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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】片面研磨方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20220621BHJP
   B24B 49/14 20060101ALI20220621BHJP
   B24B 37/12 20120101ALI20220621BHJP
   B24B 37/015 20120101ALI20220621BHJP
【FI】
H01L21/304 622R
H01L21/304 621D
B24B49/14
B24B37/12 D
B24B37/015
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019089306
(22)【出願日】2019-05-09
(65)【公開番号】P2020188036
(43)【公開日】2020-11-19
【審査請求日】2021-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000190149
【氏名又は名称】信越半導体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健汰
(72)【発明者】
【氏名】大関 正彬
【審査官】杢 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-010610(JP,A)
【文献】特開2007-129115(JP,A)
【文献】特開平10-214807(JP,A)
【文献】国際公開第2011/135949(WO,A1)
【文献】特開平08-227867(JP,A)
【文献】特開平07-094452(JP,A)
【文献】特開平08-078369(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B24B 49/14
B24B 37/12
B24B 37/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研磨パッドを用いてウェーハの表面の研磨を行う片面研磨方法であって、
前記研磨パッドの温度変化をモニタリングし、
前記研磨の開始時から第1の条件で前記ウェーハの表面を研磨し、
前記研磨パッドの温度変化が上昇から下降に変化した時点で、前記第1の条件から第2の条件に切り替えて前記ウェーハの表面を研磨し、
前記第1の条件を、シリコン酸化膜を除去する条件とし、前記第2の条件を、シリコンウェーハを研磨する条件として、前記研磨を行うことを特徴とする片面研磨方法。
【請求項2】
前記第2の条件を、前記第1の条件に対して、スラリー、研磨荷重、及び研磨回転数のいずれか1つ以上が異なるものとして、前記研磨を行うことを特徴とする請求項1に記載の片面研磨方法。
【請求項3】
前記第2の条件で用いるスラリーを、前記第1の条件で用いるスラリーに対して、同じ種類で濃度が異なるもの、又は異なる種類のものとして、前記研磨を行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の片面研磨方法。
【請求項4】
前記研磨パッドの温度変化のモニタリングをリアルタイムで行うことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の片面研磨方法。
【請求項5】
前記研磨パッドの温度変化を前記研磨パッドが装着される定盤の温度変化に基づき検知することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の片面研磨方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、片面研磨方法に関する。
【背景技術】
【0002】
片面研磨では、研磨の初期段階でウェーハ表面に形成された自然酸化膜の除去がまず進行し、その後に露出したウェーハの表面(ベア面)の研磨がなされる。該研磨においては、近年の要求品質の高まりによって、面粗さや表面欠陥改善のために、スラリーや研磨パッドにウェーハへの保護性を高めた特性を持たせる傾向にある。一方で、そのような特性を持ったスラリーや研磨パッドを用いた研磨では、ウェーハへの保護性の高さに伴って、自然酸化膜の除去レートが極端に低下して生産性の低下を招いている。すなわち、自然酸化膜の除去と、ベア面の研磨とでは、それぞれに適した条件が異なっている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-139311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
