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特許7092127芳香族ポリカーボネート樹脂、及びその製造方法、並びに芳香族ジヒドロキシ化合物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-06-20
(45)【発行日】2022-06-28
(54)【発明の名称】芳香族ポリカーボネート樹脂、及びその製造方法、並びに芳香族ジヒドロキシ化合物
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/06 20060101AFI20220621BHJP
   C08G 64/30 20060101ALI20220621BHJP
   C07C 39/21 20060101ALI20220621BHJP
   C07C 39/16 20060101ALI20220621BHJP
【FI】
C08G64/06
C08G64/30
C07C39/21
C07C39/16
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019525530
(86)(22)【出願日】2018-06-14
(86)【国際出願番号】 JP2018022786
(87)【国際公開番号】W WO2018230662
(87)【国際公開日】2018-12-20
【審査請求日】2021-06-09
(31)【優先権主張番号】P 2017116445
(32)【優先日】2017-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小西 範和
(72)【発明者】
【氏名】門田 敏樹
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-016802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/06
C08G 64/30
C07C 39/21
C07C 39/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とに由来する下記式(1)で表される構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、
該芳香族ポリカーボネート樹脂を加水分解して得られる加水分解物が下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、を含み、
該加水分解物における下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量に対して250質量ppm以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂。
【化1】

(式(1)乃至(3)中、Rは炭素数が1~24のアルキル基を示す。R、Rはそ
れぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
【請求項2】
前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が9000以上である、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
【請求項3】
前記加水分解物における前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、前記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量に対して1質量ppm以上である、請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
【請求項4】
前記式(1)乃至(3)中、Rは炭素数が6~24のアルキル基を示す、請求項1~3のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法であって、前記芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とをアルカリ触媒存在下で重合させる重合ステップ、を含む、製造方法。
【請求項6】
前記重合ステップはエステル交換法により行われる、請求項5に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項7】
前記重合ステップにおいて、エステル交換反応後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を実質的に固化することなくエステル交換触媒を失活させる、請求項6に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項8】
前記重合ステップにおいて、エステル交換触媒に対して3当量以上、50当量以下、失
活剤を添加する、請求項7に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【請求項9】
下記式(2)、及び(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を含む芳香族ジヒドロキシ化合物であって、式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、250質量ppm以下である、芳香族ジヒドロキシ化合物。
【化2】

(式(2)及び(3)中、Rは炭素数が1~24のアルキル基を示す。R、Rはそ
れぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
【請求項10】
前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、1質量ppm以上である、請求項9に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物。
【請求項11】
前記式(2)乃至(3)中、Rは炭素数が6~24のアルキル基を示す、請求項9又は10に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物。
【請求項12】
請求項1~4のいずれか1項に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来するカーボネート構造単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は芳香族ポリカーボネート樹脂に関する。詳しくは、薄肉成形性、透明性、衝撃強度、耐折り曲げ性に優れる芳香族ポリカーボネート樹脂、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ、タブレットPC、スマートフォン等にて使用されるディスプレイデバイスには、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一・効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また導光板の表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与するものもある。
【0003】
上記の様な導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近ではディスプレイの薄肉化に伴い導光板の厚みも薄くなっているためPMMAでは材料の機械強度が不十分となり、比較的高い機械強度を有するポリカーボネート樹脂に置き換えられつつある。
【0004】
従来のポリカーボネート樹脂は、PMMAに比べて溶融流動性が低く、成形加工性が著しく悪いという欠点を有しているため、上述のような成形体の原料として適用するために、成形性改善の検討がなされてきた。
例えば、特許文献1には、導光板用材料向けのポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量が10000~15000の芳香族ポリカーボネート樹脂が、特許文献2には、導光板用材料向けのポリカーボネート樹脂として、粘度平均分子量11000~22000の芳香族ポリカーボネート樹脂がそれぞれ記載されている。これらの手法は、ポリカーボネート樹脂の分子量を下げ、溶融流動性を向上させることによりポリカーボネート樹脂の成形性を向上させる手法であるが、通常、高分子材料は分子量の低下に伴い、当然機械強度の低下する傾向にある。よって、上述のようなポリカーボネート樹脂においても同様に機械強度が低下し、成形加工性及び製品としての実用強度は十分ではなかった。
【0005】
これに対し、従来のビスフェノールA型ポリカーボネート樹脂に、更に新たなジヒドロキシ化合物をモノマーとして加えて成形性を改善する方法も提案されている。例えば、特許文献3には、ビスフェノールAとビスフェノールEとからなる流動性が改良されたポリカーボネート樹脂が記載されており、特許文献4~5においても、特定のビスフェノール化合物を用いて流動性を改良したポリカーボネート樹脂が記載されている。また、可塑剤などの流動改質剤を添加することや、オリゴマー、ABS等の流動性が高い樹脂を添加することも知られている。しかしながら、このようなポリカーボネート樹脂もまた、耐熱性が極端に低いため実使用に耐えられないといった課題や、導光板を得るのに足る流動性や耐衝撃性が不十分であるため薄肉成形体が得られないといった課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-37380号公報
【文献】特開2013-139097号公報
【文献】特開平5-1144号公報
【文献】特開平6-128371号公報
【文献】特開昭59-131623号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のような導光板用途においては、一般のビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂における粘度平均分子量10000~15000品相当の流動性が必要であり、近年では特に粘度平均分子量10000~13000品相当の高い流動性が求められる。しかしながら、上述の特許文献1~5に記載のポリカーボネート樹脂では、上述の流動性領域にした場合の、衝撃強度が著しく低いために、製品強度が保てないのみならず、成形時の段階においても割れが発生するという課題を有していた。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、上述のような高い流動性、薄肉成形性を有し、さらには色相、透明性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含み、加水分解物が特定のジヒドロキシ化合物を一定量含む芳香族ポリカーボネート樹脂が、薄肉成形体を成形する際に必要な高い流動性を有すると共に、高い機械強度をも有し、且つ、色相、透明性に優れることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明の要旨は、以下の[1]~[10]に存する。
