(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】ポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型感光性樹脂用熱架橋剤、パターン硬化膜及びその製造方法、半導体素子、並びに電子デバイス
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20220621BHJP
G03F 7/023 20060101ALI20220621BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
G03F7/004 501
G03F7/023
G03F7/20 501
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2019516802
(86)(22)【出願日】2017-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2017017754
(87)【国際公開番号】W WO2018207294
(87)【国際公開日】2018-11-15
【審査請求日】2020-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】昭和電工マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】青木 優
(72)【発明者】
【氏名】橋本 政弘
【審査官】高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-004209(JP,A)
【文献】特開2013-015856(JP,A)
【文献】特開2013-140338(JP,A)
【文献】特開2015-188011(JP,A)
【文献】特開2015-132676(JP,A)
【文献】特開2015-206013(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004-7/18
G03F 7/20
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)
下記一般式(21)で表される構造単位を有するヒドロキシスチレン系樹脂と、
(B)下記一般式(1)で表される化合物と、
(C)下記一般式(3)で表される化合物と、
を含有し、
前記(B)成分及び前記(C)成分の合計量が、(A)成分100質量部に対して、5~25質量部であり、
前記(B)成分に対する前記(C)成分のモル比率が、0.2~1.0である、ポジ型感光性樹脂組成物。
【化1】
[一般式(21)中、R
21
は水素原子又はメチル基を示し、R
22
は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、aは0~3の整数を示し、bは1~3の整数を示す。aとbの合計は5以下である。]
【化2】
[一般式(1)中、R
1~R
6は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。]
【化3】
[一般式(3)中、R
13~R
15は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキレン基を示す。]
【請求項2】
(D)エラストマをさらに含有する、請求項1に記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項3】
(E)光により酸を生成する化合物をさらに含有する、請求項1又は2記載のポジ型感光性樹脂組成物。
【請求項4】
パターンを有し、前記パターンが請求項1~3のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物からなる樹脂膜の硬化物を含む、パターン硬化膜。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載のポジ型感光性樹脂組成物を基板の一部又は全部に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成する工程と、
前記樹脂膜の一部又は全部を露光する工程と、
露光後の前記樹脂膜をアルカリ水溶液によって現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、
前記パターン樹脂膜を加熱する工程と、
を備える、パターン硬化膜の製造方法。
【請求項6】
請求項
4に記載のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子。
【請求項7】
請求項
6に記載の半導体素子を備える、電子デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポジ型感光性樹脂組成物、ポジ型感光性樹脂用熱架橋剤、パターン硬化膜及びその製造方法、半導体素子、並びに電子デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体素子の高集積化、小型化に伴い、半導体素子の層間絶縁層、表面保護層等の絶縁層は、より優れた耐熱性(熱膨張係数等)、機械特性(破断強度、破断伸び等)等を有することが求められている。このような特性を併せ持つ絶縁層を形成するための材料として、アルカリ可溶性樹脂を含有するポジ型感光性樹脂組成物が開発されている(例えば、特許文献1、2及び3参照)。これらのポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成し、該樹脂膜を露光及び現像することでパターン樹脂膜(パターン形成された樹脂膜)が得られる。そして、上記パターン樹脂膜を加熱硬化することでパターン硬化膜(パターン形成された硬化膜)を形成でき、該パターン硬化膜は絶縁層として用いることができる。しかも、これらの感光性樹脂組成物はパターン硬化膜を形成する工程において、低温での加熱硬化が可能であるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-309885号公報
【文献】特開2007-057595号公報
【文献】国際公開第2010/073948号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、半導体素子は、ウエハが小型化され、また絶縁層が多層化されるにつれて、絶縁層に用いられるパターン硬化膜の残留応力に起因するパッケージの反りが問題となっている。そのため、使用する材料には、形成されるパターン硬化膜の残留応力を低減することが求められている。
【0005】
一般に、硬化膜の残留応力を低減するためには、硬化膜の架橋密度を低くすることが効果的であると考えられている。しかし、架橋密度を低くすると、膜強度も同時に低下する傾向にあり、パターン硬化膜の薬液耐性が低下してしまう傾向にある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れる硬化膜を形成することが可能なポジ型感光性樹脂組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために鋭意検討した結果、本発明者らは、ポジ型感光性樹脂組成物において、特定の化合物を組み合わせることによって、残留応力が低く、薬液耐性に優れる硬化膜を形成できることを見出した。さらに、得られる硬化膜が、基板との密着性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
本発明の一側面は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)下記一般式(1)で表される化合物又は下記一般式(2)で表される化合物と、(C)2つ以上のエポキシ基を有する化合物と、を含有する、ポジ型感光性樹脂組成物を提供する。このようなポジ型感光性樹脂組成物によれば、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れるパターン硬化膜を形成することが可能となる。
【0009】
【化1】
[一般式(1)中、R
1~R
6は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。]
【0010】
【化2】
[一般式(2)中、R
7~R
12は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。]
【0011】