以上から、片面研磨においては、まず、自然酸化膜の除去に適した条件で該自然酸化膜の除去を行い、その後にベア面(例えば、ベアシリコン)の研磨に適した条件でベア面を研磨することが好ましい。この時、自然酸化膜の除去に適した条件では、ベア面に対する研磨レートが概して高くなることから、エッジロールオフを抑えるために、自然酸化膜が除去された後、速やかにベア面の研磨に適した条件に切り替えることが必要となる。
【0005】
しかし、膜厚がナノメートルオーダーと極めて薄い自然酸化膜の除去完了を研磨中に即時検出することは一般的に困難である。このため、従来の片面研磨では、予め、自然酸化膜の除去時間を調べ、それにマージンを加えた時間を酸化膜除去時間とし、まず、自然酸化膜の除去に適した条件で該自然酸化膜の除去を行い、酸化膜除去時間が経過した後にベアシリコンの研磨に適した条件でベア面を研磨するという方法を用いていた。しかし、この研磨方法では、研磨時の雰囲気温度やバッチ推移などが原因し、バッチ毎に酸化膜除去時間にバラつきが発生するため、正確なコントロールができないことから、精度よくエッジロールオフを抑えるには限界があった。
【0006】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、自然酸化膜が除去されたことを正確に検出することで、エッジロールオフを十分に抑えることが可能な片面研磨方法を提案することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、研磨パッドを用いてウェーハの表面の研磨を行う片面研磨方法であって、前記研磨パッドの温度変化をモニタリングし、前記研磨の開始時から第1の条件で前記ウェーハの表面を研磨し、前記研磨パッドの温度変化が上昇から下降に変化した時点で、前記第1の条件から第2の条件に切り替えて前記ウェーハの表面を研磨することを特徴とする片面研磨方法を提供する。
【0008】
このような片面研磨方法によれば、研磨パッドの温度変化、すなわち、その時に実際に研磨を行っているバッチ(ウェーハ)の状態に基づき、研磨レシピを切り替えることができる。すなわち、上記片面研磨方法は、予め求められた酸化膜除去時間に基づき一律に研磨レシピの切り替えを行う場合と異なり、バッチ毎に、自然酸化膜が除去されたタイミングを正確に検知可能である。従って、片面研磨において、高精度でエッジロールオフを十分に抑えることが可能となる。
【0009】
前記第1の条件を、シリコン酸化膜を除去する条件とし、前記第2の条件を、シリコンウェーハを研磨する条件として、前記研磨を行うことが好ましい。
【0010】
これにより、シリコンウェーハの研磨において、該シリコンウェーハの表面に形成される自然酸化膜の除去完了を正確に検知できるようになるため、シリコンウェーハのエッジロールオフを改善し、フラットネス特性の向上を図ることができる。
【0011】
前記第2の条件を、前記第1の条件に対して、スラリー、研磨荷重、及び研磨回転数のいずれか1つ以上が異なるものとして、前記研磨を行うことが好ましい。
【0012】
このように、スラリー、研磨荷重、及び研磨回転数のいずれか1つ以上により研磨レシピの切り替えを行うことで、第1の条件による研磨(自然酸化膜の研磨)から第2の条件による研磨(ウェーハのベア面に対する研磨)にスムーズに切り替えることができる。
【0013】
なお、研磨荷重とは、研磨時にウェーハを保持した研磨ヘッドを定盤上の研磨パッドに押し付ける圧力のことであり、研磨回転数とは、研磨時における研磨ヘッド、定盤、又はこれら双方の回転数のことである。
【0014】
前記第2の条件で用いるスラリーを、前記第1の条件で用いるスラリーに対して、同じ種類で濃度が異なるもの、又は異なる種類のものとして、前記研磨を行うことが好ましい。
【0015】
このように、スラリーの濃度又は種類により研磨レシピの切り替えを行うことで、上記と同様に、第1の条件による研磨から第2の条件による研磨にスムーズに切り替えることができる。
【0016】
前記研磨パッドの温度変化のモニタリングをリアルタイムで行うことが好ましい。
【0017】
これにより、研磨パッドの温度変化が上昇から下降に変化した時点、すなわち、ウェーハ上の自然酸化膜の除去完了をより正確に検知できるため、シリコンウェーハのエッジロールオフを改善し、フラットネス特性の向上を図るという効果が増大する。
【0018】