[1]芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とに由来する下記式(1)で表される構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂であって、
該芳香族ポリカーボネート樹脂を加水分解して得られる加水分解物が下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、を含み、
該加水分解物における下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量に対して250質量ppm以下であることを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂。
【化1】
(式(1)乃至(3)中、Rは炭素数が1~24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
[2]前記芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量が9000以上である、[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[3]前記加水分解物における前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、前記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量に対して1質量ppm以上である、[1]又は[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[4]前記式(1)乃至(3)中、Rは炭素数が6~24のアルキル基を示す、[1]~[3]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂。
[5][1]~[4]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法であって、前記芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とをアルカリ触媒存在下で重合させる重合ステップ、を含む、製造方法。
[6]前記重合ステップはエステル交換法により行われる、[5]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[7]前記重合ステップにおいて、エステル交換反応後、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂を実質的に固化することなくエステル交換触媒を失活させる、[6]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[8]前記重合ステップにおいて、エステル交換触媒に対して3当量以上、50当量以下、失活剤を添加する、[7]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
[9]下記式(2)、及び(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を含む芳香族ジヒドロキシ化合物であって、式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、250質量ppm以下である、芳香族ジヒドロキシ化合物。
【化2】
(式(2)及び(3)中、Rは炭素数が1~24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
[10]前記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、1質量ppm以上である、[9]に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物。
[11]前記式(2)乃至(3)中、Rは炭素数が6~24のアルキル基を示す、[9]又は[10]に記載の芳香族ジヒドロキシ化合物。
[12][1]~[4]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来するカーボネート構造単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂を含有することを特徴とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
[13]下記式(1)で表される構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂を加水分解して得られる加水分解物が下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、を含み、該加水分解物における下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量に対して250質量ppm以下となるように芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とを重合するステップを含む、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法。
【化3】
(式(1)乃至(3)中、Rは炭素数が1~24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。)
【発明の効果】
【0010】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂によれば、薄肉成形性、衝撃強度に優れ、且つ色相、透明性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂材料を提供することができる。このような芳香族ポリカーボネート樹脂は、樹脂ガラス窓のような大型成形品を得ようとする場合や導光板のような薄肉成形体を得ようとした場合においても、強度及び色相、透明性が共に優れる成形体を生産性高く得ることができ産業上極めて利用価値が高い。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明するが、本発明は以下に示す実施形態及び例示物等に限定して解釈されるものではない。
なお、本明細書において、「~」とは、特に断りのない限り、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。また、「部」とは、特に断りのない限り、質量基準に基づく質量部を表す。
【0012】
芳香族ポリカーボネート樹脂
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、下記式(1)で表されるカーボネート構造単位を含むことを特徴とする。
【0013】
【化4】
【0014】
式(1)中、Rは炭素数が1~24のアルキル基を示す。R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、a及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0015】
このような特定のカーボネート構造を有することにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性と衝撃強度や折り曲げ強度、繰り返し疲労強度といった強度のバランスが顕著に良好なものになる。
【0016】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂において、上述のカーボネート構造単位のRは、炭素数が増加するにつれ、溶融時の流動性が向上する。これは、本構造の様なアルキル鎖を有することで、溶融時の高分子鎖の絡まりを適度に阻害し、ポリマー同士の摩擦を低減することにより高い流動性を発現することができるためである。
【0017】
アルキル鎖を更に延長した場合、高い流動性は発現するものの、耐熱性や機械強度が著しく低下し、また長鎖脂肪鎖の結晶化性が上がり本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の透明性が損なわれる恐れがあるため好ましくない。そのため、上述のカーボネート構造単位のRの炭素数は、1以上24以下が好ましく、6以上24以下であることがより好ましく、6以上18以下であることが更に好ましい。
【0018】
上述の炭素数1~24のアルキル基としては、直鎖状、分岐状のアルキル基、一部環状構造を有するアルキル基などが挙げられるが、なかでも本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性をより効果的に高められるため、直鎖状、分岐状アルキル基であることが好ましい。
【0019】
直鎖状アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-イコシル基、n-イコシル基、n-ヘンイコシル基、n-ドコシル基、n-トリコシル基、n-テトラコシル基などが挙げられるが、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基が好ましい。このようなアルキル基を持つことで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性と耐衝撃性をより効果的に高めることができる。
【0020】
分岐状アルキル基の具体例としては、メチルプロピル基、メチルブチル基、メチルペンチル基、メチルヘキシル基、メチルへプチル基、メチルオクチル基、メチルノニル基、メチルデシル基、メチルウンデシル基、メチルドデシル基、メチルトリデシル基、メチルテトラデシル基、メチルペンタデシル基、メチルヘキサデシル基、メチルヘプタデシル基、メチルオクタデシル基、メチルノナデシル基、メチルイコシル基、メチルイコシル基、メチルヘンイコシル基、メチルドコシル基、メチルトリコシル基、
【0021】
ジメチルプロピル基、ジメチルブチル基、ジメチルペンチル基、ジメチルヘキシル基、ジメチルへプチル基、ジメチルオクチル基、ジメチルノニル基、ジメチルデシル基、ジメチルウンデシル基、ジメチルドデシル基、ジメチルトリデシル基、ジメチルテトラデシル基、ジメチルペンタデシル基、ジメチルヘキサデシル基、ジメチルヘプタデシル基、ジメチルオクタデシル基、ジメチルノナデシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルイコシル基、ジメチルヘンイコシル基、ジメチルドコシル基、
【0022】
トリメチルブチル基、トリメチルペンチル基、トリメチルヘキシル基、トリメチルへプチル基、トリメチルオクチル基、トリメチルノニル基、トリメチルデシル基、トリメチルウンデシル基、トリメチルドデシル基、トリメチルトリデシル基、トリメチルテトラデシル基、トリメチルペンタデシル基、トリメチルヘキサデシル基、トリメチルヘプタデシル基、トリメチルオクタデシル基、トリメチルノナデシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルイコシル基、トリメチルヘンイコシル基、
【0023】