(B)成分に対する(C)成分のモル比率は、1.0以下であってもよい。モル比率がこのような範囲にあると、薬液耐性及び破断強度がより優れる傾向にある。
【0012】
(C)成分は、芳香環又は複素環を有する化合物であってもよい。また、(C)成分は、下記一般式(3)で表される化合物であってもよい。(C)成分がこのような化合物であると、形成されるパターン硬化膜の薬液耐性がより優れる傾向にある。
【0013】
【化3】
[一般式(3)中、R
13~R
15は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキレン基を示す。]
【0014】
ポジ型感光性樹脂組成物は、(D)エラストマをさらに含有していてもよい。また、ポジ型感光性樹脂組成物は、(E)光により酸を生成する化合物をさらに含有していてもよい。これらの成分を用いることによって、形成されるパターン硬化膜の耐熱性(熱膨張係数)及び機械特性(破断強度及び破断伸び)が優れる傾向にある。
【0015】
別の側面において、下記一般式(1)で表される化合物若しくは下記一般式(2)で表される化合物、及び2つ以上のエポキシ基を有する化合物からなるポジ型感光性樹脂用熱架橋剤を提供する。このようなポジ型感光性樹脂用熱架橋剤を用いると、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れるパターン硬化膜を形成することが可能なポジ型感光性樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0016】
【化4】
[一般式(1)中、R
1~R
6は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。]
【0017】
【化5】
[一般式(2)中、R
7~R
12は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。]
【0018】
別の側面において、パターンを有し、パターンが上記のポジ型感光性樹脂組成物からなる樹脂膜の硬化物を含む、パターン硬化膜を提供する。
【0019】
別の側面において、上記のポジ型感光性樹脂組成物を基板の一部又は全部に塗布及び乾燥して樹脂膜を形成する工程と、樹脂膜の一部又は全部を露光する工程と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液によって現像してパターン樹脂膜を形成する工程と、パターン樹脂膜を加熱する工程と、を備える、パターン硬化膜の製造方法を提供する。
【0020】
別の側面において、上記のパターン硬化膜を層間絶縁層又は表面保護層として備える、半導体素子を提供する。
【0021】
別の側面において、上記の半導体素子を備える、電子デバイスを提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れる硬化膜を形成することが可能なポジ型感光性樹脂組成物を提供することができる。また、このようなポジ型感光性樹脂組成物を容易に調製可能なポジ型感光性樹脂用熱架橋剤を提供することができる。さらに、このようなポジ型感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜及びその製造方法、半導体素子、並びに電子デバイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】半導体素子の製造工程の一実施形態を説明する概略斜視図及び概略端面図である。
【
図2】半導体素子の製造工程の一実施形態を説明する概略斜視図及び概略端面図である。
【
図3】半導体素子の製造工程の一実施形態を説明する概略斜視図及び概略端面図である。
【
図4】半導体素子の製造工程の一実施形態を説明する概略斜視図及び概略端面図である。
【
図5】半導体素子の製造工程の一実施形態を説明する概略斜視図及び概略端面図である。
【
図6】半導体素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【
図7】半導体素子の一実施形態を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
本明細書における「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味し、(メタ)アクリレート等の他の類似の表現においても同様である。
【0026】
[ポジ型感光性樹脂組成物]
一実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性樹脂と、(B)一般式(1)で表される化合物又は一般式(2)で表される化合物と、(C)2つ以上のエポキシ基を有する化合物と、を含有する。
【0027】
<(A)成分>
(A)成分は、アルカリ水溶液(現像液)に対して可溶な樹脂である。なお、アルカリ水溶液とは、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液、金属水酸化物水溶液、有機アミン水溶液等のアルカリ性の溶液である。一般には、濃度が2.38質量%のテトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が現像に用いられる。
【0028】
(A)成分がアルカリ現像液で可溶であることは、例えば、以下のようにして確認することができる。
【0029】
(A)成分を任意の溶剤に溶解して得られたワニスを、シリコンウェハ等の基板上にスピン塗布して形成することにより膜厚5μm程度の塗膜とする。これをTMAH水溶液、金属水酸化物水溶液又は有機アミン水溶液のいずれかに20~25℃において、浸漬する。この結果、塗膜が均一に溶解し得るとき、その(A)成分はアルカリ性現像液で可溶と見なすことができる。
【0030】
(A)成分としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレタンイミド樹脂、ポリウレタンアミドイミド樹脂、シロキサンポリイミド樹脂、ポリエステルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、フェノキシ樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、(メタ)アクリル共重合体、フェノール性水酸基を有する樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの樹脂の主鎖又は側鎖に、エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール基、カルボキシル基又は水酸基が付与されたものであってもよい。
【0031】
これらの中で、高温接着性、耐熱性及びフィルム形成性の観点から、(A)成分はフェノール性水酸基を有する樹脂であることが好ましい。
【0032】
フェノール性水酸基を有する樹脂としては、例えば、ポリヒドロキシスチレン又はヒドロキシスチレンを単量体単位として含む共重合体等のヒドロキシスチレン系樹脂、フェノール樹脂、ポリ(ヒドロキシアミド)等のポリベンゾオキサゾール前駆体、ポリ(ヒドロキシフェニレン)エーテル、ポリナフトールなどが挙げられる。(A)成分は、これらの樹脂のうちの1種のみで構成されていてもよく、また、2種以上を含んで構成されていてもよい。
【0033】
これらの中で、電気特性(絶縁性)に優れること及び硬化時の体積収縮が小さいことから、(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂が好ましい。また、低価格であること、コントラストが高いこと及び硬化時の体積収縮が小さいことから、(A2)フェノール樹脂が好ましく、ノボラック型フェノール樹脂がより好ましい。
【0034】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂は、下記一般式(21)で表される構造単位を有する。
【0035】
【0036】
一般式(21)中、R21は水素原子又はメチル基を示し、R22は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、aは0~3の整数を示し、bは1~3の整数を示す。aとbの合計は5以下である。
【0037】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂は、一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマ等を重合させることで得ることができる。
【0038】
