(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】定着装置および画像形成装置
(51)【国際特許分類】
G03G 15/20 20060101AFI20220621BHJP
【FI】
G03G15/20 525
(21)【出願番号】P 2018124270
(22)【出願日】2018-06-29
【審査請求日】2021-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】岡本 潤
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 聖治
(72)【発明者】
【氏名】今田 高広
(72)【発明者】
【氏名】和井田 匠
【審査官】稲荷 宗良
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-095372(JP,A)
【文献】特開2006-064744(JP,A)
【文献】特開2000-214722(JP,A)
【文献】特開平08-044220(JP,A)
【文献】特開2009-069398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 15/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられた定着部材と、
前記定着部材を加熱する加熱手段と、
回転可能に設けられ、前記定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材と、
前記加圧部材のクリーニングを行うクリーニング部材と、を備え、
前記ニップ部に未定着のトナー画像を担持した記録媒体を通過させて、前記トナー画像を前記記録媒体上に定着させる定着装置において、
前記クリーニング部材に当接して熱を吸収し、冷却するための吸熱部材をさらに備え、
前記クリーニング部材は、前記加圧部材と接離可能に配置された回転可能な部材であり、
前記加圧部材の表面温度が、所定の時間継続して所定の温度を超えたとき、前記加圧部材から離間し、
前記吸熱部材は、前記クリーニング部材が前記加圧部材と離間しているときに、前記クリーニング部材に当接することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記クリーニング部材は、ブラシ部材であることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記吸熱部材に離型剤を塗布する離型剤塗布部材を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記離型剤塗布部材は、回転可能な部材であり、駆動手段により回転動作を行うことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記吸熱部材は、吸熱手段として内部にヒートパイプを備えた回転部材であることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の定着装置。
【請求項6】
前記クリーニング部材は、前記記録媒体が前記ニップ部を通過中は前記加圧部材と当接し、前記記録媒体が前記ニップ部を通過した後に前記加圧部材から離間することを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の定着装置。
【請求項7】
請求項1から
6のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定着装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置として、電子写真方式を利用した画像形成装置が知られている。その画像形成プロセスは、像担持体である感光ドラムの表面に静電潜像を形成し、該静電潜像を現像剤であるトナー等によって現像して可視像化し、現像された画像を転写装置により記録媒体(記録材、用紙、記録紙ともいう)に転写して画像を担持させ、圧力や熱等を用いる定着装置によって記録媒体上の未定着トナー像を定着する過程により成立している。
【0003】
定着装置としては、例えば、内部に熱源を持つ定着部材(定着ローラ)と、定着部材に圧接する加圧部材(加圧ローラ)とを備え、加圧部材と定着部材との圧接によって形成された定着ニップ部(ニップ部)により未定着トナー像を担持した記録媒体を挟持搬送しつつ加熱し、定着させるものが知られている。
【0004】
このような定着装置において、定着部材の表面には、トナー付着防止のための工夫が施されている。しかしながら、記録媒体の種類、形成される画像、設置環境などの条件によって、通紙した記録媒体からトナーが若干定着部材に付着する、いわゆるオフセットと呼ばれる現象が起こることが知られている。このオフセットしたトナー(オフセットトナーともいう)は定着部材や加圧部材に残るため、その後、記録媒体等に逆転写し、画像を汚してしまうことがある。