エチルペンチル基、エチルヘキシル基、エチルへプチル基、エチルオクチル基、エチルノニル基、エチルデシル基、エチルウンデシル基、エチルドデシル基、エチルトリデシル基、エチルテトラデシル基、エチルペンタデシル基、エチルヘキサデシル基、エチルヘプタデシル基、エチルオクタデシル基、エチルノナデシル基、エチルイコシル基、エチルイコシル基、エチルヘンイコシル基、エチルドコシル基、
【0024】
ブチルプロピルヘキシル基、プロピルへプチル基、プロピルオクチル基、プロピルノニル基、プロピルデシル基、プロピルウンデシル基、プロピルドデシル基、プロピルトリデシル基、プロピルテトラデシル基、プロピルペンタデシル基、プロピルヘキサデシル基、プロピルヘプタデシル、プロピルオクタデシル基、プロピルノナデシル基、プロピルイコシル基、プロピルイコシル基、プロピルヘンイコシル基、
【0025】
ブチルヘキシル基、ブチルへプチル基、ブチルオクチル基、ブチルノニル基、ブチルデシル基、ブチルウンデシル基、ブチルドデシル基、ブチルトリデシル基、ブチルテトラデシル基、ブチルペンタデシル基、ブチルヘキサデシル基、ブチルヘプタデシル基、ブチルオクタデシル基、ブチルノナデシル基、ブチルイコシル基、ブチルイコシル基が挙げられる。
なお、上記分岐アルキル基の例において、分岐の位置は任意である。
【0026】
カーボネート構造単位中のR、及びRは、炭素数1~15の一価炭化水素基を表す。炭素数1~15の一価炭化水素基を有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の流動性や強度、硬度、耐薬品性等を向上させることができる。炭素数1~15の一価炭化水素基としては、炭素数1~15のアルキル基、炭素数2~15のアルケニル基等が挙げられるが、これらは直鎖状であっても分岐状であっても、環状であってもよい。このような一価炭素水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、n-ヘキシル基、シクロヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、フェニル基、トリル基などが挙げられるが、なかでもメチル基が好ましい。
【0027】
また、カーボネート構造単位中のa及びbはそれぞれ独立に0~4の整数を表すが、なかでも0~2の整数が好ましく、0~1の整数がより好ましく、0であることがさらに好ましい。
【0028】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上述の式(1)で表されるカーボネート構造単位のみで構成されても共重合体でも、上述のカーボネート構造単位とは異なるその他のジヒドロキシ化合物に由来するカーボネート構造単位を1種類以上含む共重合体であってもよい。また、共重合形態としては、ランダムコポリマー、ブロックコポリマー等、種々の共重合形態を選択することができる。
芳香族ポリカーボネート中、式(1)で表されるカーボネート構造単位は1mоl%以上含まれることが好ましく、2.5mоl%以上含まれることがより好ましく、4mоl%以上含まれることがより好ましい。上限は49mоl%以下であってよく、36.5mоl%以下であってよい。
【0029】
芳香族ポリカーボネート樹脂の流れ値(Q値)
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、JIS(1999年度版) K7210 付属書Cに準拠し、高化式フローテスターを用いて、240℃、160kgf/cmの条件で測定した流れ値(Q値)が、6以上(単位:10-2cm/sec)であることが好ましい。Q値は、溶融粘度の指標であり、MVR(メルトボリュームレート)やMFR(メルトフローレート)と異なり、実際の射出成形と近い、剪断速度の高い領域での溶融粘度を表している。このQ値が高い方が、流動性が良好であり、成形加工性が高いことを示す。上述の導光板のような薄肉成形体を成形するためには、上記のQ値は、10以上であることが好ましく、15以上であることがより好ましく、20以上であることがさらに好ましく、25以上であることが特に好ましい。一方、Q値の上限は本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた諸物性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常80以下であり、好ましくは70以下、より好ましくは60以下、さらに好ましくは50以下、特に好ましくは45以下である。
【0030】
なお、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値を上記範囲に制御する際には、Q値の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、Q値が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を用いて混合し、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂のQ値を制御してもよい。
【0031】
芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量は、特に制限はないが、溶液粘度から換算した粘度平均分子量(Mv)で、通常9000以上、24000以下である。粘度平均分子量が上記下限値以下の場合は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の強度が不十分となる傾向にあり、また粘度平均分子量が上記上限値を超える場合は、流動性が不十分となる傾向があるため好ましくない。このような観点より、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、好ましくは10000以上、より好ましくは11000以上、さらに好ましくは11500以上であり、また好ましくは17500以下、より好ましくは16000以下、さらに好ましくは15000以下である。
【0032】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、溶媒として塩化メチレンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での固有粘度(極限粘度)[η](単位dL/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83、から算出される値を意味する。また固有粘度(極限粘度)[η]とは、各溶液濃度[C](g/dL)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
【数1】
【0033】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の固有粘度(dL/g)は、特に制限はなく、また上述の粘度平均分子量と相関するが、通常0.24~0.54であるが、好ましくは0.26以上、より好ましくは0.28以上、さらに好ましくは0.29以上であり、また好ましくは0.42以下、より好ましくは0.39以下、さらに好ましくは0.37以下である。
【0034】
芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の優れた諸物性を損なわない範囲であれば特に制限はないが、通常10~2000質量ppmである。また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量として、好ましくは20質量ppm以上であり、より好ましくは50質量ppm以上であり、さらに好ましくは100質量ppm以上であり、一方で、好ましくは1700質量ppm以下、より好ましくは1500質量ppm以下、さらに好ましくは1200質量ppm以下である。末端水酸基量が、前記範囲の下限値以上であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相、生産性をより向上させることができ、また前記範囲の上限値以下であれば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂、及び芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性、湿熱安定性をより向上させることができる。
【0035】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂の末端水酸基量は、公知の任意の方法によって上記範囲に調整することができる。例えば、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂をエステル交換反応によって重縮合して製造する場合は、カーボネート形成性化合物と芳香族ジヒドロキシ化合物との混合比率;エステル交換反応時の減圧度などを調整することにより、末端水酸基量を上記範囲に調整することができる。
【0036】
また、より積極的な調整方法としては、反応時に別途、末端停止剤を混合する方法が挙げられる。この際の末端停止剤としては、例えば、一価フェノール類、一価カルボン酸類、炭酸ジエステル類などが挙げられる。なお、末端停止剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法にて製造する場合には、分子量調整剤(末端停止剤)の配合量を調整することにより、末端水酸基量を任意に調整することができる。
【0037】
なお、末端水酸基量の単位は、芳香族ポリカーボネート樹脂の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。その測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。複数のジヒドロキシ化合物からなる芳香族ポリカーボネート樹脂共重合においては、対応するジヒドロキシ化合物を共重合比率に応じて混合したサンプルを最低3水準の濃度で用意し、該3点以上のデータから検量線を引いた上で芳香族ポリカーボネート樹脂共重合の末端水酸基量を測定する。また、検出波長は546nmとする。
【0038】
芳香族ポリカーボネート樹脂加水分解物中の式(2)、式(3)化合物量
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、加水分解して得られる加水分解物が下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、を含む。そして、加水分解物における下記式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に対して250質量ppm以下である。この値が250質量ppmを超えると、樹脂の色相が悪化し、導光板などの光学材料には不適となる。本特定構造の分析は、下記分析手法(1)によって分析される。
【化5】
【0039】
分析手法(1):サンプル0.5gをジクロロメタン(和光純薬社製、試薬特級)5mLに溶解する。メタノール(キシダ化学社製、試薬特級)45mLを添加し、更に25%水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬社製)を5mLを加える。75℃で30分、撹拌しながら加熱還流を実施する。冷却後、17.5%塩酸7mLを加えた後にメタノールと純水で100mLに調整する。調整した溶液を高速液体クロマトグラフィーにて下記条件で測定する。