一般式(21)において、R21で表わされる炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。また、R22で表わされる炭素数6~10のアリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R21で表わされる炭素数1~10のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基、ヘプトキシ基、オクトキシ基、ノノキシ基、デコキシ基等が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。
【0039】
一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、p-ヒドロキシスチレン、m-ヒドロキシスチレン、o-ヒドロキシスチレン、p-イソプロペニルフェノール、m-イソプロペニルフェノール、o-イソプロペニルフェノール等が挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂は、その製造方法に制限されないが、例えば、一般式(21)で示される構造単位を与えるモノマの水酸基をt-ブチル基、アセチル基等で保護して水酸基が保護されたモノマとし、水酸基が保護されたモノマを重合して重合体を得て、さらに得られた重合体を、公知の方法(酸触媒下で脱保護してヒドロキシスチレン系構造単位に変換すること等)で脱保護することにより得ることができる。
【0041】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂は、一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマのみからなる重合体又は共重合体であってもよく、一般式(21)で表される構造単位を与えるモノマとそれ以外のモノマとの共重合体であってもよい。(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂が共重合体である場合、共重合体中の一般式(21)で示される構造単位の割合は、露光部のアルカリ現像液に対する溶解性の観点から、(A)成分100モル%に対して、10~100モル%が好ましく、20~97モル%がより好ましく、30~95モル%がさらに好ましく、50~95モル%が特に好ましい。
【0042】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂は、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解阻害性をより向上する観点から、さらに下記一般式(22)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0043】
【0044】
一般式(22)中、R23は水素原子又はメチル基を示し、R24は炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基を示し、cは0~3の整数を示す。
【0045】
R24で表わされる炭素数1~10のアルキル基、炭素数6~10のアリール基又は炭素数1~10のアルコキシ基としては、それぞれR22と同様のものが例示できる。
【0046】
一般式(22)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(22)で表される構造単位を与えるモノマを用いることによって得られる。一般式(22)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o-メトキシスチレン、m-メトキシスチレン、p-メトキシスチレン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂が一般式(22)で示される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂である場合、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解阻害性及びパターン硬化膜の機械特性の観点から、一般式(22)で示される構造単位の割合は(A)成分100モル%に対して、1~90モル%が好ましく、3~80モル%がより好ましく、5~70モル%がさらに好ましく、5~50モル%が特に好ましい。
【0048】
また、(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂は、弾性率を低くする観点から、さらに下記一般式(23)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂であることが好ましい。
【0049】
【0050】
一般式(23)中、R25は水素原子又はメチル基を示し、R26は炭素数1~10のアルキル基又は炭素数1~10のヒドロキシアルキル基を示す。
【0051】
一般式(23)で表される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂は、一般式(23)で表される構造単位を与えるモノマを用いることで得られる。一般式(23)で表される構造単位を与えるモノマとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシメチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシペンチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシヘプチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシノニル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシデシル等が挙げられる。これらのモノマはそれぞれ1種単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0052】
(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂が一般式(23)で示される構造単位を有するアルカリ可溶性樹脂である場合、未露光部のアルカリ現像液に対する溶解阻害性及びパターン硬化膜の機械特性の観点から、一般式(23)で示される構造単位の割合は(A)成分100モル%に対して、1~90モル%が好ましく、3~80モル%がより好ましく、5~70モル%がさらに好ましく、5~50モル%が特に好ましい。
【0053】
(A2)フェノール樹脂は、フェノール又はその誘導体とアルデヒド類との重縮合生成物である。重縮合は、通常、酸、塩基等の触媒存在下で行われる。酸触媒を用いた場合に得られるフェノール樹脂は、特にノボラック型フェノール樹脂と呼ばれる。ノボラック型フェノール樹脂としては、例えば、フェノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、キシレノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、レゾルシノール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、フェノール-ナフトール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂等が挙げられる。
【0054】
(A2)フェノール樹脂を構成するフェノール誘導体としては、例えば、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール、2,3,5-トリメチルフェノール、3,4,5-トリメチルフェノール等のアルキルフェノール、メトキシフェノール、2-メトキシ-4-メチルフェノール等のアルコキシフェノール、ビニルフェノール、アリルフェノール等のアルケニルフェノール、ベンジルフェノール等のアラルキルフェノール、メトキシカルボニルフェノール等のアルコキシカルボニルフェノール、ベンゾイルオキシフェノール等のアリールカルボニルフェノール、クロロフェノール等のハロゲン化フェノール、カテコール、レゾルシノール、ピロガロール等のポリヒドロキシベンゼン、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のビスフェノール、α-又はβ-ナフトール等のナフトール誘導体、p-ヒドロキシフェニル-2-エタノール、p-ヒドロキシフェニル-3-プロパノール、p-ヒドロキシフェニル-4-ブタノール等のヒドロキシアルキルフェノール、ヒドロキシエチルクレゾール等のヒドロキシアルキルクレゾール、ビスフェノールのモノエチレンオキサイド付加物、ビスフェノールのモノプロピレンオキサイド付加物等のアルコール性水酸基含有フェノール誘導体、p-ヒドロキシフェニル酢酸、p-ヒドロキシフェニルプロピオン酸、p-ヒドロキシフェニルブタン酸、p-ヒドロキシ桂皮酸、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシフェニル安息香酸、ヒドロキシフェノキシ安息香酸、ジフェノール酸等のカルボキシル基含有フェノール誘導体などが挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