トナーのオフセットは、近年の定着装置の省エネルギー化に付随したトナーの低融点化や、高画質化のためのトナーの小粒径化等の傾向に伴い発生しやすくなっているという側面がある。
【0005】
また、定着部材の表面には、記録媒体である転写紙に含まれている炭酸カルシウムや填料などの紙粉等も付着することがあり、さらにこれらとトナー(定着部材から加圧部材に回り込んだオフセットトナーを含む)とが結合して成長し、固着してしまう場合もある。
【0006】
このような現象を防止するために、定着部材や加圧部材に付着または固着したトナー等を除去するためのクリーニング部材を設けた定着装置が知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。クリーニング部材としては、例えば、回転部材としてのクリーニングローラ、ブラシローラ等が知られている。
【0007】
しかしながら、クリーニング部材によって除去され、クリーニング部材に堆積したトナーは、熱により再溶融することがある。再溶融したトナーが定着部材や加圧部材又は記録媒体(用紙)へ逆転写してしまうという問題がある。
トナーの再溶融は、例えば、通紙可能の最大サイズの用紙に比較して小サイズの用紙を通紙する場合に顕著に発生する現象である。小サイズの用紙では定着ローラに接する面積が小さいため、定着ローラの狭い範囲でしか温度を奪わず、結果、非通紙部における定着ローラの温度が上昇し、対応する部分のクリーニング部材も高温になり、付着したトナーが溶け出してしまうことによる。再溶融したトナーの逆転写は、画像の汚れやジャムの発生を招くことがある。
【0008】
このような弊害を抑制し、長期間にわたって効果的に定着装置の回転部材に付着した汚れを除去することが可能なクリーニング装置が提案されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
特許文献3には、定着装置に含まれる回転部材に付着した汚れを清掃するための回転清掃部材と、該回転清掃部材に当接することによって、付着した付着物を除去する付着物除去部材と、回転清掃部材または回転清掃部材周辺の温度に応じて、付着物除去部材を回転清掃部材に当接および離間させる当接離間制御を行う当接離間制御手段とを備えるクリーニング装置が開示され、付着物の除去効果の大きい温度領域においては付着物除去部材を回転清掃部材に当接させ、付着物の除去効果の小さい温度領域においては付着物除去部材を回転清掃部材から離間させる構成が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献3の装置によれば、クリーニング部材である回転清掃部材に当接させる付着物除去部材周辺の温度が高すぎる場合、付着物除去部材を離間させることで、軟化・溶融して高い粘着性を示すようになった、または流動状態となったトナーが再び回転清掃部材に粘着して清掃効果を低下させるのを防ぐことができるとされている。
【0011】
しかしながら、定着装置が連続稼働中で十分に高温になっている場合においては、溶融した付着物が回収ローラから回転清掃部材(ブラシローラ)へ拡散しながら移動するだけで付着物は除去されないため、画像の汚れやジャムの発生を抑制することが困難である。
【0012】
そこで、本発明は、クリーニング部材により除去したトナー等の再溶融による加圧ローラ及び定着ローラへの逆転写を防止することができ、画像の汚れやジャムの発生を抑制可能な定着装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するために、本発明に係る定着装置は、回転可能に設けられた定着部材と、前記定着部材を加熱する加熱手段と、回転可能に設けられ、前記定着部材との間にニップ部を形成する加圧部材と、前記加圧部材のクリーニングを行うクリーニング部材と、を備え、前記ニップ部に未定着のトナー画像を担持した記録媒体を通過させて、前記トナー画像を前記記録媒体上に定着させる定着装置において、前記クリーニング部材に当接して熱を吸収し、冷却するための吸熱部材をさらに備え、前記クリーニング部材は、前記加圧部材と接離可能に配置された回転可能な部材であり、前記加圧部材の表面温度が、所定の時間継続して所定の温度を超えたとき、前記加圧部材から離間し、前記吸熱部材は、前記クリーニング部材が前記加圧部材と離間しているときに、前記クリーニング部材に当接することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、クリーニング部材により除去したトナー等の再溶融による加圧ローラ及び定着ローラへの逆転写を防止することができ、画像の汚れやジャムの発生を抑制可能な定着装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の一実施形態に係る定着装置を搭載した画像形成装置を示す概略構成図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る定着装置を示す概略構成図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る定着装置の駆動手段の一部を示す概略構成図である。