検出器:島津社製 SPD-10AVp
分析カラム:YMC-Pack ODS-AM12S03-L546WT
(粒子径3μm、細孔径12nm、内径4.6mm、長さ75mm)
移動相:(A)0.1%トリフルオロ酢酸水溶液、(B)高速液体クロマトグラフィー用メタノール(キシダ化学社製)
移動相流量:1.0mL/分
サンプル注入量:20μL
グラジエント条件:移動相(A)60%、移動相(B)40%から、25分で移動相(A)5%、移動相(B)95%に連続的に濃度を変更する。
カラム温度:40℃
検出器波長:280nm
【0040】
加水分解物における式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量は、式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、好ましくは250質量ppm以下であり、より好ましくは100質量ppm以下であり、更に好ましくは60質量ppm以下である。一方下限値は通常0質量ppmより大きいが、1質量ppm以上であることが好ましく、3質量ppm以上であることがより好ましい。
【0041】
加水分解物における式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量を上記範囲とすることは、例えば製造工程における触媒種や量、温度条件、湿度条件、圧力条件、重合槽での滞留時間、機器の気密性、気流条件、などを適宜調整することで、達成できる。
【0042】
芳香族ポリカーボネート樹脂加水分解物中の式(2)、式(3)化合物の同定
上記分析手法によって分析中、特定構造由来のピークを検出した時点で分析液を分取する。その後、メタノールをエバポレータにより留去し、塩化メチレンを加え、該成分を抽出する。その後、塩化メチレン相を蒸発乾固させることで高純度の特定成分が得られる。得られた特定成分についてH-NMR、HH-COSY、HMQC、HMBC測定を実施し、構造を特定する。また、特定した構造が相違ないことをLC-MS分析によって確認できる。
カラムの劣化状況及び製造時期によっても多少の誤差は存在するが、本条件において、式(3)中のRが炭素数11、a及びbが0で表される構造は22.35分、式(2)中のRが炭素数11、a及びbが0で表される構造は22.06分に検出される。
【0043】
芳香族ポリカーボネート樹脂の色相
本発明では、色相に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂が提供される。芳香族ポリカーボネート樹脂の色相は、YI値(イエローインデックス値)が通常5以下であり、3以下であることが好ましい。また上限は限定されないが、通常-0.3以上である。
YI値は、芳香族ポリカーボネート樹脂の加水分解物中の上記式(2)で表される化合物の量を適度の値とすることで、低下させることができる。
【0044】
なお、色相はASTM D1925に準拠して、ペレットの反射光におけるYI値(イエローインデックス値)を測定して評価できる。具体的には、装置はコニカミノルタ社製分光測色計CM-5を用い、測定条件は測定径30mm、SCEを選択する。シャーレ測定用校正ガラスCM-A212を測定部にはめ込み、その上からゼロ校正ボックスCM-A124をかぶせてゼロ校正を行い、続いて内蔵の白色校正板を用いて白色校正を行う。
白色校正板CM-A210を用いて測定を行い、Lが99.40±0.05、aが0.03±0.01、bが-0.43±0.01、YIが-0.58±0.01となることを確認する。ペレットの測定は、内径30mm、高さ50mmの円柱ガラス容器にペレットを40mm程度の深さまで詰めて測定を行う。ガラス容器からペレットを取り出してから再度測定を行う操作を2回繰り返し、計3回の測定値の平均値を用いる。YI値が小さいほど樹脂の黄色味が少なく、色調に優れることを意味する。
【0045】
芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、上記式(1)で表されるカーボネート構造単位を形成するために必要な、芳香族ジヒドロキシ化合物を少なくとも1種類及び任意で選択されるその他のジヒドロキシ化合物を含むジヒドロキシ化合物と、カーボネート形成性化合物とを重縮合することによって得られる。
【0046】
式(1)で表されるカーボネート構造単位を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物については、例えば、下記式(2)及び下記式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を含む芳香族ジヒドロキシ化合物、が挙げられる。
【化6】
【0047】
式(2)、及び(3)中、R、R、R、a及びbの定義及び好ましい例は、上述の式(1)と同様である。
式(1)で表されるカーボネート構造単位を形成するために用いられる芳香族ジヒドロキシ化合物は、式(3)で表される化合物が主成分であり、式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量は少量である。具体的には式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が250質量ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100質量ppm以下であり、更に好ましくは60質量ppm以下である。一方下限値は通常0質量ppmより大きいが、1質量ppm以上であることが好ましく、3質量ppm以上であることがより好ましい。
【0048】
尚、式(2)及び(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物を含む芳香族ジヒドロキシ化合物は、式(3)で表される化合物が主成分であることは既に述べたとおりであるが、下記式(4)及び(5)で表される多価フェノール化合物を含有しても構わない。なお、主成分とは、含有される成分のうち最も含有量の多い成分を意味し、具体的には50質量%以上であり、80質量%以上であってよく、90質量%以上であってよく、95質量%以上であってよく、98質量%以上であってよく、99質量%以上であってよく、99.9質量%以上であってよい。
【化7】
【0049】
式(4)、及び(5)中、R、R、R、a及びbの定義及び好ましい例は、上述の式(1)と同様である。R、R、Rはそれぞれ独立に炭素数1~15の一価炭化水素基を表し、c、d及びeはそれぞれ独立に0~4の整数を表す。
【0050】
式(1)で表されるカーボネート構造単位を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、以下が挙げられる。
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)デカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ノナタデカン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)イコサン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1-(2-ヒドロキシフェニル)-1-(4-ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
【0051】
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)オクタン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ノナン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)デカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ウンデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ドデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)トリデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)テトラデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ペンタデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘキサデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘプタデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)オクタデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ノナタデカン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)イコサン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)イコサン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ヘンイコサン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ヘンイコサン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ドコサン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)ドコサン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)トリコサン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)トリコサン、
1,1-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
1,1-ビス(2-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)テトラコサン、
1-(2-ヒドロキシ-3-メチル-フェニル)-1-(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラコサン、
【0052】
