(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】異物検査方法、異物検査装置及びスリッター
(51)【国際特許分類】
G01N 27/72 20060101AFI20220621BHJP
G01N 21/892 20060101ALI20220621BHJP
G01V 11/00 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G01N27/72
G01N21/892 A
G01V11/00
(21)【出願番号】P 2018087662
(22)【出願日】2018-04-27
【審査請求日】2020-11-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎本 祐樹
【審査官】越柴 洋哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-035702(JP,A)
【文献】特開平09-145678(JP,A)
【文献】特開2016-148526(JP,A)
【文献】特開2000-356698(JP,A)
【文献】特開2015-102376(JP,A)
【文献】特開2012-181176(JP,A)
【文献】特開2003-172708(JP,A)
【文献】特開平06-273348(JP,A)
【文献】特開平07-063699(JP,A)
【文献】特開2003-215051(JP,A)
【文献】特開2018-096977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/72 - G01N 27/9093
G01N 21/84 - G01N 21/958
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上流から下流へ搬送方向に搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムに対し、含まれる可能性のある異物を検査する異物検査方法であって、
前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出ステップと、
前記磁気検出ステップにおいて、信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する第1異物座標マップ作成ステップと
、
前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出ステップと、
前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成する第2異物座標マップ作成ステップと、を有し、
前記第1異物座標マップにおいて前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と判断する、異物検査方法。
【請求項2】
上流から下流へ搬送方向に搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムに対し、含まれる可能性のある異物を検査する異物検査方法であって、
前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出ステップと、
前記磁気検出ステップにおいて、信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する第1異物座標マップ作成ステップと、
前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出ステップと、
前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成する第2異物座標マップ作成ステップと、
前記第1異物座標マップにおいて、前記第1種異物がある領域を、第2異物座標マップに重ね、前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と置き換えた第3異物座標マップを作成する第3異物座標マップ作成ステップと、
を有する、異物検査方法。
【請求項3】
上流から下流へ搬送方向に搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムに対し、含まれる可能性のある異物を検査する異物検査方法であって、
前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出ステップと、
前記磁気検出ステップにおいて、信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する第1異物座標マップ作成ステップと、
前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出ステップと、
前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成する第2異物座標マップ作成ステップと、
前記第1異物座標マップと、前記第2異物座標マップとを、同じ送り座標で比較し、前記第2異物座標マップにおいて、各前記第2種異物を中心にして前記幅方向に並べられた隣り合う前記磁気検出部の距離の1/2以下の範囲に、前記第1異物座標マップの前記第1種異物がある第2種異物を、第1種異物に置き換えた第3異物座標マップを作成する第3異物座標マップ作成ステップと、
を有する、異物検査方法。
【請求項4】
前記第1フィルムが前記幅方向に設けられた複数のスリットで分割された複数の第2フィルムとされ、
前記幅方向に設けられた複数のスリットの位置と、前記第3異物座標マップとに基づいて、前記第1種異物が含まれる第2フィルムを、前記第1種異物が含まれない第2フィルムよりも品質の等級を下げて評価する、請求項
2または
3に記載の異物検査方法。
【請求項5】
1つの前記磁気検出部が磁気を検出可能な前記幅方向の磁気検出幅が、当該磁気検出部と隣り合う磁気検出部の磁気検出幅とオーバーラップしており、
前記搬送方向において、前記送り座標の所定範囲内で、隣り合う前記磁気検出部が前記閾値以上の信号を検出した場合に、大きい信号を出力した磁気検出部側の前記幅方向の位置座標を付与した前記第1種異物を前記第1異物座標マップにプロットする請求項1から