【
図5】従来の定着装置の一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る定着装置および画像形成装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0017】
(画像形成装置)
図1は、本実施形態に係る定着装置を備えた画像形成装置1の全体概略図である。
図1に示すカラー画像形成装置1の中央には、4つのプロセスユニット9Y,9M,9C,9Kが着脱可能に設けられた画像形成部2が配置されている。各プロセスユニット9Y,9M,9C,9Kは、カラー画像の色分解成分に対応するイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の異なる色の現像剤を収容している以外は同様の構成となっている。
【0018】
具体的な各プロセスユニット9としては、表面上に現像剤としてのトナーを担持可能なドラム状の回転体である感光体ドラム10と、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる帯電ローラ11と、感光体ドラム10の表面にトナーを供給する現像ローラ13を有する現像装置12等を備えている。
【0019】
画像形成装置1の上部には、イエロー、シアン、マゼンタ、黒の各色トナーが充填されたトナーボトル26Y,C,M,Kが着脱可能に設けられている。そして、このトナーボトル26Y,C,M,Kから各現像装置12との間に設けた補給路を介して、各色の現像装置12に各色トナーが補給される。
【0020】
プロセスユニット9の下方には、露光部3が配置されている。露光部3は、画像データに基づいて、レーザ光を発するように構成されている。
【0021】
画像形成部2の上方には転写部4が配置されている。転写部4は、無端状の中間転写ベルト16と、各プロセスユニット9の感光体ドラム10に対して中間転写ベルト16を挟んだ対向位置に配置されている一次転写ローラ17と、転写部材としての二次転写ローラ18と、対向部材としての二次転写バックアップローラ14と、クリーニングバックアップローラ15と、テンションローラ27と、ベルトクリーニング装置28とを備える。
【0022】
中間転写ベルト16は、無端状のベルトであり、二次転写バックアップローラ14、クリーニングバックアップローラ15及びテンションローラ27によって張架されている。ここでは、二次転写バックアップローラ14を回転駆動することによって、中間転写ベルト16は図の矢印Aで示す方向に周回走行(回転)するようになっている。
【0023】
4つの一次転写ローラ17は、それぞれ、各感光体ドラム10との間で中間転写ベルト16を挟み込んで一次転写ニップを形成している。また、各一次転写ローラ17には、電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が各一次転写ローラ17に印加されるようになっている。
【0024】
二次転写ローラ18は、二次転写バックアップローラ14との間で中間転写ベルト16を挟み込んで、転写ニップとしての二次転写ニップMを形成している。また、上記一次転写ローラ17と同様に、二次転写ローラ18にも電源が接続されており、所定の直流電圧(DC)及び/又は交流電圧(AC)が二次転写ローラ18に印加されるようになっている。
【0025】
ベルトクリーニング装置28は、中間転写ベルト16に当接するように配設されたクリーニングブラシとクリーニングブレードを有する。このベルトクリーニング装置28で回収された廃トナーは、廃トナー移送ホースを介して廃トナー収容器に収容される。
【0026】
給紙部5は、画像形成装置1の下部に位置しており、記録媒体(以下、「用紙」ともいう)Pを収容した給紙カセット19や、給紙カセット19から用紙Pを搬出する給紙ローラ20等からなっている。
【0027】
搬送路6は、給紙部5から搬出された用紙Pを搬送する搬送経路であり、一対のレジストローラ21の他、後述する排紙部8に至るまで、搬送ローラ対が搬送路6の途中に適宜配置されている。
【0028】
本発明に係る定着装置7は、加熱源によって加熱される定着部材としての定着ローラ31、その定着ローラ31を加圧可能な、加圧部材としての加圧ローラ32等を有している。定着ローラ31は、加圧ローラ32との間で定着ニップ(以下、ニップ部という)Nを形成する。
【0029】
排紙部8は、画像形成装置1の搬送路6の最下流に設けられる。この排紙部8には、用紙Pを外部へ排出するための一対の排紙ローラ24と、排出された用紙Pをストックするための排紙トレイ25とが配設されている。
【0030】
画像形成部2、露光部3、転写部4等は、用紙Pに画像を形成するための画像形成手段である。
【0031】
以下、
図1を参照して上記画像形成装置1の基本的動作について説明する。