(A2)フェノール樹脂を構成するアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、メトキシベンズアルデヒド、ヒドロキシフェニルアセトアルデヒド、メトキシフェニルアセトアルデヒド、クロトンアルデヒド、クロロアセトアルデヒド、クロロフェニルアセトアルデヒド、グリセルアルデヒド、グリオキシル酸、グリオキシル酸メチル、グリオキシル酸フェニル、グリオキシル酸ヒドロキシフェニル、ホルミル酢酸、ホルミル酢酸メチル、2-ホルミルプロピオン酸、2-ホルミルプロピオン酸メチル等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。また、パラホルムアルデヒド、トリオキサン等のホルムアルデヒドの前駆体、アセトン、ピルビン酸、レブリン酸、4-アセチルブチル酸、アセトンジカルボン酸、3,3’-4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸等のケトン類を反応に用いてもよい。
【0056】
(A)成分が(A1)ヒドロキシスチレン系樹脂又は(A2)フェノール樹脂を含有する場合、(A1)成分及び(A2)成分のそれぞれの重量平均分子量は、アルカリ水溶液に対する溶解性、感光特性及びパターン硬化膜の機械特性のバランスを考慮すると、重量平均分子量で1000~500000が好ましく、2000~200000がより好ましく、2000~100000であることがさらに好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得られる値である。
【0057】
<(B)成分>
(B)成分である化合物は、パターン形成後の感光性樹脂膜を加熱して硬化する際に、(A)成分と反応して橋架け構造を形成し得る構造を有する化合物である。(B)成分は、下記一般式(1)で表される化合物又は下記一般式(2)で表される化合物である。
【0058】
【0059】
一般式(1)中、R1~R6は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0060】
R1~R6で表される炭素数1~10のアルキル基は、R22と同様のものが例示できる。アルキル基の炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましく、1であることが特に好ましい。
【0061】
【0062】
一般式(2)中、R7~R12は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキル基を示す。
【0063】
R7~R12で表される炭素数1~10のアルキル基は、R22と同様のものが例示できる。アルキル基の炭素数は、1~5であることが好ましく、1~3であることがより好ましく、1又は2であることがさらに好ましく、1であることが特に好ましい。
【0064】
<(C)成分>
(C)成分である化合物は、2以上のエポキシ基を有し、上述の(B)成分である化合物とともに、パターン形成後の感光性樹脂膜を加熱して硬化する際に、(A)成分と反応して橋架け構造を形成し得る構造を有する化合物である。
【0065】
(C)成分は、2以上のエポキシ基を有しているものであれば、特に制限なく使用することができる。(C)成分としては、例えば、脂肪族エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、複素環式エポキシ化合物、ビスフェノール型エポキシ化合物、ノボラック型エポキシ化合物、グリシジルアミン型エポキシ化合物、ハロゲン化エポキシ化合物等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0066】
これらのうち、(C)成分は、薬液耐性により優れる観点から、芳香環又は複素環を有するエポキシ化合物であることが好ましく、複素環を有するエポキシ化合物であることがより好ましく、含窒素複素環を有するエポキシ化合物であることがさらに好ましい。
【0067】
(C)成分は、薬液耐性により優れる観点から、下記一般式(3)で表される化合物であることが好ましい。
【0068】
【0069】
一般式(3)中、R13~R15は、それぞれ独立に炭素数1~10のアルキレン基を示す。
【0070】
一般式(3)において、R13~R15で表わされる炭素数1~10のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基等が挙げられる。これらの基は直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよい。アルキレン基の炭素数は、1~8であることが好ましく、1~6であることがより好ましい。
【0071】
(B)成分に対する(C)成分のモル比率((C)成分のモル数/(B)成分のモル数)は、薬液耐性及び破断強度により優れる観点から、1.0以下であり、0.9以下であることが好ましく、0.8以下であることがより好ましい。(B)成分に対する(C)成分のモル比率の下限は、特に制限されないが、0.1以上、0.2以上又は0.3以上であってもよい。
【0072】
(B)成分及び(C)成分の合計量は、残留応力及び薬液耐性により優れる観点から、(A)成分100質量部に対して、2~35質量部であることが好ましく、4~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましい。
【0073】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、(A)~(C)成分に加えて、(D)エラストマ又は(E)光により酸を生成する化合物をさらに含有していてもよい。これらの成分を用いることによって、破断強度及び熱膨張性に優れたポジ型感光性樹脂組成物を得ることができる。
【0074】
<(D)成分>
エラストマとしては、例えば、スチレン系エラストマ、オレフィン系エラストマ、ウレタン系エラストマ、ポリエステル系エラストマ、ポリアミド系エラストマ、アクリル系エラストマ、シリコーン系エラストマ等が挙げられる。これらは1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、(D)成分は、得られるパターン硬化膜の破断強度、破断伸び及び熱膨張性に優れることから、アクリル系エラストマであってもよい。
【0075】
アクリル系エラストマは、下記一般式(31)で表される構造単位を有することが好ましい。
【0076】
【0077】
一般式(31)中、R31は水素原子又はメチル基を示し、R32は炭素数2~20のヒドロキシアルキル基を示す。
【0078】
R32で表わされる炭素数2~20のヒドロキシアルキル基としては、例えば、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ヒドロキシブチル基、ヒドロキシペンチル基、ヒドロキシヘキシル基、ヒドロキシヘプチル基、ヒドロキシオクチル基、ヒドロキシノニル基、ヒドロキシデシル基、ヒドロキシウンデシル基、ヒドロキシドデシル基(ヒドロキシラウリル基という場合もある。)、ヒドロキシトリデシル基、ヒドロキシテトラデシル基、ヒドロキシペンタデシル基、ヒドロキシヘキサデシル基、ヒドロキシヘプタデシル基、ヒドロキシオクタデシル基、ヒドロキシノナデシル基、ヒドロキシエイコシル基等が挙げられる。
【0079】
アクリル系エラストマは、さらに下記一般式(32)で表される構造単位、下記一般式(33)で表される構造単位、又は下記一般式(34)で表される構造単位を有していてもよい。
【0080】
【0081】
一般式(32)中、R33は水素原子又はメチル基を示し、R34は1級、2級又は3級アミノ基を有する1価の有機基を示す。
【0082】