4のいずれか1項に記載の異物検査方法。
【請求項6】
前記磁気検出部は、フラックスゲートセンサである、請求項1から
5のいずれか1項に記載の異物検査方法。
【請求項7】
0.05mm
2以上の前記第1種異物に対して、1つの前記磁気検出部が前記閾値以上の信号を出力する、請求項1から
6のいずれか1項に記載の異物検査方法。
【請求項8】
前記第1フィルムは、前記磁気検出部の上流側において、帯磁器の磁界を通過する、請求項1から
7のいずれか1項に記載の異物検査方法。
【請求項9】
前記第1フィルムは、前記磁気検出部の上流側かつ前記帯磁器の下流において、静電除去装置の処理を通過する、請求項
8に記載の異物検査方法。
【請求項10】
上流から下流へ搬送方向に搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムに対し、含まれる可能性のある異物を検査する異物検査装置であって、
前記第1フィルムの搬送方向の送り座標を検出する位置検出装置と、
前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出装置と、
信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する解析装置と、
前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出装置と、を有し、
前記解析装置は、
前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成し、
前記第1異物座標マップにおいて前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と判断する、
異物検査装置。
【請求項11】
0.05mm
2
以上の前記第1種異物に対して、1つの前記磁気検出部が前記閾値以上の信号を出力する、請求項10に記載の異物検査装置。
【請求項12】
上流から下流へ搬送方向に第1フィルムを搬送する走行ロールと、
前記第1フィルムにスリットを入れて、複数の第2フィルムに分割するカッターロールと、
前記カッターロールの上流側において、前記第1フィルムを検査対象とし、前記第1フィルムに含まれる可能性のある異物を検査する異物検査装置と、を有し、
前記異物検査装置は、
前記第1フィルムの搬送方向の送り座標を検出する位置検出装置と、
前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出装置と、
信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する解析装置と、
を有
し、
前記異物検査装置は、
前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出装置をさらに有し、
前記解析装置は、
前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成し、
前記第1異物座標マップにおいて前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と判断する、
スリッター。
【請求項13】
0.05mm
2
以上の前記第1種異物に対して、1つの前記磁気検出部が前記閾値以上の信号を出力する、請求項12に記載のスリッター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異物検査方法、異物検査装置及びスリッターに関する。
【背景技術】
【0002】
反射率の違いをもとに金属種の異物を検出する異物検出工程の技術が特許文献1に記載されている。フラックスゲートセンサを用いて、被検査物に混入する微細な磁性体の金属異物を検知することができる微細金属検出装置が特許文献2に記載されている。上流側から下流側に向かう移動方向に沿って進む被検査物に含まれた磁性金属異物を永久磁石と検出コイルとを使用して検出する磁気検出装置が特許文献3に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2003-215051号公報
【文献】特開2011-237181号公報
【文献】特開2014-224811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、フィルム状の被検査対象の生産設備は、金属でできていることが多く、金属種の異物の混入箇所の特定が予測しにくい。金属種の異物が小さくなると、反射率の差が小さくなり、特許文献1の技術によっても、金属種の異物の区別がつきにくく、金属種の異物があっても、正常なフィルム状の被検査対象として判別されてしまう可能性がある。また、特許文献1の技術では、フィルム状の被検査対象自体の色によって、判別精度が影響を受けてしまう可能性がある。
【0005】
そこで、フィルム状の被検査対象に対して、特許文献2に記載されたフラックスゲートセンサなどの磁気検出装置により、金属種の異物を検出することが考えられる。しかしながら、磁気検出装置が金属種の異物を検出すると、フィルム状の被検査対象の生産を止めて、異物のフィルム状の被検査対象の全体を破棄せざるを得ず、フィルム状の被検査対象の歩留まりが低下してしまう可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、フィルム状の被検査対象内において、金属種の異物の疑いがある位置を特定できる異物検査方法、異物検査装置及びスリッターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の態様の異物検査方法は、上流から下流へ搬送方向に搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムに対し、含まれる可能性のある異物を検査する異物検査方法であって、前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出ステップと、前記磁気検出ステップにおいて、信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する第1異物座標マップ作成ステップと、を有する。この態様によれば、フィルム状の被検査対象内において、金属種の異物の疑いがある位置を特定できる。