前記研磨パッドの温度変化を前記研磨パッドが装着される定盤の温度変化に基づき検知することが好ましい。
【0019】
研磨パッドの温度は、例えば、放射温度計により直接測定することが可能であるが、定盤に温度センサを組み込み、定盤の温度を測定することで、定盤の温度変化に基づき研磨パッドの温度変化を検知することも可能である。この場合、廉価な温度センサを用いて簡単に研磨パッドの温度変化を検知できる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように、本発明によれば、自然酸化膜が除去されたことを正確に検出することで、高い精度でエッジロールオフを十分に抑えることが可能な片面研磨方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の片面研磨方法を示すフローチャートである。
図2】研磨パッドの温度変化を示す図である。
図3】研磨レシピの切り替えタイミングを示す図である。
図4】研磨前後でのESFQDの変化量を示す図である。
図5図4のESFQDの変化量をグラフ化した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
上記のとおり、片面研磨では、ウェーハ表面に形成された自然酸化膜の除去がまず進行し、その後に露出したベア面の研磨がなされる。ここで、自然酸化膜の除去に適した条件で該自然酸化膜を除去すると、該自然酸化膜が除去されたことを正確に検出することが難しいために、自然酸化膜が除去された後も同じ条件でベア面を研磨することになり、ウェーハのエッジロールオフが大きくなる問題があった。
【0023】
ここで、エッジロールオフとは、ウェーハ中央部における表面(基準平面)に対するウェーハのエッジ近傍での基準平面からの変位を意味し、ウェーハのフラットネス向上の観点からエッジロールオフを抑制することが望まれている。
【0024】
従来、このエッジロールオフを抑えるために、予め、自然酸化膜の除去時間を調べておき、それにマージンを加えた時間を酸化膜除去時間とし、まず、自然酸化膜の除去に適した条件で該自然酸化膜の除去を行い、酸化膜除去時間が経過した後にベア面の研磨に適した条件で該ベア面を研磨するという方法を用いていた。しかし、この研磨方法では、研磨時の雰囲気温度やバッチ推移などが原因し、バッチ毎に酸化膜除去時間にバラつきが発生するため、高い精度でエッジロールオフを抑えるには限界があった。
【0025】
このようなことから、自然酸化膜が除去されたことを正確に検出することで、エッジロールオフを十分に抑えることが可能な片面研磨方法の開発が望まれていた。
【0026】
本発明者らは、上記問題について鋭意検討を重ねた結果、片面研磨において、エッジロールオフを十分に抑えてウェーハのフラットネスの改善を図るには、ウェーハ表面の自然酸化膜が除去されたことを正確に検出することが最も重要であり、そのための手法を見出すことが必要であると考えた。また、従来のように、酸化膜除去時間を予め調べておく手法では、手間がかかる上に、バッチ間のバラつきを小さくすることが難しいと判断し、それ以外に、自然酸化膜が除去されたことを正確に検出する手法がないかに重点を置き、さらに鋭意検討を重ねた。
【0027】
その結果、全てのバッチに対して、予め求められた時間に基づき、一律に研磨レシピの切り替えを行うのではなく、バッチ毎に自然酸化膜の除去完了を検出することが、バッチ間のバラつき無く、正確に自然酸化膜の除去完了を検出できる唯一の手段との結論に至った。そして、バッチ毎に自然酸化膜の除去完了を検出する手法として、本発明者らは、研磨パッドの温度変化に着目した。
【0028】
すなわち、自然酸化膜の除去に適した研磨条件では、研磨開始に伴って自然酸化膜とスラリーが反応することで、研磨パッドの温度が急峻に上昇する。この後、自然酸化膜が完全に除去されて該反応が終了すると、研磨パッドの温度は、頂点に達した後に低下する。さらにこの後、ウェーハのベア面が研磨されると、再度、研磨パッドの温度が上昇する。本発明者らは、以上のような片面研磨時の挙動を発見した。
【0029】
そこで、本発明者らは、このような挙動に基づき、研磨パッドの表面の温度変化をモニタリングし、該温度変化が上昇(正)から下降(負)に変化した時点を自然酸化膜の除去が完了した時点とし、その時点で研磨レシピの切り替え(自然酸化膜の除去に適した条件からベア面の研磨に適した条件への切り替え)を行うことで、高精度でエッジロールオフを十分に抑えてウェーハのフラットネスの改善を図ることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0030】