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(3-エチル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(3-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(3-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(3-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(3-プロピル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(3-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(3-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(3-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(3-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(3-ノニル-4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(3-ノニル-4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(3-ノニル-4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(3-ノニル-4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
【0053】
式(1)で表されるカーボネート構造単位を形成するために必要な芳香族ジヒドロキシ化合物としては、なかでも熱安定性と色相、衝撃強度の観点より、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ウンデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)トリデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)テトラデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタデカン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナデカン、
が特に好ましい。
【0054】
また式(1)で表されるカーボネート構造単位を形成する、その他のジヒドロキシ化合物については、特に制限はなく、分子骨格内に芳香環を含む芳香族ジヒドロキシ化合物であっても、芳香環を有さない脂肪族ジヒドロキシ化合物であってもよい。また、種々の特性付与の為に、N(窒素)、S(硫黄)、P(リン)、Si(ケイ素)等のヘテロ原子やヘテロ結合が導入されたジヒドロキシ化合物であってもよい。
【0055】
上述のその他のジヒドロキシ化合物として、好適に使用されるものは、耐熱性、熱安定性、強度の観点より、芳香族ジヒドロキシ化合物である。このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0056】
1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等のジヒドロキシベンゼン類;
【0057】
2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等のジヒドロキシビフェニル類;
【0058】
2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類;
【0059】
2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等のジヒドロキシジアリールエーテル類;
【0060】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、
α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、
1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、
4,4-ジヒドロキシジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、
ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、
4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、
2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、
等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;
【0061】
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、
1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン、
等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;
【0062】
9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、
9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等のカルド構造含有ビスフェノール類;
【0063】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;
【0064】
4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、
4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類;
等が挙げられる。
【0065】
なお、芳香族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
また、上述のその他のジヒドロキシ化合物としては目的に応じて下記脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いてもよい。このような脂肪族ジヒドロキシ化合物としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0066】
エタン-1,2-ジオール、プロパン-1,2-ジオール、プロパン-1,3-ジオール、2,2-ジメチルプロパン-1,3-ジオール、2-メチル-2-プロピルプロパン-1,3-ジオール、ブタン-1,4-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、ヘキサン-1,6-ジオール、デカン-1,10-ジオール等のアルカンジオール類;
シクロペンタン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,2-ジオール、シクロヘキサン-1,4-ジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、4-(2-ヒドロキシエチル)シクロヘキサノール、2,2,4,4-テトラメチル-シクロブタン-1,3-ジオール等のシクロアルカンジオール類;
エチレングリコール、2,2’-オキシジエタノール(即ち、ジエチレングリコール)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、スピログリコール等のグリコール類;
【0067】
1,2-ベンゼンジメタノール、1,3-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジメタノール、1,4-ベンゼンジエタノール、1,3-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、2,3-ビス(ヒドロキシメチル)ナフタレン、1,6-ビス(ヒドロキシエトキシ)ナフタレン、4,4’-ビフェニルジメタノール、4,4’-ビフェニルジエタノール、1,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)ビフェニル、ビスフェノールAビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル、ビスフェノールSビス(2-ヒドロキシエチル)エーテル等のアラルキルジオール類;
1,2-エポキシエタン(即ち、エチレンオキシド)、1,2-エポキシプロパン(即ち、プロピレンオキシド)、1,2-エポキシシクロペンタン、1,2-エポキシシクロヘキサン、1,4-エポキシシクロヘキサン、1-メチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、2,3-エポキシノルボルナン、1,3-エポキシプロパン等の環状エーテル類;
イソソルビド、イソマンニド、イソイデット等の酸素含有複素環ジヒドロキシ化合物類等が挙げられる。
【0068】
なお、脂肪族ジヒドロキシ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で使用してもよい。
また、カーボネート形成性化合物の例を挙げると、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が使用される。なお、カーボネート形成性化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0069】
カルボニルハライドとしては、具体的には例えば、ホスゲン;ジヒドロキシ化合物のビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、具体的には例えば、下記式(6)で表される化合物であればよく、アリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類やジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等のジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。
【化8】
【0070】
式(6)中、R及びRは、それぞれ独立に炭素数1~30のアルキル基またはアリール基、アリールアルキル基を表す。以下、R及びRが、アルキル基、アリールアルキル基のときジアルキルカーボネートと称し、アリール基のときジアリールカーボネートと称すことがある。なかでもジヒドロキシ化合物との反応性の観点よりR及びRは、共にアリール基であることが好ましく、下記式(7)で表されるジアリールカーボネートでることがより好ましい。
【化9】
【0071】
式(7)中、R及びR10は、それぞれ独立に、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、炭素数1~20のアルキル基、炭素数1~20のアルコキシカルボニル基、炭素数4~20のシクロアルキル基、炭素数6~20のアリール基であり、p及びqはそれぞれ独立に0~5の整数を表す。
【0072】