【0008】
望ましい態様として、前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出ステップと、前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成する第2異物座標マップ作成ステップと、をさらに有し、前記第1異物座標マップにおいて、前記第1種異物がある領域を、第2異物座標マップに重ね、前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と判断する。これにより、位置精度の高い第2異物座標マップと同じ精度で、第1種異物を特定できる。
【0009】
望ましい態様として、前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出ステップと、前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成する第2異物座標マップ作成ステップと、前記第1異物座標マップにおいて、前記第1種異物がある領域を、第2異物座標マップに重ね、前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と置き換えた第3異物座標マップを作成する第3異物座標マップ作成ステップと、をさらに有する。これにより、第1種異物が存在すると疑われる領域については、第2種異物が全て第1種異物として扱われるので、第1種異物の見逃しが抑制される。
【0010】
望ましい態様として、前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出ステップと、前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成する第2異物座標マップ作成ステップと、前記第1異物座標マップと、前記第2異物座標マップとを、同じ送り座標で比較し、前記第2異物座標マップにおいて、各前記第2種異物を中心にして前記幅方向に並べられた隣り合う前記磁気検出部の距離の1/2以下の範囲に、前記第1異物座標マップの前記第1種異物がある第2種異物を、第1種異物に置き換えた第3異物座標マップを作成する第3異物座標マップ作成ステップと、をさらに有する。これにより、精度の高い第2異物座標に基づいて、第1種異物か第2種異物かの判定が行われるので、誤判定が抑制される。
【0011】
望ましい態様として、前記第1フィルムが前記幅方向に設けられた複数のスリットで分割された複数の第2フィルムとされ、前記幅方向に設けられた複数のスリットの位置と、前記第3異物座標マップとに基づいて、前記第1種異物が含まれる第2フィルムを、前記第1種異物が含まれない第2フィルムよりも品質の等級を下げて評価する。これにより、第1種異物が含まれる第2フィルムが判明しているので、第1フィルム全体を破棄せず、製品の歩留まりが向上する。
【0012】
望ましい態様として、1つの前記磁気検出部が磁気を検出可能な前記幅方向の磁気検出幅が、当該磁気検出部と隣り合う磁気検出部の磁気検出幅とオーバーラップしており、前記搬送方向において、前記送り座標の所定範囲内で、隣り合う前記磁気検出部が前記閾値以上の信号を検出した場合に、大きい信号を出力した磁気検出部側の前記幅方向の位置座標を付与した前記第1種異物を前記第1異物座標マップにプロットする。これにより、隣り合う磁気検出部の間にある第1種異物の検知精度を確保することができる。
【0013】
望ましい態様として、前記磁気検出部は、フラックスゲートセンサである。これにより、磁化された第1種異物が精度よく検出される。
【0014】
望ましい態様として、0.05mm2以上の前記第1種異物に対して、1つの前記磁気検出部が前記閾値以上の信号を出力する。これにより、0.05mm2以上の第1種異物が精度よく検出できる。
【0015】
望ましい態様として、前記第1フィルムは、前記磁気検出部の上流側において、帯磁器の磁界を通過する。これにより、磁気検出部は、磁化された第1種異物を検知できる。
【0016】
望ましい態様として、前記第1フィルムは、前記磁気検出部の上流側かつ前記帯磁器の下流において、静電除去装置の処理を通過する。これにより、磁気検出部の信号ノイズが低減する。
【0017】
第2の態様の異物検査装置は、上流から下流へ搬送方向に搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムに対し、含まれる可能性のある異物を検査する異物検査装置であって、前記第1フィルムの搬送方向の送り座標を検出する位置検出装置と、前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出装置と、信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する解析装置と、を有する。この態様によれば、フィルム状の被検査対象内において、金属種の異物の疑いがある位置を特定できる。
【0018】
望ましい態様として、前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出装置をさらに有し、前記解析装置は、前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成し、前記第1異物座標マップにおいて、前記第1種異物がある領域を、第2異物座標マップに重ね、前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と判断する。これにより、位置精度の高い第2異物座標マップと同じ精度で、第1種異物を特定できる。
【0019】
第3の態様のスリッターは、上流から下流へ搬送方向に第1フィルムを搬送する走行ロールと、前記第1フィルムにスリットを入れて、複数の第2フィルムに分割するカッターロールと、前記カッターロールの上流側において、前記第1フィルムを検査対象とし、前記第1フィルムに含まれる可能性のある異物を検査する異物検査装置と、を有し、前記異物検査装置は、前記第1フィルムの搬送方向の送り座標を検出する位置検出装置と、前記搬送方向に直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部の信号を検出する磁気検出装置と、信号値が所定の閾値となった磁気検出部の前記幅方向の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値を出力した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標とに基づいて、前記第1フィルムにおける第1種異物の位置を示す第1異物座標マップを作成する解析装置と、を有する。この態様によれば、フィルム状の被検査対象内において、金属種の異物の疑いがある位置を特定できる。
