【0061】
ステップS34においてYesと判定されると、ステップS36において、ページ毎データ生成部42aは、ページにリソースを定義する。その後、ステップS32に戻って、次のオブジェクトに対する処理を行う。
【0062】
ステップS34においてNoと判定されると、ステップS38において、PDF生成部53は、既にリソースが定義済みであるか否かを判定する。既にリソースが定義済みであると判定される(ステップS38:Yes)と、該当のページにはリソースを定義しない(すなわち、重複したリソースの定義は行わない)。そして、ステップS32に戻って、次のオブジェクトに対する処理を行う。一方、既にリソースが定義済みであると判定されない(ステップS38:No)と、前記したステップS36に移行する。
【0063】
続いて、図9を用いて、リソース情報を算出する処理の詳細な流れを説明する。なお、リソース情報を算出する処理は、データ処理部52が行う。
【0064】
まず、ページから抽出したオブジェクトに対して、オブジェクトの種類を抽出する(ステップS40)。
【0065】
次に、抽出したオブジェクトが、リソースオブジェクトに該当するか否かを判定する(ステップS42)。リソースオブジェクトとは、ページ情報に影響しない、固有のオブジェクトの定義であり、フォントやカラースペース、イメージオブジェクト等を指す。例えば、プレゼンテーションソフトウェアの背景・ロゴマーク・Watermark等の、ページ間で共通して描画されるオブジェクト、あるいは、フォントデータやICC(International Color Consortium)プロファイル等のページ間で共通して使用されるデータが、リソースオブジェクトである。
【0066】
ステップS42において、リソースオブジェクトに該当すると判定される(ステップS42:Yes)と、ステップS44に移行する。一方、リソースオブジェクトに該当すると判定されない(ステップS42:No)と、ページ固有の情報であると判断してステップS54に移行し、ページ毎にオブジェクトを定義する。
【0067】
ステップS42においてYesと判定されると、ステップS44において、複数ページから参照されるリソースか否かを判定する。複数ページから参照されるリソースであると判定される(ステップS44:Yes)と、ステップS46に移行する。一方、複数ページから参照されるリソースであると判定されない(ステップS44:No)と、ステップS54に移行し、ページ毎にオブジェクトを定義する。
【0068】
ステップS44においてYesと判定されると、ステップS46において、リソースデータのサイズを計算する。続いて、ステップS48において、リソースが利用されるページ数を算出する。
【0069】
次に、予想されるリソースのサイズを算出する(ステップS50)。リソースのサイズは、具体的には、リソースデータのサイズ×ページ数によって算出することができる。
【0070】
続いて、リソースのサイズが閾値以下であるか否かを判定する(ステップS52)。リソースのサイズが閾値以下であると判定される(ステップS52:Yes)と、ステップS54に移行する。一方、リソースのサイズが閾値以下であると判定されない(ステップS52:No)と、ステップS56に移行する。
【0071】
ステップS52においてYesと判定されると、ステップS54において、ページ毎にオブジェクトを定義する。そして、ステップS54を実行した後、図8のフローチャートのステップS34に戻る。
【0072】
ステップS52においてNoと判定されると、ステップS56において、先頭ページ、すなわち、そのオブジェクトが最初に参照される位置にオブジェクトを定義する。なお、このとき、共通リソースである旨の情報を付与する。これによって、画像形成装置14で当該リソースを参照するページの印刷が完了するまで、リソースを破棄せずに保持することができる。なお、ステップS56を実行した後、図8のフローチャートのステップS34に戻る。
【0073】
オブジェクトの定義方法をこのように変更することによって、ページ毎にリソースを定義してしまうとデータサイズが増大してしまうが、サイズが閾値以下の場合は、サイズの増大を許容し、サイズが閾値を上回る場合は先頭ページにのみ定義する。
【0074】
なお、予め全てのオブジェクトを参照して、先頭ページに定義すべき「共通リソース」を抽出し、当該共通リソースを、ジョブ先頭に付与する、という方式をとっても構わない。
【0075】
(オブジェクトの並べ替え例の説明)
次に、図10図11を用いて、オブジェクトの並べ替えの具体例について説明する。図10は、先頭ページにオブジェクトを定義するとした場合の、オブジェクトの並べ替えの一例について説明する図である。図11は、ページ毎にオブジェクトを定義するとした場合の、オブジェクトの並べ替えの一例について説明する図である。
【0076】