このようなカーボネートエステルとしては、具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジ-t-ブチルカーボネート等のジアルキルカーボネート、ジフェニルカーボネート(以下、「DPC」と称する場合がある。)、ビス(4-メチルフェニル)カーボネート、ビス(4-クロロフェニル)カーボネート、ビス(4-フルオロフェニル)カーボネート、ビス(2-クロロフェニル)カーボネート、ビス(2,4-ジフルオロフェニル)カーボネート、ビス(4-ニトロフェニル)カーボネート、ビス(2-ニトロフェニル)カーボネート、ビス(メチルサリチルフェニル)カーボネート、ジトリルカーボネート等の(置換)ジアリールカーボネートが挙げられるが、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。なお、これらのカーボネートエステルは、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
また、前記のカーボネートエステルは、好ましくはその50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下の量を、ジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換してもよい。代表的なジカルボン酸又はジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸ジフェニル、イソフタル酸ジフェニル等が挙げられる。このようなジカルボン酸又はジカルボン酸エステルで置換した場合には、ポリエステルカーボネートが得られる。
【0074】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する方法としては、従来から知られている重合法により製造することができ、その重合法としては、特に限定されるものではない。重合法の例を挙げると、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法などを挙げることができる。以下、これらの方法のうち特に好適なものについて具体的に説明する。
【0075】
界面重合法
まず、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を界面重合法で製造する場合について説明する。界面重合法では、反応に不活性な有機溶媒及びアルカリ水溶液の存在下で、通常pHを9以上に保ち、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物(好ましくは、ホスゲン)とを反応させた後、重合触媒の存在下で界面重合を行うことによってポリカーボネート樹脂を得る。なお、反応系には、必要に応じて分子量調整剤(末端停止剤)を存在させるようにしてもよく、芳香族ジヒドロキシ化合物の酸化防止のために酸化防止剤を存在させるようにしてもよい。
【0076】
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物及びカーボネート形成性化合物は、前述のとおりである。なお、カーボネート形成性化合物の中でもホスゲンを用いることが好ましく、ホスゲンを用いた場合の方法は特にホスゲン法と呼ばれる。
反応に不活性な有機溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、モノクロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の塩素化炭化水素等;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;などが挙げられる。なお、有機溶媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0077】
アルカリ水溶液に含有されるアルカリ化合物としては、例えば、特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ金属化合物やアルカリ土類金属化合物が挙げられるが、中でも水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムが好ましい。なお、アルカリ化合物は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0078】
アルカリ水溶液中のアルカリ化合物の濃度に制限は無いが、通常、反応のアルカリ水溶液中のpHを10~12にコントロールするために、5~10質量%で使用される。また、例えばホスゲンを吹き込むに際しては、水相のpHが10~12、好ましくは10~11になる様にコントロールするために、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とアルカリ化合物とのモル比を、通常1:1.9以上、中でも1:2.0以上、また、通常1:3.2以下、中でも1:2.5以下とすることが好ましい。
【0079】
重合触媒としては、特に限定されないが、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン、トリプロピルアミン、トリヘキシルアミン等の脂肪族三級アミン;N,N’-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N’-ジエチルシクロヘキシルアミン等の脂環式三級アミン;N,N’-ジメチルアニリン、N,N’-ジエチルアニリン等の芳香族三級アミン;トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等の第四級アンモニウム塩等;ピリジン;グアニン;グアニジンの塩;等が挙げられる。なお、重合触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0080】
分子量調節剤としては、特に限定されないが、例えば、一価のフェノール性水酸基を有する芳香族フェノール;メタノール、ブタノールなどの脂肪族アルコール;メルカプタン;フタル酸イミド等が挙げられるが、中でも芳香族フェノールが好ましい。このような芳香族フェノールとしては、具体的には例えば、フェノール、o-n-ブチルフェノール、m-n-ブチルフェノール、p-n-ブチルフェノール、o-イソブチルフェノール、m-イソブチルフェノール、p-イソブチルフェノール、o-t-ブチルフェノール、m-t-ブチルフェノール、p-t-ブチルフェノール、o-n-ペンチルフェノール、m-n-ペンチルフェノール、p-n-ペンチルフェノール、o-n-ヘキシルフェノール、m-n-ヘキシルフェノール、p-n-ヘキシルフェノール、p-t-オクチルフェノール、o-シクロヘキシルフェノール、m-シクロヘキシルフェノール、p-シクロヘキシルフェノール、o-フェニルフェノール、m-フェニルフェノール、p-フェニルフェノール、o-n-ノニルフェノール、m-ノニルフェノール、p-n-ノニルフェノール、o-クミルフェノール、m-クミルフェノール、p-クミルフェノール、o-ナフチルフェノール、m-ナフチルフェノール、p-ナフチルフェノール;2,5-ジ-t-ブチルフェノール;2,4-ジ-t-ブチルフェノール;3,5-ジ-t-ブチルフェノール;2,5-ジクミルフェノール;3,5-ジクミルフェノール;p-クレゾール、ブロモフェノール、トリブロモフェノール、平均炭素数12~35の直鎖状又は分岐状のアルキル基をオルト位、メタ位又はパラ位に有するモノアルキルフェノール;9-(4-ヒドロキシフェニル)-9-(4-メトキシフェニル)フルオレン;9-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-9-(4-メトキシ-3-メチルフェニル)フルオレン;4-(1-アダマンチル)フェノールなどが挙げられる。これらのなかでは、p-t-ブチルフェノール、p-フェニルフェノール及びp-クミルフェノールが好ましく用いられる。なお、分子量調整剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0081】
分子量調節剤の使用量は、特に限定されないが、例えば、原料のジヒドロキシ化合物100モルに対して、通常0.5モル以上、好ましくは1モル以上であり、また、通常50モル以下、好ましくは30モル以下である。分子量調整剤の使用量をこの範囲とすることで、芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性及び耐加水分解性を向上させることができる。
【0082】
反応の際に、反応基質(反応原料)、反応媒(有機溶媒)、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。例えば、カーボネート形成性化合物としてホスゲンを用いた場合には、分子量調節剤は原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲンとの反応(ホスゲン化)の時から重合反応開始時までの間であれば任意の時期に混合できる。
なお、反応温度は、特に限定されないが、通常0~40℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常は数分(例えば、10分)~数時間(例えば、6時間)である。
【0083】
溶融エステル交換法
次に、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を溶融エステル交換法で製造する場合について説明する。溶融エステル交換法では、例えば、カーボネートエステルと原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とのエステル交換反応を行う。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物、及びカーボネートエステルは、上述の通りである。
原料の芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネートエステルとの比率は所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であるが、これらカーボネートエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物と重合させる際に、原料の芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に用いることが好ましい。すなわち、カーボネートエステルは、芳香族ジヒドロキシ化合物に対して、1.01~1.30倍量(モル比)であることが好ましく、1.02~1.20倍量(モル比)であることがより好ましい。モル比が小さすぎると、得られる芳香族ポリカーボネート樹脂の末端OH基が多くなり、樹脂の熱安定性が悪化する傾向となる。また、モル比が大きすぎると、エステル交換の反応速度が低下し、所望の分子量を有する芳香族ポリカーボネート樹脂の生産が困難となったり、樹脂中のカーボネートエステルの残存量が多くなり、成形加工時や成形品としたときの臭気の原因となる場合がある。
【0084】
溶融エステル交換法により芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には、通常、エステル交換触媒が使用される。エステル交換触媒は、特に限定されず、従来から公知のものを使用できる。例えばアルカリ金属化合物及び/又はアルカリ土類金属化合物を用いることが好ましい。また補助的に、例えば塩基性ホウ素化合物、塩基性リン化合物、塩基性アンモニウム化合物、アミン系化合物などの塩基性化合物を併用してもよい。なお、エステル交換触媒は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0085】