【0020】
望ましい態様として、前記異物検査装置は、前記第1フィルムに、検査光を照射し、前記第1フィルムの画像を検出する画像検出装置をさらに有し、前記解析装置は、前記第1フィルムの画像から輝度差に基づいて、第2種異物を特定し、前記第1フィルムの画像を撮像した前記第1フィルムの前記搬送方向の送り座標と、当該画像における当該第2種異物の位置に基づいて、前記第1フィルムにおける当該第2種異物の位置を示す第2異物座標マップを作成し、前記第1異物座標マップにおいて、前記第1種異物がある領域を、第2異物座標マップに重ね、前記第1種異物がある領域と重なる第2種異物を第1種異物と判断する。これにより、位置精度の高い第2異物座標マップと同じ精度で、第1種異物を特定できる。
【発明の効果】
【0021】
上述した第1の態様から第3の態様によれば、フィルム状の被検査対象内において、金属種の異物の疑いがある位置が特定される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、本実施形態の異物検査装置を備えたスリッターの全体構成を示す模式図である。
【
図2】
図2は、本実施形態の画像検出装置の模式図である。
【
図3】
図3は、本実施形態の磁気検出装置の位置と磁気検出領域を説明するための模式図である。
【
図4】
図4は、本実施形態において、隣り合う3つの磁気検出部の検出例を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、本実施形態の異物検査方法のフローチャートを説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の異物検査方法において、第3異物座標マップ作成を説明するフローチャートである。
【
図7】
図7は、本実施形態の第1異物座標マップの一例を示す説明図である。
【
図8】
図8は、本実施形態の第2異物座標マップの一例を示す説明図である。
【
図9】
図9は、本実施形態の第3異物座標マップの一例を示す説明図である。
【
図10】
図10は、本実施形態の変形例において、第1種異物に置き換える第2種異物を説明するための説明図である。
【
図11】
図11は、本実施形態の変形例において、第1種異物に置き換える複数の第2種異物を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき、図面を参照しつつ説明する。なお、下記の実施形態により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0024】
図1は、本実施形態の異物検査装置を備えたスリッターの全体構成を示す模式図である。
図2は、本実施形態の画像検出装置の模式図である。
図3は、本実施形態の磁気検出装置の位置と磁気検出領域を説明するための模式図である。以下、
図1から
図3を適宜参照して、第1フィルムFMLの異物検査装置20を説明する。
【0025】
(異物検査装置)
図1に示すように、異物検査装置20は、走行ロールRRにより搬送されている第1フィルムFMLの異物を検出する装置である。異物検査装置20は、位置検出装置8と、画像検出装置5と、磁気検出装置1と、解析装置10とを備えている。
【0026】
スリッター100は、異物検査装置20を備えている。スリッター100は、走行ロールRRと、カッターロールCRとを少なくとも備えている。スリッター100は、カッターロールCRで、巻き取った原反MRにスリットCL(
図3参照)を入れて、巻き取り複数の第2フィルムQAからQHを得る。第1フィルムFMLが分割され、複数の第2フィルムQAからQHとなる。複数の第2フィルムQAからQHが製品ロールRLになる。
図3において、カッターロールCRがスリットCLを入れる位置が位置SLTである。
【0027】
第1フィルムFMLは、フィルムの幅方向の両端の厚みが中央部に比して厚くなりやすいため、フィルムの幅方向の両端部QQをそれぞれ、成膜時の幅FMLWから所定量だけ削除する耳取り加工を行った上で、巻き取る。なお、耳取り加工は、しなくてもよい。
【0028】
第1フィルムFMLは、本実施形態に係る異物検査装置20または異物検査方法のフィルム状の被検査対象である。第1フィルムFMLは、熱可塑性樹脂で形成されている。例えば、第1フィルムFMLは、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂(ABS)、アクリロニトリル・エチレン-プロピレン-ジエン・スチレン樹脂(AES)、アクリロニトリル・スチレン・アクリレート樹脂(ASA)、塩化ビニル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂や、これらを2種類以上組み合わせた樹脂、これらを2種類以上積層した樹脂、またはこれらの樹脂に繊維や微粒子を加えて形成されている。
【0029】
位置検出装置8は、走行ロールRRを回転させるモータ回転量を計測し、第1フィルムFMLの送り座標を検出するエンコーダである。位置検出装置8は、送り座標の情報を解析装置10へ伝送する。位置検出装置8は、走行ロールRRの回転量を計測し、第1フィルムFMLの送り座標を検出するエンコーダであってもよい。あるいは、位置検出装置8は、光学的に第1フィルムFML自体の送り量を検出し、送り座標を検出するエンコーダであってもよい。
【0030】
画像検出装置5は、撮像装置6と、照射装置7を備える。
図2に示すように、照射装置7は、撮像装置6の光軸上に配置されている。第1フィルムFMLは、照射装置7と撮像装置6との間を通過する。
【0031】
図2に示すように、撮像装置6は、搬送方向Fに移動する第1フィルムFMLの表面に焦点が合うように、配置されている。撮像装置6は、ラインカメラとも呼ばれる。撮像装置6は、
図2に示すように、搬送方向F(