先頭ページにオブジェクトを定義する、とした場合は、図10に示すように、各ページに共通して使用されている「31 0 obj」は、参照される先頭ページにのみ定義される(図10の行f1)。したがって、PDFファイルのデータサイズは、図10に示すようになる。
【0077】
なお、各ページに共通して使用されるオブジェクトは、端末装置12またはクラウドサーバ16において識別できるように、例えば、オブジェクトの番号を特定の番号(例えば、10000番台)とする。また、保存対象のリソースオブジェクトの前後に保存する旨の情報を付加する。さらに、参照されるページ番号の情報を付加する。
【0078】
また、ページ毎にオブジェクトを定義する、とした場合は、図11に示すように、各ページに共通して使用されている「31 0 obj」は、参照されるページ毎に、「31 0 obj」(図11の行f2)、「32 0 obj」(図11の行f3)、「33 0 obj」(図11の行f4)として定義する。したがって、PDFファイルのデータサイズは、図11に示すようになる。このように、ページ毎にオブジェクトを定義することによって、データサイズは、図10の場合と比べて大きくなる。
【0079】
なお、オブジェクトの定義方法は、PDFファイルの送信先である画像形成装置14の状態に応じて、適宜変更してもよい。すなわち、例えば、画像形成装置14がHDD205を備えていない場合には、図10に示す方法、すなわち、先頭ページにオブジェクトを定義する方法を用いるのが望ましい。また、通信ネットワーク18のトラフィックが大きい場合には、図11に示す方法、すなわち、ページ毎にオブジェクトを定義する方法を用いるのが望ましい。
【0080】
(データサイズの閾値の設定方法の説明)
次に、図12図13を用いて、データサイズの閾値の設定方法について説明する。図12は、ページ毎にオブジェクトを配置する際に許容するデータサイズの閾値を、操作パネル212(図3参照)の操作によって定義する例について説明する図である。図13は、画像形成装置14が使用可能なストレージサイズ、すなわち、RAM203、HDD205の容量等に応じて、オブジェクトの定義方法を自動的に変更する例について説明する図である。
【0081】
共通オブジェクトの定義を先頭(複数ページから参照される)にするかページ毎にするかの判定に用いるパラメータとして、データサイズ(PDFファイルのサイズ)がある。図12を用いて、PDFデータの並び替えの前後で、データサイズの増加をどこまで許容するかの閾値を設定する例を説明する。
【0082】
図12に示すように、プリンタ14aやMFP14b上の操作パネル212をユーザに操作させることによって、ページ毎にオブジェクトを配置した際に許容するデータサイズの閾値を設定することができる。データサイズの閾値は、図12に示すように、実際のデータサイズ(例えば10MB等)または全データに占める割合(例えば10%等)によって設定することができる。閾値が大きいほど、複数ページから参照されるように並び替える共通オブジェクトを多く設定することができ、閾値が小さいほど、設定できるオブジェクトの数は少なくなる。これは、後述する図15で説明するように、複数ページから参照される共通オブジェクトは、参照しているページの処理が完了するまで保持する必要があるためであり、画像形成装置14の排紙性能等の能力に依存するためである。
【0083】
なお、「共通オブジェクト」自体のサイズの上限値を設定させて、当該上限値に収まるか、当該上限値を超えるかに基づいて、共通オブジェクトとして複数ページから参照されるように定義するか、ページ毎にオブジェクトを定義するかを判定するようにしてもよい。
【0084】
次に、画像形成装置14が使用可能なストレージサイズに応じて、オブジェクトの定義方法を自動的に変更する方法について、図13を用いて説明する。
【0085】
分割可否判断部42b(図4参照)は、PDFファイルの並び替え時に、画像形成装置14に対して、ストレージサイズを問い合わせる(ステップS60)。
【0086】
続いて、分割可否判断部42bは、共通リソースのサイズがストレージに収まるか否かを判定する(ステップS62)。共通リソースのサイズがストレージに収まると判定される(ステップS62:Yes)と、ステップS64に移行する。一方、共通リソースのサイズがストレージに収まると判定されない(ステップS62:No)と、ステップS66に移行する。
【0087】
ステップS62においてYesと判定されると、ステップS64において、ページ毎データ生成部42aは、先頭ページにオブジェクトを配置する。
【0088】
一方、ステップS62においてNoと判定されると、ステップS66において、ページ毎データ生成部42aは、ページ毎にオブジェクトを配置する。
【0089】
なお、共通オブジェクトのサイズの総和が画像形成装置14のストレージサイズに収まらなくても、収まる分のオブジェクトを複数ページから参照される形で定義して、残りのオブジェクトをページ毎に定義してもよい。