画像形成装置1において、画像形成動作が開始されると、各プロセスユニット9Y,9C,9M,9Kの感光体ドラム10の表面に静電潜像が形成される。各感光体ドラム10に露光部3によって露光される画像情報は、所望のフルカラー画像をイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックの色情報に分解した単色の画像情報である。各感光体ドラム10上には静電潜像が形成され、各現像装置12に蓄えられたトナーが、ドラム状の現像ローラ13によって感光体ドラム10に供給されることにより、静電潜像は顕像であるトナー画像(現像剤像)として可視像化される。
【0032】
転写部4では、二次転写バックアップローラ14の回転駆動により中間転写ベルト16が図の矢印Aの方向に走行駆動される。また、各一次転写ローラ17には、トナーの帯電極性と逆極性の定電圧又は定電流制御された電圧が印加される。これにより、一次転写ニップにおいて転写電界が形成され、各感光体ドラム10に形成されたトナー画像は一次転写ニップにて中間転写ベルト16上に順次重ね合わせて転写される。
【0033】
一方、画像形成動作が開始されると、画像形成装置1の下部では、給紙部5の給紙ローラ20が回転駆動することによって、給紙カセット19に収容された用紙Pが搬送路6に送り出される。搬送路6に送り出された用紙Pは、レジストローラ21によってタイミングを計られて、二次転写ローラ18と二次転写バックアップローラ14との間の二次転写ニップに送られる。このとき、中間転写ベルト16上のトナー画像のトナー帯電極性と逆極性の転写電圧が印加されており、二次転写ニップに転写電界が形成されている。二次転写ニップに形成された転写電界によって、中間転写ベルト16上のトナー画像が用紙P上に一括して転写される。
【0034】
トナー画像が転写された用紙Pは、定着装置7へと搬送され、定着ローラ31と加圧ローラ32とによって用紙Pが加熱及び加圧されてトナー画像が用紙Pに定着される。そして、トナー画像が定着された用紙Pは、定着ローラ31から分離され、搬送ローラ対によって搬送され、排紙部8において排紙ローラ24によって排紙トレイ25へと排出される。
【0035】
以上の説明は、用紙P上にフルカラー画像を形成するときの画像形成動作であるが、4つのプロセスユニット9Y,9C,9M,9Kのいずれか1つを使用して単色画像を形成したり、2つ又は3つのプロセスユニット9を使用して、2色又は3色の画像を形成したりすることも可能である。
【0036】
(定着装置)
図2及び
図3は、本実施形態に係る定着装置の要部構成の概略図である。
図2及び
図3に示す定着装置7は、回転可能に設けられた定着部材(以下、「定着ローラ」ともいう)31と、定着部材31を加熱する加熱手段29と、回転可能に設けられ、定着部材31との間にニップ部Nを形成する加圧部材(以下、「加圧ローラ」ともいう)32と、加圧部材32のクリーニングを行うクリーニング部材33と、を備え、ニップ部Nに未定着のトナー画像を担持した記録媒体Pを通過させて、トナー画像を記録媒体P上に定着させる装置である。
【0037】
定着装置7は、クリーニング部材33に当接して熱を吸収し、冷却するための吸熱部材(以下、「吸熱ローラ」ともいう)34をさらに備える。
クリーニング部材33は、加圧部材32と接離可能に配置された回転可能な部材であり、吸熱部材34は、クリーニング部材33が加圧部材32と離間しているときに、クリーニング部材33に当接する。
クリーニング部材33としては、例えば、ブラシ部材(ブラシローラ)が挙げられる。本実施形態においては、クリーニング部材33がブラシローラである態様について説明する。
【0038】
また、定着装置7は、吸熱部材34に離型剤を塗布する離型剤塗布部材(以下、「離型剤塗布ローラ」ともいう)35を備える。
離型剤塗布部材45は回転可能な部材であり、駆動手段により回転動作を行う。
吸熱ローラ34は離型剤塗布ローラ35に当接し、離型剤塗布ローラ35の回転により従動回転する。
【0039】
なお、図中、定着ローラ31、加圧ローラ32、ブラシローラ33、吸熱ローラ34及び離型剤塗布ローラ35の回転方向、並びに記録媒体Pの搬送方向を矢印で示している。
【0040】
図2は、クリーニング部材であるブラシローラ33が加圧ローラ32に当接している状態を示している。この場合、ブラシローラ33は吸熱ローラ34とは離間している。
図3は、クリーニング部材であるブラシローラ33が加圧ローラ32から離間している状態を示している。この場合、ブラシローラ33は吸熱ローラ34と当接し、吸熱ローラ34は離型剤塗布ローラ35とも当接している。
【0041】
ブラシローラ33は、加圧ローラ32の表面温度が、所定の時間継続して所定の温度を超えたとき、加圧ローラから離間するような構成とすることができる。
例えば、加圧ローラ32の表面温度と時間経過を検知可能な手段を配置し、基準を超える温度が基準となる時間を超えて継続して検知された場合に、ブラシローラ33を加圧ローラ32から離間させて吸熱ローラ34に当接するように動作を制御することができる。
ここで、基準となる温度及び時間は、トナーの再溶融を防止可能な範囲であれば印刷条件や環境等に応じて適宜選択することができる。例えば、表面温度が145~200℃の状態が5分以上継続した場合とすることができる。