図1参照)と直交する撮像領域PBにおいて、第1フィルムFMLの幅方向の長さが一括して画像として撮像可能なように、画角を有している。このため、撮像装置6は、第1フィルムFMLの表面の全幅を撮像領域PBとした画像を撮像できる。撮像装置6は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)を用いた固体撮像素子、相補性金属酸化膜半導体(CMOS:Complementary Metal Oxide Semiconductor)を用いた固体撮像素子、または金属酸化膜半導体(MOS:Metal Oxide Semiconductor)を用いた固体撮像素子のいずれかを有している。
【0032】
図2に示すように、照射装置7の幅方向の長さが第1フィルムFMLの幅方向の長さFMLWよりも大きい。このため、照射装置7が第1フィルムFMLの幅方向に渡って第1フィルムFMLの裏面(第1面)を均一に照らすことができるので、第1フィルムFMLの表面(第2面)から透過する透過光の強度むらが抑制される。
【0033】
図2に示すように、照射装置7は、筐体内に、例えば発光ダイオード(LED:Light Emitting Diode)、蛍光灯、またはハロゲンランプなどの光源体と、光源体からの光が照射される。
【0034】
照射装置7が第1フィルムFMLに、検査光を透過させると、内部の異物、気泡などの内部欠陥が撮像装置6に輝度差(明度差)として感度よく検出される。
【0035】
図2に示すように、照射装置7から照射された検査光は、例えば拡散光であり、第1フィルムFMLの撮像領域PBを少なくとも透過し、透過光が撮像装置6に画像として検出される。撮像装置6は、撮像領域PBを撮像した画像の情報を解析装置10へ伝送する。
【0036】
帯磁器2は、第1フィルムFMLの一方側に、S極を向けた第1永久磁石と、第1フィルムFMLの他方側に、N極を向けた第2永久磁石を備える。第1フィルムFMLが帯磁器2を通過する。万が一、磁化可能な金属種の異物が第1フィルムFMLに混入している場合、一対の第1永久磁石と第2永久磁石との間の磁場で金属種の異物が磁化される。
【0037】
図1に示すように、磁気検出装置1は、帯磁器2よりも搬送方向Fの後方の磁気検出位置PAにおいて、磁界の変化を検出している。
図3に示すように、磁気検出装置1は、複数の磁気検出部SE1からSEnを備えている。複数の磁気検出部SE1からSEnは、第1フィルムFMLの搬送方向Fに直交する幅方向に並べられている。
【0038】
磁気検出部SE1からSEnは、それぞれフラックスゲートセンサである。これにより、磁化された第1種異物を精度よく検出することができる。フラックスゲートセンサは、特許文献2に記載されている構成を用いればよいので、詳細な説明は省略する。なお、磁気検出部SE1からSEnは、フラックスゲートセンサの代わりに、異方性磁気抵抗効果、巨大磁気抵抗効果またはトンネル磁気抵抗効果などを応用した磁気抵抗効果素子、あるいは、磁気インピーダンスセンサを用いてもよい。
【0039】
磁気検出部SE1からSEnは、第1フィルムFMLに対する距離は、10mm以内である。これにより、磁気検出部SE1からSEnは、必要な感度を確保できる。磁気検出部SE1からSEnは、外乱磁界の影響を低減する金属製のシールドボックスに収容されている。
【0040】
図3に示すように、1つの磁気検出領域は、px×pyの単位で区画される。ここで、幅方向の長さpyは、幅方向に並べられた磁気検出部SE1からSEnのうち、隣り合う磁気検出部の距離と同じである。搬送方向Fの長さpxは、幅方向に並べられた磁気検出部SE1からSEnのうち、隣り合う磁気検出部の距離と同じである。
【0041】
磁気検出部SE1は、磁気検出領域P11から磁気検出領域Pm1を検出する。磁気検出部SE2は、磁気検出領域P12から磁気検出領域Pm2を検出する。磁気検出部SE3は、磁気検出領域P13から磁気検出領域Pm3を検出する。磁気検出部SE4は、磁気検出領域P14から磁気検出領域Pm4を検出する。以下同様であり、磁気検出部SEnは、磁気検出領域P1nから磁気検出領域Pmnを検出する。そして、各区画が磁気検出領域P11から磁気検出領域Pmnとして識別された状態で、記憶部15に記憶される。
【0042】
本実施形態において、異物検査装置20は、帯磁器2と、磁気検出装置1との間に、静電除去装置3を備えている。静電除去装置3は、イオナイザーとも呼ばれ、コロナ放電を発生させ、イオン化した空気で第1フィルムFMLの静電気を除去する。これにより静電気による磁気検出部SE1からSEnの信号ノイズが抑制される。
【0043】
解析装置10は、いわゆるコンピュータであり、入力インターフェースと、出力インターフェースと、CPU(Central Processing Unit)と、ROM(Read Only Memory)と、RAM(Random Access Memory)と、記憶部15と、を有している。入力インターフェースには、位置検出装置8と、撮像装置6、磁気検出装置1が接続されており、出力インターフェースには、表示装置19が接続されている。CPU、ROM、RAM及び記憶部15は、バスで接続されている。ROMには、BIOS(Basic Input Output System)等のプログラムが記憶されている。記憶部15は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やフラッシュメモリ等であり、オペレーティングシステムプログラムやアプリケーションプログラムを記憶している。CPUは、演算手段であり、RAMをワークエリアとして使用しながらROMや記憶部15に記憶されているプログラムを実行することにより、位置取得部11、磁気検出分析部12、画像処理部13、種別分析部14の機能を実現する。記憶部15は、内蔵であっても外付けであってもよく、RAMを一時記憶として使ってもよく、あるいは、ネットワーク上の記憶装置やサーバ等であってもよい。
【0044】
本実施形態において、磁化可能な金属種の異物は、第1種異物とし、第1種異物以外の磁化不能な異物、内部欠陥は、第2種異物という。磁化可能な金属種としては、鉄、ニッケル、コバルト、フェライト系ステンレスのみならず、オーステナイト系ステンレスを含む。オーステナイト系ステンレスは、応力が加えられると、磁化される性質があるため、磁化可能な金属種となる。
【0045】