【0090】
(PDFファイルの印刷処理の流れの説明)
次に、図14を用いて、PDFファイルの印刷処理の流れについて説明する。図14は、PDFファイルの印刷処理の流れの一例を示すシーケンス図である。
【0091】
端末装置12のSSD104には、端末装置12において生成された複数ページのPDFファイルが記憶されている。端末装置12は、ユーザによる操作入力に応じて、印刷指示を、通信ネットワーク18を介して画像形成装置14へ送信する(ステップS70)。
【0092】
なお、印刷要求の送信元は、端末装置12に限定されない。印刷要求の送信元は、クラウドサーバ16であってもよい。また、MFP14bは、スキャナで読み込まれた画像に基づいてPDFファイルを生成し、このPDFファイルをプリンタ14aへの印刷要求に含めて送信してもよい。印刷の形式は、特に限定されず、例えば、AirPrint(登録商標)、またはMopria(登録商標)等のモバイルプリントであってもよいし、ftpやlprなどのプロトコルを利用して直接PDFファイルを画像形成装置14に送信するダイレクトプリントであってもよい。また、GoogleCloudPrint(登録商標)等のクラウドプリントであってもよい。また、印刷形式はメディアプリントでもよい。この場合、ステップS70の処理は、画像形成装置14に接続された、図3に不図示のUSB(Universal Serial Bus)メモリ等の記録メディアから、画像形成装置14にPDFファイルを送信する処理に置き換えられる。
【0093】
画像形成装置14の通信部20は、端末装置12から送信された印刷要求を受信する。通信部20は、印刷要求に含まれるPDFファイルの受信を開始すると、受信したPDFファイルを、バッファとしてRAM203に順次記憶(バッファリング)する。そして、画像形成装置14は、バッファリングの完了を待機することなく、以下の印刷処理を継続する。
【0094】
通信部20は、印刷を開始するための印刷開始通知をページデータ生成部42へ送信する(ステップS71)。
【0095】
ページデータ生成部42は、印刷開始通知を受信すると、受信バッファを通してPDFデータを受信する(ステップS72)。
【0096】
ページデータ生成部42(分割可否判断部42b)は、受信したPDFデータが、ページデータに分割可能か否かを判定する。そして、分割可能と判定された場合、ページデータ生成部42(ページ毎データ生成部42a)は、ヘッダPHやトレーラPTを付加したページ毎のPDFファイルを生成する(ステップS73)。
【0097】
さらに、ページデータ生成部42は、ページ毎のPDFファイルである個別PDFファイルを印刷データ処理部44に送信する(ステップS74)。
【0098】
その後、ページデータ生成部42は、印刷データ処理部44に送信した個別PDFファイルの元になった受信データを削除する(ステップS75)。すなわち、一時的に必要な受信バッファのサイズは、1ページ分の受信データのサイズとなるため、印刷時に必要な記憶領域のサイズを抑制することができる。
【0099】
次に、印刷データ処理部44は、受信した個別PDFファイルをプリンタ言語解析し、フレームメモリに描画する描画処理を行うことで印刷イメージを作成する(ステップS76)。さらに、印刷データ処理部44は、プロッタエンジン211に印刷処理を指示する(ステップS77)。
【0100】
プロッタエンジン211は印刷データ処理部44からの指示を受けると、用紙に印刷イメージを転写し、排紙する(ステップS78)。
【0101】
なお、ページデータ生成部42は、受信したPDFデータから個別PDFファイルを印刷対象のページ順に生成し、印刷データ処理部44に通知するため、印刷対象のページ分だけ、ステップS72からステップS75の処理を繰り返す。
【0102】
(ページ毎のPDFファイル生成処理の説明)
次に、図15を用いて、画像形成装置14が行う、ページ毎のPDFファイル生成処理の流れについて説明する。図15は、ページ毎のPDF生成処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0103】
印刷データ受信部41は、PDFデータを受信すると、受信したPDFデータの読み込みを開始する(ステップS80)。
【0104】
続いて、分割可否判断部42bは、読み込んだPDFデータが、ページ間で共通して使用されるリソースオブジェクトに該当するか否かを判定する(ステップS82)。ステップS82において、ページ共通のリソースオブジェクトに該当すると判定される(ステップS82:Yes)と、ステップS84に移行する。一方、ページ共通のリソースオブジェクトに該当すると判定されない(ステップS82:No)と、ステップS86に移行する。なお、読み込んだPDFデータが、ページ共通のリソースオブジェクトに該当することは、前記したように、ページ共通のリソースオブジェクトである旨を示す特定の番号を有することによって判定すればよい(図10参照)。