【0042】
また、ブラシローラ33は、記録媒体Pがニップ部Nを通過中は加圧ローラ32と当接し、記録媒体Pがニップ部Nを通過した後に加圧ローラ32から離間する構成とすることもできる。
この場合、例えば、記録媒体Pの後端部の通過を検知する手段をニップ部Nの下流側に配置し、記録媒体Pが通過してニップ部Nを通過する記録媒体Pがない状態となった場合、ブラシローラ33を加圧ローラ32から離間させて吸熱ローラ34に当接するように動作を制御することができる。
【0043】
ブラシローラ33は、例えば、芯金と該芯金の外周面に設けられた多数のブラシ繊維とから構成されるものが挙げられる。ブラシ繊維により加圧ローラ32のオフセットトナー等の表面異物を絡め取り、回収することができる。
ブラシ繊維の材質としては、耐熱性を有することが好ましく、例えば、ポリイミド(PI)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等が挙げられる。
【0044】
吸熱ローラ34は、吸熱手段として内部にヒートパイプを備えた回転部材である。例えば、内部にヒートパイプを備え、外側がアルミ等の金属で構成されたローラ部材が挙げられる。
ヒートパイプを備えることにより、回転軸方向に均一な温度分布を実現することができる。
【0045】
離型剤塗布ローラ35は、離型剤を含有した離型剤塗布手段であり、例えば、芯金と該芯金の外周面に離型剤が含浸された塗布部材から構成されるものや、さらには表層に染み出し量を規制する制御層を設けたものなどが挙げられる。
塗布部材としては、含浸した離型剤を染み出して当接対象(吸熱ローラ34)に塗布可能なものであればよく、例えば、発泡体や不織布等が挙げられる。
【0046】
離型剤塗布ローラ35の駆動について
図4に基づき説明する。
図4に示すように、本実施形態の定着装置7は、加圧ローラ32を駆動する加圧ギヤ36、加圧ギヤに連結されたアイドラギヤ37、及び離型剤塗布ローラ35を駆動する塗布ローラギヤ38を備えている。
【0047】
図示しない画像形成装置本体のモータから加圧ギヤ36に駆動が伝達される。これにより加圧ローラ32が回転駆動される。または図示しない定着ギヤからの駆動を受けた加圧ギヤ36が加圧ローラ32軸にベアリングでアイドラギヤとして支持されている。さらに連結されたアイドラギヤ37を介して塗布ローラギヤ38に駆動伝達され、これにより離型剤塗布ローラ35が回転駆動される。
そして、離型剤塗布ローラ35に当接して吸熱ローラ34が従動回転する。
【0048】
上述のように、本実施形態の定着装置7は、加圧ローラ32上のトナー等の異物を直接清掃するブラシローラ33を接離可能に設け、さらにブラシローラ33を吸熱ローラ34と当接可能としているため、ブラシローラ33の温度上昇を抑制し、除去したトナー等の再溶融を防止することができる。これにより、溶け出したトナーによる逆転写の発生を防ぐことができ、画像の汚れや定着部の巻付きジャムの発生を抑制することができる。
【0049】
また、吸熱ローラ34を介して離型剤塗布ローラ35と当接することで離型剤を保持したブラシローラ33により、加圧ローラ32に離型剤が塗布されることとなり、オフセットトナーの発生量を低減することができる。
【0050】
図5は、従来のクリーニング手段を備えた定着装置の一例(特許文献3の装置)を示したものである。
図5に示すように、従来の定着装置においては、加圧ローラ32には、クリーニングとともに均熱を目的としたローラ部材134が当接している。ローラ部材134には異物除去のためのブラシローラ133が当接されている。ローラ部材134は、加圧ローラ32に常時当接している。このため、回収されたトナー等が溶け出し、逆転写により画像の汚れやジャムの発生を招くことがある。
【0051】
これに対し、本発明に係る定着装置7では、
図2及び
図3に示すように、加圧ローラ32上の異物をブラシローラ33で直接清掃する構成であり、加圧ローラ32が所定の高温条件を満たす場合にはブラシローラ33を加圧ローラ32から離間させ、吸熱ローラ34に当接させて温度を低下させると同時に、離型剤塗布ローラ35からの離型剤を、吸熱ローラ34を介して受け取る構成となっている。
これにより、ブラシローラ33の温度上昇によるトナーの溶け出しを抑制することができ、さらにオフセットトナーの発生量を低減させることができる。
【符号の説明】
【0052】
1 画像形成装置
7 定着装置
31 定着部材(定着ローラ)
32 加圧部材(加圧ローラ)
33 クリーニング部材(ブラシローラ)
34 吸熱部材(吸熱ローラ)
35 離型剤塗布部材(離型剤塗布ローラ)
36 加圧ギヤ
37 アイドラギヤ
38 塗布ローラギヤ
39 加熱手段
N ニップ部
P 記録媒体(用紙)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0053】
【文献】特開2006-64744号公報
【文献】特許第3608969号公報
【文献】特開2017-3759号公報