位置取得部11は、位置検出装置8で検出した第1フィルムFMLの送り座標と、磁気検出位置PAの位置とを関連付けて、第1フィルムFMLの第1異物座標を記憶部15に保存する。磁気検出分析部12は、第1異物座標において、磁気検出装置1が検出した第1種異物としてプロットした第1異物座標マップを記憶部15に保存する。
【0046】
位置取得部11は、位置検出装置8で検出した第1フィルムFMLの送り座標と、撮像領域PBの位置とを関連付けて、第1フィルムFMLの第2異物座標を記憶部15に保存する。画像処理部13は、第2異物座標において、撮像装置6が検出した異物、内部欠陥を全て第2種異物としてプロットした第2異物座標マップを記憶部15に保存する。
【0047】
磁気検出位置PAと、撮像領域PBとの間の距離は、第1フィルムFML上の搬送方向Fの距離として既知である。磁気検出位置PAと、撮像領域PBとの間の距離は、記憶部15に記憶されている。このため、解析装置10は、第1フィルムFMLの送り座標を基準として、磁気検出位置PAの位置及び撮像領域PBの位置とを関連付けることができる。
【0048】
種別分析部14は、第2異物座標マップにおいて、第1種異物として置き換えるべき第2種異物を特定する。
【0049】
(異物検査方法)
図1に示すように、スリッター100により、第1フィルムFMLから複数の第2フィルムQAからQHが製造される。第1フィルムFMLは、異物検査装置20により、異物検査方法が実行される。
【0050】
図4は、本実施形態において、隣り合う3つの磁気検出部の検出例を説明するための説明図である。
図4においては、
図3に示す複数の磁気検出部SE1からSEnのうち、複数の磁気検出部SE1からSE3を例示して具体的に説明する。
図5は、本実施形態の異物検査方法のフローチャートを説明するための説明図である。
図6は、本実施形態の異物検査方法において、第3異物座標マップ作成を説明するフローチャートである。
図7は、本実施形態の第1異物座標マップの一例を示す説明図である。
図8は、本実施形態の第2異物座標マップの一例を示す説明図である。
図9は、本実施形態の第3異物座標マップの一例を示す説明図である。
【0051】
図5に示すように、異物検査装置20は、搬送方向Fに移動する第1フィルムFMLに対して、磁気検出を行う磁気検出ステップを処理する(ステップST1)。
図3に示すように、磁気検出部SE2の磁気を検出可能な磁気検出幅SAは、幅方向に隣り合う磁気検出部SE1及び磁気検出部SE2の磁気検出部領域とオーバーラップしている。複数の磁気検出部SE1からSE3が、例えば30mm間隔で配置されている場合、磁気検出部SE2の磁気を検出可能な磁気検出幅SAは、60mmである。複数の磁気検出部SE1からSE3が、例えば25mm間隔で配置されている場合、磁気検出部SE2の磁気を検出可能な磁気検出幅SAは、50mmである。
【0052】
図4において、磁気検出部SE1からSE3のそれぞれの検出電圧と、第1フィルムFMLの送り座標Fxとの関係が示されている。例えば、
図3に示す磁気検出部SE1が、磁気検出領域P11を検出している。磁気検出部SE2が、磁気検出領域P12を検出している。磁気検出部SE3が、磁気検出領域P13を検出している。検出電圧Vse1、検出電圧Vse2、検出電圧Vse3は、本実施形態の磁気検出部SE1からSE3の信号値である。
【0053】
図4に示すように、磁気検出部SE1の検出電圧Vse1と磁気検出部SE2の検出電圧Vse2とを比較すると、同じ送り座標Fxにおいて、磁気検出部SE1と磁気検出部SE2は、閾値Th以上となる検出電圧Th1、Th2を出力する。一方、磁気検出部SE2の検出電圧Vse2と磁気検出部SE3の検出電圧Vse3とを比較すると、同じ送り座標Fxにおいて、磁気検出部SE2のみが、閾値Th以上となる検出電圧Th2を出力する。
【0054】
次に、磁気検出部SE1の検出電圧Vse1の最高値と、磁気検出部SE2の検出電圧Vse2の最高値と、が比較される。ここで、磁気検出部SE1の検出電圧Vse1の最高値が磁気検出部SE2の検出電圧Vse2の最高値よりも大きい場合、磁気検出分析部12は、
図3に示す磁気検出領域P11に第1種異物があることを分析できる。
【0055】
または、磁気検出部SE1の検出電圧Vse1の最高値が磁気検出部SE2の検出電圧Vse2の最高値よりも小さい場合、磁気検出分析部12は、
図3に示す磁気検出領域P12に第1種異物があることを分析できる。
【0056】
あるいは、磁気検出部SE1の検出電圧Vse1の最高値が磁気検出部SE2の検出電圧Vse2の最高値と同じ場合、磁気検出分析部12は、
図3に示す磁気検出領域P11と磁気検出領域P12との境界に、第1種異物があることを分析できる。
【0057】
図4に示すように、磁気検出部SE1の検出電圧Vse1と磁気検出部SE2の検出電圧Vse2とを比較すると、送り座標Fxの所定範囲内(
図3に示す1つの磁気検出領域分の長さpxの範囲内)において、磁気検出部SE2が磁気検出部SE1よりも先に、閾値Th以上となる検出電圧Th21を出力する場合がある。一方、磁気検出部SE2の検出電圧Vse2と磁気検出部SE3の検出電圧Vse3とを比較すると、送り座標Fxの所定範囲内(
図3に示す1つの磁気検出領域分の長さpxの範囲内)において、磁気検出部SE2のみが、閾値Th以上となる検出電圧Th21を出力する。これにより、磁気検出分析部12は、例えば
図3に示す磁気検出領域P12内において、磁気検出領域P11側に、第1種異物があることが分析できる。磁気検出分析部12は、第1異物座標マップMAP1(
図7参照)において、磁気検出領域P11に第1種異物Meの座標をプロットする。なお、送り座標Fxの所定範囲は、
図3における長さpxである。
【0058】
なお、送り座標Fxの所定範囲内(
図3に示す1つの磁気検出領域分の長さpxの範囲内)において、1つの磁気検出部が、閾値Th以上となる検出電圧を有する2つの波形を捉えた場合、1つ目の波形に基づいて、処理を行えばよい。1つの磁気検出領域に、第1異物があることに変わりがないからである。
【0059】
磁気検出分析部12は、分析の結果、
図7に示すような第1異物座標マップMAP1を作成する第1異物座標マップMAP1作成ステップを処理する(ステップST2)。第1異物座標マップMAP1の第1座標は、
図3及び