【0105】
ステップS82においてYesと判定されると、ステップS84において、ページ共通リソースをストレージ(HDD205やRAM203)にストアして、後のページでも参照できるようにする。その後、ステップS82に戻り、PDFデータの全てのページについて処理を繰り返す。
【0106】
ステップS82においてNoと判定されると、ステップS86において、PDFデータがページ共通リソースを参照しているか否かを判定する。PDFデータがページ共通リソースを参照していると判定される(ステップS86:Yes)と、ステップS88に移行する。一方、PDFデータがページ共通リソースを参照していると判定されない(ステップS86:No)と、ステップS90に移行する。
【0107】
ステップS86においてYesと判定されると、ステップS88において、ページ毎データ生成部42aは、既にストアされているページ共通リソースをストレージからロードする。その後、ステップS90に移行する。なお、ロードされたページ共通リソースは、ページ毎のPDFデータを生成するための情報として用いられる。
【0108】
ステップS86においてNoと判定されると、またはステップS88の後、ステップS90において、読み込んだデータを使って分割PDF(ページ毎のPDFデータ)を作成する。その後、ステップS82に戻り、PDFデータの全てのページについて処理を繰り返す。
【0109】
続いて、ページデータ生成部42は、分割PDFを印刷データ処理部44に送信する(ステップS92)。
【0110】
ページデータ生成部42は、印刷対象ページが全て処理完了したかを判定する(ステップS94)。印刷対象ページが全て処理完了したと判定される(ステップS94:Yes)と、図15の処理を終了する。一方、印刷対象ページが全て処理完了したと判定されない(ステップS94:No)と、ステップS80に戻って、PDFデータがなくなるまで処理を繰り返す。
【0111】
なお、図15は、画像形成装置14がPDFファイル生成処理を行う際の処理の流れを示すフローチャートであるが、画像形成システム10が、端末装置12またはクラウドサーバ16に対して、同様のPDFファイル生成処理を行わせる構成としてもよい。
【0112】
(ページ毎のPDFファイル生成処理の具体例の説明)
次に、図16を用いて、ページ毎のPDFファイル生成処理の具体例について説明する。図16は、ページ毎のPDF生成処理の具体例を示す図である。
【0113】
例えば、先頭ページにオブジェクトを定義する、とした場合、画像形成装置14には、例えば、図16の左方に示すPDFデータが入力される。
【0114】
このとき、ページデータ生成部42は、図16の中央に示すようにページ(P1、P2、P3)毎のPDFデータを生成する(ステップS100、S101、S102)。
【0115】
このとき、各ページで共通して使用される共通リソースが存在した場合には、ページデータ生成部42は、当該共通リソースをストレージ(HDD205やRAM203)に保存する(ステップS103)。保存された共通リソースは、以降に要求された場合(ステップS104、S105)に取得されて(ステップS106、S107)、各ページにデータが付与される。
【0116】
これによって、ページ毎に生成したPDFデータの内部にオブジェクトの実体を保持することができる。そして、各ページのPDFデータは、PDF処理命令として、印刷データ処理部44に送信される(ステップS108、S109、S110)。そして、印刷データ処理部44は、オブジェクトを配置してデータを再構成し、描画処理可能な印刷画像を作成する。
【0117】
なお、本実施の形態の例では、画像形成装置14は、CPU201が、各種処理をソフトウェアで実現することとしたが、一部または全部を、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアで実現してもよい。また、各種プログラムは、インストール可能な形式、または実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD、ブルーレイディスク(登録商標)、半導体メモリ等のコンピュータ装置で読み取り可能な記録媒体に記録して提供してもよい。DVDは、「Digital Versatile Disc」の略記である。また、各種プログラムは、インターネット等のネットワーク経由でインストールする形態で提供してもよい。また、各種プログラムは、機器内のROM等に予め組み込んで提供してもよい。
【0118】
(実施の形態の変形例の説明)