すなわち、本発明は、研磨パッドを用いてウェーハの表面の研磨を行う片面研磨方法であって、前記研磨パッドの温度変化をモニタリングし、前記研磨の開始時から第1の条件で前記ウェーハの表面を研磨し、前記研磨パッドの温度変化が上昇から下降に変化した時点で、前記第1の条件から第2の条件に切り替えて前記ウェーハの表面を研磨することを特徴とする片面研磨方法である。
【0031】
以下、本発明の実施の形態について、添付した図面に基づいて具体的に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
【0032】
図1は、本発明の片面研磨方法を示す。図2は、研磨パッドの温度変化を示す。
図2の研磨パッドの温度変化におけるS1~S5は、図1のフローチャートにおけるS1~S5に対応する。
【0033】
まず、ステップS1に示すように、放射温度計を用いて、研磨パッドの表面の温度測定を開始する。併せて、研磨パッドの温度変化、すなわち、温度上昇率[℃/sec]の計算を開始する。ここで、研磨パッドの温度測定の開始時点は、研磨パッドの温度変化のモニタリングを開始する時点、すなわち、温度上昇率の計算を開始する時点の2秒前とする。
【0034】
なお、研磨パッドの温度変化のモニタリングは、研磨パッドの表面温度を測定した後、直ちに温度上昇率(δ/Δ)を計算することでリアルタイムに行うことができる。また、温度上昇率の計算は、放射温度計により測定された研磨パッドの表面温度に基づき計算しているが、これに代えて、研磨パッドの温度変化に対応しているものに基づいてもよく、例えば、温度センサにより測定された定盤温度に基づき計算してもよい。また、温度上昇率の計算は、1秒毎に行うのが好ましいが、これに限られず、数秒毎に行ってもよい。
【0035】
次に、ステップS2に示すように、ウェーハを保持した研磨ヘッドを研磨位置に移動させる。この後、ステップS3に示すように、自然酸化膜(例えば、シリコン酸化膜)を除去する第1の条件(研磨レシピR1:自然酸化膜除去条件)で、研磨を開始する。例えば、自然酸化膜を除去するのに適したスラリーを供給しながら研磨を行う。また、これに併せて、又はこれに代えて、自然酸化膜を除去するのに適した研磨荷重、又は研磨回転数で、研磨を行ってもよい。この時、自然酸化膜とスラリーとが反応し、その反応熱により研磨パッドの温度が急激に上昇する。なお、第1の条件での研磨を開始してからの研磨パッドの温度変化、すなわち、温度上昇率(δ/Δ)は、正である(図2のA参照)。
【0036】
次に、ステップS4に示すように、温度上昇率が正→0→負(図2のB→C参照)となった時点で、第1の条件から、ウェーハのベア面(例えば、シリコンウェーハ)を研磨する第2の条件(研磨レシピR2:ベア面研磨条件)で、研磨を継続する。例えば、ウェーハのベア面用の保護性の高いスラリーを供給しながら研磨を行う。ここで、ウェーハのベア面用の保護性の高いスラリーとしては、上記の自然酸化膜を除去するのに適したスラリーに対して、同じ種類で濃度が異なるもの、又は異なる種類のものが用いられる。
【0037】
また、本例では、第2の条件として、第1の条件に対して、スラリーを変化させているが、これに併せて、又はこれに代えて、研磨荷重又は研磨回転数をウェーハのベア面を研磨するのに適した値に変化させてもよい。
【0038】
なお、温度上昇率が正→0→負となった時点で研磨レシピの変更を行うのは、このように温度上昇率が正から負へ変わったということは、自然酸化膜とスラリーとの反応が終了したこと、すなわち、ウェーハ上の自然酸化膜が完全に除去されたことを意味するからである。
【0039】
この後、温度上昇率は、一定期間、負の状態を維持した後(図2のD参照)、ウェーハとスラリーとの反応熱及び摩擦熱により、再度、上昇に転じる(図示せず)。
【0040】
最後に、ステップS5に示すように、必要な取り代に応じて、任意の時間、ウェーハのベア面を研磨した後、本フローを終了する。
【0041】
以上の片面研磨方法によれば、研磨レシピの切り替えを時間で行うのではなく、研磨パッドの温度の変化から自然酸化膜の除去完了を正確に検知して研磨レシピの切り替えを行う。すなわち、自然酸化膜除去条件からベア面研磨条件への切り替えタイミングを、研磨パッドの温度変化が上昇から下降に変化した時点とすることで、自然酸化膜が除去されたことをバッチ間のバラつき無しに正確に検出することができる。その結果、エッジロールオフを十分に抑えることが可能となる。
【実施例
【0042】
以下に本発明の実施例を挙げて、本発明を詳細に説明するが、これらは、本発明を限定するものではない。
【0043】
(実施例)