R34で表わされる1級、2級又は3級アミノ基としては、例えば、アミノエチル基、N-メチルアミノエチル基、N,N-ジメチルアミノエチル基、N-エチルアミノエチル基、N,N-ジエチルアミノエチル基、アミノプロピル基、N-メチルアミノプロピル基、N,N-ジメチルアミノプロピル基、N-エチルアミノプロピル基、N,N-ジエチルアミノプロピル基、ピペリジン-4-イル基、1-メチルピペリジン-4-イル基、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-4-イル基、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イル基、(ピペリジン-4-イル)メチル基、2-(ピペリジン-4-イル)エチル基等が挙げられる。
【0083】
【0084】
一般式(33)中、R35は水素原子又はメチル基を示し、R36は炭素数4~20のアルキル基を示す。
【0085】
R36で表わされる炭素数4~20のアルキル基としては、例えば、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基という場合もある。)、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等が挙げられる。これらの基は、直鎖状であっても分岐鎖状であってもよい。
【0086】
【0087】
一般式(34)中、R37は水素原子又はメチル基を示す。
【0088】
アクリル系エラストマは、例えば、上記一般式(31)で表される構造単位を与えるモノマ、及び必要に応じて添加される一般式(32)、(33)又は(34)で表される構造単位を与えるモノマを配合し、乳酸エチル、トルエン、イソプロパノール等の溶媒中で撹拌し、必要に応じて加熱することによって得ることができる。
【0089】
アクリル系エラストマの重量平均分子量は、2000~100000であることが好ましく、3000~60000であることがより好ましく、5000~50000であることがさらに好ましく、10000~40000であることが特に好ましい。ここで、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定し、標準ポリスチレン検量線より換算して得られる値である。
【0090】
(D)成分の含有量は、破断強度及び破断伸びにより優れる観点から、(A)成分100質量部に対して、1~35質量部であることが好ましく、3~30質量部であることがより好ましく、5~25質量部であることがさらに好ましい。
【0091】
<(E)成分>
(E)成分である光により(光を受けることにより)酸を生成する化合物は、感光性樹脂組成物において感光剤として機能する。(E)成分は、光照射を受けて酸を生成させ、光照射を受けた部分のアルカリ水溶液への可溶性をより増大させる機能を有する。(E)成分としては、一般に光酸発生剤と称される化合物を用いることができる。(E)成分の具体例としては、o-キノンジアジド化合物、アリールジアゾニウム塩、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。(E)成分は、これらの化合物のうちの1種のみからなるものであってもよく、また、2種以上を含んで構成されるものであってもよい。これらの中で、感度が高いことから、o-キノンジアジド化合物が好ましい。
【0092】
o-キノンジアジド化合物としては、例えば、o-キノンジアジドスルホニルクロリドと、ヒドロキシ化合物又はアミノ化合物等とを脱塩酸剤の存在下で縮合反応させることで得られるもの等を用いることができる。
【0093】
o-キノンジアジド化合物は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-[4-{1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル}フェニル]エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物、トリス(4-ヒドロキシフェニル)メタン又はトリス(4-ヒドロキシフェニル)エタンと1-ナフトキノン-2-ジアジド-5-スルホニルクロリドとの縮合物を用いることが好ましい。
【0094】
(E)成分の含有量は、露光部と未露光部との溶解速度差がより大きくなり、感度がより良好となる観点から、(A)成分100質量部に対して、5~25質量部であることが好ましく、6~20質量部であることがより好ましく、7~18質量部であることがさらに好ましい。
【0095】
<その他の成分>
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物は、上記(A)~(E)成分以外に、溶剤、加熱により酸を生成する化合物、溶解促進剤、溶解阻害剤、カップリング剤、界面活性剤、レベリング剤等の成分を含有していてもよい。
【0096】
(溶剤)
溶剤を用いることによって、基板上への塗布を容易にし、均一な厚さの塗膜を形成することができる。溶剤としては、例えば、γ-ブチロラクトン、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、酢酸ベンジル、n-ブチルアセテート、エトキシエチルプロピオナート、3-メチルメトキシプロピオネート、N-メチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルホスホリルアミド、テトラメチレンスルホン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。これらの溶剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、溶解性及び塗布膜の均一性の観点から、乳酸エチル又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートであることが好ましい。
【0097】
(加熱により酸を生成する化合物)
加熱により酸を生成する化合物を用いることによって、パターン樹脂膜を加熱する際に酸を発生させることが可能となるため、(A)成分と(B)成分及び(C)成分との反応、すなわち熱架橋反応が促進され、パターン硬化膜の耐熱性が向上する。また、加熱により酸を生成する化合物は光照射によっても酸を発生するため、露光部のアルカリ水溶液への溶解性が増大する。よって、未露光部と露光部とのアルカリ水溶液に対する溶解性の差がさらに大きくなり解像度がより向上する。
【0098】
このような加熱により酸を生成する化合物は、例えば、50~250℃まで加熱することにより酸を生成するものであるもの等が挙げられる。加熱により酸を生成する化合物の具体例としては、オニウム塩等の強酸と塩基とから形成される塩、イミドスルホナートなどが挙げられる。
【0099】
(溶解促進剤)
溶解促進剤を用いることによって、アルカリ水溶液で現像する際の露光部の溶解速度を増加させ、感度及び解像性を向上させることができる。溶解促進剤としては従来公知のものを用いることができる。その具体例としては、カルボキシル基、スルホン酸、スルホンアミド基を有する化合物が挙げられる。
【0100】
また、溶解促進剤は、下記一般式(41)~(43)のいずれかで表されるフェノール性低分子化合物であってもよい。
【0101】
【0102】
一般式(41)中、R41は水素原子又はメチル基を示す。a1~f1は0~3の整数を示し、d1~f1の合計は1以上であり、a1とd1の合計は5以下であり、b1とe1の合計は5以下であり、c1とf1の合計は5以下である。
【0103】
【0104】
一般式(42)中、R42は水素原子又はメチル基を示す。a2~c2は0~3の整数を示し、d2~f2は1~3の整数を示し、a2とd2の合計は5以下であり、b2とe2の合計は5以下であり、c2とf2の合計は5以下である。
【0105】
【0106】
一般式(43)中、a3、c3、h及びiは0~3の整数を示し、d3及びf3は1~3の整数を示し、a3とd3の合計は5以下であり、c3とf3の合計は5以下であり、hとiの合計は4以下である。
【0107】
(溶解阻害剤)
溶解阻害剤は、(A)成分のアルカリ水溶液に対する溶解を阻害する化合物であり、残膜厚、現像時間及びコントラストをコントロールするために用いられる。溶解阻害剤としては、例えば、ジフェニルヨードニウムニトラート、ビス(p-tert-ブチルフェニル)ヨードニウムニトラート、ジフェニルヨードニウムブロミド、ジフェニルヨードニウムクロリド、ジフェニルヨードニウムヨージド等が挙げられる。
【0108】
(カップリング剤)
カップリング剤を用いることによって、形成されるパターン硬化膜と基板との接着性をより高めることができる。カップリング剤としては、例えば、有機シラン化合物、アルミキレート化合物等が挙げられる。