溶融エステル交換法において、反応温度は、特に限定されないが、通常100~320℃である。また、反応時の圧力は、特に限定されないが、通常2mmHg以下の減圧条件である。具体的操作としては、前記の条件で、副生成物を除去しながら、溶融重縮合反応を行えばよい。
ここで、本発明の芳香族ポリカーボネートは、アルカリ触媒存在下では、顕著に熱履歴や酸化の影響を受け、色相の悪化に繋がる。そのため、反応温度は320℃以下、過度の減圧により、機器からの酸素の漏れ込みを防ぐため、0.05mmHg程度までを下限とした減圧条件を選択することが好ましい。
反応形式は、バッチ式、連続式の何れの方法でも行うことができる。バッチ式で行う場合、反応基質、反応溶媒、触媒、添加剤等を混合する順番は、所望の芳香族ポリカーボネート樹脂が得られる限り任意であり、適切な順番を任意に設定すればよい。ただし中でも、芳香族ポリカーボネート樹脂の安定性等を考慮すると、溶融重縮合反応は連続式で行うことが好ましい。
【0086】
溶融重縮合反応を連続式で行う場合は、反応液の重合度に合わせて3~5槽の重合反応槽で順次反応を進行させることが好ましい。これにより、各重合槽の反応温度、反応圧力、撹拌動力、反応器形式を各重合槽における樹脂の特性、粘度に応じて適当な条件を選定することができ、生産効率が上がる。各重合槽からの反応液の移送は、液の粘度によっても異なるが、例えばギアポンプを使用する。
【0087】
溶融重縮合反応は、通常、減圧条件下で行うことから、反応器はもとより、反応液の移送に用いるポンプ類の軸シール等の気密性も重要となる。これには、スタッフィングボックス内のパッキン(グランド)をグランド抑えで締め付けることによって、軸表面を押し付ける力が発生し、その接触圧力で内部の流体をシールしたり、更にパッキンの中間にランタンリングを組み込み、そこに圧力水や高粘度ポリマーなどを注入する等により外部からの大気流入を防止するグランドシールや、スプリングなどによって軸方向に動くことができるシールリングと、動かないメイティングリング(またはフローティングシート)から構成され、両リングの軸に垂直な摺動面がお互いに接触し、相対的に回転することによってシールするメカニカルシールなどを用いる。これらのシールは、可動部である軸との摺動性を確保する必要がある。気密性向上と摺動性確保は相反する性質であり、使用環境によってこれらのバランスを選択し、適した機器、構造及びシール強度を選定する。例えば、グランドシールについては、グランド抑えを増し締めすることによってシール強度を上げた設定にすることが可能となる。
【0088】
溶融エステル交換法においては、必要に応じて、触媒失活剤を用いてもよい。触媒失活剤としてはエステル交換触媒を中和する化合物を任意に用いることができる。その例を挙げると、イオウ含有酸性化合物及びその誘導体、リン含有賛成化合物及びその誘導体などが挙げられる。なお、触媒失活剤は、1種を用いてもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0089】
触媒失活剤の使用量は、特に限定されないが、前記のエステル交換触媒が含有するアルカリ金属又はアルカリ土類金属に対して、通常0.5当量以上、好ましくは1当量以上であり、より好ましくは3当量以上であり、また、通常50当量以下、好ましくは10当量以下、より好ましくは8当量以下である。さらには、芳香族ポリカーボネート樹脂に対して、通常1質量ppm以上であり、また、通常100質量ppm以下、好ましくは50質量ppm以下である。
【0090】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂は、本発明の効果及び所望の諸物性を著しく阻害しない範囲で、他の芳香族ポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂と混合して用いることができる。他の芳香族ポリカーボネート樹脂としては、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパンに由来するカーボネート構造単位からなる芳香族ポリカーボネート樹脂(A-PC)が好適に用いられる。
【0091】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、本発明の効果及び所望の諸物性を著しく阻害しない範囲で、上述したもの以外にその他の成分(樹脂添加剤)を含有していてもよい。樹脂添加剤の例を挙げると、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、難燃剤、輝度向上剤、強化剤、帯電防止剤、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、分散剤、抗菌剤などが挙げられる。なかでも、一般射出成形材料として用いるためには熱安定剤、酸化防止剤、染料、顔料及び離型剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有することが好ましい。
なお、樹脂添加剤は1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていてもよい。
【実施例
【0092】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(芳香族ジヒドロキシ化合物の合成例)
1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンの合成
フェノール(102.1重量部)を40℃に加温し融解させた後、パラトルエンスルホン酸(8.25重量部)及び純水(7.03重量部)を加えた。そこへ、ドデカナール(40.0重量部)を4時間かけて滴下した。滴下後、40℃で2時間熟成した後、25%水酸化ナトリウム水溶液で反応を停止させた。トルエン及び純水を加え、無機塩を除去した後、反応混合物からフェノールを減圧留去した。溶媒を留去した後、トルエンおよびヘプタンから晶析させることで、白色粉末として31.9重量部の目的化合物を得た。下記条件にて測定したところ、純度は99.4%であった。
【0093】
(芳香族ジヒドロキシ化合物の分析)
サンプル0.01質量部を1質量部のアセトニトリルに溶解させた。得られた溶液をHPLC分析装置(島津製作所製LC-2010)にて分析した。条件は以下の通りである。
カラム:inertsilODS3V(ジーエルサイエンス社製)
溶出溶媒:アセトニトリル/0.1質量%酢酸アンモニウム溶液
検出器:UV(254nm)
【0094】
(実施例1)
溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンを溶解し、窒素雰囲気下、140℃で9.5時間混合した。この時、混合溶融液中の組成はジフェニルカーボネートが45.5重量%、ビスフェノールAが32.7重量%、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンが21.8重量%であった。アルカリ触媒として、0.04重量%炭酸セシウム水溶液を0.3重量%添加し、第1重合槽(撹拌翼を備えた槽型反応器)に連続的に投入した。
第1重合槽の平均滞留時間が50分となるように連続的に第2重合槽(撹拌翼を備えた槽型反応器)に移送した。次いで、第2重合槽の平均滞留時間が40分となるように連続的に第3重合槽(撹拌翼を備えた槽型反応器)に移送した。第3重合槽の平均滞留時間が50分となるように連続的に第4重合槽(メガネ翼を備えた横型反応器)に移送した。第4重合槽の平均滞留時間が115分となるように連続的に抜き出し、重合槽から配管で接続された押出機(JSW製 TEX30α;直径32mm、L/D=42、2軸同方向回転型)に溶融状態のまま導入した。
押出機でアルカリ触媒を失活させるため、パラトルエンスルホン酸ブチルを炭酸セシウムに対して11.2当量及び酸化防止剤としてIRGANOX 1010を芳香族ポリカーボネート樹脂に対して1000質量ppm添加、混合し、目的の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。尚、各重合槽の反応温度及び反応圧力は表-1に示した通りである。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-1に示す。
【0095】
(実施例2)
実施例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を製造したが、第3重合槽から第4重合槽に溶融反応物を払い出すためのギアポンプについて、軸シール部のグランドパッキンを、グランド抑えを1/4回転させ増し締めした。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-1に示す。
【0096】
(実施例3)
第3重合槽、第4重合槽の温度を240℃とした以外は実施例2と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を製造した。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-1に示す。
【0097】
(実施例4)
ジフェニルカーボネートを45.7重量%、ビスフェノールAを32.6重量%、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンが21.7重量%とし、窒素雰囲気下、140℃での溶融混合時間を15時間とした以外は実施例3と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を製造した。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-1に示す。
【0098】
(実施例5)
溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンを溶解し、窒素雰囲気下、140℃で10時間混合した。この時、混合溶融液中の組成はジフェニルカーボネートが45.4重量%、ビスフェノールAが32.8重量%、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンが21.8重量%であった。アルカリ触媒として、0.04重量%炭酸セシウム水溶液を0.3重量%添加し、第1重合槽に連続的に投入した。
第1重合槽の平均滞留時間が60分となるように連続的に第2重合槽に移送した。次いで、第2重合槽の平均滞留時間が50分となるように連続的に第3重合槽に移送した。第3重合槽の平均滞留時間が55分となるように連続的に第4重合槽に移送した。尚、第3重合槽から第4重合槽への払い出しギアポンプの状態は実施例1と同様である。第4重合槽の平均滞留時間が125分となるように連続的に抜き出し、重合槽から配管で接続された押出機に溶融状態のまま導入した。
押出機でアルカリ触媒を失活させるため、パラトルエンスルホン酸ブチルを炭酸セシウムに対して11.2当量及び酸化防止剤としてIRGANOX 1010を芳香族ポリカーボネート樹脂に対して1000質量ppmを添加、混合し、目的の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。各重合槽の反応温度及び反応圧力は表-1に示した通りである。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-1に示す。