図7に示すpx×pyの単位で区画されるm行n列の磁気検出領域で定義される。
図7に示すように、隣り合う磁気検出部SE1からSE3のそれぞれの検出電圧を比較し、閾値Th以上となる検出電圧を超えた磁気検出部と、閾値Th以上となる検出電圧を超えた第1フィルムFMLの送り座標とから、第1種異物Meの座標が、第1異物座標マップMAP1の第1異物座標にプロットされる。つまり、第1異物座標マップMAP1は、第1種異物Meの位置を示すためのマップである。
【0060】
搬送方向Fにおいて、送り座標Fxの所定範囲内(
図3に示す1つの磁気検出領域分の長さpxの範囲内)で、隣り合う磁気検出部が閾値Th以上の信号を検出した場合、大きい信号を出力した磁気検出部側の幅方向の位置座標を付与した第1種異物Meを第1異物座標マップMAP1にプロットする。
【0061】
図5に示すように、異物検査装置20は、搬送方向Fに移動する第1フィルムFMLに対して、画像検出を行う画像検出ステップを処理する(ステップST11)。撮像装置6は、撮像領域PBを撮像した画像の情報を解析装置10へ伝送する。
【0062】
画像処理部13は、
図8に示すような第2異物座標マップMAP2を作成する第2異物座標マップMAP2作成ステップを処理する(ステップST12)。第2異物座標マップMAP2の座標は、
図8に示すgx×gyの単位で区画されるM行N列の画像検出領域で定義される。長さgxは、長さpx(
図7参照)よりも小さく、長さgyは、長さpy(
図7参照)よりも小さい。gx×gyは、1mm×1mm以下である。このため、画像検出領域は、上述した磁気検出領域よりも小さい。その結果、画像検出による異物の位置精度は、磁気検出による異物の位置精度よりも高い。そして、画像処理部13は、第2異物座標において、撮像装置6が検出した異物、内部欠陥を全て第2種異物Cとしてプロットした第2異物座標マップMAP2を記憶部15に保存する。つまり、第2異物座標マップMAP2は、第2種異物Cの位置を示すためのマップである。
【0063】
次に、
図5に示すように、種別分析部14は、第3異物座標マップMAP3を作成する第3異物座標マップMAP3作成ステップを処理する(ステップST3)。以下、
図6を参照しつつ、ステップST3について説明する。
【0064】
種別分析部14は、記憶部15に保存されている、ステップST2で作成した第1異物座標マップMAP1を読み込む。そして、
図6に示すように、種別分析部14は、第1異物座標マップMAP1において、第1種異物Meがある領域AM1及び領域AM2を特定する(ステップST31)。
【0065】
ここで、
図7に示すように、第1種異物Meがある領域AM1は、4つの磁気検出領域に跨がる位置に、第1種異物Meがある。このため、第1種異物Meがある領域AM1は、1つの磁気検出領域の4倍となる。図示は省略するが、第1種異物Meがある位置が2つの磁気検出領域に跨がる場合、第1種異物Meがある領域は、1つの磁気検出領域の2倍となる。
【0066】
第1種異物Meがある領域AM2は、1つの磁気検出領域内に第1種異物Meがある。このため、第1種異物Meがある領域AM2は、1つの磁気検出領域となる。
【0067】
次に、種別分析部14は、ステップST12で作成した第2異物座標マップMAP2を読み込む。
図8に示すように、種別分析部14は、第1種異物Meがある領域AM1、AM2と重なる第2異物座標マップMAP2の第2種異物Cを第1種異物Meと特定する(ステップST32)。
【0068】
図7に示すように、第1種異物Meがある領域AM1には、1つの第2種異物Cがある。第1種異物Meがある領域AM2には、2つの第2種異物Cがある。本実施形態において、第1種異物Meがある領域AM1と重なる2つの第2種異物Cは、両方とも第1種異物Meに置き換えられる。これにより、第1種異物Meとして疑いのある異物が全て第1種異物Meとされ、第1種異物Meの見逃しが抑制される。
【0069】
次に、種別分析部14は、
図9に示すように、ステップST32で特定された第2種異物Cを第1種異物Meに置き換えた第3異物座標マップMAP3を作成する(ステップST33)。種別分析部14は、作成した第3異物座標マップMAP3を記憶部15に保存する。
【0070】
第1種異物Meがある領域AM1と重なる第2種異物Cは、第2異物座標マップMAP2の座標で第2種異物Cがあった位置のまま、第1種異物Meに置き換えられる。これにより、第3異物座標マップMAP3では、位置精度の高い第2異物座標マップMAP2と同じ精度で、第1種異物Meの位置が特定される。
【0071】
次に、種別分析部14は、
図5に示すように製品ロールRLの評価を行う(ステップST4)。
図3に示す位置SLTにおいて、第1フィルムFMLの幅方向のスリットCLの位置は、予め記憶部15に記憶されている。このため、
図9に示す第3異物座標マップMAP3における第1種異物Meが、
図3に示す第2フィルムQAからQHのいずれか、あるいは、両端部QQに含まれるかを、種別分析部14が、演算により特定する。
【0072】
種別分析部14は、
図3に示す第2フィルムQAからQHのうち、第1種異物Meが含まれる第2フィルムを、第1種異物Meが含まれない第2フィルムよりも品質の等級を下げて、評価する。
【0073】
以上説明したように、異物検査装置20は、上流から下流へ搬送方向Fに搬送されるフィルム状の被検査対象である第1フィルムFMLに対し、含まれる可能性のある異物を検査する。
【0074】
例えば、食品業界や医療業界において、内臓等が傷つけられる可能性があるため、金属種の異物は重大欠点に位置付けられている。金属種の異物の大きさとしては、0.05mm2以上の金属種の異物の混入が抑制されることが求められている。金属種の異物は、生産設備に起因する粉塵などが混入することによると考えられる。生産設備は、耐久性の観点から鉄やステンレスが用いられることが多い。生産設備に起因する磁化可能な金属種の異物は、重大欠点と認識されていることから、炭化異物に比べて品質の等級を下げて判断する必要がある。本実施形態の異物検査装置20、スリッター100及び異物検査方法は、生産設備に起因する磁化可能な金属種の異物と、それ以外の炭化異物を区別することができる。
【0075】