【0109】
(界面活性剤、レベリング剤)
界面活性剤又はレベリング剤を用いることによって、塗布性をより向上することができる。具体的には、例えば、界面活性剤又はレベリング剤を含有することで、ストリエーション(膜厚のムラ)をより防いだり、現像性をより向上させたりすることができる。界面活性剤又はレベリング剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェノールエーテル等が挙げられる。
【0110】
その他の成分を用いる場合の含有量は、(A)成分100質量部に対して、0.01~20質量部であってもよい。
【0111】
本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物によれば、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れるパターン硬化膜を形成することが可能となる。
【0112】
[ポジ型感光性樹脂用熱架橋剤]
一実施形態のポジ型感光性樹脂用熱架橋剤は、上述の(B)成分(一般式(1)で表される化合物若しくは一般式(2)で表される化合物)及び(C)成分(2つ以上のエポキシ基を有する化合物)からなるものである。このようなポジ型感光性樹脂用熱架橋剤によれば、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れるパターン硬化膜を形成することが可能なポジ型感光性樹脂組成物を容易に調製することができる。
【0113】
[パターン硬化膜及びその製造方法]
一実施形態のパターン硬化膜は、パターンを有し、パターンが上述のポジ型感光性樹脂組成物からなる樹脂膜の硬化物を含む。パターン硬化膜は、上述のポジ型感光性樹脂組成物を加熱することによって得られる。以下、パターン硬化膜の製造方法について説明する。
【0114】
本実施形態のパターン硬化膜の製造方法は、上述のポジ型感光性樹脂組成物を基板の一部又は全部に塗布及び乾燥し樹脂膜を形成する工程(塗布・乾燥(成膜)工程)と、樹脂膜の一部又は全部を露光する工程(露光工程)と、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液により現像してパターン樹脂膜を形成する工程(現像工程)と、パターン樹脂膜を加熱する工程(加熱処理工程)とを備える。以下、各工程について説明する。
【0115】
<塗布・乾燥(成膜)工程>
まず、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物を基板上に塗布し乾燥して樹脂膜を形成する。この工程では、ガラス基板、半導体、金属酸化物絶縁体(例えば、TiO2、SiO2等)、窒化ケイ素等の基板上に、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物を、スピンナー等を用いて回転塗布し、塗膜を形成する。塗膜の厚さに特に制限はないが、0.1~40μmであることが好ましい。この塗膜が形成された基板をホットプレート、オーブン等を用いて乾燥する。乾燥温度及び乾燥時間に特に制限はないが80~140℃で、1~7分行なうことが好ましい。これにより、支持基板上に樹脂膜が形成される。樹脂膜の厚さに特に制限はないが、0.1~40μmであることが好ましい。
【0116】
<露光工程>
次に、露光工程では、基板上に形成した樹脂膜に、マスクを介して紫外線、可視光線、放射線等の活性光線を照射する。本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物において、(A)成分はi線に対する透明性が高いので、i線の照射を好適に用いることができる。なお、露光後、必要に応じて、溶解速度を向上させる観点から露光後加熱(PEB)を行うこともできる。露光後加熱を行なう場合の温度は70℃~140℃、露光後加熱の時間は1分~5分が好ましい。
【0117】
<現像工程>
現像工程では、露光工程後の樹脂膜の露光部を現像液で除去することにより、樹脂膜がパターン化され、パターン樹脂膜が得られる。現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、エチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)等のアルカリ水溶液が好適に用いられる。これらの水溶液の塩基濃度は、0.1~10質量%とすることが好ましい。さらに、上記現像液にアルコール類又は界面活性剤を添加して使用することもできる。これらはそれぞれ、現像液100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、より好ましくは0.1~5質量部の範囲で配合することができる。現像液を用いて現像を行なう場合は、例えば、シャワー現像、スプレー現像、浸漬現像、パドル現像等の方法によって、現像液を樹脂膜上に配し、18~40℃の条件下、30~360秒間放置する。放置後、水洗しスピン乾燥を行うことでパターン樹脂膜を洗浄する。
【0118】
<加熱処理工程>
次いで、加熱処理工程では、パターン樹脂膜を加熱処理することにより、パターン硬化膜を形成することができる。加熱処理工程における加熱温度は、半導体装置に対する熱によるダメージを充分に防止する点から、250℃以下が好ましく、230℃以下がより好ましい。
【0119】
加熱処理は、例えば、石英チューブ炉、ホットプレート、ラピッドサーマルアニール、縦型拡散炉、赤外線硬化炉、電子線硬化炉、マイクロ波硬化炉等のオーブンを用いて行うことができる。また、大気中又は窒素等の不活性雰囲気中いずれを選択することもできるが、窒素下で行う方がパターンの酸化を防ぐことができるので望ましい。上述の好ましい加熱温度の範囲は従来の加熱温度よりも低いため、支持基板及び半導体装置へのダメージを小さく抑えることができる。従って、本実施形態のレジストパターンの製造方法を用いることによって、電子デバイスを歩留まり良く製造することができる。また、プロセスの省エネルギー化につながる。さらに、本実施形態のポジ型感光性樹脂組成物によれば、感光性ポリイミド等に見られる加熱処理工程における体積収縮(硬化収縮)が小さいため、寸法精度の低下を防ぐことができる。
【0120】
加熱処理工程における加熱処理時間は、ポジ型感光性樹脂組成物が硬化するのに充分な時間であればよいが、作業効率との兼ね合いから、5時間以下が好ましい。
【0121】
また、加熱処理は、上述のオーブンの他、マイクロ波硬化装置又は周波数可変マイクロ波硬化装置を用いて行うこともできる。これらの装置を用いることにより、基板及び半導体装置の温度を例えば200℃以下に保ったままで、感光性樹脂膜のみを効果的に加熱することが可能である(J.Photopolym.Sci.Technol.,18,327-332(2005)参照)。
【0122】
上述の本実施形態のパターン硬化膜の製造方法によれば、充分に高い感度及び解像度で、密着性及び熱衝撃性にも優れるパターン硬化膜が得られる。
【0123】
[層間絶縁層、表面保護層]
本実施形態のパターン硬化膜は、半導体素子の層間絶縁層又は表面保護層として用いることができる。
【0124】
[半導体素子]
一実施形態の半導体素子は、本実施形態の層間絶縁層又は表面保護層を備える。本実施形態の半導体素子は、特に制限に制限されないが、多層配線構造、再配線構造等を有する、メモリ、パッケージ等のことを意味する。
【0125】
ここで、半導体素子の製造工程の一例を図面に基づいて説明する。
図1~5は、多層配線構造を有する半導体素子の製造工程の一実施形態を示す概略斜視図及び概略端面図である。
図1~5中、(a)は概略斜視図であり、(b)は、それぞれ(a)におけるIb-Ib~Vb-Vb端面を示す概略端面図である。
【0126】
まず、
図1に示す構造体100を準備する。構造体100は、回路素子を有するSi基板等の半導体基板1と、回路素子が露出する所定のパターンを有し、半導体基板1を被覆するシリコン酸化膜等の保護膜2と、露出した回路素子上に形成された第1導体層3と、保護膜2及び第1導体層3上にスピンコート法等により成膜されたポリイミド樹脂等からなる層間絶縁層4とを備える。
【0127】
次に、層間絶縁層4上に窓部6Aを有する感光性樹脂層5を形成することにより、
図2に示す構造体200を得る。感光性樹脂層5は、例えば、塩化ゴム系、フェノールノボラック系、ポリヒドロキシスチレン系、ポリアクリル酸エステル系等の感光性樹脂を、スピンコート法により塗布することにより形成される。窓部6Aは、公知の写真食刻技術によって所定部分の層間絶縁層4が露出するように形成される。