以下の実験条件でシリコンウェーハの片面研磨を行った。
・実験条件
セラミック定盤に研磨パッドを貼り付け、研磨ヘッドに取り付けられたシリコンウェーハを該研磨パッドに押し付けて研磨を行った。
【0044】
自然酸化膜除去条件(研磨レシピR1)のスラリーとしては、シリカ系砥粒を含むKOHベースのアルカリ性水溶液の研磨スラリーを用いた。また、研磨ヘッドと定盤をそれぞれ20rpmで回転させながらシリコンウェーハを研磨パッドに摺接させることで、自然酸化膜の除去を行った。
【0045】
ベア面研磨条件(研磨レシピR2)のスラリーとしては、シリカ系砥粒を含むNHOHベースのアルカリ性水溶液の研磨スラリーを用いた。また、研磨ヘッドと定盤をそれぞれ40rpmで回転させながらシリコンウェーハを研磨パッドに摺接させることで、シリコンウェーハのベア面の研磨を行った。
【0046】
自然酸化膜除去条件(研磨レシピR1)とベア面研磨条件(研磨レシピR2)との切り替えタイミングを決定するため、放射温度計を用いて研磨パッドの表面温度を測定し、その温度上昇率をリアルタイムで計算した。そして、該温度上昇率が上昇(正)から下降(負)になった時点で、研磨レシピを切り替えた。
【0047】
研磨加工は12バッチ行い、研磨前後でのESFQD(edge site front least squars deviation)の変化量を求めることで、エッジロールオフの度合いを求めた。
【0048】
(比較例)
以下の実験条件でシリコンウェーハの片面研磨を行った。
・実験条件
自然酸化膜除去条件(研磨レシピR1)とベア面研磨条件(研磨レシピR2)との切り替えタイミングを除き、上記実施例と同じ実験条件で、シリコンウェーハの研磨を行った。
比較例では、研磨レシピの切り替えタイミングは、研磨開始から25秒後(酸化膜除去時間=25秒)に固定した。
【0049】
図3は、研磨レシピの切り替えタイミングを示す。
同図は、上記の実施例と比較例の研磨レシピの切り替えタイミングを比較して表すものである。該タイミングの違いによりどのような効果の差が表れたかについて、以下の検証結果で詳細に説明する。
【0050】
(検証結果)
図4は、研磨前後でのESFQDの変化量を示す。図5は、図4のESFQDの変化量をグラフ化した図である。
【0051】
ここで、ESFQDについて説明する。ESFQDとは、エッジロールオフを評価する指標の一つであり、ウェーハ中央部における表面(基準平面)に対するウェーハのエッジ近傍での基準平面からの変位量を表す。すなわち、ESFQDがマイナスのときは、基準平面よりも下側に変位していることを意味し、ESFQDがプラスのときは、基準平面よりも上側に変位していることを意味する。
【0052】
ウェーハのエッジ近傍では、ESFQDはマイナスになり、この値が小さいほどエッジロールオフが抑制されていることを意味する。
【0053】
図4及び図5では、実施例と比較例との間で、研磨によるエッジロールオフの変化を相対評価できるように、研磨前後でのESFQDの変化量を検証した。
【0054】
研磨前において、実施例及び比較例のESFQDが同じであると仮定すると、研磨前後でのESFQDの変化量は、実施例及び比較例の研磨によってエッジロールオフがどれだけ悪化したかを示す指標となる。すなわち、研磨前後でのESFQDの変化量が小さいということは、研磨によるエッジロールオフが小さいことを意味し、研磨前後でのESFQDの変化量が大きいということは、研磨によりエッジロールオフが大きいことを意味する。
【0055】
その結果、研磨前後でのESFQDの変化量について、比較例では、12バッチの平均値が-3.48nmであったのに対し、実施例では、12バッチの平均値が-1.23nmであった。これは、実施例では、比較例よりも、研磨によるエッジロールオフが十分に抑えられていることを意味する。また、バッチ間バラつきを示す標準偏差SDについても、比較例の1.05から実施例の0.72へと小さくなった。
【0056】
以上の検証結果から分かるように、実施例では、比較例に対して、研磨前後でのESFQDの変化量が小さく、バッチ間のバラつきもより小さいことが確認された。すなわち、実施例によれば、自然酸化膜が除去されたことをバッチ間のバラつき無しに正確に検出でき、その結果、エッジロールオフを十分に小さくできることが立証された。
【0057】
以上、説明してきたように、本発明によれば、自然酸化膜が除去されたことを正確に検出することで、エッジロールオフを十分に抑えることが可能な片面研磨方法を実現することができる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
図1
図2
図3
図4
図5