次に、前記した実施の形態の変形例について説明する。前記した実施の形態において、画像形成装置14は、通信部20(図4参照)および通信ネットワーク18(図1参照)を介して、PDFデータを受信していた。本変形例に示す画像形成装置14a(図17参照)は、PDFデータを記憶した記憶メディアを挿入可能な構成を有し、ユーザが挿入した記憶メディアに記憶されたPDFデータを読み出して印刷を行う。
【0119】
以下、図17図18を用いて実施の形態の変形例の構成と機能を説明する。図17は、画像形成装置14の変形例のハードウェア構成の一例を示すハードウェアブロック図である。図18は、画像形成装置14の変形例の機能構成の一例を示す機能ブロック図である。なお、画像形成装置14の変形例である画像形成装置14aのハードウェア構成および機能構成は、前記した画像形成装置14とほぼ等しいものであるため、同じ構成要素は同一の符号を用いて説明する。
【0120】
図17に示すように、画像形成装置14aは、画像形成装置14に対して、更に記憶メディアI/F214を備える。記憶メディアI/F214は、画像形成装置14aに挿入された記憶メディア13(例えば、USBメモリ等)と通信するためのインタフェースである。なお、記憶メディア13は記録メディアの一例である。
【0121】
図18に示すように、画像形成装置14aは、画像形成装置14とほぼ等しい機能構成を有する。なお、通信部20は、前記した、通信ネットワーク18(図1参照)を介して、他の装置(端末装置12、クラウドサーバ16)との通信を制御する機能に加えて、記憶メディア13との通信を制御する機能を備える。
【0122】
また、表示・操作制御部30aは、前記した表示・操作制御部30の機能に加えて、前記した端末装置12およびクラウドサーバ16が備える抽出手段、判断手段、および再構成手段を備える。
【0123】
ユーザは、画像形成装置14aで印刷したいPDFデータを、記憶メディア13に記憶した状態で、当該記憶メディア13を画像形成装置14に設けられたスロット等に挿入する。そして、ユーザは、操作パネル212を操作することによって、表示・操作制御部30の作用によって、印刷したいPDFデータを指定する。通信部20は、記憶メディア13の中から、指定されたPDFデータを読み出す。そして、画像形成装置14aは、先の実施形態で説明したのと同様の処理を行うことによって、指定されたPDFデータを分割生成して印刷する。
【0124】
なお、通信部20に、通信ネットワーク18を介して、他の装置との通信を制御する機能と、記憶メディア13との通信を制御する機能と、をともに備えることによって、画像形成装置14aに接続された端末装置12、クラウドサーバ16、記憶メディア13のいずれからでも、PDFデータを読み出して、画像形成装置14aの内部でPDFデータを分割生成して、印刷を実行することができる。
【0125】
以上説明したように、本実施の形態に係る端末装置12またはクラウドサーバ16(情報処理装置)によれば、データ処理部52(抽出手段)が、複数のページのデータ、および複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する。そして、データ処理部52(判断手段)が、抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、複数のページで共通して使用するオブジェクトとして定義するか、複数のページのページ毎に定義するか、を判断する。さらに、PDF生成部53(再構成手段)が、判断手段の判断結果に基づいて、オブジェクトを配置してデータを再構成して、通信部50(送信手段)が、再構成したデータを画像形成装置14に送信する。したがって、PDFファイルを印刷する際、全てのデータをストレージに保持することなく印刷処理を開始することができるため、PDFファイルを受信して印刷処理を実行する際に、ユーザの待機時間を短縮することができる。
【0126】
また、本実施の形態に係る端末装置12またはクラウドサーバ16によれば、データ処理部52(判断手段)は、オブジェクトの種類に応じて、当該オブジェクトを共通オブジェクトとするか否かを変更可能である。したがって、例えば、サイズの小さいオブジェクトや当たり前に定義されるオブジェクト等を共通オブジェクトに設定しないことによって、メモリの使用量を削減することができる。
【0127】
また、本実施の形態に係る端末装置12またはクラウドサーバ16によれば、データ処理部52(判断手段)は、共通オブジェクトの定義方法を、当該共通オブジェクトのサイズおよび当該共通オブジェクトの内容、もしくは、転写部45の構成に応じて変更可能である。したがって、印刷対象となるPDFファイルの内容、および印刷を行う画像形成装置14の構成に応じて、様々な印刷環境に適用させることができる。
【0128】