【0128】
層間絶縁層4をエッチングして窓部6Bを形成した後に、感光性樹脂層5を除去し、
図3に示す構造体300を得る。層間絶縁層4のエッチングには、酸素、四フッ化炭素等のガスを用いるドライエッチング手段を用いることができる。このエッチングにより、窓部6Aに対応する部分の層間絶縁層4が選択的に除去され、第1導体層3が露出するように窓部6Bが設けられた層間絶縁層4が得られる。次いで、窓部6Bから露出した第1導体層3を腐食することなく、感光性樹脂層5のみを腐食するようなエッチング溶液を用いて感光性樹脂層5を除去する。
【0129】
さらに、窓部6Bに対応する部分に第2導体層7を形成し、
図4に示す構造体400を得る。第2導体層7の形成には、公知の写真食刻技術を用いることができる。これにより、第2導体層7と第1導体層3との電気的接続が行われる。
【0130】
最後に、層間絶縁層4及び第2導体層7上に表面保護層8を形成し、
図5に示す半導体素子500を得る。本実施形態では、表面保護層8は次のようにして形成する。まず、上述の感光性樹脂組成物をスピンコート法により層間絶縁層4及び第2導体層7上に塗布し、乾燥して感光性樹脂膜を形成する。次に、所定部分に窓部6Cに対応するパターンを描いたマスクを介して光照射した後、露光後の樹脂膜をアルカリ水溶液にて現像してパターン樹脂膜を形成する。その後、パターン樹脂膜を加熱により硬化することで、表面保護層8として用いられるパターン硬化膜が形成される。この表面保護層8は、第1導体層3及び第2導体層7を外部からの応力、α線等から保護するものであり、本実施形態の表面保護層8を用いた半導体素子500は信頼性に優れる。
【0131】
なお、上述の実施形態では2層の配線構造を有する半導体素子の製造方法を示したが、3層以上の多層配線構造を形成する場合は、上述の工程を繰り返して行い、各層を形成することができる。すなわち、層間絶縁層4を形成する各工程、及び表面保護層8を形成する各工程を繰り返すことによって、多層のパターンを形成することが可能である。また、上記例において、表面保護層8のみでなく、層間絶縁層4も本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて形成することが可能である。
本実施形態の電子デバイスは、上述のポジ型感光性樹脂組成物を用いて形成される表面保護層、カバーコート層又は層間絶縁層を有するものに限られず、様々な構造をとることができる。
【0132】
図6及び7は、再配線構造を有する半導体素子の一実施形態を示す概略断面図である。本実施形態の感光性樹脂組成物は、応力緩和性、接着性等にも優れるため、近年開発された
図6及び7のような再配線構造を有する半導体素子において使用することができる。
【0133】
図6は、半導体素子の一実施形態としての配線構造を示す概略断面図である。
図6に示す半導体素子600は、シリコン基板23と、シリコン基板23の一方面側に設けられた層間絶縁層11と、層間絶縁層11上に形成された、パッド部15を含むパターンを有するAl配線層12と、パッド部15上に開口を形成しながら層間絶縁層11及びAl配線層12上に順次積層された絶縁層13(例えば、P-SiN層等)及び表面保護層14と、表面保護層14上で開口近傍に配された島状のコア18と、絶縁層13及び表面保護層14の開口内でパッド部15と接するとともにコア18の表面保護層14とは反対側の面に接するように表面保護層14上に延在する再配線層16とを備える。さらに、半導体素子600は、表面保護層14、コア18及び再配線層16を覆って形成され、コア18上の再配線層16の部分に開口が形成されているカバーコート層19と、カバーコート層19の開口においてバリアメタル20を間に挟んで再配線層16と接続された導電性ボール17と、導電性ボールを保持するカラー21と、導電性ボール17周囲のカバーコート層19上に設けられたアンダーフィル22とを備える。導電性ボール17は外部接続端子として用いられ、はんだ、金等から形成される。アンダーフィル22は、半導体素子600を実装する際に応力を緩和するために設けられている。
【0134】
図7の半導体素子700においては、シリコン基板23上にAl配線層(図示せず)及びAl配線層のパッド部15が形成されており、その上部には絶縁層13が形成され、さらに素子の表面保護層14が形成されている。パッド部15上には、再配線層16が形成され、この再配線層16は、導電性ボール17との接続部24の上部まで伸びている。さらに、表面保護層14の上には、カバーコート層19が形成されている。再配線層16は、バリアメタル20を介して導電性ボール17に接続されている。
【0135】
図6及び7の半導体素子において、感光性樹脂組成物は、層間絶縁層11及び表面保護層14ばかりではなく、カバーコート層19、コア18、カラー21、アンダーフィル22等を形成するための材料として使用することができる。本実施形態の感光性樹脂組成物を用いたパターン硬化膜は、Al配線層12若しくは再配線層16等のメタル層又は封止剤等との接着性に優れ、応力緩和効果も高いため、このパターン硬化膜を層間絶縁層11、表面保護層14、カバーコート層19、コア18、はんだ等のカラー21、フリップチップ等で用いられるアンダーフィル22等に用いた半導体素子は、極めて信頼性に優れるものとなる。
【0136】
本実施形態の感光性樹脂組成物は、
図6及び7における再配線層16を有する半導体素子の層間絶縁層11、表面保護層14又はカバーコート層19に用いることが好適である。
【0137】
層間絶縁層11、表面保護層14及び上記カバーコート層19の膜厚は、3~20μmであることが好ましく、5~15μmであることがより好ましい。
【0138】
[電子デバイス]
一実施形態の電子デバイスは、本実施形態の半導体素子を有する。電子デバイスとは、上述の半導体素子を含むものであり、例えば、携帯電話、スマートフォン、タブレット型端末、パソコン、ハードディスクサスペンション等が挙げられる。
【実施例】
【0139】
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0140】
実施例で用いた材料を以下に示す。
【0141】
[(A)成分]
A1:4-ヒドロキシスチレンの重合体(重量平均分子量=10000、丸善石油化学株式会社製、商品名「マルカリンカーM」)
A2:4-ヒドロキシスチレン/スチレン=85/15(モル比)の共重合体(重量平均分子量=10000、丸善石油化学株式会社製、商品名「マルカリンカーCST」)
A3:4-ヒドロキシスチレン/メタクリル酸メチル=70/30(モル比)の共重合体(重量平均分子量=12000、丸善石油化学株式会社製、商品名「マルカリンカーCMM」)
A4:クレゾールノボラック樹脂(クレゾール/ホルムアルデヒドノボラック樹脂、m-クレゾール/p-クレゾール(モル比)=60/40、重量平均分子量=12000、旭有機材株式会社製、商品名「EP4020G」)
【0142】
なお、重量平均分子量は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を用いて、標準ポリスチレン換算により求めた。
【0143】
具体的には、以下の装置及び条件にて重量平均分子量を測定した。
測定装置:
検出器:株式会社日立製作所製L4000UV
ポンプ:株式会社日立製作所製L6000
カラム:Gelpack GL-S300MDT-5×2本
測定条件:
溶離液:THF
LiBr(0.03mol/l)、H3PO4(0.06mol/l)
流速:1.0ml/分、検出器:UV270nm
試料0.5mgに対して溶媒[THF/DMF=1/1(容積比)]1mlの溶液を用いて測定した。
【0144】
[(B)成分]
B1:一般式(1)のR1~R6が全てメチル基である化合物(ヘキサキス(メトキシメチル)メラミン、株式会社三和ケミカル製、商品名「ニカラックMW-30HM」、分子量:390.4)
B2:一般式(2)のR7~R12が全てメチル基である化合物(本州化学工業株式会社製、商品名「HMOM-TPPA」、分子量688.9)
【0145】
[(C)成分]
C1:3官能エポキシ化合物(一般式(3)のR
13~R
15が全てメチレン基である化合物、日産化学工業株式会社製、商品名「TEPIC-L」、分子量:297.3)
C2:3官能エポキシ化合物(一般式(3)のR
13~R
15が全てn-プロピレン基である化合物、日産化学工業株式会社製、商品名「TEPIC-VL」、分子量:381.4)
C3:3官能エポキシ化合物(一般式(3)のR
13~R
15が全てn-へキシレン基である化合物、日産化学工業株式会社製、商品名「TEPIC-FL」、分子量:507.7)