異物検査装置20は、少なくとも、位置検出装置8と、磁気検出装置1と、解析装置10とを備えている。磁気検出装置1は、搬送方向Fに直交する幅方向に複数並べられた磁気検出部SE1からSEnを備える。解析装置10は、磁気検出部SE1からSEnのうち、信号値が所定の閾値Thとなった磁気検出部の位置と、当該磁気検出部の信号が閾値Thを出力した第1フィルムFMLの搬送方向Fの送り座標とに基づいて、第1フィルムFMLにおける第1種異物Meの位置を示す第1異物座標マップMAP1を作成する。これにより、異物検査装置20は、第1フィルムFML内において、金属種の異物の疑いがある位置を特定できる。スリッター100において、異物検査装置20は、カッターロールCRの上流側の第1フィルムFMLを検査対象とし、第1フィルムFMLに含まれる可能性のある異物を検査する。これにより、第1種異物Meが、
図3に示す第2フィルムQAからQHのいずれか、あるいは、両端部QQに含まれるかの判断は、より精度が高くなる。
【0076】
ここで磁気検出装置1は、0.05mm2以上の第1種異物Meに対して、1つの磁気検出部が閾値Th以上の信号を出力するように設定している。これにより、0.05mm2以上の金属種の異物が精度よく検出できる。
【0077】
なお、第1異物座標マップMAP1、第2異物座標マップMAP2、第3異物座標マップMAP3は、表示装置19に表示される。
【0078】
(変形例)
図10は、本実施形態の変形例において、第1種異物に置き換える第2種異物を説明するための説明図である。変形例において、同じ構成要素については、同じ符号を付して詳細な説明を省略する。
図10において、左側の第2異物座標マップMAP2の座標原点と、右側の第1異物座標マップMAP1とが、第1フィルムFMLの同じ送り座標で比較されている。
【0079】
図10に示す領域AM11の幅方向の長さpyは、幅方向に並べられた磁気検出部SE1からSEnのうち、隣り合う磁気検出部の距離と同じである。領域AM11の搬送方向Fの長さpxは、幅方向に並べられた磁気検出部SE1からSEnのうち、隣り合う磁気検出部の距離と同じである。
【0080】
本変形例では、第2異物座標マップMAP2の第2種異物Cと、領域AM11の中心を合わせる。第1異物座標マップMAP1の領域AM11内に、第1種異物Meがある場合、第2種異物Cを第1種異物Meに置き換える。
【0081】
図11は、本実施形態の変形例において、第1種異物に置き換える複数の第2種異物を説明するための説明図である。
図11において、左側の第2異物座標マップMAP2の座標原点と、右側の第1異物座標マップMAP1とが、第1フィルムFMLの同じ送り座標で比較されている。
【0082】
図11に示す領域AM12の幅方向の長さpyは、幅方向に並べられた磁気検出部SE1からSEnのうち、隣り合う磁気検出部の距離と同じである。領域AM11の搬送方向Fの長さpxは、幅方向に並べられた磁気検出部SE1からSEnのうち、隣り合う磁気検出部の距離と同じである。領域AM13は、領域AM12と同じ大きさである。
【0083】
第2異物座標マップMAP2の1つ目の第2種異物Cと、領域AM12の中心を合わせる。第1異物座標マップMAP1の領域AM12内に、第1種異物Meがある場合、当該第2種異物Cを第1種異物Meに置き換える。
【0084】
第2異物座標マップMAP2の2つ目の第2種異物Cと、領域AM13の中心を合わせる。第1異物座標マップMAP1の領域AM13内に、第1種異物Meがある場合、当該第2種異物Cを第1種異物Meに置き換える。
【0085】
以上説明したように、
図5に示すステップST3において、種別分析部14は、第1異物座標マップMAP1と、第2異物座標マップMAP2とを、同じ送り座標で比較する。そして、種別分析部14は、第2異物座標マップMAP2において、各第2種異物Cを中心にして幅方向に並べられた隣り合う磁気検出部の距離の1/2以下の範囲である領域AM11内に、第1異物座標マップMAP1の第1種異物Meがある第2種異物Cを、第1種異物Meに置き換えて、第3異物座標マップMAP3を作成する。
【0086】
本実施形態の変形例において、以下のように種別分析部14は、演算してもよい。種別分析部14は、第1異物座標マップMAP1において、各第1種異物Meを中心にして幅方向に並べられた隣り合う磁気検出部の距離の1/2以下の範囲である特定領域を演算する。種別分析部14は、この特定領域を第2異物座標マップMAP2の位置に重ね合わせ、特定領域内にある第2異物座標マップMAP2の第2種異物Cを、第1種異物Meに置き換えて、第3異物座標マップMAP3を作成する。これにより、精度の高い第2異物座標マップMAP2に基づいて、第1種異物か第2種異物かの判定が行われるので、誤判定が抑制される。
【0087】
以上、好適な実施形態を説明したが、本発明はこのような実施形態に限定されるものではない。実施の形態で開示された内容はあくまで一例にすぎず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で行われた適宜の変更についても、当然に本発明の技術的範囲に属する。上述した発明を基にして当業者が適宜設計変更して実施しうる全ての発明も、本発明の要旨を包含する限り、本発明の技術的範囲に属する。
【0088】
例えば、磁気検出部SE1からSEnは、特許文献3に記載したような、検出コイルであってもよい。
【0089】
一般的に「シート」とは、JISにおける定義上、薄く、一般にその厚みが長さと幅のわりには小さく平らな製品をいい、一般的に「フィルム」とは、長さ及び幅に比べて厚みが極めて小さく、最大厚みが任意に限定されている薄い平らな製品で、通常、ロールの形で供給されるものをいい(日本工業規格JISK6900)、しかし、シートとフィルムの境界は定かでなく、本実施形態においては両者を同義として用い、統一して「フィルム」と記す。
【符号の説明】
【0090】
1 磁気検出装置
2 帯磁器
3 静電除去装置
5 画像検出装置
6 撮像装置
7 照射装置
8 位置検出装置
10 解析装置
11 位置取得部
12 磁気検出分析部
13 画像処理部
14 種別分析部
15 記憶部
19 表示装置
20 異物検査装置
100 スリッター
C 第2種異物
CL スリット
CR カッターロール
F 搬送方向
FML 第1フィルム
MAP1 第1異物座標マップ
MAP2 第2異物座標マップ
MAP3 第3異物座標マップ
Me 第1種異物
MR 原反
SE1、SE2、SE3、SE4・・・SEn 磁気検出部
Th 閾値