【0099】
(比較例1)
溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールA及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンを溶解し、窒素雰囲気下、140℃で10時間混合した。この時、混合溶融液中の組成はジフェニルカーボネートが45.2重量%、ビスフェノールAが32.9重量%、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンが21.9重量%であった。アルカリ触媒として、0.04重量%炭酸セシウム水溶液を0.3重量%添加し、第1重合槽に連続的に投入した。
第1重合槽の平均滞留時間が70分となるように連続的に第2重合槽に移送した。次いで、第2重合槽の平均滞留時間が60分となるように連続的に第3重合槽に移送した。第3重合槽の平均滞留時間が70分となるように連続的に第4重合槽に移送した。尚、第3重合槽から第4重合槽への払い出しギアポンプの状態は実施例1と同様である。第4重合槽の平均滞留時間が140分となるように連続的に抜き出し、重合槽から配管で接続された押出機に溶融状態のまま導入した。
押出機でアルカリ触媒を失活させるため、パラトルエンスルホン酸ブチルを炭酸セシウムに対して11.2当量及び酸化防止剤としてIRGANOX 1010を芳香族ポリカーボネート樹脂に対して1000質量ppmを添加、混合し、目的の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。各重合槽の反応温度及び反応圧力は表-1に示した通りである。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-1に示す。
【0100】
機器の気密性とは、反応工程で用いられる機器の気密性を表したものであり、以下の基準で評価した。各実施例及び比較例における当該機器の気密性を表-1に示す。
〇:一般的なビスフェノールAポリカーボネートを生産するに十分な気密レベル
◎:上記「○」よりもさらに気密性を強化したレベル
【0101】
【表1】
【0102】
(参考例1)
溶融したジフェニルカーボネートにビスフェノールAを溶解し、窒素雰囲気下、140℃で9時間混合した。この時、混合溶融液中の組成はジフェニルカーボネートが49.0重量%、ビスフェノールAが51.0重量%であった。アルカリ触媒として、0.04重量%炭酸セシウム水溶液を0.15重量%添加し、第1重合槽に連続的に投入した。
第1重合槽の平均滞留時間が55分となるように連続的に第2重合槽に移送した。次いで、第2重合槽の平均滞留時間が50分となるように連続的に第3重合槽に移送した。第3重合槽の平均滞留時間が50分となるように連続的に第4重合槽に移送した。尚、第3重合槽から第4重合槽への払い出しギアポンプの状態は実施例1と同様である。第4重合槽の平均滞留時間が110分となるように連続的に抜き出し、重合槽から配管で接続された押出機に溶融状態のまま導入した。
押出機でアルカリ触媒を失活させるため、パラトルエンスルホン酸ブチルを炭酸セシウムに対して11.2当量添加、混合し、目的の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。各重合槽の反応温度及び反応圧力は表-2に示した通りである。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-2に示す。
【0103】
(参考例2)
参考例1と同様に芳香族ポリカーボネート樹脂を製造したが、第3重合槽から第4重合槽に溶融反応物を払い出すためのギアポンプについて、軸シール部のグランドパッキンを、グランド抑えを1/4回転させ増し締めした。
得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の物性を表-2に示す。
【0104】
【表2】
【0105】
表-1及び表-2の結果より、アルカリ触媒存在下での熱履歴影響や、一般によく知られたビスフェノールA型の芳香族ポリカーボネート樹脂製造時には影響が出ない程度の極微量の空気の影響により、芳香族ポリカーボネート樹脂は色相が顕著に悪化することが明らかとなった。しかしながら、これらのすべての要素をそれぞれ定量化することは困難であり、本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、芳香族ポリカーボネート樹脂を加水分解した際の加水分解物中に検出される下記式(2)で表される化合物の含有量によって色相影響を定量化できることを見出した。
すなわち、別の形態として、式(1)で表される構造単位を含む芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法であって、該芳香族ポリカーボネート樹脂を加水分解して得られる加水分解物が式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物と、を含み、該加水分解物における式(2)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量が、式(3)で表される芳香族ジヒドロキシ化合物の含有量に対して250質量ppm以下となるように芳香族ジヒドロキシ化合物とカーボネート形成性化合物とを重合するステップを含む、芳香族ポリカーボネート樹脂の製造方法である。
【化10】
【0106】
(実施例6)
ジフェニルカーボネートを5.67kg、ビスフェノールAを4.02kg及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンを2.68kg混合し、さらに触媒として炭酸セシウム2重量%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.75μmolとなるように添加して原料混合物を調整した。次に該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した内容量200Lの第1反応器に投入した。この時、使用した1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン中の式(2)で表される化合物は3質量ppmであった。
【0107】
次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。そして、第1反応器の内部で行われるジヒドロキシ化合物とDPCのオリゴマー化反応により副生するフェノールを留去しながら、40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧した。
続いて、第1反応器内の圧力を13.3kPaに保持し、フェノールをさらに留去させながら、80分間、エステル交換反応を行った。系内を窒素で絶対圧で101.3kPaに復圧の上、ゲージ圧で0.2MPaまで昇圧し、予め200℃以上に加熱した移送配管を経由して、第1反応器内のオリゴマーを第2反応器に圧送した。尚、第2反応器は内容量200Lであり、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ並びに還流冷却管を具備しており、内圧は大気圧、内温は240℃に制御していた。
【0108】
次に、第2反応器内に圧送したオリゴマーを38rpmで攪拌し、熱媒ジャケットにて内温を昇温し、第2反応器内を40分かけて絶対圧で101.3kPaから13.3kPaまで減圧した。その後、昇温を継続し、さらに40分かけて、内圧を絶対圧で13.3kPaから399Pa(3Torr)まで減圧し、留出するフェノールを系外に除去した。さらに、昇温を続け、第2反応器内の絶対圧が70Pa(約0.5Torr)に到達後、70Paを保持し、重縮合反応を行った。第2反応器内の最終的な内部温度は250℃とした。第2反応器の攪拌機が予め定めた所定の攪拌動力となったときに、重縮合反応を終了し、反応器内を窒素で復圧後、圧力をかけ漕底から抜出し、水冷漕で冷却し、ストランド状にしたものをペレタイザーでカッティングし、ペレット状の芳香族ポリカーボネート樹脂を得た。第2反応器での反応時間は187分であった。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表-3に示す。
【0109】
(実施例7)
実施例6と同様に芳香族ポリカーボネートを製造したが、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン中の式(2)で表される化合物は55質量ppmであった。第2反応器での反応時間は155分であった。得られたポリカーボネート樹脂の物性を表-3に示す。
【0110】
(比較例2)
ジフェニルカーボネートを5.67kg、ビスフェノールAを4.02kg及び1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカンを2.68kg混合し、さらに触媒として炭酸セシウム2重量%水溶液を、炭酸セシウムが全ジヒドロキシ化合物1mol当たり0.75μmolとなるように添加して原料混合物を調整した。次に該混合物を、攪拌機、熱媒ジャケット、真空ポンプ、還流冷却器を具備した内容量200Lの第1反応器に投入した。この時、使用した1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン中の下記式(2)で表される化合物は1質量ppm未満であった。
【0111】
次に、第1反応器内を1.33kPa(10Torr)に減圧し、続いて、窒素で大気圧に復圧する操作を5回繰り返し、第1反応器の内部を窒素置換した。窒素置換後、熱媒ジャケットに温度230℃の熱媒を通じて第1反応器の内温を徐々に昇温させ、混合物を溶解させた。その後、300rpmで撹拌機を回転させ、熱媒ジャケット内の温度をコントロールして、第1反応器の内温を220℃に保った。40分間かけて第1反応器内の圧力を絶対圧で101.3kPa(760Torr)から13.3kPa(100Torr)まで減圧したが、フェノールの留出はほとんど見られず、目的の芳香族ポリカーボネート樹脂は得られなかった。
【0112】
【表3】
【0113】
上記の通り、下記式(3)で表される化合物は、アルカリ存在下で熱履歴や酸素による影響を受けやすい。これは芳香族ヒドロキシ化合物を製造する過程においても同様である。これにより、芳香族ヒドロキシ化合物中に下記式(2)で示される化合物が存在しないことは、製造時に酸成分が残存していることを示唆しており、芳香族ポリカーボネート化合物を製造する過程において、アルカリ触媒を失活させているものと考えられる。芳香族ポリカーボネート化合物を製造する過程において、過剰量のアルカリ触媒を添加することで酸成分による失活影響を緩和することは可能であるが、過剰量のアルカリ触媒は芳香族ポリカーボネート化合物の物性を悪化させることに繋がるため好ましくない。本結果により、原料芳香族ヒドロキシ化合物の品質管理においても下記式(2)の化合物に注目することが有用であることが判明した。
【0114】
【化11】