C4:3官能エポキシ化合物(下記式(X)で表される化合物、株式会社プリンテック製、商品名「TECHMORE VG3101L」、分子量:592.7)
【化19】
C5:2官能エポキシ化合物(ポリエチレングリコール#400ジグリシジルエーテル、共栄社化学株式会社製、商品名「エポライト400E」、分子量:526.6)
【0146】
[(D)成分]
D1:撹拌機、窒素導入管及び温度計を備えた100mlの三口フラスコに、乳酸エチル55gを秤取し、別途に秤取した重合性単量体(アクリル酸n-ブチル(BA)34.7g、アクリル酸ラウリル(LA)2.2g、アクリル酸(AA)3.9g、アクリル酸ヒドロキシブチル(HBA)2.6g及び1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリレート(商品名:FA-711MM、日立化成株式会社製)1.7g、並びにアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.29gを加えた。室温にて約160rpmの撹拌回転数で撹拌しながら、窒素ガスを400ml/分の流量で30分間流し、溶存酸素を除去した。その後、窒素ガスの流入を止め、フラスコを密閉し、恒温水槽にて約25分で65℃まで昇温した。同温度を10時間保持して重合反応を行い、エラストマD1を得た。この際の重合率は99%であった。また、このD1の重量平均分子量は、約22000であった。なお、エラストマD1における重合性単量体のモル比は以下のとおりである。
BA/LA/AA/HBA/FA-711MM=70.5/2.5/20/5/2(mol%)
【0147】
なお、(D)成分の重量平均分子量は、(A)成分の重量平均分子量の測定と同様の方法により求めた。
【0148】
[(E)成分]
E1:下記式(Y)で表される化合物(ダイトーケミックス株式会社製、商品名「PA-28」)
【化20】
【0149】
(実施例1~9及び比較例1~3)
表1に示す配合量(質量部)の(A)~(C)成分、溶剤として乳酸エチル120質量部を配合し、これを3μm孔のテフロン(登録商標)フィルターを用いて加圧ろ過して、実施例1~9及び比較例1~3のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0150】
<ポジ型感光性樹脂組成物の評価>
(硬化膜の作製)
実施例1~9及び比較例1~3のポジ型感光性樹脂組成物を6インチシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚約12~14μmの樹脂膜を形成した。その後、樹脂膜を以下の(i)の方法で加熱処理(硬化)し、膜厚約10μmの硬化膜を得た。
(i)縦型拡散炉(光洋サーモシステム社製、商品名「μ-TF」)を用い、窒素中、温度230℃(昇温時間1.5時間)で2時間、樹脂膜を加熱処理した。
【0151】
(薬液膨潤率)
上述の(硬化膜の作製)で得られた硬化膜上に、薬液としてフラックス(千住金属工業株式会社製、商品名「WF-6300LF」)を塗布し、260℃で3分加熱処理を行った後に、水洗して薬液を除去した。薬液処理前後での硬化膜の膜厚を測定し、以下の式から薬液膨潤率を算出した。薬液膨潤率は、数値が小さい(25%以下)ほど、良好であることを意味する。結果を表1に示す。
薬液膨潤率(%)=[(薬液処理後の硬化膜の膜厚)/(薬液処理前の硬化膜の膜厚)-1]×100
【0152】
(残留応力)
上述の(硬化膜の作製)で得られた硬化膜の残留応力を応力測定装置(ケーエルエー・テンコール社製、FLX-2320型)を用いて測定した。残留応力は、数値が小さい(20MPa以下)ほど、良好であることを意味する。結果を表1に示す。
【0153】
(Al密着強度)
実施例1~9及び比較例1~3のポジ型感光性樹脂組成物を6インチアルミ基板(シリコン基板上にTiをスパッタ形成後、さらにそのTi上にアルミをスパッタ形成した基板)上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚11~13μmの樹脂膜を形成した。その後、上記(i)の方法で加熱処理(硬化)し、膜厚約10μmの硬化膜を得た。この硬化膜を基板とともに小片(1cm×1cm)に切断し、アルミニウム製スタッドと硬化膜とをエポキシ樹脂層を介して接合した。次に、スタッドを引っ張り、剥離時の荷重を測定した。密着強度は、数値が大きい(39.2MPa(400kgf/cm2)以上)ほど、良好であることを意味する。結果を表1に示す。
【0154】
【0155】
表1に示すとおり、(B)成分及び(C)成分を含有するポジ型感光性樹脂組成物は、(B)成分及び(C)成分を含有しないポジ型感光性樹脂組成物に比べて、得られる硬化膜において、残留応力が低減されており、薬液耐性及び基板との密着性においても優れていた。
【0156】
(実施例10、11及び比較例4~6)
表2に示す配合量(質量部)の(A)~(E)成分、溶剤として乳酸エチル120質量部を配合し、これを3μm孔のテフロン(登録商標)フィルターを用いて加圧ろ過して、実施例10、11及び比較例4~6のポジ型感光性樹脂組成物を調製した。
【0157】
<ポジ型感光性樹脂組成物の評価>
(薬液膨潤率、残留応力、密着強度)
上述した手法と同一の手法で評価を行った。結果を表2に示す。
【0158】
(パターン硬化膜の作製)
実施例10、11及び比較例4~6のポジ型感光性樹脂組成物を6インチシリコン基板上にスピンコートして、120℃で3分間加熱し、膜厚約12~14μmの樹脂膜を形成した。その後、この樹脂膜をプロキシミティ露光機(キャノン社製、商品名「PLA-600FA」)を用いて、マスクを介して全波長で、最小露光量の2倍の露光量で露光を行った。露光後、TMAH(テトラメチルアンモニウムヒドロキシド)の2.38質量%水溶液を用いて現像を行い、10mm幅のパターン樹脂膜を得た。その後、パターン樹脂膜を以下の(i)の方法で加熱処理(硬化)し、膜厚約10μmのパターン硬化膜を得た。
(i)縦型拡散炉(光洋サーモシステム社製、商品名「μ-TF」)を用い、窒素中、温度230℃(昇温時間1.5時間)で2時間、パターン樹脂膜を加熱処理した。
【0159】
(硬化後破断強度、硬化後破断伸び)
得られたパターン硬化膜の破断強度及び破断伸びをオートグラフAGS-H100N(株式会社島津製作所製)を用いて測定した。試料の幅は10mm、膜厚は9~11μmであり、チャック間は20mmとした。引っ張り速度は5mm/分で、測定温度は20℃~25℃とした。同一条件で得たパターン硬化膜から得た5本以上の試験片の測定値の平均を「破断強度」及び「破断伸び」とした。破断強度は、数値が大きい(100MPa以上)ほど、良好であることを意味する。破断伸びは、数値が大きい(30%以上)ほど、良好であることを意味する。結果を表2に示す。
【0160】
(CTE)
上述の(パターン硬化膜の作製)と同様の手法で得られた硬化膜の50~150℃の平均熱膨張係数(CTE)をTMA/SS600(セイコーインスツル株式会社製)を用いて測定した。測定に用いる試料は、幅を2mm、膜厚を約10μm、チャック間を10mmに調整した。また、測定条件は、荷重を10g、昇温速度を5℃/分とした。CTEは、数値が低い(70ppm/K以下)ほど、良好であることを意味する。結果を表2に示す。
【0161】
【0162】
表2に示すとおり、(B)成分及び(C)成分を含有し、さらに(D)成分及び(E)成分を含有するポジ型感光性樹脂組成物は、(B)成分及び(C)成分を含有しないポジ型感光性樹脂組成物に比べて、得られる硬化膜において、残留応力が低減されており、薬液耐性及び基板との密着性においても優れていた。また、得られるパターン硬化膜は、破断強度、破断伸び及び熱膨張係数においても、優れていることが判明した。
【0163】
以上より、本発明のポジ型感光性樹脂組成物が、残留応力が低く、薬液耐性に優れ、かつ基板との密着性に優れる硬化膜を形成することが可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0164】
1…半導体基板、2…保護膜、3…第1導体層、4…層間絶縁層、5…感光性樹脂層、6A,6B,6C…窓部、7…第2導体層、8…表面保護層、11…層間絶縁層、12…Al配線層、13…絶縁層、14…表面保護層、15…パッド部、16…再配線層、17…導電性ボール、18…コア、19…カバーコート層、20…バリアメタル、21…カラー、22…アンダーフィル、23…シリコン基板、24…接続部、100,200,300,400…構造体、500,600,700…半導体素子。