また、本実施の形態に係る端末装置12またはクラウドサーバ16によれば、データ処理部52(判断手段)は、共通オブジェクトの定義方法を切り換える閾値を設定する設定機能を更に備える。したがって、画像形成装置14を使用するユーザの指示に応じて、印刷データのサイズを設定することができる。
【0129】
また、本実施の形態に係る端末装置12またはクラウドサーバ16によれば、データ処理部52(判断手段)は、共通オブジェクトを、参照される全てのページに配置するか、初めて参照されたページにのみ配置するか、もしくは、データ内の先頭に配置するか、を判断する。したがって、印刷するPDFファイルの特徴に応じて、ファイルのサイズを抑制することができる。
【0130】
また、本実施の形態の変形例に係る画像形成装置14aによれば、通信部20(受信手段)は、通信ネットワーク18(ネットワーク)または記憶メディア13(記録メディア)を介して、複数のページのデータ、および複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルを受信する。そして、表示・操作制御部30aが、受信したファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する抽出手段として作用する。さらに、表示・操作制御部30aは、抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、複数のページで共通して使用するオブジェクトとして定義するか、複数のページのページ毎に定義するか、を判断する判断手段として作用する。そして、表示・操作制御部30aは、判断手段の判断結果に基づいて、オブジェクトを配置してデータを再構成する再構成手段と、して作用する。そして、転写部45(印字手段)が、再構成されたデータを印字する。したがって、画像形成装置14aは、通信ネットワーク18や記憶メディア13に記憶されたPDFファイルを受信して印刷処理を実行することができる。
【0131】
また、本本実施の形態に係る画像形成システム10(情報処理システム)によれば、データ処理部52(抽出手段)が、複数のページのデータ、および複数のページにおける各ページのデータの位置を示す位置情報を含むファイルの中から、複数のページで共通して参照されるオブジェクトを共通オブジェクトとして抽出する。そして、データ処理部52(判断手段)が、抽出手段が抽出した共通オブジェクトを、複数のページで共通して使用するオブジェクトとして定義するか、複数のページのページ毎に定義するか、を判断する。さらに、PDF生成部53(再構成手段)が、判断手段の判断結果に基づいて、オブジェクトを配置してデータを再構成して、通信部50(送信手段)が、再構成したデータを画像形成装置14に送信する。そして、画像形成装置14の通信部20(受信手段)が、再構成したデータを受信して、転写部45(印字手段)が印字する。したがって、PDFファイルを印刷する際、全てのデータをストレージに保持することなく印刷処理を開始することができるため、PDFファイルを受信して印刷処理を実行する際に、ユーザの待機時間を短縮することができる。
【0132】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、前記した実施の形態は、例として提示したものであり、本発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能である。また、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。また、この実施の形態は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0133】
10 画像形成システム(情報処理システム)
12 端末装置(情報処理装置)
12a モバイル機器(情報処理装置)
12b PC(情報処理装置)
13 記憶メディア(記録メディア)
14、14a 画像形成装置
14a プリンタ
14b MFP
16 クラウドサーバ(情報処理装置、プリントサーバ)
18 通信ネットワーク(ネットワーク)
18a LAN
18b インターネット
20 通信部(受信手段)
30、30a 表示・操作制御部
50 通信部(送信手段)
54 表示部
40 印刷部
41 印刷データ受信部(受信手段)
42 ページデータ生成部
42a ページ毎データ生成部(抽出手段)
42b 分割可否判断部(判断手段、設定手段)
43 データ記憶部
44 印刷データ処理部(再構成手段)
45 転写部(印字手段)
51 PDFファイル保存部
52 データ処理部(抽出手段、判断手段、設定手段)
53 PDF生成部(再構成手段)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0134】
【文献】特許第4183557号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18